JP3417022B2 - 能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置

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JP3417022B2
JP3417022B2 JP31374193A JP31374193A JP3417022B2 JP 3417022 B2 JP3417022 B2 JP 3417022B2 JP 31374193 A JP31374193 A JP 31374193A JP 31374193 A JP31374193 A JP 31374193A JP 3417022 B2 JP3417022 B2 JP 3417022B2
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  • Filters That Use Time-Delay Elements (AREA)
  • Cable Transmission Systems, Equalization Of Radio And Reduction Of Echo (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば車両エンジン
等の騒音源から車室等の空間内に伝達される周期的な騒
音に制御音を干渉させることにより騒音の低減を図る能
動型騒音制御装置及び車両エンジン等の振動源から発せ
られ車体等を伝搬する周期的な振動に制御振動を干渉さ
せることにより振動の低減を図る能動型振動制御装置に
関し、特に、騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を
フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタでフィルタ
処理して制御音源又は制御振動源の駆動信号を生成し、
騒音又は振動の低減状態に応じて適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数を適応アルゴリズムに従って更新する
ようになっている装置において、その適応ディジタルフ
ィルタのフィルタ係数の更新処理を装置の大幅な複雑化
等を招くことなく安定して行えるようにしたものであ
る。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の装置として、英国特許第
2149614号や特表平1−501344号等に記載
のものがある。これら従来の装置は、航空機の客室やこ
れに類する閉空間に適用される騒音低減装置であって、
閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源は、
基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒音を
発生するという条件の下において作動するものである。
【0003】具体的には、閉空間内の複数の位置に設置
され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制
御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源
の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0
n 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、
もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウ
ドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】そして、ラウドスピーカから発せられる制
御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.
63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANCELLATION :
PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WI
DROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアル
ゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明
者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND
ITS APPLICATION TOTHE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND
VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PRO
CESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べ
られている。
【0005】即ち、LMSアルゴリズムは、適応型ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なア
ルゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFilte
red−X LMSアルゴリズムにあっては、ラウドス
ピーカからマイクロフォンまでの音響伝達特性を表すフ
ィルタを全てのラウドスピーカとマイクロフォンとの組
み合わせについて設定し、騒音源の騒音発生状態を表す
基準信号をそのフィルタで処理した値と、各マイクロフ
ォンが検出した残留騒音とに基づいた所定の評価関数の
値が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設けられた
フィルタ係数可変のディジタルフィルタのフィルタ係数
を更新している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ここで、上述したLM
Sアルゴリズムのような「勾配アルゴリズム」に基づく
制御アルゴリズムを適用して適応ディジタルフィルタの
フィルタ係数を逐次更新する場合、フィルタ係数更新の
基礎となる評価関数の値(例えば、誤差の二乗和若しく
は二乗平均値)は、その適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数に応じて評価関数の値が形成する曲面(誤差曲
面)を下るように最適値に収束していくことになる。
【0007】そして、その誤差曲面を評価関数の軸方向
から見た形、即ち、誤差曲面の等高線の形状は、騒音の
発生状態を表す基準信号の周波数と、その基準信号のサ
ンプリング周波数とによって決まるものであり、例えば
適応ディジタルフィルタが二つのフィルタ係数W0 ,W
1 からなる有限インパルス応答関数型のディジタルフィ
ルタである場合、それらフィルタ係数W0 ,W1 によっ
て形成される誤差曲面の等高線の形状は、図7に示すよ
うに、W0 −W1 軸に対して45度だけ傾いた楕円にな
るのが最も一般的である。
【0008】また、その楕円の短径と長径との比aは、
騒音の周波数である基準信号の周波数をfn 、基準信号
のサンプリング周波数をfs とすれば、下記の(1)式
のようになることが判っている。 a={(1+cos(2πfn /fs ))/(1-cos(2πfn /fs ))}1/2 ……(1) 例えば、実際の車両に適用される能動型騒音制御装置で
エンジンから伝達される周期的な騒音であるこもり音の
低減を図る場合を考えると、騒音の周波数fnは40〜
50Hzの範囲であり、通常の演算プロセッサにおける
基準信号のサンプリング周波数fs は700〜800H
zであるから、fn =40Hz、fs =800Hzと仮
定すれば、上記比aは、 a=6.31… となる。そして、LMSアルゴリズム等にあっては、図
7に示すように、誤差曲面の等高線の接線方向にフィル
タ係数W0 ,W1 を更新していくものであるが、その等
高線が楕円であると、等高線と長径又は短径との交点以
外の点では更新方向は最適点を向いていないため、フィ
ルタ係数の更新が多くの場合遠回りすることになり、従
って適応処理が必ずしも最適に行われないという欠点が
ある。
【0009】さらに、LMSアルゴリズムにあっては、
各フィルタ係数W0 ,W1 の更新量ΔW0 ,ΔW1 は、
収束係数と呼ばれるパラメータに誤差曲面の傾きを乗じ
たものであるため、誤差曲面の傾きが急峻な短径方向付
近の更新量に合わせて収束係数を小さめに定めてしまう
と、傾きの緩やかな長径方向付近では更新量の絶対値が
過少となり収束に長時間を要してしまうという不具合が
ある。逆に、誤差曲面の傾きの緩やかな長径方向付近の
更新量に合わせて収束係数を大きめに定めてしまうと、
傾きの急峻な短径方向付近では更新量の絶対値が過大と
なり最適値への収束が保証されなくなり場合によっては
制御が発散してしまうことさえある。
【0010】また、同一の出力信号を生成するために必
要なフィルタ係数W0 ,W1 は基準信号及び騒音間の位
相によって変化し、その変化の軌跡は例えば図8に示す
ようにW0 −W1 軸に対して45度だけ傾いた楕円にな
るのが最も一般的であり、例えば上記のように比a=6.
31…程度となれば、フィルタ係数W0 ,W1 の大きさ
は、同じ出力を得るのに最大6倍以上変化することにな
る。
【0011】従って、フィルタ係数W0 ,W1 が長径方
向最大時に適応ディジタルフィルタ出力がD/A最大入
力を超えないように設定する必要があるが、これでは、
フィルタ係数W0 ,W1 が短径方向に来るような位相関
係のときにフィルタ係数W0,W1 の分解能が低くな
り、フィルタ係数W0 ,W1 が最大値から遠い段階で適
応ディジタルフィルタ出力がD/A最大入力に達してし
R>まう。このため、浮動小数点演算に対応してない演算
プロセッサで制御を行うシステムではフィルタ係数
0 ,W1 の分解能が充分でなくなる恐れがあり、仮に
浮動小数点演算に対応した演算プロセッサを用いた場合
でもD/A変換器とフィルタ係数W0 ,W1 の記憶メモ
リとの間でダイナミックレンジの不整合が生じる恐れが
あった。
【0012】なお、このような不具合を解決する方策と
して、本出願人が先に特願平4−132629号明細書
で提案しているように、騒音の周波数fn に応じて基準
信号のサンプリング周波数fs を適宜変化させて上記
(1)式で表される比aが常に1となるようにすること
が考えられるが、このような方策では、確かに充分な効
果が得られる反面、基準信号のサンプリング周波数fs
を変化させる必要があるため、制御内容が複雑になって
しまい、大幅なコストアップ等を招いてしまうという別
の問題点が生じてしまう。
【0013】また、上述したような不具合は、騒音低減
制御に限定されるものではなく、適応ディジタルフィル
タを用いて駆動信号を生成して振動の低減を図る装置に
も同様の理由から生じるものである。本発明は、このよ
うな従来の技術及び先行する技術が有する未解決の課題
に着目してなされたものであって、装置の大幅な複雑化
等を招くことなく、適応ディジタルフィルタのフィルタ
係数の更新処理を安定して行える能動型騒音制御装置及
び能動型振動制御装置を提供することを目的としてい
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、騒音源から周期的な騒音が
伝達される空間に制御音を発生可能な制御音源と、前記
騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する
基準信号生成手段と、前記空間内の所定位置の残留騒音
を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段
と、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前
記基準信号と前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ
係数とを畳み込んで前記制御音源を駆動する駆動信号を
生成する駆動信号生成手段と、前記基準信号及び前記残
留騒音信号に基づいて前記空間内の騒音が低減するよう
に適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた
能動型騒音制御装置において、前記畳み込みに用いられ
る前記基準信号及び前記適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数のそれぞれを線形結合によって座標変換する座
標変換手段を設け、前記適応処理手段は、前記座標変換
後の前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数に対し
て前記更新処理を行うようにした。
【0015】また、請求項2に係る発明は、上記請求項
1に係る発明において、適応ディジタルフィルタは、フ
ィルタ係数が二つの有限インパルス応答関数型のディジ
タルフィルタであって、座標変換手段は、座標変換後の
前記適応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数のフ
ィルタ出力一定の軌跡が真円となるように線形結合の座
標変換を行うようにした。
【0016】そして、請求項3に係る発明は、上記請求
項2に係る発明において、騒音の周波数fn を検出する
騒音周波数検出手段と、基準信号のサンプリング周波数
s及び前記騒音の周波数fn に基づいて上記(1)式
に従って係数aを演算する係数演算手段と、を設け、座
標変換手段は、その係数aを用いて座標変換を行うよう
にした。
【0017】さらに、請求項4に係る発明は、上記請求
項2又は請求項3に係る発明において、座標変換後の適
応ディジタルフィルタの少なくとも一方のフィルタ係数
の大きさに基づいてその適応ディジタルフィルタの発散
を検出する発散検出手段を設けた。一方、上記目的を達
成するために、請求項5に係る発明は、振動源から発せ
られた周期的な振動と干渉する制御振動を発生可能な制
御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信
号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の残
留振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検
出手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタ
と、前記基準信号と前記適応ディジタルフィルタの各フ
ィルタ係数とを畳み込んで前記制御振動源を駆動する駆
動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記基準信号及
び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減
するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタ
ルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、
を備えた能動型振動制御装置において、前記畳み込みに
用いられる前記基準信号及び前記適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数のそれぞれを線形結合によって座標変
換する座標変換手段を設け、前記適応処理手段は、前記
座標変換後の前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係
数に対して前記更新処理を行うようにした。
【0018】また、請求項6に係る発明は、上記請求項
5に係る発明において、適応ディジタルフィルタは、フ
ィルタ係数が二つの有限インパルス応答関数型のディジ
タルフィルタであって、座標変換手段は、座標変換後の
前記適応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数のフ
ィルタ出力一定の軌跡が真円となるように線形結合の座
標変換を行うようにした。
【0019】そして、請求項7に係る発明は、上記請求
項6に係る発明において、振動の周波数fn を検出する
振動周波数検出手段と、基準信号のサンプリング周波数
s及び前記振動の周波数fn に基づいて上記(1)式
に従って係数aを演算する係数演算手段と、を設け、座
標変換手段は、その係数aを用いて座標変換を行うよう
にした。
【0020】さらに、請求項8に係る発明は、上記請求
項6又は請求項7に係る発明において、座標変換後の適
応ディジタルフィルタの少なくとも一方のフィルタ係数
の大きさに基づいてその適応ディジタルフィルタの発散
を検出する発散検出手段を設けた。
【0021】
【作用】請求項1に係る発明にあっては、座標変換手段
が、駆動信号の生成処理に用いられる適応ディジタルフ
ィルタのフィルタ係数を線形結合によって座標変換する
ため、その座標変換後の適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数が描く誤差曲面の等高線の形状は、例えば図7
に示すようなW0 −W1 軸に対して45度だけ傾いた楕
円形ではなく、その座標変換の内容に応じた形状とな
る。
【0022】そこで、例えば図7に示すような楕円形を
さらに45度だけ傾けて楕円の長径がW0 軸と平行とな
り楕円の短径がW1 軸と平行となるような座標変換を行
った場合には、誤差曲面の傾斜が緩やかな方向とフィル
タ係数W0 の増減方向とが一致し、誤差曲面の形状が急
峻な方向とフィルタ係数W1 の増減方向とが一致するよ
うになる。そして、適応処理手段は、その変換後の適応
ディジタルフィルタのフィルタ係数に対して更新処理を
行うため、フィルタ係数W0 の更新演算に用いられる収
束係数を大きめに設定し、フィルタ係数W1 の更新演算
に用いられる収束係数を小さめに設定すれば、フィルタ
係数W0 の収束速度を遅くすることなくフィルタ係数W
1 が最適点に確実に収束するようになる。
【0023】つまり、座標変換手段が行う座標変換の内
容を適宜選定することにより、変換前の適応ディジタル
フィルタのフィルタ係数が描く誤差曲面の等高線の形状
がフィルタ係数の更新処理にとって望ましくない形状で
あっても、フィルタ係数を座標変換しその変換後のフィ
ルタ係数に対して更新処理が行われるので、安定性に優
れる等の望ましい更新処理が実行されることになる。
【0024】しかも、座標変換手段は、適応ディジタル
フィルタのフィルタ係数だけではなく駆動信号の生成処
理に用いられる基準信号に対しても座標変換をするもの
であるし、それらフィルタ係数及び基準信号に対する座
標変換は線形結合によるものであるため、フィードフォ
ワード制御が正常に実行されることは保証される。従っ
て、駆動信号生成手段によって生成される駆動信号が騒
音を打ち消すことができないような信号になってしまう
ことはない。
【0025】特に、請求項2に係る発明にあっては、適
応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数W0 ,W1
のフィルタ出力一定の軌跡が真円であるので、それらフ
ィルタ係数W0 ,W1 によって描かれる誤差曲面の等高
線の形状も真円となり、従ってフィルタ係数W0 ,W1
の更新方向は常に最適点の方向を向くことになるから、
最適な更新処理が実行される。
【0026】そして、請求項3に係る発明にあっては、
座標変換手段の座標変換において上記(1)式で表され
る係数aが用いられるが、その係数aは、図7に示した
ようなフィルタ係数W0 ,W1 が描く誤差曲面の等高線
の長径及び短径の比を表している。従って、騒音周波数
検出手段が騒音の周波数fn を検出し、基準信号のサン
プリング周波数fs と騒音の周波数fn とに基づいて上
記(1)式に従って係数演算手段が係数aを演算するか
ら、座標変換手段が、その係数aを適宜用いて座標変換
を行うと、適応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係
数W0 ,W1 のフィルタ出力一定の軌跡が確実に真円に
なる。
【0027】ここで、適応ディジタルフィルタのフィル
タ係数W0 ,W1 のフィルタ出力一定の軌跡が楕円であ
ると、フィルタ出力の大きさはフィルタ係数W0 ,W1
の大きさに単純には対応しないため、例えば、 WP =W0 2+W1 2+2W0 1cos(2πfn /fs ) というような演算式を用いてフィルタ出力の大きさWP
を求めて、現在のフィルタ係数W0 ,W1 が過大である
か否か、即ち、適応ディジタルフィルタが発散傾向にあ
るか否かを判定する必要があるが、請求項2又は請求項
3に係る発明のように適応ディジタルフィルタのフィル
タ係数W0 ,W1 のフィルタ出力一定の軌跡が真円であ
ると、各フィルタ係数W0 又はW1 の大きさが略フィル
タ出力の大きさに対応する。
【0028】従って、請求項4に係る発明のように、発
散検出手段が適応ディジタルフィルタの少なくとも一方
のフィルタ係数W0 ,W1 の大きさを監視すれば、特に
面倒な演算式を導入しなくても、適応ディジタルフィル
タの発散が検出される。ここで、上記請求項1乃至請求
項4に係る発明はいずれも騒音を対象としているのに対
し請求項5乃至請求項8に係る発明は振動を対象として
いる。従って、それら請求項5乃至請求項8に係る発明
の作用は、音と振動との違いはあるが、実質的に上記請
求項1乃至請求項4に係る発明と同様である。
【0029】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1は本発明の一実施例の全体構成を示す図で
あり、この実施例は、騒音源としてのエンジン4から空
間としての車室6内に伝達される周期的な騒音としての
こもり音の低減を図る能動型騒音制御装置1に本発明を
適用したものである。
【0030】先ず、構成を説明すると、車体3は、前輪
2a,2b,後輪2c,2d及び各車輪2a〜2dと車
体3との間に介在するサスペンションによって支持され
ている。なお、図1に示す車両は、前輪2a及び2bが
車体3前部に配置されたエンジン4によって回転駆動さ
れるいわゆる前置きエンジン前輪駆動車である。エンジ
ン4には、クランク角センサ5が取り付けられていて、
このクランク角センサ5は、エンジン4のクランク軸の
回転に同期したクランク角信号CPをコントローラ10
に供給するようになっている。
【0031】また、車体3の車室6内には、制御音源と
してのラウドスピーカ7a,7b,7c及び7dが、前
部座席S1 ,S2 及び後部座席S3 ,S4 のそれぞれに
対向するドア部に配置されている。さらに、各座席S1
〜S4 のヘッドレスト位置には、残留騒音検出手段とし
てのマイクロフォン8a〜8hがそれぞれ二つずつ配設
されていて、これらマイクロフォン8a〜8hが音圧と
して測定した残留騒音信号e1 〜e8 が、コントローラ
10に供給されるようになっている。
【0032】そして、コントローラ10は、クランク角
センサ5から供給されるクランク角信号CPと、マイク
ロフォン8a〜8hから供給される残留騒音信号e1
8とに基づいて、後述する演算処理を実行し、車室6
内に伝達されるこもり音を打ち消すような制御音がラウ
ドスピーカ7a〜7dから発せられるように、それらラ
ウドスピーカ7a〜7dに個別に駆動信号y1 〜y4
出力するようになっている。
【0033】コントローラ10は、基本的には、クラン
ク角信号CPに基づいて生成される後述の基準信号xを
フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタでフィルタ
処理することにより駆動信号y1 〜y4 を生成するとと
もに、その適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数
を、適応アルゴリズムの一つであるFiltered−
X LMSアルゴリズムに従って逐次更新するように構
成されている。
【0034】従って、コントローラ10は、理論的に
は、下記の(2)式に従って駆動信号ym (m=1,
2,…,M:Mはラウドスピーカ7a〜7dの個数であ
り、本実施例ではM=4である。)を生成し、下記の
(3)式に従って適応ディジタルフィルタWm の各フィ
ルタ係数Wmi(i=0,1,2,…,I−1:Iは適応
ディジタルフィルタWm のタップ数である。)を更新す
るようになっている。
【0035】 なお、αは収束係数であり、(n)が付く項は離散時刻
nにおける値であることを表してる。また、上記(3)
式中、rlm(l=1,2,…,L:Lはマイクロフォン
8a〜8hの個数であって、本実施例ではL=8であ
る。)は、基準信号xを、各ラウドスピーカ7a〜7d
及び各マイクロフォン8a〜8h間の伝達関数を有限イ
ンパルス応答関数の形でモデル化したディジタルフィル
タである伝達関数フィルタC^lmでフィルタ処理した値
であり、従って、 として演算される。なお、(4)式中、Clmj (j=
0,1,2,…,J−1:Jは伝達関数フィルタC^lm
のタップ数である。)は、伝達関数フィルタC^lmのj
番目のフィルタ係数である。
【0036】例えば、適応ディジタルフィルタWm のタ
ップ数が“2”である場合には、駆動信号ym は、上記
(1)式から、 ym =Wm0x(n)+Wm1x(n−1) ……(5) となり、適応ディジタルフィルタWm のフィルタ係数W
m0,Wm1の更新式は、上記(4)式から、 となる。
【0037】つまり、本実施例のように、周期的な騒音
であるこもり音の低減を図るのであれば、こもり音は、
単一周波数成分又は略単一周波数成分からなる騒音であ
ると考えて差し支えないため、適応ディジタルフィルタ
m のタップ数は“2”で足りる。従って、コントロー
ラ10は、上記(4)〜(7)式の演算が実現されるよ
うな機能構成を有していれば、基本的には充分である。
【0038】しかし、本実施例にあっては、コントロー
ラ10は、適応ディジタルフィルタWm の各フィルタ係
数Wm0,Wm1をそのまま上記(5),(6)式によって
更新するのではなく、フィルタ係数Wm0,Wm1に対して
下記のような線形結合による座標変換を施し、その座標
変換後のフィルタ係数Vm0,Vm1に対して更新演算を行
うようになっている。
【0039】ここで、フィルタ係数Wm0,Wm1に対する
座標変換は、簡単に述べれば、それらフィルタ係数
m0,Wm1のフィルタ出力一定の軌跡が、図8に示すよ
うな楕円ではなく、真円となるような座標変換である。
具体的には、フィルタ係数Wm0,Wm1のそれぞれの軸を
45度だけ傾けた後に、その長径及び短径の比に応じた
圧縮を行えば、フィルタ係数Wm0,Wm1のフィルタ出力
一定の軌跡は真円となるはずである。
【0040】そこで、そのような座標変換について説明
する。先ず、45度だけ回転させた後のフィルタ係数を
m0' ,Vm1とすると、それらフィルタ係数Vm0' ,V
m1は下記の(8)式によって求められる。
【0041】
【数1】
【0042】……(8) そして、変換後のVm0' 軸を1/aに圧縮することを考
えると、その変換式は下記の(9)式のようになる。
【0043】
【数2】
【0044】……(9) これら(8)式及び(9)式を合わせると下記の(10)
式のようになるから、フィルタ係数Wm0,Wm1から変換
後のフィルタ係数Vm0,Vm1を直接求める変換式は、下
記の(11),(12)式のようになる。
【0045】
【数3】
【0046】……(10) Vm0=1/a√2・(Wm0−Wm1) ……(11) Vm1=1/√2 ・(Wm0+Wm1) ……(12) 次に、上記(10)式の関係を逆にすると下記の(13)式
のようになるから、フィルタ係数Vm0,Vm1からフィル
タ係数Wm0,Wm1を求める変換式は、下記の(14),
(15)式のようになる。
【0047】
【数4】
【0048】……(13) Wm0=1/√2・(aVm0+Vm1) ……(14) Wm1=1/√2・(−aVm0+Vm1) ……(15) そして、これら(14)式及び(15)式を、上記(5)式
に代入すると、 ym =1/√2・(aVm0+Vm1)x(n) +1/√2・(−aVm0+Vm1)x(n−1) ……(16) となり、この(16)式の右辺を、変換後のフィルタ係数
m0,Vm1毎に整理すると、 ym =s(n)Vm0+t(n)Vm1 ……(17) となる。
【0049】ただし、 s(n)=a/√2・{x(n)−x(n−1)} ……(18) t(n)=1/√2・{x(n)+x(n−1)} ……(19) であり、これら(18)式及び(19)式は、基準信号xを
線形結合によって座標変換する際の変換式である。
【0050】以上がコントローラ10に必要な演算内容
であり、コントローラ10はそのような演算を実現する
ような機能構成を有している。ここで、コントローラ1
0は、実際にはマイクロコンピュータ等においてソフト
的に必要な演算機能を実現しているのであるが、その演
算機能を実現するための構成をブロック図で表してみる
と、図2に示すようになる。
【0051】即ち、コントローラ10は、クランク角セ
ンサ5から供給されるクランク角信号CPに基づいてこ
もり音に同期した正弦波でなる基準信号xを生成する基
準信号生成部11と、基準信号xに基づいてこもり音の
周波数fn を演算する周波数演算部12と、周波数fn
に基づいて上記(1)式に従って係数aを演算する係数
演算部13と、基準信号xを上記(18),(19)式に基
づいて座標変換する基準信号座標変換部20と、基準信
号座標変換部12で座標変換された後の基準信号s
(n),t(n)が入力され上記(17)式に従って駆動
信号ym を演算する駆動信号演算部30と、基準信号x
が入力される伝達関数フィルタC^lmと、伝達関数フィ
ルタC^lmの出力及び残留騒音信号el に基づいて適応
ディジタルフィルタWm のフィルタ係数Wm0,Wm1の更
新量ΔWm0,ΔWm1を演算する更新量演算部40と、こ
の更新量演算部40の演算結果を上記(11),(12)式
に従って座標変換する更新量座標変換部50と、を備え
ていて、例えばエンジン4がレシプロ4気筒エンジンで
あれば、こもり音はクランク軸の回転2次成分に同期し
て発生することから、基準信号生成部11が生成する基
準信号xは、クランク軸の1/2回転を一周期とした正
弦波となる。
【0052】これらの内、基準信号座標変換部20は、
変換前の基準信号x(n)の一サンプリング処理前の値
である基準信号x(n−1)を出力する遅延操作部21
と、基準信号x(n)から基準信号x(n−1)を減じ
る減算部22と、基準信号x(n)及びx(n−1)を
加算する加算部23と、減算部22の出力を可変の係数
aに応じてa倍に増幅して出力する増幅部24と、この
増幅部24の出力をさらに1/√2倍に増幅して出力す
る増幅部25と、加算部23の出力を1/√2倍に増幅
して出力する増幅部26とから構成されていて、増幅部
25の出力が座標変換後の基準信号s(n)として出力
され、増幅部26の出力が座標変換後の基準信号t
(n)として出力されるようになっている。ただし、増
幅部24の係数aは、係数演算部13の演算結果に応じ
て可変となっている。
【0053】また、駆動信号生成部30は、基準信号座
標変換部20から供給される一方の基準信号s(n)を
可変のフィルタ係数Vm0に応じてVm0倍に増幅して出力
する増幅部31と、他方の基準信号t(n)を可変のフ
ィルタ係数Vm1に応じてVm1倍に増幅して出力する増幅
部32と、それら増幅部31及び31の出力を加算する
加算部33とから構成されていて、加算部33の出力が
駆動信号ym として各ラウドスピーカ7a〜7dに供給
されるようになっている。
【0054】なお、増幅部31,32の増幅率であるフ
ィルタ係数Vm0,Vm1は、更新量座標変換部50から出
力される変換後のフィルタ係数更新量ΔVm0,ΔV
m1を、増幅部14,15でさらに収束係数αに応じてα
倍した値αΔVm0,αΔVm1に基づいて逐次更新される
ようになっており、その更新式は、上記(6),(7)
式と同質の下記の(20),(21)式である。
【0055】 Vm0(n+1)=Vm0(n)−αΔVm0 ……(20) Vm1(n+1)=Vm1(n)−αΔVm1 ……(21) さらに、更新量演算部40は、伝達関数フィルタC^lm
から出力される処理信号rlm(n)の一サンプリング処
理前の値である処理信号rlm(n−1)を出力する遅延
操作部41と、処理信号rlm(n)及び残留騒音信号e
l を掛け合わせてフィルタ係数Wm0の更新量ΔWm0を演
算する乗算部42と、遅延操作部41から出力される処
理信号rlm(n−1)及び残留騒音信号el をl=1,
2,…,Lについて掛け合わせてその和をとってフィル
タ係数Wm1の更新量ΔWm1を演算する乗算部43とから
構成されている。
【0056】そして、乗算部42の出力である更新量Δ
m0と、乗算部43の出力である更新量ΔWm1とが、更
新量座標変換部50に供給されるようになっていて、そ
の更新量座標変換部50は、更新量ΔWm0から更新量Δ
m1を減じる減算部51と、更新量ΔWm0及びΔWm1
加算する加算部52と、減算部51の出力を可変の係数
aに応じて1/a倍に増幅して出力する増幅部53と、
この増幅部53の出力をさらに1/√2倍に増幅して出
力する増幅部54と、加算部52の出力を1/√2倍に
増幅して出力する増幅部55とから構成されていて、増
幅部54の出力が座標変換後のフィルタ係数Vm0の更新
量ΔVm0として出力され、増幅部55の出力が座標変換
後のフィルタ係数Vm1の更新量ΔVm1として出力される
ようになっている。ただし、増幅部53の係数aは、係
数演算部13の演算結果に応じて可変となっている。
【0057】さらに、図2には示していないが、このコ
ントローラ10は、座標変換後のフィルタ係数Vm1の大
きさに基づいて、適応ディジタルフィルタが発散状態に
あるか否かを判定する機能を有している。図3及び図4
はコントローラ10内で実行される処理の概要を示すフ
ローチャートであり、以下、図3及び図4に従って本実
施例の動作を説明する。
【0058】先ず、図3の処理を説明するが、この図3
に示す処理は固定のサンプリング周波数fs のサンプリ
ング・クロック毎に実行されるようになっていて、その
ステップ101においてクランク角信号CPが読み込ま
れそのクランク角信号CPの周期及び入力タイミングに
基づいて現在の離散時刻nにおける基準信号x(n)が
生成される。
【0059】次いで、ステップ102に移行し、基準信
号xの周期に基づいて、こもり音の周波数fn が演算さ
れ、そして、ステップ103に移行し、その周波数fn
に基づいて上記(1)式に従って係数aが演算される。
次いで、ステップ104に移行し、各マイクロフォン8
a〜8hから供給される残留騒音信号el が読み込ま
れ、次いでステップ105に移行して、基準信号xと伝
達関数フィルタC^lmの各フィルタ係数C^lmj とが畳
み込まれて処理信号rlmが演算され、そして、ステップ
106に移行し、それら残留騒音信号el及び処理信号
lmに基づいて、座標変換前の適応ディジタルフィルタ
m のフィルタ係数Wm0,Wm1の更新量ΔWm0,ΔWm1
が演算される。
【0060】更新量ΔWm0,ΔWm1が演算されたら、ス
テップ107に移行し、それら更新量ΔWm0,ΔW
m1と、上記ステップ103で求められた係数aとに基づ
いて、上記(11),(12)式に従って、座標変換後の適
応ディジタルフィルタVm のフィルタ係数Vm0,Vm1
更新量ΔVm0,ΔVm1が演算される。そして、ステップ
108に移行し、それら更新量ΔVm0,ΔVm1と、収束
係数αとに基づいて、上記(20),(21)式に従って、
座標変換後の適応ディジタルフィルタVm のフィルタ係
数Vm0,Vm1が更新される。
【0061】各フィルタ係数Vm0,Vm1の更新が完了し
たら、ステップ109に移行し、現在の基準信号x
(n),一サンプリング処理前の基準信号x(n−1)
及び係数aに基づき、上記(18),(19)式に従って、
座標変換後の基準信号s(n),t(n)が演算され
る。そして、ステップ110に移行し、座標変換後の基
準信号s(n),t(n)と、座標変換後の適応ディジ
タルフィルタVm のフィルタ係数Vm0,Vm1とに基づい
て、上記(17)式に従って駆動信号ym が演算され、こ
の駆動信号ym が、ステップ111において対応するラ
ウドスピーカ7a〜7dに出力される。
【0062】すると、ラウドスピーカ7a〜7dから車
室6内に制御音が発生するが、制御開始直後は適応ディ
ジタルフィルタVm のフィルタ係数Vm0,Vm1が最適な
値に収束しているとは限らないので、必ずしも車室6内
に伝達されたこもり音が低減されるとはいえない。しか
し、図3に示す処理が繰り返し実行されると、LMSア
ルゴリズムに基づいて適応ディジタルフィルタVm のフ
ィルタ係数Vm0,Vm1が適宜更新されていくから、各フ
ィルタ係数Vm0,Vm1は最適値に向かって収束してい
き、車室6内に伝達されるこもり音がラウドスピーカ7
a〜7dから発せられる制御音によって打ち消されるよ
うになり、車室6内の騒音の低減が図られる。
【0063】しかも、本実施例にあっては、適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数に対して所定の座標変換を
施してから、フィルタ係数の更新処理を行っているた
め、下記のような優れた作用効果を有している。即ち、
本実施例のような座標変換を施すと、図5(a)に示す
ように誤差曲面の等高線がWm0軸,Wm1軸に対して45
度傾いた楕円形であったとしても、先ず図5(b)に示
すように誤差曲面の傾きがさらに45度傾けられる結
果、楕円形の長径,短径がWm0軸,Wm1軸に一致し、し
かも、楕円形の長径及び短径の比aに応じた圧縮が行わ
れるので、最終的な誤差曲面の等高線の形状は、図5
(c)に示すように、真円となっている。
【0064】そして、誤差曲面の形状が真円であると、
フィルタ係数W0 ,W1 の更新方向は常に最適点の方向
を向くことになり、誤差曲面の傾斜角度が特に急峻な位
置や緩やかな位置等が存在しないから、収束係数αを容
易に最適な値に設定することができ、最適な更新処理が
実行され、従って、良好な騒音低減制御が実現されるの
である。
【0065】さらに、本実施例では、上記(1)式に基
づいて演算される係数aを用いて座標変換を行っている
が、その係数aは、フィルタ係数W0 ,W1 が描く誤差
曲面の等高線の長径及び短径の比を表しているから、座
標変換後の誤差曲面の等高線の形状を確実に真円にする
ことができるのである。また、本実施例では、座標変換
は線形結合によるものであるし、駆動信号ymの生成に
必要な適応ディジタルフィルタWm のフィルタ係数
m0,Wm1だけではなく、やはり駆動信号ym の生成に
必要な基準信号x(n)についても同様の座標変換を行
うようにしているため、座標変換処理を導入したことに
起因して駆動信号ym の生成処理に悪影響が生じること
はないのである。
【0066】図4は例えば図3に示す処理が開始される
直前又は終了した直後に実行される処理の概要を示して
いて、これは適応ディジタルフィルタWm が発散してい
るか否かを検知するための処理である。即ち、そのステ
ップ201において、座標変換後の一方のフィルタ係数
m1の大きさが所定のしきい値εを超えているか否かが
判定され、超えていなければそのままこの発散検知処理
を終了するが、超えている場合にはステップ202に移
行して、発散検知時の処理を実行する。発散検知時の処
理としては、例えば騒音低減制御自体を停止してその旨
の警報ランプ等で知らせる、或いは、適応ディジタルフ
ィルタWm のフィルタ係数を初期値にリセットする等が
考えられる。
【0067】つまり、座標変換後の一方のフィルタ係数
m1の大きさをそのまま用いて適応ディジタルフィルタ
の発散を検知するようになっているのであるが、これ
は、座標変換後のフィルタ係数Vm0,Vm1のフィルタ出
力一定の軌跡が図6に示すように真円となっているた
め、そのフィルタ係数Vm0,Vm1の大きさが、略フィル
タ出力の大きさを表してると考えることができ、しか
も、適応ディジタルフィルタが発散する場合には、その
フィルタ係数は誤差鏡面を螺旋階段を昇るように大きく
なっていくので、少なくとも一方のフィルタ係数の大き
さを監視するだけで適応ディジタルフィルタのフィルタ
係数の発散を判定しても差し支えないからである。つま
り、特に面倒な演算式を導入しなくても、図6にその概
念を表すように一方のフィルタ係数Vm1が斜線で示す大
きさε以上の発散領域に入っているか否かを監視するだ
けで、適応ディジタルフィルタの発散を検出することが
できるのである。
【0068】ここで、本実施例にあっては、クランク角
センサ5,基準信号生成部11及びステップ101の処
理によって基準信号生成手段が構成され、駆動信号生成
部30及びステップ110の処理によって駆動信号生成
手段が構成され、伝達関数フィルタ,更新量演算部4
0,増幅部14,15及びステップ105〜108の処
理によって適応処理手段が構成され、基準信号座標変換
部20,更新量座標変換部50及びステップ107,1
09の処理によって座標変換手段が構成され、周波数演
算部12及びステップ102の処理によって騒音周波数
検出手段が構成され、係数演算部13及びステップ10
3の処理によって係数演算手段が構成され、ステップ2
01の処理によって発散検出手段が構成されている。
【0069】なお、上記実施例では、座標変換後の適応
ディジタルフィルタのフィルタ係数の出力一定の軌跡が
真円となるような座標変換を行っているが、考えられる
座標変換はこれに限定されるものではない。例えば、図
5(b)の段階までの座標変換のみ行うようにしてもよ
く、その場合には、楕円の長径及び短径がフィルタ係数
の軸と平行になるため、誤差曲面の傾斜が急峻な方向及
び緩やかな方向のそれぞれが、各フィルタ係数の増減方
向とが一致するようになるから、急峻な方向のフィルタ
係数の更新処理には小さめの収束係数を用い、緩やかな
方向のフィルタ係数の更新処理には大きめの収束係数を
用いることにより、全体としてのフィルタ係数の収束速
度を遅くすることなくフィルタ係数の最適点への収束を
保証することができるようになる。なお、楕円の長径及
び短径の比が上記(1)式の係数aから知ることができ
るから、騒音の周波数fn とサンプリング周波数fs
の比を監視していれば、いずれのフィルタ係数が、誤差
曲面の傾斜の急峻な方向に対応しているか否かを知るこ
とができるし、その傾きの比は長径及び短径の長さの比
そのものであるから、やはり騒音の周波数fn とサンプ
リング周波数fs との比から知ることができる。
【0070】また、上記実施例では、理論的に求めた座
標変換の式をコントローラ10内で厳密に再現している
が、本実施例のように適応アルゴリズムを実行する場合
には若干省略することも可能である。例えば、上記(1
1),(12)式の座標変換式において、1/a√2を1
と置き換えても、最終的な誤差曲面の等高線の形状は真
円であるため特に問題はなく、その場合の座標変換式
は、下記の(11)' ,(12)' 式となる。
【0071】 Vm0=Wm0−Wm1 ……(11)' Vm1=a(Wm0+Wm1) ……(12)' そして、上記(11)' ,(12)' 式を採用する場合に
は、基準信号x(n)の座標変換式も変更する必要があ
る。具体的には、上記(13)式にて1/2a√2を1と
置き換えることにより、上記(18),(19)式で表され
ていた基準信号xの座標変換式は、下記の(18)' ,
(19)' 式のようになる。
【0072】 s(n)=a{x(n)−x(n−1)} ……(18)' t(n)=x(n)+x(n−1) ……(19)' 従って、コントローラ10内の更新量座標変換部50は
(11)' ,(12)' 式に基づいて設定され、基準信号座
標変換部20は(18)' ,(19)' 式に基づいて設定さ
れるため、増幅部の個数が大幅に減り、演算負荷の軽減
が図られるという利点がある。
【0073】さらに、上記実施例では、本発明に係る能
動型騒音制御装置を、エンジン4から車室6内に伝達さ
れるこもり音の低減を図る装置とした場合について説明
したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものでは
なく、こもり音以外の周期的な騒音を低減する装置であ
ってもよい。また、低減の対象は騒音に限定されるもの
ではなく、例えば、エンジン4及び車体メンバ間に能動
的な制御力を発生可能なエンジンマウント(制御振動発
生手段)を介在させるとともに、その車体メンバ側に残
留振動を検出する加速度センサ(残留振動検出手段)を
配設し、そして、かかるエンジンマウントを上記実施例
と同様の基準信号x及び加速度センサの出力信号(残留
振動信号)に基づいて制御すれば、エンジン4から車体
メンバ側に伝達される周期的な振動を低減し得る能動型
振動制御装置となる。
【0074】そして、上記実施例では、適応アルゴリズ
ムとしてFiltered−X LMSアルゴリズムを
適用した場合について説明したが、これに限定されるも
のではなく、例えば同期式Filtered−X LM
Sアルゴリズム(日本音響学会講演論文集 平成4年3
月の515〜516頁に詳しい。)等の他の適応アルゴ
リズムであってもよい。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にあって
は、駆動信号の生成処理に用いられる基準信号及び適応
ディジタルフィルタのフィルタ係数のそれぞれを線形結
合によって座標変換する座標変換手段を設けるととも
に、その座標変換後のフィルタ係数に対して更新処理を
行う構成としたため、座標変換前の誤差曲面の等高線の
形状が更新処理にとって望ましくない形状であっても、
好適な更新処理が行えるという効果が得られる。
【0076】特に、請求項2又は請求項6記載の発明に
あっては、更新方向が常に最適点側を向いているため、
非常に安定した更新処理が行えるという効果がある。ま
た、請求項3又は請求項7記載の発明であれば、座標変
換後のフィルタ係数の出力一定の軌跡を確実に真円にす
ることができるという効果がある。さらに、請求項4又
は請求項8記載の発明であれば、面倒な演算式等を導入
しなくても、適応ディジタルフィルタの発散を検出する
ことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の全体構成図である。
【図2】コントローラの機能構成を示すブロック図であ
る。
【図3】コントローラ内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである。
【図4】コントローラ内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである。
【図5】座標変換の過程を説明する説明図である。
【図6】発散検出処理の概念を説明する説明図である。
【図7】一般的な誤差曲面の等高線の形状を示す図であ
る。
【図8】一般的な適応ディジタルフィルタのフィルタ係
数のフィルタ出力一定の軌跡を示す図である。
【符号の説明】
1 能動型騒音制御装置 3 車室(空間) 4 エンジン(騒音源) 5 クランク角センサ 7a〜7d ラウドスピーカ(制御音源) 8a〜8h マイクロフォン(残留騒音検出手段) 10 コントローラ 11 基準信号生成部 12 周波数演算部 13 係数演算部 20 基準信号座標変換部 30 駆動信号生成部 40 更新量演算部 50 更新量座標変換部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H03H 21/00 G10K 11/16 H (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/178 B60R 11/02 B64C 1/40 F01N 1/00 F16F 15/02 H03H 17/02 601 H03H 21/00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 騒音源から周期的な騒音が伝達される空
    間に制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音
    発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成
    手段と、前記空間内の所定位置の残留騒音を検出し残留
    騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、フィルタ
    係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号と
    前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数とを畳み
    込んで前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動
    信号生成手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信号に
    基づいて前記空間内の騒音が低減するように適応アルゴ
    リズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ
    係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制
    御装置において、 前記畳み込みに用いられる前記基準信号及び前記適応デ
    ィジタルフィルタのフィルタ係数のそれぞれを線形結合
    によって座標変換する座標変換手段を設け、前記適応処
    理手段は、前記座標変換後の前記適応ディジタルフィル
    タのフィルタ係数に対して前記更新処理を行うことを特
    徴とする能動型騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 適応ディジタルフィルタは、フィルタ係
    数が二つの有限インパルス応答関数型のディジタルフィ
    ルタであって、座標変換手段は、座標変換後の前記適応
    ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数のフィルタ出
    力一定の軌跡が真円となるように線形結合の座標変換を
    行う請求項1記載の能動型騒音制御装置。
  3. 【請求項3】 騒音の周波数fn を検出する騒音周波数
    検出手段と、基準信号のサンプリング周波数fs 及び前
    記騒音の周波数fn に基づいて下記式に従って係数aを
    演算する係数演算手段と、を設け、座標変換手段は、そ
    の係数aを用いて座標変換を行う請求項2記載の能動型
    騒音制御装置。 a={(1+cos(2πfn /fs ))/(1-cos(2πfn /fs ))}1/2
  4. 【請求項4】 座標変換後の適応ディジタルフィルタの
    少なくとも一方のフィルタ係数の大きさに基づいてその
    適応ディジタルフィルタの発散を検出する発散検出手段
    を設けた請求項2又は3記載の能動型騒音制御装置。
  5. 【請求項5】 振動源から発せられた周期的な振動と干
    渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源
    の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信
    号生成手段と、前記干渉後の残留振動を検出し残留振動
    信号として出力する残留振動検出手段と、フィルタ係数
    可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号と前記
    適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数とを畳み込ん
    で前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信
    号生成手段と、前記基準信号及び前記残留振動信号に基
    づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリ
    ズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係
    数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御
    装置において、 前記畳み込みに用いられる前記基準信号及び前記適応デ
    ィジタルフィルタのフィルタ係数のそれぞれを線形結合
    によって座標変換する座標変換手段を設け、前記適応処
    理手段は、前記座標変換後の前記適応ディジタルフィル
    タのフィルタ係数に対して前記更新処理を行うことを特
    徴とする能動型振動制御装置。
  6. 【請求項6】 適応ディジタルフィルタは、フィルタ係
    数が二つの有限インパルス応答関数型のディジタルフィ
    ルタであって、座標変換手段は、座標変換後の前記適応
    ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数のフィルタ出
    力一定の軌跡が真円となるように線形結合の座標変換を
    行う請求項5記載の能動型振動制御装置。
  7. 【請求項7】 振動の周波数fn を検出する振動周波数
    検出手段と、基準信号のサンプリング周波数fs 及び前
    記振動の周波数fn に基づいて下記式に従って係数aを
    演算する係数演算手段と、を設け、座標変換手段は、そ
    の係数aを用いて座標変換を行う請求項6記載の能動型
    振動制御装置。 a={(1+cos(2πfn /fs ))/(1-cos(2πfn /fs ))}1/2
  8. 【請求項8】 座標変換後の適応ディジタルフィルタの
    少なくとも一方のフィルタ係数の大きさに基づいてその
    適応ディジタルフィルタの発散を検出する発散検出手段
    を設けた請求項6又は7記載の能動型振動制御装置。
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