JP3285055B2 - 成形機用シリンダ及びその製造方法 - Google Patents

成形機用シリンダ及びその製造方法

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JP3285055B2
JP3285055B2 JP24631393A JP24631393A JP3285055B2 JP 3285055 B2 JP3285055 B2 JP 3285055B2 JP 24631393 A JP24631393 A JP 24631393A JP 24631393 A JP24631393 A JP 24631393A JP 3285055 B2 JP3285055 B2 JP 3285055B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチック成形機等
に用いる円筒状シリンダ及びその製造方法に関し、詳し
くは耐摩耗性、耐食性、耐クラック性に優れた成形機用
シリンダ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】プラス
チック等の成形機用シリンダには、加熱成形中の樹脂ま
たは樹脂に加えた添加剤による腐食あるいは摩耗を防止
するため、鋼材からなる中空円筒状のシリンダ母材の内
面に、耐摩耗性と耐食性とを有する合金材料を遠心鋳造
法により、ライニングするという構造のものが使用され
ている。このような構造の成形機用シリンダにおいて
は、近年、生産性を向上するために、射出成形サイクル
の短縮及び耐射出圧力の上昇が望まれているが、そうす
ると射出成形サイクルの毎に、延性の小さい上述のよう
な合金材料からなるライニング材に繰り返し膨張、収縮
の応力がかかり、クラックが発生しやすくなるので、シ
リンダ母材ができるだけ膨張、収縮しないように高強度
である必要がある。
【0003】しかしながら、上述の成形機用シリンダの
母材は、主としてパーライトと少量のフェライトとから
なっているため、高速高圧の射出成形サイクルに対して
十分な強度を有しておらず、その結果ライニング材は膨
張、収縮により疲労破壊を起こし、クラックが生じると
いう問題がある。
【0004】そこで、これらの性能を向上する方法とし
ては、図9に示すように、焼嵌方法によって、補強部材
4をライニング材3とシリンダ母材2とからなる成形機
用シリンダ1に接合する方法が考えられる。しかしなが
ら、この方法によると、製造コストが上がるという問題
があり、また手間がかかるため製作手順が長くなるとい
う問題がある。
【0005】以上に鑑み、本出願人は先に、Cr10.0〜3
0.0重量%、B 1.5〜4.0 重量%、Si2.0重量%以下、Mn
2.0重量%以下、C 0.7重量%以下、Fe 5.0〜20.0重量
%、残部実質的にCoからなるCo基合金に、3.0 〜20.0重
量%のNbC を分散させてなるライニング材と、合金鋼か
らなるシリンダ母材とを有することを特徴とする成形機
用シリンダを提案した(特開平4─28839)。この
成形機用シリンダは良好な耐摩耗性、耐クラック性を有
する。しかしながら、NbC を大量に添加すると偏析を引
き起こす恐れがあることがわかった。また、流動性が悪
く、鋳造性がよくない。
【0006】従って本発明の目的は、コストアップ、製
作手順延長等の弊害を伴わずに、疲労強度、耐クラック
性、耐摩耗性に優れた成形機用シリンダを提供すること
である。また本発明のもう一つの目的は、かかる成形機
用シリンダを製造する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、合金鋼からなる中空円筒形状のシ
リンダ母材に、耐摩耗性及び耐食性を有する合金を遠心
鋳造によりライニングした成形機用シリンダを作製する
際に、シリンダ母材を所望の組織とし、このために適当
な熱処理を施すことにより、コストアップ、製作手順が
長くなる等の弊害を伴わずに、疲労強度、特に耐クラッ
ク性に優れた成形機用シリンダが得られることを発見
し、本発明に想到した。
【0008】すなわち、本発明の成形機用シリンダは、
合金鋼からなる中空円筒形状のシリンダ母材と、前記シ
リンダ母材の内面に存する耐摩耗性及び耐食性に優れた
ライニング材とを有し、前記ライニング材は、Cr10.0〜
30.0重量%、B 1.5〜4.0 重量%、Si 2.0重量%以下、
Mn 2.0重量%以下、C 0.7重量%以下、Fe 5.0〜20.0重
量%、W 2.0〜20.0重量%、残部実質的にCo及び不可避
的不純物からなるCo基合金からなることを特徴とする。
【0009】また、本発明の成形機用シリンダを製造す
る方法は、前記ライニング材を前記シリンダ母材内に入
れて遠心鋳造後、20〜200 ℃/分の冷却速度でベイナイ
ト変態を起こす温度領域まで冷却し、そこで10分以上保
持後、 1〜10℃/分の加熱速度で、 550〜650 ℃のアニ
ール温度まで加熱し、アニール後室温まで冷却すること
を特徴とする。
【0010】
【実施例及び作用】まず、本発明の一実施例による成形
機用シリンダの母材について説明する。本実施例におい
ては、耐摩耗性及び耐食性を有するライニング材を被覆
するシリンダ母材として合金鋼を用いる。
【0011】合金鋼として、Cr−Mo鋼を用いる場合、化
学成分の含有率はC 0.3〜0.5 重量%、Si0.15〜0.35重
量%、Mn 0.3〜1.5 重量%、P0.03重量%以下、S0.03
重量%以下、Cr 0.7〜1.5 重量%、Mo 0.1〜0.5 重量%
とするのが強度上好ましい。日本工業規格(JIS G 4105)
に規定されるSCM440、SCM445相当のCr−Mo鋼が、強度上
特に好ましい。
【0012】合金鋼として、Ni−Cr−Mo鋼を用いる場
合、化学成分の含有率はC 0.3〜0.5重量%、Si0.15〜
0.35重量%、Mn 0.3〜1.5 重量%、P0.03重量%以下、
S0.03重量%以下、Ni 3.0重量%以下、Cr 0.7〜1.5 重
量%、Mo 0.1〜0.5 重量%とするのが強度上好ましい。
日本工業規格(JIS G 4103)に規定されるSNCM439 相当の
Ni−Cr−Mo鋼が、強度上特に好ましい。
【0013】また本実施例においては、シリンダ母材の
強度を向上するために、組織の20%以上をベイナイトに
より形成し、残部をソルバイトにより形成する。組織の
ベイナイトが20%未満であると十分な強度が得られない
ため好ましくない。以上に示す組織構成とするために、
本実施例においては、上述したライニング材を上述した
シリンダ母材内に入れて遠心鋳造後、熱処理を施すが、
この熱処理方法を図1に示す熱処理パターンにより説明
する。
【0014】ここで、図1の横軸は時間、縦軸は温度を
示しており、また熱処理パターン上のAは遠心鋳造工
程、Bは冷却工程、Cは保持工程、Dは加熱工程、Eは
アニール工程、Fは室温までの冷却工程を示している。
【0015】本実施例においては、Aに示す遠心鋳造工
程により、成形機用シリンダを形成し、その後Bに示す
冷却工程において、ベイナイト変態を起こす温度領域ま
で冷却するが、この時の冷却速度は20〜200 ℃/分であ
る。冷却速度が20℃/分未満であると、トルースタイト
を生じ、また 200℃/分を超えると、ライニング材の内
面に割れが生じやすくなる。
【0016】次いでCに示すように保持工程において、
ベイナイト変態を起こす領域は 300〜600 ℃である。ベ
イナイト変態を起こす領域が 300℃未満であると低温で
の母材の変態膨張によりライニング材の内面に割れが生
じやすくなり、また 600℃を超えるとパーライトが生じ
る。また保持工程における保持時間は10分以上必要であ
る。保持時間が10分未満であるとシリンダ母材のベイナ
イト量が20%未満となり、十分な強度が得られなくな
る。
【0017】次いでDに示すようにアニール温度まで加
熱を行うが、この時、加熱速度は 1〜10℃/分である。
加熱速度が 1℃/分未満であると、シリンダ母材のベイ
ナイト量が過多となり、ライニング材の内面に割れを発
生しやすくなる。また10℃/分を超えると、逆にベイナ
イト量が不足して強度が得られなくなる。
【0018】次いでEに示すようにアニールを行うが、
この時、アニール温度は 550〜650℃である。アニール
温度が 550℃未満であると残留応力除去というアニール
の目的を果たず、また 650℃を超えると金属組織に影響
をおよぼす。アニール時間は1〜5時間である。アニー
ル時間が1時間未満であると十分に残留応力を除去でき
ず、また5時間を超えても、その効果に著しい変化はな
い。
【0019】最後にFに示すように室温まで冷却する。
【0020】以上により形成される本実施例における成
形機用シリンダは、シリンダ母材の強度が著しく向上す
るため、優れた疲労強度、特に耐クラック性を有する構
造になる。
【0021】次に本実施例に用いる耐摩耗性及び耐食性
を有するライニング材を構成する合金成分について説明
する。
【0022】Crの含有率は10.0〜30.0重量%であり、特
に好ましいCrの含有率は11.0〜23.0重量%である。Crは
10.0重量%未満であると、本実施例の合金が硫化した場
合、硫化スケールはCo2 S 4 からなるマトリックス中に
Cr2 S 3 が分散した組織を成し、このスケールは硫化反
応を抑制しないため好ましくない。Crが10.0重量%を超
えると硫化スケールはCr2 S 3 からなるマトリックス中
にCo2 S 4 が分散した組織を成し、このスケールは硫化
反応を抑制する。しかしながらCrが30.0重量%を超える
と耐硫化性は向上するが、本実施例の合金の融点が1200
℃以上となってしまうため、遠心鋳造には適さず好まし
くない。
【0023】Bの含有率は 1.5〜4.0 重量%である。B
は組織中に高硬度のほう化物を析出させ、合金の硬度を
向上させる作用を有するが、 1.5重量%未満ではその効
果が十分ではなく、 4.0重量%を超えると超共晶組織が
粗大化し、かつ脆性を増すので好ましくない。
【0024】またCr量とB量の関係は、Cr量を増す場合
はB量を減らし、Cr量を減らす場合、B量を増すことに
より、合金が微細な組織となり強度の大きい共晶組成と
なる。すなわちCr30重量%のときB 1.5重量%、Cr10重
量%のときB 4.0重量%が本実施例における合金の共晶
組成であり、このCrとBの均衡を保つのが好ましい。
【0025】Siは脱酸材としての作用をするが、その効
果から含有率は2.0 重量%以下とする。
【0026】Mnは脱酸材としての作用をするが、その効
果から含有率は2.0 重量%以下とする。
【0027】Cの含有率は 0.7重量%以下である。Cは
基地の硬さと強度を向上させる作用を有するが、 0.7重
量%を超えると共晶度が上昇して脆くなり、強度が低下
するため好ましくない。
【0028】Feの含有率は 5.0〜20.0重量%である。Fe
は当初合金中に含有されなくても、鋼材からなるシリン
ダ母材との溶着反応によりシリンダ母材から侵入する。
所定量のFeがシリンダ母材から合金へ移行することがラ
イニング材とシリンダ母材との完全な溶着を遂行する上
で必要であるが、Feが 5.0重量%未満では、その効果を
発揮しない。またFeが増加すると硬さが低下するととも
に、酸に対する耐食性を低下させ、20.0重量%を超える
とその影響が無視できなくなるため、好ましくない。
【0029】Wの含有率は 2.0〜20.0重量%である。W
はB及びCと著しく硬質なほう化物及び炭化物を形成
し、耐摩耗性を向上させる作用を有する。 2.0重量%未
満であると、ほう化物の量が少なく、その効果は発揮し
ない。また20重量%を超えるとほう化物が過剰になり、
過度に硬質化し、機械的強度が著しく低下するので、
2.0〜20.0重量%とする。
【0030】CoはCr及びBと化合して合金の高硬度特性
と耐食性を向上させるため、合金のマトリックスとして
残部とする。
【0031】また本実施例においては、Niを含有するこ
ともでき、この場合Niの好ましい含有率は、 5.0重量%
以下である。Niは 5.0重量%を超えると合金の硬さを低
下させるため好ましくない。
【0032】本発明を以下の具体的実施例により詳細に
説明する。なお、熱処理サイクルは図1を参照して説明
する。
【0033】実施例1 日本工業規格(JIS G 4105)に規定されるSCM440の相当の
Cr−Mo鋼を用いて、シリンダ母材を形成した。次いで、
ライニング材用合金を形成するために、表1に示す組成
の合金を配合するが、鋳造中にシリンダ母材からFeが移
行するため、この移行するFe量を見込んだ配合とした。
【0034】このようにして配合されたライニング材用
合金を一旦加熱溶解した後、板状の合金鋳物に形成し、
この合金鋳物を破砕してシリンダ内にホッパー用開口部
から投入し、開口部をすべて密封後、1200℃で遠心鋳造
した(図1に示すA)。次いで、冷却速度40℃/分で、
480℃のベイナイト変態を起こす温度まで冷却した後
(図1に示すB)、20分間保持し(図1に示すC)、次
いで、加熱速度5℃/分で 630℃のアニール温度まで再
加熱した後(図1に示すD)、5時間保持してアニール
を行い(図1に示すE)、室温に至るまで冷却した(図
1に示すF)。
【0035】以上により形成された、成形機用シリンダ
のライニング材の組織は、図6の金属組織に示すよう
に、明色のWBと暗色のCrBと灰色のCo基地により
構成されている。また、成形機用シリンダのシリンダ母
材組織は、図8の金属組織に示すように、ベイナイトを
約50%含有し、残部はソルバイトで構成されていた。
【0036】実施例2 日本工業規格(JIS G 4130)に規定されるSNCM 439相当の
Ni-Cr-Mo鋼を用いて、シリンダ母材を形成し、次いで、
表1に示す組成で実施例1と同様の方法よりライニング
材を形成した。
【0037】上記シリンダ母材に上記ライニング材を12
00℃の温度で遠心鋳造して(図1に示すA)成形機用シ
リンダを作製し、次いで熱処理を施したが、その際の熱
処理条件は、冷却速度20℃/分(図1に示すB)、ベイ
ナイト変態を起こす温度 450℃、保持時間20分(図1に
示すC)、加熱速度5℃/分(図1に示すD)、アニー
ル温度 600℃、アニール時間5時間(図1に示すE)で
あり、それ以外の条件は実施例1と同様とした。以上に
より形成された、成形機用シリンダのライニング材の組
織は、図7の金属組織に示すように、比較的明色のWB
と暗色のCrBと灰色のCo基地により構成されてい
る。
【0038】比較例1 実施例1と同様のCr−Mo鋼を用いて、シリンダ母材を形
成し、次いで表1に示す組成の合金を用いて、実施例1
と同様の方法でライニング材を形成した。
【0039】上記シリンダ母材に上記ライニング材を11
00℃の温度で遠心鋳造して(図1に示すA)成形機用シ
リンダを作製し、次いで熱処理を施したが、その際の熱
処理条件は、冷却速度60℃/分(図1に示すB)、ベイ
ナイト変態を起こす直前の温度 620℃まで冷却、保持時
間20分(図1に示すC)、加熱速度5℃/分(図1に示
すD)、アニール温度 630℃、アニール時間5時間(図
1に示すE)であり、それ以外の条件は実施例1と同様
とした。
【0040】上述の実施例1、2及び比較例1の成形機
用シリンダのライニング材について硬度を計測して表2
に示す。
【0041】 表1 サンプル名 ライニング材合金化学成分(重量%) C B Si Mn Cr Ni Co Fe W 実施例1 0.1 2.6 1.0 1.0 18 0.5 残部 9.5 3.0 実施例2 0.2 2.8 1.0 1.0 20 0.7 残部 10.5 8.5 比較例1 0.2 2.5 2.7 1.0 6.3 67.4 10.0 10.0 −
【0042】 表2 ライニング材硬度(HRC) シリンダ母材硬度(HSC) 実施例1 50 37 実施例2 57 37 比較例1 53 〜 58 30 〜 32
【0043】また上述の実施例1、2及び比較例1の成
形機用シリンダについて、ライニング材の引張強さ( 曲
げ強さとワイブル値から算出した値) 及びシリンダ母材
の降伏点応力を計測した。実施例1、2については、ほ
ぼ同様の結果が得られたため、実施例1と比較例1につ
いて結果を図2に示す。
【0044】さらに上述の実施例1、2及び比較例1の
成形機用シリンダについて、耐圧強度を計測した。実施
例1、2については、ほぼ同様の結果が得られたため、
実施例1と比較例1について結果を図3に示す。
【0045】さらに上述の実施例1、2及び比較例1の
成形機用シリンダから、10mm×15mm×10mmの大きさの試
料を作成し、#400の研磨紙に、荷重 2.0kgで押圧し、48
0mの距離を摺動させた後にライニング材の摩耗量を調べ
た。この結果を、比較例1の結果を10とした時の相対値
によって表し、耐摩耗性を評価した。実施例2は実施例
1と同様の結果が得られたため、実施例1及び比較例1
について結果を図4に示す。
【0046】さらに上述の実施例1、2及び比較例1の
成形機用シリンダから試料を作成し、50℃の10%HCl 水
溶液中に24時間浸漬した後に、ライニング材の腐食減量
率を調べた。この結果を、比較例1の結果を1とした時
の相対値によって表し、耐食性を評価した。実施例1、
2については同様の結果が得られたため、実施例1、比
較例1について結果を図5に示す。
【0047】図2から明らかなように、実施例1の成形
機用シリンダを形成するライニング材の引張強さは、比
較例1の成形機用シリンダに比べて、約2倍以上に著し
く向上した。
【0048】また実施例1のシリンダ母材の降伏点応力
は、比較例1に対して80%以上向上した。
【0049】さらに図3から明らかなように、実施例1
の成形機用シリンダの耐圧強度は、比較例1の成形機用
シリンダに対して約80%向上した。
【0050】以上により、本実施例における成形機用シ
リンダは、ライニング材が十分な強度を有するととも
に、シリンダ母材の強度が飛躍的に向上したため、耐ク
ラック性が著しく向上した。
【0051】実施例1のライニング材の耐摩耗性につい
ては、図4に示すように、耐摩耗性の評価は、比較例1
を10とした時の相対値が5となり、摩耗量が約半分に減
り、耐摩耗性が大幅に増加している。従来からシリンダ
に汎用されている窒化鋼(JIS G 4202に規定される SAC
M645鋼を窒化処理して得たもの)について同様の試験を
行ったところ、図4に示すように相対値は35であり、こ
れに比べると摩耗量が大幅に減少しており、十分な耐摩
耗性が得られたといえる。
【0052】また、実施例1のライニング材の酸に対す
る耐食性については、図5に示すように比較例1を1と
した時の相対値が 1.3と、腐食減量率が増加しており、
耐食性が若干低下している。しかし、従来からシリンダ
に汎用されている窒化鋼(JIS G 4202に規定されるSACM
645鋼を窒化処理して得たもの)について同様の試験を
行ったところ、図5に示すように相対値は20であり、こ
れに比べると、腐食減量率は大幅に減少しており、十分
な耐食性が得られたといえる。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の成形機用
シリンダにおいては、合金鋼からなる中空円筒形状を有
するシリンダ母材に、耐摩耗性合金により形成されるラ
イニング材を遠心鋳造し、成形機用シリンダを作製して
いるが、本発明の方法に従って成形機用シリンダに熱処
理を施すことによって、シリンダ母材の組織の20%以上
をベイナイトにより形成し、残部をソルバイトにより形
成している。これにより、高速高圧の射出サイクルに対
応するためにライニング材に膨張、収縮の応力がかかる
場合においても、シリンダ母材が優れた強度を有し、ラ
イニング材に生じる歪みを抑えるため、優れた疲労強
度、耐クラック性を有する成形機用シリンダを、コスト
アップ、製作手順延長等の弊害を伴わずに得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例成形機用シリンダの熱処理工程
を示すパターン図である。
【図2】実施例1及び比較例1のライニング材の引張強
さ及びシリンダ母材の降伏点応力を示すグラフである。
【図3】実施例1及び比較例1の耐圧強度を示すグラフ
である。
【図4】実施例1及び比較例1の摩耗量の相対値を示す
グラフである。
【図5】実施例1及び比較例1の腐食減量率の相対値を
示すグラフであり、
【図6】実施例1のシリンダのライニング材の金属組織
を示す顕微鏡写真である。
【図7】実施例2のシリンダのライニング材の金属組織
を示す顕微鏡写真である。
【図8】実施例1のシリンダの母材の金属組織を示す顕
微鏡写真である。
【図9】成形機用シリンダの一例を示す概略断面図であ
る。
【符号の説明】
1 成形機用シリンダ 2 シリンダ母材 3 ライニング材 4 補強部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/00 - 45/84 C22C 19/00 - 19/07

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金鋼からなる中空円筒形状のシリンダ
    母材と、前記シリンダ母材の内面に存する耐摩耗性及び
    耐食性に優れたライニング材とを有し、前記ライニング
    材は、Cr10.0〜30.0重量%、B 1.5〜4.0 重量%、Si
    2.0重量%以下、Mn 2.0重量%以下、C 0.7重量%以
    下、Fe 5.0〜20.0重量%、W 2.0〜20.0重量%、残部実
    質的にCo及び不可避的不純物からなるCo基合金からなる
    ことを特徴とする成形機用シリンダ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の成形機用シリンダにお
    いて、前記シリンダ母材の組織は、ベイナイト20%以
    上、残部ソルバイトからなることを特徴とする成形機用
    シリンダ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の成形機用シリン
    ダにおいて、前記ライニング材のCrが11.0〜23.0重量%
    であることを特徴とする成形機用シリンダ。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、前記ライニング材がNi 5.0重量
    %以下を含有することを特徴とする成形機用シリンダ。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、前記シリンダ母材を形成する合
    金鋼が、C 0.3〜0.5 重量%、Si0.15〜0.35重量%、Mn
    0.3〜1.5 重量%、P0.03重量%以下、S0.03重量%以
    下、Cr 0.7〜1.5 重量%、Mo 0.1〜0.5 重量%、残部実
    質的にFe及び不可避的不純物からなるCr−Mo鋼であるこ
    とを特徴とする成形機用シリンダ。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至4のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、前記シリンダ母材を形成する合
    金鋼が、C 0.3〜0.5 重量%、Si0.15〜0.35重量%、Mn
    0.3〜1.5 重量%、P0.03重量%以下、S0.03重量%以
    下、Ni3.0 重量%以下、Cr 0.7〜1.5 重量%、Mo 0.1〜
    0.5 重量%、残部実質的にFe及び不可避的不純物からな
    るNi−Cr−Mo鋼であることを特徴とする成形機用シリン
    ダ。
  7. 【請求項7】 合金鋼からなる中空円筒形状のシリンダ
    母材と、前記シリンダ母材の内面に存する耐摩耗性及び
    耐食性に優れたライニング材とを有し、前記ライニング
    材は、Cr10.0〜30.0重量%、B 1.5〜4.0 重量%、Si
    2.0重量%以下、Mn 2.0重量%以下、C 0.7重量%以
    下、Fe 5.0〜20.0重量%、W 2.0〜20.0重量%、残部実
    質的にCo及び不可避的不純物からなるCo基合金からなる
    成形機用シリンダの製造方法において、前記ライニング
    材を前記シリンダ母材内に入れて遠心鋳造後、20〜200
    ℃/分の冷却速度でベイナイト変態を起こす温度領域ま
    で冷却し、そこで10分以上保持後、 1〜10℃/分の加熱
    速度で、 550〜650 ℃のアニール温度まで加熱し、アニ
    ール後室温まで冷却することを特徴とする方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の成形機用シリンダの製
    造方法において、前記ベイナイト変態を起こす領域が 3
    00〜600 ℃であることを特徴とする方法。
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