JP3354460B2 - 高張力鋼材の被覆アーク溶接方法 - Google Patents

高張力鋼材の被覆アーク溶接方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張強度が880 〜
1180 MPaの高張力鋼材(鋼板など)の被覆アーク溶接方
法に関し、特に耐低温割れ性に優れるとともに、引張強
度および靱性にも優れる被覆アーク溶接方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】最近の溶接鋼構造物の大型化に伴い、構
造物に使用される鋼材の厚みが増大し、強度はより高強
度へと変化してきている。この高張力鋼材の被覆アーク
溶接においては、従来より、溶接部に低温割れが発生し
易いことが知られており、溶接施工にあたっては低温割
れ対策が必要とされている。溶接部の拡散性水素量は、
低温割れの発生に及ぼす影響が大きいとされており、こ
のため、溶接部の拡散性水素量を低減させて低温割れを
防止する方法がよく適用されている。このうち最も一般
的に用いられるのは、溶接部の予熱あるいは後熱であ
る。しかし、この方法では高張力の程度が高まるととも
に、より高い予熱温度あるいは後熱温度を必要とするよ
うになるため、溶接作業環境の悪化や溶接施工コストの
上昇などを招くことになり、その解決が求められてい
る。
【0003】こうした中で、引張強度が880 MPa 未満の
高張力鋼の被覆アーク溶接においては、低温割れが溶接
熱影響部に発生することから、鋼板の化学成分、拡散性
水素量、拘束度に基づいた低温割れ感受性指数が提案さ
れ、この低温割れ感受性指数を減少させた耐低温割れ性
に優れた高張力鋼板が開発された。すなわち、圧延によ
り鋼板を製造する際に、圧延温度, 圧下率, 圧下スケジ
ュール等の圧延条件や冷却条件をコントロールして結晶
組織や析出物の析出形態を制御する、いわゆる制御圧
延、制御冷却の技術を適用することにより、炭素当量を
低くしつつも高い強度レベルを維持した低温割れ感受性
指数の低い鋼板が製造できるようになり、溶接熱影響部
に発生する低温割れの防止技術は大きく改善された。こ
れにともない、予熱温度が低減され、予熱などによる溶
接作業環境の悪化、溶接施工コストの増加は大きく改善
されてきたといえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たような、鋼板の炭素当量を低下させて、低温割れの防
止方法によっても、引張強度が880 MPa 以上の高張力鋼
板になると低温割れの発生を抑制することができなくな
る。その理由は、鋼板の高強度化が進むにつれて低温割
れの発生場所が溶接熱影響部から溶接金属へと移行し、
引張強度が880MPa以上の高張力鋼では、低温割れのほと
んどは溶接金属で発生するようになるからである。した
がって、引張強度が880MPa以上の高張力鋼の低温割れを
改善するためには、鋼板の改善よりもむしろ溶接棒の改
善が必要となる。例えば、溶接施工時の予熱温度を格段
に低減することができる低水素系被覆アーク溶接棒が求
められる。
【0005】ところで、高張力鋼板用の低水素系被覆ア
ーク溶接棒については、従来より多くの研究が行われて
いるが、そのほとんどは溶接金属の靱性を改善すること
を目的としたものである。というのは、一般的に、溶接
金属が高強度になればなるほどその靱性は低下していく
傾向にあるからである。この靱性を改善するための従来
方法として、例えば、特公平8−29431 号公報に、C%
およびNi%を規制した鋼心線の周囲に、金属炭酸塩、金
属弗化物、Mgを含有する被覆剤を塗装した低水素系被覆
アーク溶接棒により、破壊靱性を改善する技術が開示さ
れている。また、特公平8−25059 号公報には、低水素
系被覆アーク溶接棒の被覆剤に添加する金属Mgの平均粒
径を制限することにより、溶接金属の靱性を改善する技
術が開示されている。これらの方法は、いずれも溶接金
属中の酸素の低減による靱性改善効果を利用するもの
で、被覆剤中に強脱酸剤であるMgを多量に添加する点で
共通している。
【0006】しかしながら、このように多量のMgを含有
する低水素系被覆アーク溶接棒では、溶接棒中の拡散性
水素量を低減させるための一般的に採用されている高温
乾燥をおこなうと、被覆剤中の金属Mgが酸化してしま
い、目的とする酸素低減の機能を十分に発揮できなくな
り、低温割れを防止することが難しいという問題があ
る。また、仮に高温乾燥による金属Mgの酸化が靱性劣化
を引き起こさない程度の場合であっても、高温乾燥を施
すことにより生じる酸化Mgは水分を吸着し易いという性
質を有しているため、安定した拡散性水素量低減の達成
は難しいと考えられる。このようなことから、Mgを多量
に含有する低水素系被覆アーク溶接棒を用いても、耐低
温割れ性の改善と溶接金属の靱性確保の両立を図るのは
難しいのが現状である。
【0007】そこで、本発明は、従来技術が抱えている
上記問題点を解決するためになされたものであり、引張
強度 880〜1180 MPaの高張力鋼材の被覆アーク溶接にお
いて、耐低温割れ性を改善するとともに、引張強度およ
び靱性にも優れた低水素系被覆アーク溶接方法を提供す
ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上掲の目的
を実現すべく、引張強度が880 〜1180 MPaの高張力鋼材
の被覆アーク溶接において溶接金属に生じる低温割れ、
特に、溶接継手作製時の初層溶接において生じる低温割
れに影響を及ぼす要因について鋭意検討した。その結
果、溶接継手作製時の耐低温割れ性を改善するために
は、溶接金属中の拡散性水素量を低下させ、溶接金属の
硬さを適正範囲に調整することが必要であるとの知見を
得て、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、鋼中のC:0.16重量
%以下、かつ下記(1)式で表されるCeqが0.50〜0.70重
量%であり、引張強度が880〜1180MPaである高張力鋼材
を被覆アーク溶接するにあたり、C:0.02重量%以下の
鋼心線の周囲に、Mgの含有量を0.5重量%未満に制限し
た被覆剤を塗装した溶接棒であって、この溶接棒全体の
成分がC:0.35重量%以下、Si:0.5〜2.5重量%、Mn:
0.5〜2.5重量%、Ni:1.0〜3.0重量%、Cr:0.2〜1.2重
量%およびMo:0.2〜1.0重量%であり、残部がFeおよび
不可避的不純物からなり、しかも鋼材の引張強さTS
と、入熱量10〜40KJ/cmの溶接により得られる溶着金属
についての前記Ceqとで表される下記(2)式のY値を−
0.1〜0.1の範囲に入るように調整した、低水素系被覆ア
ーク溶接棒を用いて溶接することを特徴とする高張力鋼
材の被覆アーク溶接方法を要旨とするものである。 記 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)+(Ni+Cu)/15 ……(1) Y=Ceq−TS/1300 ……(2) ここで、TS:鋼材の引張強さ(MPa)
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における限定理由
の詳細を説明する。まず、使用する鋼材について述べ
る。使用する鋼材の引張強度が、880 MPa 未満では低温
割れが溶接熱影響部で発生するため本発明の適用すると
ころとはならない。一方、1180 MPaを超えると、低水素
系被覆アーク溶接棒によって得られる溶接金属において
引張強度と靱性の両方を満足することが難しくなる。し
たがって、引張強度は880 〜1180 MPaの範囲とする。次
に、鋼材の化学成分について述べる。高張力鋼材を低水
素系被覆アーク溶接棒で溶接継手を作製する場合には、
溶接金属中には鋼材も溶け込むため、溶接金属の化学成
分は鋼材の成分によっても変化する。特に、最も低温割
れの発生が懸念される初層溶接では希釈率 (溶接金属中
の鋼材の溶融率) が20〜30%程度となり、溶接金属に及
ぼす鋼材の化学成分の影響は大きい。したがって、溶接
金属の耐低温割れ性、引張強度および靱性を改善するた
めには鋼材の化学成分について考慮する必要がある。
【0011】低温割れを防止するためには、溶接金属の
C含有量が非常に重要となる。溶接継手作製時の初層溶
接では溶接部は急冷されるため、溶接金属はマルテンサ
イト主体の組織となり、その硬さはC%に左右されるか
らである。したがって、後述するように、C%を制限し
た低水素系被覆アーク溶接棒を使用する場合であって
も、鋼材中のC%が増加するにしたがい、溶接金属のC
%が増加し、溶接金属硬さが増大するため、溶接金属に
低温割れが発生しやすくなる。また、Cの過度の添加は
焼入れ性を増加させるため靱性も劣化させる。これら両
方の影響を勘案して鋼材中のCは0.16重量%以下とす
る。
【0012】また、鋼材中のMn、Cr、Moなど他の化学成
分は、溶接金属の引張強度および靱性に影響を及ぼすも
のの、C%が溶接金属の低温割れに及ぼす影響ほど大き
くはなく、 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)+(Ni+Cu)/15 …… (1) で示されるCeqが、一定の範囲内にあれば良好な特性を
示す。ただし、鋼材の引張強度を880 〜1180 MPaの範囲
とすることを考慮して、上記Ceqを0.50〜0.70重量%の
範囲とする。
【0013】次に、鋼心線の成分については特にC量が
重要である。溶接金属の靱性を確保すると同時に、低温
割れの発生を十分に低減させるためには、C量を0.02重
量%以下とする必要がある。鋼心線中のCが0.02重量%
を超えると、鋼材中に含まれるCを0.16重量%以下とし
ても、溶接金属の機械的特性を確保するために被覆剤中
に添加する合金剤などに不可避的に含まれるC量と合算
されることにより、得られる溶接金属中のC量が増加す
るため溶接金属硬さが増加し、低温割れを防止できなく
なる。さらに、機械的特性を向上させるための鋼心線と
して、P:0.01重量%以下、S:0.01重量%以下、N:
0.005 重量%以下、O:0.001 〜0.01重量%の範囲にす
ることが望ましい。
【0014】次に、被覆剤は、金属炭酸塩、金属弗化
物、アーク安定剤、スラグ形成剤、脱酸剤、合金剤、固
着剤からなるものであるが、この被覆剤中のMgは、拡散
性水素起因による低温割れを防止するために、0.5 重量
%未満とする必要がある。図1に、被覆剤中のMg%と水
素試験による拡散性水素量との関係を示す。Mg量が0.5
重量%以上になると拡散性水素量が著しく増大している
ことがわかる。このような現象を招いたのは、Mgを0.5
重量%以上含有すると、溶接棒中の拡散性水素量低減の
ために通常採用される高温乾燥を行う際に、水分を吸着
し易い特性を持つ酸化Mgが生じ易くなり、結果的に、拡
散性水素量を安定して低減させることが困難になったた
めであると考えられる。
【0015】被覆剤中の金属炭酸塩は、アーク中で分解
し、CO2 ガスを発生して溶融メタルを大気から遮断
し、アーク雰囲気中の水素、窒素のガス分圧を下げると
ともに塩基性のスラグを生成する効果を有している。こ
のような効果を発揮させるためには、被覆剤全量に対し
て30〜60重量%の範囲で含有させることが望ましい。な
お、金属炭酸塩の具体例としては、炭酸カルシウム、炭
酸バリウム、炭酸マンガンなどが挙げられる。
【0016】金属弗化物は、スラグの融点を下げて流動
性を向上させ、また、アーク中で分解したフッ素は溶融
メタルや溶融スラグの中の水素と反応し、溶融メタルの
水素分圧を下げて耐割れ性の良好な溶接金属をつくる作
用を有する。このような効果を発揮させるためには、金
属弗化物の含有量は被覆剤全量に対して10〜30重量%の
範囲であることが望ましい。具体的な金属弗化物として
は、弗化カルシウム、弗化バリウム、弗化マンガンなど
が挙げられる。
【0017】このほか、被覆剤にはアーク安定剤および
スラグ安定剤としてルチール、アルカリ金属、鉄粉など
を添加でき、脱酸剤および合金剤としてSi、Mn、Ni、C
r、Mo、Ti、Alなどを添加できる。
【0018】固着剤としては、アルカリ成分に対するSi
O2濃度が10〜30重量%の珪酸リチウム水溶液10〜35重量
%と、同じく20〜30重量%の珪酸ナトリウム水溶液20〜
60重量%と、同じく20〜30重量%の珪酸カリウム水溶液
20〜60重量%の混合液を添加することが望ましい。
【0019】さらに、上述した鋼心線および被覆剤から
なる被覆アーク溶接棒全体にしめる各成分含有量の限定
理由について述べる。Cの含有量が増加すると、被覆ア
ーク溶接によって得られる溶接金属は高炭素マルテンサ
イトとなり硬さが増加し、溶接継手作製時の初層溶接に
おける低温割れ発生を防止できなくなる。したがって、
溶接棒中のCは0.35重量%以下とする。
【0020】Siは、0.5 重量%未満の含有量では、溶接
メタルへのスラグのかぶりが大きくなり、溶接作業性が
劣化するとともに、継手の溶接金属の脱酸が不十分とな
り靱性も劣化する。一方、2.5 重量%を超えると、溶接
メタルの粘性が過度に上昇して作業性が劣化するととも
に、溶接金属中のSi量を増加させて靱性を劣化させる。
したがって、溶接棒中のSiは0.5 〜2.5 重量%の範囲と
する。
【0021】Mnは、0.5 重量%未満の含有量では、溶接
継手の溶接金属中の酸素量が増加し、靱性が劣化すると
ともに、溶接金属強度を880MPa以上に確保することが困
難になる。一方、2.5 重量%を超えて含有すると、溶接
金属が上部ベイナイトなど低靱性組織となるため靱性確
保の観点から好ましくない。したがって、溶接棒中のMn
含有量は、0.5 〜2.5 重量%の範囲とする。
【0022】Niは、1.0 重量%未満の含有量では、高張
力鋼の溶接継手で高靱性の溶接金属を得ることができな
い。一方、3.0 重量%を超えて添加しても、さらなる靱
性向上の効果は得られない。したがって、過剰な添加は
生産コストを上昇させることを考慮して、溶接棒中のNi
含有量は1.0 〜3.0 重量%の範囲とする。
【0023】Crは、0.2 重量%未満では、継手の溶接金
属の強度を確保することが難しい。一方、1.2 重量%を
超えて添加すると、溶接金属の靱性が劣化する。したが
って、溶接棒中のCr含有量は、0.2 〜1.2 重量%の範囲
とする。
【0024】Moは、0.2 重量%未満の含有量では、継手
の溶接金属強度を確保することが難しい。一方、1.0 重
量%を超えて添加すると、溶接金属の靱性が劣化する。
したがって、溶接棒中のMoは、0.2 〜1.0 重量%の範囲
とする。
【0025】以上、鋼心線、被覆剤および被覆アーク溶
接棒について説明したが、これらの条件のみでは、引張
強度880 〜1180MPa の高張力鋼材の被覆アーク溶接に対
応することができない。すなわち、溶接しようとする鋼
材強度レベルに応じて、所定の引張強度および靱性を安
定して得られる溶接金属を形成する必要がある。そし
て、引張強度が880MPa以上の高強度を必要とする溶接金
属において、引張強度と靱性の両方を満足する化学成分
の範囲は、かなり狭くなると考えられる。しかし、鋼心
線および被覆剤を上記限定範囲内に調整した低水素系被
覆アーク溶接棒を用いて、入熱量10〜40kJ/cmの溶接を
することにより得られる溶着金属(JIS Z3111 による)
では、引張強度および靱性は (1)式で示されるCeqと一
次関係を示し、Ceqが小さいほど引張強度は低下し、C
eqが大きいほど靱性は低下する傾向を示した。このた
め、Ceqを指標にすることで、溶接に供する鋼材強度に
適した溶着金属強度を限定することか可能といえる。
【0026】そこで、発明者らは、溶接継手に供する鋼
材強度と溶接金属のCeqの関係について、種々の実験を
行った結果、鋼材の引張強さと溶着金属(JIS Z3111 に
よる)の化学成分から (2)式: Y=Ceq−TS/1300 …… (2) ここでTS:鋼材の引張強さ(MPa) によって得られるY値が−0.1 〜0.1 の範囲であると、
溶接継手の溶接金属の引張強度は鋼材強度の0.97倍以
上、1.03倍以下となり、かつ、靱性も十分満足されると
の知見を得た。Y値が−0.1 よりも低下すると溶接金属
強度が鋼材強度の0.97倍の値よりも低くなり、強度不足
となる。一方、Y値が0.1 よりも増加すると溶接金属の
靱性が劣化し、耐低温割れ性も低下する。したがって、
(2)式によって得られるY値が−0.1 〜0.1 の範囲とな
るように限定する。
【0027】
【実施例】以下、実施例により、本発明の効果を具体的
に説明する。表1に示す、鋼心線と被覆剤(金属炭酸
塩:45重量%、金属弗化物:25重量%を含有し、残部が
アーク安定剤, スラグ形成剤, 脱酸剤, 合金剤および固
着剤からなる)よりなる各種の被覆アーク溶接棒を製造
した。溶接棒の心線径は4.O mmとし、通常の溶接棒塗装
機により被覆、乾燥した。その後、水分を除去するため
に 350〜550 ℃で乾燥し、さらに、溶接前には、400 〜
500 ℃で再乾燥した。これらの溶接棒を用い、入熱量10
〜40kJ/cmの溶接により、JIS 3111に従い溶着金属を作
製し、そのCeqおよびY値を求めた。また、耐低温割れ
性試験を行うとともに、溶接継手についての引張強度お
よび靱性を調査した。耐低温割れ性は、予熱温度75℃、
溶接電流170A、溶接入熱17kJ/cm、下向き姿勢で、板厚
50mmの鋼板を使用してy形溶接割れ試験(JIS Z3158 )
を実施し、ルート割れ率が20%未満のものを良好とし○
印で、20%以上のものを不良とし×印で示した。溶接金
属の引張強度は、予熱温度 100℃、溶接入熱10〜40kJ/
cmで溶接したX開先の溶接継手より加工した丸棒引張試
験片で評価し、鋼板の引張強度の0.97倍以上となるもの
を良好とし○印で示した。靱性は、同じく溶接継手より
加工したVノッチシャルピー衝撃試験片で評価し、−40
℃での吸収エネルギが47J以上のものを良好とし○印で
示した。
【0028】
【表1】
【0029】得られた結果を、表1に合わせて示す。表
1から明らかなように、本発明の条件を満足するNo. 1
〜15の発明例では、溶接金属の耐低温割れ性、引張強度
および靱性ともに良好な結果を示した。これに対して、
No. 16〜19では、それぞれ、Si、Mn、Cr、Moの添加が少
なく、さらにNo.17 〜19では、Y値も−0.1 より小さい
ため、引張強度が低下し不良となった。特に、No.16 、
17は、Si、Mnが少ないため靱性も劣化している。No. 2
0、22では心線あるいは溶接棒全体のCが多く、Y値も
0.1 より大きいため、耐低温割れ性および靱性ともに不
良となった。No. 21、24では被覆剤中のMgが増加してい
るため、耐低温割れ性が不良となった。No. 23では、Ni
が少なすぎるため靱性が確保できず不良となった。No.2
5 では、Y値が−0.1 より小さくなり、引張強度不足と
なった。No. 26〜29では、それぞれSi、Mn、Cr、Moの添
加量が多いため、いずれも靱性不足となり、特に、No.
27、29では、Mg添加量が多いため耐低温割れ性も劣化し
た。また、No. 30では、Y値が−0.1 より小さくなり、
引張強度が不足し不良となった。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
引張強度が880 〜1180MPa の高張力鋼材の被覆アーク溶
接において、耐低温割れ性を著しく改善することができ
るとともに、溶接金属の引張強度および靱性をも改善す
る溶接方法を提供することができる。したがって、高張
力鋼を使用した構造物の品質向上、歩留り向上、コスト
ダウン等をはかることが可能となり、産業の発展に寄与
するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆剤中のMg量が拡散性水素量に及ぼす影響を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−285683(JP,A) 特開 平9−192878(JP,A) 特開 平7−195193(JP,A) 特開 平4−339593(JP,A) 特開 昭56−33179(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/23 B23K 35/00 - 35/368

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.16重量%以下、かつ下記(1)式で表
    されるCeqが0.50〜0.70重量%であり、引張強度が880
    〜1180MPaである高張力鋼材を被覆アーク溶接するにあ
    たり、C:0.02重量%以下の鋼心線の周囲に、Mgの含有
    量を0.5重量%未満に制限した被覆剤を塗装した溶接棒
    であって、この溶接棒全体の成分がC:0.35重量%以
    下、Si:0.5〜2.5重量%、Mn:0.5〜2.5重量%、Ni:1.
    0〜3.0重量%、Cr:0.2〜1.2重量%およびMo:0.2〜1.0
    重量%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からな
    、しかも鋼材の引張強さTSと、入熱量10〜40KJ/cm
    の溶接により得られる溶着金属についての前記Ceqとで
    表される下記(2)式のY値を−0.1〜0.1の範囲に入るよ
    うに調整した、低水素系被覆アーク溶接棒を用いて溶接
    することを特徴とする高張力鋼材の被覆アーク溶接方
    法。 記 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)+(Ni+Cu)/15 ……(1) Y=Ceq−TS/1300 ……(2) ここで、TS:鋼材の引張強さ(MPa)
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