JP3269121B2 - 深絞り用高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

深絞り用高強度冷延鋼板およびその製造方法

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JP3269121B2 JP18163692A JP18163692A JP3269121B2 JP 3269121 B2 JP3269121 B2 JP 3269121B2 JP 18163692 A JP18163692 A JP 18163692A JP 18163692 A JP18163692 A JP 18163692A JP 3269121 B2 JP3269121 B2 JP 3269121B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は深絞り用高強度冷延鋼板
およびその製造方法に係り、Cuを添加した極低炭素鋼を
素材とした深絞り用冷延鋼板、より具体的には高いラン
クフォード値及び高強度を有する冷延鋼板、時効硬化能
を有する深絞り用冷延鋼板や、これに電気めっきを施し
たような高耐食性電気亜鉛めっき鋼板に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境問題が取り沙汰されてい
る中、自動車の排気ガス規制の見地から、鋼板の高強度
化による自動車車体材料の薄肉化によって自動車の燃費
を向上させようとする動きがある。然して従来より、成
形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法に関しては、極
低炭素鋼にTi,Nbなどの炭窒化物形成元素を添加したI
F(Interstitial Free)鋼にSi, Mn, Pなどの固溶強化
元素を添加する方法があるが、これらの鋼において、高
ランクフォード値を維持できる到達強度レベルは390
〜440 N/mm2 程度が限界である。
【0003】一方、Cuを添加した鋼を500〜600℃
の温度で時効するとε−Cuが析出し鋼の強度が著しく上
昇することが知られている。即ち、このCu添加鋼の性質
として、特公平2−15609号では、熱間圧延後50
0〜650℃の範囲で巻取りを行うと巻取り後の徐冷中
にε−Cuが微細に析出し、焼鈍時に再結晶を遅らせる作
用があるため、450℃以下または700℃以上で巻取
ることが望ましいとしている。しかし、極低炭素鋼にT
i,Nb等を添加したIF鋼をベースとした場合、巻取温
度が450℃以下とすると、ε−Cuは析出しないが、Nb
C, TiC, Ti4C2S2等の析出物のサイズが小さく、本来I
F鋼に期待される高ランクフォード値を得ることが難し
いだけでなく、コイル全長で安定した巻取温度制御をす
ることが困難という製造上の問題もある。
【0004】また、巻取温度が700℃以上の場合、析
出するε−Cuは粗大化しており再結晶にはそれほど影響
せず、焼鈍後のランクフォード値は450℃以下の温度
で巻取った場合よりも多少上昇する傾向があるものの、
著しい上昇は期待できないことが指摘されている。更に
言うならば、特公平2−15609号の発明者らが発表
した文献(鉄と鋼 Vol.76(1990)759)によ
ると、熱延前加熱温度を1050℃とし、1パスの熱間圧延
を行った後に780℃で巻取った鋼板を冷間圧延、焼鈍
した場合には、ランクフォード値はあまり改善されない
ことが示されている。
【0005】ところで、上記文献(鉄と鋼 Vol. 76
(1990)759)での巻取シミュレーションは、高
温として780℃保持後炉冷、中温として550℃保持
後炉冷および極低温として室温まで空冷という3条件で
行われているが、中温と高温の温度差が大きく、その間
の温度域で巻取った鋼板の材質については検討されてい
ない。更には、熱延前の加熱として、1050℃という
低めの条件で行われているが、Cu添加鋼の材質に及ぼす
加熱温度の影響は調査されていないばかりかその最適化
も未だ図られていないため、低温加熱が必ずしも適当で
あるとは言えない。また、1パスの熱間圧延のため、熱
延における歪導入状態の観点からは必ずしも実機に近い
条件で行われているとは言い難い。
【0006】また一般にIF鋼は固溶CをTi、Nb等の元
素で析出固定しており、粒界上にCがないため粒界強度
が低下し2次加工脆化遷移温度が上昇するという問題が
あるが、とくにCu添加鋼においては時効処理を行って強
度を上昇させるとPの粒界偏析によって2次加工脆化遷
移温度が著しく上昇するという問題がある。このため特
開平2−145726号では粒界強化元素であるBを添
加することによって2次加工脆化遷移温度が上昇するの
を防止しているが、熱延巻取温度を低く限定しているた
め、B添加によるランクフォード値の改善効果は顕著で
はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】最近の自動車業界で
は、高成形性を有した鋼板の使用と高強度化による薄肉
化を実現することによって,燃費の向上を図るべく車体
の軽量化が最優先課題として取り組まれている。このよ
うな状況下、鉄鋼業界においてはIF鋼をベースとし
て、ε−Cuの析出を利用した高強度冷延鋼板の開発が手
掛けられているが、従来の方法では、本来IF鋼に期待
される高いランクフォード値が得られず、ユーザーの要
望する高成形性、高強度化に応えられる高強度冷延鋼板
は存在しなかった。
【0008】従って、本発明の目的とするところは、ε
−Cuの析出形態を制御した熱延鋼板を素材として、冷間
圧延、焼鈍工程を経て製造される冷延鋼板およびこれに
時効処理を施すことにより製造された高強度かつランク
フォード値の高い冷延鋼板ならびにこの時効処理した冷
延鋼板を素材として、電気亜鉛めっき工程を経て製造さ
れる高耐食性電気亜鉛めっき鋼板を開発することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
ような従来技術における課題を解決することについて検
討を重ねた結果、極低炭素鋼にCuとBを添加し、所定温
度で巻取り、あるいは熱延板段階において所定形状を有
するCu析出物を生成させることにより、再結晶集合組織
を改善してランクフォード値を著しく向上させることに
成功したものであって、以下の如くである。
【0010】
【0011】
【0012】 wt%で、 C:0.010 %以下, Si:1.0
%以下, Mn:0.15〜2.5 %, P:0.01%以下,
S:0.01%以下, Al:0.06%以下, N:0.0040%以下,
Cu:0.5 〜2.0 %, Ni:1.0 %以下, Ti:0.005 〜0.1 %,
Nb:0.002 〜0.05%, B:0.0005〜0.0020% を含有し、かつ鋼中のCu含有量の内80%以上が、Ti系
析出物を核とした平均粒径が200nm以上の複合析出物
であり,ランクフォード値が1.8以上であることを特徴
とした深絞り用高強度冷延鋼板。
【0013】冷間圧延し焼鈍工程を経てから400℃以
上の時効処理を経た鋼板においても、ランクフォード値
が1.8以上で、引張強さが440 N/mm2 以上であるこ
とを特徴とする前記0012に記載の深絞り用高強度冷
延鋼板。
【0014】前記0012に記載の成分組成をもった鋼
を熱間圧延後、680〜800℃で巻取り、500〜6
00℃での時効処理後特性引張強さが440N/mm2
上で、ランクフォード値が1.8以上とされたことを特徴
とする深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法。
【0015】前記0012に記載の成分組成をもった鋼
をAr3点以上で熱間圧延し、680〜800℃で巻取っ
た熱延鋼帯を酸洗し、60〜90%の圧下率で冷間圧延
した後、750〜870℃の温度で連続焼鈍を行い、そ
の後500〜600℃の温度で時効処理を行うことを特
徴とする深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法。
【0016】電気亜鉛めっきを有することを特徴とした
前記0013に記載の深絞り用高強度冷延鋼板。
【0017】
【作用】上記したような本発明について、先ず鋼成分を
上記したように限定した理由について述べると、以下の
如くである。
【0018】C:0.010 %以下 Cは、高ランクフォード値を保つためには少ない方がよ
いが、実用上本発明の効果を損なわない範囲として、そ
の上限を0.010 %以下に限定した。好ましい範囲として
は0.0015〜0.006 %、特に0.002 〜0.0050%である。
【0019】Si:1.0%以下 Siは、固溶強化元素として鋼板の強化に寄与するが、1.
0%を越えて含有すると熱間圧延の加熱時に発生するス
ケールが著しくなるばかりか、Pと同様に鋼の脆化元素
であるため1.0%以下とした。
【0020】Mn:0.15〜2.5% Mnは、Sの固定のため、その下限値を0.15%とした。ま
た、2.5%以上含有するとランクフォード値を著しく劣
化させるので、その上限値を2.5%とした。
【0021】P:0.01%以下 Pは、最も安価に鋼を強化できる元素であるが、IF鋼
をベースとして高強度化する場合、2次加工脆化の問題
から一般の鋼のレベル以下まで下げる必要がある。0.01
%を越えて含有すると粒界へ偏析しやすくなり、2次加
工脆化に対する感受性が増すため、0.01%以下に限定し
た。好ましくは0.008 %以下である。
【0022】S:0.01%以下 Sは、できる限り低減した方が望ましい。0.01%を越え
て含有すると鋼の延性を劣化させるので、0.01%以下と
した。好ましくは0.007 %以下である。
【0023】Al:0.10%以下 Alは、脱酸およびNの固定のために必要であるが、多量
に添加するとコストの上昇をもたらすため0.10%以下と
した。好ましくは0.06%以下、より好ましくは0.03〜0.
05%である。
【0024】N:0.0050%以下 Nは、高ランクフォード値を得るためには、少ない方が
望ましいが、本発明の効果を損わない範囲として、その
上限を0.0050%とした。好ましくは0.004 %以下、より
好ましくは0.003 %以下である。
【0025】Cu:0.5〜2.0% Cuは、本発明において最も重要な添加元素であり、時効
処理をすることによってε−Cuを析出させて鋼の強度を
上昇させるためには、添加は必須である。すなわち、0.
5%未満では強度の上昇がほとんど認められず、2.0%
を越えて添加しても、強度上昇に対して効果がないばか
りか、熱延板段階でその含有量の80%以上をTi系析出
物を核として析出させることが難しいため、0.5〜2.0
%に限定した。
【0026】Ni:1.0%以下 一般に、Cu添加鋼では熱間圧延時にCuが表面に濃化して
Cuキズと呼ばれる表面欠陥が生じるので、これを防止す
るため適宜添加する。しかし、あまり多量に添加すると
コストの上昇を招くので、その上限を1.0%とした。好
ましくは0.5〜0.9%である。
【0027】B:0.0001〜0.0020% Bは、粒界に偏析して粒界を強化する作用を有する。本
発明のように、IF鋼をベースとして高強度化する場
合、2次加工脆化の問題を完全に回避するために、添加
は不可避である。更に、Cuとの複合添加により再結晶集
合組織を制御するためには添加が必須である。すなわ
ち、0.0001%未満では、それらの効果が得られず、0.00
20%を越えて含有すると再結晶温度の上昇およびランク
フォード値の劣化といった欠点が生ずるため、この範囲
に限定した。好ましくは0.0005%以上である。
【0028】Ti:0.005 〜0.1% Tiは、Cの固定を行い、ランクフォード値を向上させる
作用がある。すなわち、0.005 %未満ではその効果が乏
しく、一方多量に添加するとコストの上昇を招くだけで
なく、表面欠陥の原因や化成処理性を劣化させるので、
その上限を0.1%とした。
【0029】Nb:0.002 〜0.05% Nbは、Tiと同様にCの固定を行う性質があり、Tiとの複
合添加によりさらにランクフォード値が上昇する。すな
わち、0.002 %未満ではその効果が乏しく、多量に添加
するとコストの上昇を招くので上限を0.05%に限定し
た。
【0030】次に本発明における製造条件について述べ
ると、熱間圧延工程は、連続鋳造機から直送された高温
鋳片、または加熱によって得られた高温鋳片をAr3変態
点以上の温度で熱間圧延を行う。Ar3変態点未満では、
焼鈍後のランクフォード値が劣化するのでこの範囲に限
定した。しかし、熱間潤滑が十分に行われる等の条件の
もとでは、フェライト域熱延の適用も本発明の特性を損
なうものではない。
【0031】巻取温度については、通常ε−Cu析出強化
型冷延鋼板の場合、500℃未満の低温で巻き取ってε
−Cu析出によるランクフォード値の劣化を防止するのが
よいとされているが、CuとBを複合添加した場合に、6
80℃以上の温度で巻取を行うと粗大に析出したε−Cu
とBの複合作用により再結晶集合組織が著しく改善さ
れ、ランクフォード値が著しく上昇することを新たに知
見した。また800℃を越える温度で巻取ると熱延巻取
後のフェライト粒径が粗大になり連続焼鈍後のランクフ
ォード値が劣化するばかりか、酸洗性の劣化など生産性
を著しく阻害する。このため巻取温度をこの範囲に限定
した。
【0032】上記の条件で巻取り酸洗を行った後の冷間
圧延は、圧下率の上昇に伴い焼鈍後のランクフォード値
は上昇するが、圧下率60%未満では2.0以上のランク
フォード値を得ることは難しく、また圧下率90%以上
ではその効果がないので、この範囲に限定した。
【0033】上記のような冷間圧延後における焼鈍は再
結晶させると同時に、巻取後の冷却中に析出したε−Cu
を再固溶させて時効後のTS上昇量を最大にするため、
Cuのフェライト中への固溶限が最大となる750℃〜8
70℃に限定した。その後、必要に応じて調質圧延を適
当量行ったものについて、そのまま、あるいは焼鈍板に
成形を施した後に、500〜600℃の範囲で時効処理
を行えば、ε−Cuが析出し鋼板の強度は著しく上昇す
る。また、鋼板に耐食性が要求されるときには、時効後
に電気亜鉛メッキを施すことには何ら問題はない。
【0034】本発明における複合析出物やランクフォー
ド値の関係については、先ず優れたランクフォード値が
得られることに関して熱延巻取温度の如きが関係する。
即ち、図1には熱延巻取温度と、熱延鋼板を酸洗冷間圧
延した後、焼鈍したものについてのランクフォード値と
の関係を示すが、この図1より巻取温度が700から7
40℃の範囲で極めて高いランクフォード値が得られる
ことがわかる。
【0035】そこで、本発明者らは図1の結果について
検討を重ね、鋼のミクロ組織観察に基づく詳細な検討を
行った結果、図2に示す一連の組織変化が起こっている
ことを明らかにした。つまり、巻取温度が450℃の条
件では本来IF鋼に期待される程の高いランクフォード
値は得られず、更に巻取温度を650℃付近まで上昇さ
せた場合にはランクフォード値が低下する。この過程で
は、450℃ではε−Cuは析出しないが、650℃付近
では巻取り後の徐冷中に析出する微細ε−Cuがランクフ
ォード値を更に劣化させる。
【0036】一方、780℃以上の巻取温度では、 Ti
C, Ti4C2S2 等の析出物は粗大化して冷却過程でε−Cu
の析出核となる。しかし、これらの析出物間の平均距離
を示す「Mean Free Path」λが大きく、相当量のCuが母
相へ析出することは避けられず、ランクフォード値はそ
れほど上昇しない。更に、前述した特公平2−1560
9号の発明者らは、熱延前の加熱条件として1050℃
という低温で行っており、Ti系析出物は特に粗大化して
いるものと推測されるため、上記の傾向がより顕著にな
っているものと考えられる。
【0037】ところが、本発明においては、従来見逃さ
れていた温度域である700℃から740℃という温度
域で熱延後巻取りを行った場合の焼鈍板で本発明者ら
は、巻取りを前述したような従来の550℃および78
0℃で行った後の焼鈍板のランクフォード値から予想さ
れる以上の極めて高いランクフォード値を得るに至っ
た。この理由として、巻取りを700℃から740℃の
温度域で行った場合、780℃巻取り材に比べて TiC,
Ti4C2S2 等の析出物が必要以上に粗大化していないた
め、λは巻取温度が780℃の場合よりも小さく、ε−
Cuが複合析出する際のTi系析出物の分布密度は良好であ
る。
【0038】また、700℃未満での巻取りに比べて、
Cuの拡散速度も十分速いため、析出するCuの大部分がこ
れらの析出物を核として複合析出することが可能とな
り、この温度域において、特に高いランクフォード値が
得られる。そして、この時に得られる複合析出物の平均
粒径は200nm以上であることが判明した。これを示す
一例として、巻取温度を720℃とした場合に、熱延板
に観察される析出物の写真およびエネルギー分散型X線
分析法(EDS)による元素分析結果を図3に示す。即
ち、この図3の析出物はTi系析出物を核としてε−Cuが
析出した複合析出物であることがわかる。
【0039】本発明の内容を簡単に言い換えるならば、
ε−Cuが複合析出しやすくなるためのTi系析出物の析出
状態を実現し、鋼中Cu含有量の内80%以上をTi系析出
物を核とした複合析出物とすることにより、焼鈍板にお
いて高いランクフォード値を得しめることが可能となる
ものであって、その最も有効な方法として熱延巻取り時
に適正な巻取温度を選択すること、あるいは熱延板を熱
処理することなどが挙げられる。
【0040】図4は、上述したε−Cu析出に及ぼす熱延
巻取温度の影響をまとめて表した図表であって、熱延巻
取温度と複合析出物の平均粒径(dcomp.)、Cu単独析出
物の平均粒径(dε-Cu ) 、Ti系析出物間の平均距離λ
および鋼中のCu含有量の内Ti系析出物を核として析出す
る比率との関係を示している。巻取温度700〜740
℃とすることによりこれらが何れも高く得られることは
図示の如くである。
【0041】図5は、ランクフォード値と前記複合析出
物の平均粒径(dcomp.)との関係を示す図面である。こ
の図により、高ランクフォード値を得るには、平均粒径
が200nm以上の複合析出物を有することが必要である
ことがわかる。
【0042】さて、本発明者らは、熱延板中でのCuの析
出状態を制御した場合、その後の冷間圧延、焼鈍後の時
効硬化特性には何ら影響を及ぼさないことをも明らかに
した。つまり、図6に示すように時効硬化量は熱延板中
の析出物のサイズには依存しない。これはTi系析出物を
核として析出したε−Cuは再結晶集合組織の形成時には
本発明の技術により無害化されるが、その後の均熱時に
固溶し、時効硬化には寄与することが明らかになった。
【0043】本発明によるものは更に電気亜鉛めっきを
施すことができ、それによって高耐食性の深絞り用高強
度冷延鋼板を提供する。斯かる高耐食性と深絞り性およ
び高強度性の3特性を共に具備した冷延鋼板は自動車用
車体用として頗る有用な鋼板であることは明かであっ
て、軽量でしかも耐用性に優れた車体を提供する。
【0044】
【実施例】本発明によるものの具体的な実施例について
以下に説明するが、本発明は勿論これらの実施例に限定
されるものでないことは当然である。
【0045】実施例1 次の表1に示す化学成分の鋼を溶製してスラブとしたも
のを熱間圧延して板厚4.0mmの熱延板とし、巻取温度を
450〜850℃の範囲で変化させて巻取った。つぎに
酸洗した後、冷間圧延を施して0.8mmとしたものを85
0℃で連続焼鈍を行い、0.5%の調質圧延を行った後、
引張試験片を採取して引張試験を行った。
【0046】
【表1】
【0047】上記のようにして得られた結果は図8に示
す。即ち鋼1、2ともに巻取温度が500〜650℃ま
での場合、ランクフォード値は著しく劣化するが、68
0℃を越えても鋼1の場合はBが添加されていないため
ランクフォード値はそれほど上昇しない。しかし鋼2の
場合はBとCuの複合効果により、熱延巻取温度が680
℃以上で急激に上昇し始める。また800℃を越えると
ランクフォード値が劣化し始める。
【0048】実施例2 次の表2に示す化学成分の鋼を溶製してスラブとしたも
のを熱間圧延して板厚4.0mmの熱延板とし、巻取温度を
450、640、720℃の3水準変化させて巻取っ
た。つぎに酸洗した後、冷間圧延を施して0.8mmとした
ものを850℃で連続焼鈍を行い、0.5%の調質圧延を
行った後、引張試験片を採取して引張試験を行った。
【0049】
【表2】
【0050】前記のように試験した結果を図9に示す
が、B無添加鋼の場合、Cu量が増加するに伴ってランク
フォード値は劣化する。しかし、B添加鋼の場合、45
0℃巻取ではCu添加量が増加してもランクフォード値の
劣化はほとんど見られないが、大きな値は得られない。
また、640℃程度の温度ではCuが0.5%以上含有され
るとランクフォード値は著しく劣化するが、720℃巻
取でランクフォード値はCu添加量とともに増加する。
【0051】実施例3 次の表3に示す化学成分の鋼を溶製してスラブとしたも
のを熱間圧延して板厚4.0mmの熱延板とし、コイルに巻
取った。つぎに酸洗した後、冷間圧延を施して0.8mmと
したものを850℃で連続焼鈍を行い、0.5%の調質圧
延を行った後、引張試験片を採取して引張試験に供し
た。また焼鈍板に550℃×1hの熱処理を施したもの
についても同様に引張試験を行った。更に、焼鈍板より
直径100mmのブランクを打ち抜き、それをカップ状に
深絞り成形を施したものに550℃×1hの熱処理をし
たものについて二次加工脆化遷移温度を測定した。
【0052】
【表3】
【0053】具体的な巻取温度およびそれぞれの測定結
果は次の表4に示す如くである。
【0054】
【表4】
【0055】実施例4 また、本発明者らは次の表5および表6に示す組成の各
鋼を溶製し、スラブ加熱温度1200℃、仕上温度90
0℃、巻取温度450〜800℃の条件下で熱間圧延に
より3.2mm厚の熱延板に仕上げた。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】これらの熱延板から析出物観察用透過電子
顕微鏡サンプルを採取し、鋼中に析出したε−Cuおよび
Ti系析出物を核として析出したε−Cuとの複合析出物等
の観察を行った。なお、複合析出したCu量は熱延板か
ら、透過電子顕微鏡によって、複数視野観察することに
より定量した。熱延板中の析出物の状態と巻取温度との
関係を表7〜表11に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
【表10】
【0063】
【表11】
【0064】また、得られた熱延板を酸洗後、これらを
0.8mm厚まで圧下率75%で冷間圧延し、次いで850
℃で均熱後冷却を行い、冷延焼鈍板を得た。得られた焼
鈍板に伸張率0.5%の調質圧延を施した後、JIS5号
試験片を採取し、引張試験を行い、ランクフォード値
(3方向平均値)の測定も行った。更に、焼鈍板に50
0℃で10時間の時効処理を行った後に、引張試験およ
びランクフォード値(3方向平均値)を測定した。焼鈍
板および時効処理鋼板の機械的性質を前記表7〜表11
にまとめて示すが、Ti系析出物を核とした複合析出物の
比率(P1 %)が80%以上のものにおいてランクフォ
ード値(r1 ,r2 )は何れも高い。
【0065】更に、時効処理した鋼板に亜鉛−ニッケル
合金電気めっきを片面当たり20g/m2施した鋼板を用
いて塩水噴霧試験した時に赤錆が発生し始める時間(P
3)を表7〜表11に併せて示す。なお、表7〜表11に
は亜鉛−ニッケル合金電気めっきを一例としてその耐食
性を示すが、その他のめっき種として純亜鉛電気めっき
および亜鉛−鉄、亜鉛−コバルト等の亜鉛系合金電気め
っき、更には亜鉛系分散めっき等を用いることにより高
い耐食性が実現される。
【0066】また、前述のように焼鈍板において高いラ
ンクフォード値を得るための有効な方法として、熱延板
処理することを述べたが、この熱延板処理が有効なるこ
とは次の表12に示す如くである。即ち表12では、表
7〜表11に示す本発明鋼の内で、特にCu添加量を変化
させた鋼(No. 3,4,5,6)の中で450℃付近で
低温巻取した場合を例として示す。
【0067】
【表12】
【0068】即ち、このような表12によるときは低温
巻取材の場合であっても、所定の熱延板処理を行うこと
によって、同様に高いランクフォード値が得られること
は明かである。
【0069】次に、2次加工脆化の観点から、Bおよび
Pの作用効果について述べる。前記した表7〜表11に
示す鋼の内、BおよびPの添加量バランスを変えた鋼
( No.15,16,17,18,19,33,34,3
5)を用い、熱延条件として巻取温度を700〜740
℃とした場合に限って、上記と同様の条件の下で、冷間
圧延、焼鈍、調質圧延および時効処理を行った。
【0070】前記したような時効処理板より、直径10
0mmのブランクを打ち抜き、それを内径50mmのカップ
状に深絞り成形を施したものを用いて、2次加工脆化遷
移温度を測定した。その結果を図7に示すが、この図か
らPの添加により2次加工脆化が促進されることおよび
2次加工脆化に対してBの添加が有効であることが明ら
かである。
【0071】
【発明の効果】以上説明したような本発明によるときは
焼鈍後に深絞り用軟鋼板なみの成形性を有し、しかも時
効後に著しく強度の上昇する冷延鋼板を提供し、またTi
系析出物を核とした複合析出物を適切に生成せしめ、高
強度でしかも高いランクフォード値をもった鋼板を提供
せしめ、何れにしても自動車などの軽量化を有効に得し
め、あるいは高耐食性めっき鋼板を提供し得るものであ
って、工業的にその効果の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱延巻取温度と熱延鋼板を酸洗して冷間圧延を
施した後、焼鈍した鋼板のランクフォード値との関係を
示すグラフである。
【図2】熱延巻取温度と熱延板で観察される析出物との
関係を示す図面である。
【図3】巻取温度を720℃とした場合に、熱延板に観
察される析出物の写真およびエネルギー分散型X線分析
法(EDS)による元素分析結果を示す図面である。
【図4】熱延巻取温度と複合析出物の平均粒径
(dcomp.)、Cu単独析出物の平均粒径(dε-Cu ) 、Ti
系析出物の平均距離λおよび鋼中のCu含有量の内Ti系析
出物を核として析出する比率との関係を示すグラフであ
る。
【図5】ランクフォード値と複合析出物の平均粒径(d
comp.)との関係を示すグラフである。
【図6】焼鈍後の時効硬化処理による時効硬化量と熱延
板中の析出物のサイズとの関係を示すグラフである。
【図7】BおよびPの添加量バランスを変えた鋼を用い
た場合、2次加工脆化遷移温度に及ぼすBおよびP添加
量を影響を示すグラフである。
【図8】Cuが1.0%の場合に巻取温度がランクフォード
値に及ぼす影響を示した図表である。
【図9】Cu添加量がランクフォード値に及ぼす影響を示
した図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大崎 恭紀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−173213(JP,A) 特開 昭64−4429(JP,A) 特開 平2−197545(JP,A) 特開 平2−217415(JP,A) 特開 平2−145726(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 301 C21D 8/04 C21D 9/48 C22C 38/16

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 wt%で、C:0.010 %以下, Si:
    1.0 %以下, Mn:0.15〜2.5 %, P:0.01%以下,
    S:0.01%以下, Al:0.06%以下, N:0.0040%以下,
    Cu:0.5 〜2.0 %, Ni:1.0 %以下, Ti:0.005 〜0.1 %,
    Nb:0.002 〜0.05%, B:0.0005〜0.0020% を含有し、かつ鋼中のCu含有量の内80%以上が、Ti系
    析出物を核とした平均粒径が200nm以上の複合析出物
    であり,ランクフォード値が1.8以上であることを特徴
    とした深絞り用高強度冷延鋼板。
  2. 【請求項2】 冷間圧延し焼鈍工程を経てから400℃
    以上の時効処理を経た鋼板においても、ランクフォード
    値が1.8以上で、引張強さが440 N/mm2以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載の深絞り用高強度冷延
    鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の成分組成をもった鋼を
    熱間圧延後、680〜800℃で巻取り、500〜60
    0℃での時効処理後特性引張強さが440N/mm2 以上
    で、ランクフォード値が1.8以上とされたことを特徴と
    する深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の成分組成をもった鋼を
    Ar3点以上で熱間圧延し、680〜800℃で巻取った
    熱延鋼帯を酸洗し、60〜90%の圧下率で冷間圧延し
    た後、750〜870℃の温度で連続焼鈍を行い、その
    後500〜600℃の温度で時効処理を行うことを特徴
    とする深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 電気亜鉛めっきを有することを特徴とし
    た請求項2に記載の深絞り用高強度冷延鋼板。
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