JP3344606B2 - NOxガス検知素子及びその製造方法 - Google Patents

NOxガス検知素子及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、NOxガス検知素子用
材料及びNOxガス検知素子の製造方法に関する。本発
明に係るNOxガス検知素子は、自動車の車室内空気及
び排ガス中や工場における煙道中など、高温、高湿、還
元ガス雰囲気下においてNOxガス濃度を測定する際に
好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】昭和40年代後半に環境問題がクローズ
アップされて以来、環境保全が世界的に叫ばれている。
特に大気環境に関しては、自動車の排ガス中や工場の煙
突などから排出されるガス中のSOx及びNOxガスが
環境に与える影響が大きいとされ、排ガスの排出量のモ
ニタリングや低減化がなされたり、車室内空気や沿道な
どにおける大気中のガス濃度測定がなされたりするよう
になった。
【0003】ここで、NOxガス濃度の測定方法として
は、赤外線吸収法、化学発光法、電気分解法などが知ら
れている。しかし、これらの方法でガス検知精度を高く
しようとすると、一般に高価で大型の装置が必要となる
といった問題がある。このため、酸化物半導体、固体電
解質、有機半導体や圧電体などの材料を用いたガス検知
素子を組み込んだ安価で小型のガス検知器が多くの研究
者により検討されている。このガス検知器では、ガス検
知素子に一対の電極を接続し、該素子に例えばNOxガ
スが吸着したときに起こる電気抵抗変化を測定すること
によりNOxガス量が測定され、NOxガス吸着に基づ
く電気抵抗変化が大きいほどガス検知器の感度が高くな
る。このようなガス検知器に用いられるガス検知素子と
して、例えば、N型半導体特性を示す酸化チタン(Ti
2 )、酸化錫(SnO 2 )や酸化亜鉛(ZnO)など
の酸化物半導体をガス検知素子用材料として用いたもの
が特公平3−13854号公報、特開平2−12614
6号公報及び米国特許第4358950号明細書などに
提案されている。
【0004】しかし、これらの材料を用いたガス検知素
子は、以下に示すような問題がある。例えば、酸化チタ
ンを用いたガス検知素子では、NOxガスがない初期状
態での電気抵抗値が高いため、その分NOxガス吸着に
基づく電気抵抗変化が小さくなり感度が低くなる。ま
た、酸化錫又は酸化亜鉛を用いたガス検知素子では、高
温、高湿あるいは還元ガス雰囲気中で感度や応答性が劣
化し易く、耐久性が低い。したがって、酸化チタン、酸
化錫や酸化亜鉛などの酸化物半導体をガス検知素子用材
料として用いたガス検知素子では、自動車排ガス中及び
煙道中等のNOxガス濃度を安定して測定することが困
難であった。
【0005】また、高温安定性を意識した複合酸化物系
の材料、例えば錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)をガス検知
素子用材料として用いた素子として、スピネル型結晶構
造(Zn2 SnO4 )あるいはペロブスカイト型結晶構
造(ZnSnO3 )を有する酸化物半導体が、エタノー
ルガスあるいはNOxガスに高感度を示すことが報告さ
れている(Shen Yu-Sheng and Zhang Tian-Shu, Sensor
s and Actuators B, 12(1993)5-9. 第18回化学センサ
研究発表会講演予稿集,5,Vol.10, Supplement A, 19
94.)。
【0006】しかし、錫酸亜鉛のみからなるスピネル型
結晶構造を有する材料を用いたガス検知素子は、酸化チ
タンと同様にNOxガスがない初期状態での電気抵抗値
が高く、感度が低いため、NOxガス吸着に基づく電気
抵抗変化の測定が非常に困難であるという問題点があ
る。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する錫酸亜鉛
は、800℃以上の高温で劣化し易く、スピネル型結晶
構造を有する錫酸亜鉛と比べて高温、高湿、還元ガス雰
囲気下での耐久性が低いという問題点がある。
【0007】次に、素子の作製方法について、一般にN
Oxガスを対象としたガス検知素子は、材料粉末を粉砕
し、PVA(ポリビニルアルコール)やエチレングリコ
ール等の溶媒を用いてペースト状とし、そのペーストを
電極上に塗布して焼き付ける方法で作製されている。し
かし、このようにペーストを塗布して焼き付ける方法で
は、結晶粒が大きくしかも厚い膜の素子しか形成できな
い。このため、素子と基板との密着性が低下し、また応
答性及び感度も低下する。したがって、このような方法
で作製した検知素子を用いて、例えば激しい振動を伴う
自動車の排ガス中のNOx濃度を瞬時に測定し、エンジ
ン制御を行うことは非常に困難である。
【0008】また、従来のスピネル型結晶構造を有する
錫酸亜鉛を検知素子用材料として用いた検知素子も、上
記と同様に、スピネル型結晶構造を有する錫酸亜鉛の原
料粉末を粉砕し、PVAやエチレングリコール等の溶媒
を用いてペースト状とし、そのペーストを電極上に塗布
して焼き付ける方法で作製されており、上記と同様の問
題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたものであり、高温、高湿、還元ガス雰囲気
下で耐久性の高いスピネル型結晶構造を有する錫酸亜鉛
を主成分とし、しかもNOxガスがない初期状態での電
気抵抗値が低く、したがってNOxガス吸着に基づく電
気抵抗変化が大きくて感度の高いNOxガス検知素子を
提供すること、及び基板との密着性が高く、応答性及び
感度の高いNOxガス検知素子の製造方法を提供するこ
とを解決すべき技術課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明のNOxガス検知素子は、スピネル型結晶構造を有す
る錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成分とし、該錫酸亜
鉛に対して酸化アンチモン(Sb2 3 )を0.01〜
3.0mol%の割合で添加してなることを特徴とする
ものである。
【0011】なお、錫酸亜鉛に対して酸化アンチモン
(Sb2 3 )を添加する割合(mol%)は、{(酸
化アンチモンのモル数)/(酸化アンチモンのモル数+
錫酸亜鉛のモル数)}×100により求められる値であ
る。また、上記課題を解決する本発明のNOxガス検知
素子の製造方法は、錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成
分とする材料よりなる薄膜を基板上に蒸着法により形成
する薄膜形成工程と、該薄膜を熱処理してスピネル型結
晶構造に結晶化する熱処理工程とを有することを特徴と
するものである。
【0012】上記製造方法の好ましい態様において、上
記錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成分とする材料より
なる薄膜には、該錫酸亜鉛に対して酸化アンチモン(S
23 )が0.01〜3.0mol%の割合で添加さ
れている。
【0013】
【作用】本発明のNOxガス検知素子は、スピネル型結
晶構造を有する錫酸亜鉛を主成分とするので、高温、高
湿、還元ガス雰囲気下において安定であり、耐久性が高
い。そして、錫酸亜鉛に対して酸化アンチモン(Sb2
3 )が0.01〜3.0mol%の割合で添加されて
いるので、酸化アンチモンを添加しない場合と比較し
て、NOxガスがない初期状態での電気抵抗を3〜4桁
程度小さくすることができる。
【0014】酸化アンチモンの添加割合が0.01mo
l%より少ない場合は、上記初期状態での電気抵抗を低
下させる効果が小さく、一方3.0mol%より多い場
合は、スピネル型結晶構造の結晶性を乱し、高温、高
湿、還元ガス雰囲気下での耐久性が不十分となる。NO
xガスがない初期状態での電気抵抗が酸化アンチモンの
添加により小さくなる理由は定かではないが、以下のよ
うに考えることができる。
【0015】すなわち、スピネル型結晶構造を有し酸化
アンチモンが添加されていない錫酸亜鉛は、そもそも完
全な絶縁体であり、この材料が電気伝導性を有するの
は、結晶格子中の金属又は酸素が抜け、格子欠陥が生
じ、電子の片寄りができ、これが電気伝導のキャリヤー
として働くためと考えられる。そして、このようなスピ
ネル型結晶構造を有する錫酸亜鉛に酸化アンチモンが添
加されると、例えばスピネル結晶中の亜鉛(2価の金
属)がアンチモン(3価の金属)と置換し、これにより
結晶内の電子濃度が高くなって電気伝導性が向上すると
考えられる。
【0016】次に、本発明のNOxガス検知素子の製造
方法は、まず錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成分とす
る材料よりなる薄膜を基板上に蒸着法により形成し、そ
の後、該薄膜を熱処理してスピネル型結晶構造に結晶化
する。このため、本発明方法により製造されるNOxガ
ス検知素子は、薄膜で基板との密着性及び感度や応答性
が高いものとなる。また、熱処理によりスピネル型結晶
構造に結晶化されているので、高温、高湿、還元ガス雰
囲気下での耐久性の高いものとなる。
【0017】
【実施例】以下、実施例により具体的に説明する。 (実施例1)図1及び図2に示す本実施例に係るNOx
ガス検知器は、直方体形状(1.6mm×10mm×
0.6mm)のアルミナ基板(表面粗さ:Ra≒0.0
75μm)1と、この基板1の表面に固定された一対の
電極2、2と、基板1及び電極2、2の一端側の表面上
に形成されたNOxガス検知素子3と、基板1の一端側
の裏面に固定されたヒータ4とから構成されている。
【0018】一対の電極2、2は白金よりなり、各電極
2、2間の距離は0.2mmに設定されている。そし
て、各電極2、2の一端側、すなわちNOxガス検知素
子3がその表面に形成される部分には、相対向する電極
側にそれぞれ櫛歯状に突出する2本の枝部2aが設けら
れており、電極を長くすることで、測定時の電気抵抗値
を低くするよう工夫されている。なお、各電極2、2
は、図示しない電源及び電圧計に直列に接続されてい
る。
【0019】NOxガス検知素子3は、スピネル型結晶
構造を有する錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成分と
し、該錫酸亜鉛に対して酸化アンチモン(Sb2 3
を1.2mol%の割合で添加してなるものである。な
お、NOxガス検知素子3の膜厚は0.5μmであり、
またZn/Snの原子比は1.8とされている。ヒータ
4は白金よりなり、NOxガス検知素子3を基板1を介
して加熱してNOxガスとの反応性を高めるためのもの
である。なお、ヒータ4は図示しないヒータ用電極及び
ヒータ用電源により通電、加熱される。
【0020】上記構成を有するNOxガス検知器は、以
下のように製造した。まず、上記形状のアルミナ基板1
を準備し、この基板1の表面上に一対の電極2、2を、
また、基板1の裏面の所定位置にヒ−タ4をスパッタ法
で蒸着形成した。そして、酸化亜鉛、酸化錫及び酸化ア
ンチモンよりなる各ターゲットを準備し、3元同時スパ
ッタリングにより、基板1及び電極2、2の一端側の表
面上に薄膜を形成した。
【0021】ここで、スパッタリングの条件は、以下の
ように設定した。まず、図3に示すように、投入電力に
対するそれぞれの酸化物の成膜速度を求め、この成膜速
度に基づいてZn/Snの原子比が所定の原子比(本実
施例では1.8)となるように各ターゲットへの投入電
力を決定した。また、アルゴンガス圧を15×10-3
orrとした。また、電源として13.56MHzの高
周波電源を用いて、所定の膜厚(本実施例では0.5μ
m)となるように、図3に示す各酸化物の成膜速度から
スパッタリング時間を決定した。なお、成膜された薄膜
のZn/Snの原子比は、高周波プラズマ発光分光分析
により求めて確認した。
【0022】このように基板1及び電極2、2の表面上
に薄膜を形成した後、空気雰囲気下で電気加熱炉を用い
て1000℃×1時間の熱処理を施し素子を完成し、本
実施例のNOxガス検知器を完成した。なお、上記実施
例では、基板1としてアルミナ基板を用いたが、基板1
の材料としては、高温、高湿、還元ガス雰囲気下で経時
変化を起こさず、NOxガス検知素子3と反応せず、電
気抵抗変化を測定するNOxガス検知素子3に影響を与
えず、強度的に強いものであれば良く、特に限定するも
のではない。上記アルミナの他に、ステアタイト、スピ
ネル(MgAl2 4 )、ジルコニアなどを用いること
ができる。特にアルミナについては基板表面の凹凸の小
さい基板が市販されており、また、強度的にも強いので
より好都合である。
【0023】また、電極2及びヒータ4の材料として
も、上記実施例で用いた白金の他に、金やニッケルなど
の高電気伝導性の材料を適宜用いることができる。ま
た、上記実施例では、スパッタリングにより基板1に薄
膜を形成する方法を採用したが、真空蒸着、イオンプレ
ーティングなどの物理蒸着法や、化学蒸着法などの方法
も採用することが可能である。
【0024】(評価)上記実施例1のNOxガス検知器
について、酸素5%、窒素94%及び水蒸気約1%を導
入し、さらにNO2 ガスを0〜60ppmの範囲で変え
て導入したときの電気抵抗値を測定した。この結果を表
1及び図4に示す。比較のため、酸化アンチモンを添加
しないこと以外は上記実施例1と同様にして作製した比
較例1のNOxガス検知器についても、同様に測定した
結果を表1及び図4に併せて示す。
【0025】
【表1】 この結果、酸化アンチモンを加えていない比較例1のN
Oxガス検知器は、NO2 濃度が0ppmの初期状態に
おいても電気抵抗値が大きく、NO2 濃度が変化しても
約1桁程度しか電気抵抗変化を示さない。一方、酸化ア
ンチモンを加えた本実施例1のNOxガス検知器は、N
2 濃度が0ppmの初期の電気抵抗値が低く、NO2
濃度が変化すると、ほんのわずかの濃度変化で約4桁の
電気抵抗変化を示すことがわかった。
【0026】(酸化アンチモンの添加量と電気抵抗変化
との関係)上記実施例1において、Zn/Snの原子比
を1.8と一定にし、表2に示すように酸化アンチモン
の添加量を0〜2.9mol%の範囲で変化させて、試
験例1〜5のNOxガス検知器を作製した。これらのガ
ス検知器について、酸素5%、窒素94%及び水蒸気約
1%を導入し、さらにNO2 ガスを0又は20ppm導
入したときの電気抵抗値を測定した。この結果を表2及
び図5に示す。
【0027】なお、試験例2については、上記実施例1
の再現性の検討も含めて、実施例1と同様の条件で試料
を作製し、特性を評価した。また、試験例5も上記比較
例1と同様の条件で試料を作製した。
【0028】
【表2】 この結果から、酸化アンチモンを添加した試験例1〜4
は、酸化アンチモンを添加しない試験例5よりも、NO
2 ガスが0ppmの初期状態での電気抵抗値が最高で約
3〜4桁低くなることがわかった。また、酸化アンチモ
ンを添加しない試験例5は、NO2 ガスを流した時のガ
スの濃度変化に対して電気抵抗値が1桁程度しか変化し
なかったのに対して、酸化アンチモンを添加した試験例
1〜4は、約3〜4桁と大きく変化することがわかっ
た。
【0029】なお、電気抵抗値の絶対値が小さいこと
は、ガス検知器周辺回路の作製の容易さにつながり、ま
た、抵抗変化が大きいことは、感度が高いことにつなが
り、酸化アンチモンを加えることで、いずれもガス検知
器としては良好な結果になることがわかった。また、実
施例1と試験例2とを比較し、その再現性を検討したと
ころ、初期及びNO2 ガスを流したときの電気抵抗値は
ほぼ同等の値を示しており、ロットによる素子間のバラ
ツキも小さいものと考えられる。
【0030】(Zn/Snの原子比と結晶構造との関
係)上記実施例1において、酸化アンチモンの添加量を
1.2mol%と一定にし、表3に示すようにZn/S
nの原子比を1.4〜2.0の範囲で変化させて、試験
例6〜9のNOxガス検知器を作製した。なお、基板1
としてSi基板を用い、また熱処理温度は800℃とし
た。
【0031】これらのガス検知器について、NOxガス
検知素子3の結晶構造をX線回折により調べた。この結
果を図6に示す。
【0032】
【表3】 図6より明らかなように、Zn/Snの原子比が1.6
より小さい試験例9は酸化錫が析出するが、Zn/Sn
の原子比が1.6〜2.0の範囲にある試験例6〜8は
スピネル型結晶構造のみが得られている。Zn/Snの
原子比が1.6より小さい試験例9のように酸化錫が析
出すると、この酸化錫が高温、高湿、還元ガス雰囲気下
で反応して、NOxガス検知器としての感度や応答性を
劣化させる。このため、高温、高湿、還元ガス雰囲気下
でのNOxガス検知器の耐久性などを考慮すると、Zn
/Snの原子比を1.6〜2.0の範囲とすることが好
ましい。
【0033】(NOxガス検知素子の膜厚と初期の電気
抵抗値及び応答性との関係)上記実施例1において、N
Oxガス検知素子3の膜厚を表4に示すように0.3〜
1.0μmの範囲で変化させて、試験例10〜12のN
Oxガス検知器を作製した。なお、NOxガス検知素子
3の膜厚を変化させる場合は、スパッタリング時間を変
えることで対応した。
【0034】これらのガス検知器について、酸素5%、
窒素94%及び水蒸気約1%を導入し、NO2 ガスが0
ppmの時の電気抵抗値を測定した。また、NO2 ガス
を20ppm導入したときの電気抵抗値の変化が90%
に達するまでの時間(90%応答時間)を測定して、応
答性を評価した。これらの結果を表4及び図7に併せて
示す。なお、図7中、実線が初期状態での電気抵抗値の
測定結果を示し、点線が応答性の評価結果を示す。
【0035】
【表4】 以上の結果から、NOxガス検知素子3の膜厚が薄くな
るに従い、初期状態での電気抵抗値が徐々に高くなり、
0.3μmより薄い場合はNO2 濃度を測定することが
非常に困難であると考えられる。これは、NOxガス検
知素子3の膜厚が薄いと、熱処理によって膜が島状に分
断され易くなり、電気伝導性が保てなくなるためと考え
られる。また、NOxガス検知素子3の膜厚が厚くなる
に従い、NO2 ガスを流したときの電気抵抗値の変化が
遅くなり(抵抗が一定になるまでに時間が長くかか
る)、NOxガス検知器としての応答性が低下する。こ
のため、NOxガス検知素子3の膜厚は、0.3〜1.
0μmとすることが好ましく、より好ましくは0.4〜
0.8μmとすることである。
【0036】また、試験例11については、NOxガス
検知素子3の表面、断面状態を高分解能走査電子顕微鏡
(FE−SEM)により観察した。NOxガス検知素子
3の表面の結果を図8(a)に、断面の結果を図8
(b)にそれぞれ示す。図8(a)及び図8(b)よ
り、スパッタリングによって薄膜を形成することによ
り、基板1とNOxガス検知素子3とが非常に密着性の
よい状態となり、また、NOxガス検知素子3の膜厚が
薄いことで基板1表面の凹凸を反映し、NOxガス検知
素子3表面の凹凸も大きい状態であることがわかった。
そして、NOxガス検知素子3の膜厚が厚くなると、こ
の基板1表面を反映したNOxガス検知素子3表面の凹
凸が小さくなり、応答性が低下すると予想され、この点
からもNOxガス検知素子3の膜厚が薄いことの意義は
大きい。 (薄膜形成後の熱処理温度と結晶構造との関係)上記実
施例1において、表5に示すように、薄膜形成後の熱処
理温度を600〜1000℃の範囲で変化させて、また
酸化アンチモンの添加量を1.2mol%又は2.0m
ol%と変化させて、試験例13〜19のNOxガス検
知器を作製した。
【0037】これらのNOxガス検知器について、NO
xガス検知素子3の結晶構造をX線回折により調べた。
この結果を図9に示す。
【0038】
【表5】 図9より、800℃以上の温度で熱処理した試験例13
〜18のNOxガス検知器では、スピネル型結晶構造が
明確に現れてきており、温度が高くなるに従い結晶性が
良くなるのみで、1000℃の高温になっても結晶形態
が変化することはなかった。しかし、600℃の温度で
熱処理した試験例19のNOxガス検知器では、スピネ
ル型の結晶構造が現れておらず、高温(例えば800
℃)にさらされると電気特性が変化することが考えら
れ、高温、高湿、還元ガス雰囲気下でのNO2 ガス検知
用素子としては実用化できないものと考えられる。
【0039】また、酸化アンチモンの添加量の違いによ
り、2.9mol%加えたものは、1.2mol%のも
のに比べ、ピーク高さが低くなっており、スピネル型結
晶構造の結晶性が悪くなっている様子が見られる。この
ため、酸化アンチモンの添加量は0.6〜2.0mol
%とすることがより好ましい。 (基板の表面粗さと電気抵抗変化との関係)上記実施例
1において、表6に示すように、基板1の表面粗さ及び
熱処理温度を変化させて、試験例20〜23のNOxガ
ス検知器を作製した。
【0040】これらのガス検知器について、酸素5%、
窒素94%及び水蒸気約1%を導入し、さらにNO2
スを0又は300ppm導入したときの電気抵抗値を測
定した。この結果を表6に示す。
【0041】
【表6】 この結果、基板1の表面粗さがRa=0.30μm以上
と大きい試験例21〜23のNOxガス検知器では、電
気抵抗値が高すぎて測定できなかった。とくに、基板1
の表面粗さがRa=0.69μmと最も粗い試験例23
のNOxガス検知器では、熱処理温度が600℃と低か
ったにもかかわらず、またNOxガス検知素子3の膜厚
が1.0μmと厚かったにもかかわらず、電気抵抗値が
高過ぎて測定できなかった。
【0042】ここで、熱処理温度とNOxガス検知素子
3の電気伝導性との関係を考えると、熱処理温度が高く
なるに従って、NOxガス検知素子3の膜が縮んで膜に
亀裂が発生し易くなり膜の電気伝導性に悪影響を及ぼす
傾向にある。そして、基板1の表面粗さが大きいほど、
またNOxガス検知素子3の膜厚が薄いほど、NOxガ
ス検知素子3の膜が途切れやすくなるので、上記傾向は
顕著になる。
【0043】また、試験例23のNOxガス検知器につ
いて、基板1及びNOxガス検知素子3の表面状態を高
分解能走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した
結果を図10〜図12に示すように(図10は基板1の
表面、図11はNOxガス検知素子3の表面、図12は
NOxガス検知素子3の表面を一部拡大したものを示
す)、600℃と低温で熱処理したにもかかわらず、N
Oxガス検知素子3の膜の亀裂が大きく、その谷間は深
くて膜が断続的になっている。
【0044】以上のことから、基板1の表面粗さが大き
いと、NOxガス検知素子3の膜が断続的になり易く、
膜の電気伝導性に悪影響を及ぼすため、基板1の表面粗
さは小さければ小さいほど好ましいことが確認できた。
具体的には、基板1の表面粗さはRa=0.1μm以下
とすることが好ましく、より好ましくはRa=0.07
5μm以下とすることである。
【0045】(スパッタリング時のガス圧)上記の実施
例1、試験例1〜5、10〜12、20〜23は、いず
れもスパッタリング時のアルゴンガス圧を通常の場合よ
り一桁高い15×10-3Torrに設定して製造した。
これは作製された膜の密度を低くし、表面積を大きくし
て、NOxガス検知素子の感度を高くし、応答性を良く
するための措置である。しかしながら、熱処理温度を1
000℃もの高温にする場合、NOxガス検知素子のシ
ンタリングが生じるため、スパッタリング時のアルゴン
ガス圧は通常の5×10-3Torr程度と同等の結果と
なる。
【0046】したがって、スパッタリング時のガス圧
は、5×10-3〜15×10-3Torrの範囲にあり、
NOxガス検知素子が形成できる条件であれば、特に問
題はない。
【0047】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のNOxガ
ス検知素子は、スピネル型結晶構造を有する錫酸亜鉛を
主成分とするので、高温、高湿、還元ガス雰囲気下にお
いて安定であり、耐久性が高く、しかも錫酸亜鉛に対し
て酸化アンチモン(Sb2 3)が0.01〜3.0m
ol%の割合で添加されているので、酸化アンチモンを
添加しない場合と比較して、NOxガスがない初期状態
での電気抵抗を3〜4桁程度小さくすることができ、し
たがってNOxガス吸着に基づく電気抵抗変化が大きく
て感度の高いものとなる。
【0048】また、本発明の製造方法により製造される
NOxガス検知素子は、薄膜で基板との密着性及び感度
や応答性が高く、また、熱処理によりスピネル型結晶構
造に結晶化されているので、高温、高湿、還元ガス雰囲
気下での耐久性の高いものとなる。したがって、本発明
に係るNOxガス検知素子は、自動車の排ガス中など高
温、高湿、還元ガス雰囲気下においてもNOx濃度を瞬
時に高感度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例に係るNOxガス検知器の部分断面
図であり、図2のA−A線矢視断面図である。
【図2】 上記NOxガス検知器の横断面図である。
【図3】 ターゲットへの投入出力に対するスパッタ成
膜速度を示す線グラフである。
【図4】 NO2 濃度と電気抵抗変化との関係を示す線
グラフである。
【図5】 酸化アンチモンの添加量と電気抵抗変化との
関係を示す線グラフである。
【図6】 X線回折のチャートである。
【図7】 NOxガス検知素子の膜厚と電気抵抗値及び
応答性との関係を示す線グラフである。
【図8】 (a)はNOxガス検知素子の表面の粒子構
造を示し、(b)はNOxガス検知素子の断面の粒子構
造を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】 X線回折のチャートである。
【図10】基板の表面の粒子構造を示す電子顕微鏡写真
である。
【図11】NOxガス検知素子の断面の粒子構造を示す
電子顕微鏡写真である。
【図12】NOxガス検知素子の表面の一部を拡大した
粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1は基板、2は電極、3はNOxガス検知素子、4はヒ
ータである。
フロントページの続き (72)発明者 山下 勝次 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 多賀 康訓 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭60−4849(JP,A) 特開 昭59−50352(JP,A) 特開 平7−218460(JP,A) 特開 平3−13854(JP,A) 特開 平2−126146(JP,A) 特開 平6−160324(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/12 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スピネル型結晶構造を有する錫酸亜鉛
    (Zn−Sn−O)を主成分とし、該錫酸亜鉛に対して
    酸化アンチモン(Sb2 3 )を0.01〜3.0mo
    l%の割合で添加してなることを特徴とするNOxガス
    検知素子。
  2. 【請求項2】 錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成分と
    する材料よりなる薄膜を基板上に蒸着法により形成する
    薄膜形成工程と、 該薄膜を熱処理してスピネル型結晶構造に結晶化する熱
    処理工程とを有することを特徴とするNOxガス検知素
    子の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記錫酸亜鉛(Zn−Sn−O)を主成
    分とする材料よりなる薄膜には、該錫酸亜鉛に対して酸
    化アンチモン(Sb2 3 )が0.01〜3.0mol
    %の割合で添加されている請求項2記載のNOxガス検
    知素子の製造方法。
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