JP3265022B2 - 耐食性の優れた鋼および鋼管の製造方法 - Google Patents

耐食性の優れた鋼および鋼管の製造方法

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JP3265022B2 JP00292393A JP292393A JP3265022B2 JP 3265022 B2 JP3265022 B2 JP 3265022B2 JP 00292393 A JP00292393 A JP 00292393A JP 292393 A JP292393 A JP 292393A JP 3265022 B2 JP3265022 B2 JP 3265022B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐食性の優れた鋼の製造
方法に係り、さらに詳しくは、例えば自動車や船舶等の
内燃機関の排気系統において優れた耐食性を有する鋼お
よび鋼管を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車を中心とする内燃機関の排
気系統には、内面あるいは外面からの腐食を抑制するた
めに、普通鋼にアルミメッキや亜鉛メッキを施した鋼が
使用されてきた。しかし、近年では環境汚染を抑制する
目的で、排気ガスを浄化する触媒等が排気系統に装備さ
れたために、こうしたメッキ鋼材では耐食性が充分では
なくなってきた。そこで、鋼素地の耐食性向上を目的と
して、5〜10%のCrを含有させた鋼が、特開昭63
−143240号公報や特開昭63−143241号公
報で提案されている。しかし、近年の車両の使用期間お
よび保証期間の延長に伴なって、さらにCrを18%程
度まで含有させ、あるいはさらにMoを添加した高級ス
テンレス鋼が、排気系統に多く使用されている。しか
し、このような高級ステンレス鋼であっても孔食状の局
部腐食が発生する場合がある等、耐食性は必ずしも充分
ではない。また、こうした高級ステンレス鋼はCrやM
oを多量に含有するために加工性が悪く、排気系部材の
ような複雑な形状を形成するためには、製造に非常な困
難を伴い、製造工程が著しく複雑になるために、加工コ
ストも高くなるという難点がある。かつ、素材コストも
高い。
【0003】上記の排気系統を代表として、一般にCr
をある程度含有する鋼では環境が厳しくなると局部腐食
が発生し易く、これに対する手段として腐食に対する抵
抗を向上させるためには、さらにCrあるいはMoの含
有量を増加させるのが、極めて一般的な技術的手段であ
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした現状
に鑑みて、内燃機関の排気系統等の腐食環境に対する抵
抗が大きい鋼および鋼管を、低コストで製造する方法を
提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の目的
を達成すべく、排気系統をはじめとする腐食環境におい
て優れた耐食性を有する鋼および鋼管の製造方法を開発
するべく、種々の観点から検討してきた。まず、本発明
者らは排気系統の腐食環境について検討し、内燃機関排
気系統の腐食は、排気ガス中に含まれる塩化物、硫酸イ
オン等が80〜150℃に加熱された環境において起こ
ることを見出した。さらに、該腐食環境において耐食性
を向上させる手段を種々検討した結果、従来のステンレ
ス鋼とは全く逆に、Crを5.5〜9.9%に低減し、
Alを0.3〜3.0%添加した鋼が、排気系統をはじ
めとする腐食環境で非常に優れた耐食性を示すことを見
出した。さらに本発明者らはより優れた鋼にせんとして
検討を続けた結果、Crを5.5〜9.9%、Alを
0.3〜3.0%含有する鋼のCおよびNを低減すると
耐食性の改善と加工性の向上に効果があること、脱酸お
よび強化元素としてはSiおよびMnが適切であるこ
と、上記の鋼にCu,Mo,W,Sb,Niを単独ある
いは組み合わせて添加するとより優れた耐食性が得られ
ることを見出した。
【0006】さらに本発明者らはかかる鋼を低コストで
製造する方法について検討を続けた結果、高Cr鋼を鋼
片から帯鋼とし最終的に再結晶焼鈍するに際し、あるい
はさらに造管するに際してプロセス条件を精密に選択す
れば、かかる目的に適した鋼あるいは鋼管が得られるこ
とを見出した。
【0007】本発明はかかる知見に基づいてなされたも
のであり、その要旨とするところは以下の通りである。
すなわち、 (1)重量%で、Si:0.01%以上1.2%未満、
Mn:0.02〜2.0%、Cr:5.5〜9.9
%、 Al:0.3〜3.0%、を含有し、
C:0.02%以下、 P:0.03%
以下、S:0.01%以下、 N:0.
02%以下、に低減し、残部Feおよび不可避不純物か
らなる高Cr鋼片を、下記の工程で順次鋼板とすること
を特徴とする耐食性の優れた鋼の製造方法である。 鋼片を1150〜1300℃の温度に加熱した後に、
圧延完了温度が680℃以上として板厚1.6mm以上
6.0mm以下のホットストリップに熱間圧延し、帯鋼と
して巻き取る工程、 上記の熱延帯鋼を、累積圧下率が40%以上の冷間圧
延を加えて冷延帯鋼とする工程、 上記の冷延帯鋼を、760℃以上の温度に0.5min
以上保持する熱処理を施して再結晶させる工程、また、 (2)前記(1)項において、熱延帯鋼を冷間圧延する
前に、740℃以上の温度に0.5min 以上保持する熱
処理を施して再結晶させる耐食性の優れた鋼の製造方法
であり、 (3)前記(1)項または(2)項の発明が対象とする
高Cr鋼片において、付加成分としてさらに、重量%
で、Cu:0.05〜3.0%、 Mo:0.
05〜3.0%、W :0.05〜3.0%、
Sb:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜2.0
%、の1種または2種以上を含有する鋼の製造方法であ
り、 (4)前記(1)項乃至(3)項のそれぞれの発明が対
象とする高Cr鋼片において、付加成分としてさらに、
重量%で、希土類元素:0.001〜0.1%、 C
a:0.0005〜0.03%、の1種または2種を含
有する鋼の製造方法である。
【0008】さらに本発明は、 (5)重量%で、Si:0.01%以上1.2%未満、
Mn:0.02〜2.0%、Cr:5.5〜9.9
%、 Al:0.3〜3.0%、を含有し、
C:0.02%以下、 P:0.03%
以下、S:0.01%以下、 N:0.
02%以下、に低減し、残部Feおよび不可避不純物か
らなる高Cr鋼片を、下記の工程で順次鋼管とすること
を特徴とする耐食性の優れた鋼管の製造方法、にある。
【0009】鋼片を1150〜1300℃の温度に加
熱した後に、圧延完了温度が680℃以上として板厚
1.6mm以上6.0mm以下のホットストリップに熱間圧
延し、帯鋼として巻き取る工程、 上記の熱延帯鋼を、累積圧下率が40%以上の冷間圧
延を加えて冷延帯鋼とする工程、 上記の冷延帯鋼を、760℃以上の温度に0.5min
以上保持する熱処理を施して再結晶させる工程、 上記の帯鋼を所定の幅に切断した後、ロール成形によ
って連続的に円筒状に成形しながら、鋼帯両端を電気抵
抗溶接によって溶接して電縫鋼管として造管する工程。
また、 (6)前記(5)の発明におけるの工程によって再結
晶させた帯鋼の段階から電縫鋼管として造管されるまで
に鋼に付加される全歪量εを、帯鋼の板厚t(mm)、電縫
鋼管の最終外径D(mm)に対して、ε≦t/D+0.06
とする耐食性の優れた鋼管の製造方法であり、 (7)前記(5)あるいは(6)項において、熱延帯鋼
を冷間圧延する前に、740℃以上の温度に0.5min
以上保持する熱処理を施して再結晶させる、耐食性の優
れた鋼管の製造方法であり、 (8)前記(5),(6)あるいは(7)項の発明にお
いて、電縫鋼管として造管し最終外径にある鋼管を、7
60℃以上の温度に1min 以上保持する熱処理を施して
再結晶させる、耐食性の優れた鋼管の製造方法であり、 (9)前記(5),(6),(7)あるいは(8)項の
発明が対象とする、高Cr鋼片において、付加成分とし
てさらに、重量%で、Cu:0.05〜3.0%、
Mo:0.05〜3.0%、W :0.05〜
3.0%、 Sb:0.01〜0.5%、N
i:0.01〜2.0%、の1種または2種以上を含有
する耐食性の優れた鋼管の製造方法であり、 (10)前記(5),(6),(7),(8)あるいは
(9)項の発明が対象とする高Cr鋼片において、付加
成分としてさらに、重量%で、希土類元素:0.001
〜0.1%、 Ca:0.0005〜0.03%、の1
種または2種を含有する耐食性の優れた鋼管の製造方法
にある。
【0010】
【作用】まず、本発明方法が対象とする高Cr鋼片にお
いて、各成分の範囲を限定した理由を述べる。 Si:Siは、Crを5.5%以上含有する鋼に脱酸剤
および強化元素としての添加が有効であるが、含有量が
0.01%未満ではその脱酸効果が充分ではなく、1.
2%以上を含有するともはやその効果は飽和している上
に加工性を低下させるので、含有量範囲を0.01%以
上1.2%未満に限定する。
【0011】Mn:Mnは、鋼の脱酸剤として必要で、
0.02%以上を含有させる必要があるが、2.0%を
超えて含有させてもその効果はもはや飽和しているばか
りか、過剰にMnを含有させると加工性が低下するの
で、上限含有量は2.0%とする。
【0012】Cr:Crは、耐食性を確保するために
5.5%以上を含有させることが必要であるが、9.9
%を超えて含有させてもいたずらにコストを増すばかり
か、加工性が低下するので、上限含有量は9.9%とす
る。
【0013】Al:Alは、耐食性を確保するためにC
rと並んで重要な元素であって、前述の通りAlの含有
量が0.3%未満では孔食の発生を抑制する効果が充分
ではなく、一方、3.0%を超えて添加するとその効果
は飽和するのに対して加工性を低下させるものであるか
ら、Alの含有量は0.3%以上3.0%以下に限定す
る。
【0014】C,N:CおよびNは、鋼板の加工性を低
下させる上に、CはCrと炭化物を生成して耐食性を低
下させるので、またNは靭性を低下させるので、Cおよ
びN量な少ない方が望ましく、上限含有量はいずれも
0.02%とし、いずれも少ないほど好ましい。
【0015】P:Pは、多量に存在すると靭性を低下さ
せるので少ない方が望ましく、上限含有量は0.03%
とする。 S:Sも、多量に存在すると耐孔食性を低下させるので
少ない方が望ましく、上限含有量は0.01%とする。
【0016】以上が本発明方法が製造の対象とする耐食
性に優れた鋼の基本的成分であるが、本発明においては
必要に応じてさらに以下の元素の1種または2種以上を
添加して、特性を一段と向上させた鋼も対象としてい
る。 Cu:Cuは、Crを5.5%以上含有しAlを0.3
%以上含有する鋼に0.05%以上添加すると、全面腐
食に対する抵抗を向上させる効果があるが、3.0%を
超えて添加しても効果が飽和するばかりか、熱間加工性
を低下させるので、上限含有量は3.0%とする。
【0017】Mo:Moは、Crを5.5%以上含有し
Alを0.3%以上含有する鋼に0.05%以上添加す
ると、孔食の発生と成長を抑制する効果があるが、3.
0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか加工性
を低下させるので、上限含有量は3.0%とする。
【0018】W:Wも、Crを5.5%以上含有しAl
を0.3%以上含有する鋼に0.05%以上添加する
と、孔食の発生と成長を抑制する効果があるが、3.0
%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか加工性を
低下させるので、上限含有量は3.0%とする。
【0019】Sb:Sbも、Crを5.5%以上含有し
Alを0.3%以上含有する鋼に0.01%以上添加す
ると、孔食および全面腐食に対する抵抗を向上させる効
果があるが、0.5%を超えて添加すると熱間加工性を
低下させるので、上限含有量は0.5%とする。
【0020】Ni:Niは、Crを5.5%以上含有し
Alを0.3%以上含有する鋼に0.01%以上添加す
ると孔食を抑制する効果があるが、2.0%を超えて添
加しても効果が飽和するばかりか熱間加工性を低下さ
せ、またコストが上昇するので、上限含有量は2.0%
とする。
【0021】希土類元素(REM)、Ca:希土類元素
およびCaは、熱間加工性の向上と耐孔食性の改善に効
果のある元素であるが、添加量が希土類元素では0.0
01%未満、Caでは0.0005%未満ではその効果
が充分ではなく、希土類元素では0.1%を超えて、C
aでは0.03%を超えて添加すると、それぞれ粗大な
非金属介在物を生成して逆に熱間加工性や耐孔食性を劣
化させるので、上限含有量は希土類元素では0.1%、
Caでは0.03%とする。なお、本発明において希土
類元素とは、原子番号が57〜71番および89〜10
3番の元素およびYを指す。
【0022】本発明方法が対象とする鋼および鋼管にお
いては、上記の成分の他にスクラップ等からの混入不純
物として、あるいは靭性や加工性などを調整する目的
で、Nb,V,Ti,Zr,Ta,Hf,Bなどを含有
することができ、いずれも本発明の対象とするところで
あって、目的に応じて添加することができる。
【0023】次に、本発明の工程とその限定理由を説明
する。 鋼片加熱温度:鋼片をその中心部まで均一に加熱して、
熱間圧延における熱間加工性を確保する必要がある。し
かし、1300℃を超えて加熱すると、スラブの溶け落
ちが発生したり、酸化スケール生成による材料損失が著
しくなって、歩留が低下するため好ましくない。一方、
加熱温度が1150℃未満では、熱間圧延における変形
抵抗が大きくなりすぎる。従って、鋼片加熱温度は11
50〜1300℃とする。
【0024】熱間圧延:熱間圧延は通常の板圧延プロセ
スを用いることができる。後続の冷間圧延での生産性を
確保しつつ板としての特性を満足させるためには、熱間
圧延後の板厚は1.6mm以上6.0mm以下とすることが
適切である。また、後続の冷間圧延における生産性の観
点から、板の形状はホットコイルとする。
【0025】圧延完了温度:熱延後の延性を確保する目
的から、熱間圧延の終了温度は680℃以上とする必要
がある。
【0026】冷間圧延:本発明方法による鋼板を使用し
て部品や鋼管等を製作するに際して、良好な加工性を確
保するためには、冷間圧延においては累積圧下率を40
%以上とする必要がある。この累積圧下率を満足すれ
ば、冷間圧延としては通常の圧延プロセスを適用するこ
とができ、最終製品の板厚に応じた冷間圧延前板厚を選
定することが可能である。
【0027】熱処理:本発明方法による鋼板を使用して
部品や鋼管等を製作するに際して、良好な加工性を確保
するためには、冷間圧延後の鋼板を熱処理するに際し
て、760℃以上の温度に0.5min 以上保持する必要
があるが、これは保持温度が760℃未満では、再結晶
させるために非常な長時間を要することから、工業的に
は適用し難いためであり、保持時間が0.5min 未満で
は必要な加熱温度が高くなりすぎて、鋼板の酸化や表面
性状の低下を生ずるためである。上記の条件が満足され
ていれば、熱処理としては鋼板の連続熱処理設備、バッ
チ(ボックス)熱処理設備のいずれを使用してもよい。
【0028】鋼管への成形および電縫溶接:鋼管への成
形および電縫溶接には通常の電縫鋼管製造プロセスが適
用でき、自動車排気系用鋼管として必要な外径に応じて
所定の幅に鋼帯を切断してから、ロール成形および電縫
溶接して鋼管として造管することができる。
【0029】本発明においては必要に応じて上記の工程
に加えて、さらに次の工程を付加してもよく、その理由
は以下の通りである。
【0030】全歪量:鋼管として、曲げや拡管等に対し
て特に高い加工性が要求される場合には、冷間圧延後の
熱処理の工程において再結晶させた帯鋼の段階から、電
縫鋼管として造管されるまでに鋼に付加される全歪量ε
を極力低減することが有効である。本発明方法が対象と
するCrを低減したステンレス鋼の板厚t(mm)、電縫鋼
管の最終外径D(mm)に対して、εがt/D+0.06以
下となるように製造すれば、加工性が特に優れた鋼管が
得られる。
【0031】冷延前熱処理:本発明者らの検討によれ
ば、例えば自動車排気系用や曲げ配管用の鋼管として、
特に高い加工性が要求される場合には、熱延帯鋼を冷間
圧延する前に再結晶させておくことがさらに有効であ
る。この目的のためには、保持温度は740℃以上とす
る必要があり、保持時間は0.5min 以上とする必要が
あるが、かかる熱処理を冷延前に施しておくことによっ
て、最終製品である鋼管の段階でも特に優れた加工性が
得られるのである。上記の条件が満足されていれば、熱
処理としては鋼板の連続熱処理設備、バッチ(ボック
ス)熱処理設備のいずれを使用してもよい。
【0032】造管後熱処理:電縫鋼管としての加工性を
非常に厳しく要求される場合には、電縫鋼管として造管
し最終外径にある鋼管を焼鈍して、最終外径としての鋼
管までに導入された歪を除去することが有効であり、か
かる目的のためには保持温度は760℃以上が必要であ
り、保持時間は1min 以上が必要である。
【0033】なお、本発明方法によって製造される鋼板
の製造過程において、冷延板の表面性状や鋼管としての
所定の特性を得る目的で、鋼板の脱スケール処理や酸洗
処理を施すことは、本発明方法の本質から何ら逸脱する
ものではなく、いずれも本発明が対象とする範囲に包含
されるものであって、必要に応じて、通常の脱スケール
工程や酸洗工程を付加することができる。
【0034】本発明方法に従って製造された鋼は内燃機
関の排気系統の他、塩化物や硫酸イオン等を含有する水
溶液が高温に曝されたり、加熱・冷却が繰り返される環
境等、種々の腐食環境に適用することができる。
【0035】
【実施例】
(実施例1)以下に本発明の実施例について説明する。
表1に成分を示す鋼を溶製し、熱間圧延によって厚さ
4.0mmの帯鋼とした後、表2に示す条件でそれぞれ冷
間圧延、熱処理を施して鋼帯を製造した。なお、熱間圧
延に際して、鋼片加熱温度は1250℃とした。本発明
No.9および12では、表2に示す条件で冷間圧延前に
熱処理を施した。また、比較例No.18はSUS410
Lに相当する鋼である。
【0036】続いて、これら鋼から試験片を採取して、
常温引張試験と耐食性試験を実施した。常温引張試験は
JIS Z2201に定める13B号引張試験片を使用
して、JIS Z2241に準拠して行い、加工性の指
標として延性、即ち破断伸びを調べた。耐食性試験は、
幅50mm、長さ70mmの試験片を採取して、腐食試験に
供した。腐食試験は、硫酸イオン100ppm 、塩化物イ
オン100ppm 、重炭酸イオン500ppm をアンモニウ
ム塩として添加した水溶液50cm3 に試験片を半分まで
浸漬し、試験容器ごと130℃の雰囲気に保持して試験
溶液が完全に蒸発・揮散することを1サイクルとし、2
0サイクル繰り返す試験を実施した。これは自動車排気
系の腐食条件に相当するものである。試験後の試験片に
ついて最大孔食深さを測定し、試験結果とした。最大孔
食深さが0.2mm以下のものは◎、最大孔食深さが0.
2mmを超え0.4mm以下のものは○、最大孔食深さが
0.4mmを超え0.8mm以下のものは×、最大孔食深さ
が0.8mmを超えるものは××で表示することとして、
常温引張試験結果と併せて表2に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】表2から明らかなように、本発明方法に基
づいて成分を選択し製造条件を選定した本発明例である
No.1〜12は常温での延性に優れ、かつ厳しい腐食環
境での耐食性にも優れる。これに対して、比較例である
No.13〜16および18では、常温での破断伸びが小
さく加工性が悪いか、耐食性が不充分であり、いずれも
必要特性を満足していない。また、比較例No.17は熱
延後の延性が不足するために冷間圧延で割れを発生し、
鋼とすることができなかった。
【0040】(実施例2)表3に成分を示す鋼を溶製
し、表4に示す条件の熱間圧延によって厚さ4.0mmの
帯鋼とした後、表2に示す条件でそれぞれ冷間圧延、熱
処理を施してから、成形および電縫溶接によって表2に
示す寸法の鋼管として造管した。なお、熱間圧延に際し
て、鋼片加熱温度は1260℃とした。本発明例No.1
9および30では、表4に示す条件で冷間圧延前に熱処
理を施し、No.28では電縫鋼管の造管後に表4に示す
条件で熱処理を施した。実施例No.29〜30では、冷
延後熱処理以降電縫鋼管の造管が完了するまでに鋼に付
与される全歪量を表4に示す値に制御した。また、比較
例のうち、No.35は、従来鋼であるSUS410Lを
適用した場合である。
【0041】続いて、これら鋼管から試験片を採取し
て、常温引張試験および耐食性試験を実施した。常温引
張試験はJIS Z2201に定める12A号引張試験
片を使用して、JIS Z2241に準拠して行い、加
工性の指標として延性、即ち破断伸びを調べた。また、
耐食性試験は鋼管から幅15mm、長さ70mmの試験片を
採取して、腐食試験に供した。
【0042】腐食試験および試験後に行う孔食深さの測
定は、実施例1と同様の方法で行い、その結果を表4に
併せて示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】表4から明らかなように、本発明方法に基
づいて成分を選択し製造条件を選定した鋼管例であるN
o.19〜30は、常温での延性に優れ、かつ耐食性が
非常に優れる。これに対して、比較例であるNo.31〜
35では、常温での破断伸びが小さく加工性が悪いか、
高温強度が不充分であるか、あるいは耐食性が劣り、い
ずれも必要特性を満足していない。
【0046】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は耐食性の優
れた鋼を製造する方法を提供するものであり、産業の発
展に貢献するところ極めて大である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/60 C22C 38/60 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/10 C21D 9/08 C21D 9/46 - 9/48 C22C 38/00 - 38/60

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 Si:0.01%以上1.2%未満、 Mn:0.02〜2.0%、 Cr:5.5〜9.9%、 Al:0.3〜3.0%、 を含有し、 C:0.02%以下、 P:0.03%以下、 S:0.01%以下、 N:0.02%以下、 に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる高Cr
    鋼片を、下記の工程で順次鋼板とすることを特徴とする
    耐食性の優れた鋼の製造方法。 鋼片を1150〜1300℃の温度に加熱した後に、
    圧延完了温度が680℃以上で板厚1.6mm以上6.0
    mm以下のホットストリップに熱間圧延し、帯鋼として巻
    き取る工程、 上記の熱延帯鋼を、累積圧下率が40%以上の冷間圧
    延を加えて冷延帯鋼とする工程、 上記の冷延帯鋼を、760℃以上の温度に0.5min
    以上保持する熱処理を施して再結晶させる工程。
  2. 【請求項2】 請求項1における熱延帯鋼を、冷間圧延
    する前に740℃以上の温度に0.5min 以上保持する
    熱処理を施して再結晶させることを特徴とする耐食性の
    優れた鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1,2における高Cr鋼片が付加
    成分としてさらに、重量%で、 Cu:0.05〜3.0%、 Mo:0.05〜3.0%、 W :0.05〜3.0%、 Sb:0.01〜0.5%、 Ni:0.01〜2.0%、 の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐食
    性の優れた鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2および3における高Cr鋼
    片が付加成分としてさらに、重量%で、 希土類元素:0.001〜0.1%、 Ca:0.0005〜0.03%、 の1種または2種を含有することを特徴とする耐食性の
    優れた鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 重量%で、 Si:0.01%以上1.2%未満、 Mn:0.02〜2.0%、 Cr:5.5〜9.9%、 Al:0.3〜3.0%、 を含有し、 C:0.02%以下、 P:0.03%以下、 S:0.01%以下、 N:0.02%以下、 に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる高Cr
    鋼片を、下記の工程で順次鋼管とすることを特徴とする
    耐食性の優れた鋼管の製造方法。 鋼片を1150〜1300℃の温度に加熱した後に、
    圧延完了温度が680℃以上で板厚1.6mm以上6.0
    mm以下のホットストリップに熱間圧延し、帯鋼として巻
    き取る工程、 上記の熱延帯鋼を、累積圧下率が40%以上の冷間圧
    延を加えて冷延帯鋼とする工程、 上記の冷延帯鋼を、760℃以上の温度に0.5min
    以上保持する熱処理を施して再結晶させる工程。 上記の帯鋼を所定の幅に切断した後、ロール成形によ
    って連続的に円筒状に成形しながら、鋼帯両端を電気抵
    抗溶接によって溶接して、電縫鋼管として造管する工
    程。
  6. 【請求項6】 請求項5におけるの工程によって再結
    晶させた帯鋼の段階から電縫鋼管として造管されるまで
    に鋼に付加される全歪量εを、帯鋼の板厚t(mm)、電縫
    鋼管の最終外径D(mm)に対して、ε≦t/D+0.06
    とすることを特徴とする請求項5に記載の耐食性の優れ
    た鋼管の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5あるいは6において熱延帯鋼を
    冷間圧延する前に、740℃以上の温度に0.5min 以
    上保持する熱処理を施して再結晶させることを特徴とす
    る耐食性の優れた鋼管の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項5,6あるいは7において電縫鋼
    管として造管し最終外径にある鋼管を、760℃以上の
    温度に1min 以上保持する熱処理を施して再結晶させる
    ことを特徴とする耐食性の優れた鋼管の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項5,6,7あるいは8において高
    Cr鋼片が付加成分としてさらに、重量%で、 Cu:0.05〜3.0%、 Mo:0.05〜3.0%、 W :0.05〜3.0%、 Sb:0.01〜0.5%、 Ni:0.01〜2.0%、 の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐食
    性の優れた鋼管の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項5,6,7,8あるいは9にお
    いて、高Cr鋼片が付加成分としてさらに、重量%で、 希土類元素:0.001〜0.1%、 Ca:0.0005〜0.03%、 の1種または2種を含有することを特徴とする耐食性の
    優れた鋼管の製造方法。
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