JP3175475B2 - 無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材、製造方法、洗浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法 - Google Patents
無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材、製造方法、洗浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法Info
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- Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、使用時における汚染物
質の付着を低減することができると共に、汚染物質の除
去性（洗浄性）にも優れた無塗装Ａｌ合金部材、および
その様なＡｌ合金部材を製造するための有用な方法、洗
浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法等に関す
るものである。尚本発明に係る無塗装ＡｌまたはＡｌ合
金（以下、Ａｌ合金で代表することがある）部材は、サ
ッシ、パネル、ガードレール等の土木・建築材料や、航
空機の外板等の各種用途に適用できるものであるが、以
下では地下鉄等の鉄道車両の外板として用いる場合を代
表的に取り上げて説明を進める。
質の付着を低減することができると共に、汚染物質の除
去性（洗浄性）にも優れた無塗装Ａｌ合金部材、および
その様なＡｌ合金部材を製造するための有用な方法、洗
浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法等に関す
るものである。尚本発明に係る無塗装ＡｌまたはＡｌ合
金（以下、Ａｌ合金で代表することがある）部材は、サ
ッシ、パネル、ガードレール等の土木・建築材料や、航
空機の外板等の各種用途に適用できるものであるが、以
下では地下鉄等の鉄道車両の外板として用いる場合を代
表的に取り上げて説明を進める。
【０００２】
【従来の技術】近年、地下鉄等の鉄道車両構造の軽量化
に対応するべく、Ａｌ合金による車両は大きく注目され
ており、従来の鉄鋼材料からＡｌ合金材料への転換が進
められている。またＡｌ合金は、表面に自然酸化皮膜が
形成され、表面処理を施さなくとも耐食性が良好である
ことから、無塗装のＡｌ合金材料が鉄道車両外板用とし
て使用されるのが一般的である。
に対応するべく、Ａｌ合金による車両は大きく注目され
ており、従来の鉄鋼材料からＡｌ合金材料への転換が進
められている。またＡｌ合金は、表面に自然酸化皮膜が
形成され、表面処理を施さなくとも耐食性が良好である
ことから、無塗装のＡｌ合金材料が鉄道車両外板用とし
て使用されるのが一般的である。
【０００３】一方、Ａｌ合金材料を車両外板として用い
た場合には、雨垂れ状の黒い汚れや車両下部の赤い汚れ
によって、美観が損なれるということが頻繁にある。こ
れらの汚れは、機械的な自動洗浄によっては十分に除去
されず、手作業による洗浄が行われるのが一般的であ
り、これがコスト増大につながっている。このことが、
車両のＡｌ化が阻止されている原因の１つであると考え
られている。こうしたことから、Ａｌ合金材料自体の清
浄性向上や、有用な洗浄剤もしくは洗浄方法の実現が望
まれているのが実情である。
た場合には、雨垂れ状の黒い汚れや車両下部の赤い汚れ
によって、美観が損なれるということが頻繁にある。こ
れらの汚れは、機械的な自動洗浄によっては十分に除去
されず、手作業による洗浄が行われるのが一般的であ
り、これがコスト増大につながっている。このことが、
車両のＡｌ化が阻止されている原因の１つであると考え
られている。こうしたことから、Ａｌ合金材料自体の清
浄性向上や、有用な洗浄剤もしくは洗浄方法の実現が望
まれているのが実情である。
【０００４】Ａｌ合金材料自体の清浄性の向上を図るた
めの一つの手段として、Ａｌ合金材料に各種の塗装を施
すことも考えられまた実施されているが、Ａｌ合金材料
自体の良好な耐食性を生かすべく無塗装の状態で使用さ
れることが多い状況に反するものである。
めの一つの手段として、Ａｌ合金材料に各種の塗装を施
すことも考えられまた実施されているが、Ａｌ合金材料
自体の良好な耐食性を生かすべく無塗装の状態で使用さ
れることが多い状況に反するものである。
【０００５】また無塗装Ａｌ合金材料を洗浄する方法も
しくはそのための洗浄剤として、例えば特公平４−１８
７７８８号や特公昭５１−２０５２９号等に開示される
ような技術も提案されている。しかしながら、無塗装Ａ
ｌ合金材料の洗浄に関するこれまで提案されてきた技術
は、実際の施工において多大な労力を要する割りにはそ
の効果は小さいという問題があった。また洗浄剤に含有
されている薬品による環境汚染や、作業者への悪影響も
指摘されている。
しくはそのための洗浄剤として、例えば特公平４−１８
７７８８号や特公昭５１−２０５２９号等に開示される
ような技術も提案されている。しかしながら、無塗装Ａ
ｌ合金材料の洗浄に関するこれまで提案されてきた技術
は、実際の施工において多大な労力を要する割りにはそ
の効果は小さいという問題があった。また洗浄剤に含有
されている薬品による環境汚染や、作業者への悪影響も
指摘されている。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な事情
に鑑みてなされたものであって、その第１の目的は、Ａ
ｌまたはＡｌ合金部材自体の清浄性を向上させ、Ａｌま
たはＡｌ合金部材自体の汚染の進行を抑制すると共に、
洗浄時に一般的な洗浄方法を採用しても汚染が容易に除
去できるような無塗装ＡｌまたはＡｌ合金材料を提供す
ることにある。また本発明の第２の目的は、上記のよう
な無塗装ＡｌまたはＡｌ合金材料を製造するための有用
な方法を提供することにある。
に鑑みてなされたものであって、その第１の目的は、Ａ
ｌまたはＡｌ合金部材自体の清浄性を向上させ、Ａｌま
たはＡｌ合金部材自体の汚染の進行を抑制すると共に、
洗浄時に一般的な洗浄方法を採用しても汚染が容易に除
去できるような無塗装ＡｌまたはＡｌ合金材料を提供す
ることにある。また本発明の第２の目的は、上記のよう
な無塗装ＡｌまたはＡｌ合金材料を製造するための有用
な方法を提供することにある。
【０００７】更に、本発明の第３の目的は、従来技術に
おけるような問題が生じることなく、無塗装Ａｌまたは
Ａｌ合金材料の汚染を容易に除去することができ、且つ
洗浄後の外板表面において汚染の進行を極力抑制するこ
とにできる洗浄方法を提供することにある。本発明の更
に他の目的は、上記のような無塗装Ａｌ合金材料に関連
して、有用な耐汚染性向上方法や表面被覆方法等を提供
することにある。
おけるような問題が生じることなく、無塗装Ａｌまたは
Ａｌ合金材料の汚染を容易に除去することができ、且つ
洗浄後の外板表面において汚染の進行を極力抑制するこ
とにできる洗浄方法を提供することにある。本発明の更
に他の目的は、上記のような無塗装Ａｌ合金材料に関連
して、有用な耐汚染性向上方法や表面被覆方法等を提供
することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】上記第１の目的を達成し
た本発明とは、最表面に、バイヤライトを主成分とする
アルミナ水和物からなる被覆膜が形成されたものである
点に要旨を有する耐汚染性に優れた無塗装ＡｌまたはＡ
ｌ合金部材である。また上記のような耐汚染性に優れた
無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材は、Ａｌの水可溶性塩を
含む水溶液に、ＡｌまたはＡｌ合金素地を浸漬すること
によって製造でき、これによって本発明の上記第２の目
的が達成される。
た本発明とは、最表面に、バイヤライトを主成分とする
アルミナ水和物からなる被覆膜が形成されたものである
点に要旨を有する耐汚染性に優れた無塗装ＡｌまたはＡ
ｌ合金部材である。また上記のような耐汚染性に優れた
無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材は、Ａｌの水可溶性塩を
含む水溶液に、ＡｌまたはＡｌ合金素地を浸漬すること
によって製造でき、これによって本発明の上記第２の目
的が達成される。
【０００９】更に、上記第３の目的を達成した本発明と
は、ＡｌまたはＡｌ合金部材を洗浄するに当たり、洗剤
噴霧および水洗の各工程の後、前記ＡｌまたはＡｌ合金
部材の表面を、熱した脱イオン水に接触させる点に要旨
を有するＡｌ合金部材の洗浄方法である。
は、ＡｌまたはＡｌ合金部材を洗浄するに当たり、洗剤
噴霧および水洗の各工程の後、前記ＡｌまたはＡｌ合金
部材の表面を、熱した脱イオン水に接触させる点に要旨
を有するＡｌ合金部材の洗浄方法である。
【００１０】また、本発明のＡｌまたはＡｌ合金部材の
耐汚染性向上方法とは、ＡｌまたはＡｌ合金部材の表面
を熱した脱イオン水に接触させる点に要旨を有するもの
である。
耐汚染性向上方法とは、ＡｌまたはＡｌ合金部材の表面
を熱した脱イオン水に接触させる点に要旨を有するもの
である。
【００１１】また、本発明の表面被覆方法とは、Ａｌま
たはＡｌ合金部材の表面を脱イオン水に接触させ、最表
面にアルミナ水和物からなる被覆膜を形成する点に要旨
を有するものである。
たはＡｌ合金部材の表面を脱イオン水に接触させ、最表
面にアルミナ水和物からなる被覆膜を形成する点に要旨
を有するものである。
【００１２】
【作用】本発明者らは、無塗装Ａｌ合金部材の清浄性を
高めるという観点から、その表面形態と清浄性の関係に
ついて、実験および検討を重ねた。その結果、最表面に
アルミナ水和物からなる表面皮膜が形成された無塗装Ａ
ｌ合金部材では、耐汚染性に優れ、極めて高い清浄性が
達成されることを見いだし、本発明を完成した。上記の
ような無塗装Ａｌ合金部材が、極めて高い清浄性を示す
理由については、その全てを解明した訳ではないが、お
そらくアルミナ水和物が親水性に富むので、油脂分や炭
素成分等を中心とした汚染物質の使用における付着を低
減すると共に、汚染物質の除去性にも優れたものとな
り、洗剤噴霧と水洗からなるような従来の一般的洗浄方
法においても極めて高い清浄性が達成されるものと考え
られる。
高めるという観点から、その表面形態と清浄性の関係に
ついて、実験および検討を重ねた。その結果、最表面に
アルミナ水和物からなる表面皮膜が形成された無塗装Ａ
ｌ合金部材では、耐汚染性に優れ、極めて高い清浄性が
達成されることを見いだし、本発明を完成した。上記の
ような無塗装Ａｌ合金部材が、極めて高い清浄性を示す
理由については、その全てを解明した訳ではないが、お
そらくアルミナ水和物が親水性に富むので、油脂分や炭
素成分等を中心とした汚染物質の使用における付着を低
減すると共に、汚染物質の除去性にも優れたものとな
り、洗剤噴霧と水洗からなるような従来の一般的洗浄方
法においても極めて高い清浄性が達成されるものと考え
られる。
【００１３】本発明において無塗装Ａｌ合金部材の最表
面に形成されるアルミナ水和物としては、所謂水酸化ア
ルミニウムを含み、Ａｌ2Ｏ3・ｎＨ2Ｏの化学式で表せ
るものであれば良いが、バイヤライト（Ａｌ2Ｏ3・３Ｈ
2Ｏ）を主成分とする化合物である。すなわち、アルミ
ナ水和物中のベーマイトの含有量が増加すると親水性が
低下し、汚染物質の付着性増大および除去性の低下を招
く傾向にあるので、特に、沸騰純水中で処理して形成さ
れるような膜厚１〜３μｍ程度のベーマイト皮膜では、
最表面に針状の皮膜が成長し、耐汚染性が大きく低下す
ることになる。こうしたことから、無塗装Ａｌ合金部材
の最表面に形成されるアルミナ水和物は、バイヤライト
を主体とする化合物からなる皮膜であることが好まし
い。
面に形成されるアルミナ水和物としては、所謂水酸化ア
ルミニウムを含み、Ａｌ2Ｏ3・ｎＨ2Ｏの化学式で表せ
るものであれば良いが、バイヤライト（Ａｌ2Ｏ3・３Ｈ
2Ｏ）を主成分とする化合物である。すなわち、アルミ
ナ水和物中のベーマイトの含有量が増加すると親水性が
低下し、汚染物質の付着性増大および除去性の低下を招
く傾向にあるので、特に、沸騰純水中で処理して形成さ
れるような膜厚１〜３μｍ程度のベーマイト皮膜では、
最表面に針状の皮膜が成長し、耐汚染性が大きく低下す
ることになる。こうしたことから、無塗装Ａｌ合金部材
の最表面に形成されるアルミナ水和物は、バイヤライト
を主体とする化合物からなる皮膜であることが好まし
い。
【００１４】アルミナ水和物を形成する方法について
は、特に限定されるものではなく、例えばＡｌの水可溶
性塩を含み且つ温度やｐＨを調整した水溶液に、Ａｌ合
金部材を所定時間浸漬し、その表面にアルミナ水和物の
結晶を生成・沈着する方法も採用できるが、本発明者ら
は最も簡便且つ有効な方法として下記の方法を提案す
る。即ち、無塗装Ａｌ合金部材の表面にアルミナ水和物
を形成または被覆するには、素地Ａｌ合金表面に、熱し
た脱イオン水を接触させることによって容易に形成する
ことができる。
は、特に限定されるものではなく、例えばＡｌの水可溶
性塩を含み且つ温度やｐＨを調整した水溶液に、Ａｌ合
金部材を所定時間浸漬し、その表面にアルミナ水和物の
結晶を生成・沈着する方法も採用できるが、本発明者ら
は最も簡便且つ有効な方法として下記の方法を提案す
る。即ち、無塗装Ａｌ合金部材の表面にアルミナ水和物
を形成または被覆するには、素地Ａｌ合金表面に、熱し
た脱イオン水を接触させることによって容易に形成する
ことができる。
【００１５】上記で用いる脱イオン水は、一般的に用い
られているるイオン交換水で良いが、Ｆｅ，Ｓｉ，ＳＯ
4 2- 等の雑イオンを極力低減し、比抵抗が１×１０5 Ω
・ｃｍ以上のものであることが好ましい。即ち、比抵抗
が１×１０5 Ω・ｃｍ未満であると、表面皮膜の形成速
度が遅くなって、表面皮膜の形成に長時間を要すること
になる。またアルミナ水和物を形成するときの脱イオン
水の温度については、特に限定されるものではないが、
５０〜７０℃程度であることが好ましい。この温度が７
０℃を超えると、表面皮膜中のベーマイト含有率が増加
しバイヤライトを主体とする表面皮膜が得られず、前述
したような不都合が生じる。一方、この温度が５０℃未
満であると、前記比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍ未満であ
るのと同様に、表面皮膜の形成速度が遅くなって、表面
皮膜の形成に長時間を要することになる。但し、脱イオ
ン水におけるこれらの条件は、施工方法にも依存するも
のであり、それによって適宜決定できる設計変更事項で
ある。
られているるイオン交換水で良いが、Ｆｅ，Ｓｉ，ＳＯ
4 2- 等の雑イオンを極力低減し、比抵抗が１×１０5 Ω
・ｃｍ以上のものであることが好ましい。即ち、比抵抗
が１×１０5 Ω・ｃｍ未満であると、表面皮膜の形成速
度が遅くなって、表面皮膜の形成に長時間を要すること
になる。またアルミナ水和物を形成するときの脱イオン
水の温度については、特に限定されるものではないが、
５０〜７０℃程度であることが好ましい。この温度が７
０℃を超えると、表面皮膜中のベーマイト含有率が増加
しバイヤライトを主体とする表面皮膜が得られず、前述
したような不都合が生じる。一方、この温度が５０℃未
満であると、前記比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍ未満であ
るのと同様に、表面皮膜の形成速度が遅くなって、表面
皮膜の形成に長時間を要することになる。但し、脱イオ
ン水におけるこれらの条件は、施工方法にも依存するも
のであり、それによって適宜決定できる設計変更事項で
ある。
【００１６】本発明において、無塗装Ａｌ合金部材の表
面にアルミナ水和物を形成または被覆するには、Ａｌ合
金素地に、熱した脱イオン水を接触させればよく、特に
限定されるものではないが、その代表的な手段としては
浸漬が挙げられる。また無塗装Ａｌ合金部材の表面にア
ルミナ水和物を形成する時期については限定されるもの
ではなく、例えば無塗装車両として外板を組み込む前で
あっても良く、或は車両を完成した後であってもよい。
面にアルミナ水和物を形成または被覆するには、Ａｌ合
金素地に、熱した脱イオン水を接触させればよく、特に
限定されるものではないが、その代表的な手段としては
浸漬が挙げられる。また無塗装Ａｌ合金部材の表面にア
ルミナ水和物を形成する時期については限定されるもの
ではなく、例えば無塗装車両として外板を組み込む前で
あっても良く、或は車両を完成した後であってもよい。
【００１７】ところで本発明者らは、無塗装Ａｌ合金部
材の有用な洗浄方法についても検討した。その結果、前
記したような脱イオン水は洗浄性においても優れている
ことがわかった。即ち、従来の洗浄工程においては、Ａ
ｌ合金部材に対する洗剤の噴霧と水洗（ブラシによって
擦る場合もある）が行われるのが一般的であるが、その
洗浄工程を行った後、Ａｌ合金部材の表面に脱イオン水
を接触させれば、極めて優れた洗浄効果が発揮されるこ
とがわかった。またこのような洗浄方法を採用すれば、
結果的にＡｌ合金部材の表面にアルミナ水和物が形成さ
せることにもなるので、その後汚染物質が付着しにくく
なると共に、次回の洗浄によって容易に除去できるとい
う効果も発揮される。このため、洗浄作業における労力
を低減することができると共に、洗浄工程の間隔を長期
化して洗浄回数を減らすことができるという効果も得ら
れる。
材の有用な洗浄方法についても検討した。その結果、前
記したような脱イオン水は洗浄性においても優れている
ことがわかった。即ち、従来の洗浄工程においては、Ａ
ｌ合金部材に対する洗剤の噴霧と水洗（ブラシによって
擦る場合もある）が行われるのが一般的であるが、その
洗浄工程を行った後、Ａｌ合金部材の表面に脱イオン水
を接触させれば、極めて優れた洗浄効果が発揮されるこ
とがわかった。またこのような洗浄方法を採用すれば、
結果的にＡｌ合金部材の表面にアルミナ水和物が形成さ
せることにもなるので、その後汚染物質が付着しにくく
なると共に、次回の洗浄によって容易に除去できるとい
う効果も発揮される。このため、洗浄作業における労力
を低減することができると共に、洗浄工程の間隔を長期
化して洗浄回数を減らすことができるという効果も得ら
れる。
【００１８】こうした洗浄に利用するときの脱イオン水
についても、Ｆｅ，Ｓｉ，ＳＯ4 2-等の雑イオンを極力
低減し、比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍ以上のものである
ことが好ましい。即ち、比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍ未
満であると、十分な洗浄効果が発揮されなくなる。また
洗浄で用いる脱イオン水の温度についても、５０〜７０
℃程度であることが好ましい。即ち、この温度が７０℃
を超えると、洗浄を繰り返すにつれて、表面皮膜中のベ
ーマイト含有率が増加し、耐汚染性が次第に低下してく
る。一方、この温度が５０℃未満であると、前記比抵抗
が１×１０5 Ω・ｃｍ未満であるのと同様に、十分な洗
浄効果が発揮されなくなる。
についても、Ｆｅ，Ｓｉ，ＳＯ4 2-等の雑イオンを極力
低減し、比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍ以上のものである
ことが好ましい。即ち、比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍ未
満であると、十分な洗浄効果が発揮されなくなる。また
洗浄で用いる脱イオン水の温度についても、５０〜７０
℃程度であることが好ましい。即ち、この温度が７０℃
を超えると、洗浄を繰り返すにつれて、表面皮膜中のベ
ーマイト含有率が増加し、耐汚染性が次第に低下してく
る。一方、この温度が５０℃未満であると、前記比抵抗
が１×１０5 Ω・ｃｍ未満であるのと同様に、十分な洗
浄効果が発揮されなくなる。
【００１９】本発明において、脱イオン水を用いて無塗
装Ａｌ合金部材を洗浄するにあたっては、無塗装Ａｌ合
金部材表面が、熱した脱イオン水によって一様に濡れれ
ばよく、その手段については特に限定されるものではな
いが、その代表的な手段としては噴霧、放水、滴下等が
挙げられる。また洗浄時間についても特に限定されるも
のではなく、本発明の効果を発揮させるためにはできる
だけ長時間の方が良いが、脱イオン水の温度や比抵抗等
の他の諸条件の変化に伴い適宜決定すれば良い。
装Ａｌ合金部材を洗浄するにあたっては、無塗装Ａｌ合
金部材表面が、熱した脱イオン水によって一様に濡れれ
ばよく、その手段については特に限定されるものではな
いが、その代表的な手段としては噴霧、放水、滴下等が
挙げられる。また洗浄時間についても特に限定されるも
のではなく、本発明の効果を発揮させるためにはできる
だけ長時間の方が良いが、脱イオン水の温度や比抵抗等
の他の諸条件の変化に伴い適宜決定すれば良い。
【００２０】更に、上記の様な製造方法や洗浄方法は、
Ａｌ合金部材の耐汚染性向上方法や表面被覆方法として
応用できるものである。またこの様な方法に応用する
際、脱イオン水の条件は上記と同じである。
Ａｌ合金部材の耐汚染性向上方法や表面被覆方法として
応用できるものである。またこの様な方法に応用する
際、脱イオン水の条件は上記と同じである。
【００２１】尚本発明に適用できるＡｌ合金部材につい
ては、特に限定されるものではなく、Ｍｇ，Ｃｕ，Ｓ
ｉ，Ｚｎ，Ｃｒ，Ｎｉ等の１種または２種以上を含有す
る各種のＡｌ合金部材が挙げられ、また純Ａｌについて
も適用できるが、これらの中で最も汎用性の高い合金
は、Ａｌ−Ｍｇ系合金（５０００系合金）またはＡｌ−
Ｍｇ−Ｓｉ系合金（６０００系合金）である。またこれ
までは、無塗装Ａｌ合金部材を地下鉄等の鉄道車両の外
板として用いる場合を代表的に取り上げて説明を進めて
きたが、本発明の無塗装Ａｌ合金部材は、前述の如く、
サッシ、パネル、ガードレール等の土木・建築材料や、
航空機の外板等の各種用途に適用できるものである。
ては、特に限定されるものではなく、Ｍｇ，Ｃｕ，Ｓ
ｉ，Ｚｎ，Ｃｒ，Ｎｉ等の１種または２種以上を含有す
る各種のＡｌ合金部材が挙げられ、また純Ａｌについて
も適用できるが、これらの中で最も汎用性の高い合金
は、Ａｌ−Ｍｇ系合金（５０００系合金）またはＡｌ−
Ｍｇ−Ｓｉ系合金（６０００系合金）である。またこれ
までは、無塗装Ａｌ合金部材を地下鉄等の鉄道車両の外
板として用いる場合を代表的に取り上げて説明を進めて
きたが、本発明の無塗装Ａｌ合金部材は、前述の如く、
サッシ、パネル、ガードレール等の土木・建築材料や、
航空機の外板等の各種用途に適用できるものである。
【００２２】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【００２３】
実施例１ 供試材料として、５０×５０（mm）の６０６３Ａｌ合金
押出材（厚み：２．５mm）を用い、押出方向と同一方向
に＃８０ペーパーにて研磨して表面粗度をそろえた後、
下記表１に示す表面処理を施した。またこのとき使用し
た脱イオン水は、その比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍのも
のである。表面に形成された化合物（被覆膜）の種類に
ついても表１に併記した。尚この化合物の種類は、Ｘ線
光電子分光法（ＸＰＳ法）によって確認した。
押出材（厚み：２．５mm）を用い、押出方向と同一方向
に＃８０ペーパーにて研磨して表面粗度をそろえた後、
下記表１に示す表面処理を施した。またこのとき使用し
た脱イオン水は、その比抵抗が１×１０5 Ω・ｃｍのも
のである。表面に形成された化合物（被覆膜）の種類に
ついても表１に併記した。尚この化合物の種類は、Ｘ線
光電子分光法（ＸＰＳ法）によって確認した。
【００２４】各表面処理Ａｌ合金材料について、模擬汚
染を付着させた後、１／１０に希釈した常温のシュウ酸
系車両外板用洗浄剤に２分間浸漬し、研磨方向に対して
同一方向に拭き取り、垂直方向に水洗をした後、耐汚染
性について調査した。尚模擬汚染は、牛脂：５ｇ，流動
パラフィン１級：１５ｇ，カーボンブラック：４ｇを乳
鉢中で混合したものを使用し、これを供試材料表面に一
定且つ極力薄く塗り付けた後、テッシュペーパーにて擦
り付着を促進した。また耐汚染性については、分光式色
差計（日本電色工業株式会社製；ＳＺ−Σ９０型）によ
ってＬ* 値の変化を測定し、下記（１）式によって洗浄
率を求めて評価した。 洗浄率＝（模擬汚染付着後のＬ* 値−模擬汚染除去後の
Ｌ* 値）／（模擬汚染付着後のＬ* 値−表面処理後のＬ
* 値） …（１） その結果を表１に併記する。尚耐汚染性については、前
記（１）式によって求められた洗浄率が０．８以上の場
合を○、０．８未満の場合を×で示した。
染を付着させた後、１／１０に希釈した常温のシュウ酸
系車両外板用洗浄剤に２分間浸漬し、研磨方向に対して
同一方向に拭き取り、垂直方向に水洗をした後、耐汚染
性について調査した。尚模擬汚染は、牛脂：５ｇ，流動
パラフィン１級：１５ｇ，カーボンブラック：４ｇを乳
鉢中で混合したものを使用し、これを供試材料表面に一
定且つ極力薄く塗り付けた後、テッシュペーパーにて擦
り付着を促進した。また耐汚染性については、分光式色
差計（日本電色工業株式会社製；ＳＺ−Σ９０型）によ
ってＬ* 値の変化を測定し、下記（１）式によって洗浄
率を求めて評価した。 洗浄率＝（模擬汚染付着後のＬ* 値−模擬汚染除去後の
Ｌ* 値）／（模擬汚染付着後のＬ* 値−表面処理後のＬ
* 値） …（１） その結果を表１に併記する。尚耐汚染性については、前
記（１）式によって求められた洗浄率が０．８以上の場
合を○、０．８未満の場合を×で示した。
【００２５】
【表１】
【００２６】実施例２ 供試材料として、５０×５０（mm）の６０６３Ａｌ合金
押出材（厚み：２．５mm）を用い、押出方向と同一方向
に＃８０ペーパーにて研磨し、実施例１で用いたものと
同じ模擬汚染を付着させた後、下記の洗浄工程にて模擬
汚染を除去し、下記表２に示す条件で脱イオン水処理を
施した。このとき使用した脱イオン水は、その比抵抗が
１×１０4 Ω・ｃｍのものである。
押出材（厚み：２．５mm）を用い、押出方向と同一方向
に＃８０ペーパーにて研磨し、実施例１で用いたものと
同じ模擬汚染を付着させた後、下記の洗浄工程にて模擬
汚染を除去し、下記表２に示す条件で脱イオン水処理を
施した。このとき使用した脱イオン水は、その比抵抗が
１×１０4 Ω・ｃｍのものである。
【００２７】（洗浄工程）１／１０に希釈した常温のシ
ュウ酸系車両外板用洗浄剤に２分間浸漬し、研磨方向に
対して同一方向に拭き取り、垂直方向に水洗をした。そ
の後、再度模擬汚染を付着させ、再度上記洗浄工程にて
模擬汚染を除去し、耐汚染性を調査した。このとき耐汚
染性については、前記色差計によってＬ* 値の変化を測
定し、下記（２）式によって洗浄率を求めて評価した。 洗浄率＝（模擬汚染付着後のＬ* 値−模擬汚染除去後の
Ｌ* 値）／（模擬汚染付着後のＬ* 値−洗浄処理後のＬ
* 値） …（２） その結果を表２に併記する。尚耐汚染性については、前
記（２）式によって求められた洗浄率が０．７以上の場
合を○、０．７未満の場合を×で示した。
ュウ酸系車両外板用洗浄剤に２分間浸漬し、研磨方向に
対して同一方向に拭き取り、垂直方向に水洗をした。そ
の後、再度模擬汚染を付着させ、再度上記洗浄工程にて
模擬汚染を除去し、耐汚染性を調査した。このとき耐汚
染性については、前記色差計によってＬ* 値の変化を測
定し、下記（２）式によって洗浄率を求めて評価した。 洗浄率＝（模擬汚染付着後のＬ* 値−模擬汚染除去後の
Ｌ* 値）／（模擬汚染付着後のＬ* 値−洗浄処理後のＬ
* 値） …（２） その結果を表２に併記する。尚耐汚染性については、前
記（２）式によって求められた洗浄率が０．７以上の場
合を○、０．７未満の場合を×で示した。
【００２８】
【表２】
【００２９】
【発明の効果】本発明は上記の様に構成されており、清
浄性に優れた車両外板用無塗装Ａｌ合金部材、およびそ
のようなＡｌ合金部材を製造するための方法、並びにＡ
ｌ合金部材を洗浄するための有用な方法等が実現でき、
これらの技術を適用することによって無塗装Ａｌ合金部
材の車両外板等への適用が大いに広がることが期待され
る。
浄性に優れた車両外板用無塗装Ａｌ合金部材、およびそ
のようなＡｌ合金部材を製造するための方法、並びにＡ
ｌ合金部材を洗浄するための有用な方法等が実現でき、
これらの技術を適用することによって無塗装Ａｌ合金部
材の車両外板等への適用が大いに広がることが期待され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 畑中 孝一 兵庫県神戸市西区高塚台１丁目５番５号 株式会社神戸製鋼所 神戸総合技術研 究所内 (56)参考文献 特開 平４−267350（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) C23C 26/00 C23C 30/00 C23G 1/24
Claims (6)
- 【請求項１】 最表面に、バイヤライトを主成分とする
アルミナ水和物からなる被覆膜が形成されたものである
ことを特徴とする耐汚染性に優れた無塗装ＡｌまたはＡ
ｌ合金部材。 - 【請求項２】 請求項１に記載の無塗装ＡｌまたはＡｌ
合金部材を製造するに当たり、Ａｌの水可溶性塩を含む
水溶液に、ＡｌまたはＡｌ合金素地を浸漬することを特
徴とする耐汚染性に優れた無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部
材の製造方法。 - 【請求項３】 ＡｌまたはＡｌ合金部材を洗浄するに当
たり、洗剤噴霧および水洗の各工程の後、前記Ａｌまた
はＡｌ合金部材の表面を、熱した脱イオン水に接触させ
ることを特徴とするＡｌまたはＡｌ合金部材の洗浄方
法。 - 【請求項４】 前記水洗を、熱した脱イオン水を用いて
行なう請求項３に記載の洗浄方法。 - 【請求項５】 ＡｌまたはＡｌ合金部材の耐汚染性を向
上させるに当たり、前記ＡｌまたはＡｌ合金部材の表面
を熱した脱イオン水に接触させることを特徴とするＡｌ
またはＡｌ合金部材の耐汚染性向上方法。 - 【請求項６】 ＡｌまたはＡｌ合金部材の表面を被覆す
るに当たり、前記ＡｌまたはＡｌ合金部材の表面を脱イ
オン水に接触させ、最表面にアルミナ水和物からなる被
覆膜を形成することを特徴とするＡｌまたはＡｌ合金部
材の表面被覆方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP07338194A JP3175475B2 (ja) | 1994-04-12 | 1994-04-12 | 無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材、製造方法、洗浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP07338194A JP3175475B2 (ja) | 1994-04-12 | 1994-04-12 | 無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材、製造方法、洗浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07278838A JPH07278838A (ja) | 1995-10-24 |
| JP3175475B2 true JP3175475B2 (ja) | 2001-06-11 |
Family
ID=13516563
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP07338194A Expired - Fee Related JP3175475B2 (ja) | 1994-04-12 | 1994-04-12 | 無塗装ＡｌまたはＡｌ合金部材、製造方法、洗浄方法、耐汚染性向上方法および表面被覆方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3175475B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN104032297A (zh) * | 2014-06-03 | 2014-09-10 | 南车青岛四方机车车辆股份有限公司 | 一种铝合金表面转化膜的成膜液及制备方法及应用 |
-
1994
- 1994-04-12 JP JP07338194A patent/JP3175475B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH07278838A (ja) | 1995-10-24 |
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