JP3243326B2 - 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼 - Google Patents

繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼

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JP3243326B2 JP07144693A JP7144693A JP3243326B2 JP 3243326 B2 JP3243326 B2 JP 3243326B2 JP 07144693 A JP07144693 A JP 07144693A JP 7144693 A JP7144693 A JP 7144693A JP 3243326 B2 JP3243326 B2 JP 3243326B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ころ軸受あるいは玉軸
受といった転がり軸受の要素部材として用いられる軸受
鋼に関し、とくに繰り返し応力負荷によって転動接触面
下に発生するミクロ組織変化(劣化)に対する遅延特性
に優れた軸受鋼について提案する。
【0002】
【従来の技術】自動車ならびに産業機械等で用いられる
ころがり軸受としては、従来、高炭素クロム軸受鋼(JI
S:SUJ 2)が最も多く使用されている。一般に軸受鋼と
いうのは、転動疲労寿命の長いことが重要な性質の1つ
であるが、この転動疲労寿命に与える要因としては、鋼
中の硬質な非金属介在物の影響が大きいと考えられてい
た。そのため、最近の研究の主流は、鋼中酸素量の低減
を通じて非金属介在物の量, 大きさを制御することによ
って軸受寿命を向上させる方策がとられてきた。
【0003】例えば、軸受の転動疲労寿命の一層の向上
を目指して開発されたものとしては、特開平1−306542
号公報や特開平3−126839号公報などの提案があり、こ
れらは、鋼中の酸化物系非金属介在物の組成, 形状ある
いは分布状態をコントロールする技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、非金属
介在物の少ない軸受鋼を製造するには、鋼中酸素量の低
減が不可欠であるところ、これも既に限界に達してお
り、高価な溶製設備の設置あるいは従来設備の大幅な改
良が必要であり、経済的な負担が大きいという問題があ
った。また、本発明者らが行った最近の研究によれば、
転動寿命を決めている要因としては、従来から一般に論
じられてきた現象;すなわち、熱処理時に生じる“脱炭
層”(低C濃度領域)や上述した“非金属介在物”の存
在以外の要因もあるということが判った。というのは、
従来技術の下で単に脱炭層や非金属介在物を減少させて
も、軸受の転動疲労寿命、特に、高負荷あるいは高温と
いった過酷な条件下での軸受寿命の向上には大きな効果
が得られないことを多く経験したからである。このこと
から、特有の軸受寿命を律する他の要因の存在を確信し
たのである。
【0005】そこで、本発明者らは、転がり軸受の剥離
の発生原因について調査を行った。その結果、軸受の内
・外輪と転動体と転動体との回転接触時に発生する繰り
返し剪断応力により、転動接触面の下層部分(表層部)
に、図1(a) に示すような、帯状の白色生成物と棒状の
析出物からなるミクロ組織変化層が発生し、これが転動
回数を増すにつれて次第に成長し、終いにはこのミクロ
組織変化部から疲労剥離( 図1(b)) が生じて軸受寿命に
つながるということが判った。さらに、軸受使用環境の
過酷化すなわち, 高面圧化(小型化), 使用温度の上昇
は、これらミクロ組織変化が発生するまでの転動回数を
短縮し、従来の軸受鋼SUJ2では著しい軸受寿命の低下と
なるということをつきとめた。すなわち、軸受寿命とい
うのは、従来技術のような、脱炭層や非金属介在物だけ
の制御では不十分であり、例えば、単に非金属介在物の
量や大きさを低減させただけでは、上述した転動接触面
下で発生するミクロ組織変化が発生するまでの時間を遅
延させることはできない。その結果として、軸受寿命の
今まで以上の向上は図り得ないということを知見したの
である。
【0006】そこで、本発明の目的は、過酷な使用条件
の下での転動疲労寿命特性を向上させるために、高負荷
下における軸受使用中に発生するミクロ組織変化を遅延
させることができると共に、非金属介在物の最大粒径を
小さく抑制することにより、軸受寿命の著しい向上をも
たらすことのできる軸受鋼を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】さて、本発明者らは、上
述した知見に基づき軸受寿命を律する要因として、新た
に“ミクロ組織変化遅延特性”というものに着目た。そ
して、この特性の向上を図るには、当然そのための新た
な合金設計(成分組成)が必要であり、このことの実現
なくして軸受のより一層の寿命向上は図れないという認
識に立って、さらに種々の実験と検討とを行った。その
結果、多量のNiを適正量のSi, Mnとともに複合添加すれ
ば、繰り返し応力負荷による転動接触面下に生成する上
述したミクロ組織変化を著しく遅延できることを見い出
し、本発明軸受鋼に想到した。
【0008】すなわち、本発明軸受鋼は、以下の如き要
旨構成を有するものである。 (1) C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt%,Mn: 0.
5〜2.0 wt%, Ni: 2.00〜3.0 wt%を含み、残部がFeお
よび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系非金属介在
物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し応力負荷に
よるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第1発
明)。 (2) C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt%,Mn: 0.
5〜2.0 wt%, Ni: 2.00〜3.0 wt%を含有し、さらに、
Cr:0.05以上1.0 wt%未満, Mo:0.05〜0.5 wt%,C
u:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt%,Al:0.00
5 〜0.07wt%及びN:0.0005〜0.012 wt%のうちから選
ばれるいずれか1種または2種以上を含み、残部がFeお
よび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系非金属介在
物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し応力負荷に
よるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第2発
明)。 (3) C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt%,Mn: 0.
5〜2.0 wt%, Ni: 2.00〜3.0 wt%を含有し、さらにZ
r:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%,Hf:0.02〜
0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt%及びN:0.012 超〜0.
050 wt%のうちから選ばれるいずれか1種または2種以
上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、か
つ酸化物系非金属介在物の最大粒径が8μm以下であ
る, 繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性
に優れた軸受鋼(第3発明)。 (4) C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt%,Mn: 0.
5〜2.0 wt%, Ni: 2.00〜3.0 wt%を含有し、さらに、
Cr:0.05以上1.0 wt%未満, Mo:0.05〜0.5 wt%,C
u:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt%,
Al:0.005 〜0.07wt%及びN:0.0005〜0.012 wt%のう
ちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含み、さ
らにまた、Zr:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt
%,Hf:0.02〜0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt%及び
N:0.012 超〜0.050 wt%のうちから選ばれるいずれか
1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不
純物からなり、かつ酸化物系非金属介在物の最大粒径が
8μm以下である, 繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化の遅延特性に優れた軸受鋼(第4発明)。
【0009】
【作用】以下に、上記合金設計になる本発明軸受鋼に想
到した背景につき、本発明者らが行った実験結果に基づ
いて説明する。まず、実験に当たり、 SUJ 2 ( C:1.02wt%, Si:0.25wt%, Mn:0.45wt
%, Cr:1.35wt%, N:0.0040wt%, O:0.0012wt%)
と、 SUJ 2 ( C:1.01wt%, Si:0.24wt%, Mn:0.46wt
%, Cr:1.32wt%, N:0.0042wt%, O:0.0015wt%)
と、多量のNiをSi, Mnとともに複合添加した2種の材料 (C:1.00wt%, , Si:1.05wt%, Mn:0.71wt%,
Cr:1.30wt%, O:0.0008wt%, Ni:1.20wt%, N:0.
0046wt%) (C:1.02wt%, , Si:1.08wt%, Mn:0.75wt%,
Cr:1.31wt%, O:0.001 wt%, Ni:1.22wt%, N:0.
0044wt%) (C:1.00wt%, , Si:1.02wt%, Mn:0.65wt%,
Cr:1.31wt%, O:0.0007wt%, Ni:2.53wt%, N:0.
0048wt%) (C:1.01wt%, , Si:1.05wt%, Mn:0.67wt%,
Cr:1.33wt%, O:0.0011wt%, Ni:2.52wt%, N:0.
0042wt%) についての供試鋼材を作製した。ついで、これらの供試
材を焼ならし、球状化焼ならし、焼入れ焼もどしの各処
理を施したのち、それぞれの供試材から12mmφ×22mmの
円筒型の試験片を作製した。
【0010】次に、これらの試験片をラジアルタイプ型
の転動疲労寿命試験機を用い、ヘルツ最大接触応力:60
0kgf/mm2, 繰り返し応力数: 46500 cpmの負荷条件の下
で転動疲労寿命の試験を行った。試験結果は、ワイブル
分布確立紙上にプロットし、非金属介在物の制御によっ
て影響される材料強度の上昇による転動疲労寿命の向上
を示す数値と見られるB10(10%累積破損確率) と、高
負荷転動時の繰り返し応力負荷によるミクロ組織変化発
生を遅延させることによる転動疲労寿命の向上を示す数
値と見られるB50(50%累積破損確率)とを求めた。
【0011】その結果、表1に示すように、介在物制御
をすることなく、単にNiを多量に添加しただけのものに
ついては、前記B10値についての改善は小さいものの、
50値についてはかなり高い数値を示して改善されてい
ることが判る。即ち、軸受平均寿命はSUJ 2 に比べてB
10値で約3倍、B50値で約30倍もの改善を示していた。
これに対し、Niの多量添加とともに非金属介在物の最大
粒径を制御したものでは、高負荷転動下で生成するミク
ロ組織変化の遅延に対して顕著な改善効果を示すと共
に、さらにB10値に表れているように、非金属介在物を
原因とする剥離に対する改善効果が認められた。
【0012】
【表1】
【0013】図2は、上記実験結果をまとめたものであ
って、非金属介在物の粒径に起因する軸受寿命とミクロ
組織変化に起因する寿命の変化との関係を示す模式図で
ある。この図に明らかなように、従来のように累積破損
確率10%のB10値で示される軸受寿命(以下、これを
「B10転動疲労寿命」という)は、Niを多量に添加する
ことだけでは大きな効果は期待し得ないが、非金属介在
物制御をも併せて行ったものの方が顕著な改善効果を示
している。一方、累積破損確率50%のB50値で示される
軸受寿命 (以下、これを「B50高負荷転動疲労寿命」と
いう)でみると、非金属介在物制御とは関係なくNi多量
添加の効果が極めて顕著なものとなり、ミクロ組織変化
生成環境の下での軸受寿命を著しく向上させることが判
る。
【0014】そこで、本発明においては、繰り返し応力
負荷によるミクロ組織変化遅延特性の改善を図るという
観点から、以下に説明するような成分組成の範囲を決定
した。
【0015】C: 0.5〜1.5 wt% Cは、基地に固溶してマルテンサイトの強化に有効に作
用する元素であり、焼入れ焼もどし後の強度確保とそれ
による転動疲労寿命を向上させるために含有させる。そ
の含有量が0.5 wt%未満ではこうした効果が得られな
い。一方、 1.5wt%超では被削性, 鍛造性が低下するの
で、 0.5〜1.5 wt%の範囲に限定した。
【0016】Si:0.05〜2.5 wt% Siは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられる他、基地に
固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入れ, 焼もど
し後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させる元素とし
て有効である。こうした目的の下に添加されるSiの含有
量は、0.05〜2.5 wt%の範囲とする。
【0017】Mn:0.5 〜2.0 wt% Mnは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用し、鋼の低酸素化
に有効な元素である。また、鋼の焼入れ性を向上させる
ことにより基地マルテンサイトの靱性, 硬度を向上さ
せ、転動疲労寿命の向上に有効に作用する。これらの効
果は少なくとも0.5 wt%の添加が必要であり、一方、2.
0 wt%を超える添加は効果が飽和するので、0.5 〜2.0
wt%の範囲で添加する。
【0018】Cr:0.05以上1.0 wt%未満 Crは、焼入れ性の向上と安定な炭化物の形成を通じて、
強度の向上ならびに耐摩耗性を向上させ、ひいては転動
疲労寿命を向上させる成分である。この効果を得るため
には、0.05以上1.0 wt%未満の範囲内で添加する。
【0019】Ni:2.00〜3.0 wt% Niは、本発明において最も重要な役割を担っている元素
であり、とくにこのNiを2.00 wt%を超えて含有させた
場合には、高負荷転動時の繰り返し応力負荷の下で上述
したミクロ組織変化の遅延を促して、B50転動疲労寿
命を著しく改善する。しかし、この場合でも3.0wt%を
超えるようなあまりに多量のNi量は、残留γを多量に析
出して強度の低下ならびに寸法安定性を害することにな
る他、コストアップになる。従って、高負荷転動時の軸
受寿命向上のためには、このNiを2.00〜3.0 wt%の範囲
内で添加することが必要である。
【0020】Mo:0.05〜0.5 wt% Moは、残留炭化物の安定化により耐摩耗性を向上させる
元素である。とくに0.05〜0.5 wt%を添加すると、焼入
れ性を増大して焼入れ焼もどし後の強度向上に寄与する
と共に、安定炭化物の析出により、耐摩耗性と転動疲労
寿命とを向上させる。
【0021】Cu:0.05〜1.0 wt% Cuは、焼入れの増大により焼入れ焼もどし後の強度を高
め、転動疲労寿命を向上させるために添加する。この目
的のために添加するときは、0.05〜1.0 wt%の範囲で十
分である。
【0022】B:0.0005〜0.01wt% Bは、焼入れ性の増大により焼入れ焼もどし後の強度を
高め、転動疲労寿命を向上させるので、0.0005wt%以上
を添加する。しかしながら、0.01wt%を超えて添加する
と加工性を劣化させるので、0.0005〜0.01wt%の範囲に
限定する。
【0023】Al:0.005 〜0.07wt% Alは、鋼の溶製時の脱酸剤として用いられると同時に、
鋼中Nと結合して結晶粒を微細化して鋼の靱性向上に寄
与する。また、焼入れ焼もどし後の強度を高めることに
よる転動疲労寿命の向上にも有効に作用する。これらの
効果は、0.005wt%未満では得られない。一方、0.07wt
%を超える添加は、上記の作用・効果については飽和す
る。従って、Alは 0.005〜0.07wt%の範囲で添加する。
【0024】N:0.0005〜0.012 wt%, 0.012 超〜0.05
wt% Nは、窒化物形成元素と結合して結晶粒を微細化すると
共に、基地に固溶して焼入れ焼もどし後の強度を高め、
転動疲労寿命を向上させる。この目的のためには0.0005
〜0.012 wt%の範囲内で添加する。また、このNは、0.
012 wt%を超えて添加した場合には、繰り返し応力によ
るミクロ組織変化を遅らせることにより転動疲労寿命を
向上させる。ただし、その量が0.05wt%を超えると、加
工性が低下するため、この目的のためには0.012 超〜0.
05wt%を添加する。
【0025】P≦0.025 wt% Pは、鋼の靱性ならびに転動疲労寿命を低下させること
から可能なかぎり低いことが望ましく、その許容上限は
0.025 wt%である。
【0026】S≦0.025 wt% Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させ
る。しかし、多量に含有させると転動疲労寿命を低下さ
せることから、0.025 wt%を上限としなければならな
い。
【0027】以上、繰り返し応力負荷によるミクロ組織
変化を遅延させることによる転動疲労寿命を改善すると
共に、強度の上昇を通じて転動疲労寿命を改善するため
の主要成分(NiおよびSi, Mn, Cr, Mo, Cu, Sb, Al,
B, N)およびC,P,Sの限定理由について説明した
が、本発明ではさらに、Zr, Ta, HfおよびCoのうちから
選ばれるいずれか1種または2種以上を添加することに
より、高負荷時の転動疲労寿命を改善させるようにして
もよい。
【0028】上記各元素の好適添加範囲と添加の目的、
上限値、下限値限定の理由につき、表2にまとめて示
す。
【0029】
【表2】
【0030】なお、本発明においては、被削性を改善す
るために、S,Se, Te, REM, Pb,Bi, Ca, Ti, Mg, P,
Sn, As等を添加しても、上述した本発明の目的である繰
り返し応力負荷によるミクロ組織変化による遅延特性を
阻害することはなく、容易に被削性を改善することがで
きるので、必要に応じて添加してもよい。
【0031】次に、本発明においては、上記成分組成の
限定に加え、鋼中の酸化物系非金属介在物の形態(大き
さ)制御を行うことよって、主として上述したB10転動
疲労寿命の一層の向上を図ることにした。
【0032】そこでまず、発明者らは、酸化物系非金属
介在物量ならびに成分組成が異なる2種の材料:即ち、
高炭素クロム軸受鋼(JIS-SUJ2)(A)と、上記適合範囲
内組成の軸受鋼(B)とを用いて、鋼中の酸化物系非金
属介在物最大径とB10転動疲労寿命との関係を調査し
た。その結果、図3に示すように、鋼中の酸化物系非金
属介在物量あるいは組成に関係なく、該非金属介在物の
最大径が8μmを越えると、B10転動疲労寿命は目立っ
て低下することが判り、このことから、本発明軸受鋼と
しては、最大粒径が8μm以下になるようにすることが
必要である。
【0033】
【実施例】表3, 表4に示す成分組成の鋼を常法にて溶
製し、得られた鋼材につき1240℃で30h の拡散焼鈍の後
に65mmφの棒鋼に圧延した。次いで、焼ならし−球状化
焼なまし−焼入れ−焼もどしの順で熱処理を行い、ラッ
ピング仕上げにより12mmφ×22mmの円筒型転動疲労寿命
試験片を作製した。非金属介在物の試験は、 400倍で 8
00視野の酸化物系非金属介在物を測定し、各視野での介
在物最大径をGumbel確率紙上にまとめ、50000 mm2 相当
の極値を算出し、鋼中に存在する酸化物系非金属介在物
最大粒径とした。また、転動疲労寿命試験は、ラジアル
タイプの転動疲労寿命試験機を用いて、ヘルツ最大接触
応力:600 kgf/mm2 , 繰り返し応力数約46500 cpm の条
件で行った。試験結果は、ワイブル分布に従うものとし
て確率紙上にまとめ、鋼材No.1 (従来鋼であるJIS- SuJ
2) の平均寿命 (累積破損確率:10%および50%におけ
る、剥離発生までの総負荷回数) を1として、その他の
鋼種のものを対比して評価したものである。その評価結
果を、表3、表4にそれぞれ併せて示した。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】表3, 4に示す結果から明らかなように、
鋼中C量が本発明範囲外である鋼材No.6, 鋼中Si,Mn,Ni
量 が本発明範囲外である鋼材No.2のB50軸受平均寿命
は、いずれも従来鋼(鋼材No.1)に比べて悪い。また、
介在物最大径が8μm を超えるNo.3 では、B10軸受寿
命が悪いという結果となった。これに対し、本発明鋼(
第1発明)である鋼材No.7〜10のB10, B50値の平均寿
命は、いずれも従来鋼(鋼材No.1) に比較して10倍も優
れている。すなわち、軸受鋼へのMn,Niの添加がミクロ
組織変化を著しく遅延し、介在物最大径の制御によっ
て、軸受のあらゆる転動疲労寿命の向上に対して有効に
作用したことが窺える。
【0037】なかでも、Mn,Niに加えてさらに、Cr, Mo,
Cu, B, Al, Zr, Ta, Hf, Co及びNを所定の量以上を
積極的に加えた鋼No.11〜36の場合には、上記平均寿命
(B5 0転動疲労寿命)は、より一層向上することが確か
められた。
【0038】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
基本的には2.00wt%以上の高Ni含有軸受鋼とすることに
より、繰り返し応力負荷に伴うミクロ組織変化の遅延を
もたらすことによる転動疲労寿命の向上を達成して、こ
の面において高寿命の軸受用の鋼を提供することができ
る。しかも、非金属介在物の粒径制御を通じて材料強度
を高めることによって、この面における転動疲労寿命の
向上をも実現できる。なお、本発明にかかる軸受鋼の開
発によって、転がり軸受の小型化ならびに軸受使用温度
のより以上の上昇が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は、繰り返し応力負荷の下に、
発生するミクロ組織変化のようすを示す金属組織の顕微
鏡写真。
【図2】介在物に起因する軸受寿命とミクロ組織変化に
起因する軸受寿命とに及ぼすMoの影響を示す説明図。
【図3】非金属介在物最大粒径と軸受転動疲労寿命との
関係を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平2−30733(JP,A) 特開 平3−122255(JP,A) 特開 昭49−47212(JP,A) 特開 平3−56640(JP,A) 特開 平4−26752(JP,A) 特開 平6−271977(JP,A) 小川ら”高炭素鋼の介在物低減技術" 材料とプロセスNo.4 Vol.4 (1991)−1206 伊吹ら”高清浄鋼の非金属介在物低減 技術”材料とプロセスNo.4 Vo l.4(1991)−1210 城山ら”高清浄鋼溶製技術の開発”材 料とプロセスNo.4 Vol.4 (1991)−1214 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt
    %, Mn: 0.5〜2.0 wt%, Ni: 2.00〜3.0 wt%を含み、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系
    非金属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
  2. 【請求項2】C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt
    %, Mn: 0.5〜2.0 wt%, Ni:2,00〜3.0 wt% を含有し、さらに、 Cr:0.05以上1.0 wt%未満, Mo:0.05〜0.5 wt%, Cu:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt
    %, Al:0.005 〜0.07wt%及びN:0.0005〜0.012 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
    み、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系
    非金属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
  3. 【請求項3】C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 w
    t%, Mn: 0.5〜2.0 wt%, Ni:2.00〜3.0 wt% を含有し、さらに Zr:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%, Hf:0.02〜0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt%及び N:0.012 超〜0.050 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
    み、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系
    非金属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
  4. 【請求項4】C: 0.5〜1.5 wt%, Si: 0.5〜2.5 wt
    %, Mn: 0.5〜2.0 wt%, Ni:2.00〜3.0 wt% を含有し、さらに、 Cr:0.05以上1.0 wt%未満, Mo:0.05〜0.5 wt%, Cu:0.05〜1.0 wt%, B:0.0005〜0.01wt
    %, Al:0.005 〜0.07wt%及びN:0.0005〜0.012 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
    み、さらにまた、 Zr:0.02〜0.5 wt%, Ta:0.02〜0.5 wt%, Hf:0.02〜0.5 wt%, Co:0.05〜1.5 wt%及び N:0.012 超〜0.050 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
    み、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ酸化物系
    非金属介在物の最大粒径が8μm以下である, 繰り返し
    応力負荷によるミクロ組織変化の遅延特性に優れた軸受
    鋼。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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伊吹ら"高清浄鋼の非金属介在物低減技術"材料とプロセスNo.4 Vol.4(1991)−1210
城山ら"高清浄鋼溶製技術の開発"材料とプロセスNo.4 Vol.4(1991)−1214
小川ら"高炭素鋼の介在物低減技術"材料とプロセスNo.4 Vol.4(1991)−1206

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