JP3405277B2 - 被削性に優れた軸受要素部品用の鋼線材、棒鋼及び鋼管 - Google Patents

被削性に優れた軸受要素部品用の鋼線材、棒鋼及び鋼管

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JP3405277B2 JP22007799A JP22007799A JP3405277B2 JP 3405277 B2 JP3405277 B2 JP 3405277B2 JP 22007799 A JP22007799 A JP 22007799A JP 22007799 A JP22007799 A JP 22007799A JP 3405277 B2 JP3405277 B2 JP 3405277B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被削性に優れた軸
受要素部品用の鋼線材、棒鋼及び鋼管に関する。より詳
しくは、ボール、コロ、ニードル、シャフト、レースな
どの軸受要素部品の用途に好適な被削性に優れた鋼線
材、棒鋼及び鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】ボール、コロ、ニードル、シャフト、レ
ースなどの軸受要素部品の素材鋼として、一般に、JIS
G 4805で規格化されたSUJ2鋼などの高炭素クロム軸
受鋼が多用されている。
【0003】上記の所謂「軸受用鋼」は、熱間圧延など
の手段で加工された後、軟化を目的とした球状化焼鈍を
受け、次いで冷間鍛造、冷間抽伸や切削などの加工を施
され、更に、焼入れと低温での焼戻しによる熱処理を受
けて所望の機械的性質を付与される。
【0004】上記の各工程のうち、切削加工、なかでも
大抵の旋削加工においては、表面性状、寸法精度などを
向上させるために、表面層を厚さで少なくとも200μ
m、多い場合で500μm程度切削することが行われて
おり、この切削加工のコストが嵩むので、切削速度の向
上や工具寿命の延長が可能となる被削性に優れた軸受用
鋼に対する要求が極めて大きくなっている。
【0005】鋼にPbやSなどの快削元素(被削性改善
元素)を単独あるいは複合させて添加すれば、被削性が
向上することはよく知られている。しかし、各種の産業
機械や自動車などに使用される軸受には高い面圧が繰り
返し作用する。このため、軸受用鋼に前記快削元素を添
加すれば、軸受(要素部品)の転動疲労寿命が大幅に低
下してしまう。更に、前記快削元素は一般に熱間加工性
を低下させる。したがって、熱間圧延などの熱間加工時
に表面割れや疵が発生しやすくなるという問題もある。
【0006】このため、特開平3−56641号公報
に、鋼中にBN化合物を生成させることで、転動疲労寿
命を低下させることなく被削性を向上させる「被削性に
優れた軸受鋼」が開示されている。しかし、Bは鋼中へ
の溶解度が小さいため、鋼中での歩留まりが不安定であ
るし、偏析も生じやすい。更に、Bは高炭素鋼の凝固開
始温度を著しく低下させるので、Bの偏析と相まって、
凝固偏析が助長されることになる。加えて、凝固開始温
度の低下が熱間加工性の低下につながり、熱間加工時に
表面割れや疵が生成しやすくなる。したがって、軸受用
鋼のB含有量をたとえ前記公報で規定された値、つま
り、重量%で、0.004〜0.020%にしても、必
ずしも工業的規模で安定して軸受要素部品が製造できる
というものでもなかった。
【0007】特開平9−227991号公報には、特定
の条件で熱処理して組織中の炭化物数と硬さを調整する
「被削性及び冷間加工性に優れる軸受鋼及びその製造方
法」が開示されている。しかし、この公報で提案された
焼鈍条件では、加熱工程の途中で徐熱又は等温保持を行
う必要がある。このため、焼鈍時間が長くなり生産性の
低下をきたす。更に、徐熱、急熱、徐冷など熱処理条件
の変更が必要であるため、例えば、鋼線材(以下、「鋼
線材」を単に「線材」という)の一般的な形状である巻
取りコイルを対象とする場合、コイル全体を均一に熱処
理(焼鈍処理)することが困難である。たとえ均一な熱
処理ができたとしても、工業的規模で用いられる連続熱
処理炉は、一般に各ゾーンの温度が決まっていて、ゾー
ンの数も限られているため、前記公報で規定された条件
で焼鈍を実施することは難しいし、規定条件で焼鈍する
ためには連続熱処理炉の改造や更新が必要でコストが嵩
んでしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、その目的は、快削元素を特別に添
加・含有させることなく、且つ、焼鈍時間も従来と同様
の10〜20時間程度であるため生産性の低下をきたす
こともなく、ボール、コロ、ニードル、シャフト、レー
スなどの軸受要素部品の用途に好適な被削性に優れた線
材、棒鋼及び鋼管を提供することである。
【0009】なお、既に述べたように、軸受には高い面
圧が繰り返し作用するので、後述の実施例における転動
疲労試験で、1×10 以上の転動疲労寿命を有する
ことを目標とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)、(2)に示す被削性に優れた軸受要素部品用の
線材、(3)、(4)に示す被削性に優れた軸受要素部
品用の棒鋼及び(5)、(6)に示す被削性に優れた軸
受要素部品用の鋼管にある。
【0011】(1)重量%で、C:0.75〜1.2
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜
0.05%を含有し、残部はFe及び不可避不純物から
なり、不純物中のPは0.02%以下、Sは0.015
%以下は、Nは0.007%以下、O(酸素)は0.0
015%以下、Tiは0.002%以下、Cuは0.0
5%未満、Niは0.2%未満、Moは0.05%未
満、Vは0.05%未満、Nbは0.01%未満、Bは
0.0003%未満、希土類元素は合計で0.001%
未満、Caは0.0001%未満、Mgは0.0001
%未満で、更に、鋼線材の横断面において外周から深さ
200μmの位置までの領域におけるC含有量の平均値
が0.4×C〜0.9×C%(但し、Cは鋼線材のC含
有量)であることを特徴とする被削性に優れた軸受要素
部品用の鋼線材。
【0012】(2)重量%で、C:0.75〜1.2
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜
0.05%を含有するとともに、Cu:0.05〜2.
%、Ni:0.2〜4.0%、Mo:0.05〜0.
%、V:0.05〜0.4%、Nb:0.01〜0.
%、B:0.0003〜0.003%、希土類元素:
合計で0.001〜0.01%、Ca:0.0001〜
0.003%およびMg:0.0001〜0.003%
のうちの1種以上を含有し、残部はFe及び不可避不純
物からなり、不純物中のTiは0.002%以下、Pは
0.02%以下、Sは0.015%以下、Nは0.00
7%以下、O(酸素)は0.0015%以下で、更に、
鋼線材の横断面において外周から深さ200μmの位置
までの領域におけるC含有量の平均値が0.4×C〜
0.9×C%(但し、Cは鋼線材のC含有量)であるこ
とを特徴とする被削性に優れた軸受要素部品用の鋼線
【0013】(3)重量%で、C:0.75〜1.2
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜
0.05%を含有し、残部はFe及び不可避不純物から
なり、不純物中のPは0.02%以下、Sは0.015
%以下は、Nは0.007%以下、O(酸素)は0.0
015%以下、Tiは0.002%以下、Cuは0.0
5%未満、Niは0.2%未満、Moは0.05%未
満、Vは0.05%未満、Nbは0.01%未満、Bは
0.0003%未満、希土類元素は合計で0.001%
未満、Caは0.0001%未満、Mgは0.0001
%未満で、更に、棒鋼の横断面において外周から深さ2
00μmの位置までの領域におけるC含有量の平均値
.4×C〜0.9×C%(但し、Cは棒鋼のC含有
量)であることを特徴とする被削性に優れた軸受要素部
品用の棒鋼
【0014】(4)重量%で、C:0.75〜1.2
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜
0.05%を含有するとともに、Cu:0.05〜2.
0%、Ni:0.2〜4.0%、Mo:0.05〜0.
5%、V:0.05〜0.4%、Nb:0.01〜0.
1%、B:0.0003〜0.003%以下、希土類元
素:合計で0.001〜0.01%、Ca:0.000
1〜0.003%およびMg:0.0001〜0.00
3%のうちの1種以上を含有し、残部はFe及び不可避
不純物からなり、不純物中のTiは0.002%以下、
Pは0.02%以下、Sは0.015%以下、Nは0.
007%以下、O(酸素)は0.0015%以下で、更
に、棒鋼の横断面において外周から深さ200μmの位
置までの領域におけるC含有量の平均値が0.4×C〜
0.9×C%(但し、Cは棒鋼のC含有量)であること
を特徴とする被削性に優れた軸受要素部品用の棒鋼。
【0015】(5)重量%で、C:0.75〜1.2
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜
0.05%を含有し、残部はFe及び不可避不純物から
なり、不純物中のPは0.02%以下、Sは0.015
%以下は、Nは0.007%以下、O(酸素)は0.0
15%以下、Tiは0.002%以下、Cuは0.0
5%未満、Niは0.2%未満、Moは0.05%未
満、Vは0.05%未満、Nbは0.01%未満、Bは
0.0003%未満、希土類元素は合計で0.001%
未満、Caは0.0001%未満、Mgは0.0001
%未満で、更に、鋼管の横断面において内外周からそれ
ぞれ深さ200μmの位置までの領域におけるC含有量
の平均値がいずれも0.4×C〜0.9×C%(但し、
Cは鋼管のC含有量)であることを特徴とする被削性に
優れた軸受要素部品用の鋼管。
【0016】(6)重量%で、C:0.75〜1.2
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜
0.05%を含有するとともに、Cu:0.05〜2.
0%、Ni:0.2〜4.0%、Mo:0.05〜0.
5%、V:0.05〜0.4%、Nb:0.01〜0.
1%、B:0.0003〜0.003%以下、希土類元
素:合計で0.001〜0.01%、Ca:0.000
1〜0.003%およびMg:0.0001〜0.00
3%のうちの1種以上を含有し、残部はFe及び不可避
不純物からなり、不純物中のTiは0.002%以下、
Pは0.02%以下、Sは0.015%以下、Nは0.
007%以下、O(酸素)は0.0015%以下で、更
に、鋼管の横断面において内外周からそれぞれ深さ20
0μmの位置までの領域におけるC含有量の平均値がい
ずれも0.4×C〜0.9×C%(但し、Cは鋼管のC
含有量)であることを特徴とする被削性に優れた軸受要
素部品用の鋼管。
【0017】なお、本発明でいう線材、棒鋼及び鋼管の
「横断面」とは、線材、棒鋼及び鋼管の圧延方向に垂直
に切断した面をいう。又、「(線材、棒鋼や鋼管の)外
周から深さ200μmの位置までの領域におけるC含有
量の平均値」とは、例えば波長分散型の電子線マイクロ
アナライザーを用いて線材、棒鋼や鋼管の横断面外周部
(表層部近傍)のC含有量の線分析を行った場合の、外
周から20μm毎の深さの位置におけるC含有量の平均
値を指す。同様に、「(鋼管の)内周から深さ200μ
mの位置までの領域におけるC含有量の平均値」とは、
例えば波長分散型の電子線マイクロアナライザーを用い
て鋼管の横断面内周部(内表層部近傍)のC含有量の線
分析を行った場合の、内周から20μm毎の深さの位置
におけるC含有量の平均値を指す。
【0018】本発明者らは、線材、棒鋼及び鋼管の球状
化焼鈍後の組織、なかでも内外表層部組織が被削性に及
ぼす影響について調査・研究を重ね、その結果、下記の
知見を得た。
【0019】(a)軸受用鋼の旋削加工においては、被
加工材の表面部組織(表層部組織)が切削速度と工具寿
命に大きく影響する。又、突っ切り加工の場合において
も、工具と最初に接触する線材、棒鋼及び鋼管の表層部
組織が工具寿命に大きく影響する。
【0020】(b)表層部を適当量脱炭させて硬質なセ
メンタイトの組織割合を減少させれば、切削抵抗が小さ
くなって被削性を著しく高めることができる。軸受用鋼
の旋削加工では、表層部を厚さで少なくとも200μm
切削するため、脱炭させる領域を表層部から深さ200
μmの位置までとすれば、製品特性には何ら影響がな
い。
【0021】(c)表層部が軟質なフェライト相を主体
とする組織である場合、切削抵抗が上昇するので却って
被削性が低下してしまう。このため、鋼材の表層部に軟
質のフェライト組織を存在させることにより冷間での曲
げ加工性や鍛造性を向上させようとする特開昭56−5
5520号公報や特開平8−109437号公報で提案
されている技術は、これを切削加工に適用しても、切削
性を高めることはできない。
【0022】(d)表層部を適当量脱炭させて硬質なセ
メンタイトの組織割合を減少させ、しかも、表層部をフ
ェライト相主体の組織にしないためには、軸受要素部品
用の線材、棒鋼の外周近傍、鋼管の内外周近傍の炭素含
有量が適正な範囲にあればよい。
【0023】(e)切削加工は、主に鋼材表層部を含ん
だ状態で行われるため、表層部が上記(d)を満足して
おりさえすれば、内部の領域には関係なく被削性を高め
ることができ、したがって、切削速度の向上と工具寿命
の延長が可能となる。
【0024】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重量%」を
意味する。 (A)線材、棒鋼及び鋼管の化学組成 C:0.75〜1.2% 焼入れと低温での焼戻しによる熱処理を行って軸受用鋼
材(軸受要素部品)に所望の機械的性質を付与させる
が、Cの含有量が0.75%未満では前記焼入れ・焼戻
し後の硬度が低く、所望の転動疲労寿命(後述の実施例
における転動疲労試験で、1×10 以上の転動疲労
寿命)が得られない。一方、Cの含有量が1.2%を超
えると、鋼の凝固開始温度が低下して熱間加工時、なか
でも熱間製管時に割れや疵が多発するし、鋼の凝固時に
巨大な炭化物が生成しやすくなるので、長時間の均質化
熱処理を行わない場合には目標とする転動疲労寿命が得
られない。したがって、Cの含有量を0.75〜1.2
%とした。
【0026】Si:0.1〜1.5% Siは、転動疲労寿命を高めるのに有効な元素であるほ
か、脱酸剤として必要な元素でもある。しかし、その含
有量が0.1%未満では前記の効果が得難い。なお、S
iの含有量が0.4%以上になると被削性向上効果も大
きくなる。一方、Siの含有量が0.8%を超えると脱
スケール性が劣化しはじめ、特に1.5%を超えると、
熱間圧延後や球状化焼鈍後に脱スケールするために長時
間を要するので生産性の大幅な低下を招く。したがっ
て、Siの含有量を0.1〜1.5%とした。Si含有
量の望ましい範囲は0.4〜0.8%である。
【0027】Mn:0.2〜1.5% Mnは、鋼の焼入れ性を向上させると同時に、Sによる
熱間脆性の防止に必要な元素である。これらの効果を発
揮させるためにはMnを0.2%以上含有させる必要が
ある。一方、Mnの含有量が1.0%を超えると被削性
が低下し始め、1.5%を超えると大幅に被削性が低下
し、切削効率の低下、工具寿命の低下を招く。したがっ
て、Mn含有量を0.2〜1.5%とした。Mnの含有
量は0.2〜1.0%とすることが好ましい。
【0028】Cr:0.2〜2.0% Crは、セメンタイト中に濃化しやすい元素で、オース
テナイト中でのセメンタイトの安定性が増し、球状化焼
鈍の短時間化、耐摩耗性の向上が可能である。しかし、
その含有量が0.2%未満では前記の効果が得難い。一
方、1.6%を超えると被削性が低下し始め、2.0%
を超えると大幅に被削性が低下し、切削効率の低下、工
具寿命の低下を招く。したがって、Cr含有量を0.2
〜2.0%とした。Cr含有量の望ましい範囲は0.2
〜1.6%である。
【0029】Al:0.003〜0.05 Alは脱酸作用を有するが、この効果を確実に得るに
、0.003%以上の含有量が必要である。しかしそ
の一方で、Alは非金属系介在物を形成して転動疲労寿
命を低下させてしまう。特にその含有量が0.05%を
超えると、粗大な非金属系介在物を形成しやすくなるの
で転動疲労寿命の低下が著しくなり、所望の転動疲労寿
命(後述の実施例における転動疲労試験で、1×10
以上の転動疲労寿命)が得られなくなる。したがっ
て、Alの含有量は0.003〜0.05%とした。
【0030】Cu:2.0%以下 Cuは添加しなくてもよい。添加すれば耐食性を高める
作用がある。この効果を確実に得るには、Cuは0.0
5%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その
含有量が2.0%を超えると結晶粒界に偏析して鋼塊の
分塊圧延や線材の熱間圧延など熱間加工時における割れ
や疵の発生が顕著になる。したがって、積極的に添加す
る場合のCuの含有量は0.05〜2.0%とするのが
よい
【0031】Ni:4.0%以下 Niは添加しなくてもよい。添加すれば、焼入れ後のマ
ルテンサイト中に固溶して靱性を高める作用を有する。
この効果を確実に得るには、Niは0.2%以上の含有
量とすることが好ましい。しかし、4.0%を超えて含
有させても、前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかり
である。したがって、積極的に添加する場合のNiの含
有量は0.2〜を4.0%とするのがよい
【0032】Mo:0.5%以下 Moも添加しなくてもよい。添加すれば、焼入れ後のマ
ルテンサイト中に固溶して、転動疲労寿命を高める作用
がある。この効果を確実に得るには、Moは0.05%
以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有
量が0.5%を超えると、焼入れ性が高くなり過ぎて熱
間圧延後にマルテンサイトが生成しやすくなり、割れが
発生しやすくなる。したがって、積極的に添加する場合
Moの含有量は0.05〜0.5%とするのがよい
【0033】V:0.4%以下 Vは添加しなくてもよい。添加すれば、オーステナイト
結晶粒を微細化させ、靱性を高める作用を有する。この
効果を確実に得るには、Vは0.05%以上の含有量と
することが好ましい。しかし、0.4%を超えて含有さ
せても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりであ
る。したがって、積極的に添加する場合のVの含有量
0.05〜0.4%とするのがよい
【0034】Nb:0.1%以下 Nbは添加しなくてもよい。添加すれば、オーステナイ
ト結晶粒を微細化させ、靱性を高める作用を有する。こ
の効果を確実に得るには、Nbは0.01%以上の含有
量とすることが好ましい。しかし、0.1%を超えて含
有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりで
ある。したがって、積極的に添加する場合のNbの含有
は0.01〜0.1%とするのがよい
【0035】B:0.003%以下 Bも添加しなくてもよい。添加すれば、セメンタイト中
に固溶してセメンタイトを安定化させ、球状化焼鈍の短
時間化を可能にし、更に、耐摩耗性を向上させる。こう
した効果を確実に得るには、Bは0.0003%以上の
含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が
0.003%を超えると、粗大なセメンタイトを生成し
やすくなり、所望の転動疲労寿命(後述の実施例におけ
る転動疲労試験で、1×10 以上の転動疲労寿命)
が得られない。したがって、積極的に添加する場合の
の含有量は0.0003〜0.003%とするのがよ
【0036】希土類元素:合計で0.01%以下 希土類元素も添加しなくてもよい。添加すれば、熱間加
工性を高める作用を有する。この効果を確実に得るに
は、希土類元素の含有量を合計で0.001%以上とす
ることが好ましい。しかし、希土類元素を合計で0.0
1%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コスト
が嵩むばかりである。したがって、積極的に添加する場
合の希土類元素の含有量合計で0.001〜0.01
とするのがよい
【0037】Ca:0.003%以下 Caは添加しなくてもよい。添加すれば、熱間加工性を
高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Ca
は0.0001%以上の含有量とすることが好ましい。
しかし、Caを0.003%を超えて含有させても前記
の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがっ
て、積極的に添加する場合のCaの含有量は0.000
1〜0.003%とするのがよい
【0038】Mg:0.003%以下 Mgも添加しなくてもよい。添加すれば、熱間加工性を
高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Mg
は0.0001%以上の含有量とすることが好ましい。
しかし、Mgを0.003%を超えて含有させても前記
の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがっ
て、積極的に添加する場合のMgの含有量は0.000
1〜0.003%とするのがよい
【0039】なお、以上に説明したCuからMgまでの
9つの任意添加成分は、必要に応じて、後述の実施例に
示すように、1種以上を積極的に添加する。
【0040】本発明においては、不純物元素としてのT
i、P、S、N及びO(酸素)の含有量を下記のとおり
に制限する。
【0041】Ti:0.002%以下 Tiは、Nと結合してTiNを形成し、転動疲労寿命を
低下させてしまう。特にその含有量が0.002%を超
えると、転動疲労寿命の低下が著しくなり、所望の転動
疲労寿命(後述の実施例における転動疲労試験で、1×
10 以上の転動疲労寿命)が得られない。したがっ
て、Tiの含有量を0.002%以下とした。なお、不
純物元素としてのTiの含有量はできるだけ少なくする
ことが望ましい。
【0042】P:0.02%以下 Pは粒界に偏析して転動疲労寿命を低下させてしまう。
特に、その含有量が0.02%を超えると転動疲労寿命
の低下が著しくなり、所望の転動疲労寿命(後述の実施
例における転動疲労試験で、1×10 以上の転動疲
労寿命)が得られなくなる。したがって、Pの含有量を
0.02%以下とした。
【0043】S:0.015%以下 Sは、Mnと結合してMnSを形成し、転動疲労寿命を
低下させてしまう。特にその含有量が0.015%を超
えると、粗大なMnSを形成しやすくなるので転動疲労
寿命の低下が著しくなり、所望の転動疲労寿命が得られ
ない。したがって、Sの含有量を0.015%以下とし
た。
【0044】N:0.007%以下 Nは、TiやAlと結合してTiNやAlNを形成しや
すく、N含有量が多くなって粗大なTiNやAlNが形
成されると、転動疲労寿命が低下してしまう。特にその
含有量が0.007%を超えると、転動疲労寿命の低下
が著しくなり、所望の転動疲労寿命(後述の実施例にお
ける転動疲労試験で、1×10 以上の転動疲労寿
命)が得られない。したがって、Nの含有量を0.00
7%以下とした。一方、TiやAlと化合物を形成しな
い所謂「フリーN」が多く存在すると、被削性が低下し
てしまうので、不純物元素としてのNの含有量をできる
限り少なくして、工具寿命改善のために0.005%以
下とすることが望ましい。
【0045】O(酸素):0.0015%以下 Oは、酸化物系介在物を形成し、転動疲労寿命を低下さ
せてしまう。特にその含有量が0.0015%を超える
と転動疲労寿命の低下が著しくなり、所望の転動疲労寿
命(後述の実施例における転動疲労試験で、1×10
以上の転動疲労寿命)が得られない。したがって、O
の含有量を0.0015%以下とした。なお、不純物元
素としてのO含有量はできる限り少なくすることが望ま
しい。 (B)線材、棒鋼及び鋼管の横断面における炭素含有量
分布 本発明においては、線材、棒鋼の横断面において、外周
から深さ200μmの位置までの領域におけるC含有量
の平均値、及び、鋼管の横断面において、内外周からそ
れぞれ深さ200μmの位置までの領域におけるC含有
量の平均値を、いずれも0.4×C〜0.9×C%(C
は対象とする線材、棒鋼と鋼管のC含有量)に規定す
る。これは、下記の理由による。
【0046】線材、棒鋼や鋼管を切削加工、なかでも旋
削や突っ切りで加工する場合、線材、棒鋼や鋼管の長手
方向を回転軸として回転させながら加工を行う。このた
め、旋削加工の場合は、常に表面層つまり表層部を含ん
だ状態で切削が行われることになる。又、突っ切り加工
の場合は、加工の初期段階は常に表層部の切削になる。
したがって、旋削加工、突っ切り加工のいずれの場合に
も、表層部を切削しやすい状態にしておきさえすれば、
良好な被削性が確保できる。
【0047】一方、切削加工、なかでも旋削加工によっ
て除去される部分は、少ない場合表層部の200μm、
つまり外周や内周からの深さで200μmであるので、
切削加工後の軸受要素部品に所望の特性を確保させるに
は、それより深い部分の化学組成(C含有量)は「線
材、棒鋼又は鋼管のC含有量」と同じにする必要があ
る。したがって、対象が線材、棒鋼の場合には、外周か
ら深さ200μmの位置までの領域についての脱炭の程
度を、又、対象が鋼管の場合には、内外周からそれぞれ
深さ200μmの位置までの領域についての脱炭の程度
を規定すればよい。以下の説明においては、線材、棒鋼
の横断面における「外周から深さ200μmの位置まで
の領域」と鋼管の横断面における「内外周からそれぞれ
深さ200μmの位置までの領域」とをあわせて「表層
部領域」ということもある。
【0048】本発明は、前記の「表層部領域」、つまり
外周や内周からの深さで200μmの位置までの領域を
適当量脱炭させて、その領域における硬質なセメンタイ
トの組織割合を減少させ、しかも、フェライト相主体の
組織にしないことによって、被削性を高めることを大き
な特徴とする。前記領域におけるC含有量の平均値が
0.9×C%以下の場合に、硬質なセメンタイトの組織
割合が減少して切削抵抗が低下するので、被削性を大き
く高めることができる。一方、前記領域におけるC含有
量の平均値が0.4×C%未満の場合には、「表層部領
域」がフェライト相主体の組織になって切削抵抗が上昇
するので却って被削性が低下するし、この領域より深い
部分のC含有量の減少(脱炭)を防止することも困難に
なる。したがって、「表層部領域」におけるC含有量の
平均値を0.4×C〜0.9×C%とした。なお、工具
寿命を延ばして被削性を一層高めるには、前記領域にお
けるC含有量の平均値を0.4×C〜0.7×C%にす
ることが好ましい。
【0049】ここで、「C」が「線材、棒鋼、鋼管のC
含有量」を指すことは既に述べたとおりであり、例え
ば、とりべ分析値を意味する。又、「(線材、棒鋼や鋼
管の)外周から深さ200μmの位置までの領域におけ
るC含有量の平均値」が、例えば波長分散型の電子線マ
イクロアナライザーを用いて線材、棒鋼や鋼管の横断面
外周部(表層部近傍)のC含有量の線分析を行った場合
の、外周から20μm毎の深さの位置におけるC含有量
の平均値を指し、「(鋼管の)内周から深さ200μm
の位置までの領域におけるC含有量の平均値」が、同様
に、例えば波長分散型の電子線マイクロアナライザーを
用いて鋼管の横断面内周部(内表層部近傍)のC含有量
の線分析を行った場合の、内周から20μm毎の深さの
位置におけるC含有量の平均値を指すことは既に述べた
とおりである。なお、表層部のC含有量は2次イオン質
量分析法によって求めることもできる。
【0050】線材、棒鋼や鋼管の「表層部領域」におけ
るC含有量の平均値を0.4×C〜0.9×C%とする
には、脱炭層がほとんどない熱間圧延線材、熱間圧延棒
鋼や熱間圧延鋼管を光輝炉を用いて球状化焼鈍する場
合、例えば、RXガス(N、H 、COを主成分と
するガス)とNXガス(N を主成分とし、微量のC
O、CO を含むガス)によって光輝炉内の雰囲気を
調整し、(COの分圧) /(CO の分圧)を8
0〜120にして、鋼材(線材、棒鋼、鋼管)を770
〜790℃に加熱して2〜6時間保持した後、5〜15
℃/時間の冷却速度で680〜650℃まで冷却すれば
よい。又、熱間圧延線材、熱間圧延棒鋼や熱間圧延鋼管
に脱炭層がある場合には、その度合いに応じて炉の雰囲
気、つまり上記の(COの分圧) /(CO の分
圧)を120より大きくするように変更すればよい。
【0051】軸受要素部品用の線材、棒鋼や鋼管の組織
については特に規定しないが、セメンタイトを主体とす
る炭化物の形状や粒径は被削性に影響を及ぼし、炭化物
の形状が球状で、しかも粒径が大きい方が被削性が良
い。しかし、後述の実施例の表2、表3及び表4に示す
ように、球状化率90%以上で被削性改善効果はほぼ飽
和するので、線材、棒鋼や鋼管における炭化物の球状化
率は90%以上であることが望ましい。線材、棒鋼や鋼
管における炭化物の球状化率を90%以上にするには、
例えば、熱間圧延した線材、棒鋼や鋼管を770〜79
0℃に加熱して2〜6時間保持した後、5〜15℃/時
間の冷却速度で680〜650℃まで冷却すればよい。
なお、上記の炭化物の球状化率とは、顕微鏡観察したと
き、「その視野における炭化物(セメンタイト)に対し
ての「長径/短径」が2未満である炭化物の割合
(%)」を意味する。球状化処理した炭化物の平均粒径
が0.4μm以上であれば工具寿命が一層長くなる。
【0052】前記(A)項に記載の化学組成と本(B)
項に記載の炭素含有量の分布を有する線材、棒鋼や鋼管
は、通常の方法で冷間鍛造、冷間抽伸や切削などの加工
を施され、更に、焼入れと低温での焼戻しによる熱処理
を受けて所望の機械的性質を有する軸受要素部品に仕上
げられてから、精密機械部品である最終製品としての軸
受に組み立てられる。
【0053】以下、実施例により本発明を更に詳しく説
明する。
【0054】
【実施例】表1に示す化学組成を有する鋼A〜Rを30
0kg真空炉を用いて溶製した。表1における鋼B〜
F、H及びO〜Rは化学組成が前項(A)を満足するも
のであり、一方、鋼A、G及びI〜Nは成分のいずれか
が前項(A)の本発明で規定する含有量の範囲から外れ
た比較例である。なお、化学組成が前項(A)を満足す
るもののうち、鋼CはJIS G 4805で規格化されたSUJ
2に相当する鋼である。
【0055】
【表1】
【0056】次いで、これらの鋼を通常の方法で熱間鍛
造して直径40mmの丸棒にし、次いで、直径35mm
まで機械研削して脱炭層を完全に除去した。この後、上
記の直径35mmの丸棒を、それぞれ雰囲気調整した電
気炉を用いて、球状化焼鈍を行った。なお、炉中雰囲気
はCO、H 、N 及びCO で構成し、(CO
の分圧) /(CO の分圧)を変えることで、外
周部のC含有量を調整した。
【0057】球状化焼鈍の熱処理条件(ヒートパター
ン)は下記の3条件である。このうち、従来の焼鈍処理
のヒートパターンに相当するものは「条件X」で、78
0℃に加熱後660℃まで冷却するのに要する時間は1
2時間である。「条件Y」の場合、前記時間は24時間
で、「条件Z」の場合、前記時間は3時間である。
【0058】条件X:780℃に加熱して2時間保持し
た後、10℃/時間の冷却速度で660℃まで冷却。 条件Y:780℃に加熱して5時間保持した後、5℃/
時間の冷却速度で660℃まで冷却。 条件Z:780℃に加熱して20分保持した後、40℃
/時間の冷却速度で660℃まで冷却。
【0059】又、電気炉の雰囲気条件は下記の4条件で
ある。 条件1:(COの分圧) /(COの分圧)=40
0。 条件2:(COの分圧) /(COの分圧)=20
0。 条件3:(COの分圧) /(COの分圧)=10
0。 条件4:(COの分圧) /(COの分圧)=1
0。
【0060】球状化焼鈍後の丸棒から横断サンプルを採
取し、その外周部(表層部近傍)のC含有量を測定し
た。すなわち、波長分散型の電子線マイクロアナライザ
ーを用いて、C量の線分析を行い、外周から20μm毎
に深さ200μmの位置までのC含有量を測定チャート
から読み取り、この各点の平均値を求めることで、外周
から深さ200μmの位置までの領域におけるC含有量
の平均値を得た。
【0061】又、球状化焼鈍後の炭化物の球状化率と平
均粒径を測定した。すなわち、丸棒の横断面方向に試料
を切り出して、通常の方法で、研磨、腐食を行った後、
走査型電子顕微鏡を用いて各試料の中心部から「R/
2」部(Rは丸棒の半径)の位置を倍率5000倍で1
0視野撮影し、この写真を通常の方法で画像解析して球
状化率を調査した。なお、既に述べたように、球状化率
とは、「その視野における炭化物(セメンタイト)に対
しての「長径/短径」が2未満である炭化物の割合
(%)」をいう。
【0062】又、前記の写真を用いた画像解析から各炭
化物の平均断面積を求め、炭化物の形状を球(したがっ
て、写真上では円)と仮定して直径を求め、これを炭化
物の平均粒径とした。
【0063】球状化焼鈍した丸棒の切削試験も行った。
すなわち、前記の球状化焼鈍した丸棒を通常の方法で酸
洗してスケールを除去した後、工具にJIS規格のSK
H4の三角チップを用い、無潤滑、周速50m/分、切
り込み量0.5mm、送り0.25mm/rev.の条
件で旋削加工して工具寿命を調査し、被削性の指標とし
た。なお、工具寿命は前記条件で丸棒の表層部を旋削加
工した場合に、工具に摩耗や欠けが発生して切削不能と
なるまでの加工時間とした。
【0064】被削性の目標は下記(イ)及び(ロ)の両
方の条件を満足することとした。
【0065】(イ)各鋼について、熱処理条件X、雰囲
気条件1で球状化焼鈍した丸棒の工具寿命を基準とし、
これよりも20%以上工具寿命が長いこと。なお、この
(イ)の条件から、各鋼について丸棒を熱処理条件X、
雰囲気条件1で球状化焼鈍した場合は、被削性の目標を
満足しないと評価する。
【0066】(ロ)JIS G 4805で規格化されたSUJ2
鋼に相当する鋼Cの丸棒を、熱処理条件X、雰囲気条件
1で球状化焼鈍した場合の工具寿命を基準に、これより
も20%以上工具寿命が長いこと。つまり、後述の表2
の試験番号13の工具寿命4.1分より20%以上長い
工具寿命(具体的には4.92分以上の工具寿命)であ
ること。
【0067】更に、切削加工した各試験番号の丸棒か
ら、機械加工により直径12mm、長さ22mmの試験
片を切り出し、この試験片を焼入れ、焼戻し処理(82
0℃で30分保持してから油焼入れし、160℃で1時
間焼戻し)して転動疲労試験に供した。すなわち、円筒
型の転動疲労試験機を用いて、潤滑油に#68タービン
油を使用して、ヘルツ最大接触応力が600kgf/m
、試験片負荷回数が46000回/分の条件で転
動疲労試験を行った。各鋼について試験片は10個ずつ
とし、10個の試験片の中で最初に表面剥離をおこした
ときの回転数を「転動疲労寿命」とした。転動疲労寿命
が1.0×10 以上の場合に転動疲労特性に優れて
いると評価した。
【0068】表2〜5に、球状化焼鈍後の外周から深さ
200μmの位置までの領域におけるC含有量の平均値
(各表においては、「外周部のC含有量の平均値」と記
載)、炭化物の球状化率と平均粒径、旋削加工での工具
寿命、転動疲労寿命の各調査結果をまとめて示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】表2〜5から明らかなように、比較例の鋼
A及び鋼J〜Nを用いた試験番号の場合、つまり、C含
有量が0.75%を下回る鋼Aを用いた試験番号1〜
6、Al含有量が0.05%を上回る鋼Jを用いた試験
番号55〜60、Ti含有量が0.002%を上回る鋼
Kを用いた試験番号61〜66、P含有量とS含有量が
それぞれ0.02%と0.015%を上回る鋼Lを用い
た試験番号67〜72、N含有量が0.007%を上回
る鋼Mを用いた試験番号73〜78、及び、O含有量が
0.0015%を上回る鋼Nを用いた試験番号79〜8
4は、転動疲労寿命が1.0×10 回に達しなてい
ない。上記のうち試験番号1、55、61、67、73
及び79は、外周から200μm深さの位置までの領域
におけるC含有量の平均値が0.9×C%を上回るた
め、工具寿命も目標の値に達していない。又、試験番号
4、58、64、70、76及び82は、外周から20
0μm深さの位置までの領域におけるC含有量の平均値
が0.4×C%を下回るため、工具寿命も目標の値に達
していない。
【0074】比較例の鋼G及び鋼Iを用いた試験番号の
場合、つまり、Mn含有量が1.5%を上回る鋼Gを用
いた試験番号37〜42、及び、Cr含有量が2.0%
を超える鋼Iを用いた試験番号49〜54は、工具寿命
が目標の値に達していない。
【0075】化学組成が本発明で規定する含有量の範囲
内にある鋼であっても、試験番号7、13、19、2
5、31、43、85、91、95及び99は、外周か
ら200μm深さの位置までの領域におけるC含有量の
平均値が0.9×C%を上回るため、工具寿命が目標の
値に達していない。又、試験番号10、16、22、2
8、34、46、88、94、98及び102は、外周
から200μm深さの位置までの領域におけるC含有量
の平均値が0.4×C%を下回るため、やはり工具寿命
が目標の値に達していない。
【0076】上記の比較例に対し、本発明で規定する条
件を満たす本発明例の場合には、各鋼について丸棒を熱
処理条件X、雰囲気条件1で球状化焼鈍した場合に比べ
て工具寿命が20%以上長く、更に、工具寿命は4.9
2分以上で被削性の目標を満足し、しかも、転動疲労寿
命は1.0×10 回を上回っている。
【0077】
【発明の効果】本発明の線材、棒鋼及び鋼管は被削性に
優れ、更に、転動疲労寿命も長いので、ボール、コロ、
ニードル、シャフト、レースなど軸受要素部品の素材と
して利用することができる。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.75〜1.2%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、C
    r:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜0.0
    5%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    不純物中のPは0.02%以下、Sは0.015%以下
    は、Nは0.007%以下、O(酸素)は0.0015
    %以下、Tiは0.002%以下、Cuは0.05%未
    満、Niは0.2%未満、Moは0.05%未満、Vは
    0.05%未満、Nbは0.01%未満、Bは0.00
    03%未満、希土類元素は合計で0.001%未満、C
    aは0.0001%未満、Mgは0.0001%未満
    で、更に、鋼線材の横断面において外周から深さ200
    μmの位置までの領域におけるC含有量の平均値が0.
    4×C〜0.9×C%(但し、Cは鋼線材のC含有量)
    であることを特徴とする被削性に優れた軸受要素部品用
    の鋼線材。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.75〜1.2%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、C
    r:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜0.0
    5%を含有するとともに、Cu:0.05〜2.0%、
    Ni:0.2〜4.0%、Mo:0.05〜0.5%、
    V:0.05〜0.4%、Nb:0.01〜0.1%、
    B:0.0003〜0.003%、希土類元素:合計で
    0.001〜0.01%、Ca:0.0001〜0.0
    03%およびMg:0.0001〜0.003%のうち
    の1種以上を含有し、残部はFe及び不可避不純物から
    なり、不純物中のTiは0.002%以下、Pは0.0
    2%以下、Sは0.015%以下、Nは0.007%以
    下、O(酸素)は0.0015%以下で、更に、鋼線材
    の横断面において外周から深さ200μmの位置までの
    領域におけるC含有量の平均値が0.4×C〜0.9×
    C%(但し、Cは鋼線材のC含有量)であることを特徴
    とする被削性に優れた軸受要素部品用の鋼線材
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.75〜1.2%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、C
    r:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜0.0
    5%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    不純物中のPは0.02%以下、Sは0.015%以下
    は、Nは0.007%以下、O(酸素)は0.0015
    %以下、Tiは0.002%以下、Cuは0.05%未
    満、Niは0.2%未満、Moは0.05%未満、Vは
    0.05%未満、Nbは0.01%未満、Bは0.00
    03%未満、希土類元素は合計で0.001%未満、C
    aは0.0001%未満、Mgは0.0001%未満
    で、更に、棒鋼の横断面において外周から深さ200μ
    mの位置までの領域におけるC含有量の平均値が0.4
    ×C〜0.9×C%(但し、Cは棒鋼のC含有量)であ
    ることを特徴とする被削性に優れた軸受要素部品用の
  4. 【請求項4】 重量%で、C:0.75〜1.2%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、C
    r:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜0.0
    5%を含有するとともに、Cu:0.05〜2.0%、
    Ni:0.2〜4.0%、Mo:0.05〜0.5%、
    V:0.05〜0.4%、Nb:0.01〜0.1%、
    B:0.0003〜0.003%以下、希土類元素:合
    計で0.001〜0.01%、Ca:0.0001〜
    0.003%およびMg:0.0001〜0.003%
    のうちの1種以上を含有し、残部はFe及び不可避不純
    物からなり、不純物中のTiは0.002%以下、Pは
    0.02%以下、Sは0.015%以下、Nは0.00
    7%以下、O(酸素)は0.0015%以下で、更に、
    棒鋼の横断面において外周から深さ200μmの位置ま
    での領域におけるC含有量の平均値が0.4×C〜0.
    9×C%(但し、Cは棒鋼のC含有量)であることを特
    徴とする被削性に優れた軸受要素部品用の棒鋼。
  5. 【請求項5】 重量%で、C:0.75〜1.2%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、C
    r:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜0.0
    5%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    不純物中のPは0.02%以下、Sは0.015%以下
    は、Nは0.007%以下、O(酸素)は0.0015
    以下、Tiは0.002%以下、Cuは0.05%未
    満、Niは0.2%未満、Moは0.05%未満、Vは
    0.05%未満、Nbは0.01%未満、Bは0.00
    03%未満、希土類元素は合計で0.001%未満、C
    aは0.0001%未満、Mgは0.0001%未満
    で、更に、鋼管の横断面において内外周からそれぞれ深
    さ200μmの位置までの領域におけるC含有量の平均
    値がいずれも0.4×C〜0.9×C%(但し、Cは鋼
    管のC含有量)であることを特徴とする被削性に優れた
    軸受要素部品用の鋼管。
  6. 【請求項6】 重量%で、C:0.75〜1.2%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、C
    r:0.2〜2.0%およびAl:0.003〜0.0
    5%を含有するとともに、Cu:0.05〜2.0%、
    Ni:0.2〜4.0%、Mo:0.05〜0.5%、
    V:0.05〜0.4%、Nb:0.01〜0.1%、
    B:0.0003〜0.003%以下、希土類元素:合
    計で0.001〜0.01%、Ca:0.0001〜
    0.003%およびMg:0.0001〜0.003%
    のうちの1種以上を含有し、残部はFe及び不可避不純
    物からなり、不純物中のTiは0.002%以下、Pは
    0.02%以下、Sは0.015%以下、Nは0.00
    7%以下、O(酸素)は0.0015%以下で、更に、
    鋼管の横断面において内外周からそれぞれ深さ200μ
    mの位置までの領域におけるC含有量の平均値がいずれ
    も0.4×C〜0.9×C%(但し、Cは鋼管のC含有
    量)であることを特徴とする被削性に優れた軸受要素部
    品用の鋼管。
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