JP3326192B2 - 自転車用フロント変速システム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、内ガイドプレートと、
この内ガイドプレートより自転車前後方向中心線に対し
て外側に配置されるよう構成された外ガイドプレートを
備えるフロントディレーラをチエンに作用させて、前記
チエンを少なくとも小径、中径、大径フロントギヤの間
で掛け換えるフロント変速装置と、人為操作自在な変速
操作具と、この変速操作具と前記フロント変速装置とを
連係する連係手段とを備えた自転車用フロント変速シス
テムに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ディレーラの作用によってチエン
を複数枚のギヤに掛け換える変速装置に変速操作具を連
係させ、この変速操作具を人為操作することにより、チ
エンが掛け換え目標ギヤに掛け換わって変速できるよう
になった自転車用の変速システムにおいて、チエンをフ
ロントディレーラによって複数枚のフロントギヤに掛け
換えるフロント用の場合には、変速開始から完了まで変
速操作具に手を添えて変速操作するようになっていた。
すなわち、チエンがギヤ側面との摩擦によって大径側ギ
ヤに対してその歯先側に持ち上がるようにチエンをギヤ
に押し付ける操作が必要であり、登坂時など駆動負荷が
大であると、その大駆動負荷にかかわらずチエンが掛け
換わるように一層強固に押し付ける必要があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】変速を行うに際し、変
速開始から完了まで変速操作具の操作を継続する必要が
あることから、変速操作に必要な手間が大になってい
た。この結果、たとえば走行を長時間継続している時な
ど、疲労が激しくなると変速操作が適切に行いにくくな
っていた。チエンの踏力が強い場合には、変速できない
こともあった。本発明の目的は、操作力の面からも、操
作手間の面からも操作容易に変速できる自転車用フロン
ト変速システムを提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明による自転車用フ
ロント変速システムにあっては、目的達成のために、冒
頭に記したものにおいて、前記変速操作具の人為操作に
伴う前記フロントディレーラの作用で前記チエンを、よ
り大径である掛け換え先フロントギヤ側に移動させるだ
けで、前記掛け換え先フロントギヤの回動力で、前記チ
エンを前記掛け換え先フロントギヤに掛け換える掛け換
え機構を設けてあり、前記掛け換え機構が、前記フロン
トディレーラの前記内ガイドプレートに設けられ、前記
外ガイドプレートの方向に突出したと、この前記掛け換
え先フロントギヤ側部で前記段部と対応する位置に設け
られ、前記掛け換え先フロントギヤの歯側面に対して、
前記チエンが掛かっていた掛け換え元フロントギヤの方
向に突出している掛換突出部で構成され、前記段部が、
前記内ガイドプレートの下部に設けられた第１押圧部に
対して前記外ガイドプレートの方向に突出した第２押圧
部と、前記第２押圧部より前記外ガイドプレートの方向
に突出し、前記チエンの前記大径フロントギヤへの掛け
換え完了時に前記大径フロントギヤの回転軸芯方向視で
前記大径フロントギヤの外側に配置される第３押圧部を
有することを特徴とする。

【０００５】

【作用】変速操作具の操作により、フロントディレーラ
をしてチェンを大径ギヤ側に移動させるだけで、切り換
え機構がチエン移動を感知して作動し、ギヤの回動力を
してチェンを掛け換え目標ギヤに掛け換える。

【０００６】

【発明の効果】掛け換え機構の作用により、ディレーラ
によるチエン移動をさせるに足る操作具操作をするだけ
での軽い操作力で楽に、少ない操作手間をかけるだけで
迅速かつ容易に変速でき、適切なチエン切り換えが操作
簡単に楽にできるようになった。位置決め機構を備えさ
せる場合、ディレーラを所望の変速位置に位置させる変
速操作具の操作に対する神経を使う必要がない。さら
に、操作スピードも早くなる。

【０００７】

【実施例】図１および図２に示すように、大径フロント
ギヤ１、中径フロントギヤ２、小径フロントギヤ３を、
クランク４により同芯状にかつ一体に回動するように連
結して、クランク４の回動操作によって３枚のフロント
ギヤ１，２，３を回動駆動し、この回動力をチエン５に
より後輪駆動ギヤ６に伝達して後輪駆動するように、か
つ、チエン５のフロントギヤ１，２，３への掛け換えを
することによって変速駆動できるように自転車用のフロ
ントギヤ装置を構成してある。このフロントギヤ装置に
よる変速駆動を可能にするに、フロントディレーラ１０
を車体フレームＦに取り付けることによって、フロント
変速装置Ａを構成し、このフロント変速装置Ａと、一つ
の変速操作具２０を人為操作するように備えるとともに
締付バンド２１によってハンドルバーＨに取り付けるよ
うに構成した変速操作装置Ｂと、変速操作具２０をフロ
ント変速装置Ａに連係させる変速ワイヤ７とにより、フ
ロント変速システムを構成してある。詳しくは、つぎの
ように構成してある。

【０００８】フロントディレーラ１０を構成するに、図
１２に示すように、二つの抜き孔Ｓを備える内ガイドプ
レート１１、外ガイドプレート１２、車体フレームＦに
締付バンド部１３ａによって固定するように構成した支
持部材１３、この支持部材１３により両ガイドプレート
１１，１２を移動可能に支持させる揺動リンク機構１
４、両ガイドプレート１１，１２をフロントギヤ１，
２，３のうち最も車体内側に位置する小径フロントギヤ
３の方に移動付勢するように、揺動リンク機構１４に作
用するリターンばね（図示せず）のそれぞれでなり、そ
して、揺動リンク機構１４を構成する一対の揺動リンク
１４ａ，１４ａの一方に連設してある操作アーム１６の
揺動操作によるリンク機構１４の揺動操作をすることに
よって、両ガイドプレート１１，１２がフロントギヤ
１，２，３の回動軸芯方向に移動してチエン５に押圧作
用するようにしてある。図２に示す如く中径フロントギ
ヤ２の小径フロントギヤ３側の側面部に、中径フロント
ギヤ２の周方向に分散配置して設けた複数個の図３、図
７、図８の如きチエン掛け換え歯１７・・と、大径フロ
ントギヤ１の中径フロントギヤ２側の側面部に、大径フ
ロントギヤ１の周方向に分散配置して設けた複数個の図
４、図１０の如きチエン掛止スパイク１８・・とが設け
られている。これらチエン掛け換え歯１７・・とチエン
掛止スパイク１８・・は、図９及び図１０から明らかで
あるとおり、それぞれが設けられているフロントギヤの
周部に設けられた歯の側面１ａ、２ａより突出してお
り、これらを総称して掛換突出部と呼ぶ。この掛換突出
部と、内ガイドプレート１１のプレス成形時に内ガイド
プレート１１の内面側の前端側箇所に、図１７〜図２１
の如き第２押圧部１１ｂおよび第３押圧部１１ｃを形成
するように設けた段部Ｄとにより、チエン５を小径フロ
ントギヤ３から中径フロントギヤ２に掛け換えたり、中
径フロントギヤ２から大径フロントギヤ１に掛け換える
ところの上り変速の際、チエン５がフロントギヤ１や２
に掛け換わった後にフロントデイレーラ１０がチエン５
に対する非接触状態になるようにしながら、フロントデ
ィレーラ１０の作用と、フロントギヤ１，２，３の回動
力との協働でチエン５を掛け換えるように、かつ、フロ
ントディレーラ１０の押圧によるチエン５の中径フロン
トギヤ２または大径フロントギヤ１側への移動を感知し
てチエン掛け換えをするように掛け換え機構Ｅを構成し
てある。

【０００９】変速ワイヤ７は、インナーワイヤ７ａの一
端側を、変速操作装置Ｂが変速操作具２０に連動する状
態で備えているワイヤ巻き取り体２２に連結し、他端側
を、前記操作アーム１６に連結することにより、変速操
作具２０の作動をフロント変速装置Ａを始動させるため
の信号として操作アーム１６に伝えるように、操作具２
０とフロント変速装置Ａとを連係するように構成してあ
る。

【００１０】変速操作装置Ｂにおいて、詳しくは後述す
るが、変速操作具２０を樹脂製キャップでなる第１操作
部２０ａの押し操作によって、原位置Ｎから軸芯Ｘまわ
りで下降側に揺動させて上り変速位置Ｙに操作すること
により、巻き取り体２２がインナーワイヤ７ａの所定長
さの巻き取り回動をするように構成し、変速操作具２０
を前記樹脂製キャップでなる第２操作部２０ｂの押し操
作によって、原位置Ｎから軸芯Ｘまわりで上昇側に揺動
させて下り変速位置Ｚに操作することにより、巻き取り
体２２がインナーワイヤ７ａの所定長さの巻き戻し回動
をするように構成し、もって、変速操作具２０を原位置
Ｎから上り変速位置Ｙに作動させるだけのワンタッチ操
作をするだけで、掛け換え機構Ｅの作用により、フロン
ト変速装置Ａがフロントギヤ１や２に掛け換わった後の
チエン５とフロントデイレーラ１０の接触が発生しない
ようにしながら、フロントディレーラ１０の作用と、フ
ロントギヤ１，２，３の回動力との協働でチエン５を掛
け換えるところの上り変速を行うように構成してある。

【００１１】すなわち、操作アーム１６が図１２に示す
低速位置Ｌに在ると、内ガイドプレート１１が図１２、
図１５（イ）に示す位置にあってチエン５が小径フロン
トギヤ３に掛かり、フロント変速装置Ａが低速状態にあ
る。この状態において、変速操作具２０を原位置Ｎから
上り変速位置Ｙに揺動操作すると、操作アーム１６が低
速位置Ｌから図１３に示す中速位置Ｍに切り換わり、内
ガイドプレート１１が図１５（ロ）の位置を経て図１５
（ハ）の位置に移動する。この結果、図１５（ロ）に示
すように、内ガイドプレート１１の端部でなる第１押圧
部１１ａが小径フロントギヤ３に掛かっているチエン５
の側面に接触してこのチエン５を中径フロントギヤ２側
に押圧し、チエン５が小径フロントギヤ３から斜めに中
径フロントギヤ２側に寄る。すると、図１１（イ）に示
すように、中径フロントギヤ２の回動のために、ギヤ２
とともに回動する複数個のチエン掛け換え歯１７・・の
一つが中径フロントギヤ２側に寄っているチエン５の下
側に入り込み、中径フロントギヤ２がさらに回動するに
伴い、図３および図５に示すように、チエン掛け換え歯
１７がチエン５のアウターリンクプレート５ａと５ａの
間に入り込む状態でチエン５とチエン掛け換え歯１７が
咬合する。中径フロントギヤ２がさらに回動するに伴
い、図１１（ロ）に示すように、チエン掛け換え歯１７
の咬合支持による持ち上げ作用のためにチエン５が中径
フロントギヤ２に対してその歯先側に持ち上がり、これ
と同時に、チエン掛け換え歯１７のギヤ２側の側面に形
成してある図９の如き傾斜案内面１７ａが、歯底側ほど
ギヤ２側に接近する傾斜によるカム作用により、チエン
５を中径フロントギヤ２の方に引き寄せるために、さら
に、前記傾斜案内面１７ａが傾斜面による案内作用でア
ウターリンクプレート５ａを中径フロントギヤ２に対し
て傾斜する姿勢にすることのために、中径フロントギヤ
２のチエン掛け換え歯１７より駆動回転方向後方側に位
置するチエン駆動歯２ａにチエン５が掛かり、中径フロ
ントギヤ２がさらに回動するに伴い、図１１（ハ）、図
１３および図１５（ハ）に示すように、チエン掛け換え
歯１７とチエン５の咬合が解除するとともにチエン５の
中径フロントギヤ２にへの掛け換わりが完了する。内ガ
イドプレート１１は、チエン５をチエン掛け換え歯１７
に掛けるためにのみ押圧することにより、かつ、チエン
掛け換え歯１７に掛かったチエン５は、チエン掛け換え
歯１７による引き寄せ作用と傾斜案内作用とによって中
径フロントギヤ２に掛け換わることにより、内ガイドプ
レート１１は、チエン５が中径フロントギヤ２に掛け換
わった後にも図１５（ハ）の位置にありながら、中径フ
ロントギヤ２に掛け換わった後のチエン５とは接触しな
くなる。

【００１２】この状態において、変速操作具２０を原位
置Ｎから上り変速位置Ｙに操作すると、操作アーム１６
が中速位置Ｍから図１４に示す高速位置Ｔに切り換わ
り、内ガイドプレート１１が図１５（ハ）、図１６
（イ）の位置から図１６（ロ）の位置を経て図１６
（ハ）の位置に移動する。この結果、図１６（ロ）に示
すように、第１押圧部１１ａが中径フロントギヤ２に掛
かっているチエン５の側面に接触してこのチエン５を大
径フロントギヤ１側に押圧し、チエン５が中径フロント
ギヤ２から大径フロントギヤ１側に斜めに寄り始める。
この時、第２押圧部１１ｂはまだチエン５に対して押圧
作用しない。すると、図１１（イ）に示すように、大径
フロントギヤ１の回動のために、ギヤ１とともに回動す
る複数個のチエン掛止スパイク１８・・の一つが大径フ
ロントギヤ１側に寄っているチエン５の下側に入り込
み、大径フロントギヤ１がさらに回動するに伴い、図
４、図６に示すように、チエン掛止スパイク１８がチエ
ン５に対しては咬合しないでチエン５のアウターリンク
プレート５ａに受け止め作用し、チエン５がチエン掛止
スパイク１８に掛かり始めると、前記第２押圧部１１ｂ
を前記第１押圧部１１ａに対し外ガイドプレート１２側
に突出させてあることにより、図１６（ハ）に示すよう
に、第２押圧部１１ｂがチエン５にチエン掛止スパイク
１８から外れないように押圧作用し、図１１（ロ）に示
すように、チエン掛止スパイク１８の受け止め支持によ
る持ち上げ作用のためにチエン５が大径フロントギヤ１
に対してその歯先側に持ち上がる。チエン５が大径フロ
ントギヤ１に対し、大径フロントギヤ１の回転軸芯方向
視での外側に持ち上がるに伴い、この変速操作時には第
３押圧部１１ｃが大径フロントギヤ１の回転軸芯方向視
で大径フロントギヤ１の外側に位置するように構成して
あることと、前記第３押圧部１１ｃを前記第２押圧部１
１ｂに対し外ガイドプレート１２側に突出させてあるこ
ととに起因して、図１６（ニ）に示すように第３押圧部
１１ｃがチエン５の側面に接触してチエン５を大径フロ
ントギヤ１側に押圧し、チエン５が大径フロントギヤ１
の歯先の上方に位置する。大径フロントギヤ１がさらに
回動するに伴い、チエン５がチエン掛止スパイク１８よ
り若干、ギヤ１の回転方向後方側に位置するチエン駆動
歯１ａから大径フロントギヤ１に掛かり始め、大径フロ
ントギヤ１の引き続く回動に伴い、図１１（ハ）、図１
４および図１６（ホ）に示すように、チエン５とチエン
掛止スパイク１８の係合が解除するとともにチエン５の
大径フロントギヤ１への掛け換わりが完了する。チェン
５が大径フロントギヤ１に掛け換わり完了すると、チエ
ン５とギヤ１のチエン駆動歯１ａなどが咬合してチエン
５の一部がチエン駆動歯間に入り込み、チエン５が第３
押圧部１１ｃで押圧されて大径フロントギヤ１の外側に
位置する時に比して、チエン５の第３押圧部１１ｃに対
する位置が大径フロントギヤ１の回転軸芯側に寄ったも
のになることと、大径フロントギヤ１に掛け換わり完了
したチエン５に対しては第３押圧部１１ｃが非接触状態
になるように構成してあることにより、内ガイドプレー
ト１１は、チエン５が大径フロントギヤ１に掛け換わっ
た後にも図１６（ホ）の位置にありながら、大径フロン
トギヤ１に掛け換わった後のチエン５とは接触しなくな
る。

【００１３】変速操作装置Ｂは、図２２および図２３に
示すように構成してある。すなわち、変速操作具２０
は、樹脂製レバーキャップで成る第１操作部２０ａおよ
び第２操作部２０ｂを備えており、そして、第１操作部
２０ａの押し操作によって、図２４に示す原位置Ｎから
軸芯Ｘまわりで下降揺動し、第２操作部２０ｂの押し操
作によって、前記原位置Ｎから前記軸芯Ｘまわりで上昇
揺動ように構成してある。図２５に示すように、変速操
作操作具２０を原位置Ｎから下降側に操作すると、送り
爪２３が送り爪スプリング２４による付勢作用のために
位置決め部材２５のいずれかのラチェット歯２５ａに係
合していることにより、かつ、位置決め部材２５は巻き
取り体２２のボス部に噛み合い係合によって一体回動可
能に組付いていることにより、さらには、第１位置決め
爪２６および第２位置決め爪２７がラチェット歯２５ａ
の歯形状に起因する押し出し作用のためにラチェット歯
２５ａから外れて巻き取り体２２の回動を可能にするこ
とにより、巻き取り体２２が送り爪２３および位置決め
部材２５を介して伝わる操作具操作力のために巻き取り
側に回動してインナーワイヤ７ａの巻き取りをする。変
速操作具２０が所定角を揺動して上り変速位置Ｙになる
と、巻き取り体２２によるワイヤ巻き取りストロークが
所定ストロークに達してフロント変速装置Ａの操作アー
ム１６が変速操作前の位置ＬまたはＭから変速目標の位
置ＭまたはＴに切り換わる。この時、第１位置決め爪２
６が爪スプリング２８による付勢作用のためにいずれか
のラチェット歯２５ａに係合する姿勢に自動的に復帰し
て巻き取り体２２に対してストッパー作用し、変速操作
具２０に対する操作力付与を解除しても、巻き取り体２
２に作用する巻き戻しばね２９の付勢力や、フロント変
速装置Ａのリターンばねによる自己復元力にかかわら
ず、巻き取り体２２が切り換わり後の新たな回動位置を
維持して操作アーム１６を先の変速操作によって切り換
わった位置ＭまたはＴに維持する。この後、変速操作具
２０に対する操作力付与を解除すると、変速操作具２０
がリターンばね３０の付勢作用のために原位置Ｎに自動
的に復帰する。図２６に示すように、変速操作具２０を
原位置Ｎから上昇側に操作すると、送り爪２３がガイド
部材３１のガイド部３１ａに乗り上がってラチェット歯
２５ａから外れ、巻き取り体２２の巻き戻し回動が可能
になる。さらに、送り爪２３の基部が解除部材３２の第
１アーム部３２ａに接当して、解除部材３２が爪支軸３
３および送り爪２３を介して伝わる操作具操作力のため
に変速操作具２０の揺動方向と同一方向に回動し、解除
部材３２の第２アーム部３２ｂが第１位置決め爪２６の
アーム部２６ａと、第２位置決め爪２７のアーム部２７
ａとの間に入り込み、第２アーム部３２ｂのアーム部２
７ａに対する押圧による第２位置決め爪２７の揺動操作
のために、図２７に示す如く、第２位置決め爪２５の爪
先がラチェト歯間に入り込む。この時、第１位置決め爪
２６の爪先がラチェト歯２５ａの１つに接当して巻き取
り体２２にストッパー作用しており、巻き取り体２２は
まだ回動しない。この状態から変速操作具２０がさらに
上昇側に揺動して下り変速位置Ｚに達すると、第２アー
ム部３２ｂがアーム部２６ａに押圧作用して、第１位置
決め爪２６の爪先が先に接当していたラチェト歯２５ａ
から外れ、巻き取り体２２が巻き戻しばね２９の付勢作
用とフロント変速装置Ａによるワイヤ引っ張り作用との
ために巻き戻し側に若干回動する。この時、図２８に示
すように、先に第１位置決め爪２６からはずれたラチェ
ト歯２５ａが第２位置決め爪２７の爪先に接当し、第２
位置決め爪２７が巻き取り体２２を一挙に巻き戻し側に
回動しないように受け止め作用する。そして、変速操作
具２０に対する操作力付与を解除すると、解除部材３２
がリターンばね３４による付勢作用のために図２４に示
す待機位置に復帰すると共に、変速操作具２０が解除部
材３２を介して作用する前記リターンばね３４の付勢力
のために原位置Ｎに自動的に復帰する。解除部材３２が
待機位置に復帰するに伴い、第２アーム部３２ｂがアー
ム部２７ａに対する押圧操作を解除することと、この操
作解除状態では、第２位置決め爪２７は爪先の形状に起
因し、回動する巻き取り体２２のラチェト歯２５ａによ
る押し出し操作によってラチェット歯２５ａから外れる
こととにより、巻き取り体２２が巻き戻し回動し、巻き
取り体２２によるワイヤ巻き戻しストロークが所定スト
ロークに達して操作アーム１６が変速操作前より１段階
だけ低速側の位置ＭまたＬに切り換わる。この時、第１
位置決め爪２６の爪先が爪スプリング２８の付勢作用に
より、先に第１位置決め爪２６から外れたラチェト歯２
５ａと、このラチェト歯２５ａに後続するラチェット歯
２５ａとの間に入り込んで後続のラチェット歯２５ａに
接当作用し、巻き取り体２２は操作アーム１６を先の変
速操作によって切り換わった新たな位置ＭまたはＬに維
持すように、そのための回動位置を維持する。

【００１４】要するに、チエン５が小径フロントギヤ３
に掛かっている時、変速操作具２０を原位置Ｎから上り
変速位置Ｙに作動するようにワンタッチ操作するだけ
で、変速操作具２０の作動力により操作アーム１６が低
速位置Ｌから中速位置Ｍに切り換わってフロント変速装
置Ａが始動し、フロントディレーラ１０の第１押圧部１
１ａによるチエン５に対する押圧作用と、中径フロント
ギヤ２の回動力と、チエン掛け換え歯１７の作用との協
働でチエン５が小径フロントギヤ３から中径フロントギ
ヤ２に掛け換わる。しかも、このチエン掛け換わり後に
おいて、内ガイドプレート１１がチエン５に対する非接
触状態になる。チエン５が中径フロントギヤ２に掛かっ
ている時、変速操作具２０を原位置Ｎから上り変速位置
Ｙに作動するようにワンタッチ操作するだけで、変速操
作具２０の作動力により操作アーム１６が中速位置Ｍか
ら高速位置Ｔに切り換わってフロント変速装置Ａが始動
し、フロントディレーラ１０の第２押圧部１１ｂおよび
第３押圧部１１ｃによるチエン５に対する押圧作用と、
大径フロントギヤ２の回動力と、チエン掛止スパイク１
８の作用との協働でチエン５が中径フロントギヤ２から
大径フロントギヤ１に掛け換わる。しかも、このチエン
掛け換わり後において、内ガイドプレート１１がチエン
５に対する非接触状態になる。

【００１５】変速装置Ａを構成するに、チエン５が中径
フロントギヤ２や大径フロントギヤ１に掛け換わった後
には、フロントディレーラ１０とチエン５とが非接触状
態になるように構成すると、変速完了後に騒音が発生し
ない等有利であるが、フロントディレーラ１０とチエン
５とが接触したままである構成を採用して実施してもよ
い。

【００１６】〔別実施例〕図２９〜３２は、フロントデ
ィレーラ１０の別実施構造を示し、内ガイドプート１１
の内面側に第１押圧部１１ａ、この第１押圧部１１ａよ
り外ガイドプレート１２側に突出する第２押圧部１１
ｂ、この第２押圧部１１ｂより外ガイドプレート１２側
に突出する第３押圧部１１ｃを備える点においては前記
フロントデイレーラ１０と相違しないが、ガイドプレー
ト１１および１２のリンク１４ａに対する連結角度が若
干異なり、車体フレームに対する取り付け姿勢が若干相
違するように構成してある。この取り付け姿勢相違のた
めに、第２押圧部１１ｂおよび第３押圧部１１ｃの形状
がやや異なる。

【００１７】図３３はフロント変速システムの別実施構
造を示し、フロントディレーラ１０の内ガイドプレート
１１に、図１７の如き段部Ｄを有しないチエン押圧部１
１ｄを備えてあること、フロントディレーラ１０に電動
モータ３５を備えてあること、変速操作具２０に、低速
位置Ｌ１、中速位置Ｍ１および高速位置Ｔ１の三つの操
作位置を備えてあることのそれぞれにおいて、図１の変
速シスムとは異なり、詳しくはつぎの如く構成してあ
る。すなわち、フロントディレーラ１０を構成するに、
ガイドプレート１１および１２の移動操作のための操作
アーム１６に扇形ギヤ部を形成するとともに、この扇形
ギヤ部に電動モータ３５の出力ギヤ３５ａを咬合させて
あり、電動モータ３５の駆動操作をすることによって、
内ガイドプレート１１および外ガイドプレート１２のフ
ロントギヤ１，２，３に対する移動操作を行うようにし
てある。電動モータ３５と、この電動モータ３５の駆動
回路３６に連係してある制御回路あるいはマイクロコン
ピュータでなる変速制御手段３７とより、掛け換え機構
Ｅを構成してある。変速操作装置Ｂに検出スイッチ３８
を変速操作具２０が位置する操作位置の検出をするよう
に備えさせ、電線３９により前記検出スイッチ３８と前
記変速制御手段３７とを接続することによって、変速操
作具２０とフロント変速装置Ａとを連係させるように構
成してある。つまり、変速操作具２０を揺動操作によっ
て低速位置Ｌ１に切り換えると、変速制御手段３７が検
出スイッチ３８からの情報に基いて駆動回路３６に自動
的に信号を出力することにより、モータ３５がガイドプ
レート１１および１２を図３４（イ）の位置に操作して
チエン５が小径フロントギヤ３に掛かる。変速操作具２
０を低速位置Ｌ１から中速位置Ｍ１に切り換え操作する
と、変速制御手段３７が検出スイッチ３８からの情報に
基いて駆動回路３６に自動的に信号を出力することによ
り、モータ３５が内ガイドプレート１１を図３４（ロ）
に実線で示すように中径フロントギヤ２側に移動操作
し、内ガイドプレート１１が押圧部１１ｄをしてチエン
５を中径フロントギヤ２の側面に押圧操作し、この押圧
操作によるチエン５と中径フロントギア２の側面との摩
擦、および、中径フロントギア２の回動ためにチエン５
が中径フロントギヤ２の歯先側に持ち上がるようにす
る。この持ち上がりに伴い、モータ３５が内ガイドプレ
ート１１を図３４（ロ）に仮想線で示す如くさらに中径
フロントギヤ２側に移動操作し、内ガイドプレート１１
が押圧部１１ｄをしてチエン５を中径フロントギヤ２側
にさらに押圧操作し、チエン５が中径フロントギヤ２の
歯先上に位置するようにする。この後、中径フロントギ
ヤ２がさらに回動するに伴い、チエン５が中径フロント
ギヤ２のチエン駆動歯に咬合してチエン５の中径フロン
トギヤ２への掛け換わりが完了する。この掛け換わり完
了に伴い、変速制御手段３７が駆動回路３６に自動的に
モータ３５をこれまでとは逆の回転方向の操作するよう
に信号を出力し、モータ３５が内ガイドプレート１１を
図３４（ロ）の実線の位置またはこの付近に戻し操作し
て、中径フロントギヤ２と内ガイドプレート１１とが接
触しないようにする。変速操作具２０を中速位置Ｍ１か
ら高速位置Ｔ１に切り換え操作すると、変速制御手段３
７が検出スイッチ３８からの情報に基いて駆動回路３６
に自動的に信号を出力することにより、モータ３５が内
ガイドプレート１１を図３４（ハ）に実線で示すように
大径フロントギヤ１側に移動操作し、内ガイドプレート
１１が押圧部１１ｄをしてチエン５を大径フロントギヤ
２の側面に押圧操作し、この押圧操作によるチエン５と
大径フロントギア１の側面との摩擦、および、大径フロ
ントギア１の回動ためにチエン５が大径フロントギヤ１
の歯先側に持ち上がるようにする。この持ち上がりに伴
い、モータ３５が内ガイドプレート１１を図３４（ハ）
に仮想線で示す如くさらに大径フロントギヤ１側に移動
操作し、内ガイドプレート１１が押圧部１１ｄをしてチ
エン５を大径フロントギヤ１側にさらに押圧操作し、チ
エン５が大径フロントギヤ２の歯先上に位置するように
する。この後、大径フロントギヤ１がさらに回動するに
伴い、チエン５が大径フロントギヤ１のチエン駆動歯に
咬合してチエン５の大径フロントギヤ１への掛け換わり
が完了する。この掛け換わり完了に伴い、変速制御手段
３７が駆動回路３６に自動的にモータ３５をこれまでと
は逆の回転方向の操作するように信号を出力し、モータ
３５が内ガイドプレート１１を図３４（ハ）の実線の位
置またはこの付近に戻し操作して、大径フロントギヤ１
と内ガイドプレート１１とが接触しないようにする。

【００１８】変速操作具とフロントディレーラとを変速
ワイヤによって連係するよう機械連係型に構成して実施
する場合、掛け換え機構を構成するに、大径フロントギ
ヤ１に付設の前記チエン掛止用スパイク１８に換え、中
径フロントギヤ２に付設のチエン掛け換え歯１７と同様
のチエン掛け換え歯を採用して実施してもよい。

【００１９】前記変速操作装置Ｂにあっては、変速操作
具２０は、変速のために操作して位置させるべき操作位
置に位置決め爪２６，２７で位置決めするように構成し
てある。この変速操作装置に替え、変速操作具の側と、
固定部材の側に、ボールと凹、または溝と凸部を設けた
ものでもよい。また、変速操作具に中速位置の位置決め
を設け、フロントディレーラに高速位置、低速位置の位
置決めを行うストッパーを設けて、全操作位置の位置決
めを行ってもよい。または、変速操作具はフリクション
タイプで位置決めを備えず、フロントデイレーラにのみ
位置決めを設けたものでもよい。要は、変速操作具の側
でのみ位置決めをする手段で、または、フロントディレ
ーラの側でのみ位置決めをする手段で、あるいは、変速
操作具の側で位置決めをする手段とフロントディレーラ
の側で位置決めをする手段の組合わせで位置決め機構を
構成してもよいのである。

【００２０】また、変速操作具とフロントディレーラと
を電気的に連係するよう電気連係型に構成して実施する
場合、上記実施例に示した如く、変速操作具としてレバ
ー式を採用する他、変速操作具としてスイッチを採用し
てもよい。変速操作スイッチを採用する場合、複数段の
変速を同一のスイッチによって行う単一スイッチ型、変
速段数に等しい数の複数のスイッチによって行う複数ス
イッチ型のいずれを採用してもよい。

【００２１】前記大、中、小径フロントギヤ１，２，３
群の車体内側に小径フロントギヤ３よりさらに小径のギ
ヤを配置したり、大、中、小径フロントギヤ１，２，３
群の車体外側に大径フロントギヤ１よりさらに大径のギ
ヤを配置し、４枚あるいは５枚、あるいはそれ以上の枚
数のフロントギヤに対するチエン掛け換えを行う場合の
変速システムにも本発明は適用できる。

【００２２】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を
便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は
添付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】自転車用フロント変速シスムの概略側面図

【図２】自転車用フロントギヤの側面図

【図３】チエン掛け換え歯の作用状態の側面図

【図４】チエン掛止用スパイクの作用状態の側面図

【図５】チエン掛け換え歯の作用状態を示す平面図

【図６】チエン掛止用スパイクの作用状態を示す平面図

【図７】チエン掛け換え歯の側面図

【図８】チエン掛け換え歯の平面図

【図９】チエン掛け換え歯の正面図

【図１０】チエン掛止用スパイクの断面図

【図１１】チエン掛け換え歯およびチエン掛止用スパイ
クの作用を示す説明図

【図１２】低速状態におけるフロントディレーラの側面
図

【図１３】中速状態におけるフロントディレーラの側面
図

【図１４】高速状態におけるフロントディレーラの側面
図

【図１５】内ガイドプレートの作用状態を示す説明図

【図１６】内ガイドプレートの作用状態を示す説明図

【図１７】チエンガイドの正面図

【図１８】チエンガイドの背面図

【図１９】チエンガイドの平面図

【図２０】チエンガイドの底面図

【図２１】内ガイドプレートの断面図

【図２２】変速操作装置の縦断平面図

【図２３】変速操作装置の縦断側面図

【図２４】変速操作装置の作用を示す説明図

【図２５】変速操作装置の上り変速操作状態を示す説明
図

【図２６】変速操作装置の下り変速操作状態を示す説明
図

【図２７】変速操作装置の位置決め爪の作用を示す説明
図

【図２８】変速操作装置の位置決め爪の作用を示す説明
図

【図２９】別実施フロントディレーラのチエンガイドの
正面図

【図３０】別実施フロントディレーラのチエンガイドの
背面図

【図３１】別実施フロントディレーラのチエンガイドの
平面図

【図３２】別実施フロントディレーラのチエンガイドの
底面図

【図３３】別実施フロント変速システムの概略図

【図３４】別実施フロント変速システムにおけるチエン
ガイドの作用状態を示す説明図

【符号の説明】

１，２，３ フロントギヤ ５ チエン ７，３９ 連係手段 １０ フロントディレーラ １１ 内ガイドプート １７ チエン掛け換え歯 １８ チエン掛止用スパイク ２０ 変速操作具 ３５ 電動モータ ３９ 制御手段 Ａ フロント変速装置 Ｅ 掛け換え機構 Ｄ 段部 Ｔ１，Ｍ１，Ｌ１ 操作位置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B62M 9/12 B62M 9/00 B62M 25/04 B62M 25/08

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内ガイドプレート（１１）と、この内ガ
   イドプレート（１１） より自転車前後方向中心線に対して外側に配置されるよ
   う構成された外ガイドプレート（１２）を備えるフロン
   トディレーラ（１０）をチエン（５）に作用させて、前
   記チエン（５）を少なくとも小径、中径、大径フロント
   ギヤ（３) 、（２) 、（１）の間で掛け換えるフロント
   変速装置（Ａ）と、人為操作自在な変速操作具（２０）
   と、この変速操作具（２０）と前記フロント変速装置
   （Ａ）とを連係する連係手段（７) 、（３９）とを備え
   た自転車用フロント変速システムであって、 前記変速操作具（２０）の人為操作に伴う前記フロント
   ディレーラ（１０）の作用で前記チエン（５）を、より
   大径である掛け換え先フロントギヤ（１) 、（２）側に
   移動させるだけで、前記掛け換え先フロントギヤ（１)
   、（２）の回動力で、前記チエン（５）を前記掛け換
   え先フロントギヤ（１) 、（２）に掛け換える掛け換え
   機構（Ｅ）を設けてあり、 前記掛け換え機構（Ｅ）が、前記フロントディレーラ
   （１０）の前記内ガイドプレート（１１）に設けられ、
   前記外ガイドプレート（１２）の方向に突出したと、こ
   の前記掛け換え先フロントギヤ側部で前記段部（Ｄ）と
   対応する位置に設けられ、前記掛け換え先フロントギヤ
   （１) 、（２）の歯側面に対して、前記チエン（５）が
   掛かっていた掛け換え元フロントギヤの方向に突出して
   いる掛換突出部（１７）、（１８）で構成され、前記段部（Ｄ）が、前記内ガイドプレート（１１）の下
   部に設けられた第１押圧部（１１ａ）に対して前記外ガ
   イドプレート（１２）の方向に突出した第２押圧部（１
   １ｂ）と、前記第２押圧部（１１ｂ）より前記外ガイド
   プレート（１２）の方向に突出し、前記チエン（５）の
   前記大径フロントギヤ（１）への掛け換え完了時に前記
   大径フロントギヤ（１）の回転軸芯方向視で前記大径フ
   ロントギヤ（１）の外側に配置される第３押圧部（１１
   ｃ）を有する ことを特徴とする自転車用フロント変速シ
   ステム。
2. 【請求項２】前記掛換突出部（１７）、（１８）が、前
   記掛け換え先フロントギヤ側部に設けられたチェン掛止
   スパイク（１８）である請求項１記載の自転車用フロン
   ト変速システム。
3. 【請求項３】前記チェン掛止スパイク（１８）が前記小
   径、中径、大径フロントギヤ（３) 、（２) 、（１）の
   内の、大径フロントギヤ（１）に設けられている請求項
   ２記載の自転車用フロント変速システム。
4. 【請求項４】前記掛換突出部（１７）、（１８）が、前
   記掛け換え先フロントギヤ側部に設けられたチエン掛け
   換え歯（１７）である請求項１記載の自転車用フロント
   変速システム。
5. 【請求項５】前記チエン掛け換え歯（１７）が、前記小
   径、中径、大径フロントギヤ（３) 、（２) 、（１）の
   内の、中径フロントギヤ（２）に設けられている請求項
   ４記載の自転車用フロント変速システム。
6. 【請求項６】 位置決め機構を前記フロント変速装置に
   備えさせ、前記フロントディレーラ（１０）がチエン掛
   け換えするフロントギヤ（１) 、（２) 、（３）の枚数
   に等しい数の操作位置（Ｔ１) 、（Ｍ１) 、（Ｌ１）そ
   れぞれに前記位置決め機構によって位置決めするように
   構成してある請求項１〜５の一つに記載の自転車用フロ
   ント変速システム。