JP3470665B2 - ガソリン機関のブローバイガス処理装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、ガソリン機関の
クランクケース内に漏れ出たブローバイガスを吸気系に
戻すようにしたガソリン機関のブローバイガス処理装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】ガソリン機関においては、クランクケー
ス内に漏れ出たブローバイガスによって潤滑油の劣化が
促進される問題があり、従来から、クランクケース内へ
新気を導入するとともにクランクケース内からブローバ
イガスを取り出して吸気系へ戻すようにしたブローバイ
ガス処理装置が用いられている。

【０００３】このブローバイガス処理装置は、実開平５
−８７２１１号公報や特開平８−９３４３６号公報等に
記載されているように、一般に、吸気系のスロットル弁
上流側と機関本体の例えばシリンダヘッドとの間に新気
通路が設けられているとともに、吸気系のスロットル弁
下流側とクランクケースとの間にブローバイガス通路が
設けられており、かつこのブローバイガス通路に、スロ
ットル弁下流側の負圧に応じて開度が変化する流量制御
弁（いわゆるＰＣＶバルブ）を備えた構成となている。
このものでは、高負荷領域を除く通常の運転条件下で
は、スロットル弁下流側の吸気系に十分な負圧が発生す
るので、上記新気通路からシリンダヘッド内を経由して
クランクケース内へ新気が導入され、かつこの新気に押
し出されるような形で、ブローバイガスがブローバイガ
ス通路を介してスロットル弁下流側の吸気系に戻り、燃
焼室に導かれる。つまり、クランクケース内が常に新気
によって換気され、ブローバイガスによる潤滑油の劣化
が抑制されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】近時のガソリン機関に
おいては、燃料消費率の向上のために、スロットル弁に
よるポンピングロスを低減する種々の試みがなされてい
る。例えば、筒内直噴型として超希薄燃焼を実現するこ
とにより、相対的にスロットル開度が大きくなり、ポン
ピングロスの低減が可能である。さらに、一部では吸気
弁開閉時期の制御等によりスロットル弁を用いずに吸入
空気量を制御することも試みられている。しかし、この
ようなポンピングロスの低減は、同時に、スロットル弁
下流側の負圧が相対的に弱くなることを伴う。

【０００５】そのため、運転条件によっては、ブローバ
イガスの換気に十分なだけの負圧を生成し得ないことが
あり、クランクケース内のブローバイガス濃度が高くな
って、潤滑油の劣化が促進されてしまう虞がある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係るガソリン機
関のブローバイガス処理装置は、ガソリン機関のクラン
クケース内と吸気系とを連通するブローバイガス通路
と、吸気系の上流側から上記クランクケース内へ新気を
導入するように設けられた新気通路と、上記ブローバイ
ガス通路に設けられ、かつ上記クランクケース内からブ
ローバイガスを吸引して吸気系側へと吐出する負圧ポン
プと、を備えていることを特徴としている。

【０００７】上記負圧ポンプは、機関出力によって常時
駆動される機械式ポンプあるいはモータにより駆動され
る電動式ポンプなどが用いられる。この負圧ポンプの作
動によって、クランクケース内からブローバイガスが吸
引され、かつこれに伴い、新気通路を介してクランクケ
ース内へ新気が導入される。従って、機関の運転条件に
よらずクランクケース内を確実に換気できる。そして、
この新気とともに吸引されたブローバイガスは、機関の
吸気系へと送られる。

【０００８】請求項２に記載のように、上記負圧ポンプ
の吸入側が、さらに車両ブレーキ系のマスターバッグに
接続されており、上記負圧ポンプが該マスターバッグ用
の負圧ポンプを兼ねているように構成することもでき
る。

【０００９】前述したようにポンピングロスの低減のた
めに吸入負圧が弱くなると、車両ブレーキ系におけるマ
スターバッグ用の負圧も不十分となることが考えられ、
負圧ポンプが必要となる場合がある。ここで、請求項２
のように、１つのポンプをブローバイガス処理装置とブ
レーキ系とで共用するようにすれば、車両への搭載性に
優れ、かつコスト的にも有利となる。

【００１０】また本発明は、上記ブローバイガス通路の
上記負圧ポンプと上記吸気系との間に、最大流量を制限
するオリフィスが介装されている。上記オリフィスとし
ては、所定の通路断面積を有する固定オリフィスのほ
か、前後の圧力差が大きいほど開度が大となる可変オリ
フィスを用いることもできる。このオリフィスによっ
て、負圧ポンプの作動状態に拘わらず機関の吸気系へ流
れる新気ならびにブローバイガスの最大流量が規制さ
れ、燃焼の不安定化を回避できる。特に、負圧ポンプを
機関クランク軸に連動させて駆動する場合には、ポンプ
の回転数が機関回転数に依存することになるが、機関高
速域でも過大な流量が吸気系へ流れることはない。

【００１１】また、本発明では、上記ブローバイガス通
路の上記オリフィスの上流側位置と上記負圧ポンプの吸
入側とを接続した戻り通路を備えている。

【００１２】さらに、請求項３の発明では、上記戻り通
路に、上記負圧ポンプの吐出側から吸入側への流れのみ
を許容し、かつ所定の差圧で開弁する逆止弁が介装され
ている。

【００１３】このように戻り通路を設けることにより、
過剰となった新気ならびにブローバイガスの一部が負圧
ポンプの吸入側へ戻り、オリフィスによって最大流量が
確実に制限される。

【００１４】

【発明の効果】この発明に係るガソリン機関のブローバ
イガス処理装置によれば、吸入負圧が十分に得られない
場合でも、機関の運転条件によらずクランクケース内を
確実に換気することができ、クランクケース内のブロー
バイガス濃度を低く保って、潤滑油の劣化を抑制でき
る。

【００１５】特に、請求項２のように車両ブレーキ系に
おける負圧ポンプと兼用すれば、実質的にポンプやその
駆動機構といった構成部品の増加を伴うことなく、ブロ
ーバイガスの強制的な処理を実現できる。

【００１６】また、本発明によれば、燃焼の不安定化を
回避することができる。特に、車両ブレーキ系の負圧ポ
ンプと兼用した場合には、ポンピングブレーキなどによ
り負圧ポンプを通る流量が増加しやすいが、機関の吸気
系へ流れる最大流量を確実に規制でき、燃焼の不安定化
を回避できる。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、この発明の好ましい実施の
形態を図面に基づいて詳細に説明する。

【００１８】まず、図１に示す参考例に基づいて、この
発明を車両用ガソリン機関１に適用した場合の基本的な
構成を説明する。このガソリン機関１は、例えば図示せ
ぬ燃料噴射弁がシリンダ内へ向けて配置された筒内直噴
型として構成され、超希薄燃焼を実現できるものとなっ
ている。このガソリン機関１の吸気ポートに連なる吸気
通路２は、スロットル弁３を具備し、かつその上流側
に、エアクリーナ４が介装されている。そして、スロッ
トル弁３とエアクリーナ４との間に新気通路５の一端が
接続され、かつシリンダヘッドカバー６に他端が接続さ
れている。上記シリンダヘッドカバー６内の空間とクラ
ンクケース７内の空間とは、図示せぬ潤滑油落とし孔や
チェーン通路等を介して互いに連通している。

【００１９】また、クランクケース７内からブローバイ
ガスを取り出すようにブローバイガス通路８の一端がク
ランクケース７に接続され、かつその他端は、スロット
ル弁３下流側で吸気通路２に接続されている。そして、
このブローバイガス通路８に、負圧ポンプ９が介装され
ている。つまり、上記ブローバイガス通路８は、第１ブ
ローバイガス通路８ａと第２ブローバイガス通路８ｂと
からなり、第１ブローバイガス通路８ａがクランクケー
ス７と負圧ポンプ９吸入側とを連通し、第２ブローバイ
ガス通路８ｂが負圧ポンプ９吐出側と吸気通路２とを連
通している。上記負圧ポンプ９は、機関のクランク軸に
連動して常時駆動される機械式の構成であり、往復動型
あるいはスクリューポンプ等の適宜な形式のものを利用
することができる。

【００２０】さらに、上記負圧ポンプ９の吸入側には、
同時に、負圧通路１１の一端が接続されており、この負
圧通路１１の他端が、車両ブレーキ系のマスターバッグ
１０の負圧取り入れ口に接続されている。

【００２１】図１には、通常の運転中における新気の流
れが白抜き矢印で、ブローバイガスの流れが斜線を施し
た矢印で、マスターバッグ吸入空気の流れが黒塗り矢印
で、それぞれ示されている。

【００２２】これらの矢印で示すように、機関１の運転
に伴って負圧ポンプ９が作動すると、クランクケース７
内の圧力が低下し、新気通路５を介してスロットル弁３
上流側からシリンダヘッドカバー６内に新気が導入され
る。この新気は、シリンダヘッドカバー６内の空間を掃
気した後、クランクケース７内に入り、この新気ととも
にクランクケース７内からブローバイガスが負圧ポンプ
９によって吸引される。そして、第２ブローバイガス通
路８ｂを通して吸気通路２に導入され、最終的に燃焼室
に送られる。また、同時にマスターバッグ１０にも負圧
ポンプ９によって負圧が供給される。つまり、マスター
バッグ１０から空気が吸入され、ブローバイガスととも
に吸気通路２へと排出される。なお、このマスターバッ
グ１０からの吸入空気による空燃比への影響は、吸気管
負圧の検出等による種々の公知の方法によって補正ない
しは排除することが可能である。

【００２３】上記のように負圧ポンプ９を用いてブロー
バイガスを強制的に吸気系に送り込むようにした構成に
よれば、スロットル弁３下流の負圧の状況に拘わらず、
ブローバイガスを確実に処理でき、クランクケース７内
のブローバイガス濃度を低く保つことができる。

【００２４】図２は、この発明の第１の実施例を示すも
ので、以下、前述した図１と異なる部分について説明す
る。この実施例では、負圧ポンプ９の吐出側に接続され
た第２ブローバイガス通路８ｂに、オリフィス２１が介
装されており、かつこのオリフィス２１より上流側つま
り負圧ポンプ９に近い位置から戻り通路２２が分岐して
いる。この戻り通路２２の先端は、負圧ポンプ９の吸入
側に接続された第１ブローバイガス通路８ａに接続され
ている。

【００２５】従って、この実施例によれば、オリフィス
２１によって、吸気通路２へと流れる最大流量が規制さ
れ、余剰のブローバイガス等は戻り通路２２を介して循
環するので、過度に新気およびブローバイガスが吸気通
路２へ導入されることがない。そのため、負圧ポンプ９
の回転数が高くなる高速域などにおいても、ブローバイ
ガスが大量に燃焼室に流入して燃焼が悪化することがな
い。

【００２６】次に、図３は、この発明の第２の実施例を
示すもので、上記第１実施例と同様にオリフィス２１お
よび戻り通路２２を備えている。そして、この実施例に
おいては、上記戻り通路２２に、さらに逆止弁２３が介
装されている。この逆止弁２３は、負圧ポンプ９の吐出
側から吸入側へ向かう流れ、つまり第２ブローバイガス
通路８ｂから第１ブローバイガス通路８ａへの流れのみ
を許容するものであり、かつ所定の差圧で開弁する構成
となっている。具体的には、オリフィス２１により規制
される流量が所定の最大流量に達するときの最大差圧に
近い値の差圧でもって、開弁するようになっている。

【００２７】従って、この実施例においては、吸気通路
２へ流れる流量が最大流量に近づくまでは逆止弁２３に
よって負圧ポンプ９吸入側への循環が阻止され、負圧ポ
ンプ９から吐出された全量が吸気通路２へと流れる。従
って、ポンピングブレーキ等によりマスターバッグ１０
から大量の空気を吸引する必要がある場合でも、確実に
負圧を供給することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の基本的な構成を示す構成説明図。

【図２】この発明の第１の実施例を示す構成説明図。

【図３】この発明の第２の実施例を示す構成説明図。

【符号の説明】 １…ガソリン機関 ５…新気通路 ７…クランクケース ８…ブローバイガス通路 ９…負圧ポンプ １０…マスターバッグ ２１…オリフィス ２２…戻り通路 ２３…逆止弁

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ガソリン機関のクランクケース内と吸気
   系とを連通するブローバイガス通路と、吸気系の上流側
   から上記クランクケース内へ新気を導入するように設け
   られた新気通路と、上記ブローバイガス通路に設けら
   れ、かつ上記クランクケース内からブローバイガスを吸
   引して吸気系側へと吐出する負圧ポンプと、を備えてい
   るとともに、 上記ブローバイガス通路の上記負圧ポンプと上記吸気系
   との間に、最大流量を制限するオリフィスが介装されて
   おり、 かつ上記ブローバイガス通路の上記オリフィスの上流側
   位置と上記負圧ポンプの吸入側とを接続した戻り通路を
   備えている ことを特徴とするガソリン機関のブローバイ
   ガス処理装置。
2. 【請求項２】 上記負圧ポンプの吸入側が、さらに車両
   ブレーキ系のマスターバッグに接続されており、上記負
   圧ポンプが該マスターバッグ用の負圧ポンプを兼ねてい
   ることを特徴とする請求項１記載のガソリン機関のブロ
   ーバイガス処理装置。
3. 【請求項３】 上記戻り通路に、上記負圧ポンプの吐出
   側から吸入側への流れのみを許容し、かつ所定の差圧で
   開弁する逆止弁が介装されていることを特徴とする請求
   項１または２に記載のガソリン機関のブローバイガス処
   理装置。