JP3263302B2 - 伝熱管熱交換器及びその製造方法 - Google Patents

伝熱管熱交換器及びその製造方法

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JP3263302B2
JP3263302B2 JP02259696A JP2259696A JP3263302B2 JP 3263302 B2 JP3263302 B2 JP 3263302B2 JP 02259696 A JP02259696 A JP 02259696A JP 2259696 A JP2259696 A JP 2259696A JP 3263302 B2 JP3263302 B2 JP 3263302B2
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正史 川崎
保 山根
秀一 今津
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祥二 雨堤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は伝熱管熱交換器およ
びその製造方法に係わり、特に管板に炭素鋼が使用され
るとともに伝熱管にはステンレス鋼が使用され、そして
この管板と伝熱管との溶接固着が、予め管板面に施され
ている肉盛溶接層を介して行うように形成されている伝
熱管熱交換器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来一般に採用されているこの種の伝熱
管熱交換器においては、管板には炭素鋼が用いられ、ま
た伝熱管には銅系の伝熱管が用いられているが、最近に
なり、この銅系の伝熱管に替わり、耐食性などの面から
ステンレス鋼製の伝熱管が使われるようになってきてい
る。この場合、ステンレス鋼製の伝熱管を炭素鋼である
管板に直接溶接すると、耐食性や管端溶接性などの問題
があることから、一般には、予め管板の表面に肉盛溶接
を施しておき、そしてこの肉盛溶接層と伝熱管とを溶接
するようにしている。
【0003】この管板表面の肉盛溶接構造としては、管
板面に72重量%より多量のニッケルと14〜17重量
%のクロムと6〜10重量%の鉄を含有する“Incone
l”(Inco社の登録商標)を肉盛溶接することが提案さ
れている。
【0004】また、例えば特公昭60−53793号公
報では、炭素鋼製管板上に11.5〜14重量%のニッ
ケルと22〜25重量%のクロムとを含有する低炭素オ
ーステナイト系ステンレスからなる第1層とこの第1層
上に配置されている10〜12重量%のニッケルと19
〜23重量%のクロムとを含有する低炭素オーステナイ
ト系ステンレス鋼からなる第2層の、二つの層からなる
肉盛溶接層を有しており、前記第2層と17〜18.5
重量%のクロムを有する低炭素フェライト系ステンレス
鋼管とを溶接により固定しているものもある。
【0005】また特公昭60−53794号公報に開示
されているように、炭素鋼製管板上に0.045重量%
未満の炭素と0.10重量%未満の珪素と0.5重量%
未満のマンガンと0.025重量%未満の硫黄とを含有
する低炭素鋼を肉盛溶接しておき、上部の肉盛溶接層と
17〜18.5重量%のクロムを有する低炭素フェライ
ト系ステンレス鋼管とを溶接固着するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに管板表面に例えばステンレス鋼を肉盛溶接した上で
肉盛溶接層と伝熱管とを溶接するものは、肉盛溶接後の
管板および肉盛溶接層は溶接熱の影響により硬化し、か
つ組織が不均一なため残留応力が生ずる。この残留応力
は材料の性能を著しく低下させ、応力腐食割れなどを引
き起こす恐れがある。この対策として一般には残留応力
の緩和および熱影響部の軟化を目的として応力除去焼鈍
を行うようにしている。
【0007】しかしこの熱処理によって、肉盛溶接され
たステンレス鋼内に肉盛溶接時に管板より拡散した炭素
が、クロム炭化物(例えばCr23C6)となって結晶
粒界に析出する。このため、結晶粒界近傍のクロム量が
減少する。ステンレス鋼はクロム濃度が12%以下にな
ると耐食性が著しく低下するため、腐食環境に晒された
ときはこの部分が選択的に腐食される。つまりこの場合
上記の熱的影響を特に受けている伝熱管と肉盛溶接層の
溶接部、肉盛溶接層の下層外環部において粒界腐食割れ
が発生しやすくなる。
【0008】本発明はこれに鑑みなされたもので、その
目的とするところは、肉盛溶接層でのクロム炭化物の生
成を抑制し、肉盛溶接層およびその周辺、特に伝熱管と
肉盛溶接層の溶接部、肉盛溶接層の下層外環部において
生ずる腐食を低減し、伝熱管と肉盛溶接層の溶接部に粒
界腐食割れが生ずることがなく、両者が堅牢に結合さ
れ、安全性および信頼性の向上を図ることができるこの
種の伝熱管熱交換器を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、炭素
鋼にて形成された管板と、ステンレス鋼にて形成された
伝熱管とを備え、前記管板と伝熱管との結合が、管板表
面に予め肉盛溶接されている肉盛溶接層と伝熱管との溶
接結合にて形成されている伝熱管熱交換器において、前
記肉盛溶接層の溶接材にステンレス鋼を用いるととも
に、この肉盛溶接層と前記管板との間に、炭素含有率が
0.1%以下の低炭素鋼の溶接層を設けるようにし所期
の目的を達成するようにしたものである。
【0010】また、この場合前記溶接層が、肉盛溶接層
の外環部あるいは肉盛溶接層の全面に設けるようにした
ものである。また、前記肉盛溶接層の溶接材にステンレ
ス鋼を用いるとともに、この肉盛溶接層の下層外環部あ
るいは下層全面に高ニッケル合金の溶接層を設けるよう
にしものである。
【0011】また、前記肉盛溶接層の溶接材にニオブを
0.3〜1.0%含むステンレス鋼を用いるとともに、
この肉盛溶接層の下層外環部あるいは下層全面に炭素含
有率0.1%以下の低炭素鋼の溶接層を設けるようにし
たものである。また、前記肉盛溶接層の溶接材にニオブ
入りステンレス鋼を用いるとともに、この肉盛溶接層の
下層外環部あるいは下層全面に高ニッケル合金の溶接層
を設けるようにしたものである。また、前記肉盛溶接層
の溶接材に高ニッケル合金を用いるとともに、この肉盛
溶接層の下層外環部あるいは下層全面に低炭素鋼の溶接
層を設けるようにしたものである。
【0012】すなわちこのように形成された伝熱管熱交
換器であると、伝熱管溶接部の肉盛溶接層と管板の間の
層の外環部,すなわち周縁部に低炭素鋼を肉盛溶接する
ことで、これらの層の上部を含む面に伝熱管を溶接する
ために施される肉盛溶接層の炭素の量を低減できるた
め、特に肉盛溶接外周部6に生じる腐食を低減すること
ができる。
【0013】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層と管板の間の層の外環部に高ニッケル合金を肉盛溶接
することで、ニッケル合金内での炭素の拡散速度が小さ
いことからこれらの層の上部を含む面に伝熱管を溶接す
るために施される肉盛溶接層の炭素の量を低減できるた
め、特に肉盛溶接外周部に生じる腐食を低減することが
できる。
【0014】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層と管板の間の層の外環部にニオブを0.3〜1.0%
含むステンレス鋼を肉盛溶接することで、ステンレス鋼
内に拡散した炭素がクロムよりも炭素と結び付きやすい
ニオブと炭化物を形成することにより、これらの層の上
部を含む面に伝熱管を溶接するために施される肉盛溶接
層の炭素の量を低減できるため、特に肉盛溶接外周部に
生じる腐食を低減することができる。
【0015】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層と管板の間の層全面に低炭素鋼を肉盛溶接することで
これらの層の上部を含む面に伝熱管を溶接するために施
される肉盛溶接層の炭素の量を低減できるため、特に肉
盛溶接外周部や管端溶接部など腐食環境に晒される部分
に生じる腐食を低減することができる。
【0016】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層と管板の間の層全面に高ニッケル合金を肉盛溶接する
ことで、ニッケル合金内での炭素の拡散速度が小さいこ
とからこれらの層の上部を含む面に伝熱管を溶接するた
めに施される肉盛溶接層の炭素の量を低減できるため、
特に肉盛溶接外周部や管端溶接部など腐食環境に晒され
る部分に生じる腐食を低減することができる。
【0017】また本発明では、肉盛溶接層と管板の間の
層全面にニオブを0.3〜1.0%含むステンレス鋼を
肉盛溶接することで、ステンレス鋼内に拡散した炭素が
クロムよりも炭素と結び付きやすいニオブと炭化物を形
成することにより、これらの層の上部を含む面に伝熱管
を溶接するために施される肉盛溶接層の炭素の量を低減
できるため、特に肉盛溶接外周部や管端溶接部など腐食
環境に晒される部分に生じる腐食を低減することができ
る。
【0018】また本発明では、肉盛溶接層と管板の間の
層全面もしくは外環部に低炭素鋼、もしくはニオブを
0.3〜1.0%含むステンレス鋼、もしくは高ニッケ
ル合金を肉盛溶接することに加えて、さらにその上の伝
熱管溶接部の肉盛溶接層にニオブを0.3〜1.0%含
むステンレス鋼を肉盛溶接することで、この肉盛溶接層
内に拡散した炭素がクロムよりも炭素と結び付きやすい
ニオブと炭化物を形成することにより拡散する炭素の量
を低減できるため、特に肉盛溶接外周部や管端溶接部な
ど腐食環境に晒される部分に生じる腐食をさらに低減す
ることができる。
【0019】また本発明では、肉盛溶接層と管板の間の
層全面もしくは外環部に低炭素鋼、もしくはニオブを
0.3〜1.0%含むステンレス鋼、もしくは高ニッケ
ル合金を肉盛溶接することに加えて、さらにその上の伝
熱管溶接部の肉盛溶接層に高ニッケル合金を肉盛溶接す
ることで、ニッケル合金内での炭素の拡散速度が小さい
ことから拡散する炭素の量を低減できるため、特に肉盛
溶接外周部や管端溶接部など腐食環境に晒される部分に
生じる腐食をさらに低減することができるのである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下図示した実施例について本発
明を詳細に説明する。図2および図3には、原子力プラ
ントに用いられる伝熱管熱交換器の概念が断面で示され
ている。伝熱管熱交換器は、胴体2と水室1の二つの容
器が管板3により区切られた形で構成されている。胴体
2側では蒸気入口11より流入した蒸気が仕切板で支え
られた伝熱管4内を流れる給水と熱交換をし、蒸気は凝
縮しドレンとなってドレン出口13より流出する。
【0021】熱交換を行う伝熱管4は管板3を貫通した
状態で拡管、溶接されて仕切板7により胴体内で支持さ
れている。水室側での給水は給水入口9より水室1に流
入し、管板3に取り付けられた多数の伝熱管4に導か
れ、パーティションプレート14によって区切られた出
口側水室1を通り、給水出口10より流出するこの種の
伝熱管熱交換器の管板3には、前述したように通常炭素
鋼が用いられている。近年、銅系の伝熱管に替わり、耐
食性などの面からステンレス鋼製の伝熱管4が使われて
いる。しかしステンレス鋼製の伝熱管4を炭素鋼である
管板3に直接溶接すると、耐食性、管端溶接性などの問
題があるため、管板3表面にステンレス鋼を肉盛溶接し
た上で肉盛溶接層5と伝熱管4とを溶接している。
【0022】しかし肉盛溶接後の管板3および肉盛溶接
層5は溶接熱の影響により硬化し、かつ組織が不均一な
ため残留応力が生じている。これらは材料の性能を著し
く低下させ、応力腐食割れなどを引き起こす。このた
め、残留応力の緩和、熱影響部の軟化を目的として応力
除去焼鈍を行っている。しかしこの熱処理によって、肉
盛溶接されたステンレス鋼内に肉盛溶接時に管板3より
拡散した炭素が、クロム炭化物(例えばCr23C6)
となって結晶粒界に析出する。
【0023】このため、結晶粒界近傍のクロム量が減少
する。ステンレス鋼はクロム濃度が12%以下になると
耐食性が著しく低下するため、腐食環境に晒されたとき
はこの部分が選択的に腐食される。つまりこの場合上記
の熱的影響を特に受けている伝熱管4と肉盛溶接層の溶
接部、肉盛溶接層の下層外環部において粒界腐食割れが
発生しやすくなる。
【0024】これより肉盛溶接層でのクロム炭化物の生
成を抑制し、肉盛溶接層およびその境界部、周辺におい
て生ずる腐食を低減するためには、次の2つの対策が考
えられる。すなわち 1.管板から伝熱管溶接部の肉盛溶接層に拡散する炭素
の量を減らす。
【0025】2.管板から伝熱管溶接部の肉盛溶接層に
拡散した炭素がクロム炭化物を形成しないように、肉盛
溶接層にクロムよりも炭素と結び付きやすい物質(ニオ
ブなど)を含有させる。
【0026】の対策が考えられる。
【0027】図5、図6は肉盛溶接境界部を定量分析し
た結果である。図5は従来の方法、つまり炭素鋼製管板
にステンレス鋼を肉盛溶接し応力除去焼鈍を行った後の
管板と肉盛溶接層境界部の結果である。これより管板か
ら肉盛溶接層に炭素が拡散し肉盛溶接層内に炭素のピー
クが見られる。
【0028】一方図6は炭素鋼製管板とステンレス鋼製
肉盛溶接層との間に低炭素鋼製肉盛溶接層を施工した場
合の、低炭素鋼製肉盛溶接層とステンレス鋼製肉盛溶接
層の境界部の定量分析結果である。これより管板から肉
盛溶接層に拡散した炭素のピークは小さくなり、管板か
らステンレス鋼製肉盛溶接層に拡散する炭素の量が減少
していることがわかる。炭素鋼製管板とステンレス鋼製
肉盛溶接層との間の肉盛溶接層が高ニッケル合金の場合
でも、同様に管板からステンレス鋼製肉盛溶接層に拡散
する炭素の量は減少する。つまりこれらは前述した1の
方法に基づいている。
【0029】また図7は下記の腐食試験で得られた腐食
長さを示している。すなわち 1.従来の方法、つまり炭素鋼製管板にステンレス鋼を
肉盛溶接し応力除去焼鈍を行ったもの。
【0030】2.炭素鋼製管板にニオブを0.3〜1.
0%含むステンレス鋼を肉盛溶接し応力除去焼鈍を行っ
たもの。
【0031】3.炭素鋼製管板上に低炭素鋼製肉盛溶接
層を施工し、さらにその上にニオブを0.3〜1.0%
含むステンレス鋼を肉盛溶接し応力除去焼鈍を行ったも
の。
【0032】以上の3つに対して行った腐食試験で得ら
れた腐食長さを示している。
【0033】これによりニオブを0.3〜1.0%含む
ステンレス鋼を肉盛溶接することで、拡散した炭素がク
ロムよりも炭素と結び付きやすいニオブと炭化物を形成
することにより腐食を低減することができる。つまりこ
れは前記2の方法に基づいている。
【0034】以上のことに基づき本発明では、図1に示
されているように伝熱管溶接部の肉盛溶接層と管板3の
間の層の外環部15に低炭素鋼を肉盛溶接することで、
これらの層の上部を含む面に伝熱管4を溶接するために
施される肉盛溶接層5の炭素の量を低減できるため、特
に肉盛溶接外周部6に生じる腐食を低減することができ
る。
【0035】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層の外環部15に高ニッケル合金を
肉盛溶接することで、ニッケル合金内での炭素の拡散速
度が小さいことからこれらの層の上部を含む面に伝熱管
4を溶接するために施される肉盛溶接層5の炭素の量を
低減できるため、特に肉盛溶接外周部6に生じる腐食を
低減することができる。
【0036】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層の外環部15にニオブを0.3〜
1.0%含むステンレス鋼を肉盛溶接することで、ステ
ンレス鋼内に拡散した炭素がクロムよりも炭素と結び付
きやすいニオブと炭化物を形成することにより、これら
の層の上部を含む面に伝熱管4を溶接するために施され
る肉盛溶接層5の炭素の量を低減できるため、特に肉盛
溶接外周部6に生じる腐食を低減することができる。
【0037】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層全面16に低炭素鋼を肉盛溶接す
ることでこれらの層の上部を含む面に伝熱管4を溶接す
るために施される肉盛溶接層5の炭素の量を低減できる
ため、特に肉盛溶接外周部6や管端溶接部12など腐食
環境に晒される部分に生じる腐食を低減することができ
る。
【0038】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層全面16に高ニッケル合金を肉盛
溶接することで、ニッケル合金内での炭素の拡散速度が
小さいことからこれらの層の上部を含む面に伝熱管4を
溶接するために施される肉盛溶接層5の炭素の量を低減
できるため、特に肉盛溶接外周部や管端溶接部12など
腐食環境に晒される部分に生じる腐食を低減することが
できる。
【0039】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層全面16にニオブを0.3〜1.
0%含むステンレス鋼を肉盛溶接することで、ステンレ
ス鋼内に拡散した炭素がクロムよりも炭素と結び付きや
すいニオブと炭化物を形成することにより、これらの層
の上部を含む面に伝熱管4を溶接するために施される肉
盛溶接層5の炭素の量を低減できるため、特に肉盛溶接
外周部6や管端溶接部12など腐食環境に晒される部分
に生じる腐食を低減することができる。
【0040】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層全面16もしくは外環部15に低
炭素鋼、もしくはニオブを0.3〜1.0%含むステン
レス鋼、もしくは高ニッケル合金を肉盛溶接することに
加えて、さらにその上の伝熱管溶接部の肉盛溶接層5に
ニオブを0.3〜1.0%含むステンレス鋼を肉盛溶接
することで、この肉盛溶接層内に拡散した炭素がクロム
よりも炭素と結び付きやすいニオブと炭化物を形成する
ことにより拡散する炭素の量を低減できるため、特に肉
盛溶接外周部6や管端溶接部12など腐食環境に晒され
る部分に生じる腐食をさらに低減することができる。
【0041】また本発明では、伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5と管板3の間の層全面16もしくは外環部15に低
炭素鋼、もしくはニオブを0.3〜1.0%含むステン
レス鋼、もしくは高ニッケル合金を肉盛溶接することに
加えて、さらにその上の伝熱管溶接部の肉盛溶接層に高
ニッケル合金を肉盛溶接することで、ニッケル合金内で
の炭素の拡散速度が小さいことから拡散する炭素の量を
低減できるため、特に肉盛溶接外周部6や管端溶接部1
2など腐食環境に晒される部分に生じる腐食をさらに低
減することができる。
【0042】また管板3の外郭に取り付けられているパ
ーティションプレート14は定検時内部点検のために取
り外しその後溶接により再取り付けするので、取付部周
辺で熱的影響によりクロム欠乏層が発生する割合が高
く、また残留応力が高いため腐食の可能性が特に高い。
【0043】この管板3外郭のパーティションプレート
14取付部周辺の腐食を低減するために、本発明では伝
熱管溶接部の肉盛溶接層5と管板3の間の層全面16も
しくは外環部15に低炭素鋼、もしくはニオブを0.3
〜1.0%含むステンレス鋼、もしくは高ニッケル合金
を肉盛溶接した。これによりその上の伝熱管溶接部の肉
盛溶接層5に拡散する炭素の量を軽減でき、腐食を低減
することができる。
【0044】またその上の伝熱管溶接部の肉盛溶接層5
にニオブを0.3〜1.0%含むステンレス鋼もしくは
高ニッケル合金を肉盛溶接することで、肉盛溶接層5内
に拡散する炭素により生成されるクロム炭化物の量をさ
らに軽減することにより腐食を低減することができる。
【0045】またこの伝熱管熱交換器の給水は、導電率
および溶存酸素を制限した水室管理が行われている。し
かし、腐食環境に晒されている伝熱管溶接部の肉盛溶接
層5表面に長時間の運転により不溶性皮膜が堆積し、こ
れによりすき間腐食が生じクロム欠乏層に沿って腐食が
発生する危険性がある。本発明は不溶性皮膜が堆積する
可能性が特にある伝熱管溶接部の肉盛溶接層5にニオブ
を0.3〜1.0%含むステンレス鋼もしくは高ニッケ
ル合金を肉盛溶接することで、肉盛溶接層5内に拡散す
る炭素により生成されるクロム炭化物の量をさらに軽減
することにより腐食を低減することができる。
【0046】また伝熱管溶接部の肉盛溶接層5と管板3
の間の層全面16もしくは外環部15に低炭素鋼、もし
くはニオブを0.3〜1.0%含むステンレス鋼、もし
くは高ニッケル合金を肉盛溶接した。これによりその上
の伝熱管溶接部の肉盛溶接層5に拡散する炭素の量を軽
減でき、腐食をさらに低減することができる。
【0047】本発明はこの可能性を低減でき、安全性、
信頼性を向上できる。これらは原子力プラントでの機器
に特に要求されているものである。
【0048】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明によれ
ば、肉盛溶接層でのクロム炭化物の生成を抑制し、肉盛
溶接層およびその周辺、特に伝熱管と肉盛溶接層の溶接
部、肉盛溶接層の下層外環部において生ずる腐食を低減
し、伝熱管と肉盛溶接層の溶接部に粒界腐食割れが生ず
ることがなく、両者が堅牢に結合され、安全性および信
頼性の向上を図ることができるこの種の伝熱管熱交換器
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の伝熱管熱交換器の伝熱管結合部の一実
施例を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の伝熱管熱交換器の一実施例を示す縦断
側面図である。
【図3】本発明の伝熱管熱交換器の水室構成を示す縦断
側面図である。
【図4】伝熱管熱交換器の伝熱管結合部の肉盛溶接詳細
図である。
【図5】従来の伝熱管結合部の肉盛溶接境界部の定量分
析図である。
【図6】本発明の伝熱管結合部の肉盛溶接境界部の定量
分析図である。
【図7】伝熱管結合部の腐食試験で得られた腐食特性図
である。
【符号の説明】
1…水室、2…胴体、3…管板、4…伝熱管、5…肉盛
溶接層、6…肉盛溶接外周部、9…給水入口、10…給
水出口、11…蒸気入口、12…管端溶接部、13…ド
レン出口、14…パーティションプレート、15…肉盛
溶接層下外環部、16…肉盛溶接層下全面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F28F 21/08 F28F 21/08 F (72)発明者 原 孝司 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社日立製作所日立工場内 (72)発明者 雨堤 祥二 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社日立製作所日立工場内 (72)発明者 相原 剛 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社日立製作所日立工場内 (56)参考文献 特開 昭53−67649(JP,A) 特開 昭58−128277(JP,A) 特開 昭54−102261(JP,A) 特開 昭61−266188(JP,A) 特開 平8−243753(JP,A) 特開 昭52−119454(JP,A) 特開 平2−200394(JP,A) 特開 昭60−133975(JP,A) 特公 昭59−6744(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/00 B23K 9/028 B23K 9/04 B23K 31/00 B23K 35/30 F28F 21/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素鋼にて形成された管板と、ステンレ
    ス鋼にて形成された伝熱管とを備え、前記管板と伝熱管
    との結合が、管板表面に予め肉盛溶接されている肉盛溶
    接層と伝熱管との溶接結合にて形成されている伝熱管熱
    交換器において、 前記肉盛溶接層の溶接材に高ニッケル合金を用いるとと
    もに、この肉盛溶接層の下層外環部にニオブを0.3〜
    1.0%含むステンレス鋼の溶接層を設けるようにした
    ことを特徴とする伝熱管熱交換器。
  2. 【請求項2】 炭素鋼にて形成された管板と、ステンレ
    ス鋼にて形成された伝熱管とを備え、前記管板と伝熱管
    との結合が、管板表面に予め肉盛溶接されている肉盛溶
    接層と伝熱管との溶接結合にて形成されている伝熱管熱
    交換器において、 前記肉盛溶接層の溶接材にステンレス鋼を用いるととも
    に、この肉盛溶接層の下層全面にニオブを0.3〜1.
    0%含むステンレス鋼の溶接層を設けるようにしたこと
    を特徴とする伝熱管熱交換器
  3. 【請求項3】 炭素鋼にて形成された管板と、ステンレ
    ス鋼にて形成された伝熱管とを備え、前記管板と伝熱管
    との結合が、管板表面に予め肉盛溶接されている肉盛溶
    接層と伝熱管との溶接結合にて形成されている伝熱管熱
    交換器において、 前記肉盛溶接層の溶接材に高ニッケル合金を用いるとと
    もに、この肉盛溶接層の下層全面にニオブを0.3〜
    1.0%含むステンレス鋼の溶接層を設けるようにした
    ことを特徴とする伝熱管熱交換器。
  4. 【請求項4】 管板に炭素鋼を使用し、かつ伝熱管にス
    テンレス鋼を使用し、両者の固定方法として管板に肉盛
    溶接を施し、両者を溶接する場合、伝熱管溶接部の肉盛
    溶接層の下層外環部若しくは全面にニオブを0.3〜
    1.0%含むステンレス鋼を溶接し、かつ、その上の伝
    熱管溶接部の肉盛溶接層にステンレス鋼を施工するよう
    にしたことを特徴とする伝熱管熱交換器の製造方法。
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