JP3374688B2 - 溶接割れ感受性と低温靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張力鋼の製造方法 - Google Patents
溶接割れ感受性と低温靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張力鋼の製造方法Info
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Description
よび低温靭性に優れた600N/mm2 級高張力鋼の製
造方法に関する。
性能向上に関する要望は多く、これまでに数多くの検討
がなされている。これらのうち、溶接割れ感受性の改良
を目的に低C化とTi−B添加を特徴とした技術として
特開昭49-37814号公報、特公平4-13406 号公報などが公
知となっている。これらに代表される技術により、溶接
割れ感受性が改良された600N/mm2 級高張力鋼が
得られるが、600N/mm2 級高張力鋼に要求される
引張強さはBの活用により達成されているため、化学成
分や製造条件の変動による母材特性の不安定さが懸念さ
れ、さらに溶接熱影響部の硬さ上昇が著しい。この溶接
熱影響部の硬さ上昇は一般に溶接継手部で最も懸念され
るボンド部の靭性劣化をもたらす。特開平2-205627号公
報は、直接焼入法を用いて靭性の優れた600N/mm
2 級高張力鋼の製造方法を提供している。この技術はN
bとBの複合添加を必須としているため、上記と同様の
B添加による弊害が懸念される。
38号公報、特公昭60-9086 号公報、特開平2-254119号公
報、特開昭59-113120 号公報、特公昭61-12970号公報、
特開昭53-119219 号公報が提案されている。
れる技術は500N/mm2 級非調質高張力鋼に関する
ものである。また、特公昭60-9086 号公報、特開平2-25
4119号公報、特開昭59-113120 号公報に示される技術は
いずれも600N/mm2 級非調質高張力鋼に関するも
のであり、実施例などからこれらの技術の適用板厚の上
限はいずれも20mm程度であることが知れる。特公昭
61-12970号公報は、低C化とV添加および直接焼入れを
組み合わせることで、溶接割れ感受性に優れた600N
/mm2 級高張力鋼を提供しようとするものであるが、
これについても適用板厚は30mmにとどまる。
入れ焼戻しプロセスにより板厚の厚い500N/mm2
級以上の高張力鋼を提供しようとするものである。この
技術によれば0.02%を越える比較的多量のNb添加
により再加熱時に未固溶Nb炭窒化物を残存せしめ、結
晶粒の粗大化を防止し主に母材の靭性を改善しようとす
るものである。従って焼入れに際して固溶Nbの焼入れ
性向上効果および析出硬化を十分に活用できない。その
ため実施例に見られるように強度を確保するためNb,
Vに加えて更にNi,Moの添加が実質的に必須とな
り、かつ厚肉材の板厚1/4tの位置で600N/mm
2 級の強度を確保できる発明例(供試鋼J)ではPcm
値が0.22に達し溶接割れ感受性に劣る。
0N/mm2 級調質型高張力鋼の従来技術はそのほとん
どがB添加による焼入れ性の確保により達成されてお
り、B無添加の場合は、薄肉材に限定される。
圧延方法に関する従来技術として、特開平5-271760号公
報、特開平6-128638号公報、特開平6-93332 号公報があ
る。特開平6-93332 号公報ではC,Si,Mn,Nb,
Ti,Bを含み、sol.Al,Nの規制された素材鋼
を制御圧延後、直ちに所定の温度範囲まで加速冷却し、
ついでその温度範囲に一定時間等温保持、またはその温
度範囲を一定時間徐冷することで溶接割れ感受性と低温
靭性に優れた微細ベイナイト鋼の製造方法が開示されて
いるが、温度調整のための待ち時間がきわめて長くな
り、圧延効率の低下、等温保持および徐冷に伴うコスト
上昇を招き、生産性の低下は著しい。
調整のための待機という問題点を解決するために、特開
平6-128638号公報では、V,Nbを添加した鋳片をAc
3 点以上に加熱し、Ar3 点以上で冷却を実施しながら
熱間圧延し、ひきつづき放冷もしくは5℃/秒以上の冷
却速度で650℃以下の温度に加速冷却する事を特徴と
する高強度高靭性構造用厚鋼板の製造方法が開示されて
いる。しかし、これらの従来技術によれば、低温靭性の
改善する手段として熱間圧延を終了する温度をAr3 点
近傍(700〜800℃前後)という低温とすることが
開示されている。この結果、被圧延鋼の変形抵抗が大き
くなり、圧延機には多大な負荷が加わる。また、被圧延
鋼の溶接割れ感受性に関しては、何等考慮していない。
以上より、Ar3 点近傍という低温での制御圧延を実施
することなく、溶接割れ感受性と低温靭性に優れた調質
型600N/mm2 級高張力鋼の製造方法は現在までに
提供されていない。
であり、溶接割れ感受性および低温靭性の両特性に優れ
た板厚50mmまでの調質型600N/mm2 級鋼を低
温での制御圧延を実施することなく製造する方法を提供
することを目的とする。
るためには、 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni
/30+Cr/20+Mo/15+V/10+5B で定義されるPcm値を低減することが有効である。溶
接割れ感受性を確保しつつ母材の強度を確保する有効な
手段としてB添加が考えられるが、溶接熱影響部の著し
い硬度上昇に伴う継手靭性の劣化が特に後述する大入熱
溶接継手において懸念される。Bを有効に活用するため
に従来しばしば添加されるTiは安定に母材性能を得る
ために添加しないことが好ましい。そこで、Ti,Bを
添加せずに溶接割れ感受性の改善と溶接継手の健全性の
確保を両立させつつ600N/mm2 級高張力鋼を得る
ためには従来の再加熱焼入れ焼戻しプロセスの適用では
適用可能な板厚範囲に制約を生じる懸念がある。
厚50mmに至る600N/mm2級高張力鋼を工業的
に供給することを阻んできたこれらの課題を解決するこ
とを目的とする本発明は、直接焼入れ焼戻しプロセスの
適用を前提に下記の知見に基づいて提案されたものであ
る。
接焼入れ法の採用により圧延加熱時に固溶させたNbに
よる焼入れ性向上効果を活用できる。これにより他の焼
入れ性確保のための合金元素添加量を削減できる。また
Nbは炭化物を微細分散化する作用が有り厚肉材の1/
2t部の靭性確保に極めて有効である。
b炭窒化物の析出硬化を活用できる。これは焼入れ時の
冷却速度が表層側と比べて必然的に遅くなる板厚の中心
部の強度確保に有効である。即ちこれにより必要以上の
焼入れ性を確保することなく板厚中心部の強度を確保で
きる。
ステナイト未再結晶域での圧延は、オーステナイト再結
晶温度を上昇せしめるNb添加により、極端に低温での
圧下を実施することなく実現できる。
量によって鋼材の圧延方向に平行な方向(L方向)と垂
直な方向(C方向)との音速比(音響異方性)が増加す
るにつれ、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度(vTr
s)で表される低温靭性が極端に低温での圧下を加える
ことなく改善される。しかしながら、音響異方性が1.
035を越えるようになると低温靭性は劣化する。図1
にその結果を示す。
を有効に活用する観点からのTi添加は必須ではなく、
むしろ安定に良好な母材性能を得る上でTiは添加しな
いことが好ましい。
いては鋼材の音響異方性を所定の範囲に限定するため、
熱間圧延に際してはγ粒の微細化による低温靱性の改善
に加え、音響異方性の値が1.035を越えない範囲で
増加させる目的で、1000℃未満800℃以下にて2
0%以上の累積圧下を付与し、少なくともAr3点以上
から直接焼き入れする。
0.04〜0.1%、Si:0.01〜0.4%、M
n:0.5〜1.6%、P:0.015%以下、S:
0.01%以下、Nb:0.005〜0.05%、V:
0.1%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.
0005〜0.008%、Ti<0.005%、B<
0.0003%を含み、Pcm=C+Si/30+Mn
/20+Cu/20+Ni/30+Cr/20+Mo/
15+V/10+5Bで定義されるPcm値が0.2以
下で、残部が鉄および不可避不純物よりなる鋼材を、熱
間圧延に際して1000〜1250℃の温度範囲に加熱
後、1000℃〜1050℃での20%以上の累積圧下
に引き続き、1000℃未満800℃以上の未再結晶温
度領域で、圧延1パス毎の圧下率が5%以上で、かつ、
圧延仕上温度を800℃以上として、20%以上の累積
圧下を施し、少なくともAr3 変態点以上から直接焼入
れし、その後、Ac1 変態点以下で焼戻しを行うことを
特徴とする引張強さ570N/mm2 以上の溶接割れ感
受性、低温靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張
力鋼の製造方法、(2)鋼材は、Mo:0.3%以下、
Cu:0.5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:0.
5%以下のうち1種以上をさらに含む(1)に記載され
る引張強さ570N/mm2 以上の溶接割れ感受性、低
温靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張力鋼の製
造方法、(3)(1)又は(2)に記載の組成を有する
鋼材を、1000〜1250℃の温度範囲に設定された
加熱温度Tを用いて、log{(Nb)×(C+12/
14N)}=2.26−6770/(T+273.1
5)の関係より計算される固溶Nb量を有効Nb量とし
て、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+
Cr/5+Mo/4+V/14で定義されるCeq値お
よび有効Nb量,V含有量からなるX=625(有効N
b)+250V+210CeqがX≧40+t(ここに
tは鋼板の板厚(mm)指す)なる関係を満たすことを
特徴とする引張強さ570N/mm2 以上の溶接割れ感
受性、低温靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張
力鋼の製造方法である。
理由等について説明する。 <C>C量0.04%未満では他の焼入れ性向上元素の
多量添加が必要となりコスト高、靭性劣化、溶接割れ感
受性の劣化を招く。また、特に本発明鋼に大入熱溶接を
施す場合、C含有量が0.04%に満たないと溶接金属
へのCの希釈が少なくなり一般の溶接材料では継手強度
を確保することが困難となる。C量の上限は溶接割れ感
受性の確保のため0.1%である。 <Si>Siは母材強度と溶接継手強度を確保する上で
有効に働くので0.01%以上添加する。しかし、0.
4%を越える添加は溶接割れ感受性と溶接継手靭性を劣
化させる。 <Mn>Mnは母材強度と溶接継手強度を確保する上で
有効に働くので0.5%以上添加する。しかし、1.6
%を越える添加は溶接割れ感受性を劣化させ、必要以上
の焼入れ性をもたらし母材靭性、継手靭性を劣化させ
る。 <P,S>P,Sは、いずれも不純物元素であり、健全
な母材および溶接継手を得るためにPは0.015%以
下、好ましくは0.01%以下に、Sは0.01%に規
制されることが望ましい。 <Nb>上述したように、Nbは直接焼き入れ法の採用
時には請求項3に記される有効Nb量に応じて溶接割れ
感受性指数: Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+N
i/30+Cr/20+Mo/15+V/10+5B を上昇させることなく焼き入れ性を向上させるととも
に、直接焼き入れごの焼戻し処理によるNb炭窒化物の
析出効果により母材強度と溶接継手強度を向上する。そ
の結果、Cu,Ni,Cr,Mo等、他の焼入れ性確保
のための合金元素の添加量を削減できるので、0.00
5%以上積極的に添加する。しかし、0.05%を越え
る添加は、溶接継手靭性を劣化させる傾向も認められる
ことからNb添加量の上限を0.05%、好ましくは
0.03%とする。 <V>Vは焼入れ性の向上のみならず、焼戻し処理によ
るV炭窒化物の析出効果により母材強度と溶接継手強度
を向上するので、0.1%を越えない程度に添加する。 <Al>Alは鋼の脱酸のため添加され、通常0.00
5%以上は含有する。また、ミクロ組織の微細化による
母材靭性の確保のために0.01%添加する。しかし、
0.1%を越えるAl添加は母材靭性を損なう。 <Ti,B>Tiはミクロ組織の細粒化を通じて母材お
よび溶接継手の靭性を改善する効果を有する。また、B
添加鋼では、焼入れ性に有効に働くBを確保するためし
ばし積極的に添加される。
うに、溶接熱影響部の硬化が懸念されるBを添加せずに
母材強度を確保し、熱影響部粗粒域の硬度低減により溶
接継手靭性を達成するため、Tiを添加する必然性はな
い。むしろTi添加による母材性能の不安定さを懸念
し、不純物元素として0.005%未満に規制するが後
述するN含有量の3.4倍を下回ることが望ましい。
物元素として0.0003%未満に規制しなければなら
ない。 <N>Nは、Al,Nbなどと反応し析出物を形成する
ことでミクロ組織を微細化し、母材靭性を向上させるた
め、および焼戻し時にNb,Vなどと反応し析出硬化に
よる強度確保のために添加する。
の微細化および強度確保に必要な析出物が形成されず、
0.008%を越える添加はむしろ母材および溶接継手
の靭性を損なう。 <Mo>Moは母材強度、継手強度を向上させる効果を
有することから0.3%を越えない範囲で選択的に添加
する。 <Cu,Ni,Cr>Cu,Ni,Crは必ずしも必須
な元素ではない。しかし、Cu,Niは母材強度および
溶接継手強度向上のためにNiは母材強度、靭性および
継手強度をともに向上させるためにCu≦0.5%,N
i≦1.5%,Cr≦0.5%添加しても差し支えな
い。特にMnの一部をこれらの元素に置き換えることで
靭性の向上や偏析の低減などが達成できる。 <Pcm>Pcmは溶接割れ感受性を表す指数であり、
通常の環境において溶接施工時の予熱を不要にするため
に0.2%以下に規制する。 <計算式:X=625Nb+250V+210Ceq,
X≧t+40> 計算式:625Nb+250V+210Ceqは母材の
板厚1/2tにおける強度を表す指数であり、当該業者
間で一般に知られる炭素等量式(Ceq)に本発明の要
であるNb,Vの寄与を加味しさらに概ね50mmまで
の板厚範囲における板厚効果を考慮して整理した数式で
ある。尚、板厚効果とは、熱間圧延後の直接焼入れによ
り鋼板をAr3 変態点以上から強制冷却する際、板厚に
応じてその冷却速度が必然的に変化し、そのため母材強
度が変化することを指す。ここでは1/2tにおいても
600N/mm2 級高張力鋼に分類されるJIS G3
106SM570Qに適合する鋼板を得ることとし、計
算式の板厚の項は工業的な簡便さを図るべく板厚50m
mまでの1/2tの強度との相関を線形として取り扱
い、計算式:625Nb+250V+210Ceqが板
厚t(mm)に40を加えた値を上回ることとした。こ
の計算式におけるNb,Vの強度上昇効果はVの場合、
V炭窒化物の析出硬化による寄与を表し、Nbの場合は
Nb炭窒化物の析出硬化に加えて焼入れ性上昇による寄
与を考慮したものである。直接焼入れ後焼戻し工程によ
り期待されるこれらの元素の効果は、熱間圧延前の加熱
段階に於いて固溶していることが必要である。Vは本発
明の範囲において添加量全てが固溶し得るが、Nbの場
合は必ずしも全量固溶するとは限らない。そこで、Nb
の全量固溶を確保できない場合は、log{(Nb)×
(C+12N/14)}=2.26−6770/(T+
273.15)の関係より計算される固溶Nb量を有効
Nb量として、上述の計算式を 625(有効Nb)+250V+210Ceq≧t+4
0 として、適用しなければならない。
5mm〜50mmの範囲である。 <熱間圧延前の加熱温度>合金元素の均質化とNbの固
溶を図るため、加熱温度は1000℃以上に設定する必
要がある。しかし、加熱温度が1250℃を越えるとミ
クロ組織の粗大化により母材の靭性が確保されなくなる
ので上限を1250℃、好ましくは1200℃、更に好
ましくは1150℃とする。 <圧延条件>均一に加熱された本発明鋼を所定の板厚ま
で熱間圧延する工程は、オーステナイト単結晶域であり
1050℃以下1000℃以上で20%以上の累積圧下
を与える必要がある。これによりγ粒が微細化し、低温
靱性が改善される。さらに母材の靱性を安定に確保、向
上するには、鋼材の音響異方性を1.01から1.03
5に限定する観点から、1000℃未満800℃以上の
温度範囲にて圧延1パス毎の圧下率を5%以上、さらに
好ましくは10%以上の圧延を累積圧下20%以上確保
する必要がある。
方性が1.01から1.035となるにつれて低温靱性
は改善される。熱間圧延後、直接焼入れを実施するまで
に当該温度での再結晶に十分な時間が経過した場合、鋼
板は再結晶する。その結果、音響異方性はほぼ1.00
0〜1.005の範囲となる。これに対して低温で圧延
が終了するか比較的高温でも圧延終了後に速やかに直接
焼入れした場合、鋼板は十分には再結晶せず、音響異方
性は1.005以上の値となる。
温度が高い。その結果、実用上の厚板熱間圧延の場合、
被圧延鋼の不可避的な温度低下により、圧延能率が阻害
する低温での圧延を実施することなく1.01を越える
程度の音響異方性が達成され、低温靱性が改善される。
一方、800℃未満のような低温での圧延を実施した場
合には音響異方性が1.035以上に上昇し、低温靱性
をかえって阻害する場合もある。従って、圧延仕上温度
は800℃以上、望ましくは850℃以上とすること
で、音響異方性を1.035以下、望ましくは1.01
5〜1.025とする。 <直接焼入れ>熱間圧延終了後、少なくともAr3 変態
点を上回る温度の鋼板を強制冷却し焼入れ処理を施すこ
とが必要である。強制冷却は水等の冷却媒体を鋼板に均
一に付与し、板厚1/2tにて少なくとも1℃/秒以上
の冷却速度を達成させなければならない。また、圧延仕
上温度と焼入れ開始温度(少なくともAr3 変態点以
上)との間に温度差を設け、低降伏比化を図ることも可
能である。また、圧延仕上げ温度と焼入れ開始温度(少
なくともAr3変態点以上)との間に温度差を設け、低
降伏比や音響異方性の調整を図ることも可能である。 <焼戻し温度>焼戻しは、溶接やSRによる性能変化に
対する懸念を取り除くためAc1 変態点以下で実施され
る。本発明では、焼戻しはNb炭窒化物の析出硬化によ
る母材強度確保という重要な意味を持つ。Ac1 変態点
以下に限定した理由は、Ac1変態点を越える温度で焼
戻しを行うと強度の低下が著しく、600N/mm2 級
高張力鋼としての強度が確保されない。焼戻し温度の好
ましい下限は570℃、特に600℃である。
学成分を示す。表2の最右覧欄は加熱温度が十分に高
く、X=625(有効Nb)+250V+210Ceq
の計算式における有効Nb量が添加した全Nb量に等し
い場合の計算値を示す。表1〜表2に示した化学成分の
鋼を溶製し、鋼塊となし、表3乃至表6に示した製造条
件にて所定の板厚に熱間圧延後、直接焼入れし、更に焼
戻し処理を施し供試鋼を得た。尚、圧延仕上温度はいず
れも800℃以上であり、極端に低温での圧延は実施せ
ず、圧延に際しての温度調整等は不要である。焼戻し温
度は580〜680℃の範囲とした。なお、表3乃至6
中、t:板厚、SL:スラブ加熱温度、FT:圧延仕上
温度、UST:音響異方性、vTs:シャルピー衝撃試
験の破面遷移温度である。
およびシャルピー衝撃試験を圧延方向と垂直な方向にて
採取し600N/mm2 級鋼としての母材の機械的性質
を評価した。
y型溶接割れ試験を、JIS Z3101に準拠して最
高硬さ試験をそれぞれ実施し、溶接割れ感受性を評価し
た。これらの試験はいずれも600N/mm2 級鋼用超
低水素タイプの溶接材料を用いて、雰囲気20℃−60
%、試験片初期温度25℃の条件で行った。
+250V+210Ceq=98は供試鋼板厚:38
(mm)を上回り、供試鋼板厚中心部の引張強さは57
0N/mm2 を越え靭性も良好である。またPcm値は
0.18と低く、y割れ試験において溶接割れは発生し
なかった。No.1Aは1050℃以下での累積圧下に
よりγ粒が微細化するも、比較的高温である1000℃
での圧延終了後に鋼板が十分に再結晶したために音響異
方性の値は1.003となり、シャルピー衝撃試験の破
面遷移温度:vTs=−57(℃)に留まる。No.1
Bではさらに1000℃以下での累積圧下(圧延終了は
900℃)により音響異方性が1.029と増加したた
め、vTs=−80(℃)と靭性がさらに改善される。
えたものを上回り、良好な強度・靭性を示す。音響異方
性が1.023と増加したNo.2Bで1000℃以下
での圧延を実施するも、比較的高温である960℃での
圧延終了後から直接焼入れ処理までの再結晶の進行によ
り音響異方性が1.001となり、シャルピー衝撃試験
の破面遷移温度:vTs=−52(℃)に留まる。圧延
仕上げ温度の低下により音響異方性が増加したNo.2
B,2C,2Dでは、vTs=−70,−63,−70
(℃)と低温靱性がさらに改善されている。
(mm)に40を加えたものを上回り、良好な強度・靭
性を示す。ただしNo.3Aでは比較的高温であり10
00℃での圧延終了後、鋼板が十分に再結晶したために
音響異方性は1.003であり、シャルピー衝撃試験の
破面遷移温度:vTs=−67℃に留まる。1000℃
以下での圧延の実施により音響異方性が増加したNo.
3B,3Cでは、vTs=−81(℃),−85(℃)
と靭性が改善される。圧延仕上げ温度の低下(800
℃)により音響異方性が1.035を超えるNo.3D
の靭性は、vTs=−76(℃)と高温側へ移行し、母
材強度も570N/mm2 を下回る。
優れた強度・靭性を示すが、No.4Bでは音響異方性
が1.03まで増加し、更なる靭性の改善が達成され
る。鋼番5〜12および18は、Moを含む実施例であ
る。各鋼番の計算値:X=625(有効Nb)+250
V+210Ceqは供試鋼板厚を上回り、供試鋼板厚中
心部の引張強さは570N/mm2 を越え靭性も良好で
ある。ただしNo.8Kの場合、加熱温度が1050℃
と低く、計算式:X=675(有効Nb)+250V+
210Ceqの値は92となる。この結果、音響異方性
が1.034とほぼ同等のNo.8I,8Jに対して強
度が低めである。同様にNo.9Dでは計算式:X=6
75(有効Nb)+250V+210Ceqの値は87
となり、音響異方性がほぼ同等のNo.9Bに対して強
度が低めである。しかしながらスラブ加熱時に未固溶で
あるNbが加熱γ粒の粗大化を抑制するため、No.8
K,No.9Dの低温靱性は飛躍的に向上する。
2以下と低く、y割れ試験において溶接割れは発生しな
い。また、音響異方性が1.01から1.035へ増加
するにつれて靭性の改善が達成される。しかし、音響異
方性が1.035を超えるようになるとvTsが高温側
へ移行し、靭性がかえって劣化する。
びCu,Ni,Crを含む実施例である。各鋼番の計算
値:X=625(有効Nb)+250V+210Ceq
は供試鋼板厚を上回り、供試鋼板厚中心部の引張強さは
570N/mm2 を越え靭性も良好である。またPcm
値は0.2以下と低く、y割れ試験において溶接割れは
発生しない。靭性は、音響異方性が1.01から1.0
35へ増加するにつれて改善される。
範囲外である。鋼番21,22ではNbを含まず、鋼番
23はC含有量が少ない。鋼番24ではC含有量が0.
131,鋼番25ではCr含有量が0.7%と多くPc
m値が0.2を上回り、y割れ試験にて割れが確認され
るとともに最高硬さの値も290を上回る。
受性および低温靭性に優れた調質型600N/mm2 級
高張力鋼およびその製造方法を提供できる顕著な効果を
発揮する。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%でC:0.04〜0.1%、S
i:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.6%、
P:0.015%以下、S:0.01%以下、Nb:
0.005〜0.05%、V:0.1%以下、Al:
0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008
%、Ti<0.005%、B<0.0003%を含み、
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+N
i/30+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで
定義されるPcm値が0.2以下で、残部が鉄および不
可避不純物よりなる鋼材を、熱間圧延に際して1000
〜1250℃の温度範囲に加熱後、1000℃〜105
0℃での20%以上の累積圧下に引き続き、1000℃
未満800℃以上の未再結晶温度領域で、圧延1パス毎
の圧下率が5%以上で、かつ、圧延仕上温度を800℃
以上として、20%以上の累積圧下を施し、少なくとも
Ar3 変態点以上から直接焼入れし、その後、Ac1 変
態点以下で焼戻しを行うことを特徴とする引張強さ57
0N/mm2 以上の溶接割れ感受性、低温靭性に優れた
調質型600N/mm2 級高張力鋼の製造方法。 - 【請求項2】 鋼材は、Mo:0.3%以下、Cu:
0.5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:0.5%以
下のうち1種以上をさらに含む、請求項1に記載される
引張強さ570N/mm2 以上の溶接割れ感受性、低温
靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張力鋼の製造
方法。 - 【請求項3】 請求項1又は2に記載の組成を有する鋼
材を、1000〜1250℃の温度範囲に設定された加
熱温度Tを用いて、log{(Nb)×(C+12/1
4N)}=2.26−6770/(T+273.15)
の関係より計算される固溶Nb量を有効Nb量として、
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr
/5+Mo/4+V/14で定義されるCeq値および
有効Nb量,V含有量からなるX=625(有効Nb)
+250V+210CeqがX≧40+t(ここにtは
鋼板の板厚(mm)指す) なる関係を満たすことを特徴とする引張強さ570N/
mm2 以上の溶接割れ感受性、低温靭性に優れた調質型
600N/mm2 級高張力鋼の製造方法。
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JP34351796A JP3374688B2 (ja) | 1996-12-24 | 1996-12-24 | 溶接割れ感受性と低温靭性に優れた調質型600N/mm2 級高張力鋼の製造方法 |
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JPH10183239A JPH10183239A (ja) | 1998-07-14 |
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