JP3552375B2 - 溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法 - Google Patents

溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄骨ボックスの角継手溶接のような厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法に関し、特に溶接金属について良好な靱性を得ることのできる方法を提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高層ビルに代表される構造物の大型化に伴い、板厚40mmを超える如き極厚の鋼板よりなる溶接構造部材が用いられるようになっている。かような極厚鋼板の溶接をする際には、溶着速度の大きい2電極、あるいは3電極の潜弧溶接方法が、溶接施工の高能率化が可能であることを理由として多用されている。
【0003】
このような極厚鋼板の大入熱潜弧溶接法に関しては、これまでにも種々に提案されていて、例えば特開平2−41795号公報では極厚鋼板の大入熱多層盛溶接において優れたスラグ剥離性を得るため、所定組成に調製した潜弧溶接用ボンドフラックスが提案され、また、発明者らも先に特開平2−258191号公報にて1層溶接施工の板厚限界を有効に向上させ、多層の大入熱潜弧溶接の場合のスラグ剥離性を改善し、併せて耐凝固割れ性も改善するために、フラックスの組成及び粒度分布並びに溶接電流条件を規定した高能率の溶接施工法を提案している。さらに、特開平4−167999号公報には溶接入熱が800kJ/cm程度といった大入熱溶接の場合において良好な耐水素割れ性、耐繰り返し使用性能及び優れたスラグ剥離性を有するフラックスが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、極厚鋼板に施す大入熱潜弧溶接方法にあっては、溶接時の熱サイクルにおいて溶接金属部の冷却速度が非常に小さいことからこの溶接金属部のデンドライトは大きく成長し、粗大な初析フェライトが析出するため、溶接金属部の切欠靱性が劣化する問題がある。
【0005】
この点について、前述した特開平2−41795号公報、特開平2−258191号公報及び特開平4−167999号公報の提案は、いずれもスラグ剥離性を第1の目的とし、さらに耐水素割れ性、耐繰り返し使用性能、耐凝固割れ性等の改善を目指したものであり、溶接金属の靱性改善に主点をおいてはなかった。したがって、板厚60mm〜80mmの極厚鋼板に3電極潜弧溶接を施す場合のように、溶接後の冷却過程における溶接金属の冷却速度が非常に遅い超大入熱溶接においては、溶接金属の靱性を確保するのが困難であった。
【0006】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、溶接金属の切欠靱性を改善することのできる極厚鋼板の大入熱潜弧方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、大入熱潜弧溶接をした場合の溶接金属の靱性の向上を目指して鋭意研究を重ねた結果、以下のような新規知見を得るに到った。
まず、従来の大入熱潜弧溶接法において、溶接金属の切欠靱性は、溶接後の冷却過程における溶接金属の800 〜600 ℃間の冷却時間によって支配されていることが明らかとなった。とりわけ800 〜600 ℃間の冷却時間が、一般の大入熱溶接に比較してもはるかに長時間の、200 秒を超える超大入熱溶接の場合には、冷却速度が非常に遅くなるため、切欠靱性が顕著に劣化することが判明した。この劣化の原因は、800 〜600 ℃間の冷却時間が長いと、この溶接金属部のデンドライトが大きく成長し、粗大な初析フェライトが析出するためと考えられる。
【0008】
かかる知見からさらに、溶接金属部の靱性を改善するためには、焼入れ性を向上させれば良いことを究明した。すなわち、大入熱溶接で800 〜600 ℃間の冷却時間が200 秒を超える場合であっても良好な溶接金属靱性を得るには、従来の大入熱潜弧溶接法で得られていた程度の溶接金属の焼入れ性では不十分で、特に高い焼入れ性を確保することが必要不可欠となることを見い出したのである。この溶接金属の焼入れ性は、溶接金属中における焼入れ性向上成分(Mn、Mo等)の含有量を増加させること、及び溶接金属中の酸素量を低下させることにより高められる。
【0009】
次に、上述のごとく冷却速度が非常に遅い場合には、溶接金属中に含まれる微量のSiについても溶接金属の靱性に大きく影響を及ぼすことを新たに見い出した。すなわち、溶接金属が十分な焼入れ性を有していたとしても、溶接金属中のSi量が多量になると靱性は劣化するのである。
【0010】
これらの知見に基づき、極厚鋼板に3電極1層潜弧溶接を施す場合のように、溶接後の溶接金属の冷却過程において800 〜600 ℃間の冷却時間が200 秒を超えるような溶接金属の冷却速度が非常に遅い超大入熱溶接であっても溶接金属の靱性を確保することを第1の目的とし、その他溶接作業性、耐割れ性及びビード外観をも考慮して、溶接金属中のMn、Mo、Si及び酸素量を適正範囲内にするように溶接用フラックスや鋼ワイヤに工夫を加えたところがこの発明の骨子である。
【0011】
すなわちこの方法は、厚鋼板に大入熱潜弧溶接を施すに際し、
溶接用フラックス及び溶接用ワイヤとしてそれぞれ
total SiO:5 〜25wt%、
MgO :15〜35wt%、
CaCO :7 〜14wt%、
CaF:2 〜10wt%、
Al :4 〜20wt%、
TiO:3 〜10wt%及び
:0.7 〜2 wt%
を含み、かつ金属成分として
鉄粉:15〜35wt%及び
Ti粉、Mn粉、Mo粉
を含有するボンドフラックス、
C:0.08wt%以下及び
Si:0.40wt以下%に加えて
Ti、Mn、Mo
を含有する鋼ワイヤであって、
これらワイヤ中のMn含有量a(wt%)及びフラックス中のMn含有量b(wt%)が、次式
1.0 ≦a+0.33b≦4.0 (wt%)
の関係を満足し、さらにワイヤ中のMo含有量c(wt%)及びフラックス中のMo含有量d(wt%)が、次式
0.15≦c+0.33d≦1.00 (wt%)
の関係を満足し、かつワイヤ中のTi含有量e(wt%)及びフラックス中のTi含有量f(wt%)が、次式
0.01≦e+0.20f≦0.40 (wt%)
の関係を満足するものを用いることを特徴とする溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法である。
【0012】
この発明の大入熱潜弧溶接方法は、溶接しようとする厚鋼板の板厚が60mm以上であり、大入熱潜弧溶接が少なくとも一の電極の溶接電流を2500A以上とする3電極以上の多電極1層溶接である場合に特に有利に適合する。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明におけるボンドフラックス及び鋼ワイヤの成分組成範囲の限定理由について以下説明する。
(ボンドフラックスについて)
total SiO:5〜25%
SiOは造さい材として重要な成分であり、スラグの粘性を調整するのに必須の成分である。その一方でSiOは溶接中、還元反応によって溶接金属中にSiを添加する作用を有する。このため、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超えるような大入熱溶接において、SiOやSiが過剰にフラックス中に含まれると、溶接金属中のSi量が増加して溶接金属の切欠靱性が劣化する問題がある。フラックス中にSiOは、けい砂等のSiOを含有する鉱石又は合成物として添加するが、フラックスにFe−Si等の合金を添加する場合もある。このような合金添加の場合にはSiをSiOに換算し、SiOの総量として規定するものとした。このtotal SiOが5%に満たないと十分なスラグの粘性を確保できず、良好なビード外観が得られない。しかしながら25%を超えて含ませると溶接金属中のSiが増加して靱性が劣化するばかりでなく、融点が低下し、粘性が過剰となりビード外観が乱れるなどの不都合がある。
【0014】
MgO :15〜35%
MgO は融点が高いためにフラックスに耐火性を与え、大入熱溶接においてビード形状を安定化する効果があるだけでなく、スラグの塩基度を上げて溶接金属中の酸素量を低減し、靱性を確保する上で有用な成分である。しかし15%未満では十分な効果が期待できず、一方35%を超えて含有させると融点が上昇しすぎてビード外観が劣化する。
【0015】
CaCO :7〜14%
CaCO は溶接中にCaO とCOとに分解し、このCOガスによって溶接部を外気からシールドするとともに溶接雰囲気中の水素ガスの分圧を低下させるため、溶接金属中への水素侵入を低減するのに有効である。またCaO は塩基性成分であり、スラグの融点を上昇させ、靱性を向上させる効果を持つ。しかしCaCO量が7%未満ではCOによるシールド効果が少なく、耐水素割れ性が低下する。一方14%を超えるCaCO量ではCOの発生量が過剰になり。ガスの吹き上げが激しくなり、溶接作業性が劣化するとともに、ビード外観も劣化する。またスラグの剥離性も害する。
【0016】
CaF:2〜10%
CaFは融点を上昇させずに塩基度を上げ得るので、溶接金属の酸素量の調整に有効であるが、2%未満ではその添加効果に乏しく、10%を超えて多量に添加するとスラグの粘性が低下し過ぎてビード外観が悪化する。
【0017】
Al:4〜20%
Alは、粘性を低下させずに融点を上昇させ得るので、融点の調整に有効に寄与するが、4%未満では粘性の調整効果に乏しく、20%を超えるとスラグの融点が高くなり過ぎて、ビード幅の不均一やビード外観の劣化を招く。
【0018】
TiO:3〜10%
TiOはスラグに流動性を与え、スラグの剥離性を改善するとともに、アーク空洞内で還元されて部分的にTiとして溶接金属中に移行し、溶接金属の靱性を改善するのに有効である。しかし3%未満ではその効果が乏しく、10%を超えて添加してもこのような効果は増進せず、むしろビード外観を害する。さらにスラグ剥離性を害する。
【0019】
:0.7 〜2%
はアーク空洞内に還元されて部分的にBとして溶接金属中に移行し、オーステナイト粒界に偏析し、粗大な粒界フェライトの生成を抑制するため、安価に溶接金属の靱性を改善するのに有効である。しかし0.7 %未満ではその効果に乏しく、2%を超える量ではむしろ溶接金属の靱性は劣化する。
【0020】
鉄粉:15〜35%
鉄粉は、溶接入熱あたりの溶着量を増加させ、溶接能率を向上させるために添加する。しかし15%未満ではその効果に乏しく、35%を超える添加量ではビード外観が損なわれる。
【0021】
この他、Mn粉、Mo粉及びTi粉を、後述するように鋼ワイヤ中のMn量、Mo量及びTi量との関係で所定の範囲内で含有させるものとする。
さらに、通常フラックスに用いられるものは、添加しても差し支えない。かような成分とてはBaO,アルカリ金属酸化物(KO ,NaOなど)があり、BaO は5%以下の範囲で、アルカリ酸化物は合計5%以下の範囲でそれぞれ含有させることができる。
【0022】
(ワイヤ成分限定理由について)
C:0.08%以下
極厚鋼板の大入熱溶接においては、その溶接金属には凝固過程において大きな収縮力がかかるため割れ感受性が高くなる。そこで溶接金属の高温割れを防止するために溶接金属中のC量を低くする必要がある。また大入熱溶接では、溶接金属の冷却時間が長いために溶接金属中のC量が高い場合にはCのオーステナイト相への分配が進み、溶接金属中にマルテンサント−オーステナイト相が生成する。これがぜい性破壊の発生起点となり靱性が劣化する。この発明の溶接法を適用しようとする鋼板は、主としてJIS G 3106に規定されるような鋼板であり、そのC量は0.10〜0.18%が実勢である。ここに、この発明の溶接方法では鋼板の希釈率4割、ワイヤのそれは4割であるので、溶接金属中のC量を0.12%以下の範囲で生成するために、ワイヤのC量を0.08%以下と規定するものである。
【0023】
Si:0.40%以下
Siは強力な脱酸剤であるが、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超える大入熱溶接では、溶接金属中のSiは靱性を著しく劣化させる。ワイヤのSi量が0.40%を超えると溶接金属の靱性が劣化するためワイヤのSi量を0.40%以下に規定するものである。
【0024】
(フラックス中及びワイヤ中のMn量、Mo量及びTi量の限定理由について)
溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超える場合、溶接金属の焼入れ性を非常に高めなければ、溶接金属中に粗大な初析フェライトが大きく発達し、靱性が劣化する。溶接金属の靱性向上には初析フェライトの生成を抑制する必要があり、溶接金属の焼入れ性を十分に確保する必要がある。ここに、Mnを、靱性及び引張強度確保のため、焼入れ性向上成分として添加する。すなわち、Mnは溶接金属の焼入れ性を安価に向上せさ、溶接金属の靱性を向上させるのに有効である。一方低温割れ防止の観点から溶接金属の強度が高くなり過ぎないような適正な範囲にMn量を調整することも必要である。かような観点からMn量の範囲を規定するにあたり、このMnは、フラックス及びワイヤの双方から添加することができるので、鋼板のMn量との兼ね合いから溶接金属中に含まれるMn量が1.0 〜2.0 %となるようにフラックス及びワイヤ中のMn量を調整する必要がある。具体的には、前述したJIS G 3106に記載された鋼板のMn量は、1.0 〜1.5 %が実勢であるため、ワイヤ中のMn量をa(%)、フラックス中のMn量をb(%)としたとき、次式
1.0 ≦a+0.33b≦4.0 (%)
を満足するようにフラックスとワイヤ中のMn量を調整する必要がある。上式におけるa+0.33bの値が1.0 %より少なければ焼入れ性が不足して、溶接金属の靱性を損ない、一方4.0 %より高くなると、強度が高くなり過ぎて、耐低温割れ性が低下する。より好適な範囲は、a+0.33bの値が 1.5〜3.5 %の範囲である。
【0025】
また、溶接金属の焼入れ性をMn同様に向上させる元素としては、Moがある。Moは、Mnに比べて高価であるが、少量の添加で溶接金属の靱性を格段に向上させることができる。かようなMoは、スラックス及びワイヤの一方又は双方からも添加できるので、鋼板のMo量との兼ね合いから溶接金属中に含まれるMo量が0.06〜0.40%となるようにフラックス及びワイヤ中のMo量を調整する必要がある。具体的には、ワイヤ中のMo量をc(%)、フラックス中のMo量をd(%)としたとき、次式
0.15≦c+0.33d≦1.00 (%)
を満足するようにフラックスとワイヤ中のMo量を調整する必要がある。上式におけるc+0.33dの値が0.15%より少なければ焼入れ性が不足して、溶接金属の靱性を損ない、一方1.00%より高くなると、強度が高くなり過ぎて、耐低温割れ性が低下する。より好適な範囲は、c+0.33dの値が 0.4〜0.7 %の範囲である。
【0026】
次にTi量の限定理由であるが、既に述べたように、溶接金属中の酸素量を低減することによって、溶接金属の焼入れ性が向上するために靱性を向上させることができる。溶接金属中の酸素量を低減するためには一般に、脱酸剤としてSiが用いられることもあるが、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を越えるような大入熱溶接においてSiは、切欠靱性をむしろ劣化させるために積極的な添加はできない。そのため、溶接金属の靱性向上のために強力な脱酸剤である金属Tiを添加する。またTiは、脱酸後もTiOとなって溶接金属中に分散し、溶接金属の組織を微細化し、靱性向上に有効である。このような作用を有するTiは、フラックス及びワイヤの一方または双方からも添加できるので、溶接金属中に含まれるO量が0.013 〜0.033 wt%となるように、フラックス及びワイヤ中のTi含有量を調整する必要がある。具体的には、ワイヤ中のTi量をe(%)、フラックス中のTi量をf(%)としたとき、次式
0.01≦e+0.20f≦0.40 (%)
を満足するようにフラックスとワイヤ中のTi量を調整する必要がある。上式におけるe+0.20fの値が0.01%より少なければ十分な脱酸が行われず、靱性向上の効果が得られない。一方0.40%より高くなると、溶接金属中の酸素量が低下し過ぎてむしろ靱性を損なう。より好適な範囲は、e+0.20fの値が0.02〜0.20%の範囲である。
【0027】
この他、Ni及びCuなど、通常ワイヤに含まれるものは、添加しても差し支えない。
【0028】
ここで、ワイヤの各成分量は、用いる各ワイヤの平均値であり、各電極の溶着量が電流に比例するものとして、次の式に従って算出するとよい。
例えば、3電極溶接において平均のC量すなわちC(AV)は、
【数1】
(AV) (wt%) = 1電極目の電流×1電極目のワイヤのC量/電流の総和+2電極目の電流×2電極目のワイヤのC量/電流の総和+3電極目の電流×3電極目のワイヤのC量/電流の総和
とする。
【0029】
このような組成になる溶接用フラックス及び鋼ワイヤを用いた大入熱潜弧溶接法が有利に適用するのは、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超えるような大入熱の場合であり、すなわち溶接しようとする厚鋼板(JIS G 3106に規定されるような溶接構造用鋼)の板厚が60mm以上であり、大入熱潜弧溶接が少なくとも一の電極の溶接電流を2300A以上とする3電極以上の多電極1層溶接である場合である。ここに、少なくとも一の電極の溶接電流が2300Aに満たないと、溶け込み不足、溶着量不足という不利が生ずるので溶接電流は2300A以上が好ましい。
【0030】
【実施例】
溶接母材としてJIS G3106 に規定されたSM490B相当であって表1に示す板厚及び組成になる鋼板を用いた。かかる溶接母材の開先形状はY型で、各々の板厚において
板厚60mmでは開先角度40°でルートフェース10mmとし、
板厚70mmでは開先角度40°でルートフェース12mmとし、
板厚80mmでは開先角度40°でルートフェース13mmとした。
【0031】
【表1】
Figure 0003552375
【0032】
次に、溶接用ワイヤとしては、表2に示す組成で線径6.4 mmのものを用いた。
【表2】
Figure 0003552375
【0033】
さらに、溶接用フラックスとしては、表3に示すものを用いた。表3において、No. 1〜4はこの発明の要件を満たすフラックスであり、No. 5〜11は要件を満たさないものである。
【0034】
【表3】
Figure 0003552375
【0035】
これらの溶接母材、溶接用ワイヤ及び溶接用フラックスを用いた溶接の際しては、表4に示す条件にて、3電極1層サブマージドアーク溶接を行った。なお、3電極のうち先行電極をDC電源、追行する残りの2本の電極をAC電源とした。このAC電源の位相差は120 °とした。なお、この条件で溶接した際の溶接金属の800 〜600 ℃における冷却時間を測定し、その結果を表4に併記した。
【0036】
【表4】
Figure 0003552375
【0037】
このような溶接の後、溶接性を評価した。その結果を表5に示す。この評価項目中、溶接作業性(スラグの剥離性、ガスの吹き上げ)及びビード外観を観察し、目視によって判断して良否を○×で示し、また、耐割れ性について溶接部の割れの有無を超音波探傷によって判断して良否を○×で示した。さらに、溶接金属部から10mm,10mm,55mmのVノッチ付試験片を切り出し、0℃における衝撃吸収エネルギーを測定した。これらの評価に基づき、全般に優れる場合を総合評価で○とし、劣る場合を×とした。
【0038】
【表5】
Figure 0003552375
【0039】
試料No. 1〜6はこの発明に従う適合例であり、良好な靱性の溶接金属及び良好な形状のビードを欠陥なくかつ作業性を損なうことなく得ることができた。
これに対して、試料No. 7はワイヤ中のSi量及びフラックス中のtotal SiOが過大であり、溶接金属の靱性が劣り、ビード外観も不良であった。
試料No. 8はフラックス中のtotal SiOが少ないため、ビード外観が不良であり、また、溶接金属中のMn量が高すぎるために、割れが発生した。
試料No. 9はフラックス中のCaFが過大であり、ビードの幅が不均一となり、また、Tiの添加量が少ないため、溶接金属中の酸素量が高くなり、溶接部の靱性が劣っていた。
試料No. 10はフラックス中のAl が高いため、ビードが細く、不均一であり、また溶接金属のMn量が少なく、靱性が劣っていた。
試料No. 11はフラックス中のCaCO が過剰であり、溶接中のガス吹き上げが激しく、作業性が劣っており、また、溶接金属中のMo量が少なく、溶接金属の靱性が劣る。
試料No. 12はフラックス中のCaCO が少ないため、溶接金属中の拡散性水素量が多くなって割れが発生し、また、溶接金属に添加される金属Ti量が多いため、溶接金属中の酸素量が減少し、溶接金属の靱性が劣化した。
試料No. 13はフラックス中のMgO 量が高く、ビード外観が不良であった。
試料No. 14はフラックス中のtotal SiO量が高いため、ビード外観及び靱性が劣る。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明の溶接方法によれば、極厚鋼板の大入熱3電極1層サブマージドアーク溶接のように溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超える場合であっても良好な溶接金属の切欠靱性を得ることができるばかりでなく、良好な溶接作業性とビード外観、及び溶接金属の良好な耐水素割れ性を得ることができる。

Claims (2)

  1. 厚鋼板に大入熱潜弧溶接を施すに際し、
    溶接用フラックス及び溶接用ワイヤとしてそれぞれ
    total SiO:5 〜25wt%、
    MgO :15〜35wt%、
    CaCO :7 〜14wt%、
    CaF:2 〜10wt%、
    Al :4 〜20wt%、
    TiO:3 〜10wt%及び
    :0.7 〜2 wt%
    を含み、かつ金属成分として
    鉄粉:15〜35wt%及び
    Ti粉、Mn粉、Mo粉
    を含有するボンドフラックス、
    C:0.08wt%以下及び
    Si:0.40wt以下%に加えて
    Ti、Mn、Mo
    を含有する鋼ワイヤであって、
    これらワイヤ中のMn含有量a(wt%)及びフラックス中のMn含有量b(wt%)が、次式
    1.0 ≦a+0.33b≦4.0 (wt%)
    の関係を満足し、さらにワイヤ中のMo含有量c(wt%)及びフラックス中のMo含有量d(wt%)が、次式
    0.15≦c+0.33d≦1.00 (wt%)
    の関係を満足し、かつワイヤ中のTi含有量e(wt%)及びフラックス中のTi含有量f(wt%)が、次式
    0.01≦e+0.20f≦0.40 (wt%)
    の関係を満足するものを用いることを特徴とする溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法。
  2. 溶接しようとする厚鋼板の板厚が60mm以上であり、大入熱潜弧溶接が少なくとも一の電極の溶接電流を2300A以上とする3電極以上の多電極1層溶接である請求項1記載の方法。
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