JPH08269639A - ファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

ファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼板およびその製造方法

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JPH08269639A
JPH08269639A JP9201895A JP9201895A JPH08269639A JP H08269639 A JPH08269639 A JP H08269639A JP 9201895 A JP9201895 A JP 9201895A JP 9201895 A JP9201895 A JP 9201895A JP H08269639 A JPH08269639 A JP H08269639A
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steel
less
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JP9201895A
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English (en)
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Sadao Hirotsu
貞雄 廣津
Katsuhisa Miyakusu
克久 宮楠
Shigeto Hayashi
茂人 林
Toshihiko Takemoto
敏彦 武本
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】成形加工時にクラックを発生することなく、従
来鋼SUS301以上の強度を有し、かつ、非磁性を維
持するスライドファスナーのロックピン用として好適な
材料。 【構成】重量%で、Si:0.3 〜 6.0,Mn:2.0 〜
7.0,Ni:10.5〜15.0,Cr:16.0〜20.0,N:0.06
〜0.40を含有し、以下、いずれも、C:0.15,S:0.00
40,O:0.0060以下で、残部がFeおよび不純物からな
り、かつ、Ni当量=Ni+ 0.6Mn+9.69(C+N)
+0.18Cr−0.11Si2の式に従うNi当量の値が17.0
〜21.5の範囲を満足し、透磁率μ=1.01以下で、かつ、
ばね限界値が700N/mm2 以上である、成形加工性、耐久
性に優れたファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高強度を有し、かつ、非
磁性を示すファスナー用ステンレス鋼およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】ファスナーはスライダーと務歯とから構
成され、スライダーは本体そのものとこれを移動するた
めの引き手からなるが、最近のファスナーには使用中の
開口力によってスライダーが移動してファスナーが自然
に開口しないためのロックピンを有するオートファスナ
ーなるものがある。これらを構成する部品の内スライダ
ー本体と務歯は従来主に黄銅が用いられてきた。一方、
ロックピンにはその機能上、ある程度の強度とばね特性
が要求される。特に、スポーツウェア等のように使用中
の開口力が大きい場合には、スライダーを固定するため
に大きな力が必要となり、高い強度とばね特性が要求さ
れる。このような用途には、適度な冷間加工によって強
度とばね特性の得られる加工硬化型のオーステナイト系
ステンレス鋼SUS301が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、縫製時に使用し
た縫い針の混入をチェックする方法として磁性を利用し
た検針器が活用ようされるようになってきた。そこでロ
ックピンとしての要求特性に従来特性に加えて非磁性と
いう特性を加える必要が生じてきた。しかし、前記SUS3
01系鋼は冷間加工を施すことによって生成する加工誘起
マルテンサイト相を活用することによって高強度化を図
っているため、非磁性という特性を満足することができ
ない。非磁性を呈する既存鋼としては、SUS316が挙げら
れるが、本鋼は加工硬化が小さいため、SUS301と同等の
特性を得るためには強度の冷間加工を施す必要があり、
成形加工を必要とするようなロックピンでは成形加工時
に曲げ外側R部にミクロクラックが発生し、疲労強度が
低下して使用に耐えないという問題がある。このため、
成形加工Rを大きくしたり、成形加工性を確保するため
に冷間加工を小さくし、強度レベルの低下分を板厚で補
ったりすることを余儀なくされ、このため、部品形状が
大きくなり、所望のファスナーの大きさに収まらなくな
り、必要以上の寸法のファスナー形状になったりした。
また、最近、SUS301では強度の不足する分野も多くなっ
てきている。本発明は、成形加工時にクラックを発生す
ることなく、従来鋼SUS301以上の強度を有し、かつ、非
磁性を維持するスライドファスナーのロックピン用とし
て好適な材料の開発を目的としたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、重量%
で、C:0.15%以下,Si:0.3 〜 6.0%,Mn:2.0
〜 7.0%,Ni:10.5〜15.0%,Cr:16.0〜20.0%,
N:0.06〜0.40%を含有し、残部がFeおよび不純物か
らなり、前記不純物のうちSおよびOについて、S:0.
0040%以下,O:0.0060%以下に制限され、かつ、 Ni当量=Ni+ 0.6Mn+9.69(C+N)+0.18Cr
−0.11Si2 の式に従うNi当量の値が17.0〜21.5の範囲を満足し、
透磁率μ=1.01以下で、かつ、ばね限界値が700N/mm2
以上である、成形加工性、耐久性に優れたファスナー用
高強度非磁性ステンレス鋼板を提供する。
【0005】また、本発明によれば、特にN:0.1 〜
0.2%,を含有し、不純物のS,Oについては、S:0.0
020%以下,O:0.0045%以下に制限した前記成形加工
性、耐久性に優れたファスナー用高強度非磁性ステンレ
ス鋼板を提供する。さらに、本発明によれば、熱間圧延
と冷間圧延を施した鋼板を焼鈍して実質的にオーステナ
イト相組織とした後、 Ni当量=Ni+ 0.6Mn+9.69(C+N)+0.18Cr
−0.11Si2 の式に従うNi当量の値に応じて、図1のa,b,c,
dで囲まれる範囲の冷間圧延率で調質圧延を行って仕上
げる、成形加工性、耐久性に優れたファスナー用高強度
非磁性ステンレス鋼板の製造方法を提供する。また、本
発明によれば、その製造方法において、冷間圧延総圧延
率(%)={1−(調質圧延後の仕上げ板厚/熱間圧延
後の冷間圧延開始時の板厚)}×100 の式に従う、冷間
総圧延率が85%以上となるようにして仕上げる、成形加
工性、耐久性に優れたファスナー用高強度非磁性ステン
レス鋼板の製造方法を提供する。
【0006】
【作用】本発明者らは種々の試験研究を重ねた結果、フ
ァスナー部材としての成形加工性および疲労特性は、熱
延板から製品に至るまでの総圧延率と調質圧延率ならび
に非金属介在物の形態に依存していること、さらには、
ばね特性は強度レベルのみに支配されるもではないこと
を知見した。すなわち、冷間加工後の成形加工性をでき
るだけ高めるため、低い冷間加工でできるだけ高強度が
得られ、かつ、時効処理後にできるだけ高い強度と高い
ばね限界値が得られるように成分を考慮し、さらに鋼中
に存在する非金属介在物を微細化するように冷間圧延総
圧延率を高めるとともに、圧延方向に長く延びるMnS
系の非金属介在物をできるだけ少なくし、小さく分布す
るようにS,O量を制御した。さらに時効処理後高強度
と高ばね限界値が得られるようにNを有効に活用すると
ともに、Si添加により、より高強度が発現できるよう
にした。なお、Si添加によるNの固溶限の低下はMn
を添加することで補った。以下に先ず本発明鋼の成分範
囲の限定理由を説明する
【0007】Cはオ−ステナイト生成元素で、高温で生
成するδフェライトの抑制、冷間加工での加工硬化に極
めて有効である。しかし、調質圧延後に優れた成形加工
性を得るためには冷間加工により、あまり著しく硬化し
ない方が望ましい。また、あまりCを高くすると調質前
焼鈍、あるいは時効処理条件によっては炭化物の析出を
伴うおそれがある。このため、Cは0.15%以下とした。
より好ましくは0.03〜0.10%である。
【0008】Siは脱酸剤として有効であるが、さらに
固溶硬化を高め冷間圧延状態での強度を高めるとともに
時効処理後の強度の上昇にも若干効果がある。これらの
効果を発揮するためには0.30%以上を含有することが好
ましい。しかし、その含有量が高まるに従って、冷間加
工後の透磁率が急激に上昇するようになるとともにδフ
ェライトの生成を助長するようになり、オーステナイト
生成元素であるMnやNiを多量に添加する必要が生じ
てくる。このため上限は 6.0%とする。より好ましくは
0.6%以上 5.0%以下とする。
【0009】Mnは脱酸剤としても有効に働くがオ−ス
テナイト相の安定度を支配する元素で、その活用は他の
元素とのバランスのもとに考慮される。本発明鋼ではM
nは、冷間加工による透磁率の上昇を抑制するとともに
Nの固溶度を高める働きを担う。この作用を十分発揮す
るためには、少なくとも 2.0%以上が必要である。ま
た、冷間加工後の非磁性を維持するためには、Ni等の
オーステナイト生成元素の含有量とともにその量を調整
する必要があるが、 7.0%を越えて添加しても効果の向
上が見られないとともに、Siが高い場合、熱間加工性
が低下してくるのでその上限を 7.0%とした。好ましく
は 2.0%から 5.0%である。
【0010】Niは高温および室温でオ−ステナイト相
の安定化に必須の成分であるが、本発明の場合、冷間加
工後の非磁性を確保するためには、他の合金成分との兼
ね合いもあるが、およそ10.5%以上が必要である。上限
は冷間加工後の非磁性を確保するという面では特に制約
ないが、Siが高い場合、多量のNiは熱間加工性を低
下させるため上限は15.0%とした。好ましくは11.0%か
ら13.5%である。
【0011】Crは耐食性上必須の成分であり、優れた
耐食性を付与するためには16.0%以上を必要とする。し
かし、Crはフェライト生成元素であるため、高くしす
ぎると高温でδフェライトが多量に生成し、焼鈍調質圧
延後もδフェライト相が残存するようになり、非磁性が
確保できなくなる。またδフェライトの抑制のために、
オ−ステナイト生成元素(C,N,Ni,Mn など)を多量に添
加しなければならなくなり、いたずらに高価なものとな
る。このためCrの上限は20.0%とした。より好ましく
は17.0〜19.0%である。
【0012】Nは本発明の目的を達成する上で重要な役
割を果たす元素で、冷間加工による加工硬化を助長する
とともに、時効処理による強度上昇、特に耐力の強化お
よび高いばね限界値を得ることに寄与する。これらの特
性を発揮させるためには少なくとも0.06%を添加する必
要がある。しかし、多量に添加するとブロ−ホ−ルの原
因となるので0.30%以下とした。より好ましくは 1.0〜
0.20%である。
【0013】SはMnとの共存のもとにMnSを生成
し、延性、および曲げなどの加工性の低下をもたらす。
特にオートファスナーのバネは小物部品で、かつ、曲げ
加工が加えられるため、圧延方向に延びた介在物が存在
すると加工時に割れを発生したりして疲労強度の低下を
もたらし、耐久性の低下につながる。このため、 0.004
%以下とした。より好ましくは0.0020%以下である。
【0014】Oは疲労破壊の起点となる非金属介在物を
形成しやすい元素であり、特にAlなどOとの親和力の
大きい元素を含むときは顕著となる。また、Oが高い場
合、他の非金属介在物、例えばMnSの形態が大きく凝
集する傾向が認められた。このため、Oは低い方が好ま
しいが、0.0060%以下であればオートファスナーのロッ
クピンとしての耐久性は確保でき、目的は達成できるの
で0.0060%以下とした。好ましくは0.0045%以下であ
る。本発明鋼には、上記以外に脱酸剤として添加される
CaやREM、熱間加工性改善に効果のあるB(0.01%
以下)の他、不可避的に混入する不純物を含有すること
ができる。
【0015】Ni当量値および調質圧延率について、 Ni当量=Ni+0.6 Mn+9.69(C+N)+0.18Cr
−0.11Si2 この式によって表されるNi当量は、実験室的に確認さ
れたオ−ステナイト安定度の指標となるもので、図1に
示すように、冷間圧延率との関係において透磁率の指標
となる。縫製時に、縫い針混入の有無を検針器で磁気的
に判別するため、ファスナー部品の透磁率は低く抑える
必要があり、ファスナー部品に加工前の素材鋼板の段階
で、少なくとも透磁率μは、1.01以下でなくてはならな
い。オートファスナーの部品(ロックピン)として、使
用できる強度レベルを得るためには、本発明鋼では20%
以上の調質圧延を必要とする。その際、1.01以下の透磁
率を確保するためにはNi当量値は16.5以上を必要とす
るが、部品に加工した際の透磁率の上昇も考慮して下限
値は17.0とした。
【0016】一方、調質圧延率が高すぎると、加工性が
低下し、55%を超える、成形加工時にミクロクラックを
生じる。したがって、調質圧延率の上限は55%に制限さ
れる。Ni当量値の上限は透磁率の面からは特に制限は
ないが、高すぎると高価になるため、上限を21.5とし、
図1で示すa,b,c,d の範囲とした。
【0017】本発明者らは、成形加工時におけるミクロ
クラックの発生防止に関して、成形加工前の素材(調質
圧延材)中に存在する非金属介在物の分布に着目した。
種々調査の結果、酸化物系の非金属介在物が減少すると
ともに、MnS系の延びた非金属介在物が小さくかつラ
ンダムに分布しているときは、ミクロクラックが発生し
ないことがわかった。このような金属組織を得るため、
1つには、前述のように、SおよびOを極力低減し、製
鋼過程での非金属介在物の発生を抑制することが有効で
ある。さらに、もう一つの知見として、冷間圧延によ
り、非金属介在物の分布をランダム化することが有効で
あることがわかった。このためには、調質圧延を含んだ
冷間圧延の総圧延率を高くすればよい。
【0018】具体的には、冷間圧延総圧延率(%)=
{1−(調質圧延後の仕上げ板厚/熱間圧延後の冷間圧
延開始時の板厚)}×100 の式に従う冷間圧延総圧延率が85%以上となるようにし
て調質圧延を終了し、仕上げればよい。冷間圧延の途中
で焼鈍を行っても、非金属介在物の分布に影響はない。
すなわち、熱間圧延後に行う、冷間圧延の総圧延率を高
めることで、非金属介在物が微細に分断され、その結
果、成形加工性が改善されるとともに、耐久性の向上が
図られる。
【0019】オートファスナー部品としての強度特性を
得るためには、部品に成形加工した後、300℃以上,
700℃以下の温度範囲で時効処理を行うことが望まし
い。300℃未満では目標の強度レベルに達するまでに
長時間を要し不経済である。700℃を超えると回復現
象が生じて、目標の強度が得られない場合がある。時効
処理時間については、10秒以上で効果が現れるが、目
標強度を安定して得るためには、30分前後が好まし
い。なお、本発明鋼は溶体化処理状態では前述の通りオ
ーステナイト組織を呈するように成分調整されているの
で調質圧延前までの熱間圧延や冷間加工工程は従来工程
と同要領で製造することができる。
【0020】
【実施例】表1に示す成分の本発明鋼(N1〜8)、比
較鋼(C1〜5)および従来鋼(A:SUS301,B:SUS304
N, C:SUS316 )を30kg高周波真空溶解炉で溶製し、熱
間圧延を施した後、冷延、焼鈍、酸洗を行い最終調質圧
延後の板厚を0.40mmとした。これを冷延ままのサ
ンプルとして採取した。さらに該鋼板に450℃で20
分間の時効処理を施し、これを時効処理後のサンプルと
した。さらに、一部の供試材については500kg 高周波真
空溶解炉を用いて溶製し、ファスナーでの実体耐久試験
にも供した。なお、製品化するまでの総圧延率および調
質圧延率の詳細はそれぞれの表2中に示した。また、限
定式(1)で得られるNi当量を表1に併記した。
【0021】採取した各サンプルで冷延ままのサンプル
については透磁率を測定するとともに成形加工性の試験
を、また時効処理後のサンプルについては引張試験を行
うとともにばね限界値の測定と疲労試験を行った。それ
らの結果を表2中に併記した。成形加工試験は図5に示
す形状に試験片を加工したときの外側R部(内側R=0.
3 )を観察し、ミクロクラックなし(○)、微細のクラ
ック有り(△)、割れあり(×)で評価した。また疲労
試験はWビード形状に成形加工した試験片に、最大応力
500N/mm2 の荷重で応力振幅200N/mm2 を付加する片振
り引張疲労試験を行い、破断に至るまでの繰り返し回数
×104 で評価した。耐久試験はロックピンを組み込んだ
オートファスナーを作製し、長さ30cmのジッパーに組み
立て開口、開閉を機械的に繰り返し、その際の開口荷重
の変化および破断回数で耐久性を評価した。繰り返し回
数は3000回を上限とした。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】表2の結果から次のことがわかる。本発明
に従う製造方法による発明鋼(N1〜8)、すなわち、
本発明法による総圧延率が85%越え、調質圧延率が20〜
55%の範囲となるように処理したものでは、いずれの鋼
も成形加工時ミクロクラックあるいは割れを発生するこ
となく、しかも、時効処理後高い耐力を示すとともに70
0N/mm2 以上のばね限界値を有している。また、疲労破
断寿命も調質圧延率が40%を越えるものでは85万回以上
の破断寿命を示し、20%のもので45万回の破断寿命を示
している。一方、その際の透磁率はいずれの場合もμ=
1.01 以下と低い値を保持している。ただし、実施例No.
2,5のように図1に示すa,b,c,d で囲まれる範囲外のも
では透磁率μは1.01を越えることになる。
【0025】本発明鋼(N4、7)でも比較例No.14,15
に示すように総圧延率が85%に満たないものでは、本発
明法に比べ疲労破断寿命が短い傾向にある。また、比較
例No.16,18に示されるように調質圧延率が本発明法の上
限を越えるものでは成形加工性に劣り、曲げ加工R部外
表面にミクロクラックを発生するとともに疲労破断が寿
命が著しく低下する。一方、比較例No.17 ように調質圧
延率が下限に満たないものでは所望のばね限界値が得ら
れず耐力も低い。
【0026】比較鋼No.19 は本発明鋼よりもNが低く外
れている鋼(C1)を本発明法の製造範囲で製造したも
のであるが、Nが低いために同ー調質圧延率を付与した
本発明鋼に比べると耐力、ばね限界値が低く、特にばね
特性に関しては目標を満足せず、ジッパーでの耐久試験
で変形により所望の力を得ることができず耐久不足で不
合格であった。比較鋼No.20 は本発明鋼よりもNが若干
低め外れている鋼(C2)を本発明法の製造範囲で製造
したものであるが、比較鋼No.19 程ではないがやはりば
ね限界値が所望の特性までには至っていない。また、O
が高いため疲労特性に劣っている。比較鋼No.21 は本発
明鋼よりもOが高く外れている鋼(C3)を本発明法の
製造範囲で製造したものであるが、透磁率、成形加工性
ならびに時効処理後のばね限界値等は目標を満足するも
ののOが高いために疲労特性に劣る。比較鋼No.22 は本
発明鋼よりも0が高く外れている鋼(C4)での実施例
であるが、この場合本発明鋼と同レベルの強度、ばね特
性を示すが、Oが高いために比較鋼No.21 ほどではない
が疲労寿命が低い値を示している。比較鋼No.23 は本発
明鋼よりもSならびにOが高く外れている鋼(C5)で
の実施例であるが、この場合本発明鋼と同レベルの強
度、ばね特性を示すが、成形加工性にも劣るようになり
疲労寿命もOのみが高い比較鋼No.22 比べ著しく低いも
のとなっている。
【0027】従来鋼No.24,25は従来非磁性を要求されな
かった分野で使用されていたSUS301について調質圧延率
を変え、強度レベルの異なるものを作成、特性比較した
ものである。表からわかるように強度レベル(耐力)を
同一レベルにすると所望のばね特性が得られず、強度を
高めるために調質圧延率を高くするとオーステナイト安
定度が低いためマルテンサイト相が多量に生成し、成形
加工性に劣るようになり疲労寿命が低下する。耐久試験
でも同一板厚では開口荷重の面で低い値となった。な
お、従来用途ではこの荷重不足を板厚でカバーし使用さ
れている。従来鋼NO.26 はSUS304N について示したもの
であるが、所望の耐力、ばね限界値を得るためには35%
以上の調質圧延率を必要とし、その場合透磁率μが1.01
を越えるようになり、本発明の目的が達成できなくな
る。従来鋼No.27,28,29 はSUS316について示したもので
あるが、本鋼はNi当量が本発明鋼の範囲にあるため高い
調質圧延後でも透磁率μは1.01以下を示す。しかし、N
が低いため所望の強度、ばね限界値が得るれないため、
耐久試験ではヘタリを生じ十分な耐久性を得ることがで
きない。ばね特性を高めるために調質圧延率を高くする
と成形性に劣り疲労寿命も低いものとなっている。
【0028】図1は本発明の組成範囲内にある種々の鋼
と従来鋼Bを冷間圧延したときの磁性とNi当量と圧延
率の関係を示したものでこの図からa,b,c,d の範囲に囲
まれるものは透磁率μ=1.01 以下を示すことがわかる。
【0029】図2はNi当量が本発明鋼の範囲にある材
料で20%調質圧延率を施したときのN量と時効処理後の
ばね限界値の関係を示したもので、透磁率μが1.01以下
と非磁性を示す領域での時効処理後のばね限界値はN量
に大きく支配されていることがわかる。一方、図3は本
発明鋼N3と加工誘起マルテンサイト相を生成し加工に
よる強度レベルの上昇の著しい従来鋼A(SUS301)に種々
の調質圧延を施し、強度レベルを変化させたときの時効
処理後の耐力とばね限界値の関係を示したものである
が、本発明鋼のごとく組織的な安定な材料でもNを添加
することで同一耐力レベルでも時効処理後高いばね限界
値が得られることが認められる。なお、このNの効果は
Siとの複合添加によって助長されている。製造時の総
圧延率はいずれも本発明による方法によった。
【0030】図4はNi当量が本発明鋼の範囲にある材
料で50%調質圧延率を施した後に、図5に示す形状のW
ビードを成形付与した試験片を時効処理後片振り引張疲
労試験(図6のようにWビード加工を付与した試験片に
最大応力500N/mm2 の荷重で応力振幅200N/mm2 を付
与)を行い疲労寿命に及ぼすOの影響並びに製造条件の
影響を調査した結果を示したものである。本発明鋼で本
発明法により製造したものはいずれも80万回以上の破断
寿命を示し、優れた疲労特性を示している。本発明鋼の
成分範囲内にあるものでも、総圧延率が本発明の製造範
囲外(●印)のものでは本発明法に比べ低い破断寿命を
示した。また比較鋼の中でもO、Sの双方が高いもの
(▲)ではOのみが高い(△)ものに比べ低い破断寿命
を示した。
【0031】
【発明の効果】本発明鋼は従来の非磁性ステンレス鋼に
比べて時効処理による強度、ばね特性の上昇が大きいた
め、時効処理前の強度を下げることができる。このため
より成形加工性に優れる。しかも時効処理後は成形加工
部の疲労特性に優れた高強度非磁性ステンレス鋼を提供
することができ、オートファスナーのロックピンの様な
複雑な成形加工を受けた部品として優れた耐久性を有す
る。また、高い強度とばね限界値を有するため部品の小
型化も可能である。さらにその製造に当たってもコスト
的には従来鋼と何等変わるところはないので経済的であ
る。なお、本発明鋼は焼鈍状態ではオーステナイト相を
呈し加工性に優れているため、ロックピンのみならずフ
ァスナーを構成する他のスライダー、務歯、引き手等も
従来の黄銅に替えて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】透磁率に及ぼすNi当量と冷間圧延率の関係を
示す図である。
【図2】Ni当量が本発明鋼の範囲にある材料で20%調
質圧延率を施したときのN量と時効処理後のばね限界値
の関係を示す図である。
【図3】種々の調質圧延を施した本発明鋼N3と従来鋼
Aの時効処理後の耐力とばね限界値の関係を示す図であ
る。
【図4】時効処理材のWビード成形付与品の片振り引張
疲労試験における破断までの繰り返し回数とO量の関係
を示す図である。
【図5】成形加工性を評価したWビード形状を示す略断
面図である。
【図6】Wビード加工付与材の片振り引張疲労試験の概
要を説明するための図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 武本 敏彦 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社鉄鋼研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C :0.15%以下,Si:0.3
    〜 6.0%,Mn:2.0 〜 7.0%,Ni:10.5〜15.0%,
    Cr:16.0〜20.0%,N :0.06〜0.40%,を含有し、
    残部がFeおよび不純物からなり、前記不純物のうちS
    およびOについて、S:0.0040%以下,O:0.0060%以
    下に制限され、かつ、 Ni当量=Ni+ 0.6Mn+9.69(C+N)+0.18Cr
    −0.11Si2 の式に従うNi当量の値が17.0〜21.5の範囲を満足し、
    透磁率μ=1.01以下で、かつ、ばね限界値が700N/mm2
    以上である、成形加工性、耐久性に優れたファスナー用
    高強度非磁性ステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】N:0.1 〜 0.2%,S:0.0020%以下,
    O:0.0045%以下である請求項1に記載の成形加工性、
    耐久性に優れたファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼
    板。
  3. 【請求項3】熱間圧延と冷間圧延を施した鋼板を焼鈍し
    て実質的にオーステナイト相組織とした後、 Ni当量=Ni+ 0.6Mn+9.69(C+N)+0.18Cr
    −0.11Si2 の式に従うNi当量の値に応じて、図1のa,b,c,
    dで囲まれる範囲の冷間圧延率で調質圧延を行って仕上
    げることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の
    成形加工性、耐久性に優れたファスナー用高強度非磁性
    ステンレス鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】冷間圧延総圧延率(%)={1−(調質圧
    延後の仕上げ板厚/熱間圧延後の冷間圧延開始時の板
    厚)}×100 の式に従う冷間総圧延率が85%以上となるようにして仕
    上げることを特徴とする請求項3に記載の成形加工性、
    耐久性に優れたファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼
    板の製造方法。
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