JP3233725B2 - 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼 - Google Patents

繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼

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JP3233725B2 JP09554993A JP9554993A JP3233725B2 JP 3233725 B2 JP3233725 B2 JP 3233725B2 JP 09554993 A JP09554993 A JP 09554993A JP 9554993 A JP9554993 A JP 9554993A JP 3233725 B2 JP3233725 B2 JP 3233725B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ころ軸受あるいは玉軸
受といった転がり軸受の要素部材として用いられる軸受
鋼に関し、とくに繰り返し応力負荷によって転動接触面
下に発生するミクロ組織変化(劣化)に対する遅延特性
に優れた軸受鋼について提案する。
【0002】
【従来の技術】自動車ならびに産業機械等で用いられる
ころがり軸受としては、従来、高炭素クロム軸受鋼(JI
S:SUJ 2)が最も多く使用されている。一般に軸受鋼と
いうのは、転動疲労寿命の長いことが重要な性質の1つ
であるが、この転動疲労寿命に与える要因としては、鋼
中の硬質な非金属介在物の影響が大きいと考えられてい
た。そのため、最近の研究の主流は、鋼中酸素量の低減
を通じて非金属介在物の量, 大きさを制御することによ
って軸受寿命を向上させる方策がとられてきた。
【0003】例えば、軸受の転動疲労寿命の一層の向上
を目指して開発されたものとしては、特開平1−306542
号公報や特開平3−126839号公報などの提案があり、こ
れらは、鋼中の酸化物系非金属介在物の組成, 形状ある
いは分布状態をコントロールする技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、非金属
介在物の少ない軸受鋼を製造するには、鋼中酸素量の低
減が不可欠であるところ、これも既に限界に達してお
り、高価な溶製設備の設置あるいは従来設備の大幅な改
良が必要であり、経済的な負担が大きいという問題があ
った。また、本発明者らが行った最近の研究によれば、
転動寿命を決めている要因としては、従来から一般に論
じられてきた現象;すなわち、熱処理時に生じる“脱炭
層”(低C濃度領域)や上述した“非金属介在物”の存
在以外の要因もあるということが判った。というのは、
従来技術の下で単に脱炭層や非金属介在物を減少させて
も、軸受の転動疲労寿命、特に、高負荷あるいは高温と
いった過酷な条件下での軸受寿命の向上には大きな効果
が得られないことを多く経験したからである。このこと
から、特有の軸受寿命を律する他の要因の存在を確信し
たのである。
【0005】そこで、本発明者らは、転がり軸受の剥離
の発生原因について調査を行った。その結果、軸受の内
・外輪と転動体と転動体との回転接触時に発生する繰り
返し剪断応力により、転動接触面の下層部分(表層部)
に、図1(a) に示すような、帯状の白色生成物と棒状の
析出物からなるミクロ組織変化層が発生し、これが転動
回数を増すにつれて次第に成長し、終いにはこのミクロ
組織変化部から疲労剥離( 図1(b)) が生じて軸受寿命に
つながるということが判った。さらに、軸受使用環境の
過酷化すなわち, 高面圧化(小型化), 使用温度の上昇
は、これらミクロ組織変化が発生するまでの転動回数を
短縮し、従来の軸受鋼SUJ2では著しい軸受寿命の低下と
なるということをつきとめた。すなわち、軸受寿命とい
うのは、従来技術のような、脱炭層や非金属介在物だけ
の制御では不十分であり、例えば、単に非金属介在物の
量や大きさを低減させただけでは、上述した転動接触面
下で発生するミクロ組織変化が発生するまでの時間を遅
延させることはできない。その結果として、軸受寿命の
今まで以上の向上は図り得ないということを知見したの
である。
【0006】そこで、本発明の目的は、過酷な使用条件
の下での転動疲労寿命特性を向上させるために、高負荷
下における軸受使用中に発生するミクロ組織変化を遅延
させることができると共に、非金属介在物の最大粒径を
小さく抑制することにより、軸受寿命の著しい向上をも
たらすことのできる軸受鋼を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】さて、本発明者らは、上
述した知見に基づき軸受寿命を律する要因として、新た
に“ミクロ組織変化遅延特性”というものに着目た。そ
して、この特性の向上を図るには、当然そのための新た
な合金設計(成分組成)が必要であり、このことの実現
なくして軸受のより一層の寿命向上は図れないという認
識に立って、さらに種々の実験と検討とを行った。その
結果、多量のCuを適正量含有させれば、繰り返し応力負
荷による転動接触面下に生成する上述したミクロ組織変
化を著しく遅延できることを見い出し、本発明軸受鋼に
想到した。
【0008】すなわち、本発明軸受鋼は、以下の如き要
旨構成を有するものである。 (1)C:0.5〜1.5wt%,Cu:1.0超〜2.5wt%を含み、残部
がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系非金
属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し応力
負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼
(第1発明)。 (2)C:0.5〜1.5 wt%,Cu:1.0超〜2.5 wt%を含有し、
さらに、Si:0.05〜0.5wt%, Mn:0.05〜2.0 wt%,
Cr:0.05〜2.5 wt%,Ni:0.05〜1.0 wt%,Mo:0.05〜0.
5 wt%, B:0.0005〜0.01wt%,Sb:0.0001〜0.015 wt
%,Al:0.005 〜0.07wt%及びN:0.0005〜0.012wt%の
うちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系
非金属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し
応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
鋼(第2発明)。 (3)C:0.5〜1.5 wt%,Cu:1.0超〜2.5 wt%を含有し、
さらにSi:0.5超〜2.5 wt%,Mn:2.0超〜5.0 wt%,Cr:
2.5超〜8.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,Ni:1.0超〜3.0wt
%,N:0.012超〜0.050wt%,V:0.05〜1.0 wt%,Nb:
0.05〜1.0 wt%,W:0.05〜1.0wt%,Zr:0.02〜0.5 wt
%,Ta:0.02〜0.5 wt%,Hf:0.02〜0.5 wt%,及びCo:
0.05〜1.5wt%のうちから選ばれるいずれか1種または
2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からな
り、かつ酸化物系非金属介在物の最大粒径が8μm以下
である, 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延
特性に優れた軸受鋼(第3発明)。 (4) C:0.5〜1.5wt%,Cu:1.0超〜2.5wt%を含有し、
さらに下記I群の成分のうちから選ばれるいずれか1種
または2種以上を含み、さらにまた、下記II群の成分
(ただし、I群で選択されている元素は除く)のうちか
ら選ばれるいずれか1種または2種以上を含み、残部が
Feおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系非金属
介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し応力負
荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第
4発明鋼)。 (I群) Si:0.05〜0.5wt%,Mn:0.05〜2.0wt%,Cr:0.05〜2.5w
t%,Ni:0.05〜1.0 wt%,Mo:0.05〜0.5wt%,B:0.000
5〜0.01wt%,Sb:0.0001〜0.015wt%, Al:0.005〜0.07
wt%及びN:0.0005〜0.012wt%(II群) Si:0.5超〜2.5wt%,Mn:2.0超〜5.0wt%,Cr:2.5超〜
4.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,Ni:1.0超〜3.0wt%,N:
0.012超〜0.050wt%,V:0.05〜1.0wt%,Nb:0.05〜1.0
wt%,W:0.05〜1.0 wt%,Zr:0.02〜0.5wt%,Ta:0.02
〜0.5wt%,Hf:0.02〜0.5wt%及びCo:0.05〜1.5wt%
【0009】
【作用】以下に、上記合金設計になる本発明軸受鋼に想
到した背景につき、本発明者らが行った実験結果に基づ
いて説明する。まず、実験に当たり、 SUJ 2 ( C:1.02wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.45wt
%, Cr:1.35wt%, N:0.0040wt%, O:0.0012wt%)
と、 SUJ 2 ( C:1.01wt%, Si:0.24wt%, Mn:0.46wt
%, Cr:1.32wt%, N:0.0042wt%, O:0.0015wt%)
と、 多量のCuを添加した2種の材料 (C:0.98wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.42wt%, C
r:1.32wt%, O:0.0008wt%, Cu:1.20wt%, N:0.0
042wt%) (C:1.00wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.45wt%, C
r:1.33wt%, O:0.0037wt%, Cu:1.23wt%, N:0.0
040wt%) (C:0.96wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.44wt%, C
r:1.31wt%, O:0.0009wt%, Cu:1.83wt%, N:0.0
032wt%) (C:0.98wt%, Si:0.22wt%, Mn:0.45wt%, C
r:1.33wt%, O:0.0012wt%, Cu:1.85wt%, N:0.0
038wt%) についての供試鋼材を作製した。ついで、これらの供試
材を焼ならし、球状化焼ならし、焼入れ焼もどしの各処
理を施したのち、それぞれの供試材から12mmφ×22mmの
円筒型の試験片を作製した。
【0010】次に、これらの試験片をラジアルタイプ型
の転動疲労寿命試験機を用い、ヘルツ最大接触応力:60
0kgf/mm2 ,繰り返し応力数 46500 cpmの負荷条件の下で
転動疲労寿命の試験を行った。試験結果は、ワイブル分
布確立紙上にプロットし、非金属介在物の制御によって
影響される材料強度の上昇による転動疲労寿命の向上を
示す数値と見られるB10(10%累積破損確率) と、高負
荷転動時の繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化発生
を遅延させることによる転動疲労寿命の向上を示す数値
と見られるB50(50%累積破損確率)とを求めた。
【0011】その結果、表1に示すように、介在物制御
をすることなく、単にCuを多量に添加しただけのものに
ついては、前記B10値についての改善は小さいものの、
50値についてはかなり高い数値を示して著しく改善さ
れていることが判る。即ち、軸受平均寿命はSUJ 2 に比
べてB10値で約2倍、B50値で約22倍もの改善効果を示
していた。これに対し、Cuの多量添加とともに非金属介
在物の最大粒径を制御したものでは、高負荷転動中に生
成するミクロ組織変化の遅延特性に対して顕著な改善効
果を示すと共に、さらにB10値に表れているように非金
属介在物を原因とする剥離に対する改善効果が認められ
た。なかでもは、鋼中酸素量が高いにもかかわらず介
在物制御によってB10値は約30倍も優れており、ミクロ
組織変化の遅延と介在物の微細化がこのB10値の向上に
作用していること判る。
【0012】
【表1】
【0013】図2は、上記実験結果をまとめたものであ
って、非金属介在物粒径に起因する軸受寿命とミクロ組
織変化に起因する寿命との関係を示す模式図である。こ
の図に明らかなように、従来のように累積破損確率10%
のB10値で示される軸受寿命(以下、これを「B10転動
疲労寿命」という)は、Cuを多量に添加することだけで
は大きな効果は期待し得ないが、非金属介在物制御をも
併せて行ったものの方が顕著な改善効果を示している。
一方、累積破損確率50%のB50値で示される軸受寿命
(以下、これを「B50高負荷転動疲労寿命」という)で
みると、非金属介在物制御とは関係なくCu多量添加のみ
によっても改善の効果が極めて顕著なものとなり、ミク
ロ組織変化生成環境の下での軸受寿命を著しく向上させ
るのに有効なことが判る。
【0014】そこで、本発明においては、主として繰り
返し応力負荷によるミクロ組織変化遅延特性の改善を図
るという観点から、以下に説明するような成分組成の範
囲を決定した。
【0015】C: 0.5〜1.5 wt% Cは、基地に固溶してマルテンサイトの強化に有効に作
用する元素であり、焼入れ焼もどし後の強度確保とそれ
による転動疲労寿命を向上させるために含有させる。そ
の含有量が0.5 wt%未満ではこうした効果が得られな
い。一方、 1.5wt%超では被削性, 鍛造性が低下するの
で、 0.5〜1.5 wt%の範囲に限定する。
【0016】Si:0.05〜0.5 wt%, 0.5 超〜2.5 wt%以
下 Siは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられる他、基地に
固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入れ, 焼もど
し後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させる元素とし
て有効である。こうした目的の下に添加されるSiの含有
量は、0.05〜0.5 wt%の範囲内とする。また、このSi
は、0.5 wt%超添加すると、繰り返し応力負荷の下での
ミクロ組織変化の遅延をもたらして転動疲労寿命を向上
させる効果がある。しかし、その含有量が 2.5wt%を超
えるとその効果が飽和する一方で、加工性や靱性を低下
させるので、ミクロ組織変化遅延特性のより一層の向上
のためには、 0.5超〜2.5wt%を添加することが有効で
ある。
【0017】Mn:0.05〜2.0 wt%, 2.0 超〜5.0 wt% Mnは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用し、鋼の低酸素化
に有効な元素である。また、鋼の焼入れ性を向上させる
ことにより基地マルテンサイトの靱性, 硬度を向上さ
せ、転動疲労寿命の向上に有効に作用する。こうした目
的のためには、0.05〜2.0 wt%の添加があれば十分であ
る。しかし、このMnを、 2.0wt%を超えて添加した場合
には、Cuと同様に転動時の繰返し応力の負荷によるミク
ロ組織変化を著しく遅延させる効果を有し、転動疲労寿
命を改善する。しかしながら、5.0 wt%を超える添加で
は、多量の残留γが発生して強度ならびに寸法安定性が
低下するため、この目的のためには、 2.0超〜5.0 wt%
の範囲で添加する。
【0018】Cr:0.05〜2.5wt%,2.5 超〜4.0wt% Crは、焼入れ性の向上と安定な炭化物の形成を通じて、
強度の向上ならびに耐摩耗性を向上させ、ひいては転動
疲労寿命を向上させる成分である。この効果を得る目的
で添加するときには、0.05〜2.5wt%の範囲内とする。
また、このCrは、2.5wt%を超えて多量に添加した場合
には、繰返し応力負荷によるミクロ組織変化を遅延せし
めて、この面での転動疲労寿命を向上させるのに有効で
ある。そして、この目的のためのCr添加の効果は、4.0w
t%を超えると飽和するのみならず、却って焼入れ時の
固溶C量の低下を招いて強度が低下する。従って、この
目的のために添加するときは、2.5超〜4.0wt%としなけ
ればならない。
【0019】Ni:0.05〜1.0 wt%, 1.0 超〜3.0 wt% Niは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め靱性を向上させるとともに、転動疲労寿命を向上さ
せるので、この目的のため添加するときには0.05〜1.0
wt%の範囲内とする。さらに、このNiは、 1.0wt%を超
えて添加した場合には、転動時のミクロ組織変化を遅ら
せ、それにより転動疲労寿命を向上させる。しかしなが
ら、この場合でも3wt%を超えて添加すると、多量の残
留γを析出して強度の低下ならびに寸法安定性を害する
ことになる他、コストアップになるため、この作用効果
を期待する場合には、1.0 超〜3.0 wt%の範囲内で添加
することが必要である。
【0020】Mo:0.05〜0.5 wt%, 0.5 超〜2.0 wt% Moは、残留炭化物の安定化により耐摩耗性を向上させる
元素である。とくに0.05〜0.5 wt%を添加すると、焼入
れ性を増大して焼入れ焼もどし後の強度向上に寄与する
と共に、安定炭化物の析出により、耐摩耗性と転動疲労
寿命とを向上させる。さらにこのMoは、0.5 wt%超とい
う多量を添加すると、転動時のミクロ組織変化を遅らせ
る効果が著しくなり、この面での転動疲労寿命を向上さ
せる。しかし、その量が 1.5wt%を超えると、被削性,
鍛造性を低下させ、コストアップの原因ともなるため、
この目的のためには 0.5超〜2.0 wt%の範囲内で添加す
ることが必要である。
【0021】Cu: 1.0超〜2.5 wt% Cuは、一般には焼入れの増大により焼入れ焼もどし後の
強度を高め、転動疲労寿命を向上させる元素である。た
だし、本発明においてこのCuは、もっと重要な役割を有
し、とくにその添加量が1.0 %を超えるような多量添加
になると、上述した繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化を遅らすことによって、転動転動疲労寿命を著しく
向上させることになる。ただし、その量が 2.5wt%を超
えるとこの添加効果が飽和するとともに、却って被削性
や鍛造性の低下を招くことになるため、1.0 超〜2.5 wt
%の範囲で添加することが必要である。
【0022】B:0.0005〜0.01wt% Bは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め、転動疲労寿命を向上させるので、0.0005wt%以上
を添加する。しかしながら、0.01wt%を超えて添加する
と加工性を劣化させるので、0.0005〜0.01wt%の範囲に
限定する。
【0023】Sb:0.0001〜0.015 wt% このSbは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強
度を高めて、転動疲労寿命を向上させる他、鋼材表層部
のCと雰囲気ガスとの反応を抑制して脱炭層の発生を阻
止することによって、熱処理生産性向上にも寄与する。
このような作用効果を得る目的のためには0.0001wt%以
上の添加を必要とし、一方、0.015 wt%を超えて添加し
てもその効果は飽和することに加え、却って熱間加工性
や靱性の劣化を招くようになる。従って、Sbは0.0001
0.015 wt%の範囲で含有させることとした。
【0024】Al:0.005 〜0.07wt% Alは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられると共に、鋼
中Nと結合して結晶粒を微細化し、鋼の靱性向上にも寄
与する元素であり、そのためには0.005 wt%の添加が必
要である。しかも転動疲労寿命の向上にも寄与する。こ
のような作用効果を得る目的で添加するAlは,0.005 〜
0.07wt%の範囲内が好適である。
【0025】N:0.0005〜0.012 wt%, 0.012 超〜0.05
wt% Nは、窒化物形成元素と結合して結晶粒を微細化すると
共に、基地に固溶して焼入れ焼もどし後の強度を高め、
転動疲労寿命を向上させる。この目的のためには0.0005
〜0.012 wt%の範囲内で添加する。また、このNは、0.
012 wt%を超えて添加した場合には、繰り返し応力によ
るミクロ組織変化を遅らせることにより転動疲労寿命を
向上させる。ただし、その量が0.05wt%を超えると、加
工性が低下するため、この目的のためには0.012 超〜0.
05wt%を添加する。
【0026】P≦0.025 wt% Pは、鋼の靱性ならびに転動疲労寿命を低下させること
から可能なかぎり低いことが望ましく、その許容上限は
0.025 wt%である。
【0027】S≦0.025 wt% Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させ
る。しかし、多量に含有させると転動疲労寿命を低下さ
せることから、0.025 wt%を上限としなければならな
い。
【0028】以上、繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化を遅延させることによる転動疲労寿命を改善すると
共に、強度の上昇を通じて転動疲労寿命を改善するため
の主要成分(CuおよびSi, Mn, Cr, Mo, Ni, Al, Sb,
B, N)およびC,P,Sの限定理由について説明した
が、本発明ではさらに、V, Nb, W, Zr, Ta, Hfおよび
Coのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を添
加することにより、高負荷時の転動疲労寿命を改善させ
るようにしてもよい。
【0029】上記各元素の好適添加範囲と添加の目的、
上限値、下限値限定の理由につき、表2にまとめて示
す。
【表2】
【0030】なお、本発明においては、被削性を改善す
るために、S,Se, Te, REM, Pb,Bi, Ca, Ti, Mg, P,
Sn, As等を添加しても、上述した本発明の目的である繰
り返し応力負荷によるミクロ組織変化による遅延特性を
阻害することはなく、容易に被削性を改善することがで
きるので、必要に応じて添加してもよい。
【0031】次に、本発明においては、上記成分組成の
限定に加え、鋼中の酸化物系非金属介在物の形態(大き
さ)制御を行うことよって、主として上述したB10転動
疲労寿命の一層の向上を図ることにした。
【0032】そこでまず、発明者らは、酸化物系非金属
介在物量ならびに成分組成が異なる2種の材料:即ち、
高炭素クロム軸受鋼(JIS-SUJ2)(A)と、上記適合範囲
内組成の軸受鋼(B)とを用いて、鋼中の酸化物系非金
属介在物最大径とB10転動疲労寿命との関係を調査し
た。その結果、図3に示すように、鋼中の酸化物系非金
属介在物量あるいは組成に関係なく、該非金属介在物の
最大径が8μmを越えると、B10転動疲労寿命は目立っ
て低下することが判り、このことから、本発明軸受鋼と
しては、最大粒径が8μm以下になるようにすることが
必要である。
【0033】
【実施例】表3, 表4, 表5に示す成分組成の鋼を常法
にて溶製し、得られた鋼材につき1240℃で30h の拡散焼
鈍の後に65mmφの棒鋼に圧延した。次いで、焼ならし−
球状化焼なまし−焼入れ−焼もどしの順で熱処理を行
い、ラッピング仕上げにより12mmφ×22mmの円筒型転動
疲労寿命試験片を作製した。非金属介在物の試験は、 4
00倍で 800視野の酸化物系非金属介在物を測定し、各視
野での介在物最大径をGumbel確率紙上にまとめ、50000
mm2 相当の極値を算出し、鋼中に存在する酸化物系非金
属介在物最大粒径とした。また、転動疲労寿命試験は、
ラジアルタイプの転動疲労寿命試験機を用いて、ヘルツ
最大接触応力:600 kgf/mm2 , 繰り返し応力数約46500
cpm の条件で行った。試験結果は、ワイブル分布に従う
ものとして確率紙上にまとめ、鋼材No.1 (従来鋼である
JIS- SuJ2) の平均寿命 (累積破損確率:10%および50
%における、剥離発生までの総負荷回数) を1として、
その他の鋼種のものを対比して評価したものである。そ
の評価結果を、表3、表4、表5にそれぞれ併せて示し
た。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】表3, 4, 5に示す結果から明らかなよう
に、鋼中C量が本発明範囲外である鋼材No.5, 鋼中Cu量
が本発明範囲外である鋼材No.6のB50転動疲労寿命は、
同じか従来鋼(鋼材No.1)よりもむしろ悪い。また、介
在物最大径が8μm を超えるNo.4では、B10転動疲労寿
命が悪いという結果となった。これに対し、本発明鋼(
第1発明)である鋼材No.7のB10, B50値は、いずれも
従来鋼(鋼材No.1) に比較して約3 〜4 倍も優れてい
る。すなわち、軸受鋼へのCuの添加がミクロ組織変化を
著しく遅延し、介在物最大径の制御によって、軸受のあ
らゆる転動疲労寿命の向上に対して有効に作用したこと
が窺える。
【0038】なかでも、Si, Mn, Cr, Mo, W, V, Nb, Z
r, Ta, Hf, Co, N の単独添加およびそれらの複合添加
例(第3発明鋼)No. 21〜34の場合には、上記平均寿命
(B50転動疲労寿命)は、より一層向上することが確か
められた。
【0039】また、介在物粒径制御にあわせ強度上昇に
よる寿命改善成分を単独または複合して添加してなる第
2, 本発明例(No.8〜20) は、B10転動疲労寿命につい
て高い改善効果を示した。さらに、全ての寿命改善成分
を選択的に添加してなる第4発明例の場合、軸受寿命改
善傾向は一層顕著となった。
【0040】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
基本的には1.0 超〜2.5 wt%のCu含有軸受鋼とすること
により、繰り返し応力負荷に伴うミクロ組織変化の遅延
をもたらすことによる転動疲労寿命の向上を達成して、
この面において高寿命の軸受用の鋼を提供することがで
きる。しかも、非金属介在物の粒径制御を通じて材料強
度を高めることによって、この面における転動疲労寿命
の向上をも実現できる。なお、本発明にかかる軸受鋼の
開発によって、転がり軸受の小型化ならびに軸受使用温
度のより以上の上昇が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は、繰り返し応力負荷の下に、
発生するミクロ組織変化のようすを示す金属組織の顕微
鏡写真。
【図2】介在物に起因する軸受寿命とミクロ組織変化に
起因する軸受寿命とに及ぼすCuの影響を示す説明図。
【図3】非金属介在物最大径と軸受転動疲労寿命との関
係を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究本部内 (56)参考文献 特開 昭63−143239(JP,A) 特開 平3−122255(JP,A) 特開 平6−264187(JP,A) 特開 平7−278741(JP,A) 特開 平6−256906(JP,A) 特開 平6−264186(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C: 0.5〜1.5 wt%, Cu:1.0 超〜2.5 wt
    %を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、か
    つ酸化物系非金属介在物の最大粒径が8μm以下であ
    る, 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性
    に優れた軸受鋼。
  2. 【請求項2】C: 0.5〜1.5 wt%, Cu:1.0 超〜2.
    5 wt%を含有し、さらに、Si:0.05〜0.5 wt%, M
    n:0.05〜2.0 wt%,Cr:0.05〜2.5 wt%, Ni:0.05
    〜1.0 wt%,Mo:0.05〜0.5 wt%, B:0.0005〜0.0
    1wt%,Sb:0.0001〜0.015 wt% Al:0.005 〜0.07wt
    %,及びN:0.0005〜0.012 wt%のうちから選ばれるい
    ずれか1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなり、かつ酸化物系非金属介在物の最大
    粒径が8μm以下である, 繰り返し応力負荷によるミク
    ロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼。
  3. 【請求項3】C: 0.5〜1.5 wt%, Cu:1.0 超〜2.5
    wt%を含有し、さらにSi:0.5 超〜2.5 wt%, Mn:2.0
    超〜5.0 wt%,Cr:2.5 超〜8.0 wt%, Mo:0.5 超〜2.0
    wt%,Ni:1.0 超〜3.0 wt%, N:0.012 超〜0.050 wt
    %,V:0.05〜1.0 wt%, Nb:0.05〜1.0 wt%,W:0.
    05〜1.0 wt%, Zr:0.02〜0.5 wt%,Ta:0.02〜0.5 w
    t%, Hf:0.02〜0.5 wt%,及びCo:0.05〜1.5 wt%の
    うちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系
    非金属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
  4. 【請求項4】C:0.5〜1.5wt%,Cu:1.0超〜2.5wt%を
    含有し、さらに下記(I群)の成分のうちから選ばれる
    いずれか1種または2種以上を含み、さらにまた、下記
    (II群)の成分(ただし、I群で選択されている元素は
    除く)のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ
    酸化物系非金属介在物の最大粒径が8μm以下である,
    繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優
    れた軸受鋼。 (I群) Si:0.05〜0.5wt%,Mn:0.05〜2.0wt%,Cr:0.05〜2.5w
    t%,Ni:0.05〜1.0wt%,Mo:0.05〜0.5wt%,B:0.0005
    〜0.01wt%,Sb:0.0001〜0.015wt%, Al:0.005〜0.07w
    t%及びN:0.0005〜0.012wt%(II群) Si:0.5超〜2.5wt%,Mn:2.0超〜5.0wt%,Cr:2.5超〜
    4.0wt%,Mo:0.5超〜2.0wt%,Ni:1.0超〜3.0wt%,N:
    0.012超〜0.050wt%,V:0.05〜1.0wt%,Nb:0.05〜1.0
    wt%,W:0.05〜1.0 wt%,Zr:0.02〜0.5wt%,Ta:0.02
    〜0.5wt%,Hf:0.02〜0.5wt%及びCo:0.05〜1.5 wt%
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