JP3398342B2 - 4,6−ジアミノレゾルシンの製造方法 - Google Patents

4,6−ジアミノレゾルシンの製造方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はポリベンゾビスオキ
サゾール(PBO)のモノマーである4,6−ジアミノ
レゾルシンの新規な製造方法に関する。PBO繊維は特
公昭61−501452号公報に記載されているように
強度、弾性率、耐熱性、耐薬品性等の諸物性において従
来品より優れており、アラミドを凌ぐスーパー繊維とし
て構造材や断熱材など種々の用途への応用が期待されて
いる産業上極めて有用性が高い樹脂である。4,6−ジ
アミノレゾルシンはPBOのモノマーとなることからそ
の原料として重要である。 【0002】 【従来の技術】従来の4,6−ジアミノレゾルシンの製
造方法としてはレゾルシンをアセチル化してニトロ化す
る方法(Ber.Dtsch.Chem.Ges.,1
6,552,1883)、1,3−ビス(アルキルカー
ボネート)ベンゼンをニトロ化する方法(特開平2−1
36号公報)などで前駆体のジニトロレゾルシンを合成
し還元する方法がある。 【0003】しかしこれらの方法においてはレゾルシン
の水酸基に対して保護基を導入するため工程が煩雑で高
コストとなり、また加水分解工程において脱離した保護
基が回収不可能な副生成物となるなど工業的には問題が
あった。 【0004】また保護基を使用しない方法としてはハロ
ベンゼンを原料として用いる方法が提案されており、ト
リクロロベンゼンをニトロ化する方法(特開平2−50
0743号公報)、ジハロベンゼンをニトロ化してアル
カリで加水分解する方法(特開平1−238561号公
報、特開平7−233127号公報、特開平7−316
102号公報、特開平8−73417号公報)等が知ら
れている。 【0005】しかしこれらの方法においては4,6−ジ
ニトロレゾルシンは加水分解を行なうアルカリ条件下で
不安定であるため、生成した4,6−ジニトロレゾルシ
ンの分解を避けるために工程が煩雑になりがちであっ
た。またトリクロロベンゼンおよびそのニトロ化物は毒
性が強く皮膚のかぶれを引き起こすなどの問題があり、
作業者の安全上ハロベンゼンのニトロ化物を経由する事
は好ましくない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は4,6
−ジアミノレゾルシンを工業的に有利に製造する新規な
方法を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するため鋭意検討を行なった結果、レゾルシンをス
ルホン化して2,4,6−トリスルホン酸レゾルシンと
なし、さらに2,4,6−トリスルホン酸レゾルシンを
ニトロ化すると高い位置選択性で2−スルホン酸−4,
6−ジニトロレゾルシンが得られ、該化合物を加水分解
して4,6−ジニトロレゾルシンとした後に還元する事
で4,6−ジアミノレゾルシンが高収率で得られること
を見出し、本発明を完成するに到った。 【0008】即ち、本発明は以下のものである。次の各
工程からなる4,6−ジアミノレゾルシンの製造方法。
レゾルシンをスルホン化剤と接触させて2,4,6−ト
リスルホン酸レゾルシンを製造する第一工程、2,4,
6−トリスルホン酸レゾルシンをニトロ化剤と接触させ
て2−スルホン酸−4,6−ジニトロレゾルシンを製造
する第二工程、2−スルホン酸−4,6−ジニトロレゾ
ルシンを加水分解して4,6−ジニトロレゾルシンを製
造する第三工程、4,6−ジニトロレゾルシンを還元し
て4,6−ジアミノレゾルシンを製造する第四工程。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明における第一工程はレゾル
シンをスルホン化して2,4,6−トリスルホン酸レゾ
ルシンを得る工程である。ここでは該物質を製造し得る
ような公知のスルホン化剤が使用でき、例えば濃硫酸、
発煙硫酸、三酸化イオウ等が用いられる。 【0010】反応は適当な溶媒中で行なってもよいが溶
媒を用いず過剰の濃硫酸または発煙硫酸中で反応を行な
うのが工業上有利であり、加水分解による脱スルホン化
を防ぐために80〜100%濃度の濃硫酸または発煙硫
酸を使用するのが好ましく、さらに好ましくは95重量
%以上の濃硫酸または発煙硫酸であり、発煙硫酸を使用
するのが最も好ましい。 【0011】反応中に生成する水によって硫酸濃度が低
下するため、濃硫酸または発煙硫酸の量は反応終了時に
硫酸濃度が60%以上となるような量を使用するのが好
ましい。さらに好ましくは反応終了時に硫酸濃度が90
重量%以上となるような量であり、最も好ましくは反応
終了時に硫酸濃度が100重量%または過剰のSO3
含むような量である。その値は使用する硫酸濃度によっ
ても異なるが、容積効率などを考慮するとレゾルシンに
対して5〜20重量倍程度が好ましい。 【0012】反応は所望の物質が得られるあらゆる温度
範囲で行なう事ができるが、好ましい反応温度は0℃〜
200℃、さらに好ましくは20〜100℃であり、最
も好ましくは40〜90℃である。 【0013】本発明における第二工程は2,4,6−ト
リスルホン酸レゾルシンのニトロ化により2−スルホン
酸−4,6−ジニトロレゾルシンを得る工程である。こ
こでは該化合物を製造し得るような公知のニトロ化剤が
使用でき、例えば硝酸、発煙硝酸、硝酸ナトリウム、硝
酸カリウムなどの硝酸塩等が用いられる。 【0014】第二工程では2,4,6−トリスルホン酸
レゾルシンを単離してニトロ化してもよいが、スルホン
化マスにニトロ化剤を装入してワンポットでニトロ化を
行なうのが工業的に有利である。 【0015】使用するニトロ化剤の量はレゾルシンに対
して1〜10モル倍程度であればよく、反応を十分に進
行させかつ過剰なニトロ化を抑制するためには2〜4モ
ル倍が好ましい。 【0016】反応は所望の物質が得られるあらゆる温度
範囲で行なう事ができるが、反応温度が高すぎる場合は
反応の進行が早く望ましくない副反応が起こるため、通
常は冷却により反応温度を制御しながら行なわれる。好
ましい反応温度は0〜80℃、さらに好ましくは0〜5
0℃である。 【0017】本発明における第三工程は2−スルホン酸
−4,6−ジニトロレゾルシンを加水分解して4,6−
ジニトロレゾルシンを得る工程である。 【0018】加水分解は水または触媒として酸またはア
ルカリを添加した水溶液中で行われる。高濃度のアルカ
リ水溶液中では4,6−ジニトロレゾルシンの分解反応
が起こるおそれがあるため水または鉱酸水溶液中で行う
のが好ましく、鉱酸水溶液中で行うのがより好ましい。 【0019】使用される鉱酸は硫酸、塩酸、りん酸等で
あり脱離したスルホン基が再結合することを防ぐために
必要に応じて硫酸結合剤を添加してもよい。加水分解に
おける、好ましい鉱酸濃度範囲は10〜90重量%であ
り、10重量%未満では加水分解速度が遅く十分な収率
を得るためには長時間を要するため好ましくなく、また
90重量%を超えると得られる結晶の着色が激しくなる
ため好ましくない。 【0020】使用する鉱酸水溶液の量は特に制限される
ものではないが、攪拌効率および容積効率の観点より2
−スルホン酸−4,6−ジニトロレゾルシンに対して2
〜50重量倍程度が好ましい。反応温度は50℃〜還流
温度である。 【0021】この工程は2−スルホン酸−4,6−ジニ
トロレゾルシンを単離して行ってもよいし第二工程より
単離することなく引き続き行なうこともできる。第二工
程より引き続き加水分解を行なう場合は反応マスを所定
条件の鉱酸水溶液になるように稀釈すればよい。 【0022】加水分解反応が進行すると4,6−ジニト
ロレゾルシンの結晶が徐々に析出するため、反応終了後
に結晶を濾過する事で4,6−ジニトロレゾルシンが得
られる。得られた4,6−ジニトロレゾルシンは必要に
応じてエタノールなどの溶媒で再結晶して精製する事が
できる。 【0023】本発明における第四工程は4,6−ジニト
ロレゾルシンを還元して4,6−ジアミノレゾルシンを
得る工程である。ここでは所望の物質が得られるどのよ
うな還元方法を用いても良いが、通常貴金属触媒の存在
下で接触還元が行われる。ここで用いられる貴金属触媒
としては適当な担体上に担持された白金族の金属、たと
えばパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどが挙
げられる。担体としては炭素、シリカ、アルミナ等が挙
げられ、炭素上に担持されたパラジウムを用いるのが好
ましい。 【0024】使用する触媒量は4,6−ジニトロレゾル
シンに対して0.1〜10重量%であり、0.5〜5重
量%が好ましい。反応温度は20〜100℃であり、水
素圧力は0.1MPa〜10MPaである。 【0025】反応に使用できる溶媒は水、有機溶媒また
は有機酸であり、有機溶媒としてはベンゼン、トルエン
などの芳香族炭化水素類、メタノール、エタノールなど
のアルコール類などが挙げられ、有機酸としては酢酸、
プロピオン酸などが挙げられる。なかでもアルコール類
を使用するのが好ましく、メタノールを使用するのがよ
り好ましい。 【0026】生成した4,6−ジアミノレゾルシンは酸
化分解を避ける為に鉱酸塩とした後、沈殿、濾過のよう
な公知の方法により単離される。具体的には例えば反応
マスを塩化第一すずを添加した希塩酸水溶液中に排出し
て4,6−ジアミノレゾルシンを溶解させ、濾過して触
媒を除去した後減圧下で溶媒を留去するか、濃塩酸を加
えて結晶を析出させた後に濾過する事で行われる。 【0027】得られた4,6−ジアミノレゾルシン二鉱
酸塩はさらに再結晶のような方法を用いて精製する事が
できる。具体的には例えば塩化第一すずを加えた水に粗
4,6−ジアミノレゾルシンを溶解した後に活性炭を添
加して処理し、濾過によって活性炭を除去した後に濃塩
酸を加えて晶析する事ができる。 【0028】 【実施例】以下実施例をあげて本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件 カラム:YMC−312A(ODS) 移動相:アセトニトリル:水:PIC=1000:20
00:10 PIC=10%テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロ
キシドメタノール溶液 流速 :1ml/min 検出波長:254nm 恒温層:40℃ 実施例1 30%発煙硫酸500gにレゾルシン55g(0.5モ
ル)をゆっくり装入した後に90℃に昇温したところ反
応マスは暗赤色の溶液となり、液体クロマトグラフィー
による分析で2,4,6−トリスルホン酸レゾルシンの
生成が確認された。 【0029】スルホン化マスを氷冷し、60%硝酸10
5g(1.0モル)を滴下したところ激しい発熱があ
り、反応マスは黄褐色のスラリーとなった。このニトロ
化マスを氷1095g中に装入し、100℃に加熱して
加水分解を行なったところ徐々に結晶の析出が見られ
た。これを濾別して500gの水でスラッジした後窒素
下で風乾し、粗4,6−ジニトロレゾルシン81.2g
(収率81.2%)を得た。 【0030】粗4,6−ジニトロレゾルシン30gを1
500gのエタノール中で再結晶を行ない、精4,6−
ジニトロレゾルシン24.1gを得た。この4,6−ジ
ニトロレゾルシン4.0gを100mlのメタノール中
に装入し、5%パラジウムカーボン(50%wet品)
0.0396gを加えて60℃、平均水素圧力0.8M
PaGで水添反応を行った。反応マスを6000ppm
の塩化第一すずを含有する5%塩酸水中に排出し、濾過
して触媒を除去した後にHPLCによる分析を行い、目
的とする4,6−ジアミノレゾルシンが96.2モル%
の収率で生成している事を確認した。該濾液をエバポレ
ーターで脱溶媒し、粗4,6−ジアミノレゾルシンの結
晶を得た。該結晶を塩化第一すず0.32gを含んだ水
21.3g中に溶解し、活性炭0.2gを加えて30分
攪拌した後に濾過して活性炭を除去した。濾液に36%
塩酸16.0gを徐々に滴下したところ徐々に結晶の析
出が見られた。結晶を濾別して減圧下50℃で乾燥し、
4,6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩3.03g(収率
46.4%)を得た。 【0031】 【発明の効果】本発明においてはレゾルシンに対し高い
位置選択性を有して4,6−位のニトロ化を行なうこと
ができる。即ち本発明はレゾルシンを出発原料にして、
スルフォン化、ニトロ化、加水分解、還元の単位操作に
より4,6−ジアミノレゾルシンを高選択率、高収率で
工業的に有利に製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 楠本 昌彦 福岡県大牟田市浅牟田町30番地 三井化 学株式会社内 (56)参考文献 欧州特許出願公開1048644(EP,A 1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 213/02 C07C 215/80 C07B 61/00 300 C07C 201/14 C07C 205/23 CAPLUS(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】次の各工程からなる4,6−ジアミノレゾ
    ルシンの製造方法。 (1)レゾルシンをスルホン化剤と接触させて2,4,
    6−トリスルホン酸レゾルシンを製造する第一工程、
    (2)2,4,6−トリスルホン酸レゾルシンをニトロ
    化剤と接触させて2−スルホン酸−4,6−ジニトロレ
    ゾルシンを製造する第二工程、(3)2−スルホン酸−
    4,6−ジニトロレゾルシンを加水分解して4,6−ジ
    ニトロレゾルシンを製造する第三工程、(4)4,6−
    ジニトロレゾルシンを還元して4,6−ジアミノレゾル
    シンを製造する第四工程。
JP21301399A 1999-04-30 1999-07-28 4,6−ジアミノレゾルシンの製造方法 Expired - Lifetime JP3398342B2 (ja)

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