JP3233830B2 - スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法 - Google Patents

スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法

Info

Publication number
JP3233830B2
JP3233830B2 JP23570195A JP23570195A JP3233830B2 JP 3233830 B2 JP3233830 B2 JP 3233830B2 JP 23570195 A JP23570195 A JP 23570195A JP 23570195 A JP23570195 A JP 23570195A JP 3233830 B2 JP3233830 B2 JP 3233830B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strength
delayed fracture
steel
fracture characteristics
steel rod
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP23570195A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0978195A (ja
Inventor
敏三 樽井
道昭 館山
真吾 山崎
稔彦 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP23570195A priority Critical patent/JP3233830B2/ja
Publication of JPH0978195A publication Critical patent/JPH0978195A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3233830B2 publication Critical patent/JP3233830B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポール、パイルお
よび建築、橋梁等のプレストレストコンクリート構造物
の補強材として広く使われているPC鋼棒に関わるもの
であり、特に強度が1300MPa以上である遅れ破壊
特性の優れた高強度PC鋼棒およびその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】ポール、パイルおよび建築、橋梁等のプ
レストレストコンクリート構造物の補強材として広く使
われているPC鋼材は、通常、JIS G 3536に
規定されているPC鋼線及びPC鋼より線、JIS G
3109に規定されているPC鋼棒が使われている。
PC鋼線に用いられる材料はJIS G 3502に適
合したピアノ線材であり、パテンティング処理をした
後、伸線加工することにより製造される。
【0003】一方、PC鋼棒は、例えば特公平5−41
684号公報に記載されているように、C量が0.25
〜0.35%の中炭素鋼を用いて焼入れ・焼戻し処理を
することによって製造されている。PC鋼線の強度はP
C鋼棒に比べ高いものの、C含有量が高いためにスポッ
ト溶接ができないという欠点がある。
【0004】これに対して、PC鋼棒のスポット溶接性
はPC鋼線に比べ良好であるが、「プレストレストコン
クリート設計施工規準・同解説」(日本建築学会編集、
丸善)の43〜45頁に記載されているように、強度が
1275MPa(130kgf/mm2 )を超えるような高強
度PC鋼棒は、PC鋼線に比べて遅れ破壊特性が劣って
いる。また、特公平5−59967号公報に記載されて
いるように、スポット溶接部は急冷されるためマルテン
サイトを主体とした組織となり、スポット溶接部で遅れ
破壊が発生しやすくなるという問題点がある。
【0005】PC鋼棒の遅れ破壊特性を向上させる従来
の知見として、例えば、特公平5−59967号公報で
は、P、S含有量を低減することが有効であると提案し
ている。確かに、低P、低S化は遅れ破壊に対して有効
であるが、現行のPC鋼棒のP、S含有量はいずれも既
に0.01%前後となっており、JIS G 3109
で規定されている量より低いレベルにあるのが実態であ
る。P、S含有量を更に低減化することは可能である
が、製造コストが高くなる。
【0006】また、特公平5−41684号公報では、
Si、Mn含有量を規制するとともに焼入れ処理後、焼
戻し工程中で曲げ加工または引き抜き加工を施すことを
提案している。さらに、特開平5−7963号公報で
は、PC鋼棒と鉄線とのスポット溶接部周辺に樹脂被覆
層を設けて遅れ破壊に対する感受性を低下させることが
提案されている。しかしながら、いずれの提案も本発明
者らの試験では、大幅な遅れ破壊特性の改善には至って
いない。以上のように、従来の技術では、遅れ破壊特性
を抜本的に向上させた高強度のPC鋼棒を製造すること
には限界があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如き実
状に鑑みなされたものであって、遅れ破壊特性の良好な
強度が1300MPa以上の高強度のPC鋼棒を実現す
るとともにその製造方法を提供することを目的とするも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、まず焼入
れ・焼戻し処理によって製造した種々の強度レベルのP
C鋼棒を用いて、遅れ破壊挙動を詳細に解析した。遅れ
破壊は鋼材中の水素に起因して発生していることは既に
明らかである。そこで、遅れ破壊特性について、遅れ破
壊が発生しない「限界拡散性水素量」を求めることによ
り評価した。
【0009】この方法は、電解水素チャージにより種々
のレベルの拡散性水素量を含有させた後、遅れ破壊試験
中に試料から大気中に水素が抜けることを防止するため
にCdめっきを施し、その後、大気中で所定の荷重を負
荷し、遅れ破壊が発生しなくなる拡散性水素量を評価す
るものである。
【0010】図1に拡散性水素量と遅れ破壊に至るまで
の破断時間の関係について解析した一例を示す。試料中
に含まれる拡散性水素量が少なくなるほど遅れ破壊に至
るまでの時間が長くなり、拡散性水素量がある値以下で
は遅れ破壊が発生しなくなる。この水素量を「限界拡散
性水素量」と定義する。
【0011】限界拡散性水素量が高いほど鋼材の耐遅れ
破壊特性は良好であり、鋼材の成分、熱処理等の製造条
件によって決まる鋼材固有の値である。なお、試料中の
拡散性水素量はガスクロマトグラフで容易に測定するこ
とができる。
【0012】そこで、高強度PC鋼棒の限界拡散性水素
量を増加させる手段、即ち遅れ破壊特性を上げるべく、
オーステナイト結晶粒度、鋼材成分、熱処理条件の影響
等について検討を重ねた。この結果、上記の要因のいず
れを大きく変化させても、遅れ破壊特性は大幅に向上で
きないことがわかった。
【0013】遅れ破壊が旧オーステナイト粒界に沿った
粒界割れであることから、遅れ破壊特性の大幅な向上を
達成するためには、粒界割れの発生を防止することが重
要であるとの結論に達した。
【0014】オーステナイト粒界割れを防止する手段に
ついて、種々検討を重ねた結果、焼戻しマルテンサイト
と粒界フェライトからなる組織を形成させれば限界水素
量が高く、さらに、PC鋼棒の表層から軸中心方向に少
なくても半径の10%にわたる領域において、オーステ
ナイト粒の長さと幅の比であるアスペクト比(オーステ
ナイト粒の長径/短径)が1.2以上である組織を形成
させれば、1300MPaを超えるような高強度域でも
オーステナイト粒界割れを防止できることを発見した。
【0015】即ち、オーステナイト粒をPC鋼棒の圧延
方向に伸長させ、アスペクトを1.2以上にした焼戻し
マルテンサイトと粒界フェライトからなる組織の鋼は、
破壊形態が粒内割れになるため、限界拡散性水素量が大
幅に増加し、耐遅れ破壊特性が格段に向上すると言う全
く新たな知見を見出したのである。
【0016】オーステナイト粒を伸長化させる方法とし
て、熱間圧延温度と圧下率の最適な熱間圧延条件を選択
することによって、アスペクト比を1.2以上にさせる
ことが可能であることを明らかにした。さらに、粒界フ
ェライトの厚みと遅れ破壊特性の関係を詳細に解析し、
その最適な条件を明確にするとともに、その製造条件を
確立した。
【0017】また、熱間圧延後に水冷することによって
マルテンサイト組織にしたPC鋼棒の焼戻し処理工程に
おいて、焼戻し温度への加熱速度を増加させると同じオ
ーステナイト粒内割れでも限界拡散性水素量が向上し、
遅れ破壊特性が格段に向上することを見い出した。
【0018】以上の検討結果に基づき、鋼材組成、組織
形態、熱間圧延条件、熱処理条件を最適に選択すれば、
遅れ破壊特性に優れた高強度PC鋼棒を実現できるとい
う結論に達し、本発明をなしたものである。
【0019】本発明は以上の知見に基づいてなされたも
のであって、その要旨とするところは、次の通りであ
る。 (1)重量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.0
5〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、Al:0.0
05〜0.1%を含有するか、あるいは更にCr:0.
05〜2.0%、Mo:0.05〜1.0%、Ni:
0.05〜5.0%、Cu:0.05〜1.0%、V:
0.05〜0.3%、Nb:0.005〜0.1%、T
a:0.005〜0.5%、W:0.05〜0.5%、
Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜
0.0050%の1種または2種以上を含むとともに残
部はFe及び不可避的不純物よりなる鋼において、焼戻
しマルテンサイトと厚みが0.2〜10μmの粒界フェ
ライト組織からなり、且つ少なくても表層から0.1R
(R:PC鋼棒の半径)の領域で旧オーステナイト粒の
長さと幅の比が1.2以上であり、さらに限界拡散性水
素量が1.08ppm以上で、かつ引張強さが1300
MPa以上であることを特徴とするスポット溶接部の
れ破壊特性の優れた高強度PC鋼棒。
【0020】(2) 上記化学成分を有する鋼を熱間圧
延するに際して、少なくても700〜900℃の温度範
囲で総圧下率が20%以上の熱間圧延を行う工程を経た
後、Ar3 〜Ar1 の温度範囲で2〜100秒保持しオ
ーステナイト粒界にフェライトを析出させ、この後水冷
することにより残部をマルテンサイトにし、引き続き1
0℃/秒以上の加熱速度で250〜550℃の温度範囲
に加熱し焼き戻すことを特徴とするスポット溶接部の
れ破壊特性の優れた高強度PC鋼棒の製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】まず、本発明の対象とする鋼の成
分の限定理由について述べる。 C:CはPCの鋼棒の強度を確保する上で必須の元素で
あるが、0.2%未満では所要の強度が得られず、一方
0.6%を超えるとスポット溶接性が著しく劣化するた
め、0.2〜0.6%の範囲に制限した。
【0022】Si:Siはリラクゼーション特性を向上
させるとともに固溶体硬化作用によって強度を高める作
用がある。0.05%未満では前記作用が発揮できず、
一方、2%を超えても添加量に見合う効果が期待できな
いため、0.05〜2.0%の範囲に制限した。
【0023】Mn:Mnは脱酸、脱硫のために必要であ
るばかりでなく、マルテンサイト組織を得るための焼入
性を高めるために有効な元素であるが、0.2%未満で
は上記の効果が得られず、一方2.0%を超えるとスポ
ット溶接性が悪化するために、0.2〜2.0%の範囲
に制限した。
【0024】Al:Alは脱酸および熱処理時において
AlNを形成することによりオーステナイト粒の粗大化
を防止する効果とともにNを固定し焼入性および遅れ破
壊特性の向上に有効な固溶Bを確保する効果も有してい
るが、0.005%未満ではこれらの効果が発揮され
ず、0.1%を超えても効果が飽和するため0.005
〜0.1%の範囲に限定した。
【0025】以上が本発明の対象とする鋼の基本成分で
あるが、本発明においては、さらにこの鋼にCr:0.
05〜2.0%、Mo:0.05〜1.0%、Ni:
0.05〜5.0%、Cu:0.05〜1.0%、V:
0.05〜0.3%、Nb:0.005〜0.1%、T
a:0.005〜0.5%、W:0.05〜0.5%、
Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜
0.0050%の1種または2種以上を含有せしめるこ
とができる。
【0026】Cr:Crは焼入性の向上および焼戻し処
理時の軟化抵抗を増加させるために有効な元素である
が、0.05%未満ではその効果が十分に発揮できず、
一方2.0%を超えるとスポット溶接性が劣化するため
に0.05〜2.0%に限定した。
【0027】Mo:MoはCrと同様に強い焼戻し軟化
抵抗を有し熱処理後の引張強さを高めるために有効な元
素であり、更にリラクゼーション特性を向上させ、未再
結晶温度を上昇させる効果も有しているが、0.05%
未満ではその効果が少なく、一方1.0%を超えるとス
ポット溶接性が劣化するため、0.05〜1.0%に制
限した。
【0028】Ni:Niは高強度化に伴って劣化する延
性を向上させるとともに熱処理時の焼入性を向上させて
引張強さを増加させるために添加されるが、0.05%
未満ではその効果が少なく、一方5.0%を超えても添
加量にみあう効果が発揮できないため、0.05〜5.
0%の範囲に制限した。
【0029】Cu:Cuは焼戻し軟化抵抗を高めるため
に有効な元素であるが、0.05%未満では効果が発揮
できず、1.0%を超えると熱間加工性が劣化するた
め、0.05〜1.0%に制限した。
【0030】V:Vは焼入処理時において炭窒化物を生
成することによりオーステナイト粒を微細化させるとと
もにリラクゼーション値を増加させる効果があるが、
0.05%未満では前記作用の効果が得られず、一方
0.3%を超えても効果が飽和するため0.05〜0.
3%に限定した。
【0031】Nb:NbもVと同様に炭窒化物を生成す
ることによりオーステナイト粒を微細化させるために有
効な元素である。また、Nbは未再結晶温度を大幅に高
める効果があり、熱間圧延仕上げ温度が高くてもオース
テナイト粒が伸長化した鋼を容易に製造できる利点があ
る。0.005%未満では上記効果が不十分であり、一
方0.1%を超えるとこの効果が飽和するため0.00
5〜0.1%に制限した。
【0032】Ta:TaもNbと同様に未再結晶温度を
高める効果を有しているが、0.005%未満では前記
の効果が発揮されず、0.5%を超えて添加しても効果
が飽和するため、0.005〜0.5%に限定した。
【0033】W:Wは高強度のPC鋼棒の遅れ破壊特性
を向上させるために有効な元素であるが、0.05%未
満では前記の効果が発揮されず、一方、0.5%を超え
て添加しても効果が飽和するため、0.05〜0.5%
の範囲に限定した。
【0034】Ti:Tiは脱酸およびTiNを形成する
ことによりオーステナイト粒の粗大化を防止する効果と
ともにNを固定し遅れ破壊特性の向上に有効な固溶Bを
確保する効果を有しているが、0.005%未満ではこ
れらの効果が発揮されず、0.05%を超えても効果が
飽和するため0.005〜0.05%の範囲に限定し
た。
【0035】B:Bは遅れ破壊特性を向上させる効果が
あり、更にオーステナイト粒界に偏析することにより焼
入性を著しく高める効果も有しているが、Bが0.00
03%未満では前記の効果が発揮されず、0.0050
%を超えても効果が飽和するため0.0003〜0.0
050%に制限した。
【0036】P、Sについては特に制限しないものの、
PC鋼棒の遅れ破壊特性を向上させる観点から、それぞ
れ0.015%以下が好ましい範囲である。また、Nは
Al、V、Nb、Tiの窒化物を生成することによりオ
ーステナイト粒の細粒化効果があるため、0.003〜
0.015%が好ましい範囲である。
【0037】次に本発明で目的とする高強度PC鋼棒の
遅れ破壊特性の向上に対して最も重要な点であるPC鋼
棒の組織形態の限定理由について述べる。図2に焼戻し
マルテンサイトと粒界フェライト組織からなるPC鋼棒
の限界拡散性水素量に及ぼすアスペクト比の影響につい
て解析した一例を示す。ここで、アスペクト比が1.0
のPC鋼棒は、オーステナイト粒が伸長化されていない
鋼である。
【0038】同図から明らかなように、オーステナイト
粒を伸長化させてアスペクト比が増加するに伴い限界拡
散性水素量が増加し、遅れ破壊特性が格段に向上する。
ここで、アスペクト比が1.2未満ではオーステナイト
粒界割れを防止することが困難であり遅れ破壊特性の向
上が顕著でないため、アスペクト比の下限を1.2に限
定した。なお、アスペクト比が1.5以上で遅れ破壊特
性の向上効果が顕著になるため、1.5以上がアスペク
ト比の好ましい範囲である。
【0039】図3は限界拡散性水素量とアスペクト比が
1.2以上になっているPC鋼棒表層から軸中心方向の
深さに対するPC鋼棒半径の比率の関係について解析し
た一例を示す図である。アスペクト比が1.2以上であ
るPC鋼棒表層からの領域がPC鋼棒の半径に対して、
0.1未満では限界拡散性水素量の向上効果が少なく、
遅れ破壊特性に対して顕著な効果がないことがわかる。
【0040】このため、アスペクト比が1.2以上の領
域を少なくてもPC鋼棒表層より0.1R(R:PC鋼
棒の半径)にわたる領域に限定した。なお、図3から明
らかなように、0.2R以上で遅れ破壊特性の向上効果
が高いことから、好ましい条件は0.2R以上である。
【0041】図4はオーステナイト粒が伸長化している
PC鋼棒の限界拡散性水素量に及ぼす粒界フェライト厚
みの影響について解析した一例を示す。粒界フェライト
厚みが「0」は、粒界フェライトが存在しない焼戻しマ
ルテンサイトからなる鋼である。同図から明らかなよう
に、フェライト厚みが増加するほど限界拡散性水素量が
増加し、遅れ破壊特性が格段に向上する。
【0042】ここで、粒界フェライト厚みが0.2μm
未満では遅れ破壊特性が顕著でないため、粒界フェライ
ト厚みの下限を0.2μmに限定した。なお、0.5μ
m以上で顕著な効果を発揮することから、好ましい条件
は0.5μm以上である。一方、10μmを超えるとフ
ェライトの体積分率が大きくなり、強度が低下しやすく
なるため上限を10μmに制限した。
【0043】フェライトの体積分率については特に限定
しないものの、体積分率が多くなると強度が低下しやす
くなるため、粒内フェライトも含めたフェライトの体積
分率の好ましい上限値は20%である。また、粒界フェ
ライトはPC鋼棒の全断面にわたって存在する必要はな
く、PC鋼棒の表層から少なくてもPC鋼棒の半径の1
5%の領域で生成していれば、遅れ破壊特性を向上させ
る効果がある。
【0044】本発明の遅れ破壊特性の優れた高強度PC
鋼棒の製造方法では、オーステナイト粒を伸長化させる
ために低温での熱間圧延を行い、圧延後の冷却過程で所
定の温度範囲に保持して粒界フェライトを生成させた
後、残部を水冷しマルテンサイトにし、更に焼戻し処理
を行うものである。
【0045】以下に製造条件の限定理由を述べる。 熱間圧延温度:熱間圧延仕上げ温度が900℃を超える
と未再結晶温度を上げる元素を添加しても再結晶化しや
すく、伸長化したオーステナイト粒を得ることが困難で
あるとともに、アスペクト比が1.2以上の領域を0.
1R以上にすることが難しくなるため、上限温度を90
0℃に制限した。一方、700℃を下回ると変形抵抗が
大きくなりすぎて熱間圧延が困難になるため下限温度を
700℃に限定した。
【0046】熱間圧延圧下率:700〜900℃の温度
範囲での総圧下率が20%未満では、アスペクト比が
1.2以上である伸長化したオーステナイト粒を得るこ
とが困難であるとともに、アスペクト比が1.2以上の
領域を0.1R以上にすることが難しくなるため、総圧
下率の下限を20%に限定した。
【0047】熱間圧延後の保持温度と時間:熱間圧延後
にAr3 〜Ar1 の温度範囲に保持する理由は、オース
テナイト粒界にフェライトを生成させるためである。こ
こで、保持温度がAr3 以上ではフェライトが生成せ
ず、一方、Ar1 未満ではパーライトが生成するため
に、保持温度範囲をAr3 〜Ar1 に制限した。保持時
間は、保持温度と成分によって変わってくるが、2秒未
満では粒界フェライトを生成させることが困難であり、
一方、100秒を超えると粒界フェライトの厚みが10
μmを超えやすくなるため、保持時間を2〜100秒に
限定した。
【0048】なお、保持後は粒界フェライトが生成した
残部を水冷することによりマルテンサイトにするもので
あるが、マルテンサイト組織において、体積分率で20
%未満のパーライト、ベイナイト、残留オーステナイト
またはこれらの混合組織が生成しても遅れ破壊特性の劣
化はなく、なんら制限を受けるものではない。
【0049】焼戻し加熱速度:PC鋼棒を焼き戻す際の
加熱速度(昇温速度)が10℃/秒未満では、組織形態
が焼戻しマルテンサイトと粒界フェライトであっても限
界拡散性水素量が低く、遅れ破壊特性の大幅な向上が望
めないため、加熱速度の下限を10℃/秒に制限した。
安定して遅れ破壊特性の優れたPC鋼棒を製造するため
の好ましい条件は、20℃/秒以上である。
【0050】焼戻し温度:焼戻し温度が250℃未満で
は焼戻しの効果が少なく、一方、550℃を超えると引
張強さが低下しやすくなり高強度のPC鋼棒を製造する
ことが困難になるため、焼戻し温度範囲を250〜55
0℃に限定した。
【0051】本発明では熱間圧延後、あるいは焼戻し処
理後に線径調整、他の目的で軽度の伸線加工を行っても
遅れ破壊特性、機械的特性の劣化はなく、なんら制限を
受けるものではない。
【0052】
【実施例】表1に示す化学組成を有する供試材を通常の
熱間圧延条件で圧延した後、種々の温度範囲で保持し、
水冷後、焼戻し処理を施してPC鋼棒を製造した。上記
の試料を用いて、機械的性質、組織形態、遅れ破壊特性
について評価した結果を表2に示す。遅れ破壊特性は、
スポット溶接を施した試料を用いて、前に述べた限界拡
散性水素量で評価を行い、負荷応力は引張強さの80%
の条件で実施した。
【0053】表2の試験No.1〜11が本発明例で、
その他は比較例である。同表に見られるように本発明例
はいずれも焼戻しマルテンサイトと粒界フェライトから
なる組織にするとともに、アスペクト比を1.2以上に
し、且つPC鋼棒の半径に対して1.2以上のアスペク
ト比の比率が0.1以上であるため、限界拡散性水素量
が従来のPC鋼棒に比べ格段に高く、限界拡散性水素量
が1.08ppm以上で、かつ引張強さが1300MP
a以上のスポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度
PC鋼棒が実現されている。
【0054】これに対して比較例であるNo.12、1
3は、いずれも従来の製造方法で製造したものである。
即ち、熱間圧延後、焼入れ・焼戻し処理によって製造し
たものであり、粒界フェライトが含まれず、オーステナ
イト粒も伸長化していない例である。このため、破壊形
態がオーステナイト粒界割れであり、限界拡散性水素量
が低く、遅れ破壊特性が悪い例である。
【0055】比較例であるNo.15、18はいずれも
熱間圧延での総圧下率が低すぎるためにアスペクト比が
1.2以上になっていないために、遅れ破壊特性の大幅
な向上に至っていない例である。
【0056】また、比較例であるNo.14、17はい
ずれも熱間圧延後の保持時間が長すぎたためにフェライ
トの体積分率が増加し目的とする高強度のPC鋼棒が達
成できなかった例である。
【0057】比較例であるNo.16は、オーステナイ
ト粒は伸長化されているものの熱間圧延後の保持温度が
Ar3 を超えているため粒界フェライトが生成しなかっ
た例である。更に、比較例であるNo.19は、焼戻し
処理時の加熱速度が低いために限界拡散性水素量が低
く、遅れ破壊特性が劣化した例である。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】本発明は旧オーステナイト粒を伸長化さ
せた焼戻しマルテンサイトと粒界フェライトからなる組
織にすることによりPC鋼棒の遅れ破壊形態を粒界割れ
から粒内割れにさせて、引張強さが1300MPa以上
の高強度PC鋼棒の遅れ破壊特性を大幅に向上させるこ
とを可能にするとともに、鋼の化学成分、熱間圧延条
件、熱処理条件を最適に選択することによって、その製
造方法を確立したものであり、産業上の効果は極めて顕
著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡散性水素量と遅れ破壊時間の関係の一例を示
す図表である。
【図2】限界拡散性水素量とアスペクト比の関係につい
て解析した一例を示す図表である。
【図3】限界拡散性水素量と半径に対するアスペクト比
が1.2以上の比率の関係について解析した一例を示す
図表である。
【図4】限界拡散性水素量と粒界フェライトの厚みの関
係について解析した一例を示す図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 稔彦 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 平2−107743(JP,A) 特開 平2−236223(JP,A) 特開 平7−224355(JP,A) 特開 平5−222450(JP,A) 特開 平4−358023(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/00 - 8/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.2〜0.6%、 Si:0.05〜2.0%、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼に
    おいて、焼戻しマルテンサイトと厚みが0.2〜10μ
    mの粒界フェライト組織からなり、且つ少なくても表層
    から0.1R(R:PC鋼棒の半径)の領域で旧オース
    テナイト粒の長さと幅の比が1.2以上であり、さらに
    限界拡散性水素量が1.08ppm以上で、かつ引張強
    さが1300MPa以上であることを特徴とするスポッ
    ト溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度PC鋼棒。
  2. 【請求項2】 重量%で、 Cr:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜5.0%、 Cu:0.05〜1.0%、 V :0.05〜0.3%、 Nb:0.005〜0.1%、 Ta:0.005〜0.5%、 W :0.05〜0.5%、 Ti:0.005〜0.05%、 B :0.0003〜0.0050% の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とす
    る請求項1記載のスポット溶接部の遅れ破壊特性の優れ
    た高強度PC鋼棒。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の高強度PC鋼棒を製造す
    る方法であって、 重量%で、 C :0.2〜0.6%、 Si:0.05〜2.0%、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼を
    熱間圧延するに際して、少なくても700〜900℃の
    温度範囲で総圧下率が20%以上の熱間圧延を行う工程
    を経た後、Ar3 〜Ar1 の温度範囲で2〜100秒保
    持しオーステナイト粒界にフェライトを析出させ、この
    後水冷することにより残部をマルテンサイトにし、引き
    続き10℃/秒以上の加熱速度で250〜550℃の温
    度範囲に加熱し焼き戻すことを特徴とするスポット溶接
    部の遅れ破壊特性の優れた高強度PC鋼棒の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で、 Cr:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜5.0%、 Cu:0.05〜1.0%、 V :0.05〜0.3%、 Nb:0.005〜0.1%、 Ta:0.005〜0.5%、 W :0.05〜0.5%、 Ti:0.005〜0.05%、 B :0.0003〜0.0050% の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とす
    る請求項3記載のスポット溶接部の遅れ破壊特性の優れ
    た高強度PC鋼棒。
JP23570195A 1995-09-13 1995-09-13 スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法 Expired - Lifetime JP3233830B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23570195A JP3233830B2 (ja) 1995-09-13 1995-09-13 スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23570195A JP3233830B2 (ja) 1995-09-13 1995-09-13 スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0978195A JPH0978195A (ja) 1997-03-25
JP3233830B2 true JP3233830B2 (ja) 2001-12-04

Family

ID=16989951

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23570195A Expired - Lifetime JP3233830B2 (ja) 1995-09-13 1995-09-13 スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3233830B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6149951B2 (ja) * 2015-01-29 2017-06-21 Jfeスチール株式会社 鉄筋用鋼材およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0978195A (ja) 1997-03-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4267376B2 (ja) 遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼線およびその製造方法
JP3494799B2 (ja) 遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトおよびその製造方法
JP3233828B2 (ja) スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP5089224B2 (ja) オンライン冷却型高張力鋼板の製造方法
JP3494798B2 (ja) 遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトおよびその製造方法
JP3348188B2 (ja) 高強度pc鋼棒及びその製造方法
JP3233826B2 (ja) スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP4008378B2 (ja) 靭性および溶接性に優れた低降伏比高強度鋼
JP3233827B2 (ja) スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP4043754B2 (ja) 遅れ破壊特性に優れた高強度pc鋼棒
JP3233829B2 (ja) スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP3548519B2 (ja) 耐水素脆化特性の優れた高強度鋼
JP3153072B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼棒およびその製造方法
JP3457498B2 (ja) 高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP3233830B2 (ja) スポット溶接部の遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP3468828B2 (ja) 高強度pc鋼棒の製造方法
JPH09279303A (ja) 遅れ破壊特性の優れた高強度pc鋼棒およびその製造方法
JP3348189B2 (ja) 高強度pc鋼棒及びその製造方法
JPH06336648A (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高強度pc棒線とその製造方法
JP3348187B2 (ja) 高強度pc鋼棒及びその製造方法
JP3457494B2 (ja) 高強度pc鋼棒およびその製造方法
JPH11270531A (ja) 遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトおよびその製造方法
JP2006104550A (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高強度pc鋼棒およびその耐遅れ破壊特性向上方法
JP4081234B2 (ja) 耐水素脆化特性の優れた高強度鋼
JP3217589B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼棒およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20010814

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070921

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080921

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090921

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100921

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100921

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110921

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120921

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120921

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130921

Year of fee payment: 12

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130921

Year of fee payment: 12

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130921

Year of fee payment: 12

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130921

Year of fee payment: 12

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term