JP3276045B2 - 遅れ破壊特性に優れた非磁性pc鋼線材およびその製造方法 - Google Patents
遅れ破壊特性に優れた非磁性pc鋼線材およびその製造方法Info
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造物におけるプレストレストコンクリート(以下PCと
よぶ)用に好適な鋼材とその製造方法に関するものであ
る。
鋼材料が使用されている。これらは全て磁気的に強磁性
体であるため、リニアモーターカーのガイドウェイの様
に構造物の非磁性が要求されるところには使用できな
い。また、非磁性を実現する鉄鋼材料として、Mnを1
5%程度以上添加した高Mn鋼およびオーステナイト系
のステンレス鋼が従来より知られている(特開平4−1
54938号公報、特開平4−141557号公報、特
開平4−193934号公報、特開平4−143252
号公報および特公平6−4891号公報参照)。
nを多量に含有するため遅れ破壊特性が低下し、PC鋼
として望ましくない。また、オーステナイト系ステンレ
ス鋼にはSUS304やSUS316などがあるが、共
に冷間加工によって透磁率が上昇し、非磁性が損なわれ
るほか、PC鋼に要求される引張強度、比例限、降伏強
度、伸び、リラクセーションといった機械的特性を満足
することができないという問題があった。従って、本発
明の目的は、PC鋼としての機械的特性(引張強度、比
例限、降伏強度、伸び、リラクセーション)を満足し、
かつ遅れ破壊特性に優れた非磁性鋼材の製造方法を提供
することにある。
め、本発明の第一の構成は、重量%でC:0.15%以
下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以上5.0%
未満、Ni:10.0〜13.0%、Cr:15.0〜
20.0%、N:0.1〜0.5%、残部は実質的にF
eからなる非磁性鋼材で、Ni+Mn:11〜18%、
透磁率が1.01以下、引張強度が1600N/mm2
以上、伸びが3.5%以上であることを特徴とする。そ
の製造方法は、同組成の鋼材を、断面減少率50%以上
70%以下の加工度で線引加工し、300℃以上700
℃以下、好ましくは500℃以上600℃以下に加熱す
ることを特徴とする。
5%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以上
5.0%未満、Ni:10.0〜13.0%、Cr:1
5.0〜20.0%、N:0.1〜0.5%、残部は実
質的にFeからなる非磁性鋼材で、Ni+Mn:11〜
18%、リラクセーション値が1.5%以下であること
を特徴とする。そして、その製造方法は、同組成の鋼材
に冷間加工を施した後、200℃〜700℃の温度に加
熱し、鋼材の破断荷重未満の引張力を与えることを特徴
とする。
下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以上5.0%
未満、Ni:10.0〜13.0%、Cr:15.0〜
20.0%、N:0.1〜0.5%、残部は実質的にF
eからなる鋼材において、次の3つの条件のうち少なく
とも一つを満たすことを特徴とする。体積%でマルテ
ンサイト量が2〜10%である。X線解析におけるf
cc(220)の半価幅が0.65以上、より好ましく
は0.7以上。100nm以下の炭化物が分散されて
いる。
C:0.15%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.
0%以上5.0%未満、Ni:10.0〜13.0%、
Cr:15.0〜20.0%、N:0.1〜0.5%、
残部は実質的にFeからなる鋼材を線引加工した後、熱
処理する際、次の条件の少なくとも一つを満たすことを
特徴とする。線引加工を0〜100℃、より好ましく
は0〜60℃の温度域にて行う。線引加工の断面減少
率を50〜70%とする。熱処理条件を300〜60
0℃、より好ましくは500〜600℃で、10〜60
分とする。
由は次の通りである。Cはオーステナイトを安定させ、
かつ固溶強化による強度向上に寄与する元素であり非常
に重要な元素である。しかし、重量%で0.15%を越
えて含有すると炭化物が析出するため遅れ破壊特性が低
下し、延性が低下するため0.15%以下とした。Si
は脱酸剤として製造上必要とされる元素である。しか
し、一方ではフェライトの安定化元素であるため、2.
0%を越えて含有するとフェライトが生成し、非磁性が
損なわれる可能性があるためである。Mnは強力なオー
ステナイト安定化元素であり、冷間加工後の非磁性を確
保するために必要な元素である。しかし、1.0%未満
の含有量では不十分であり、15%を越えて含有する
と、線引加工性を低下させるばかりでなく遅れ破壊特性
も低下させるからである。遅れ破壊特性を考慮すると、
Mn量は1.0%以上5.0%未満が望ましい。
であり、鋼材の非磁性を確保するために有効な元素であ
る。2.0%未満ではその効果が不十分であり、15%
を越えてもそれ以上の効果はなく、コストアップを招く
だけだからである。実用上、10.0〜13.0%が好
ましい。また、MnとNiは共にオーステナイト安定化
元素であり、鋼材を確実に非磁性にするためには、Mn
+Niの量が10%以上必要である。一方、多すぎると
コストアップを招くため、11%以上18%以下が好適
である。Crは鋼材の耐食性を向上させ、かつ適量の添
加によりオーステナイトの安定化に寄与する元素である
が、過剰に含有させるとフェライトの生成を促進する。
従って、耐食性を確保する必要上、15%以上の含有量
が必要であるが、フェライトの生成を抑え、非磁性を確
保する必要上、20%以下とする必要がある。NはCと
同様にオーステナイト安定化に寄与し、固溶強化により
強度確保に必要な元素である。0.1%未満ではその効
果が小さく、0.5%を越えて含有すると製鋼時に気泡
が多量に発生し、熱間加工性を損ない、さらに遅れ破壊
特性を低下させる。
加工後の熱処理温度を300℃以上700℃以下とした
のは、非磁性PC鋼に要求される引張強度、伸びを十分
に満足する鋼材を得るためである。さらに、上記組成の
鋼材に冷間加工を施した後、破断荷重未満の引張力をか
ける際の温度条件を200℃〜700℃としたのは、前
記機械的特性の他、比例限、降伏限度を大幅に向上し、
リラクセーションを低く抑えるためである。なお、特公
昭61−53408号公報は、本発明の熱処理と同様の
熱処理を提案しているが、基本的に対象としている鋼材
の組成が異なっている。特にCの含有量に関しては同公
報記載の発明が0.2%以上であるのに対し、本願のそ
れは0.15%以下と低く、低C鋼において比例限や降
伏強度の向上を図っている点で大きく異なっている。
ことにより、線引後のマルテンサイト量を2〜10体積
%に、fcc(220)の半価幅を0.65以上にする
ことができる。マルテンサイト量が10%を越えて存在
すると、鋼材の透磁率が大幅に上昇し、一般に非磁性と
いわれている透磁率1.01以下の条件を逸脱する。一
方、マルテンサイト量が2%未満では、PC鋼材として
要求される強度を満足することができない。同様に、f
cc(220)の半価幅が0.65未満ではPC鋼材と
して要求される強度を満足することができない。同半価
幅が0.70以上であれば、特に強度向上効果が大き
い。
℃に限定することが引張強度や伸びの向上に寄与するこ
とは先に述べた。この熱処理条件を300〜600℃、
より好ましくは500〜600℃、加熱時間を10〜6
0分に限定することで、さらに引張強度と遅れ破壊特性
を向上させることができる。即ち、この熱処理により、
鋼材に100nm以下の微細な炭化物を分散させ、PC
鋼材として十分な強度を得ることができる。加熱時間が
60分を越えたり、加熱温度が600℃を越えたりする
と、炭化物が100nmよりも大きくなり、強度は得ら
れても遅れ破壊特性が劣る。一方、加熱時間が10分未
満であったり、加熱温度が300℃未満であったりする
と、炭化物の析出が不十分で高強度の材料が得難い。
材を得た。それらを溶体化処理後、各条件で線引加工お
よび熱処理を行った。熱処理は各温度に10分間保持し
て水冷を行った。その後、透磁率、引張強度、破断伸
び、降伏強度、比例限、リラクセーションおよび遅れ破
壊特性の調査を行った。その結果を表2及び図1に示
す。
ったものを350℃で10分間加熱保持し、これを水冷
した線材に関する機械的特性の結果を示すものである。
遅れ破壊特性は、チオシアン酸アンモニウム(NH4S
CN)溶液中において、引張強度の70%の荷重をか
け、破断するまでの時間が200時間以上保持できるこ
とを条件とした。表2から分かるように、実施例中サン
プルDは冷間加工後も最も安定した磁気特性を示し、透
磁率は非常に小さい。また、引張強度、破断伸びも他の
実施例1比較例に対して高い値を示している。一方、図
1は表1のサンプルDに対して冷間加工後の熱処理にお
ける加熱温度の影響を示したものである。同図に示すよ
うに、300℃以上700℃以下の温度(特に、500
〜600℃)に加熱することによって引張強度が大幅に
向上することが確認された。
の線材を作製した。その後、溶体化処理を行い、断面減
少率55%で線引加工を行って各温度に加熱し、破断荷
重の50%の荷重をかけた材料の降伏強度、比例限、リ
ラクセーションを調べた。その結果を表3に示す。
以下の温度域で荷重をかけることにより、降伏強度、比
例限は大きく向上し、リラクセーションは非常に小さく
なっている。従って、PC鋼材として非常に優れている
ことが確認できた。
加工を行い、350℃×10分の熱処理を行った線材の
強度と伸びを測定した。断面減少率とこれら機械的特性
の関係を図2のグラフに示す。同図に示すように、断面
減少率が高くなると、引張強度が高くなるが伸びが小さ
くなる傾向があり、断面減少率を50〜70%としたと
き、強度と靱性に優れる線材を得られることがわかる。
材を熱間圧延を行って7mmφの線材を得た。それらを
溶体化処理後、各加工温度で断面減少率56.5%の線
引加工を行った。その後、525℃にて10分間保持し
て水冷し、引張強度・透磁率・X線解析によるマルテン
サイト量・X線解析によるfcc(220)ピークの半
価幅を測定した。加工温度は、線引加工におけるダイス
出口の線材の温度とした。
うに、加工温度の低下に伴い、マルテンサイト量・fc
c(220)ピークの半価幅(オーステナイト相中の歪
み量)が増大し、引張強度を向上できることがわかる。
加工温度100℃程度でも1600N/mm2の引張強
度か得られるが、特に60℃以下で線引加工すると、よ
り高強度の線材を得ることができる。しかし、加工温度
が0℃未満になると、マルテンサイト量の増大に伴って
透磁率の上昇を招き、非磁性材料として好ましくない。
材を得た。それらを溶体化処理後、50〜55℃で断面
減少率56.5%の線引加工を行った。その後、種々の
条件で熱処理を行い、引張強度・炭化物の析出状況・遅
れ破壊特性を評価した。遅れ破壊特性は、0.1規定の
HCl溶液を腐食液として破断荷重の80%の荷重で試
験し、試験時間は最大200時間とした。実施例1では
主にHによる遅れ破壊特性を調べたが、本例ではさらに
Cl−の腐食による遅れ破壊特性も調べている。その結
果を表5に示す。
00℃の範囲で、1600N/mm2以上の引張強度が
得られていることがわかる。特に、加熱温度を500〜
600℃にすると、微細な炭化物が析出され、引張強度
の向上が顕著に認められる。また、加熱時間を10〜6
0分とすれば、高い引張強度と優れた遅れ破壊特性を具
えた線材を得ることができた。加熱温度が高すぎたり、
加熱時間が長すぎると、析出炭化物が大きくなり、引張
強度は高くても遅れ破壊特性が劣る。
材を得た。それらを溶体化処理後、各加工温度で断面減
少率56.5%の線引加工を行った。その後、525℃
にて10分間保持して水冷し、得られた線材の遅れ破壊
特性を評価した。評価は実施例5と同様の方法で行っ
た。その結果を表7に示す。同表から明らかなように、
実施例は参考例に比べて極めて優れた遅れ破壊特性を示
すことがわかる。
性PC鋼に要求される機械的特性を満足する鋼材を得る
ことができる。特に請求項1記載の鋼材は、透磁率、引
張強度、伸びおよび遅れ破壊に優れている。また、請求
項3記載の鋼材は、これらの機械的特性に加えて、降伏
強度、比例限およびリラクセーションに優れている。さ
らに、請求項5〜7記載の鋼材も、引張強度に優れ、低
透磁率を実現できる。特に請求項7記載の鋼材は、遅れ
破壊特性に優れている。従って、リニアモーターカーの
ガイドウェイや核磁気共鳴断層室などの非磁性が要求さ
れる構造物においてPC鋼とし利用することができる。
る。
ある。
ある。
る。
グラフである。
を示すグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 重量%でC:0.15%以下、Si:
2.0%以下、Mn:1.0%以上5.0%以下(5.0
%を除く)、Ni:10.0〜13.0%、Cr:1
5.0〜20.0%、N:0.1〜0.5%、残部は実
質的にFeからなり、100nm以下の炭化物が分散され
ており、透磁率が1.01以下、破断強度が1600N/
mm2以上、伸びが3.5%以上であることを特徴とする
遅れ破壊特性に優れた非磁性PC鋼線材。 - 【請求項2】 更に、体積%でマルテンサイト量が2〜
10%であることを特徴とする請求項1記載の遅れ破壊
特性に優れた非磁性PC鋼線材。 - 【請求項3】 更に、X線回折におけるfcc(220)の半価
幅が0.65以上であることを特徴とする請求項1また
は2記載の遅れ破壊特性に優れた非磁性PC鋼線材。 - 【請求項4】 更に、リラクセーション値が1.5%以
下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載
の遅れ破壊特性に優れた非磁性PC鋼線材。 - 【請求項5】 重量%でC:0.15%以下、Si:
2.0%以下、Mn:1.0%以上5.0%以下(5.
0%を除く)、Ni:10.0〜13.0%、Cr:1
5.0〜20.0%、N:0.1〜0.5%、残部は実
質的にFeからなる鋼材を、0〜100℃の温度域で線
引加工し、その後、500〜600℃の温度域で、10
〜60分加熱する熱処理を施すことを特徴とする遅れ破
壊特性に優れた非磁性PC鋼線材の製造方法。 - 【請求項6】 線引加工度が断面減少率で50〜70%
であることを特徴とする請求項5記載の遅れ破壊特性に
優れた非磁性PC鋼線材の製造方法。 - 【請求項7】 線引加工の温度域が0〜60℃であるこ
とを特徴とする請求項5または6記載の遅れ破壊特性に優
れた非磁性PC鋼線材の製造方法。 - 【請求項8】 前記熱処理を、200℃〜700℃の温
度に加熱し、鋼材の破断荷重未満の引張力を与えること
に置換することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記
載の遅れ破壊特性に優れた非磁性PC鋼線材の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP20131495A JP3276045B2 (ja) | 1994-10-12 | 1995-07-13 | 遅れ破壊特性に優れた非磁性pc鋼線材およびその製造方法 |
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JPH08165543A JPH08165543A (ja) | 1996-06-25 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP20131495A Expired - Lifetime JP3276045B2 (ja) | 1994-10-12 | 1995-07-13 | 遅れ破壊特性に優れた非磁性pc鋼線材およびその製造方法 |
Country Status (1)
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KR101674835B1 (ko) * | 2015-12-07 | 2016-11-10 | 주식회사 포스코 | 내식성이 우수한 고강도 선재 및 그 제조방법 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2715033B2 (ja) * | 1992-12-28 | 1998-02-16 | 新日本製鐵株式会社 | 非磁性pc鋼線およびその製造方法 |
JPH0711388A (ja) * | 1993-06-28 | 1995-01-13 | Kobe Steel Ltd | 高強度非磁性プレストレストコンクリート用補強材 |
-
1995
- 1995-07-13 JP JP20131495A patent/JP3276045B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH08165543A (ja) | 1996-06-25 |
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