JPS6142155B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 原子炉、化学機械等のプラントの配管にはステ
ンレス鋼管が使用され、管中は腐食性の静止また
は動作流体で充填されるが、本発明はかかる用途
に使用されるステンレス鋼管の溶接継手方法に関
する。

配管溶接継手には例えば直管同志の継手あるい
はエルボと直管の継手などがあり、従来は連結し
ようとする管端のそれぞれに開先を設け、これを
突合わせて溶接していた。しかしながら単に突合
せ溶接するのみでは溶接熱により熱影響部は鋭敏
化して応力腐食割れ感受性が高くなり、とくに
SUS304ステンレス鋼管の溶接部分は酸素イオ
ン、塩素イオンを含む高温高圧水腐食に対して敏
感であり、原子炉配管において応力腐食割れの事
例が報告されている。実際の機器においては溶接
後に溶体化処理や残留応力除去処理その他の防食
処理を施すことは困難な場合が多い。

引張応力が作用している状態で硫化物を含む腐
食雰囲気に置かれた時に、同応力が鋼の降伏点以
下であつても、所謂硫化物応力腐食割れが生ずる
ことのために、硫化物腐食割れ感受性の低い金属
で溶接部表面を肉盛溶接によつて覆うことなどは
知られている。

本発明は、溶接後に溶体化処理や残留応力除去
処理などの処置を特に必要とすることなしに応力
腐食割れを防止することの出来るステンレス鋼管
の溶接継手方法を提供することを目的とする。

原子炉の炉心冷却系あるいは再循環系に使用さ
れるSUS304ステンレス鋼管の溶接部は特に応力
腐食割れ防止対策が必要である。この溶接部の応
力腐食割れ発生は、溶接熱影響部の冶金的鋭敏化
および溶接残留応力、管中の高温高圧水、熱変形
などによる高い引張応力の発生が大きな要因とな
つており、本発明は、応力腐食割れを鋭敏化部の
隔絶によつて防止しようとするものである。

本発明は、ステンレス鋼管の連結部の管端部分
でその内周面に予め前記鋼管より応力腐食割れ感
受性の低い耐食性金属である低炭素オーステナイ
ト系ステンレス鋼によつて肉盛溶接し、しかる後
に肉盛部を溶体化処理し、かかる状態になつた管
の端面を前記耐食性金属によつて突合せ溶接する
ことによつて溶接部の応力腐食割れを防止したス
テンレス鋼管の溶接継手方法にある。前記肉盛溶
接を行なうに当つては、当該内周面の肉を取り除
き、形成された空間部に肉盛することが出来る。
このようにすることによつて管中の流体が乱れを
起さず円滑に流れ、腐食割れを防止するのに有効
である。

本発明は耐応力腐食割れ性に優れた溶接継手が
得られるものである。即ち、鋼管の炭素量より低
い炭素量を有する低炭素オーステナイト系ステン
レス鋼によつて管内面の端部を肉盛溶接した後、
少なくともその溶接部の溶接熱影響部を溶体化処
理し、次いで前述と同様に低炭素オーステナイト
系ステンレス鋼で突合せ溶接することにより突合
せ溶接による内面部の肉盛溶接部への影響が少な
いので、耐応力腐食割れ性が優れている。突合せ
溶接における溶接金属が母材と同じ炭素量を有す
ると突合せ溶接によつて肉盛溶接部への炭素の希
釈が起り、炭素量の増加が生じるとともに突合せ
溶接による熱影響による影響を受けて溶接熱影響
と同様な現象が起り応力腐食割れを生じる可能性
がある。従つて、肉盛溶接及び突合せ溶接のいず
れも低炭素オーステナイト系ステンレス鋼にて溶
接する必要がある。

ステンレス鋼配管として使用される材質として
は、SUS304の他にSUS304L、321、316、316L、
309、310、347、329などがあり、本発明はこれら
の鋼管に対し適用可能である。

実施例 １ SUS304ステンレス鋼管同志をそのまま本発明
の方法によつて溶接する方法について説明する。

本発明の溶接は直管同志のほか容器のノズルと
管の連結部その他の配管溶接継手に適用され得
る。

SUS304ステンレス鋼管に、予め低炭素ステン
レス鋼により連結部の管端から所定距離まで内周
面全面に所定の厚さの肉盛り部が設けられる。こ
の肉盛り部には鋼管より応力腐食割れ感受性の低
い前述の304L又は316Lなどの耐食性金属である
低炭素オーステナイト系ステンレス鋼が選定され
る。この肉盛溶接を行つた後、肉盛溶接による鋭
敏化部を溶体化処理し、次いで所定形状の開先が
形成される。

以上のような開先が施された管端同志を突合
せ、前述と同様に低炭素ステンレス鋼による溶接
によつて連結し、管継手を得る。このようにして
なる管継手によれば、突合せ溶接部を形成するに
当つて発生した熱影響部近傍の冶金的鋭敏化部は
耐応力腐食性の高い肉盛り金属に覆われることに
なつて冶金的鋭敏化部と管内流体との接触が防止
される。その結果、応力腐食割れが防止されるに
十分な機能を備えていることになる。

このように、この肉盛り溶接は配管として組立
てる溶接以前において行なわれるから肉盛り溶接
後直ちに溶体化処理をして鋭敏化部を元に戻すこ
とが可能であり、顕著に、溶接部に応力腐食割れ
が防止される。

実施例 ２ 本実施例は肉盛り溶接の表面形状としてその止
端部の形状を滑らかに切削仕上げ加工または研摩
仕上げ加工した後、溶体化処理するものである。
その他は実施例１と同じである。

これにより肉盛り部の表面の凸凹がなくなると
ともに止端部の形状不連続が向上するところか
ら、肉盛り止端部の応力集中が緩和され、その結
果、応力腐食割れ防止により効果的である。

実施例 ３ 本実施例は、肉盛り溶接に必要な厚さだけ管内
面を加工（肉の取除き）して後、その部分に肉盛
溶接を行い、溶体化処理するものである。

その他は実施例１と同じである。

この方法により、特に肉盛り溶接の止端部は完
全に平滑となり応力集中は起らなくなる。肉盛り
止端部の平滑化によつて、管中の流体が流動する
際には流れは乱れることなく円滑に流動できるこ
とになる。

本発明によれば、極めて簡素な方法によつて、
管継手の鋭敏化部に鋼管より応力腐食割れ感受性
の低い耐食性金属の肉盛り溶接を行うとともに、
同様に耐食性金属によつて突合せ溶接することに
よつて、ステンレス鋼管の溶接部の応力腐食割れ
を防止することができる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ オーステナイト系ステンレス鋼管の突合せ溶
   接方法において、前記鋼管の内周面で且少なくと
   も前記突合せ溶接による熱影響を受けて炭化物が
   析出する部分を、予め前記鋼管より応力腐食割れ
   感受性の低い低炭素オーステナイト系ステンレス
   鋼によつて肉盛溶接する工程、該肉盛溶接後少な
   くとも該肉盛溶接した部分の前記鋼管を溶体化処
   理する工程、該溶体化処理後前記肉盛溶接した部
   分の前記鋼管を前記低炭素オーステナイト系ステ
   ンレス鋼によつて突合せ溶接する工程を包含する
   ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼
   管の溶接継手方法。