JP3501819B2 - 平坦性に優れた透明導電性フィルム - Google Patents
平坦性に優れた透明導電性フィルムInfo
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Description
透明な無機系の酸素及び水蒸気バリヤー性薄膜を形成
し、その上に透明導電性薄膜を成膜した、酸素及び水蒸
気に対し実質的に不透明性であり、基板フィルムを含め
た透明導電性薄膜の平坦性、導電性および透明性の良好
な透明導電性フィルムに関する。尚、本発明において、
バリヤー性という用語は、酸素(ガス)バリヤー性及び
水蒸気バリヤー性の両方を含むものとして使用される。
もない透明電極の特性の向上が急務となっている。特に
液晶表示素子、太陽電池用光電変換素子などへの応用が
進んでいる。これらに用いる透明電極は、一般にガラス
基板上に形成される。ガラス基板上に形成されたものの
例として、たとえば酸化錫などを薄膜加工したネサガラ
ス、酸化インジウムと酸化錫の混合物(ITO)の薄膜
を形成したITOガラス、金・銀などの導電性金属薄膜
を形成した導電性ガラスなどが知られている。しかしな
がら基板として用いるガラスには、衝撃に弱い、重い、
可撓性がない、大面積化がしにくい、などの欠点があ
り、それらの欠点を補う意味でプラスチックフィルムを
基板とする透明導電性フィルムも製造されている。プラ
スチックフィルムは、耐衝撃性、可撓性、軽量、大面積
化のしやすさ、加工性の良さなどの利点を有しており、
プラスチックフィルムを基板とする透明導電性フィルム
は、現在でも液晶表示素子、タッチパネル、帯電防止フ
ィルム、赤外線反射膜などに用いられている。
る導電性薄膜は、導電性と透明性の双方に優れ、しかも
パターン加工が容易であるITO薄膜が主流であり、こ
の透明導電性薄膜はエレクトロニクス表示デバイス分野
で広く利用されている。前記ITO薄膜をプラスチック
フィルム基板上に形成する方法としては、真空蒸着法、
スパッタリング法、イオンプレーティング法などが知ら
れており、これらのうちでは、フィルムへの密着性がよ
い、膜の均一性がよい、膜質のコントロールが容易であ
る、生産性がよい、などの理由から、マグネトロンスパ
ッタリング法が多く利用されている。
チックフィルム基材ではガスバリヤー性、水蒸気バリヤ
ー性、耐溶剤性などの諸特性を満足するものは得られな
い。そのため、フィルム基材に対し下塗や表面処理を施
し複合化することが多い、複合化に当たっては、コーテ
ィング、スパッタリングなどの公知の方法を用いればよ
いが、従来はコーティングによる複合化が広く用いられ
ていた。しかし、コーティングによる複合化では、コー
ティング材料の制約上、十分な特性が得られなかった。
また、フィルムの剛性の低さによりスパッタリング法に
よる薄膜形成後カールが発生する場合が多く、特に薄物
フィルムに加工した場合に顕著であった。ところが液晶
表示素子用途の基板としては、その製造工程上、基板フ
ィルムを含めた透明導電性薄膜の平坦性が必要である
が、スパッタリング法に起因する薄膜の内部応力により
カールが発生し、安定した製造工程を構築できなかっ
た。
性、導電性、透明性の諸特性を満足し、かつ、基板フィ
ルムを含めた透明導電性薄膜の曲率半径が50mm以上と
いう、これまで得られなかった特性を持つ透明導電性フ
ィルムを提供することを目的としている。
鑑み前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、スパ
ッタリング法による成膜条件を制御することにより、バ
リヤー性、導電性、透明性に優れ、かつ曲率半径が十分
大きな、即ち平坦な透明導電性フィルムが得られること
を見いだし、本発明に到達した。すなわち本発明は、厚
みが20〜200μmである透明フィルム基板上に、珪
素酸化物を主体とする金属酸化物及び/又は珪素窒化物
を主体とする金属窒化物からなり酸素及び水蒸気に対し
て実質的に不透過性を有する透明の無機系バリヤー性薄
膜を5〜100nmの厚みで形成し、さらに該バリヤー性
薄膜の上にインジウム酸化物を主体とする金属酸化物で
ある透明導電性薄膜を20〜400nmの厚みで形成して
なり、酸素透過度が5cc/m2/day 以下で水蒸気透過度
が5g/m2/day 以下であり、且つ100mm×100mm
の透明導電性フィルムの一辺の中央部を保持して釣り下
げて測定したときの曲率半径が50mm以上であることを
特徴とする透明導電性フィルムを内容とするものであ
る。
は、好ましくは厚さ20〜200μm程度、より好まし
くは50〜125μm程度、さらに好ましくは75〜1
00μmで、光線透過率が好ましくは85%以上、より
好ましくは90%以上の表面の平滑性が良好なプラスチ
ックフィルムが用いられる。基板の厚さが20〜200
μmの範囲内の場合には、光線透過率が85%以上で表
面の平滑性が良好でフィルム厚みの均一な透明なプラス
チックフィルムが得られやすい。また基板の光線透過率
が90%程度以上の場合には、透明導電性フィルムの透
明度も良好となり、かつ薄膜の表面性も良好となり、エ
ッチングなどの微細加工性も向上する。
のフィルムに限定されるものではなく、付着強度の改
善、バリヤー性の向上、耐溶剤性の改善などの目的で、
各種下塗や表面処理を施した複合フィルムであってもよ
い。複合化にあたっては、コーティング、スパッタリン
グなどの公知の方法を用いればよい。フィルム基板を形
成するプラスチックとしては、たとえばポリアリレート
(PAR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、
ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン
(PES)、ポリサルフォン、ポリアミド、セルロース
トリアセテート(TAC)などが挙げられ、これらは単
独又は2種以上組み合わせて用いられるが、これらに限
定されるものではない。前記プラスチックの中では、透
明性が高く、耐熱性に優れたポリアリレート及び/又は
ポリカーボネートが好ましく、特に液晶表示素子の用途
に使用するのに好ましい。
薄膜は、厚さ5〜100nm程度、好ましくは20〜60
nm程度、酸素透過度5cc/m2/day 以下、好ましくは1
cc/m2/day 以下、水蒸気透過度5g/m2/day 以下、
好ましくは1g/m2/day 以下のバリヤー性薄膜であ
る。透明な無機系のバリヤー性薄膜は、好ましくは二酸
化珪素あるいはこれを主成分として含み、一酸化珪素、
酸化アルミニウムなどの金属酸化物の1種以上を含む化
合物、及び/又は、窒化珪素、あるいはこれを主成分と
して含み、窒化アルミニウムなどの金属窒化物の1種以
上を含む化合物からなり、具体例としては、例えばSi
Ox、SiAlNなどが挙げられる。金属窒化物のうち
でもSiOx、特にxの値が好ましくは1.3〜1.
8、より好ましくは1.5となるものが、酸素および水
蒸気バリヤー性を維持しつつ、透明導電性薄膜の平坦性
を実現することから好ましい。
0〜400nm程度、好ましくは50〜200nm程度、さ
らに好ましくは60〜150nm、好ましくは光線透過率
80%以上、より好ましくは85%以上、好ましくはシ
ート抵抗100Ω/□以下、より好ましくは50Ω/□
以下で膜厚分布の均一な透明導電性薄膜である。透明導
電性薄膜の厚さが60〜150nm程度の範囲内の場合に
は、シート抵抗および光線透過率の双方を目的の範囲内
にコントロールしやすい。また、透明導電性薄膜の光線
透過率が85%程度以上の場合には、透明導電性フィル
ムの透明性も良好にしうる。
とする金属酸化物が好適で、酸化インジウムまたはこれ
を主成分、具体的には80%(重量%、以下同様)以
上、さらには90〜95%含み、酸化スズ、酸化カドミ
ウムなどの他の金属酸化物の1種以上を20%以下、さ
らには5〜10%含む化合からなり、具体例としては、
例えばITO、Cdln2 O4 などが挙げられる。前記
インジウム酸化物を主体とした金属酸化物のうちでもI
TO、とくに金属換算でスズが10%以下、好ましくは
5〜10%のものが、高い透明性を維持しつつシート抵
抗を下げる点から好ましい。
は、シート抵抗および光線透過率が、透明導電性ガラス
と同程度以上の性能を有し、かつ、薄膜の成膜条件をコ
ントロールすることにより、液晶セル基板として使用し
たときに、十分な平坦性を発現する。また、透明フィル
ム基板を使用しているため、耐衝撃性、軽量、可撓性、
大面積化のしやすさ、加工性の良さなどの特徴を有す
る。
法について説明する。本発明の透明導電性フィルムは、
マグネトロンスパッタリング法によって製造するのが好
ましい。成膜に使用するターゲットとしては、透明な無
機系バリヤー性薄膜の場合は、前述のように珪素酸化物
を主体として酸化アルミニウムなどの他の金属酸化物、
及び/又は、珪素窒化物を主体として窒化アルミニウム
のような金属窒化物の混合焼結体が用いられる。特に二
酸化珪素と一酸化珪素の複合酸化物焼結体を用いるのが
望ましい。透明導電性薄膜用には、酸化インジウムまた
はこれを主成分として酸化スズなどの他の金属酸化物を
含む複合酸化物焼結体が用いられる。特にITOの焼結
体を用いるのが望ましい。ITOの酸化インジウムと酸
化スズの比率としては、前述のように、金属換算でスズ
が10%以下のものが望ましい。
ルゴンなどの不活性ガスまたはこれを主成分として酸
化、水素などを加えたものが用いられる。総ガス圧とし
ては、透明な無機系バリヤー性薄膜層には1×10-3〜
3×10-3Torrの範囲で行うのが望ましい。これよりも
低い場合は放電が不安定になるし、これよりも高い場合
は十分な酸素バリヤー性を示さない。透明導電性薄膜に
は、3×10-3〜9×10-3Torrの範囲が望ましい。こ
れよりも低い場合は透明導電性薄膜の内部応力が大きく
なり透明導電性薄膜のカールが大きくなり(曲率半径が
小さくなり)、セル組立工程において安定した工程を構
築できなくなり、一方これよりも高い場合はシート抵抗
が極めて悪化するため実用的でない。ガス比率として
は、たとえばITO薄膜の場合、酸素分圧を総ガス圧の
0.5〜5%の間でコントロールするのが望ましい。使
用する電源は、透明な無機系バリヤー性薄膜の場合はタ
ーゲットの物性からRFが望ましく、透明導電性薄膜の
場合は生産性の観点からDCが望ましい。スパッタリン
グは上記の各条件を勘案しつつ、ターゲットへの投入電
力などをコントロールすることにより行う。透明な無機
系バリヤー性薄膜の場合は、RF1〜4W/cm2 程度の
電力密度で成膜することが望ましい。これよりも小さい
場合は付着力が不十分になり剥離が発生しやすくなる
し、これよりも大きい場合はカールがひどくなる他、タ
ーゲットの冷却不足が起こり、ターゲットの破損等を招
く。透明な無機系バリヤー性薄膜の厚みは、前記した如
く5〜100nm、好ましくは20〜60nmとする。透明
導電性薄膜の場合はDC0.1〜2W/cm2 程度で成膜
することが望ましく、さらには1.2W/cm2 以下で成
膜するのが望ましい。2W/cm2 を越えると透明導電性
薄膜の内部応力が増大し、カールが大きくなる他、剥離
等を起こし易く、一方下限は生産性を考慮して決められ
るべきである。透明導電膜の厚みは前記した如く20〜
400nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは
80〜200nmとする。厚いほど電気抵抗が低下し好ま
しいが、折り曲げ時にクラック等を引き起こし易い。
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。なお、物性の評価は下記の方法により行った。 〔酸素バリヤー性〕米国モダンコントロール社製OX−
TRAN100を用いて測定し、cc/m2/day の単位で
表示した。 〔水蒸気バリヤー性〕防湿包装材料の透湿度試験方法
(カップ法)JIS−Z−0208に基づいて測定し
た。 〔シート抵抗〕四探針抵抗率測定法に準じて測定した。 〔光線透過率〕空気をリファレンスとして波長550nm
でのフィルム基板を含めた透過率を100分率で表し
た。 〔曲率半径〕100×100mmのサンプルの一辺の中央
部を保持し釣り下げ、曲率半径を実測した。
ムを使用し、直径6インチのターゲットを2台備えたマ
グネトロンスパッタリング装置(島津製作所株式会社製
HSM−720型)を用いて順次透明な無機系バリヤー
性薄膜、透明導電性薄膜をフィルム上に形成した。該バ
リヤー性薄膜用ターゲットとしてSiO1.5 、透明導電
性薄膜用ターゲットとして酸化スズ比10%のITO、
スパッタガスとしてバリヤー性薄膜ではアルゴンのみで
総ガス圧1.0mTorr 、ガス流量10sccm、透明導電性
薄膜ではアルゴンに酸素を1%加えたもので総ガス圧7
mTorr 、ガス流量20sccm、パワー条件としてバリヤー
性薄膜はRF400W(2.35W/cm2 )、透明導電
性薄膜はDC0.6A、250V(0.88W/cm2 )
となるようにして成膜を行った。バリヤー性薄膜は1.
5分処理し厚さ30nm、透明導電性薄膜は3分処理し厚
さ100nmの透明導電性フィルムを得た。その結果を表
1に示す。表1の結果から、バリヤー性薄膜の成膜パワ
ーを上げて成膜することにより、シート抵抗74Ω/
□、光線透過率79%、酸素バリヤー性0.5cc/m2/
day、水蒸気バリヤー性0.5g/m2/day であり、か
つ曲率半径が150mmの平坦性に優れた透明導電性フィ
ルムが得られた。
(2.35W/cm2 )とした以外は実施例1と同様にし
て透明導電性フィルムを作成した。結果を表1に示す。
表1の結果から、透明導電性薄膜の成膜パワーを上げて
成膜すると、シート抵抗45Ω/□の透明導電性フィル
ムが得られるものの曲率半径25mmとなり、円筒状にな
ってしまい液晶セル組立が不可能であった。
rrとした以外は実施例1と同様にして透明導電性フィル
ムを作成した。結果を表1に示す。表1の結果から、透
明導電性薄膜の成膜プロセス圧力を1×10-3Torrに下
げると、シート抵抗35Ω/□と電気抵抗の低い透明導
電性フィルムが得られるものの、比較例1と同様に曲率
半径が25mmとなり、液晶セル組立は不可能であった。
ロンスパッタリング装置(島津製作所株式会社製SLC
−15S型)を使用して、透明導電性フィルムを作成し
た。基板として厚さ100μmのポリアリレート透明フ
ィルム、バリヤー性薄膜用ターゲットとしてSi
O1.5 、透明導電性薄膜用ターゲットとして酸化スズ比
10%のITO、スパッタガスとしてバリヤー性薄膜は
アルゴンのみで総ガス圧1.4mTorr 、ガス流量100
sccm、透明導電性薄膜ではアルゴンに酸素を1%加えた
もので総ガス圧5mTorr 、ガス流量50sccm、パワー条
件としてバリヤー薄膜はRF1000W(1.11W/
cm2 )、透明導電性薄膜はDC0.5A、300V
(0.17W/cm2 )となるようにして成膜を行った。
バリヤー性薄膜は7.5分処理し厚さ40nm、透明導電
性薄膜は30分処理し厚さ100nmの透明導電性フィル
ムを得た。その結果を表2に示す。表2の結果から、透
明導電性薄膜の成膜パワーを下げて成膜することによ
り、シート抵抗50Ω/□、光線透過率80%、酸素バ
リヤー性1.0cc/m2/day、水蒸気バリヤー性0.5
g/m2/day であり、かつ曲率半径が170mmの平坦性
に優れた透明導電性フィルムが得られた。
明導電性薄膜の成膜時のプロセス圧力を1×10-3Torr
として成膜した。結果を表2に示した。表2の結果か
ら、透明導電性薄膜の成膜プロセス圧力を1×10-3To
rrに下げると、シート抵抗45Ω/□、光線透過率80
%、酸素バリヤー性1.0cc/m2/day 、水蒸気バリヤ
ー性0.5g/m2/day となる透明導電フィルムが得ら
れるものの、曲率半径が40mmとなり、円筒状に丸まっ
てしまうため、液晶セル組立は不可能であった。
ィルムを含めた透明導電性薄膜の平坦性に優れ、導電性
が高く、酸素並びに水蒸気バリヤー性に優れている。
Claims (4)
- 【請求項1】 厚みが20〜200μmである透明フィ
ルム基板上に、珪素酸化物を主体とする金属酸化物及び
/又は珪素窒化物を主体とする金属窒化物からなり酸素
及び水蒸気に対して実質的に不透過性を有する透明の無
機系バリヤー性薄膜を5〜100nmの厚みで形成し、さ
らに該バリヤー性薄膜の上にインジウム酸化物を主体と
する金属酸化物である透明導電性薄膜を20〜400nm
の厚みで形成してなり、酸素透過度が5cc/m2/day 以
下で水蒸気透過度が5g/m2/day 以下であり、且つ1
00mm×100mmの透明導電性フィルムの一辺の中央部
を保持して釣り下げて測定したときの曲率半径が50mm
以上であることを特徴とする透明導電性フィルム。 - 【請求項2】 透明導電性薄膜のシート抵抗値が100
Ω/□以下であり、かつ透明フィルム基板及び透明な無
機系バリヤー性薄膜を含めた光線透過率が70%以上で
ある請求項1記載の透明導電性フィルム。 - 【請求項3】 透明フィルム基板が芳香族系ポリエステ
ルである請求項1又は2記載の透明導電性フィルム。 - 【請求項4】 透明フィルム基板が、芳香族系ポリアリ
レート及び/又はポリカーボネートである請求項1又は
2記載の透明導電性フィルム。
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1993
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