JP3468072B2 - 低降伏比形鋼の製造方法 - Google Patents
低降伏比形鋼の製造方法Info
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Description
鉄鋼構造物に用いられる低降伏比形鋼の製造方法に関す
る。
われた時、柱・梁部材の塑性変形により地震エネルギー
を吸収させ、大崩壊を回避するという人的安全性を重視
した限界状態設計法が適用される。したがって、限界状
態設計法で使用される柱・梁部材には、高い塑性変形能
の目安として降伏比(YR)が低いこと、つまり低降伏
比が望まれ、降伏比が低い材料ほど塑性変形能が優れて
いると言われている。
する要望としては、塑性変形の観点から強度を確保でき
る範囲で可能な限り低い方が好ましく、590N/mm
2 級の場合でYRの許容範囲としては80%以下として
いるものの、75%が目標値として挙げられている。低
降伏比化については、一般的に焼入れと焼戻し処理の間
に二相域に加熱する中間熱処理を施す方法等に代表され
るように、軟質相としてのフェライトと硬質相としての
ベイナイトあるいはマルテンサイトを混在させたフェラ
イト+硬質相組織により達成されることが知られてい
る。このフェライト+硬質相組織を得るための従来技術
としては、上述した焼入れ−二相域焼入れ−焼戻し処理
する方法や、熱間圧延後フェライトとオーステナイトの
二相域まで待機した後加速冷却する方法などが挙げられ
るが、これらの技術では複雑な熱処理工程の必要や焼き
入れ開始までの待機時間の長期化による生産性の低下が
避けられない。
は特公平7−74379号公報や特開平5−27176
1号公報の技術が開示されている。特公平7−7437
9号公報、特開平5−271761号公報とも、熱間圧
延後にAr3 −20℃以下、Ar3 −100℃以上まで
予備冷却を行った後鋼板表面がAr3 −100℃以上に
復熱させ、再び15℃/秒を超える冷却速度で400〜
600℃まで冷却するというものである。
7−74379号公報、特開平5−271761号公報
には冷却間の復熱時間についての規定がないため、低降
伏比に適した組織に制御し難く、低降伏比鋼の製造安定
性の低下は避けられない。また、形鋼の製造における水
冷設備は一般には鋼板の水冷設備に比べ冷却能力が劣
り、15℃/秒を超える冷却速度で冷却することは難し
い。従って、このような高冷却速度を用いなくても、低
降伏比形鋼を生産性を損なうことなく安価にかつ大量に
製造し得る技術が必要となっている。本発明の目的は、
高層建築物などに用いる降伏比が75%以下の形鋼を安
価で大量に安定して製造できる、低降伏比形鋼の製造方
法を提供することにある。
達成するため、本発明は以下に示す手段を用いている。 (1)本発明の製造方法は、重量%で、C:0.04〜
0.18%と、Si:0.05〜0.5%と、Mn:
0.6〜1.7%と、P≦0.05%と、S≦0.01
%と、Al≦0.08%と、N≦0.008%とを含有
し、残部がFe及び不可避的不純物からなる形鋼を製造
する方法において、鋼を1000℃以上に加熱後、Ar
3以上の温度域において減面率が50%以上の熱間圧延
を行う工程と、熱間圧延された鋼材をAr3以上からA
r3−100℃〜Ar3−20℃の温度域まで1℃/秒以
上の冷却速度で加速冷却し、待機温度:T(℃)=Ar
3−100℃〜Ar3−20℃において下記(1)式を満
たす待機時間:t(秒)の待機を行う工程と、フランジ
厚さ:h(mm)の鋼材を400〜600℃の温度域ま
で、下記(2)式を満たす冷却速度:v(℃/秒)で加
速冷却し、引張強度が490N/mm 2 以上で、かつ降
伏比が75%以下の低降伏比形鋼とする工程と、を備え
たことを特徴とする低降伏比形鋼の製造方法である。
ogh …(2) 但し、h:フランジ厚さ(mm) (2)本発明の製造方法は、鋼成分として、重量%でさ
らに、Cu:0.05〜1%、Ni:0.05〜0.8
%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.01〜1%、N
b:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%
及びTi:0.005〜0.03%の群から選択された
1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記
(1)に記載の低降伏比形鋼の製造方法である。
機及び熱処理することなく、低降伏比形鋼を製造する技
術を得るため、鋼材の強度、降伏比に及ぼす待機温度と
待機時間、さらに待機後の冷却速度の影響について鋭意
検討した結果、以下の知見を得るに至った。図1は、
0.14C−0.25Si−1.2Mn鋼を1250℃
に加熱し、減面率80%の圧下を加え、Ar3点(771
℃)より高い900℃でフランジ厚さ20mmのH形鋼
に圧延し、その後2℃/秒で所定の温度まで冷却、保持
し、さらに550℃まで冷却した場合の引張特性(引張
強度、降伏比(YR))を示す。図1に示すように、待
機温度:T(℃)=Ar3−100℃〜Ar3−20℃に
おいて10 1.2-0.01×ΔT ≦t≦150秒(ΔT=Ar
3−T)待機することにより引張強度が490N/mm2
以上(強度確保)で、かつ降伏比が75%以下となるこ
とが明らかである。
4Mn−0.04V鋼を1280℃に加熱し、Ar3 点
(757℃)より高い950℃で、フランジ厚さ(h)
16mm、40mm、100mmのH形鋼に圧延し、そ
の後1.2℃/秒で700℃まで冷却し、20秒保持
後、種々の冷却速度で500℃まで冷却した場合の引張
特性を示す。図2に示されるように形鋼においてlog
v≧0.9−0.4loghとすることにより降伏比が
75%以下となることが明らかである。
量の化学成分を有する鋼に施す熱間圧延条件及び加速冷
却条件(2段冷却時の待機温度、待機時間と2段目の冷
却速度を含む)を一定範囲内に制御するようにして、鋼
組織をフェライト+ベイナイトの混合組織とし、圧延ま
まで490N/mm2 以上の引張強度と75%以下の低
降伏比を達成できる低降伏比形鋼の製造方法を見出し、
本発明を完成させた。
を下記範囲に限定することにより、高層建築物などに用
いる降伏比が75%以下の形鋼を安価で大量に安定して
製造できる、低降伏比形鋼の製造方法を提供することが
できる。以下に本発明の成分添加理由、成分限定理由、
及び製造条件の限定理由について説明する。
るが、0.18%を超えて多量に含有させると靭性ある
いは溶接性が劣化するため、その範囲は0.04〜0.
18%である。
り、低降伏比確保の観点からその含有量は0.05%以
上であるが、Si含有量が0.5%を超えるとHAZ
(熱影響部)靭性及び溶接性の観点から好ましくない影
響を及ぼすため、その範囲は0.05〜0.5%であ
る。
抑制のため0.6%以上は必要であるが、1.7%を超
える多量の添加は鋼の焼入れ性の増加を引き起こし、溶
接時に硬化層が出現して割れ感受性が高くなるため、そ
の範囲は0.6〜1.7%である。 P≦0.05%、S≦0.01% P、Sは、鋼中に混入する不純物として不可避的に存在
するが、Pの低減は粒界破壊の防止に有効であり、Sの
低減は溶接熱影響部の水素割れ防止に有効であるため、
P、Sの含有範囲はそれぞれ0.05%以下、0.01
%以下である。
させると鋼の清浄度を悪くし、溶接部の靭性劣化を招く
ため、その範囲は0.08%以下である。
N量が多くなるとHAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブキ
ズの発生を助長するため、その範囲は0.008%以下
である。
成分群の1種または2種以上を添加してもよい。 (選択成分群) Cu:0.05〜1% Cuは、強度上昇及び靭性改善に非常に有効な元素であ
るが、含有量が0.05%未満では十分な効果が発揮さ
れず、1%を超えると析出硬化が著しくまた鋼材表面に
割れが生じやすいため、Cuを添加する場合には、その
範囲は0.05〜1%である。
するが、その含有量が0.05%未満では十分な効果が
得られず、0.8%を超える添加はコストアップにつな
がるため、Niを添加する場合には、その範囲は0.0
5〜0.8%である。 Cr:0.05〜1% Crは、焼入性向上に有効な元素であるが、その含有量
が0.05%未満では効果が小さく、1%を超えると溶
接性やHAZ靭性を劣化させるため、Crを添加する場
合には、その範囲は0.05〜1%である。 Mo:0.01〜1% Moは、焼入性を高めるとともに焼戻し軟化抵抗を高
め、強度上昇に有効であるが、その含有量が0.01%
未満ではその効果が十分に発揮されず、1%を超えると
溶接性を劣化させるとともに炭化物の析出により降伏比
が上昇するため、Moを添加する場合にはその範囲は
0.01〜1%である。
向上に有効に作用する元素であるが、その含有量が0.
005%未満では効果が発揮されず、0.1%超えの添
加は過度の析出効果により降伏比低下の妨げになるた
め、Nbを添加する場合には、その範囲は0.005〜
0.1%である。
抵抗を高める元素であるが、その含有量が0.005%
未満ではその効果が十分に発揮されず、0.1%を超え
て添加すると溶接性を劣化させるため、Vを添加する場
合にはその範囲は0.005〜0.1%である。
HAZ靭性の向上に寄与する元素である。0.005%
未満のTi添加ではHAZ靭性向上効果が発揮されな
い。0.03%を超えて添加すると、溶接の冷却過程で
TiCが析出し、HAZ靭性の劣化を招くため、Tiを
添加する場合にはその範囲は0.005〜0.03%で
ある。
り、高層建築物などに用いる降伏比が75%以下の形鋼
を、圧延後の板熱処理を必要とすることなく安価で大量
に安定して得ることが可能となる。
により、製造することができる。 (2)鋼材製造工程 (製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を溶製
し、連続鋳造で得られた鋼材を1000℃以上に加熱
後、Ar3 以上の温度域において減面率が50%以上の
熱間圧延を行い、次いでAr3 −100℃〜Ar3 −2
0℃の温度域まで1℃/秒以上の冷却速度で加速冷却す
る。続いて、加速冷却された鋼材を待機温度:T(℃)
=Ar3 −100℃〜Ar3 −20℃において下記
(1)式を満たす時間t秒の待機を行った後、400〜
600℃の温度域まで、下記(2)式を満たす冷却速度
v(℃/秒)で加速冷却を行う。
ogh …(2) 但し、h:フランジ厚さ(mm) a.鋼の加熱温度:1000℃以上 鋼を1000℃以上に加熱するのは、良好な熱間加工性
を得るためである。
の発達を抑制して、超音波探傷の測定精度に悪影響を及
ぼす音響異方性をなくすためである。
り粗大化した組織を再結晶させ、強度と靭性を向上させ
るためである。 d.待機前の加速冷却速度:1℃/秒以上 圧延終了後からAr3 −100℃〜Ar3 −20℃まで
の加速冷却速度を1℃/秒以上とするのは、圧延後から
Ar3 −100℃〜Ar3 −20℃までの加速冷却過程
においてフェライトが多量に析出することを抑えるため
である。これにより、組織が主にその後の待機中での等
温変態によって制御されることとなり、組織制御の精度
を向上させることが可能となる。 e.待機温度T(℃):Ar3 −100℃〜Ar3 −2
0℃、待機時間t(秒):10 1.2-0.01×ΔT ≦t≦1
50秒、但し、ΔT=Ar3 (℃)−T(℃) 前記図1で説明したように、待機温度T(℃)を比較的
短時間でフェライトが析出するAr3 −100℃〜Ar
3 −20℃とし、待機時間を10 1.2-0.01×ΔT ≦t≦
150秒(ΔT=Ar3 −T)とすることにより所定の
フェライト分率に制御し、その後の更なる加速冷却によ
り残りのオーステナイトを硬質のベイナイトとし最終的
にフェライト+ベイナイト組織として降伏比≦75%を
達成する。また、待機時間の上限は生産性を損なわない
ように150秒である。待機温度がAr3 −20℃より
高温になるとフェライトの生成速度が遅いため、低降伏
比に有効な十分なフェライトを得るためには多くの待機
時間が必要となり生産性を損なう。一方、Ar3 −10
0℃未満となると短時間の待機においてもフェライトが
過度に生成するため、強度を確保し難くなる。
≦75%)の観点から、待機温度T(℃)はAr3 −1
00℃〜Ar3 −20℃、待機時間t(秒)は10
1.2-0.01×ΔT ≦t≦150秒(但し、ΔT=Ar3
(℃)−T(℃))である。 f.待機後の加速冷却速度v(℃/秒):0.9−0.
4logh≦logv≦2.6−0.9logh ここ
で、h:フランジ厚さ(mm) 前記図2で説明したように、前記の成分範囲でフランジ
厚を考慮すると待機後の未変態オーステナイトから硬質
なベイナイトを得るためには、logv≧0.9−0.
4loghを満たす冷却速度が必要である。工業的に一
般に用いられている水冷設備では厚さが厚くなるほど高
冷却速度が得られ難い。本発明者らが鋭意検討した結
果、0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.
9logh(ここで、h:鋼材(フランジ)の厚さ(m
m))とすることにより、75%以下の降伏比が得られ
ることが明らかとなったため、待機後の加速冷却速度は
0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9l
ogh(ここで、h:フランジ厚さ(mm))である。
600℃ 待機後の加速冷却停止温度を400℃未満とすると、加
速冷却時に生成した島状マルテンサイトが分解せずに残
存するため靭性が悪化する。一方、加速冷却停止温度が
600℃超えでは、ベイナイト変態が十分進行しないた
め強度を確保することが難しくなる。
条件の採用により生産性を損なうことなく490N/m
m2 以上の強度と75%以下の降伏比を確保できる。以
下に本発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
級の本発明鋼A及びBを用い、表2に示すように圧延、
冷却条件を変えて製造した形鋼(本発明例:No.1,
2,6〜8,10,11,13〜16、比較例:No.
3〜5,9,12)の機械的性質を調べた。表2に引張
特性(JIS Z 2241に準拠のYS,TS,Y
R)を併記する。
明の待機温度を満足しないため、フェライトが過度に生
成し、目標強度(490MPa)を確保できない。ま
た、比較例No.4は待機後の冷却速度が本発明条件よ
り遅いため、比較例No.5は待機時間が本発明条件よ
り短いためYR(降伏比)が高い。さらに、比較例N
o.9は圧延後放冷したため、目標強度(490MP
a)に達せず、比較例No.12は待機温度が本発明条
件より高いためフェライトが十分に生成せず、YRが高
い。
〜8,10,11,13〜16はいずれも本発明条件を
満たすため、490MPa以上の十分な引張強度(T
S)と75%以下の降伏比(YR)を示している。
a級の本発明鋼C及びD、590MPa級の本発明鋼E
を用い、表3に示すように圧延、冷却条件を変えて製造
した形鋼(本発明例:No.17〜28)の機械的性質
を調べた。表3に引張特性(JIS Z2241に準拠
のYS,TS,YR)を併記する。
24(490MPa級の本発明鋼C,D)はいずれも本
発明条件を満たすため、490MPa以上の十分な引張
強度(TS)と75%以下の降伏比(YR)を示し、ま
た本発明例No.25〜28(590MPa級の本発明
鋼E)はいずれも本発明条件を満たすため、590MP
a以上の十分な引張強度(TS)と75%以下の降伏比
(YR)を示している。
特定することにより、高層建築物などに使用される降伏
比が75%以下の低降伏比形鋼を、圧延ままで製造する
ことができ、熱処理を施す必要がないため、生産性と経
済性を著しく高めることができる。
に及ぼす待機温度と待機時間の影響を示した図。
す待機後の冷却速度の影響を示した図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.04〜0.18%
と、Si:0.05〜0.5%と、Mn:0.6〜1.
7%と、P≦0.05%と、S≦0.01%と、Al≦
0.08%と、N≦0.008%とを含有し、残部がF
e及び不可避的不純物からなる形鋼を製造する方法にお
いて、 鋼を1000℃以上に加熱後、Ar3以上の温度域にお
いて減面率が50%以上の熱間圧延を行う工程と、 熱間圧延された鋼材をAr3以上からAr3−100℃〜
Ar3−20℃の温度域まで1℃/秒以上の冷却速度で
加速冷却し、待機温度:T(℃)=Ar3−100℃〜
Ar3−20℃において下記(1)式を満たす待機時
間:t(秒)の待機を行う工程と、フランジ厚さ:h(mm)の鋼材 を400〜600℃の
温度域まで、下記(2)式を満たす冷却速度:v(℃/
秒)で加速冷却し、引張強度が490N/mm 2 以上
で、かつ降伏比が75%以下の低降伏比形鋼とする工程
と、を備えたことを特徴とする低降伏比形鋼の製造方
法。10 1.2-0.01×ΔT ≦t≦150秒 …(1) 但し、ΔT=Ar3(℃)−T(℃) 0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9l
ogh …(2) 但し、h:フランジ厚さ(mm) - 【請求項2】 鋼成分として、重量%でさらに、Cu:
0.05〜1%、Ni:0.05〜0.8%、Cr:
0.05〜1%、Mo:0.01〜1%、Nb:0.0
05〜0.1%、V:0.005〜0.1%及びTi:
0.005〜0.03%の群から選択された1種または
2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載
の低降伏比形鋼の製造方法。
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JP34515697A JP3468072B2 (ja) | 1997-12-15 | 1997-12-15 | 低降伏比形鋼の製造方法 |
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1997
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