JP3178773U - 接触角計 - Google Patents
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Abstract
【課題】滑落法による各種測定を簡便に行うことが可能な接触角計を提供する。
【解決手段】接触角計1は、レンズ鏡胴36を備え、試料2上の液滴4を側方から撮影する撮像装置30と、レンズ鏡胴36の周方向に回動自在に配置される回動部材60と、回動部材60に配置され、試料2を保持するステージ20と、を備えている。
【選択図】図1
【解決手段】接触角計1は、レンズ鏡胴36を備え、試料2上の液滴4を側方から撮影する撮像装置30と、レンズ鏡胴36の周方向に回動自在に配置される回動部材60と、回動部材60に配置され、試料2を保持するステージ20と、を備えている。
【選択図】図1
Description
本考案は、固体表面に対する液体のぬれ性を示す指標として用いられる接触角を測定する接触角計に関する。
従来、固体表面における液体の接触角は、一般的に平板状の固体試料上に所定量の液体試料を滴下して側方から撮影することにより測定されている。すなわち、固体試料上の液滴を側方からCCDカメラ等の撮像装置により撮影し、これにより得られた液滴の側面画像に基づいて、液滴が固体試料表面と接する部分の角度を算出する(例えば、特許文献1参照)。この方法で測定される接触角は、固体表面に対し液体が静止している状態での接触角であるため、静止接触角と呼ばれることもある。
一方、例えばスピンコートや遠心脱水等の分野においては、固体表面に対して液体が相対的に移動する、すなわち固液界面が移動する状態でのぬれ性を評価する必要があり、このような場合に使用される指標として動的接触角がある。この動的接触角には、固液界面の進行方向側(前方側)における接触角である前進接触角と、進行方向の反対側(後方側)における接触角である後退接触角との2種類の接触角がある。
動的接触角の測定方法の1つとして、固体試料を傾斜させて液滴を固体表面上で滑らせる滑落法(転落法)が従来知られている。この滑落法によれば、前進接触角および後退接触角の測定に加え、液滴が滑落を開始する固体試料の傾斜角度である滑落角(転落角)を測定することが可能であり、さらに、滑落時の液滴の速度や挙動等を測定することで、物体の表面や界面に関してより多くの有益な情報を取得することが可能となる。従って、既存の接触角計には、滑落法による測定を可能とするためのオプションキットが用意されているものが存在している(例えば、非特許文献1または2参照)。
三洋貿易株式会社、"自動接触角計DSA100 転落角測定モデル"、[平成24年7月4日検索]、インターネット<URL:http://www.sanyo-kruss.com/products01/DSA100.html>
英弘精機株式会社、"自動接触角測定装置 転落角ユニット"、[平成24年7月4日検索]、インターネット<URL:http://www.eko.co.jp/eko/c/c09-dp_sita/dp/c090101-OCA/index.html>
滑落法による測定において、固体試料を撮像装置とは独立して回動させ、これにより固体試料を傾斜させるようにした場合、回動に伴って撮像装置に対する固体試料および液滴の相対的位置が変化することとなるため、撮像装置の視野内に液滴を収めておくのが難しく、測定中に煩雑な位置調整が必要となるという問題があった。
また、滑落角を測定する場合には、固体試料を回動させて傾斜角度を徐々に増加させ、液滴が滑落し始めたときの傾斜角度を取得する必要があるところ、液滴の滑落による移動を固体試料の回動に伴う移動とは分離して検出することが難しいという問題があった。特に、固体試料の回動中心の位置を画像上で正確に特定することが難しいため、回動に伴う液滴の移動を高精度に予測することは困難であった。
このため、非特許文献1または2に示される従来の接触角計におけるオプションキットでは、接触角計全体を回動させて傾斜させるようにしている。すなわち、固体試料と撮像装置を共に回動させることにより、回動に伴って固体試料および液滴と撮像装置との相対的な位置関係が変化しないようにしている。
しかしながら、このような従来のオプションキットは、接触角計全体を傾斜させることから大がかりな装置とならざるを得ないため、取り扱いが困難になると共に、設置場所が限定されるものとなっていた。
本考案は、斯かる実情に鑑み、滑落法による各種測定を簡便に行うことが可能な接触角計を提供しようとするものである。
(1)本考案は、レンズ鏡胴を備え、試料上の液滴を側方から撮影する撮像装置と、前記レンズ鏡胴の周方向に回動自在に配置される回動部材と、前記回動部材に配置され、前記試料を保持するステージと、を備えることを特徴とする、接触角計である。
(2)本考案はまた、前記回動部材は、前記レンズ鏡胴を支軸として回動自在に支持されることを特徴とする、上記(1)に記載の接触角計である。
(3)本考案はまた、前記回動部材の回動中心は、前記レンズ鏡胴に収容された光学系の光軸と略一致することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の接触角計である。
(4)本考案はまた、前記ステージは、前記試料の前記液滴が形成される面を前記回動部材の回動中心に対して近接離隔させる昇降機構を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の接触角計である。
(5)本考案はまた、前記ステージは、前記回動部材の回動中心と略平行な面内において前記試料を移動させる移動機構を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の接触角計である。
(6)本考案はまた、前記ステージは、前記回動部材の回動中心と略直交する面内において前記試料を移動可能に構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の接触角計である。
本考案に係る接触角計によれば、滑落法による各種測定を簡便に行うことが可能という優れた効果を奏し得る。
以下、本考案の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
まず、本考案の実施の形態に係る接触角計1について説明する。図1(a)は、本実施形態に係る接触角計1の概略正面図であり、同図(b)は、接触角計1の概略平面図である。本実施形態の接触角計1は、固体試料2上に滴下した液体試料の液滴4を側方から撮像し、接触角等を測定するものである。
接触角計1は、これらの図に示されるように、基台10と、基台10の略中央部に配置されたステージ20と、基台10の一端側(図の右側)に配置された撮像装置30と、基台10の他端側(図の左側)に配置された照明装置40と、ステージ20の上方に配置されたディスペンサ50と、基台10の略中央部に回動自在に配置され、ステージ20を支持する回動部材60と、回動部材60を駆動する駆動機構70と、コンピュータ80と、を備えている。
基台10は、撮像装置30、照明装置40、ディスペンサ50および回動部材60等を支持する部材である。基台10は、高さ調整機構を備えた脚部12を備えており、自身の水平度を調整することが可能となっている。また、基台10の上部には、必要に応じて装置全体を覆うカバーを取り付けることが可能となっており、温度や湿度等、測定雰囲気の状態を略一定に保つことができるようになっている。
ステージ20は、固体試料2が測定面2aを上にした状態で載置面22上に載置される所謂XYZステージである。ステージ20は、固体試料2を載置面22と略平行な面内において互いに直交する2方向に移動させる移動機構24と、固体試料2を載置面22と略直交する方向に移動(昇降)させる昇降機構26と、を備えており、コンピュータ80に制御されて固体試料2を移動させる。また、図示は省略するが、ステージ20は、挟持、締結、係合または吸着等の既知の手法により固体試料2を載置面22に固定して保持する固定部材を備えている。
移動機構24および昇降機構26は、それぞれステッピングモータおよびボールねじ伝動機構等の既知の構造により、所定の移動範囲にわたって固体試料2を移動可能、且つ移動範囲内の任意の位置で停止可能に構成されている。すなわち、ステージ20は、固体試料2を3次元的に移動させることで、固体試料2および液滴4を適宜の位置に配置するように構成されている。なお、固体試料2の形状は、特に限定されるものではなく、測定面2aを有する形状であればよい。
撮像装置30は、ステージ20上に載置された固体試料2上の液滴4を側方から撮影するものであり、本実施形態ではCCDカメラから構成されている。撮像装置30は、撮像素子等を収容する本体部32と、光学系(レンズ群)34を収容する略円筒状のレンズ鏡胴36と、を備えており、このレンズ鏡胴26を略水平にしてステージ20に向けた状態で配置されている。従って、撮像装置30の光学系24の光軸OAは、略水平方向となっている。
撮像装置30は、基台10上に設けられた支柱14に本体部32が固定されることで、基台10上に配置されている。なお、詳細は後述するが、本実施形態では、撮像装置30のレンズ鏡胴36を、回動部材60を回動自在に支持する支軸として兼用するようにしている。このため、本実施形態では、レンズ鏡胴36を支持する支持部材14を別個に設けることで、撮像装置30にかかる負荷を軽減するようにしている。
照明装置40は、撮像装置30によって固体試料2上の液滴4を撮影する場合に液滴4を背後から照明するものである。照明装置50は、例えばハロゲンランプやLED等の光源を備え、ステージ20上の固体試料2および液滴4に向けて光を放射するように構成されている。
ディスペンサ50は、支柱14から略水平方向に突設されたアーム18に配置されており、上方から固体試料2上に液体試料を滴下して液滴4を形成するものである。ディスペンサ50は、既知の構造により、コンピュータ80に制御されて管状の針52の先端から所定量の液滴を滴下するように構成されている。また、ディスペンサ50は、コンピュータ80に制御されて昇降可能となっており、針72の先端をステージ20上の固体試料2に対して近接離隔させることが可能となっている。
なお、ディスペンサ50により滴下される液体試料は、特に限定されるものではなく、純水や各種水溶液であってもよいし、アルコール類や油脂類等であってもよい。また、水銀やはんだ等の液体金属や溶融金属であってもよい。
回動部材60は、ステージ20を支持する部材であり、上述のように撮像装置30のレンズ鏡胴36を支軸として回動自在に配置されている。すなわち、本実施形態では、回動部材60を回動させることによって、ステージ20上に載置された固体試料2をステージ20と共に傾斜させ、これにより滑落法(転落法)による各種測定を行うように構成されている。
回動部材60は、レンズ鏡胴36に接続される接続部62と、接続部62から照明装置40側に向けて延出する延出部64と、を備えている。接続部62は、レンズ鏡胴36の外周36aに設けられた軸受66を介してレンズ鏡胴36に回動自在に接続されている。すなわち、回動部材60は、レンズ鏡胴36の外周36aに沿ってレンズ鏡胴36の周方向に回動するようになっている。
延出部64は、接続部62の下端部から撮像装置30の反対側に向けて延出するように設けられており、上部にステージ20が配置されるようになっている。これにより、本実施形態では、固体試料2の測定面2aを回動部材60の回動中心Cの近傍に配置し、回動部材60を回動させて固体試料2を傾斜させる際の固体試料2および液滴4の移動量が最小限となるようにしている。従って、本実施形態では、固体試料2の傾斜角度を大きくした場合にも、液滴4が撮像装置30の視野から外れにくくなっている。
また、本実施形態では、回動部材60にステージ20を配置することによって、回動部材60の回転角度によらず、固体試料2および液滴4の位置を調整することを可能としている。なお、ステージ20は、移動機構24による一方の移動方向が回動部材60の回動中心Cと略平行となるように配置されている。従って、移動機構24による他方の移動方向、および昇降機構26による移動方向は、常に回動中心Cに対して略直交する方向となるようになっている。
すなわち、本実施形態では、回動部材60の回転角度によらず、昇降機構26によって固体試料2の測定面2aを回動中心Cに対して近接離隔させることが可能であると共に、回動中心Cと略直交する面内において液滴4の位置を調整することが可能となっている。
駆動機構70は、支持部材14に配置されたモータ72と、モータ72の出力軸72aに固定された駆動ギヤ74と、回動部材60の回動中心Cを中心として接続部62に固定され、駆動ギヤ74と噛み合う従動ギヤ76と、から構成されている。なお、図面においては、駆動ギヤ74および従動ギヤ76の歯を省略して記載している。
駆動機構70は、コンピュータ80に制御されて回動部材60を回動中心C回りに回動させると共に、任意の回転角度で停止させる。また、駆動機構70は、既知の手法のブレーキ機構を備えており、回動部材60を任意の回転角度の状態で保持可能に構成されている。なお、駆動ギヤ74および従動ギヤ76に代えて、ベルト伝動機構やチェーン伝動機構を採用するようにしてもよい。また、回動部材60にモータを組み込むようにしてもよい。
図2(a)および(b)は、回動部材60の回動の様子を示した概略図であり、図1(a)のA−A線断面図である。同図(a)は、回動部材60が基準姿勢である場合を示している。回動部材60が基準姿勢である場合、ステージ20の載置面22は略水平状態となり、ステージ20は固体試料2を水平面内の2方向および鉛直方向に移動させることとなる。すなわち、本実施形態では、回動部材60が基準姿勢である場合には、静止接触角を測定する一般的な接触角計と同様に取り扱うことが可能となっており、従来どおりの手法で静止接触角を測定することが可能となっている。
滑落法(転落法)により前進接触角、後退接触角および滑落角等を測定する場合には、同図(b)に示されるように、回動部材60を回動させて固体試料2を傾斜させる。本実施形態では、回動部材60は、左右にそれぞれ90°の角度まで回動可能に構成されており、固体試料2を最大90°の角度で傾斜させることが可能となっている。なお、ディスペンサ50は、必要に応じて退避させる。
本実施形態では、撮像装置30のレンズ鏡胴36を回動部材60の支軸として兼用しているため、回動部材60の回動中心Cが撮像装置30の光学系34の光軸OAと略一致するようになっている。すなわち、回動部材60は、光軸OAを中心として回動するようになっている。
回動中心Cと光軸OAを略一致させることにより、校正作業等を必要とすることなく、撮像装置20によって撮影した画像における回動中心Cの位置を容易に特定することが可能となる。すなわち、画像の中心位置が常に回動中心Cの位置となるため、画像処理において回動部材60の回動に伴う固体試料2および液滴4の位置の変化の検出が容易となり、前進接触角、後退接触角および滑落速度等の導出を高速且つ高精度に行うことが可能となる。
回動部材60専用の支軸を設けて回動中心Cと光軸OAを略一致させる場合には、支軸によって撮像装置20の視界が妨げられたり、照明装置40の光が遮られたりといった不具合を解消する必要があるため、装置構成が複雑且つ大がかりとなってしまうという問題がある。また、回動中心Cと光軸OAを高精度に芯出しする必要があることから、装置構成がさらに複雑且つ高コストとなり、取り扱いにも注意を要するという問題が生じる。
本実施形態では、レンズ鏡胴36を回動部材60の支軸として兼用することで、このような問題を解消しつつ、装置全体を簡素且つコンパクトに構成することを可能としている。すなわち、高精度に配置される光学系34を収容するレンズ鏡胴36の外周36aは、十分な精度で光軸OAを中心とする円周を構成しているため、これを有効活用することで、簡素な構成でありながらも、十分な精度で回動中心Cと光軸OAを容易に一致させることが可能となっている。
また、回動部材60の支軸を配置するスペースを削減することができるため、滑落法に対応していない接触角計と略同等のサイズに装置全体を構成することが可能となっている。特に、レンズ鏡胴36を回動部材60の支軸とすることで、撮像装置30は回動部材60に遮られることなく自然にステージ20上の固体試料2に向けられることとなるため、効率的なレイアウトを実現することが可能となっている。
なお、撮像装置30のレンズ鏡胴36は、全体が略円筒状に構成される必要はなく、回動部材60の支軸として兼用可能な円筒状の部分(外周が円形となる部分)を有するものであればよい。また、レンズ鏡胴36の外周36aに適宜のスリーブやリング等を固定し、その外周に回動部材60を接続するようにしてもよい。また、軸受66は、レンズ鏡胴36の外周36aに嵌合されるボールベアリングやローラベアリング等であってもよいし、滑り軸受であってもよい。
図1(a)および(b)に戻って、コンピュータ80は、図示は省略するが、CPUと、ROM、RAM、ハードディスクおよびフラッシュメモリ等の記憶手段と、液晶ディスプレイ等の表示手段と、キーボードおよびマウス等の入力手段と、を備えて構成されている。コンピュータ80は、記憶手段に記憶されたプログラムを実行することによって動作し、ステージ20、撮像装置30、照明装置40、ディスペンサ50および駆動機構70等を制御する。また、コンピュータ80は、撮像装置30によって撮影した画像を受信して記憶すると共に、各装置の制御情報と共に画像を処理することによって静止接触角、前進接触角、後退接触角および滑落速度等の各種データを導出し、記憶する。
なお、コンピュータ80は、接触角計1に一体的に組み込まれるものであってもよい。また、ステージ20等の制御用のコンピュータと、画像処理等のデータ処理を行うデータ処理用のコンピュータとを別個に設けるようにしてもよい。また、プログラムの実行によってコンピュータ80の各機能を実現するのではなく、専用の回路によって各機能を実現するようにしてもよい。
次に、接触角計1による静止接触角、前進接触角、後退接触角および滑落角等の測定手順について説明する。図3(a)〜(d)および図4は、接触角計1による接触角等の測定手順を示した図であり、撮像装置30によって撮影した画像を示している。
測定では、まず駆動機構70を操作して回動部材60を基準姿勢の状態とする。次に、ステージ20上に固体試料2を載置して固定する。そして、必要に応じてステージ20を操作し、撮像装置30の視野内の最適な位置に固体試料2を移動させる。また、必要に応じて照明装置40の光量および位置等を調整する。
次に、ディスペンサ50を操作して固体試料2の測定面2a上に液体試料を滴下し、同図(a)に示されるように、液滴4を形成する。コンピュータ80は、この状態で撮影した画像を記憶して画像処理を施し、静止接触角θ1を導出して記憶する。この静止接触角θ1の導出は、例えばθ/2法、接線法またはカーブフィッティング法等、画像から接触角を導出する既存の手法により行うことができる。
なお、θ/2とは、液滴4の頂点と端点を結ぶ直線と固体試料2の測定面2aとの成す角度を求め、この角度の2倍を静止接触角θ1とする手法である。また、接線法とは、液滴4の輪郭形状を円の一部と仮定して円の中心を求め、円の接線と直線でなす角度を接触角として求める手法である。また、カーブフィッティング法とは、液滴4の輪郭形状が真円または楕円の一部をなすと仮定し、指定された区間内(フィッティング区間)の全ての観測座標を使って最小二乗法フィッティングを行うことで真円または楕円のパラメータを決定し、端点における微分係数を求めて接触角を算出する手法である。
次に、必要であれば、ステージ20を操作して固体試料2および液滴4を光軸OA(および、回動中心C)と略平行な方向に移動させ、撮像装置30による撮影範囲および画像中の液滴4の大きさを調整する。そして、ステージ20を操作して固体試料2および液滴4を光軸OA(および、回動中心C)と直交する面内で移動させ、同図(b)に示されるように、液滴4に設定した指標点Pを画像の中心に位置させる。
これにより、指標点Pは、撮像装置30の光学系34の光軸OA上に略位置することとなり、回動部材60の回動中心C上に略位置することとなる。なお、ここでは、液滴4の左側の端点を指標点Pとした例を示しているが、例えば液滴4の右側の端点や頂点等、その他の点を指標点Pとしてもよいことは言うまでもない。また、指標点Pを複数設定し、いずれか1つを画像の中心に位置させるようにしてもよい。
次に、駆動機構70を操作して回動部材60を回動させ、同図(c)に示されるように、固体試料2の傾斜角度を徐々に増加させていく。このとき、指標点Pは、光軸OAおよび回動中心C上に略位置しているため、固体試料2の傾斜角度の増加によっては殆ど移動しないようになっている。従って、本実施形態では、指標点Pの移動を検出することにより、容易且つ高精度に液滴4の滑り出しを検出することが可能となっている。
コンピュータ80は、駆動機構70を制御して回動部材60を回動させながら撮像装置30によって撮影した画像において指標点Pが移動したか否かを監視する。コンピュータ80は、指標点Pの移動を検出したならば、駆動機構70を操作して回動部材60の回動を停止させる。そして、同図(d)に示されるように、指標点Pの移動を検出したとき、すなわち液滴4が滑落を開始したときの回動部材60の回転角度を駆動機構70の制御情報、または駆動機構70に設けたロータリエンコーダ等から取得し、滑落角θsとして記憶する。なお、画像処理によって固体試料2の測定面2aの傾斜角度を導出し、これを滑落角θsとして記憶するようにしてもよい。
同図(d)に示されるように、液滴4が滑落している間、コンピュータ80は、撮像装置30が撮影した画像を、所定のサンプリング周期で取得して記憶する。そして、記憶した画像から前進接触角θ2および後退接触角θ3を導出して記憶する。なお、前進接触角θ2および後退接触角θ3の導出は、上述の接線法やカーブフィッティング法等により行うことができる。
コンピュータ80はまた、撮影した画像における指標点Pの移動距離および時間から、必要に応じて液滴4の滑落速度および加速度等を導出して記憶する。さらに、必要に応じてコンピュータ80は、撮影した画像に基づき、滑落中の液滴4の形状の変化や液滴4中の液体試料の流動状態等を適宜の手法により解析して記憶する。なお、液滴4中の流動状態は、例えば液体試料中に微細なマーカを混入させることによって測定することができる。
以上の手順により、滑落法による1回の測定が完了する。測定中、撮像装置30によって撮影した画像および測定結果は、適宜コンピュータ80の表示手段に表示される。なお、測定は、全ての操作をコンピュータ80の制御によって自動的に行うようにしてもよいし、適宜手動操作を含めるようにしてもよい。
また、画像処理に基づく各種データの導出は、測定中に随時行うようにしてもよいし、記憶した画像に基づいて後からまとめて行うようにしてもよい。また、静止接触角θ1および滑落角θsが予め分っている場合は、これらの測定を省略するようにしてもよい。また、固体試料2の傾斜角度を変更して測定を行い、傾斜角度ごとの前進接触角θ2、後退接触角θ3および滑落速度等を測定するようにしてもよい。
また、図4に示されるように、指標点Pを画像の中心に位置させずに固体試料2を傾斜させるようにしてもよい。上述のように本実施形態では、光軸OAと回動中心Cを略一致させるようにしているため、この場合の指標点Pは、同図に示されるように、回動部材60の回動に伴って画像の中心を中心とする円周上を移動することとなる。従って、本実施形態では、回動部材60の回動に伴う指標点Pの移動を容易に予測することが可能であり、指標点Pを画像の中心に位置させなくても、液滴4の滑落による指標点Pの移動を容易且つ高精度に検出することが可能となっている。
次に、接触角計1のその他の形態について説明する。なお、以下の説明においては、上述の例の接触角計1と共通の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図5(a)は、円筒状の支軸90の内側にレンズ鏡胴36を挿入するようにした場合の一例を示した概略正面図である。この例では、支持部材16によって支持される円筒状の支軸90を設け、この支軸90に軸受66を介して回動部材60を回動自在に接続すると共に、支軸90の内側にレンズ鏡胴36を挿入するようにしている。
この場合、レンズ鏡胴36の外周36aと支軸90の内周90aとの嵌め合いを適宜に設定することにより、回動部材60の回動中心Cと撮像装置30の光学系34の光軸OAとを、十分な精度で略一致させることができる。このようにすることで、撮像装置30にかかる負荷を軽減することができる。
なお、この場合においてレンズ鏡胴36は、支軸90内に全体が挿入されるものであってもよいし、一部のみが挿入されるものであってもよい。また、レンズ鏡胴36は、全体が略円筒状に構成される必要はなく、支軸90の内周90aとの嵌め合いを設定可能な円筒状の部分(外周が円形となる部分)を有するものであればよい。また、レンズ鏡胴36と支軸90との間に適宜のスリーブやリング等を配置して、嵌め合いを調整するようにしてもよい。
図5(b)は、支持部材16を省略するようにした場合の一例を示した概略正面図である。撮像装置30を接触角計1専用に設計する等により、撮像装置30が十分な強度および剛性を有している場合には、支持部材16を省略するようにしてもよい。この場合、よりコンパクトに接触角計1を構成することが可能となる。
図6は、回動部材60の回動範囲を拡大した場合の一例を示した概略図であり、図1(a)のA−A線断面図である。この例では、アーム18に揺動機構18aを設け、この揺動機構18aによってディスペンサ50を揺動させて退避させることにより、回動部材60を左右それぞれ360°回動可能に構成している。このようにすることで、測定面2aを下方に向け、液滴4を測定面2aから懸垂した状態で滑落させることが可能となる。すなわち、滑落法による測定をより多彩な態様で行うことが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る接触角計1は、レンズ鏡胴36を備え、試料(固体試料2)上の液滴4を側方から撮影する撮像装置30と、レンズ鏡胴36の周方向に回動自在に配置される回動部材60と、回動部材60に配置され、試料(固体試料2)を保持するステージ20と、を備えている。
このように構成することで、滑落法による各種測定を簡便に行うことができる。すなわち、固体試料2を傾斜させるための回動に伴う固体試料2および液滴4の移動量を小さくすることが可能となるため、接触角計全体を傾斜させるような大がかりな装置を必要とすることなく、液滴4が撮像装置30の視野内から外れにくくすることができる。これにより、固体試料2の傾斜角度を増加させていく際の液滴4の位置調整の頻度を低減し、滑落法による各種測定を迅速且つ容易に行うことができる。
また、回動部材60は、レンズ鏡胴36を支軸として回動自在に支持されている。このように、レンズ鏡胴36を支軸として兼用することにより、回動部材60を設けながらも撮像装置30その他の機器を効率的に配置することができる。これにより、接触角計1を簡素且つコンパクトに構成することが可能となるため、接触角計1の取り扱いを容易にすることができる。
また、回動部材60の回動中心Cは、レンズ鏡胴36に収容された光学系34の光軸OAと略一致している。このようにすることで、校正作業等を行わなくとも、撮像装置30によって撮影した画像における回動中心Cの位置を容易に特定することができる。これにより、回動に伴う固体試料2および液滴4の移動を容易に予測することが可能となるため、液滴4の滑落を容易且つ高精度に検出することができる。なお、本実施形態では、回動部材60をレンズ鏡胴36の周方向に回動自在に配置することにより、芯出し作業等を必要とすることなく、容易に光軸OAと回動中心Cを略一致させることが可能となっている。
また、ステージ20は、試料(固体試料2)の液滴4が形成される面(測定面2a)を回動部材60の回動中心Cに対して近接離隔させる昇降機構26を備えている。このようにすることで、固体試料2のサイズによらず、回動に伴う液滴4の移動量を最小限に調整することができる。
また、ステージ20は、回動部材60の回動中心Cと略平行な面内において試料(固体試料2)を移動させる移動機構24を備えている。このようにすることで、撮像装置30による撮影範囲を調整すると共に、撮像装置30によって撮影した画像における液滴4の位置および大きさを適宜に調整することができる。
また、ステージ20は、回動部材60の回動中心Cと略直交する面内において試料(固体試料2)を移動可能に構成されている。このようにすることで、撮像装置30によって撮影した画像における液滴4の位置を適宜に調整すると共に、例えば液滴4の滑落を検出するための指標点Pを回動中心C上に位置させ、指標点Pが回動に伴って移動しないようにすることができる。これにより、液滴4の滑落を容易且つ高精度に検出することが可能となる。
以上、本考案の実施の形態について説明したが、本考案の接触角計は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本考案の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、接触角計1を構成する各部材および機構等の形状および配置構成は、上記実施形態で示したものに限定されるものではなく、その他の各種形状および配置構成を採用することができる。
また、上記実施形態では、回動部材60の回動中心Cを撮像装置30の光学系34の光軸OAと略一致させた場合の例を示したが、本考案はこれに限定されるものではなく、回動中心Cと光軸OAは必ずしも一致する必要はない。すなわち、本考案によれば、回動中心Cと光軸OAが一致していなくとも、接触角計1をコンパクトに構成し、且つ回動に伴う固体試料2および液滴4の移動量を従来以上に減少させることが可能となっている。
また、上記実施形態では、ステージ20の移動機構24を、互いに直交する2方向に固体試料2を移動可能に構成した場合の例を示したが、移動機構24は、光軸OA(および、回動中心C)に直交する方向にのみ固体試料2を移動可能に構成されるものであってもよい。すなわち、ステージ20は、光軸OA(および、回動中心C)に直交する面内においてのみ固体試料2を移動可能に構成されるものであってもよい。また、接触角計1の用途等によっては、ステージ20に昇降機構26のみを備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、液滴4を側方から撮影する撮像装置30のみを備えるようにした場合の例を示したが、例えば液滴4を上方から撮影する撮像装置を追加する等、液滴4を複数の異なる方向から撮影可能に構成してもよい。この場合、追加の撮像装置は、基台10に配置するようにしてもよいし、回動部材60に配置するようにしてもよい。
また、上記実施形態において示した作用および効果は、本考案から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本考案による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
本考案の接触角計は、各種物体の表面性状の測定および評価の分野で利用することができる。
1 接触角計
2 固体試料
2a 測定面
4 液滴
20 ステージ
24 移動機構
26 昇降機構
30 撮像装置
34 光学系
36 レンズ鏡胴
60 回動部材
C 回動中心
OA 光軸
2 固体試料
2a 測定面
4 液滴
20 ステージ
24 移動機構
26 昇降機構
30 撮像装置
34 光学系
36 レンズ鏡胴
60 回動部材
C 回動中心
OA 光軸
Claims (6)
- レンズ鏡胴を備え、試料上の液滴を側方から撮影する撮像装置と、
前記レンズ鏡胴の周方向に回動自在に配置される回動部材と、
前記回動部材に配置され、前記試料を保持するステージと、を備えることを特徴とする、
接触角計。 - 前記回動部材は、前記レンズ鏡胴を支軸として回動自在に支持されることを特徴とする、
請求項1に記載の接触角計。 - 前記回動部材の回動中心は、前記レンズ鏡胴に収容された光学系の光軸と略一致することを特徴とする、
請求項1または2に記載の接触角計。 - 前記ステージは、前記試料の前記液滴が形成される面を前記回動部材の回動中心に対して近接離隔させる昇降機構を備えることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の接触角計。 - 前記ステージは、前記回動部材の回動中心と略平行な面内において前記試料を移動させる移動機構を備えることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の接触角計。 - 前記ステージは、前記回動部材の回動中心と略直交する面内において前記試料を移動可能に構成されることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の接触角計。
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015107159A1 (de) * | 2014-01-17 | 2015-07-23 | Technische Universität Kaiserslautern | Vorrichtung und verfahren zur bestimmung des kontaktwinkels eines flüssigkörpers mit einer festkörperoberfläche |
CN106468646A (zh) * | 2015-08-19 | 2017-03-01 | 中国石油天然气股份有限公司 | 接触角测量仪 |
CN111220508A (zh) * | 2020-02-20 | 2020-06-02 | 河南师范大学 | 基于静态接触角测试的硅橡胶复合绝缘子老化程度判断方法 |
CN111693406A (zh) * | 2020-05-11 | 2020-09-22 | 江苏大学 | 一种材料表面润湿性接触角及滚动角的测量装置 |
CN112129673A (zh) * | 2020-10-10 | 2020-12-25 | 广西科学院 | 一种用于超疏水材料生产用检验装置 |
CN114636547A (zh) * | 2022-03-14 | 2022-06-17 | 蚌埠顺隆光电科技有限公司 | 一种手机显示屏用水滴角测试装置 |
-
2012
- 2012-07-19 JP JP2012004412U patent/JP3178773U/ja not_active Expired - Fee Related
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