JP3188889B2 - 重合性不斉化合物 - Google Patents

重合性不斉化合物

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正敏 川島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は2,2’−ジヒドロキシ
−1,1’−ビナフチルのモノアクリロイル化物および
モノメタクリロイル化物に関する。さらに詳しくは式
(1)
【化3】 で示される2−アクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,
1’−ビナフチルおよび式(2)
【化4】 で示される2−メタクリロキシ−2’−ヒドロキシ−
1,1’−ビナフチルに関する。本発明により提供され
る式(1)および式(2)で示される化合物はそれぞれ
ラセミ体および二種類の光学異性体のいずれをも容易に
得ることができる。
【0002】
【従来の技術とその問題点】2,2’−ジヒドロキシ−
1,1’−ビナフチルは、その光学活性体が不斉源とし
て種々の不斉合成反応や光学分割に利用されている非常
に有用な化合物である。従来、2,2’−ジヒドロキシ
ン−1,1’−ビナフチルを用いたポリマ−としては
2,2’−ジアクリロキシン−1,1’−ビナフチルお
よび2,2’−ジメタクリロキシ−1,1’−ビナフチ
ルから誘導されたポリマ−が報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
は効果的な不斉識別能力を有するに欠くことのできない
水素結合を形成させるためのヒドロキシル基がなく、こ
のような目的には用いられていない。本発明者はヒドロ
キシル基を持ち、優れた不斉識別能力を有する光学活性
ポリマ−を製造するために必要な新規重合性不斉化合物
を見出すべく鋭意研究を行った。その結果、後述式
(1)ならびに式(2)で示される新規化合物の合成に
成功し、本発明を完成した。以上の説明から明らかなよ
うに、本発明の目的は、2,2’−ジヒドロキシ−1,
1’−ビナフチルの誘導体であって重合性ならびに不斉
識別能力を有する化合物ならびにその製造法を提供する
ことである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の本発
明により達成される。すなわち、本発明は、式(1)
【化5】 で示される2−アクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,
1’−ビナフチルおよび式(2)
【化6】 で示される2−メタクリロキシ−2’−ヒドロキシ−
1,1’−ビナフチルである。
【0005】本発明によって提供される上記化合物は式
(1)あるいは式(2)で表わされる平面構造を有する
が、それぞれ2種の光学異性体を含んでおり、その光学
異性体の各々は容易に得ることができる。すなわち本発
明に関わる式(1)および式(2)で表わされる化合物
はそれぞれラセミ体および光学活性体を含む。ラセミ体
の式(1)および式(2)で表わされる化合物を得る方
法としてはラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,
1’−ビナフチルにピリジンなどの塩基の存在下でアク
リル酸クロリドあるいはメタクリル酸クロリドを作用さ
せることによりそれぞれ比較的容易に得ることができ
る。光学活性体の式(1)および式(2)で表わされる
化合物を得る方法は先のラセミ体を得る方法と全く同様
にして光学活性体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’
−ビナフチルからそれぞれ容易に得ることができる。本
発明により提供される式(1)および式(2)で表され
る化合物の光学活性体から誘導された光学活性ポリマ−
は、2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルの
持つ不斉構造に加えて、ポリマ−の不斉な高次構造を合
わせ持ち、優れた不斉識別能力と立体規制能力を示すこ
とから、光学分割用カラムクロマトの担体をはじめ、各
種有機化合物の異性体分離などに於て利用価値が高い。
以下実施例によって本発明を説明する。
【0006】
【実施例】
実施例1 ラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チル5.00g(17.5mmol)をクロロホルム5
0mlに溶解し、ピリジン1.39g(17.6mmo
l)を加えた後、氷冷し、アクリル酸クロリド1.62
g(17.9mmol)を10℃以下でゆっくりと滴下
した。ついで室温で1時間攪拌した後、水50mlを加
え、クロロホルムで抽出、0.5M塩酸、水、飽和炭酸
水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸ナト
リウムで乾燥、減圧下室温で溶媒を留去し、粗生成物を
得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘ
キサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、ラセミ体の2
−アクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チル4.05g(11.9mmol)を収率68%で得
た。1 H−NMR(CDCl3 )δ 5.37(s,1
H),5.4−6.2(m,3H),7.0−8.1
(m,12H);IR(KBr)3450(s),30
70(m),3030(m),2975(m),173
0(s),1645(m),1620(s),1595
(s),1515(s),980(s),810
(s),750(s)cm-1;Anal.Found:
C,81.01;H,4.65%.Calcd for
23163 :C,81.16;H,4.74%
【0007】実施例2 ラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チルにかえて、99%ee以上(HPLC:ダイセル化
学工業(株)CHIRALPAK OP,MeOH,
0.5ml/min、以下同様)の(R)−(+)−
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルを使用
したほかは、実施例1とまったく同様にして行ない、9
9%ee以上(HPLC)の(R)−(+)−2−アク
リロキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチルを
収率69%で得た。 [α]D 24 +104°(c 0.4,CHCl3
【0008】実施例3 ラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チルにかえて、99%ee以上(HPLC)の(S)−
(−)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチ
ルを使用したほかは、実施例1とまったく同様にして行
ない、99%ee以上(HPLC)の(S)−(−)−
2−アクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナ
フチルを収率67%で得た。 [α]D 24 −104°(c 0.4,CHCl3
【0009】実施例4 ラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チル5.00g(17.5mmol)をクロロホルム5
0mlに溶解し、ピリジン1.39g(17.6mmo
l)を加えた後、氷冷し、メタクリル酸クロリド1.8
3g(17.5mmol)を10℃以下でゆっくりと滴
下した。ついで室温で1時間攪拌した後、水50mlを
加え、クロロホルムで抽出、0.5M塩酸、水、飽和炭
酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸ナ
トリウムで乾燥、減圧下室温で溶媒を留去し、粗生成物
を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−
(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、ラセミ体
の2−メタクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−
ビナフチル4.28g(12.1mmol)を収率69
%で得た。1 H−NMR(CDCl3 )δ1.58
(s,3H),5.1−5.3(m,1H),5.3
(brs,1H),5.67(brs,1H),7.0
−8.1(m,12H);IR(KBr)3450
(s),3060(m),3030(m),2990
(m),2960(m),2940(m),1725
(s),1620(s),1595(s),1510
(s),940(s),805(s),745(s)c
-1;Anal.Found:C,81.24;H,
5.01%.Calcdfor C24183 :C,8
1.34;H,5.12%
【0010】実施例5 ラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チルにかえて、99%ee以上(HPLC)の(R)−
(+)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチ
ルを使用したほかは、実施例4とまったく同様にして行
ない、99%ee以上(HPLC)の(R)−(+)−
2−メタクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビ
ナフチルを収率70%で得た。 [α]D 24 +132°(c 0.8,CHCl3
【0011】実施例6 ラセミ体の2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
チルにかえて、99%ee以上(HPLC)の(S)−
(−)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチ
ルを使用したほかは、実施例4とまったく同様にして行
ない、99%ee以上(HPLC)の(S)−(−)−
2−メタクリロキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビ
ナフチルを収率70%で得た。 [α]D 24 −132°(c 0.8,CHCl3
【0012】
【発明の効果】本発明の化合物はヒドロキシル基を持
ち、優れた不斉識別能力を有する光学活性ポリマ−を製
造するために必要な新規重合性不斉化合物として有用で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 69/54 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1) 【化1】 で示される2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
    チルのモノアクリロイル化物。
  2. 【請求項2】 式(2) 【化2】 で示される2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフ
    チルのモノメタクリロイル化物。
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Polymer Journal,1991,Vol.23,No.11,p.1393−1395
Tetrahedron Letters,1991,Vol.32,No.49,p.7281−7282

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