JP3390182B2 - 炭素繊維系成形断熱材及びその製造方法 - Google Patents

炭素繊維系成形断熱材及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、断熱特性、特に高
温断熱特性に優れた炭素繊維系成形断熱材に関する。よ
り詳細には、本発明は、不活性雰囲気では極めて安定で
あり、500〜2,800℃の範囲で優れた耐熱性、形
態安定性を示し、特に放射伝熱に対する優れた断熱性を
有する炭素繊維系成形断熱材を提供する。さらに、本発
明の炭素繊維系成形断熱材は、高温域の断熱特性に優れ
ており、ガラスの溶融、陶磁器類の焼成、金属の精錬、
セラミックスの焼結あるいは炭素材の焼成を行う高温炉
等の断熱に用いることができる。さらに、本発明の炭素
繊維系成形断熱材は、放射線に対する安定性が優れてお
り、原子炉及び原子力発電設備の断熱材として優れた性
能を示す。
【0002】
【従来の技術】高温域で使用される断熱材としては、従
来多孔質のセラミックスが多く用いられている。これら
の断熱材は、確かに優れた高温安定性を有しているが、
低い熱伝導率を与えるためには、かなりの量の空孔を持
つことが必要とされる。これらの空孔は完全に閉じた気
泡ではないが、気体の流通はかなり制限されているのが
普通である。これは、空孔の周辺部に気体が容易に流通
する大きな欠陥があると、セラミックス成形品の強度が
小さくなるため、それを防止する必要上、かなり小さい
通路で外部に連結しているからである。このような形態
上の特性から、従来のセラミックス系断熱材は、概して
急熱、急冷に弱く、スポーリングと呼ばれる、温度変化
による表面からの構造崩壊が頻発する問題を有してい
た。スポーリングの少ない断熱材を得るためには、概し
て気孔率が少なく、断熱特性の良くない材料を選ぶ必要
があり、断熱材の量を多く必要とする問題を有してい
る。
【0003】従来のセラミックス系の断熱材は、対流伝
熱及び伝導伝熱に対しては、優れた断熱効果を有してい
るが、赤外線乃至可視光など、放射伝熱の主体をなす光
線を吸収する能力が概して小さく、放射伝熱に対する断
熱効果が概して不十分である問題がある。光線を吸収す
る能力が大きい炭素系断熱材としては、膨張黒鉛を用い
たものが知られているが、原料として結晶サイズの大き
い天然黒鉛を使用する必要があり、コストが高いこと及
び不純物が多い問題がある。これらの問題を解決するた
めに、セラミックスの繊維状物を断熱材とすることが広
く行われている。このような繊維状物は、確かに優れた
断熱効果を示すが、製造が難しいことから概して高価で
ある問題があり、高温炉が高価であることの一原因とな
っている。
【0004】また、断熱機構の面から断熱材の性能を考
えると、500℃以上の高温域では、伝熱機構の主体が
放射伝熱に移り、対流伝熱や伝導伝熱の寄与が相対的に
小さくなっていることから、200℃以下の低温域で有
効な断熱材が、必ずしも高温域で良好な性能を示さない
問題がある。特に、セラミックス系繊維質断熱材の場
合、低温域では優れた断熱効果を有するものの、繊維の
透明性が概して良好であること、繊維の表面が極めて平
滑であることから、光線を吸収、散乱させる能力が小さ
く、高温域では放射伝熱の断熱効果が十分でない問題が
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の高温
域の断熱材が、急激な温度変化に弱い問題点及び放射伝
熱に対する断熱効果が概して不十分である問題点、並び
にセラミックス系の繊維質断熱材が概して高価であり、
放射伝熱に対する断熱効果が不十分である問題点を解決
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を種々検討した結果、低吸湿性(2%以下)のピッチ系
炭素繊維原料を用いて、高嵩密度(0.01〜0.5g
/cm 3 )に成形処理し、軽度炭化たシート状物を積
層し、炭化により非繊維状の炭化物となり得る結合材マ
トリックスで含浸・硬化して該炭素繊維間を点接着し、
更に炭化して、成形形状に保持するようにした成形断熱
材を用いることにより、特に、成形断熱材の厚さ方向の
熱伝導率が極めて小さく(1.0kcal/m・hr℃
以下)、吸湿性が小さくかつ放射伝熱の吸収にも優れ
いるので、高温域の断熱材として極めて有用で、運転時
間の短縮や断熱材の劣化防止に有用で、且 つ放射線に対
する安定性が優れた断熱材が提供しうることを見出し、
本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は: 嵩密度が0.0
1〜0.5g/cm3 、2,200℃における成形断熱
材の厚さ方向の熱伝導率が1.0kcal/m・hr℃
以下である炭素繊維系成形断熱材であって、該炭素繊維
系成形断熱材が温度20℃相対湿度65%の雰囲気中で
吸湿性が2%以下であるピッチ系炭素繊維を用いて製造
され、炭素繊維の含有率が約60〜95重量%であり、
かつ非繊維状の炭化物の介在により成形形状を保持す
る、炭素繊維系成形断熱材であり、さらに 非繊維状
の炭化物が、フェノール樹脂、フラン樹脂、アミノ樹
脂、タール及びピッチの群から選ばれた1種もしくは2
種以上の物質に由来する点にも特徴を有し、 炭素繊
維が平均単繊維直径1〜9μmを有するものである点に
も特徴を有し、さらに、 (a)プリカーサー繊維を
メルトブロー法で紡糸する紡糸工程に直結した工程でシ
ート状に捕集してシート状物とし、(b)その後不融
化、軽度炭化処理をし、(c)得られた炭素繊維からな
るマット状物を所要枚数積層し、2〜100パンチ/c
2 の密度のニードルパンチを行い、(d)さらに、フ
ェノール樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、タール及びピ
ッチの群から選ばれた1種もしくは2種以上の物質を含
浸した後、樹脂の硬化を行い、該含浸した物質を炭化さ
せる、〜のいずれかに記載の炭素繊維系成形断熱材
の製造方法をも提供する。
【0008】以下、更に詳細に説明する。本発明の炭素
繊維系成形断熱材に用いられる炭素繊維としては、好ま
しくは平均単繊維直径1〜9μmを有するものが必要で
ある。なお、ニードルパンチなどの成形処理する前の軽
度炭化処理した炭素繊維の平均単繊維直径は、高温焼成
した炭素繊維の平均単繊維直径より若干(約10%程
度)大きい。この平均単繊維直径とは、無作為に抽出さ
れた例えば100個の単繊維試料を光学顕微鏡或いは電
子顕微鏡により測定したそれぞれの値の平均値により表
される。
【0009】また、高温域の断熱材は、2,200℃に
おける成形断熱材の厚さ方向の熱伝導率が1.0kca
l/m・hr℃以下、好ましくは0.7kcal/m・
hr℃以下である。この際に、平均単繊維直径が9μm
を超える場合、該熱伝導率が1.0kcal/m・hr
以下に抑えることが難しい。また、1μm未満の場
合、プリカーサーの繊維化の段階で種々のトラブルを生
じ易くなり、繊維状を示さぬ異形粒子の混入や糸切れの
多発を生じるので好ましくない。このように、断熱材の
構成繊維として炭素繊維径が細いものを用いることによ
り、放射伝熱に対する断熱効果が極めて高くなる。
【0010】炭素繊維としては、断熱効果の高い形状
への紡糸等の面から、石油ピッチ系、石炭ピッチ系等の
ピッチ系のものを用いる必要があり好ましくはメソフ
ェースピッチ系のものである。ピッチ系炭素繊維のうち
でも、メソフェースピッチを原料とするものは、より吸
湿性が小さいので本発明の炭素繊維系成形断熱材として
好適な性質を有する。
【0011】また、該炭素繊維としては、吸湿性が小さ
いものを用いる必要がある即ち、温度20℃、相対湿
度65%の雰囲気中で吸湿性が2%以下であることが
要でありましくは0.1%以下である。吸湿性の値
は、吸湿された水分重量の炭素繊維系成形断熱材重量に
対する割合である。断熱材として使用する際に、吸湿性
が大きい場合には、室温から昇温時に水分の蒸発が生じ
て、断熱効果を低下させる問題があり、また、炭素繊維
の周囲雰囲気中に水蒸気を持ち込み、高温時の炭素繊維
の劣化の原因となる問題がある。
【0012】本発明において、炭素繊維間に介在して該
炭素繊維を成形形状に保持するために用いる、非繊維状
の炭化物は、原料としてフェノール樹脂、フラン樹脂、
アミノ樹脂、タール及びピッチの群から選ばれた1種も
しくは2種以上の物質に由来するものである。本発明で
は、上記の特定の樹脂またはタールなどを結合材として
用いたので、炭素繊維のマット状物を単に積層しただけ
のものでなく、中間段階で樹脂またはタールなどによっ
て繊維間を接着して成形することができて、かなり複雑
な形状の成形断熱材を提供できる。
【0013】本発明の炭素繊維系成形断熱材は、温度2
0℃相対湿度65%の雰囲気中で吸湿性が2%以下であ
るピッチ系炭素繊維を用いて製造され、嵩密度が0.0
1〜0.5g/cm3 、好ましくは0.05〜0.5g
/cm3 ;2,200℃における成形断熱材の厚さ方向
の熱伝導率が1.0kcal/m・hr℃以下、好まし
くは0.7kcal/m・hr℃以下;炭素繊維の含有
率が約60〜95重量%であり、かつ非繊維状の炭化物
の介在により成形形状を保持される点に特徴を有する。
【0014】即ち、本発明の成形断熱材の嵩密度は、
0.01〜0.5g/cm3 であることが必要であり
好ましくは0.05〜0.5g/cm3 である。断熱効
果を上げるには、断熱材中に内在するガス層を出来る限
り細孔化することが好ましい。また、断熱材中の炭素繊
維の配向がZ軸方向に連続化しない限り、嵩密度を大き
くする程断熱効果が向上するが、断熱材の製造上の限界
やコスト的に見て、上記0.01〜0.5g/cm3
嵩密度が適用可能である。嵩密度が0.01g/cm3
未満と小さすぎると、光の散乱効果が低くなるためか熱
伝導率が大きくなり、逆に嵩密度が0.5g/cm3
越えて大きすぎても熱伝導率が大きくなってしまい、断
熱効果が下がる。成形断熱材の嵩密度は、ニードルパン
チの密度或いは炭化の際に加える圧力などの大きさを調
節することにより、所定の嵩密度にすることができる。
【0015】本発明の炭素繊維系成形断熱材は、構成炭
素繊維の含有率が約60〜95重量%であることが必要
であり、好ましくは約70〜80重量%である。逆に、
炭化により非繊維状の炭化物となる結合材マトリックス
の含有率が約5〜40重量%、好ましくは約10〜30
重量%となることが望ましい。更に、成形断熱材の断熱
性の観点から見ると、厚み方向(断熱したいZ方向)に
は炭素繊維、マトリックスとも連続することは好ましく
なく、X、Y平面にのみ配向しているのが良いと考えら
れる。
【0016】一般に、該結合材マトリックスは加工など
に耐えるように成形形状の保持のために用いられるもの
であり、一般に点接着で繊維間を接着するのが良く、マ
トリックス自体出来るだけ少ないのが良いが、成形形状
を保持するためには或る程度のマトリックス量の確保が
必要であり、通常マトリックスの含有率が約10〜40
重量%である。本発明で言う炭素繊維の含有率又はマト
リックス結合材の含有率は、繊維単味の熱処理による黒
鉛化収率をベースにした計算値である。
【0017】また、本発明において定義される炭素繊維
系成形断熱材の熱伝導率の測定方法は、JIS A 1
412「保温材の熱伝導率測定方法」による。ただし、
温度の測定に該規格のような熱電対を使用することは困
難であるので、放射温度計を使用する。本発明の炭素繊
維系成形断熱材は、2,200℃における成形断熱材の
厚さ方向の熱伝導率が1.0kcal/m・hr℃以
下、好ましくは0.7cal/m・hr℃以下であ
る。
【0018】即ち、本発明の炭素繊維系成形断熱材は、
前述のとおり、 (イ)成形断熱材の嵩密度が0.01〜
0.5g/cm3 、好ましくは0.05〜0.5g/c
3 と高嵩密度になる成形状態にし、 (ロ)2,200℃における成形断熱材の厚さ方向の熱伝
導率が1.0kcal/m・hr℃以下、好ましくは
0.7kcal/m・hr℃以下であり、 (ハ)温度20℃相対湿度65%の雰囲気中で吸湿性が2
%以下であるピッチ系炭素繊維を用い (ニ)断熱材中の炭素繊維の含有率が約60〜95重量%
(即ち結合材マトリックスの含有率を、点接着により炭
素繊維間を成形状態に保持できる程度の約5〜40重量
%)とし (ホ)非繊維状の炭化物の介在により成形形状を保持 〔 (ヘ)更に、断熱材の構成炭素繊維とし平均単繊維直
径1〜9μmと言う細径のものを用い〕などにより、 (a) 上記熱伝導率値で示される極めて高い断熱効果を発
揮できると共に、特に放射伝熱に対して優れた断熱特性
を示し、 (b)また、不活性雰囲気下では約2,800℃まで安定
して使用でき、高温での断熱材として有用である点で技
術的意義がある。
【0019】本発明の上記の炭素繊維系成形断熱材の製
造は(a) プリカーサー繊維をメルトブロー法で紡糸す
る紡糸工程に直結した工程でシート状に捕集してシート
状物とし、 (b)その後不融化、軽度炭化処理をし、(c)
得られた炭素繊維からなるシート状物を所要枚数積層
し、2〜100パンチ/cm2 の密度のニードルパンチ
を行い、(d) さらに、フェノール樹脂、フラン樹脂、ア
ミノ樹脂、タール及びピッチの群から選ばれた1種もし
くは2種以上の物質を含浸した後、樹脂の硬化を行い、
(e) 該含浸した物質を炭化させることにより行われる。
【0020】以下、更に詳細に製造法を説明する。 (a) 工程; (イ)プリカーサー繊維の製造に用いる紡糸工程は、遠心
紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法など任意の紡
糸手段が採用できるが、メルトブロー法によるものが、
単繊維の太さの小さいものが比較的容易に製造できるの
で好ましい。単繊維の細いものほど表面の曲率半径が小
さいため、その表面において光を散乱する能力が大きい
傾向があり、放射伝熱に対する断熱に大きく寄与すると
考えられ。また、単繊維の細いものほど、対流伝熱に
対する断熱に寄与することが知られている。このような
ことから、メルトブロー法による繊維は、高温域におけ
る断熱特性に優れていると考えられる。本発明に用いる
プリカーサー繊維の中で、メルトブロー法により製造さ
れたピッチ繊維が、成形断熱材の構成繊維として特に優
れている。その理由は、この繊維が概して直線的でな
く、カールやクリンプを有しているためである。繊維が
直線的でない部分は、ニードルパンチの際に繊維に移動
できる余裕を与え、繊維が切断される割合が少ない上、
繊維が絡合している場所で、シート状物の面に斜めにな
っている割合が高くなり、繊維を介しての伝導伝熱が少
なくなり、断熱効果が阻止されない利点がある。
【0021】(ロ)ピッチ系炭素繊維、特にメソフェース
ピッチ炭素繊維を用いることにより、低吸湿性の炭素
繊維成形断熱材を与える。具体的には、メルトブロー法
による紡糸を行う場合には、通常、紡糸口金温度290
℃〜360℃、気体温度310〜380℃、気体の噴出
速度100〜340m/秒の紡糸条件で、高速の気体を
噴出するスリット又はノズル中に設けた紡糸孔から紡糸
すれば良い。
【0022】(ハ)また、本発明の製造法において、紡糸
工程に直結した工程でシート状に捕集してシート状物と
する必要がある。このような方法によると、従来の不織
布の製造工程に比べて、開繊やカーディングのような伸
度の小さい繊維を損傷する工程を含まないために、製品
に微細化した繊維を含まない利点がある。微細化した繊
維は、断熱材の使用時に移動して周辺を汚染したり、換
気装置のフィルターに詰まる問題を有する。さらに、紡
糸工程に直結した工程でシート状に捕集する方法では、
概して低コストでシートを製造することができる利点を
有する。 (ニ)本発明の方法では、上記(a) 工程におけるシート状
に捕集する工程に続いて、必要に応じて、得られたプリ
カーサー繊維シート状物を連続的にクロスラップさせ
て、目付けムラのない積層シート状物にしても良い。
【0023】(b)工程; 本発明の方法において、不融化、軽度炭化処理は、常法
に従って任意に適用できる。例えば、不融化処理は、昇
温温度0.2〜13℃/分、好ましくは2〜10℃/分
で200〜400℃の温度条件で、空気、酸素又はNO
x等の酸化性ガスの雰囲気中で熱処理することにより行
われる。更に、炭化処理は、その後に、ニードルパンチ
処理など賦形処理を行う関係上、軽度の炭化処理をする
必要がある。例えば、常法に従って、窒素ガスなどの不
活性ガス中で5〜100℃/分の昇温温度で300〜1
500℃、好ましくは500〜1000℃で炭化する。
【0024】(c) 工程; 次に、得られた不融化、炭化繊維シート状物をその目的
・用途に応じて所要枚数積層し、ニードルパンチ処理す
る。この場合に、2〜100パンチ/cm2 の密度のニ
ードルパンチを行う必要がある。ニードルパンチ密度が
2パンチ/cm2 未満の場合、得られた炭素繊維系成形
断熱材の強度が弱くなるため、ハンドリング性の点で問
題となり、好ましくない。また、ニードルパンチ密度が
100パンチ/cm2 越える場合、断熱材の面に垂直
方向に配向する炭素繊維の含有率が大きくなるため、伝
導伝熱に関する熱伝導率が高くなり、断熱効果が低下す
るので好ましくないし、さらに、繊維の切断により成形
断熱材の強度が小さくなるので好ましくない。
【0025】(d) 工程; (イ)まず、ニードルパンチ処理済のシート状物に、フェ
ノール樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、タール及びピッ
チの群から選ばれた1種もしくは2種以上の物質であ
り、かつ炭化により非繊維状の炭化物になり得る結合材
マトリックスを含浸し、炭素繊維間を成形状態に保持で
きる程度に点接着する。この場合、結合材マトリックス
の含浸量は、成形断熱材を保形できる範囲の最小量でよ
いが、好ましくは成形断熱材中のマトリックスの含有率
が約5〜40重量%に相当する量である。 (ロ)続いて、含浸結合材マトリックスを常法に従って、
例えば加熱などの手段により硬化する。 (ハ)最後に、該処理物を常法に従って炭化する。例え
ば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で900〜20
00℃に一定時間熱処理することにより行われる。
【0026】本発明の炭素繊維系成形断熱材は、上記の
ように炭素繊維のシート状物を単に積層しただけのもの
でなく、中間段階(d) で樹脂またはタール類などによっ
て炭素繊維間を接着して成形することができるので、か
なり複雑な形状にすることができる。
【0027】
【作用】高温域の伝熱は、放射伝熱が主体となるため、
対流伝熱及び伝導伝熱が主体の低温域の伝熱とはかなり
様相が異なっている。本発明の炭素繊維系成形断熱材
は、放射伝熱に与かる光線の吸収能力及び散乱能力に優
れており、放射伝熱に対する断熱効果が良好である。本
発明の炭素繊維系成形断熱材が放射伝熱に対する断熱効
果が大きい理由は、高い嵩密度を有する且つ単繊維の
細い)ものほど表面の曲率半径が小さいため、光を散乱
する能力が大きく、放射伝熱に対する断熱に大きく寄与
することと考えられる。また、本発明の炭素繊維系成形
断熱材の原料の中で、メルトブロー法により製造された
プレカーサーピッチ系炭素繊維が特に優れている理由と
しては、この炭素繊維が概して直線的でなく、カールや
クリンプを多く含有することにある。ピッチ系炭素繊維
が直線的でない部分は、ニードルパンチの際に繊維が移
動できる余裕を与え、繊維が切断する割合が少なくなる
上、炭素繊維が絡合している場所でシート状物の面に斜
めになっている割合が高くなり、炭素繊維を介しての伝
導伝熱が少なくなり、絡合が進んでいる割に、断熱効果
が阻害されない利点を有する。
【0028】
【実施例】本発明を以下の実施例により具体的に説明す
るが、これらは本発明の範囲を制限しない。
【実施例1】軟化点284℃、メソフェーズ含有率10
0%の石油系ピッチを原料として、メルトブロー法によ
り繊維を製造し、ネットコンベヤーの上に30g/m2
の目付け量のピッチ繊維シートを捕集した。この連続的
に得られたシートを水平クロスラッパーにて積層し、6
00g/m2 の目付け量の目付けムラのない積層シート
とした。このピッチ繊維の積層シート状物を、空気中昇
温速度5℃/分で300℃まで昇温させつつ熱処理して
不融化した後、更に不活性気体中で昇温速度5℃/分で
615℃まで昇温させて軽度に炭化させた。引き続き、
パンチ密度13回/cm2 として嵩密度0.11g/c
3 のマット状物を作製した後、このシート状物を2枚
重ね、繊維含有率90重量%になるように、レゾール型
フェノール樹脂(大日本インキ工業(株)製 「プライ
オーフェン」)を該シート状物に浸漬し、165℃で加
熱硬化した。このシート状成形物を最高温度2000℃
で炭化を行って、嵩密度0.15g/cm3 の成形断熱
材とした。得られた成形断熱材中の単繊維平均直径は
6.5μmであった。得られた成形断熱材の2200℃
における熱伝導率を、石川島播磨重工業(株)製断熱材
高温熱伝導率測定装置(ITC 25−VRII)によ
り測定すると、熱伝導率は0.26kcal/m・hr
℃であった。
【0029】
【実施例2】実施例1と同様にしてメルトブロー法によ
り紡糸し、不融化したシート状物を軽度炭化の際に加え
る圧力を1〜20kg/cm2 に変更して種々の嵩密度
を持つシート状物を得た。このシート状物を実施例1と
同様にして7回/cm2 のパンチ密度でニードルパンン
チし、繊維含有率90重量%になるように実施例1で使
用したと同じレゾール型フェノール樹脂を含浸し、16
5℃で加熱硬化し、さらに2000℃まで昇温して全体
を炭化し、得られた種々成形断熱材について実施例1
と同様にして嵩密度及び熱伝導率を測定したところ、以
下のとおりであった。なお、炭化後の繊維の単繊維平均
直径は6.5μmであった。
【0030】
【表1】 *1 ;g/cm3 、*2 ; kcal/m・hr℃ なお、試験番号No. 1〜4は実施例、No. 5は比較例で
ある。
【0031】
【実施例3】軟化点238℃石炭系等方性ピッチを原料
とし、実施例1と同様の装置を用いてメルトブロー法に
より紡糸を行い、実施例1と同様にしてシート状に採取
し、不融化、軽度炭化を行い、積層してニードルパンチ
を行ってジート状物としたものについて、実施例1と同
様にして繊維含有率90重量%になるようにレゾール型
フェノール樹脂を含浸して硬化、炭化した。得られた成
形断熱材について熱伝導率の測定を行ったところ、0.
60kcal/m・hr℃であった。なお、炭化後の単
繊維平均直径は7μmであった。
【0032】
【実施例4】実施例1と同様の装置を用いてメルトブロ
ー法により紡糸を行い、その際に紡糸孔1個当たりのピ
ッチの吐出量を変えて単繊維の平均直径の異なる繊維を
作り、実施例1と同様にしてシート状に採取し、不融
化、軽度炭化を行い、2枚積層し、ニードルパンチ(パ
ンチ密度7回/cm2 )を行い、シート状化した。得ら
れた積層シ−ト状物に実施例1と同様にしてレゾール型
フェノール樹脂を含浸して硬化、炭化し、嵩密度が0.
1g/cm3 の成形断熱材を作った。得られた種々の
形断熱材について、実施例1と同様にして単繊維平均直
径及び熱伝導率を測定したところ、以下のとおりであっ
た。
【0033】
【表2】 *1 ;μm、*2 ; kcal/m・hr℃ なお、試験番号No. 1〜3は実施例、No. 4、5は比較
例である。
【0034】
【発明の効果】本発明の炭素繊維系成形断熱材は、不活
性雰囲気では極めて安定であり、500〜2800℃の
範囲で優れた耐熱性、形態安定性を示し、放射伝熱に対
する優れた断熱材を提供する。また、本発明の炭素繊維
系成形断熱材は、高温域の断熱特性に優れており、ガラ
スの溶融、陶磁器類の焼成、金属の精練、セラミックス
の焼結或いは炭素材の焼成を行う高温炉の断熱に用いる
ことが出来る。また、本発明の炭素繊維系成形断熱材
は、放射線に対する安定性が優れており、原子炉及び原
子力発電設備の断熱材として優れた性能を示す。特に、
メソフェーズピッチ系炭素繊維成形断熱材は吸湿性が小
さいので、昇温 時の水分蒸発や高温水蒸気に起因する問
題を回避でき、運転時間の短縮や断熱材の劣化防止に有
用である
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−60480(JP,A) 特開 平1−153572(JP,A) 特開 平2−269806(JP,A) 実開 平2−106487(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/83

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 嵩密度が0.01〜0.5g/cm3
    2,200℃における成形断熱材の厚さ方向の熱伝導率
    が1.0kcal/m・hr℃以下である炭素繊維系成
    形断熱材であって、該炭素繊維系成形断熱材が温度20
    ℃相対湿度65%の雰囲気中で吸湿性が2%以下である
    ピッチ系炭素繊維を用いて製造され、炭素繊維の含有率
    が約60〜95重量%であり、かつ非繊維状の炭化物の
    介在により成形形状を保持することを特徴とする、炭素
    繊維系成形断熱材。
  2. 【請求項2】 非繊維状の炭化物が、フェノール樹脂、
    フラン樹脂、アミノ樹脂、タール及びピッチの群から選
    ばれた1種もしくは2種以上の物質に由来することを特
    徴とする、請求項1記載の炭素繊維系成形断熱材。
  3. 【請求項3】 炭素繊維が平均単繊維直径1〜9μmを
    有するものであることを特徴とする、請求項1又は2記
    載の炭素繊維系成形断熱材。
  4. 【請求項4】 (a)プリカーサー繊維をメルトブロー
    法で紡糸する紡糸工程に直結した工程でシート状に捕集
    してシート状物とし、(b)その後不融化、軽度炭化処
    理をし、(c)得られた炭素繊維からなるシート状物を
    所要枚数積層し、2〜100パンチ/cm2 の密度のニ
    ードルパンチを行い、(d)さらに、フェノール樹脂、
    フラン樹脂、アミノ樹脂、タール及びピッチの群から選
    ばれた1種もしくは2種以上の物質を含浸した後、樹脂
    の硬化を行い、該含浸した物質を炭化させることを特徴
    とする、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維系成
    形断熱材の製造方法。
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