JP3476922B2 - ボールペン - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、太径の軸筒内に粘性の
低いインク又は剪断減粘性を有したインクが充填されて
成るボールペンの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、粘性の低いインク又は筆記時の
先端ボールの回転で粘性が低下してインクが流出される
剪断減粘性を有したインクを使用したボールペンが知ら
れている。これらのボールペンは通常の油性ボールペン
に比べてインクの流出量が多くインク収容管の径を太く
してインクの搭載量を多くしている。又、インクの粘度
が小さい為にインクの自重や落下等の衝撃でインクの逆
流が起きやすい問題がある。その為にインクの後端にイ
ンクの消耗に伴い追随して移動するグリース状のフォロ
アが設けられている。

【０００３】この種のボールペンは替え芯タイプとして
軸筒に搭載される形態になっており因みにインク収容管
の内径が４ｍｍ、軸筒の外径が９〜１０ｍｍ程度となっ
ている。市場からは使い捨てで良いからより安価なもの
をという要望も高い。そこで軸筒に直にインクを搭載す
ることが考えられるが、軸筒の肉厚が大きくなり、成形
精度上困難である。（特に軸筒を透明とした場合に顕著
な問題がある。）又、軸筒の内径を大きくするとインク
の搭載量が多くなりインクの逆流問題が発生するだけで
なくボールチップの筆記寿命とインク消耗のバランスが
崩れる問題が起きる。又、インク量のバランスをとると
インク長が極端に短くなりインク残量の判る透明な軸筒
では見栄え上問題がある。又、軸筒の径を細くすると握
り性が悪く筆記しずらい問題がある。

【０００４】ところで、インクの逆流を防止する手段と
してボールバルブを用いたボールペンが知られている。
ボールバルブの一例としては実開昭５７ー１９３５７８
号公報で開示されたように先端にボールを抱持し、ボー
ル受け座には軸心にボールに通ずるインク通孔が設けら
れたチップ筒内にスプリング部材を収容して、スプリン
グ部材の直線状部をインク通孔に挿通してボールの背面
を弾発的に先端方向に押圧してボール側周を先端部内壁
に密接させた水性ボールペンの先端部が知られている。
此のものは上向き放置や落下衝撃で軸方向後方にインク
がドロップバックする欠陥（インクの逆流によるインク
切れ現象）を解消するものである。

【０００５】又、ボールバルブの二例として同出願人に
より実公平４ー５２０６７号公報でボール（ボール弁）
を遊嵌した弁室を設けたボールペンのインク逆流防止機
構を開示している。此のものは合成樹脂製の口プラでボ
ール弁を遊嵌する弁室内にボール弁を抜出不能とする突
条を所要数設けて、筆記時には突条と突条との間に形成
される隙間を連通してチップ内にインクが流動されるよ
うに成されており、インクが逆流する欠陥を解消するも
のである。

【０００６】上記ボールバルブはインクの逆流を積極的
に防止する手段であり、インク収容管内に長く位置する
インクの前方部を主に支える機能を持っている。又、イ
ンクの後方部はインクの後端に位置するグリース状のフ
ォロアが支えている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は粘性の低いイ
ンク又は筆記時のボールの回転で粘性が低下してインク
が流出される剪断減粘性を有したインクを使用した使い
捨てタイプのボールペンであって、課題の１つ目は直に
インクを搭載可能とした軸筒で、使い勝手の良い握り太
さを有し、チップの筆記寿命とバランスのとれたインク
量の搭載と透明な軸筒に於いてのインクの見栄えが良
く、インクの逆流防止効果も有する軸筒と成して部材の
省略により安価に提供可能とすることにある。

【０００８】課題の２つ目は、フォロア自身が流動性を
有するためフォロア内にフォロア棒（フォロアと略同等
の比重を有する樹脂製の棒）を埋没させてフォロア中心
部の剛性を高めることでフォロアの変形を押さえられる
こと（インク収容室の断面径が太くなるほど衝撃等でフ
ォロアの中心部が流動して変形し易く、変形が大きくな
ると極端にはフォロアとインク収容室内壁との間の密着
性が崩れてインク後端面が外気と繋がる通気部が発生し
てインクが逆流する危険がある）、上述したボールバル
ブを設けることで上向き筆記でインクの逆流が防止でき
ること、先端ボールを押圧するスプリング方式でインク
の直流（先端ボールの脇からインクが滲み出る）が防止
できること、粘度の低いインクであるが故に衝撃や振動
でチップ先端から空気が巻き込まれ筆記掠れが生じるが
ボールバルブを設けることで防止できること等の知見を
得たことにより、ボールバルブ及びフォロア棒の組み込
みでコストアップとなる欠点はあるが高品質のボールペ
ンの提供も可能とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題の１つ目を達成
する為に本発明のボールペンは、先端にボールペンのチ
ップを、チップの後方にインクが充填された軸筒を有し
て成るボールペンに於いて、軸筒は厚肉の射出成形軸で
あって軸心部には中空のインク収容室が設けられ、イン
ク収容室は軸筒内壁より複数箇所で軸心に向かって延び
たリブ状の壁が入り込んだ横断面形状を成し、インク収
容室には低粘度のインク又は剪断減粘性を有したインク
とインクの後端にインクの消耗と共に追随するグリース
状のフォロアが充填されたことである。課題の２つ目を
達成する為に、チップ内孔にスプリングが内挿されて、
その先端の押圧により先端ボールがチップのボール抱持
部に密接するよう成された第１種のボールバルブ、チッ
プ後端に対峙してボール弁を遊嵌した弁室が設けられ、
上向き筆記でボール弁がインクの導孔を塞ぐ第２種のボ
ールバルブのいずれかを備えた構造とすること。又、上
記２種のボールバルブ構造を同時に備えた構造とするこ
と。此のものは上記第１種のボールバルブがインクの直
流及び逆流、衝撃後の筆記掠れ防止に効果が有るものの
先端ボールとチップのボール抱持部との加工時の密接不
完全状態及び筆記時の異物付着に起因する密接不完全状
態が存在すること、（特にステンレス製チップの加工精
度上困難な問題がある）又、上向き筆記に於いて空気巻
き込みが徐々に累積されてインクの逆流の危険が存在す
ること、等により第２種のボールバルブを併設すること
で完璧な品質が維持可能となることによる。又、必要に
応じてグリース状のフォロアの中心部にフォロア棒を埋
没させて衝撃等によるフォロアの変形を防止可能として
インクの逆流を阻止する。

【００１０】

【実施例】図１乃至図４は本発明の実施例を示してい
る。先ず、図に示すように本願のボールペンはチップ
９、先軸３、軸筒１、尾栓２１で外観上構成され、筆記
具の最終形態としては先軸部位を被嵌するキャップ１４
を具備する。軸筒１は射出樹脂成形品（通常は透明樹
脂）で、軸筒先端内孔に後述する先軸３が圧着される。
その後方で軸心部には中空のインク収容室２３が設けら
れ、当該インク収容室２３は軸筒内壁より複数箇所で軸
心に向かって延びた短いリブ状の壁２３ａ、やや長めの
リブ状の壁２３ｂ等が入り込んだ横断面形状を呈してい
る。尚、横断面形状のパターンは実施例に限定されるも
のでは無く、軸筒の太さ、長さ、インクの充填量、イン
クの流動性、成形条件等々から適宜設定されるものであ
る。

【００１１】先軸３は先方に先細テーパー状の外周部を
有し、後方に軸部４を一体に有した樹脂成形品で形成さ
れている。又、軸部４は上述した如く軸筒１の先端内孔
に密接状に圧着される。又、先軸３の先端孔にはチップ
９が圧着され、先軸３の内孔にはチップ９の後端に対峙
して弁室５が設けられている。

【００１２】前記弁室５はチップ９の軸心に対しやや偏
倚して設けられ、弁室の肉圧状の一方の周壁８にはイン
ク流入溝（図示せず）が形成されている。又、弁室５の
後端にはテーパー状又は球面状のボール受け座６が設け
られ、ボール受け座６の後方に前記インク収容室２３に
連通する導孔７が貫通している。又、弁室５内にはボー
ル弁１３が遊嵌されて、チップ上向きの際にはボール弁
１３がボール受け座６に密接して後方に位置するインク
の逆流を防止する。又、チップ下向きの際にはボール弁
１３がチップ９の後端に偏倚した状態に当接して上記弁
室の周壁８に設けたインク流入溝を通じてインクがチッ
プ内孔に入る。尚、弁室の設け方は上記実施例に限定さ
れないものである。

【００１３】一方、チップ９はインクが流入可能なチャ
ンネルを有した座に先端ボール１０が略当接した状態で
先端ボール１０が回転自在に抱持されるようカシメられ
ている。又、チップ内孔にスプリング１１が内挿されチ
ップ後方の軸部の後端が前記弁室５の前端に設けた段部
に略当接すると共に、スプリング１１の後端も当接して
抜出不可と成されている。又、チップの軸部の後端が適
宜カシメられてスプリング１１の後端が抜出不能に設け
られてもよい。又、スプリング１１の先方には起立状の
棒軸部１２が形成され、当該棒軸部１２の先端が先端ボ
ール１０の後端に押圧状に当接している。尚、先端ボー
ル１０はその押圧でチップ９のボール抱持部（カシメ等
で形成）の内縁に密接状態と成される。

【００１４】以上により、チップ側が下向きの時に前記
ボール弁１３がチップ後端に当接して、インクが導孔
７、弁室５、インク流入溝を通じてチップ内孔に流入
し、先端ボール１０の後端まで導通する。

【００１５】又、軸筒１のインク収容室２３内には粘性
の低いインク又は静的には高い粘性（油性ボールペンの
インクに比較すると遙に低粘度）を有し、筆記時の先端
ボールの回転で粘性が低下してインクが流出可能となる
剪断減粘性を有したインク１９が充填され、インクの後
端にインクの消耗と共にインク面に接触して追随して移
動可能なグリース状のフォロア２０が充填される。又、
必要に伴いフォロア内に略同等の比重を有した樹脂製の
フォロア棒が埋没状に設けられている。又、軸筒１の後
端には外気と連通する通気孔２２を有した尾栓２１が圧
着される。

【００１６】又、軸筒１の先方外周部には円周溝状の係
止部２ａが設けられており、キャップ１４の内面に設け
られた突条の係止部１４ａが係合してキャップ１４は軸
筒１の先方に着脱自在に止着される。又、キャップ１４
挿入側と反対の側にはクリップ１５の基部が圧着され
る。基部の内面には複数箇所でリブ１６が設けられ、中
心部には非吸液性の弾性体より成るシール栓体１８が固
定されており先端ボール１０が食いつき状に当接され
る。又、クリップ１５の基部にはリブとリブの間に形成
される隙間を通じてキャップ１４内孔と外気を連通する
通気孔１７が設けられている。通気構造は筆先をキャッ
プに装着した際の加圧作用（ポンピング）の防止と幼児
がキャップを飲み込んだ場合の通気手段となる。尚、キ
ャップ１４は軸筒１の後方外周に設けられた円周溝状の
係止部２ｂに着脱自在に止着可能である。

【００１７】

【作用】以上に示したように、軸筒１のインク収容室２
３は複数のリブ状の壁２３ａ、２３ｂを入り込んだ横断
面形状に形成され、軸筒の太さ、長さ、インク搭載量、
成形性、インクの特性に合わせて適正化できる。又、フ
ォロアに適正な摺動抵抗と、落下等の衝撃に対して変形
しにくくすることが可能であり、インクの逆流防止に有
利な作用があり解決課題の１つ目が達成可能となる。

【００１８】２つ目の解決課題としてチップ内に先端ボ
ールを押圧するスプリングを内挿した第１種のボールバ
ルブを設けることでチップのボール抱持部に先端ボール
が密接するのでインクの直流及び逆流と衝撃後の筆記で
筆記掠れが防止される。又、第２種のチップ後端に対峙
した弁室内にボール弁を遊嵌して、チップ上向きでボー
ル弁がボール受け座に密接する第２種のボールバルブを
設けることで上向き筆記でのインクの逆流が防止され
る。上記２種のボールバルブは単独に設けることで概ね
インクの直流、逆流、筆記掠れ、上向き筆記での逆流を
防止する作用がある。

【００１９】実施例は前記２種のボールバルブを併用し
たものを示しており、以下実施例に基づき説明する。図
２はチップ９を上向きにした状態を示しており、その時
ボール弁１３が弁室５のボール受け座６に密接して導孔
７を密閉するので、上向き筆記で先端ボール１０直下の
インクがなくなってもインクが逆流しない。従ってチッ
プ９を下向きにした時にインクが即流出可能となり、筆
記で掠れが防止される。（因みにボール弁を有しない構
造では、上向き筆記でインクのヘッドが逆流方向に作用
するのでチップ内に空気を巻き込み、下向き筆記で即イ
ンクが追随せず掠れが生じる。又、上向き筆記の繰り返
しで空気の巻き込みが徐々に累積される）

【００２０】チップ９を下向きにした筆記前の状態で
は、ボール弁１３がチップ９の後端部に当接状態とな
り、先ず導孔７が開放される。インク収容室２３から導
孔７を経て弁室５内に入ったインク１９はインク流入溝
を通じてチップ９の内孔に流入し、先端ボール１０の後
端まで導通される。尚、この状態ではスプリング１１の
棒軸部１２の押圧で先端ボール１０がチップ抱持部の内
縁に密接されるのでインク１９の直流が防止される。
又、筆圧により先端ボール１０が微小に後退するので隙
間を生じてインクが流出可能となり、筆記により先端ボ
ール１０の回転でインクが流出されて筆記が可能とな
る。

【００２１】尚、先端ボール１０の直下にはチャンネル
（チップ内孔に向かって貫通したインク流入溝を複数箇
所に有した先端ボールの受け座）がありチャンネルの中
心孔にはスプリング１１の棒軸部１２が貫通する。チッ
プ内のインクは上記インク流入溝及び中心孔と棒軸部１
２との間の隙間を通じて先端ボール１０直下に誘導され
る。

【００２２】又、先端ボール１０は常時チップ抱持部の
内縁に密接しているので先端部位の乾燥で筆記掠れが防
止される。又、先端ボール１０とボール弁１３の共同作
用で上向き筆記や衝撃が加わっても空気の巻き込みが緩
和されるので筆記掠れが防止される。尚、インクの直流
及び逆流はスプリング１１による先端ボール１０への押
圧で果たされるが、上記チップ抱持部の加工バラツキに
よる先端ボール１０との密接不完全状態や、チップ抱持
部と先端ボール１０との隙間に固形物が付着した場合の
密接不完全状態を補足して、インクの大きなヘッドを支
えてインクの逆流を確実に防止することと、空気巻き込
みの緩和（掠れ防止）をするよう共同する。

【００２３】又、フォロア２０内にフォロア棒を埋没
（図示せず）することで衝撃に対するフォロア２０の変
形が防止されインクの逆流が完璧に防止される。

【００２４】

【発明の効果】本発明のボールペンの構成及び作用は以
上の如くであり、粘性の低いインク又は剪断減粘性を有
したインクを太径の軸筒に直に搭載した使い捨てのボー
ルペンが部材の省略で安価に提供可能となる。しかも使
い勝手の良い握り太さで、チップの筆記寿命とバランス
のとれたインク搭載と透明な軸筒に於いてのインクの見
栄えが良く、インクの逆流防止効果も実使用上問題のな
い範囲で期待できる。又、２種のボールバルブ機構の組
み込み、２種のボールバルブの併用による組み込み、フ
ォロア棒の組み込み等の適宜組み合わせでインクの直流
及び逆流防止と衝撃後の筆記掠れが防止可能となる高品
質のボールペンが提供可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例であるボールペン全体の縦断面
図で、チップが上向きの状態を示している。

【図２】実施例であるボールペンの前半部を拡大した縦
断面図で、チップが上向きの状態を示している。

【図３】ボールペンの後半部を拡大した立て断面図であ
る。

【図４】軸筒のインク収容室を横断面した拡大図であ
る。

【符号の説明】

１ 軸筒 ２ａ 係止部 ２ｂ 係止部 ３ 先軸 ４ 軸部 ５ 弁室 ６ ボール受け座 ７ 導孔 ８ 周壁 ９ チップ １０ 先端ボール １１ スプリング １２ 棒軸部 １３ ボール弁 １４ キャップ １５ クリップ １６ リブ １７ 通気孔 １８ シール栓体 １９ インク ２０ フォロア ２１ 尾栓 ２２ 通気孔 ２３ インク収容室 ２３ａ リブ状の壁 ２３ｂ リブ状の壁

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 先端にボールペンのチップを、チップの
   後方にインクが充填された軸筒を有して成るボールペン
   に於いて、軸筒は透明な射出成形軸であって軸心部には
   中空のインク収容室が設けられ、インク収容室は軸筒内
   壁より複数箇所で軸心に向かって延びたリブ状の壁が入
   り込んだ横断面形状を成し、インク収容室には低粘度の
   インク又は剪断減粘性を有したインクとインクの後端に
   インクの消耗と共に追随するグリース状のフォロアが充
   填され、さらにチップ内孔にスプリングが内挿されてス
   プリングがチップ後端より抜出不能に設けられ、スプリ
   ングの先方でチップ先端部に回転自在に抱持された先端
   ボールの後端を押圧して、先端ボールがチップのボール
   抱持部の内縁に密接されて成るボールペン。
2. 【請求項２】 先端にボールペンのチップを、チップの
   後方にインクが充填された軸筒を有して成るボールペン
   に於いて、軸筒は透明な射出成形軸であって軸心部には
   中空のインク収容室が設けられ、インク収容室は軸筒内
   壁より複数箇所で軸心に向かって延びたリブ状の壁が入
   り込んだ横断面形状を成し、インク収容室には低粘度の
   インク又は剪断減粘性を有したインクとインクの後端に
   インクの消耗と共に追随するグリース状のフォロアが充
   填され、さらにチップ後端に対峙して弁室が、弁室の後
   端にボール受け座とインク収容室に連通して導孔が設け
   られ、弁室内にボール弁が遊嵌されてチップ上向きでボ
   ール弁がボール受け座に密接してインクの逆流が防止さ
   れ、チップ下向きでインクがチップ内孔に疎通可能とな
   るように構成されて成るボールペン。
3. 【請求項３】 グリース状のフォロアの中心部にフォロ
   アと略同等の比重を有する樹脂製のフォロア棒を埋没さ
   せたことを特徴とする請求項１または２に記載のボール
   ペン。
4. 【請求項４】 請求項１と請求項２を同時に満足して構
   成されたことを特徴とするボールペン。