JP3154661B2 - 低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents

低水素系被覆アーク溶接棒

Info

Publication number
JP3154661B2
JP3154661B2 JP15251796A JP15251796A JP3154661B2 JP 3154661 B2 JP3154661 B2 JP 3154661B2 JP 15251796 A JP15251796 A JP 15251796A JP 15251796 A JP15251796 A JP 15251796A JP 3154661 B2 JP3154661 B2 JP 3154661B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
less
coating agent
welding rod
arc welding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP15251796A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09327793A (ja
Inventor
毅 杉野
統宣 佐藤
則行 原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP15251796A priority Critical patent/JP3154661B2/ja
Publication of JPH09327793A publication Critical patent/JPH09327793A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3154661B2 publication Critical patent/JP3154661B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Nonmetallic Welding Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は低Ni鋼及び780
N/mm2級以上の高張力鋼等の低温割れに敏感な鋼材
の溶接に使用するのに好適の低水素系被覆アーク溶接棒
に関し、特に、破壊靱性が良好である低酸素系であっ
て、得られる溶接金属の水素量が5ml/100g以下
である超低水素系被覆アーク溶接棒に関する。
【0002】
【従来の技術】良好な破壊靱性を有する低酸素低水素系
被覆アーク溶接棒に関する研究は従来から実施されてい
る。例えば、被覆剤の鋼心線への被覆率並びに鋼心線及
び被覆剤中の化学成分及びその含有量を規定することに
よって、破壊靱性の向上を図った被覆アーク溶接棒が特
公平8−29431に開示されており、この被覆アーク
溶接棒は、圧力容器等の重要構造物に使用されている。
【0003】ところで、このような圧力容器等の材料と
して使用される低Ni鋼及び780N/mm2級以上の
高張力鋼は、いずれも溶接部にマルテンサイトを晶出す
るものであり、このマルテンサイトが晶出した溶接部
は、水素に起因する低温割れが発生しやすい。従って、
従来より、このような溶接割れ(低温割れ)を防止する
ために、溶接対象物を少なくとも100℃以上の高温で
予熱することが必要とされている。
【0004】一方、近時、作業環境の改善と溶接能率の
向上を目的として、低い予熱温度で溶接することができ
る溶接方法の開発が要望されており、一般的な低水素系
被覆アーク溶接棒の分野においては、低い予熱温度であ
っても溶接割れを防止すべく、種々の技術が提案されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
低水素系被覆アーク溶接棒の中でも、特に、溶接金属中
の酸素量を200ppm以下にすることにより破壊靱性
を向上させることができる低酸素系の低水素系被覆アー
ク溶接棒については、上述の予熱温度を低くしても低温
割れを防止できる技術は未だ開発されていない。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、予熱温度を低くしても、溶接金属の耐割れ
性を向上させることができると共に、優れた破壊靱性を
得ることができる低酸素超低水素系被覆アーク溶接棒を
提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る低水素系被
覆アーク溶接棒は、鋼心線に被覆剤が塗布されている低
水素系被覆アーク溶接棒において、溶接棒全重量あたり
の前記被覆剤の被覆率は26乃至45重量%であり、前
記鋼心線は、心線全重量あたり、Cを0.05重量%以
下含有すると共に、Nが0.005重量%以下に規制さ
れており、前記被覆剤は、被覆剤全重量あたり、CaC
3及びBaCO3からなる群から選択された少なくとも
1種の金属炭酸塩(CO2換算値):15乃至28重量
%、金属フッ化物(F換算値):4乃至9重量%、Si
2:4乃至9重量%及びNi−Mg合金(Mg換算
値):1.3乃至3.5重量%を含有し、前記被覆剤の
CO2源はCaCO3及び/又はBaCO3であり、Mg
源はNi−Mg合金であると共に、480乃至550℃
で焼成されたものであることを特徴とする。
【0008】本発明に係る他の低水素系被覆アーク溶接
棒は、鋼心線に被覆剤が塗布されている低水素系被覆ア
ーク溶接棒において、溶接棒全重量あたりの前記被覆剤
の被覆率は26乃至45重量%であり、前記鋼心線は、
心線全重量あたり、Cを0.05重量%以下含有すると
共に、Nが0.005重量%以下に規制されており、前
記被覆剤は、被覆剤全重量あたり、CaCO3及びBa
CO3からなる群から選択された少なくとも1種の金属
炭酸塩(CO2換算値):15乃至28重量%、金属フ
ッ化物(F換算値):4乃至9重量%、SiO2:4乃
至9重量%並びにNi−Mg合金及び金属Mg(Mg換
算値):1.3乃至3.5重量%を含有し、前記被覆剤
のCO2源はCaCO3及び/又はBaCO3であり、M
g源はNi−Mg合金及び金属Mgであり、前記金属M
gは1重量%以下に規制されていると共に、480乃至
550℃で焼成されたものであることを特徴とする。
【0009】これらの低水素系被覆アーク溶接棒は、前
記SiO2に加えて、TiO2:3重量%以下、Al
23:2重量%以下、ZrO2:2重量%以下及び前記
SiO2からなる群から選択された少なくとも1種の酸
性酸化物をSiO2との総量で12重量%以下含有する
ことが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】高強度溶接金属において、良好な
靱性を得るためには、以下に示す条件が必須となる。即
ち、第1に、靱性を低下させる元素である溶接金属中の
Nの含有量を0.008重量%以下にすること、第2
に、溶接金属中のC含有量を0.06重量%以下とし
て、低炭素組織とすること、第3に溶接金属中の酸素量
を200ppm以下とすることが必要である。
【0011】そこで、本願発明者等がこれらの条件を満
足する溶接金属を得ることができる被覆アーク溶接棒に
ついて種々実験研究を重ねた結果、以下に示す手段が有
効であることを見い出した。先ず、溶接金属中のN含有
量を0.008重量%以下に保つために、被覆アーク溶
接棒の心線中のN含有量を0.005重量%以下に規制
すると共に、被覆剤中のCO2を8重量%以上、被覆率
を26乃至45重量%に規定する。
【0012】また、溶接金属中のC含有量を0.06重
量%以下に保つために、心線中のC含有量を0.05重
量%以下とする。更に、溶接金属中の酸素量を200p
pm以下にするために、被覆剤中にその含有量が1.3
重量%以上となるようにMgを含有させると共に、酸性
酸化物の合計を12重量%以下とする。
【0013】また、本願発明者等は、高張力鋼、例え
ば、950N/mm2級の溶接金属において、作業環境
及び溶接能率を考慮した予熱温度、即ち、75℃程度の
予熱温度で溶接割れを防止することができる溶接金属を
得るためには、溶接金属中の水素量をガスクロマトグラ
フ法における測定値で、5ml/100g以下に保つこ
とが必要であることを見い出した。
【0014】そして更に、上述の被覆アーク溶接棒にお
いて、溶接金属中の水素量を5ml/100g以下にす
るために、以下に示す手段が有効であることを見い出し
た。即ち、被覆剤中のCO2を15重量%以上とするこ
と、被覆剤中に含有させる金属炭酸塩の種類をCaCO
3及びBaCO3に限定すること、高温焼成時に分解しや
すく、分解生成物が強い親水性を有するMgCO3及び
分解温度が低いMnCO3を含有しないことが有効であ
る。また、Mg源をNi−Mg合金のみ、又はNi−M
g合金及び1重量%以下に規制された金属Mgに限定
し、活性が強いと共に、高温焼成時に酸化するか、又は
被覆剤の結合力を低下させる成分であるMgSi2、A
l−Mg合金及び1重量%を超える金属Mgを含有しな
いことも有効である。更に、被覆率を26重量%以上と
し、溶接棒の焼成温度を480乃至550℃とすること
も有効である。
【0015】以下、本発明における低水素系被覆アーク
溶接棒について、更に説明する。先ず、被覆アーク溶接
棒の焼成温度の限定理由について説明する。
【0016】焼成温度:480乃至550℃ 従来の被覆アーク溶接棒は約450℃の温度で焼成され
ているが、本発明においては、溶接棒の焼成温度を45
0℃よりも高温とすることにより、溶接棒の被覆剤中の
水素量を更に一層低減して、溶接金属中の水素量を低減
させる。溶接棒の焼成温度が480℃未満であると、ガ
スクロマトグラフ法により測定される溶接金属の水素量
が5ml/100gを超えるので、耐割れ性が低下し、
高強度鋼、特に、950N/mm2級の高張力鋼の溶接
用としては好ましくない。一方、溶接棒の焼成温度が5
50℃を超えると、CaCO3が分解し始めると共に、
脱酸剤、特に、Mn、Fe−Mn及びFe−Si等が酸
化し、更に、心線と被覆剤との密着性が低下して、被覆
剤の脱落現象が発生する。従って、溶接棒の焼成温度は
480乃至550℃とする。
【0017】次に、鋼心線中に含有される化学成分及び
組成限定理由について説明する。
【0018】C:0.05重量%以下 鋼心線中のCが心線全重量あたり0.05重量%を超え
ると、溶接金属中のCが0.06重量%を超えて、高炭
素マルテンサイトを生成するので靱性が低下する。ま
た、高温割れも発生しやすくなる。従って、心線全重量
あたりの心線中のCは0.05重量%以下に規制する。
【0019】N:0.005重量%以下 鋼心線中の不可避的不純物であるNが心線全重量あたり
0.005重量%を超えると、溶接金属中のNが0.0
08重量%を超えて、内部歪みが増加するので靱性が低
下する。従って、心線全重量あたりの心線中のNは0.
005重量%以下に規制する。
【0020】なお、鋼心線は通常、炭素鋼心線である
が、必要に応じて、Si、Mn及びTi等の脱酸性元素
並びにNi、Cr、Mo、Cu、Nb及びV等の元素を
添加することができる。
【0021】次いで、被覆剤中に含有される化学成分及
び組成限定理由について説明する。
【0022】金属炭酸塩(CO2換算値):15乃至2
8重量% 金属炭酸塩は、溶接金属中のN及び水素量を低減させる
ことができる成分である。被覆剤中の金属炭酸塩がCO
2換算値で被覆剤全重量あたり15重量%未満である
と、溶接金属中の水素量を5ml/100g以下、N含
有量を0.008重量%以下にすることができないの
で、良好な耐割れ性及び靱性を得ることができない。一
方、被覆剤中の金属炭酸塩がCO2換算値で28重量%
を超えると、スラグの粘性が過度となるので、立向溶接
が困難になる。従って、被覆剤全重量あたりの被覆剤中
の金属炭酸塩は、CO2換算値で15乃至28重量%と
する。
【0023】なお、例えば、CO2源として、分解開始
温度が約400℃であるMgCO3を使用すると、本発
明において規定する焼成温度の範囲内において、その分
解量が増加してしまう。そして、その分解生成物である
MgOは、極めて親水性が強い物質であるため、大気中
の水分と結合して水酸化物を生成し、溶接金属中の水素
量を増加させる。また、MnCO3についても同様に、
分解開始温度が低いので、CO2源とすることはできな
い。従って、CO2源としては、CaCO3及びBaCO
3からなる群から選択された少なくとも1種の金属炭酸
塩に限定する。
【0024】金属フッ化物(F換算値):4乃至9重量
金属フッ化物は、スラグの粘性を調整して、良好な溶接
作業性を得ることができる成分である。被覆剤中の金属
フッ化物がF換算値で被覆剤全重量あたり4重量%未満
であると、スラグの粘性が高くなりすぎてビード形状が
劣化する。一方、被覆剤中の金属フッ化物がF換算値で
9重量%を超えると、アークが不安定になるので望まし
くない。従って、被覆剤全重量あたりの被覆剤中の金属
フッ化物は、F換算値で4乃至9重量%とする。なお、
金属フッ化物としては、CaF2、BaF2及びAlF3
等がある。
【0025】SiO2:4乃至9重量% 被覆剤中には、粘結剤及びスラグ造滓剤として酸性酸化
物であるSiO2を添加する必要がある。被覆剤中のS
iO2が被覆剤全重量あたり9重量%を超えると、スラ
グがガラス状になって、スラグの剥離性が劣化してしま
う。一方、被覆剤中のSiO2が被覆剤全重量あたり4
重量%未満であると、粘結剤としての効果を得ることが
できない。従って、被覆剤全重量あたりの被覆剤中のS
iO2は4乃至9重量%とする。
【0026】Mg(換算値):1.3乃至3.5重量% Mgは溶接金属中の酸素を低減させる効果が極めて大き
い元素である。被覆剤中のMg(換算値)が被覆剤全重
量あたり1.3重量%未満であると、溶接金属中の酸素
量を200ppm以下にすることが困難になるので、靱
性が低下する。一方、被覆剤中のMg(換算値)が3.
5重量%を超えると、アークの拡がりが劣化して溶接が
困難になる。従って、被覆剤全重量あたりの被覆剤中の
Mg(換算値)は1.3乃至3.5重量%とする。
【0027】なお、Mg源として、Ni−Mg合金以外
の他のMg合金、例えば、MgSi2又はAl−Mg合
金等を使用すると、水ガラスとの反応性が強いので生産
性が低下する。また、本発明において規定する焼成温度
の範囲内において、これらの合金の一部が酸化してしま
い、作業性が劣化する等の問題点が発生する。また、M
g源として、金属Mgを1重量%を超えて添加すると、
水ガラスとの反応が顕著になるため、高温焼成によって
被覆剤と心線との密着性が低下して、被覆剤の脱落現象
が発生する。従って、被覆剤中に供給されるMg源とし
ては、Ni−Mg合金のみ、又はNi−Mg合金及び金
属Mgに限定し、金属Mgが含有される場合、その含有
量は1重量%以下とする。
【0028】TiO2、Al23及びZrO2からなる群
から選択された少なくとも1種の酸性酸化物とSiO2
との総量:12重量%以下 被覆剤中には、スラグ造滓剤としてSiO2の他に、酸
性酸化物であるTiO2、Al23及びZrO2等を添加
することができる。被覆剤中のSiO2を含むTiO2
Al23及びZrO2等の酸性酸化物の総量が、被覆剤
全重量あたり12重量%を超えると、スラグの塩基度が
不足して、溶接金属の酸素量を200ppm以下にする
ことが困難となるので、靱性が低下する。従って、被覆
剤中にTiO2、Al23及びZrO2等の酸性酸化物を
添加する場合、被覆剤全重量あたりのTiO2、Al2
3及びZrO2からなる群から選択された1種又は2種以
上の酸性酸化物とSiO2とのの総量は12重量%以下
とする。
【0029】なお、本発明においては、被覆剤中の各酸
性酸化物の含有量についても、規定する必要がある。各
酸性酸化物の含有量の限定理由について以下に示す。
【0030】TiO2:3重量%以下 被覆剤中には、スラグ造滓剤として酸性酸化物であるT
iO2を添加することができる。被覆剤中のTiO2が被
覆剤全重量あたり3重量%を超えると、スラグの粘性が
低下して、作業性が劣化する。従って、被覆剤中にTi
2を添加する場合は、被覆剤全重量あたりのTiO2
3重量%以下とする。
【0031】Al23:2重量%以下 被覆剤中には、スラグ造滓剤として酸性酸化物であるA
23を添加することができる。被覆剤中のAl23
被覆剤全重量あたり2重量%を超えると、スラグがガラ
ス状になって、スラグの剥離性が劣化してしまう。従っ
て、被覆剤中にAl23を添加する場合は、被覆剤全重
量あたりのAl23は2重量%以下とする。
【0032】ZrO2:2重量%以下 被覆剤中には、スラグ造滓剤として酸性酸化物であるZ
rO2を添加することができる。被覆剤中のZrO2が被
覆剤全重量あたり2重量%を超えると、スラグがガラス
状になって、スラグの剥離性が劣化してしまう。従っ
て、被覆剤中にZrO2を添加する場合は、被覆剤全重
量あたりのZrO2は2重量%以下とする。
【0033】本発明においては、被覆剤中に上記成分の
他に、脱酸剤、合金及びスラグ剤等を添加することがで
きる。脱酸剤としては、金属Mn、Fe−Mn、Fe−
Si及びFe−Ti等、通常使用されている脱酸剤を使
用することができる。合金成分としては、溶接金属の強
度を調整するために添加することができ、通常使用され
ているCr、Mo、Ni、Nb及びV等の合金を使用す
ることができ、これらを単体金属として添加することも
できる。
【0034】また、スラグ造滓剤としては、上記酸性酸
化物の他に、粘性の調整を目的としてMgO及びCaO
等を添加することができる。なお、粘結剤としては、ケ
イ酸カリウム及びケイ酸ナトリウム等が使用される。但
し、結晶水を含有するケイ酸塩、例えば、マイカ、タル
ク、セリサイト等は水素量を増加させるので、実質的に
は含有しないことが好ましい。
【0035】更に、被覆アーク溶接棒の被覆率の限定理
由について説明する。
【0036】被覆率:26乃至45重量% 被覆アーク溶接棒の被覆率は、数式((被覆剤の重量/
溶接棒全重量)×100)により算出される。この被覆
率が26重量%未満であると、シールド不足となり、溶
接金属中のN含有量及び水素量が増加するので、溶接金
属の靱性及び耐割れ性が低下する。一方、被覆率が45
重量%を超えると、アーク長が長くなり、アーク切れが
発生する。従って、被覆アーク溶接棒の被覆率は26乃
至45重量%とする。
【0037】
【実施例】以下、本発明に係る低水素系被覆アーク溶接
棒の実施例について、その比較例と比較して具体的に説
明する。
【0038】先ず、下記表1及び2に示す組成を有する
心線に種々の化学成分を有する被覆剤を塗布して被覆ア
ーク溶接棒を作製し、これらの溶接棒の生産性を評価し
た。なお、本実施例においては、心線の直径を4mmと
した。被覆剤中のMg源の化学成分を下記表3に示し、
各実施例及び比較例において使用した心線、被覆剤の被
覆率、溶接棒の焼成温度及び被覆剤中の化学成分を下記
表4乃至15に示す。但し、表中のNi換算値とは、N
i−Mg合金中のNiも含まれており、表中のその他の
成分としては、Na2O、K2O、CaO、FeO、Li
2O及びTi等がある。
【0039】次いで、この被覆アーク溶接棒を使用して
溶接し、溶接作業性を評価すると共に、得られた溶接金
属中の水素量及び酸素量を測定し、更に、溶接金属の機
械的性能を評価した。本実施例においては、溶接母材と
して、X開先が形成された板厚が25mmである鋼板を
使用し、この鋼板を75℃の温度で予熱した後、開先部
に対して立向溶接姿勢で溶接入熱を30kJ/cmとし
て溶接した。このとき、鋼板として、実施例No.1乃
至3は780N/mm2級高張力鋼を使用し、実施例N
o.4乃至9及び比較例は950N/mm2級高張力
鋼、実施例No.10乃至13は550N/mm2
3.5%Ni鋼を使用した。
【0040】なお、溶接金属中の水素量はJIS Z3
118に準じて測定した。なお、機械的性能は溶接金属
の耐力、引張強さ、靱性等により評価した。溶接金属の
耐力及び引張強さは、得られた溶接金属から引張試験片
を採取して、0.2%伸びに対する荷重を測定すると共
に、最大引張強さを測定することにより評価した。ま
た、2mmのVノッチを有するシャルピー衝撃試験片を
採取して衝撃試験を実施し、破面遷移温度を測定するこ
とにより靱性を評価すると共に、BS(英国規格)57
62に準じて−10℃におけるCTOD(Crack Tip Op
ening Displacement )を測定した。
【0041】これらの評価結果を下記表16乃至21に
示す。なお、表中の被覆アーク溶接棒の生産性の評価結
果欄において、○(良好)は粘結剤との反応性がなく、
高温焼成によって分解、酸化及び反応が生じないと共
に、高温焼成後に被覆剤の脱落を生じないもの、×(不
良)は粘結剤と著しく反応し、被覆剤がふくれ現象又は
割れを発生するもの、焼成時に著しく分解又は酸化する
もの、又は焼成後に被覆剤の脱落現象が発生するもので
あることを示し、△(やや不良)は不良であると評価さ
れる少なくとも1つの現象が、その程度が軽微であって
も発生するものであることを示す。また、溶接作業性の
評価結果欄において、○は良好、△はやや不良、×は不
良であることを示す。
【0042】
【表1】 但し、−は添加していないことを示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
【表12】
【0054】
【表13】
【0055】
【表14】
【0056】
【表15】
【0057】
【表16】
【0058】
【表17】
【0059】
【表18】
【0060】
【表19】
【0061】
【表20】
【0062】
【表21】
【0063】上記表1、2及び4乃至21に示すよう
に、実施例No.1乃至13は心線及び被覆剤中の化学
成分、被覆率並びに焼成温度が本発明の範囲内であるの
で、生産性及び溶接作業性が優れていると共に、溶接金
属中の水素量及び酸素量が十分に低減されているので、
強度及び靱性が優れたものとなった。
【0064】一方、比較例No.14は心線中のC含有
量が本発明範囲の上限を超えており、比較例No.15
は心線中のN含有量が本発明範囲の上限を超えているの
で、いずれも靱性が低下した。比較例No.16は被覆
剤中の金属炭酸塩のCO2換算値が本発明範囲の下限未
満であるので、溶接金属中の水素量が高くなった。従っ
て、溶接割れを防止するために100℃以上の予熱が必
要となるので、好ましくない。比較例No.17は被覆
剤中の金属炭酸塩のCO2換算値が本発明範囲の上限を
超えており、比較例No.18は被覆剤中のF換算値が
本発明範囲の下限未満であるので、ビード形状が凸状と
なり、その後の評価試験を中止した。
【0065】比較例No.19は被覆剤中のF換算値が
本発明範囲の上限を超えているので、アークが不安定と
なった。比較例No.20は被覆剤中のMgが本発明範
囲の下限未満であるので、溶接金属の酸素量が高くな
り、良好な靱性を得ることができなかった。比較例N
o.21は被覆剤中のMgが本発明範囲の上限を超えて
いるので、溶接が困難となり、評価試験を中止した。比
較例No.22は強度及び靱性は良好であるが、被覆剤
中の金属Mgが本発明範囲の上限を超えているので、生
産性が低下すると共に、溶接中に被覆剤の脱落が発生し
て作業性が劣化した。比較例No.23及び24はMg
源としてMgSi2又はAl−Mg合金を使用している
ので、いずれも水ガラスとの反応性が強くなって生産性
が低下すると共に、作業性が著しく劣化した。
【0066】比較例No.25、27及び28は被覆剤
中のSiO2、Al23又はZrO2が、夫々、本発明範
囲の上限を超えているので、スラグの剥離性が悪くなっ
て、作業性が劣化した。また、比較例No.26は被覆
剤中のTiO2が本発明範囲の上限を超えているので、
ビード形状が凸状となって、溶接作業性が劣化した。比
較例No.29は酸性酸化物の合計量が本発明範囲の上
限を超えているので、溶接金属中の酸素量が高くなり、
靱性が低下した。比較例No.30及び31は被覆剤中
にMgCO3が添加されているので、水素量が高い値と
なった。従って、溶接割れを防止するために100℃以
上の予熱が必要となるので、機械的性能の評価試験は実
施しなかった。
【0067】比較例No.32は被覆率が本発明範囲の
下限未満であるので、水素量が高い値となり、100℃
以上の予熱を必要とするとと共に、溶接作業性が劣化し
た。比較例No.33は被覆率が本発明範囲の上限を超
えているので、アーク切れが発生し、作業性が劣化し
た。比較例No.34は焼成温度が本発明範囲の下限未
満であるので、水素量が高い値となった。従って、溶接
割れを防止するために100℃以上の予熱が必要となる
ので、好ましくない。比較例No.35は焼成温度が本
発明範囲の上限を超えているので、脱酸剤が酸化すると
共に、溶接中に被覆剤の脱落が発生して作業性が著しく
劣化した。
【0068】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
低水素系被覆アーク溶接棒の被覆率及び焼成温度を規定
すると共に、心線及び被覆剤中の化学成分及びその含有
量を規定しているので、低い予熱温度であっても、得ら
れる溶接金属の耐割れ性を向上させることができると共
に、優れた破壊靱性を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 平6−9756(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/365 B23K 35/30

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼心線に被覆剤が塗布されている低水素
    系被覆アーク溶接棒において、溶接棒全重量あたりの前
    記被覆剤の被覆率は26乃至45重量%であり、前記鋼
    心線は、心線全重量あたり、Cを0.05重量%以下含
    有すると共に、Nが0.005重量%以下に規制されて
    おり、前記被覆剤は、被覆剤全重量あたり、CaCO3
    及びBaCO3からなる群から選択された少なくとも1
    種の金属炭酸塩(CO2換算値):15乃至28重量
    %、金属フッ化物(F換算値):4乃至9重量%、Si
    2:4乃至9重量%及びNi−Mg合金(Mg換算
    値):1.3乃至3.5重量%を含有し、前記被覆剤の
    CO2源はCaCO3及び/又はBaCO3であり、Mg
    源はNi−Mg合金であると共に、480乃至550℃
    で焼成されたものであることを特徴とする低水素系被覆
    アーク溶接棒。
  2. 【請求項2】 前記SiO2に加えて、TiO2:3重量
    %以下、Al23:2重量%以下及びZrO2:2重量
    %以下からなる群から選択された少なくとも1種の酸性
    酸化物をSiO2との総量で12重量%以下含有するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の低水素系被覆アーク溶
    接棒。
  3. 【請求項3】 鋼心線に被覆剤が塗布されている低水素
    系被覆アーク溶接棒において、溶接棒全重量あたりの前
    記被覆剤の被覆率は26乃至45重量%であり、前記鋼
    心線は、心線全重量あたり、Cを0.05重量%以下含
    有すると共に、Nが0.005重量%以下に規制されて
    おり、前記被覆剤は、被覆剤全重量あたり、CaCO3
    及びBaCO3からなる群から選択された少なくとも1
    種の金属炭酸塩(CO2換算値):15乃至28重量
    %、金属フッ化物(F換算値):4乃至9重量%、Si
    2:4乃至9重量%並びにNi−Mg合金及び金属M
    g(Mg換算値):1.3乃至3.5重量%を含有し、
    前記被覆剤のCO2源はCaCO3及び/又はBaCO3
    であり、Mg源はNi−Mg合金及び金属Mgであり、
    前記金属Mgは1重量%以下に規制されていると共に、
    480乃至550℃で焼成されたものであることを特徴
    とする低水素系被覆アーク溶接棒。
  4. 【請求項4】 前記SiO2に加えて、TiO2:3重量
    %以下、Al23:2重量%以下及びZrO2:2重量
    %以下からなる群から選択された少なくとも1種の酸性
    酸化物をSiO2との総量で12重量%以下含有するこ
    とを特徴とする請求項に記載の低水素系被覆アーク溶
    接棒。
JP15251796A 1996-06-13 1996-06-13 低水素系被覆アーク溶接棒 Expired - Lifetime JP3154661B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15251796A JP3154661B2 (ja) 1996-06-13 1996-06-13 低水素系被覆アーク溶接棒

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15251796A JP3154661B2 (ja) 1996-06-13 1996-06-13 低水素系被覆アーク溶接棒

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09327793A JPH09327793A (ja) 1997-12-22
JP3154661B2 true JP3154661B2 (ja) 2001-04-09

Family

ID=15542182

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15251796A Expired - Lifetime JP3154661B2 (ja) 1996-06-13 1996-06-13 低水素系被覆アーク溶接棒

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3154661B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10175094A (ja) * 1996-12-17 1998-06-30 Nippon Steel Corp 低温鋼用低水素系被覆アーク溶接棒および溶接方法
JP4040824B2 (ja) * 2000-05-29 2008-01-30 株式会社神戸製鋼所 溶接金属
DE10144204A1 (de) * 2001-09-08 2003-03-27 Howaldtswerke Deutsche Werft Elektrode für Lichtbogenschweißverfahren
JP2010110817A (ja) 2008-10-11 2010-05-20 Kobe Steel Ltd 低水素系被覆アーク溶接棒
JP5404127B2 (ja) * 2009-03-27 2014-01-29 株式会社神戸製鋼所 低水素系被覆アーク溶接棒
CN103196971A (zh) * 2013-03-28 2013-07-10 浙江大学 一种基于铝,磷酸铝的固体磷酸根电极的制备方法
JP6504894B2 (ja) * 2015-04-13 2019-04-24 株式会社神戸製鋼所 被覆アーク溶接棒
JP6420725B2 (ja) * 2015-06-09 2018-11-07 株式会社神戸製鋼所 低水素系被覆アーク溶接棒
CN105665958B (zh) * 2016-03-18 2018-10-16 武汉铁锚焊接材料股份有限公司 一种适用于海洋平台690MPa级齿条钢配套的焊条
JP6772108B2 (ja) 2017-06-19 2020-10-21 日鉄溶接工業株式会社 低温用鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09327793A (ja) 1997-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5207994B2 (ja) Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用メタル系フラックス入りワイヤ
JP4558780B2 (ja) 低温用鋼のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6216642B2 (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
JP2010110817A (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
JP3154661B2 (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
JP3251505B2 (ja) 高強度Cr−Mo鋼用低水素系被覆アーク溶接棒
JP5726708B2 (ja) 低温用鋼のサブマージアーク溶接方法
JP2004195543A (ja) ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ
JP2687006B2 (ja) 耐火鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP3258190B2 (ja) 高強度Cr−Mo鋼用サブマージアーク溶接方法及び溶接金属
JP3354460B2 (ja) 高張力鋼材の被覆アーク溶接方法
JP7156585B1 (ja) サブマージアーク溶接継手
JPH08257791A (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
JP3552375B2 (ja) 溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法
JP6420725B2 (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
JPH08257789A (ja) サブマージアーク溶接方法
JP7387450B2 (ja) 鉄粉低水素系被覆アーク溶接棒
JPS632592A (ja) 低合金耐熱鋼溶接用フラツクス入りワイヤ
JPH10272594A (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
US4340805A (en) Welding electrode with a fluoride based slag system
JPH0829431B2 (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒
JPH0371237B2 (ja)
JPH07171695A (ja) 960MPa高張力鋼のサブマージアーク溶接方法
WO2016167098A1 (ja) 被覆剤及び被覆アーク溶接棒
JPH069756B2 (ja) 低水素系被覆ア−ク溶接棒

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090202

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100202

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100202

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110202

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120202

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130202

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140202

Year of fee payment: 13

EXPY Cancellation because of completion of term