JP4114521B2 - 成形性に優れる超高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にプレス成形される自動車部品などに用いて好適な引張強さTSが 980 MPa以上という超高強度で、延性および伸びフランジ性などの加工性に優れ、またさらには塗装後の耐食性にも優れる冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
種々の強化方法により、材料強度は、目標とする強度を達成することは可能であるが、高強度化に伴い加工性は低下する。特に従来の高強度鋼板では、組織的不均一や硬質相と軟質相の局所的な混在などのために、伸びフランジ性を評価する穴拡げ試験時に亀裂の起点となる箇所が多数存在することになり、これが伸びフランジ性の低下を招く、と言われている。しかも、このような加工性は、高強度鋼板になればなるほど大きく低下するのが一般的であった。
このため、従来の鋼板製造技術では、高強度化と延性、曲げ性および伸びフランジ性などの加工性の両立は極めて難しかった。
【0003】
伸びフランジ性の指標の一つである穴拡げ率(λ)に優れる高強度冷延鋼板については、従来から種々提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、上記の特許文献1には、引張強さTSが 690 MPa以下の比較的低レベルの鋼板の高λ化についてしか開示がなく、本発明で目的とするような超高強度材において、高強度化と共に、伸びフランジ性および延性を両立させるという知見は一切なく、加えて強度−伸びバランス(引張強さTS×伸びEl)および強度−伸びフランジ性バランス(引張強さTS×穴拡げ率λ)も十分なレベルとは言い難かった。
また、特許文献2にも、高λ化についてしか開示がなく、その対象とする材料のTSレベルも 690 MPa止まりであり、本発明が対象とする超高強度材に比べ、かなり低いレベルの鋼材についてしか開示がない。また、TS×Elレベルは低く、TS−λバランスとの両立について示唆するところもない。
【0004】
さらに、微細なベイナイト組織を有するTS:980 MPa 級の冷延鋼板について提案されている(例えば特許文献3参照)。
しかしながら、この特許文献3は、ロール成形あるいは曲げ加工による加工を対象としているため、降伏比(YP)、TSおよび弾性限について言及しているだけで、軽加工用途の薄鋼板についての技術にすぎない。従って、複雑なプレス部品形状を得るために極めて重要なEl、λに関する記述は一切なく、これらの加工性と高強度化との両立については何ら言及されていない。また、その実施例を参照すると、TS:980 MPa 級レベルの実施例成分は低炭素鋼であり、その製造工程で 300℃以下まで急冷しているため、生成するベイナイト相は高転位密度であることから、一般に延性は悪いことが予想される。さらに、均一微細の効果は、YSと弾性限との開きが小さくなると言及されているに止まっており、超高強度鋼板について、プレス成形を想定したTS−Elバランス、TS−λバランスを確保する技術ではない。
【0005】
また、特許文献4には、ベイニティックフェライト組織を有する穴拡げ性および延性が優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度鋼板とそれらの製造方法が提案されている。
しかしながら、この技術は、熱延鋼板および熱延鋼板に溶融亜鉛めっきした溶融亜鉛めっき鋼板に係る技術であり、板厚の厚い製品にしか対応できない。例えば、この特許文献4で開示されている製品板厚は2.6 mmである。製品板厚が厚い場合、自動車用足周り部品などには適用できるものの、成形性をより必要とされる構造部品への適用は困難である。また、車体軽量化の観点からも、薄い板厚に容易に対応できる冷延鋼板に係る技術の開発が望まれていた。
【0006】
なお、引張強さ(TS)が 980 MPa以上の強度レベルでプレス成形によって必要とされる部品を製造するには、伸びや伸びフランジ性以外に曲げ特性も併せ持つことが要求されるが、特許文献4に開示の鋼板は、硬質なベイニティックフェライトを主体とし、また結晶粒径も20μm 以下と粗粒と微細粒が混在し得る不均一な組織を許容しているため、曲げ加工性が低いという問題があった。
【0007】
さらに、自動車部品などに適用される加工用冷延鋼板は、通常、電着塗装を施して使用されるが、塗装後の耐食性を向上させるために、鋼板表面に種々のめっきを施すことが必要とされる場合が多く、このためコストアップを招き、価格が高いという欠点があった。また、TSが 980 MPa以上の超高強度鋼板では、添加元素の増加により、不めっきの発生や付着量のバラツキなど、めっき品質の低下が問題となる場合があるため、安価で塗装後の耐食性に優れた鋼板が望まれている。
【0008】
このような観点から開発された技術として、例えば特許文献5に開示されているような、P,Cu,Cr,Mo,Niを多量に含有させて耐食性を向上させる技術が提案されている。
しかしながら、この方法では、これら元素を添加させることによるコスト増を招くだけでなく、穴拡げ性や伸びの低下が生じ、良好な成形性が得られ難いという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9 −263838号公報(表4,表5)
【特許文献2】
特開平10−60593 号公報(表3,表6,表7)
【特許文献3】
特開2000−273576号公報(請求項1、表3)
【特許文献4】
特開2001−355043号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平5−140654号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、強度と加工性は相反する傾向を示すのが一般的であり、現状では、良好な加工性と 980 MPa以上の引張強さを兼備した超高強度冷延鋼板は知られていない。
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、成形性に優れる超高強度冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
また、本発明は、成形性に優れるだけでなく、塗装後の耐食性にも優れる超高強度冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0011】
ここに、本発明における板厚:0.8 〜2.5 mm程度の冷延鋼板についての強度および加工性の目標値は次のとおりである。
・引張強さ(TS)≧ 980 MPa
・強度−伸びバランス(TS×El)≧ 17000 MPa・%
・強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)≧ 65000 MPa・%
【0012】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋼成分、製造条件および金属組織などの面から鋭意実験を行い、かつ検討を重ねた。
その結果、成分組成を適正範囲に制御した上で、製造工程中とくに加熱温度および冷却停止温度を制御することによって、結晶粒径が制御された一定量のフェライト相と一定量のベイナイト相から構成される組織とし、かつフェライト相とベイナイト相の硬さを制御することにより初めて、優れた延性を有すると同時に局所的な変形能の差を解消してマクロ的に均一変形をさせることが可能となり、かくして非常に高い強度レベルの下で、従来にない優れた強度−伸びバランスと強度−伸びフランジ性バランスが得られ、ひいては優れたプレス成形性が得られることの知見を得た。
また、塗装後の耐食性の低下は、鋼板表面に存在するSiを含有する酸化物に起因して、塗装の前処理として行う化成処理性が劣化し、塗装との密着性が著しく低下することが原因であることも、併せて見出した。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0013】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1) を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、引張強さ(TS)、伸び(El)および穴拡げ率(λ)がそれぞれ、次の関係式
TS≧ 980 MPa、
TS×El≧ 17000 MPa・%
TS×λ≧ 65000 MPa・%
を満足することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
ここで、 [C], [Mn] はそれぞれ、C,Mnの含有量(mass%)
【0014】
2.C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1) を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、フェライト相の体積分率が10〜50 vol%、フェライト相の平均結晶粒径が 4.0μm 以下、ベイナイト相の体積分率が50〜80 vol%で、かつベイナイト相のビッカース硬さ(Hv(B))とフェライト相のビッカース硬さ(Hv(F))の比(Hv(B)/Hv(F))が 1.6以下の鋼組織を有することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
ここで、 [C], [Mn] はそれぞれ、C,Mnの含有量(mass%)
【0015】
3.C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1), (2)を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、引張強さ(TS)、伸び(El)および穴拡げ率(λ)がそれぞれ、次の関係式
TS≧ 980 MPa、
TS×El≧ 17000 MPa・%
TS×λ≧ 65000 MPa・%
を満足し、さらに鋼板表面と鋼板内部のSi濃度の比が1.5 以下であることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,S
の含有量(mass%)
【0016】
4.C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1), (2)を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、フェライト相の体積分率が10〜50 vol%、フェライト相の平均結晶粒径が 4.0μm 以下、ベイナイト相の体積分率が50〜80 vol%で、かつベイナイト相のビッカース硬さ(Hv(B))とフェライト相のビッカース硬さ(Hv(F))の比(Hv(B)/Hv(F))が 1.6以下の鋼組織を有し、さらに鋼板表面と鋼板内部のSi濃度の比が1.5 以下であることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,Sの含有量(mass%)
【0017】
5.上記1〜4のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
Cu:0.01〜0.50mass%、
Ni:0.01〜0.50mass%、
Mo:0.01〜0.50mass%および
Cr:0.01〜0.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
【0018】
6.上記1〜5のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
Nb:0.001 〜0.050 mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
【0019】
7.上記1〜6のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
V:0.001 〜0.300 mass%および
Zr:0.001 〜0.300 mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
【0020】
8.上記1〜7のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
B:0.0001〜0.0050mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
【0021】
9.上記1〜8のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
Ca:0.0001〜0.0050mass%および
REM:0.0001〜0.0050mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
【0022】
10. C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1) を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、鋳造後、直ちにまたは一旦冷却後1050〜1300℃に加熱したのち、仕上げ圧延終了温度:850 〜950 ℃にて熱間圧延し、圧延終了後、 450〜650 ℃で巻取ったのち、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施すに際し、下記式(3) で示される温度域に加熱して焼鈍した後、下記式(4) で示される温度域まで冷却し、冷却終了後、鋼板温度を上昇させることなく(冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃)の温度域で60秒以上保温することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
T1 ± 50 ℃(但し、T1 = 950− 150 [C]1/2+50[Si]−30[Mn]) ---(3)
T2 ± 50 ℃(但し、T2 = 500−450[C] −30[Mn]) --- (4)
ここで、 [C], [Mn], [Si] はそれぞれ、C,Mn, Siの含有量(mass%)
【0023】
11. C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1), (2)を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、鋳造後、直ちにまたは一旦冷却後1050〜1300℃に加熱したのち、仕上げ圧延終了温度:850 〜950 ℃にて熱間圧延し、圧延終了後、 450〜650 ℃で巻取ったのち、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施すに際し、少なくとも焼鈍時の加熱中における雰囲気露点(DP)が−30℃以上の条件下で下記式(3) で示される温度域に加熱して焼鈍した後、下記式(4) で示される温度域まで冷却し、冷却終了後、鋼板温度を上昇させることなく(冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃)の温度域で60秒以上保温することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
T1 ± 50 ℃(但し、T1 = 950− 150 [C]1/2+50[Si]−30[Mn]) ---(3)
T2 ± 50 ℃(但し、T2 = 500−450[C] −30[Mn]) --- (4)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,Sの含有量(mass%)
【0024】
12. 上記10または11において、鋼スラブが、さらに
Cu:0.01〜0.50mass%、
Ni:0.01〜0.50mass%、
Mo:0.01〜0.50mass%および
Cr:0.01〜0.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
【0025】
13. 上記10〜12のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
Nb:0.001 〜0.050 mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
【0026】
14. 上記10〜13のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
V:0.001 〜0.300 mass%および
Zr:0.001 〜0.300 mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
【0027】
15. 上記10〜14のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
B:0.0001〜0.0050mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
【0028】
16. 上記10〜15のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
Ca:0.0001〜0.0050mass%および
REM:0.0001〜0.0050mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.12〜0.18mass%
Cは、低温変態相を利用して鋼を強化するための必須元素であって、980 MPa以上の引張強さを得るには少なくとも0.12mass%の含有が必要であるが、0.18mass%を超えて含有すると、溶接性が著しく劣化し、またオーステナイト中のC濃度が高くなりすぎてマルテンサイト変態点(Ms )が低下し、加熱、冷却、保温工程後も硬質な残留オーステナイト相が存在して伸びフランジ性が低下するので、C量は0.12〜0.18mass%の範囲に限定した。
【0030】
Si:0.2 〜0.8 mass%
Siは、強度向上に寄与する有用元素であるが、含有量が 0.2mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.8mass%を超えて含有させると、フェライト変態が促進され、低温変態相による強化が不十分となる。またSiは、オーステナイト中ヘのC濃化を促進する効果が大きい元素であり、フェライト以外の相(第2相ともいう)そのものが硬化すること、最終的に得られる鋼板中に硬質な残留オーステナイト相が存在し易くなること等により伸びフランジ性を低下させる弊害がある。
さらに、Siを0.8 mass%を超えて含有させると、連続焼鈍中にSiが表面に顕著に濃化し、雰囲気中に存在する酸素と反応して、表面でSi系の酸化物を形成する結果、塗装の前処理として行う化成処理性が低下し、塗装との密着性が著しく低下する。そこで、Si量は 0.2〜0.8 mass%の範囲に限定した。より好ましくは、0.2 〜0.65mass%の範囲である。
【0031】
Mn:2.2 〜3.0 mass%
Mnは、フェライト変態を抑制し、ベイナイト組織を得るために重要な役割を担っている元素である。また、Ar3変態点を低下させる作用を通じて結晶粒の微細化に寄与し、強度−伸びバランスを高める作用を有する。引張強さ確保の観点から安定して低温変態相を得るには、 2.2mass%以上のMn量が必要であるが、3.0mass%を超えて含有すると軟質なフェライト相の生成が過度に抑制されTS−Elバランスが低下する。よって、Mn量は 2.2〜3.0 mass%の範囲に限定した。
【0032】
P:0.02mass%以下
Pは、固溶強化能が高く、強度向上を達成する上で有効な元素であるので、0.005 mass%以上含有させることが好ましいが、過度に含有させると、組織的な不均一化をもたらし、鋳造時の凝固偏析が顕著になり、内部割れや加工性の劣化を招くことになるので、P量は0.02mass%以下に制限した。より好ましくは 0.018mass%以下である。
【0033】
S:0.0030mass%以下
Sは、鋼中に非金属介在物として存在し、伸びフランジ成形時の応力集中源となるため、その含有量は極力低減することが望ましい。とはいえ、S量が0.0030mass%以下の範囲では、高強度であっても、伸びフランジ性にさほどの悪影響は及ぼさないので0.0030mass%を許容上限とした。より好ましくは0.0010mass%未満である。
【0034】
Al:0.05mass%以下
Alは、脱酸および炭化物形成元素の歩留りを向上させるために有効な元素であり、0.01mass%以上含有させることが好ましいが、0.05mass%を超えて含有させても効果が飽和するのみならず、加工性の劣化や表面性状の劣化を招くので、Al量は0.05mass%以下に限定した。
【0035】
N:0.0050mass%以下
Nは、AlN、固溶Nとして鋼中に存在し、多量に含有されるとフェライトの延性を低下させるため、その含有量は0.0050mass%以下に制限した。より好ましくは0.0030mass%以下である。
【0036】
Ti:0.001 〜0.030 mass%
Tiは、スラブ加熱段階でTiCとして存在して、昇温加熱中のオーステナイト粒成長を抑制するだけでなく、それ以降の熱間圧延工程での動的再結晶を誘起し、組織の微細均一化をもたらし、伸び、穴拡げ性を向上させるのに有効な元素であり、このためには少なくとも 0.001mass%の含有を必要とする。また、このTiを後述するNbと併用して含有させると、フェライト変態が起きない臨界冷却速度が小さくなり、焼入れ性が向上するという効果がもたらされる。一方、0.030 mass%を超えるTiを含有させると、硬質な炭化物などを形成し、伸びフランジ性を低下させるため、Ti量は 0.001〜0.030 mass%の範囲に限定した。より好ましくは 0.005〜0.015 mass%の範囲である。
【0037】
さらに、本発明では、C量とMn量について次式(1) の範囲を満足させることが重要である。
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
ここで、 [C], [Mn] はそれぞれ、C,Mnの含有量(mass%)
というのは、CやMnは、強度に及ぼす影響が極めて大きいため、両者をバランス良く含有させることが必要だからである。ここに、Mn量が−100[C] + 15 より少ないと十分な強度の確保が難しく、またフェライト生成により伸び(El)は大きくなるものの、穴拡げ率(λ)が低下する。一方、−100[C] + 20 を超えて含有すると、フェライト生成が抑制され、伸び(El)が低下し、強度レベルが高くなりすぎる。
【0038】
またさらに、塗装後の耐食性を向上させるには、Ti量とN量、S量について次式(2) の範囲を満足させることが重要である。
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,Sの含有量(mass%)
Tiは、Cのみならず、N,Sとも結合して、析出物を形成する。このうちTiCは、組織の均一性に有効なだけでなく、焼入れ性を向上させ、さらには化成処理性を向上させて、その後の塗装耐食性の改善にも有効に寄与する。またTiは、Sを析出物として固定することによって、塗装後の耐食性を向上させる働きもある。ここに、Ti量が( 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006)より少ないと、上記の効果とくに塗装後の耐食性改善効果を得ることが難しくなる。従って、Tiは、上掲式(2) を満足する範囲で含有させることが好ましい。
【0039】
以上、基本成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:0.01〜0.50mass%、Ni:0.01〜0.50mass%、Mo:0.01〜0.50mass%およびCr:0.01〜0.50mass%のうちから選んだ1種または2種以上
Cu,Ni,MoおよびCrはいずれも、伸びを大きく低下させることなしに強度を向上させるのに有効な元素であるが、0.01mass%未満ではその効果に乏しく、一方0.50mass%を超えて多量に含有させてもさらなる効果はなく、むしろ経済的に不利となるので、これらは単独添加または複合添加いずれの場合も0.01〜0.50mass%の範囲で含有させるものとした。なお、これらは単独添加または複合添加いずれの場合も0.01〜0.20mass%の範囲で含有させることがより好ましい。
【0040】
Nb:0.001 〜0.050 mass%
Nbは、NbCなどの析出物の存在形態や再結晶温度に影響を及ぼす元素である。特に本発明では、Nbは、組織の微細均一化に有効に作用する他、フェライト−パーライトの生成を抑制し、低温変態相であるベイナイト主体の組織とすることにより、高強度にもかかわらず高い伸び、穴拡げ率をもたらすという効果を有している。このような効果は、Nbを 0.001mass%以上含有させることで発現するが、0.050 mass%を超えて含有させると鋼中に硬質な析出物が多量に形成され、伸びフランジ性を低下させるので、Nb量は 0.001〜0.050 mass%の範囲に限定した。より好ましくは 0.005〜0.020 mass%の範囲である。
【0041】
V:0.001 〜0.300 mass%および/またはZr:0.001 〜0.300 mass%
VおよびZrはそれぞれ、炭化物の形成による結晶粒径の粗大化抑制効果を通じて鋼板の強度を上昇させるのに有効な元素であるが、含有量が 0.001mass%未満ではその効果に乏しく、一方 0.300mass%を超えて多量に含有させてもさらなる効果はなく、むしろ経済的に不利となる。よって、V,Zrはそれぞれ、 0.001〜0.300 mass%の範囲で含有させるものとした。なお、これらは単独でも複合して含有させても同様の挙動を示す。
【0042】
B:0.0001〜0.0050mass%
Bも、強度上昇に有効な元素である。Bを含有させることにより、フェライトが生成する臨界冷却速度が遅くなるので、冷延後の焼鈍工程における連続冷却中に軟質なフェライト相の生成を抑制して低温変態相を形成させることが容易となる。このような効果を得るためには、0.0001mass%以上含有させることが必要であるが、0.0050mass%を超えて含有させてもさらなる効果は得られないので、B量は0.0001〜0.0050mass%の範囲に限定した。
【0043】
Ca:0.0001〜0.0050mass%および/または REM:0.0001〜0.0050mass%
CaおよびREM はいずれも、硫化物などの析出物、例えばMnSなどを球状化して鋭角的な析出物を減少させ、応力集中を減少させることによって伸びフランジ性の低下を抑制する効果を有している。しかしながら、含有量がそれぞれ0.0001mass%未満では効果が小さく、一方0.0050mass%を超えて含有させても、その効果は飽和し、むしろコストの上昇を招く。そこで、Ca, REM はそれぞれ0.0001〜0.0050mass%の範囲で含有させるものとした。
【0044】
次に、鋼組織を前記の範囲に限定した理由について説明する。
フェライト相の体積分率:10〜50 vol%
フェライト相の体積分率が10 vol%より少ないと、軟質相の絶対量が少なすぎて延性の低下を招き、一方50 vol%を超えて存在すると、軟質相が多くなりすぎて、第2相の硬さにも依存するものの、引張強さTSの確保が困難となる。従って、フェライト相は体積分率で10〜50 vol%存在させるものとした。より好ましくは15〜35 vol%の範囲である。
【0045】
フェライト相の平均結晶粒径:4.0 μm 以下
フェライト相の平均結晶粒径を 4.0μm 以下と細かくすることにより、軟質であるフェライト相が10〜50 vol%の範囲で存在し、第2相すなわち硬質な低温変態相が比較的少ない場合でも高強度化が可能となり、またそれによって軟質相であるフェライト相を多く含むようになる結果、延性が向上する。さらに、結晶粒の微細化により鋼板組織の均一化が進むため、伸びフランジ性の改善も達成される。従って、フェライト相の平均結晶粒径は 4.0μm 以下とした。
【0046】
ベイナイト相の体積分率:50〜80 vol%
ベイナイト相の体積分率が80 vol%を超えると高強度化し、またベイナイト相単相組織に近付き均一な組織となるため伸びフランジ性は向上する傾向にあるが、逆に延性は低下する。一方、50 vol%より少ないと引張強さ(TS)の確保が困難となる。またTSを確保するには、ベイナイト相自身も強化する必要があり、必然的にフェライト相との硬度差が開くため、伸びフランジ性は低下する。従って、ベイナイト相は体積分率で50〜80 vol%の範囲に限定した。より好ましくは60〜75 vol%の範囲である。
さらに、これらフェライト相とベイナイト相の特性を有利に発揮させるためには、両者の合計を組織全体に対する体積分率で90 vol%以上とすることが好ましい。
【0047】
なお、上記したフェライト相およびベイナイト相以外にも、結晶粒界に沿って析出するセメンタイト、等温保持中にオーステナイトからベイナイトに変態する際に 100%変態せずに若干生成するマルテンサイトおよび残留オーステナイトなどが存在するが、フェライト相およびベイナイト相さえ、上記の範囲を満足していれば問題はなく、それぞれ数%程度存在しても構わない。
また、ここでいうベイナイト相とは、オーステナイトから所定の温度に冷却し、その後の温度保持過程において生成するフェライトと針状に析出した Fe3Cから構成される低温変態相であり、例えばオーステナイトから水冷のような急速冷却を受け、その後の再加熱工程において生成する同じくフェライトと Fe3Cから構成されてはいるが、棒状または楕円状の Fe3Cとフェライトとから構成される焼き戻しマルテンサイト相や Fe3Cの析出を含まないベイニティックフェライトとは明瞭に区別される。
【0048】
ベイナイト相の硬さ(Hv(B))/フェライト相の硬さ(Hv(F))≦ 1.6
Hv(B)/Hv(F)が 1.6より大きいと、均一な組織ではなく軟質相中に硬質な部分が局所的に存在することになり、歪み導入時に変形能が異なって不均一変形となるため成形性が低下する。すなわち、歪みの導入によりフェライトは変形するが、ベイナイトの変形量は少ないため、第2相の界面でボイドが容易に発生すること、また試験中に界面において亀裂の進展が容易に起こるためと考えられるが、穴拡げ率の低下を招く。従って、ベイナイト相の硬さとフェライト相の硬さの比Hv(B)/Hv(F)は 1.6以下とした。
【0049】
C:0.145 mass%, Si:0.65mass%, Mn:2.58mass%, P:0.017 mass%, S:0.0008mass%, Al:0.027 mass%, N:0.0025mass%およびTi:0.011 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブ(T1 =848 ℃,T2 =357 ℃) を、スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上げ圧延温度:850 〜1000℃、巻取り温度:400 〜650 ℃、冷延圧下率:50%、焼鈍温度:750 〜920℃、焼鈍後の冷却速度:10〜200 ℃/s、冷却停止温度:200 〜450 ℃、保温処理温度:200 〜450 ℃の条件で処理し、冷延鋼板とした。
かくして得られた冷延鋼板の強度(TS)、伸び(El)および穴拡げ率(λ)を測定し、強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)について求めた結果を、ベイナイト相の体積分率との関係で図1に示す。
なお、得られた冷延鋼板のフェライト相の体積分率は5〜70 vol%であった。
【0050】
同図に示したとおり、ベイナイト相の体積分率50〜80 vol%で、かつベイナイト相の硬度/フェライト相の硬度≦1.6 とすることによってはじめて、高いTS×ElおよびTS×λを併せて得ることができた。
上述したように、鋼組成を調整した上で鋼組織および硬度を調整することにより、はじめてTS≧ 980 MPa、TS×El≧ 17000 MPa・%、TS×λ≧ 65000
MPa・%を達成した冷延鋼板とすることができた。
【0051】
鋼板表面と鋼板内部のSi濃度の比:1.5 以下
本発明鋼のようにSiを含有する鋼では、熱間圧延中にSiが表面に濃化し、Si酸化物を形成し易い。このようなSi酸化物は、熱延後の酸洗過程では、完全に除去されずに残存することがある。また、冷延後の連続焼鈍中に、炉内の露点と温度によっては、Siが表面に濃化してSi酸化物が形成される。表面にSi酸化物が残存すると、表面のSi濃度は上昇する。これらのSi酸化物は、その後の鋼板の化成処理過程で、地鉄の溶解を阻害して、適正な化成結晶の生成に悪影響を及ぼし、さらに塗装後の耐食性を劣化させる原因となる。
本発明は、鋼板表面への極端なSiの濃化を抑制し、鋼板表面に、塗装後耐食性を劣化させるほどにはSi酸化物を残存させないようにすることによって、優れた塗装後耐食性を得るようにしたものである。鋼板表面へのSiの濃化の程度は、以下に述べる方法で、鋼板表面と鋼板内部とのSi濃度比を測定することによって評価することができ、この比を1.5 以下にすることによって、優れた塗装後耐食性を得ることができる。
【0052】
鋼板表面と鋼板内部のSi濃度は、焼鈍前および焼鈍後の鋼板について、それらの表面から0.5 mm研削し、研削後の表面各々について、蛍光X線分析により、それぞれ同一面積でのSi強度をカウントすることにより測定することができる。ここで、焼鈍前の鋼板について求めたSi濃度が、鋼板内部のSi濃度を表することになる。従って、鋼板表面と鋼板内部のSi濃度比は(焼鈍後の鋼板研削面のSi濃度)/(焼鈍前の鋼板研削面のSi濃度)により計算される。
【0053】
次に、本発明の製造方法において製造条件を前記の範囲に限定した理由について説明する。
なお、本発明では、前記した好適成分組成に調整した鋼スラブを、鋳造後、直ちにまたは一旦冷却後、後述するスラブ加熱温度に再加熱したのち、熱間圧延し、巻き取った後、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施す。
【0054】
再加熱時におけるスラブ加熱温度(SRT):1050〜1300℃
結晶粒の均一微細化のためには、スラブ加熱温度は1300℃以下のできるかぎり低温とすることが好ましい。というのは、スラブ加熱温度が低ければ低いほど加熱時の初期オーステナイト粒径が小さくなるため、最終的な製品粒径の微細化により、高い伸びフランジ性を得るのに有効であり、また細粒化効果により強度上昇を伴うため硬質な第2相分率の低減が可能となり、延性も向上するからである。とはいえ、スラブ加熱温度が1050℃を下回ると、仕上げ圧延温度の確保が困難となるので、スラブ加熱温度は1050℃以上とする必要がある。従って、スラブ加熱温度は1050〜1300℃の範囲に限定した。より好ましくは1100〜1200℃の範囲である。
【0055】
仕上げ圧延終了温度:850 〜950 ℃
熱間圧延時の仕上げ圧延終了温度が 850℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、熱間圧延性が低下する。また組織の不均一化が起こり、フェライトと第2相が層状すなわちバンド状の組織となり、冷延焼鈍後も不均一な組織が残存して、伸びフランジ性および延性が共に低下する。一方、950 ℃より高温ではオーステナイトが粗大化し、均一微細な組織が得られなくなり、伸びフランジ性が低下する。よって、仕上げ圧延終了温度は 850〜950 ℃の範囲とした。
【0056】
巻取り温度:450 〜650 ℃
巻取り温度が 450℃を下回ると、硬質なマルテンサイト相が生成して伸びフランジ性が低下するだけでなく、冷間圧延時の圧延負荷が増大し、さらには幅方向での鋼板強度がバラツキ、熱延後の冷間圧延性が低下する。一方、650 ℃を上回るとTiCが粗大化し、均一な組織が得られなくなり、冷延焼鈍後の延性が不十分となる。また、フェライトとパーライト主体の層状組織となり、鋼板中にC濃度分布の高低が生じ、冷延、焼鈍後の組織も不均一となり、穴拡げ率(λ)、延性(El)ともに悪影響を与える。よって巻取り温度は 450〜650 ℃の範囲とした。
なお、巻取り後に行う冷間圧延は、通常どおりの条件で行えばよく、特にこの冷間圧延における圧下率は30〜70%程度とすることが好ましい。
【0057】
焼鈍温度:T1 ±50℃(但し、T1 = 950− 150 [C]1/2+50[Si]−30[Mn])
ここで、T1 は、A3 変態点の目安となる温度である。
さて、連続焼鈍時の焼鈍温度が、T1 −50℃より低いと、冷間圧延時の組織の影響を完全に除却することが困難なため、2相バンド状組織すなわち不均一な組織となって、穴拡げ率(λ)が低下する。一方、焼鈍温度がT1 +50℃より高くなると、昇温工程においてオーステナイト粒径が急激に粗大化し、炭化物も粗大局在化するようになるため、微細均一な組織が得られなくなって、λが低下する。また、フェライト変態が遅延し、延性も低下する。
従って、延性と穴拡げ率をバランスさせるためには、焼鈍温度はT1 ±50℃の範囲に制御する必要がある。
【0058】
図2は、伸び(El)および穴拡げ率(λ)、ひいては強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)に及ぼす焼鈍温度の影響を示したものである。
C:0.154 mass%, Si:0.55mass%, Mn:2.56mass%, P:0.017 mass%, S:0.0008mass%, Al:0.027 mass%, N:0.0022mass%およびTi:0.014 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブ(T1 =842 ℃,T2 =354 ℃) を、スラブ加熱温度:1185℃、仕上げ圧延温度:883 ℃、巻取り温度:455 ℃、冷延圧下率:45%、焼鈍温度:T1 ±95℃、冷却速度:22℃/s、冷却停止温度:360 ℃、保温温度:350 ℃、保温時間:145 sの条件で処理し、冷延鋼板とした。
かくして得られた冷延鋼板の伸び(El)および穴拡げ率(λ)を測定し、強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)について求めた結果を、焼鈍温度との関係で図2に示す。
【0059】
同図から明らかなように、焼鈍温度をT1 ±50℃の範囲に制御することによって、所定の体積分率のフェライト相とベイナイト相が得られ、またこれらの相の硬度比も所定の範囲を満足し、高いTS×ElおよびTS×λが得られている。
【0060】
また、塗装後の耐食性を重視し、これを改善するためには、前述したとおり、鋼板表面へのSiの濃化を抑制し、Si濃度比を1.5 以下とすることが必要であるが、そのためには少なくとも焼鈍時の加熱中、すなわち焼鈍温度までの加熱中および焼鈍中における雰囲気露点(DP)を−30℃以上とすることが好ましい。
ここに、上記の雰囲気露点(DP)を−30℃以上とした理由は、Siは、Fe,Mnに比べて、酸化が進行する平衡酸素分圧が小さいため、−30℃よりも低い露点で焼鈍された場合には、鋼板表面にSiが濃化し易くなり、鋼板表面と鋼板内部のSi濃度比が 1.5を超えて、化成処理性が低下するからである。好ましい露点範囲は−30〜−15℃の範囲である。
【0061】
冷却停止温度:T2 ± 50 ℃(但し、T2 = 500−450[C] −30[Mn])
ここで、T2 は、Ms 点の目安となる温度である
焼鈍後の冷却において、冷却停止温度がT2 −50℃を下回ると、硬質なマルテンサイト相が生成し、ベイナイト相の生成が減少するため、あるいはベイナイト相が硬質化しすぎるためと考えられるが、引張強さが大きくなり、伸びおよび穴拡げ率が低下する。一方、冷却停止温度がT2 +50℃を上回ると、極めてC濃度の高い硬質な残留オーステナイト相が生成し、フェライト相との硬度差が大きくなり、穴拡げ率が低下する。また、ベイナイ卜相が高温で生成するため強度レベルが低下し、TS≧980 MPa の確保が困難となる。従って、冷却停止温度はT2± 50 ℃の範囲に制御するものとした。
ちなみに、焼鈍温度から冷却停止温度までの冷却速度は(焼鈍温度(冷却開始温度)−冷却停止時の温度)/冷却時間(℃/s)で定義される。冷却速度については遅すぎるとフェライトが多量に生成するため引張強さの確保が困難となり、一方あまりに速いと逆にフェライト生成が抑制されて延性の低下などの問題が生じる。従って、冷却速度は、水冷、ミスト冷却などの場合とは異なり、平均冷却速度で5〜80℃/s程度で構わない。好ましくは10〜50℃/sの範囲である。
【0062】
保温温度:冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃
オーステナイトからベイナイトへの変態を十分に行うためには、(冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃)の温度域に適当な時間滞留させることが重要である。ここに、(冷却停止温度−100 ℃)に満たない温度で保温すると、第2相の硬質化によって引張強さが大きくなり、伸びが低下する。また、フェライトとの硬度差が大きくなり、クラックの発生、進展が容易になり穴拡げ率が低下する。
この点、保温温度が冷却終了時点での鋼板温度以下であれば十分にフェライトとの硬度差の小さい低温変態相であるベイナイト相が生成するため、十分な穴拡げ率を得ることができる。また、マルテンサイトより硬質ではないベイナイト相とフェライト相の混合組織となり、延性との両立が可能となる。従って、保温温度は(冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃)の範囲に限定し、冷却終了後、鋼板温度を上昇させることなく、上記の範囲で保温することとした。
【0063】
保温時間:60秒以上
上記した保温温度と同様に、オーステナイトからベイナイトへの変態を十分に行うために重要であり、60秒に満たないと硬質なマルンサイトが生成し穴拡げ率が低下するため、保温時間は60秒以上とする必要がある。また、240 秒を超えて保温しても、その効果は飽和し、生産効率が悪くなるだけであるので、保温時間は 240秒以下とすることが好ましい。なお、かかる保温処理は、連続焼鈍炉の過時効帯等で行うことができる。
【0064】
図3は、穴拡げ率(λ)および伸び(El)、ひいては強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)に及ぼす冷却停止温度の影響を示したものである。
C:0.149 mass%, Si:0.44mass%, Mn:2.55mass%, P:0.017 mass%, S:0.0007mass%, Al:0.035 mass%, N:0.0028mass%およびTi:0.015 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブ(T1 =838 ℃,T2 =356 ℃) を、スラブ加熱温度:1170℃、仕上げ圧延温度:905 ℃、巻取り温度:520 ℃、冷延圧下率:50%、焼鈍温度:850 ℃、冷却速度:25℃/s、冷却停止温度:(T2 −70℃)〜(T2 +75℃)、保温温度:冷却停止温度−10℃、保温時間:200 秒の条件で処理し、冷延鋼板とした。
かくして得られた冷延鋼板の伸び(El)および穴拡げ率(λ)を測定し、強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)について求めた結果を、冷却停止温度との関係で図3に示す。
【0065】
同図から明らかなように、冷却停止温度をT2 ± 50 ℃の範囲に制御し、適正条件で保温処理を施すことにより、所定の体積分率のフェライト相とベイナイト相が得られ、またこれらの相の硬度比も適正で、高いTS×ElおよびTS×λが得られることが分かる。
【0066】
なお、上記の保温処理後は、放冷あるいは10〜60℃/min程度の冷却速度で 200℃程度まで冷却することが好ましい。また、その後の冷却については、水冷、ミスト冷却、放冷など、冷却方法や冷却速度に関する制限はない。
上述したとおり、本発明法は、焼鈍温度からの急速冷却や冷却終了後の鋼板再加熱などの工程は不要なため、高生産性かつ低燃料原単位であり、トータルのエネルギーコストの低いレベルでの工業生産が可能となる。
【0067】
【実施例】
表1に示す種々の成分組成になる鋼スラブを、表2に示す条件で処理して、板厚:1.0 〜1.8 mmの冷延鋼板を製造した。なお、冷間圧延の際の圧下率は40〜60%とした。また、保温処理後200 ℃までの冷却速度は30〜50℃/minとした。
かくして得られた冷延鋼板の鋼組織および各種機械的性質について調べた結果を表3に示す。
【0068】
なお、各特性の評価方法および組織の測定方法は次のとおりである。
・引張特性:圧延方向と直交する方向を長手方向(引張り方向)とするJIS Z 2201の5号試験片を用い、JIS Z 2241に準拠した引張り試験を行って評価した。・穴拡げ率λ:日本鉄鋼連盟規格JFSTl001に基づき実施した。すなわち、初期直径do =10mmの穴を打ち抜いたのち、60°の円錘ポンチを上昇させて穴を拡げた際に、亀裂が板厚を貫通したところでポンチの上昇を止め、亀裂貫通後の打抜き穴径dを測定し、穴拡げ率λ=〔(d−do )/do ) × 100(%)として算出した。
・曲げ特性:圧延方向を長手方向とする40mm幅×200 mm長さの試験片を用い、JIS Z 2248に準拠した押し曲げ法による密着曲げ試験を行って、評価した。
・フェライト相の結晶粒径
測定位置は板厚1/4 面近傍の3000倍の SEM像を基に画像解析にてフェライト相の面積およびフェライト相の個数を導出し、求積法にて算出した、n=3単純平均の値である。
・フェライト相体積分率およびベイナイト相体積分率:板厚1/4 面近傍の5000倍の SEM像を基に画像解析にて2階調化して面積率を求め、n=5 で単純平均した値である。この面積率をもって体積分率とした。
・ベイナイト相とフェライト相の硬さ:測定位置は板厚1/4 面近傍で、マイクロビッカース硬度計を用い、荷重:3gの試験値のn=3単純平均である。
・鋼板表面と鋼板内部のSi濃度比
冷延後で焼鈍前の鋼板および焼鈍後の鋼板について、これらを表面から0.5 mm研削した後、研削後の表面の各々について、蛍光X線分析により、それぞれ同一面積でSi強度をカウントし、これをSi濃度とした。ここで、焼鈍前の鋼板について求めたSi濃度すなわちSi強度カウントが、鋼板内部のSi濃度を表することになる。従って、Si濃度比は(焼鈍後の鋼板研削面のSi濃度(Si強度カウント))/(焼鈍前の鋼板研削面のSi濃度(Si強度カウント))により計算される。
・塗装後耐食性
150mm×75mmの試験片にリン酸塩処理し、厚さ:25μm になるように電着塗装し、カッターナイフで45mm、3本/試験片の切り込みを入れて、5%NaCl、55℃の塩温水中に 240時間浸漬した後、セロテープ(登録商標)を切り込み上に貼って、剥がした後の剥離幅を測定した。最大片側剥離幅が 2.5mm(全幅:5mm)以下の場合に合格(○)とした。なお、切り込み以外の部分で剥離した場合は不合格(×)とした。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示したとおり、発明例はいずれも、引張強さ(TS)≧ 980 MPa、強度−伸びバランス(TS×El)≧ 17000 MPa・%、強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)≧ 65000 MPa・%という3つの目標値を全て満足しており、高強度と良好な加工性を兼備していることが分かる。
また、特に鋼板表面と鋼板内部のSi濃度比を 1.5以下に低減したものは、塗装後の耐食性にも優れていることが分かる。
【0073】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、TS≧980 MPa という超高強度で、かつTS×El≧ 17000 MPa・%、TS×λ≧ 65000 MPa・%という優れたプレス成形性を有し、またさらには塗装後の耐食性にも優れた冷延鋼板を、安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 冷延鋼板の強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)に及ぼすベイナイト相の体積分率およびベイナイト相とフェライト相の硬度比の影響を示した図である。
【図2】 冷延鋼板の強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)に及ぼす焼鈍温度の影響を示した図である。
【図3】 冷延鋼板の強度−伸びバランス(TS×El)および強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)に及ぼす冷却停止温度の影響を示した図である。
Claims (16)
- C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1) を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、引張強さ(TS)、伸び(El)および穴拡げ率(λ)がそれぞれ、次の関係式
TS≧ 980 MPa、
TS×El≧ 17000 MPa・%
TS×λ≧ 65000 MPa・%
を満足することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
ここで、 [C], [Mn] はそれぞれ、C,Mnの含有量(mass%) - C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1) を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、フェライト相の体積分率が10〜50 vol%、フェライト相の平均結晶粒径が 4.0μm 以下、ベイナイト相の体積分率が50〜80 vol%で、かつベイナイト相のビッカース硬さ(Hv(B))とフェライト相のビッカース硬さ(Hv(F))の比(Hv(B)/Hv(F))が 1.6以下の鋼組織を有することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
ここで、 [C], [Mn] はそれぞれ、C,Mnの含有量(mass%) - C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1), (2)を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、引張強さ(TS)、伸び(El)および穴拡げ率(λ)がそれぞれ、次の関係式
TS≧ 980 MPa、
TS×El≧ 17000 MPa・%
TS×λ≧ 65000 MPa・%
を満足し、さらに鋼板表面と鋼板内部のSi濃度の比が1.5 以下であることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,Sの含有量(mass%) - C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1), (2)を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、フェライト相の体積分率が10〜50 vol%、フェライト相の平均結晶粒径が 4.0μm 以下、ベイナイト相の体積分率が50〜80 vol%で、かつベイナイト相のビッカース硬さ(Hv(B))とフェライト相のビッカース硬さ(Hv(F))の比(Hv(B)/Hv(F))が 1.6以下の鋼組織を有し、さらに鋼板表面と鋼板内部のSi濃度の比が1.5 以下であることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,Sの含有量(mass%) - 請求項1〜4のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
Cu:0.01〜0.50mass%、
Ni:0.01〜0.50mass%、
Mo:0.01〜0.50mass%および
Cr:0.01〜0.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
Nb:0.001 〜0.050 mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。 - 請求項1〜6のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
V:0.001 〜0.300 mass%および
Zr:0.001 〜0.300 mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。 - 請求項1〜7のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
B:0.0001〜0.0050mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。 - 請求項1〜8のいずれかにおいて、鋼板が、さらに
Ca:0.0001〜0.0050mass%および
REM:0.0001〜0.0050mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板。 - C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1) を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、鋳造後、直ちにまたは一旦冷却後1050〜1300℃に加熱したのち、仕上げ圧延終了温度:850 〜950 ℃にて熱間圧延し、圧延終了後、 450〜650 ℃で巻取ったのち、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施すに際し、下記式(3) で示される温度域に加熱して焼鈍した後、下記式(4) で示される温度域まで冷却し、冷却終了後、鋼板温度を上昇させることなく(冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃)の温度域で60秒以上保温することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
T1 ± 50 ℃(但し、T1 = 950− 150 [C]1/2+50[Si]−30[Mn]) ---(3)
T2 ± 50 ℃(但し、T2 = 500−450[C] −30[Mn]) --- (4)
ここで、 [C], [Mn], [Si] はそれぞれ、C,Mn, Siの含有量(mass%) - C:0.12〜0.18mass%、
Si:0.2 〜0.8 mass%、
Mn:2.2 〜3.0 mass%、
P:0.02mass%以下、
S:0.0030mass%以下、
Al:0.05mass%以下、
N:0.0050mass%以下および
Ti:0.001 〜0.030 mass%
を、下記式(1), (2)を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、鋳造後、直ちにまたは一旦冷却後1050〜1300℃に加熱したのち、仕上げ圧延終了温度:850 〜950 ℃にて熱間圧延し、圧延終了後、 450〜650 ℃で巻取ったのち、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施すに際し、少なくとも焼鈍時の加熱中における雰囲気露点(DP)が−30℃以上の条件下で下記式(3) で示される温度域に加熱して焼鈍した後、下記式(4) で示される温度域まで冷却し、冷却終了後、鋼板温度を上昇させることなく(冷却停止温度〜冷却停止温度−100 ℃)の温度域で60秒以上保温することを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
記
−100[C] + 15 ≦ [Mn] ≦−100[C] + 20 --- (1)
[Ti] ≧ 3.43[N] + 1.5 [S] − 0.006 --- (2)
T1 ± 50 ℃(但し、T1 = 950− 150 [C]1/2+50[Si]−30[Mn]) ---(3)
T2 ± 50 ℃(但し、T2 = 500−450[C] −30[Mn]) --- (4)
ここで、 [C], [Mn], [Ti], [N], [S] はそれぞれ、C,Mn,Ti,N,Sの含有量(mass%) - 請求項10または11において、鋼スラブが、さらに
Cu:0.01〜0.50mass%、
Ni:0.01〜0.50mass%、
Mo:0.01〜0.50mass%および
Cr:0.01〜0.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。 - 請求項10〜12のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
Nb:0.001 〜0.050 mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。 - 請求項10〜13のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
V:0.001 〜0.300 mass%および
Zr:0.001 〜0.300 mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。 - 請求項10〜14のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
B:0.0001〜0.0050mass%
を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。 - 請求項10〜15のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
Ca:0.0001〜0.0050mass%および
REM:0.0001〜0.0050mass%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成になることを特徴とする成形性に優れる超高強度冷延鋼板の製造方法。
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