JP3112373U - 蒔絵シート - Google Patents
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Abstract
【課題】意匠性および耐候性に優れ、屋外で用いられるものに対しても使用可能な蒔絵シートを提供する。
【解決手段】フィルム、該フィルム上に形成された塗膜、該塗膜上に形成された接着層、該接着層上に形成された金属層、および該金属層上に形成された紫外線吸収層とからなるシートである。前記塗膜が、天然漆、ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネート、または、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】フィルム、該フィルム上に形成された塗膜、該塗膜上に形成された接着層、該接着層上に形成された金属層、および該金属層上に形成された紫外線吸収層とからなるシートである。前記塗膜が、天然漆、ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネート、または、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本考案は、蒔絵調の模様を有するシートに関する。詳細には、意匠性および耐候性に優れる蒔絵シートに関する。
従来、建築内装、家具、自動車内装または家電などに蒔絵調の模様を形成する場合、漆塗りされた家具などに直接、蒔絵が施されていたが、より簡便な方法として、蒔絵調の模様が施されたシートを、対象物に接着または転写する方法が特許文献1〜5に開示されている。
特許文献1および2には、凹凸を有するフィルムの凹部に接着剤と混合した金粉などを塗布し、さらにカラーフィルムにてラミネートされた表面材が開示されている。特許文献3には、透明シートの裏面に漆塗層を設け、表面に蒔絵技法による加飾を施したシートが開示されている。特許文献4には、基材シート、アクリル共重合エマルジョン層、アクリル塗料層、接着剤層、金銀などの箔およびウレタン樹脂層からなる蒔絵様コーティングシートが開示されている。また、特許文献5には、ベースフィルム、紫外線硬化樹脂などからなるクリヤ層、金属箔粉層および被覆固定層からなる転写シートが開示されている。
しかし、いずれのシートも、その接着または転写の対象が、建築内装、家具、自動車内装または家電など主に屋内で使用するものであり、耐候性については考慮されていない。
本考案の目的は、意匠性および耐候性に優れ、屋外で用いられるものに対しても使用可能な蒔絵シートを提供することである。
すなわち、本考案は、フィルム、該フィルム上に形成された塗膜、該塗膜上に形成された接着層、該接着層上に形成された金属層、および該金属層上に形成された紫外線吸収層とからなるシートに関する。
前記塗膜が、天然漆、ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなることが好ましい。
前記塗膜が、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなることが好ましい。
前記金属層が、金または銀からなることが好ましい。
前記フィルムの下に、接着剤層および剥離紙を有することが好ましい。
本考案によれば、最上層に紫外線吸収層を設けているため、耐候性に優れた蒔絵シートが得られる。そのため、屋外で用いられるものに対して使用することができる。また、塗膜に紫外線により劣化しやすい漆を用いることも可能である。
さらに、最下層に接着剤層および剥離紙を設けることにより、所望の対象物に容易に接着することができる。
本考案のシートは、図1に示すように、フィルム1、該フィルム1上に形成された塗膜2、該塗膜2上に形成された接着層3、該接着層4上に形成された金属層4、および該金属層4上に形成された紫外線吸収層5とからなる。
フィルム1は、本考案のシートの基材となるものであり、平滑な表面を有しているものであればとくに限定されない。たとえば、ポリエステルおよびポリエチレンなどがあげられる。なかでも、柔軟性および表面光沢性に優れ、さらには焼却時にダイオキシンなどを発生せず環境面においても優れている点で、ポリエステルの表面にアクリル加工されたエコカル(商品名、帝人化成株式会社製)が好ましい。
また、その厚さは、30〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましく、50〜80μmがさらに好ましい。30μmより薄いと、亀裂が生じやすく、また耐候性に劣る傾向にあり、200μmをこえると、柔軟性に欠けるため、曲面をもつ対象物に適用するのが難しくなる傾向にある。
塗膜2は、天然漆、ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなる組成物、または、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなる組成物などからなることが好ましい。これら組成物に含まれるポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの架橋反応により、耐剥離性および硬度に優れるポリエステル系ポリウレタン樹脂の塗膜が得られる。また、フィルム1をポリエステル系樹脂とすることにより、フィルム1と塗膜との密着性を向上することができる。
ここで、カルダノールは、カシューナッツ殻液に含まれる主成分(アナカルド酸)の加熱処理により得られるメタ位に0〜3の不飽和基を有するフェノール誘導体であり、天然漆の主成分であるウルシオールと非常に類似した構造を有し、人工漆として用いられている。したがって、このカルダノールまたは天然漆を含む前記組成物を使用することにより、漆調の光沢感を塗膜に付与することができる。
前記カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールは、次式(1)で表される。
なお、式中、R1およびR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、また、単位毎に同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜5個の飽和炭化水素基を表し、R3は1〜3個の不飽和二重結合を有する炭素数15〜20個の炭化水素を表し、nは2〜8の整数である。
ここで、nが8をこえると、塗膜形成後におけるフィルム1との密着性に劣り、塗膜が剥離しやすくなる傾向にある。
また、前記ポリエステルポリオールは、前記式(1)におけるジカルボン酸エステルジオールからなるものを使用することができる。
前記ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、および、塗装後の加熱によりポリイソシアネートを発生するイソシアネート再生体などを用いることができる。なかでも、耐候性(耐変色および耐劣化)に優れるものを使用するのが好ましい。これら、ポリイソシアネートは、予備的にポリエステルポリオールと反応させ、イソシアネートプレポリマーとして用いられる。
天然漆を含む組成物の調製法について、具体的に説明する。
まず、十分な量のトルエンで溶解し希釈された天然漆と染料または顔料とを、ポリエステルポリオール中に攪拌しながら混合し、天然漆およびポリエステルポリオールを含む溶液(以下、A液と称す)を調製する。
天然漆の含有量は、A液中の3〜10重量%であることが好ましい。10重量%をこえると、ポリエステルポリオールとの相溶性に劣る傾向にあり、またコスト高となる。
また、ポリエステルポリオールの含有量は、A液中の5〜10重量%であることが好ましい。5重量%より少ないと、乾燥性に劣るため、ゴミ不良の要因となる傾向にあり、10重量%をこえると、ポリウレタン成分が多くなるため、光沢性が低下する傾向にある。
前記染料または顔料としては、特に限定ないが、塗膜に漆黒調を付与する場合には、合成鉄黒、カーボンブラックまたはアニリンブラックなどを使用することが好ましい。それ以外にも、白、オレンジ、グリーン、ブルー、イエロー、レッドおよびシルバーなどの色調を付与する染料または顔料を使用することができる。なお、これら色調は、蒔絵シートの退色性に影響を与えることがある。
また、染料または顔料の含有量は、A液中の4〜6重量%であることが好ましい。4重量%より少ないと、着色が不十分となり、隠蔽力に劣る傾向にあり、6重量%をこえると、塗装作業性に劣り、また光沢性が低下するなど外観に不具合が生じる傾向にある。
ついで、イソシアネートプレポリマーを酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどを含む希釈剤で希釈して、ポリイソシアネートを含む溶液(以下、B液と称す)を調製する。
イソシアネートプレポリマーの含有量は、B液中の64〜68重量%であることが好ましい。
最後に、塗膜2の形成工程の直前に、前記A液とB液とを、A液100重量部に対して、B液40〜70重量部、好ましくは50重量部の割合で混合し、前記希釈剤などにより粘度が15〜25秒(岩田塗装機製NK−2、20℃)になるように調製して得られる。B液が40重量部より少ないと、仕上がった塗膜の表面がキズ付き易くなるとともに耐薬品性が低下する傾向にある。70重量部をこえると、塗膜の耐曲げ性が悪くなる傾向にある。
次に、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールを含む組成物の調製法について、具体的に説明する。
まず、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオール、染料または顔料、塗料添加剤および希釈剤を混合し、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールを含む溶液(以下、a液と称す)を調製する。
カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールの含有量は、a液中の31〜35重量%であることが好ましい。31重量%より少ないと、乾燥性に劣るため、ゴミ不良の要因となる傾向にあり、35重量%をこえると、ポリウレタン成分が多くなるため、光沢性が低下する傾向にある。
染料または顔料としては、A液と同様のものが使用でき、その含有量は、4〜6重量%であることが好ましい。4重量%より少ないと、着色が不十分となり、隠蔽力に劣る傾向にあり、6重量%をこえると、塗装作業性に劣り、また光沢性が低下するなど外観に不具合が生じる傾向にある。
塗料添加剤としては、シリコーンなどのレベリング剤、パラフィンワックスなどの乾燥助剤、リン酸などの緑化防止剤、無機質の充填剤またはその他の汎用添加剤を用いることができる。その含有量は、a液中の0.3〜0.5重量%であることが好ましい。
希釈剤としては、メチルイソブチルケトンおよび酢酸ブチルを含むものなどが使用できる。その含有量は、a液中の24〜28重量%であることが好ましい。
ついで、イソシアネートプレポリマーを酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどを含む希釈剤で希釈して、ポリイソシアネートを含む溶液(以下、b液と称す)を調製する。
イソシアネートプレポリマーの含有量は、b液中の64〜68重量%であることが好ましい。
最後に、塗膜2の形成工程の直前に、前記a液とb液とを混合して得られるが、その混合割合および粘度などは、前記同様である。
塗膜2は、スプレー塗装などの方法により、フィルム1上に形成される。その厚さは、5〜30μmが好ましい。5μmより薄いと、隠蔽力が不足したり、塗膜性能が低下する傾向にあり、30μmをこえると、塗膜割れが生じる傾向にある。
なお、天然漆を含む組成物を用いる場合、乾燥性および塗膜形成性が向上する点で、塗装作業に先立って、塗装作業室内の湿度を60〜80%程度まで高く保持しておくことが好ましい。また、カルダノールのポリエステルポリオール誘導体を含む場合、塗膜の白濁防止や溶媒蒸散の促進を図る点で、塗装作業室内の湿度を40%以下にしておくことが好ましい。
前記組成物などを塗布した後、乾燥工程を経て、塗膜2が形成される。乾燥工程は、約60〜80℃、40〜120分間の加熱処理と、室温(20℃以上)、24時間の自然乾燥処理とからなる。前記加熱処理により、前記組成物の重合反応が進み、硬度に優れる塗膜となる。
接着層3は、塗膜2と後述する金属層4とを接着するための層であり、塗膜2全面に塗布される必要はなく、少なくとも金属層4を形成する部分に塗布されていればよい。部分的に塗布する方法としては、凸版印刷、スクリーン印刷およびパッド印刷などがあげられる。なかでも、小ロット、多品種に対応できる点、および仕上がりが漆器のイメージに近くなる点で、スクリーン印刷が好ましい。
その厚さは、15〜25μmが好ましく、18〜23μmがより好ましい。15μmより薄いと、後述する金属層の付着性に劣り、蒔絵特有の重厚感が表現できなくなる傾向にあり、25μmをこえると、乾燥性が低下し、後述する金属層の光沢性に劣る傾向にある。
金属層4は、本考案のシートに蒔絵調の模様を付与する層であり、意匠性が高い点、およびより高い付加価値があるという点で、金または銀からなることが好ましい。形成方法としては、所望の形状に塗布された接着層3の上から、金粉や銀粉などの金属粉を蒔きつける蒔絵技法があげられる。その厚さとしては、1〜5μmが好ましく、2〜4μmがより好ましい。
さらに、接着層3には、白色、緑色、橙色または桃色の色粉、または、板状に薄くした夜光貝、あわび貝、白蝶貝または黒蝶貝などを接着してもよい。
紫外線吸収層5は、金属層4を保護し、さらには本考案のシートに耐候性を付与する層であり、樹脂および紫外線吸収剤を含む組成物からなる。使用される樹脂としては、ポリウレタンまたはアクリルウレタンなどがあげられる。なかでも、耐候性、耐変色性および耐劣化などの塗膜性能に優れる点で、アクリルウレタンが好ましい。また、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系などがあげられる。
紫外線吸収剤は、組成物中に2〜5重量%含有されていることが好ましい。2重量%より少ないと、紫外線吸収効果が少なく、塗膜の変色を引き起こす傾向にあり、4重量%をこえると、塗膜が着色したり、その他、紫外線吸収剤による異常が生じる傾向にある。
紫外線吸収層5の厚さは、5〜30μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。5μmより薄いと、塗膜の変色、劣化および外観不良が生じる傾向にあり、30μmをこえると、発泡、割れおよび外観不良などの塗膜外観の異常が生じる傾向にある。
また、本考案のシートは、その基材であるフィルム1の下に接着剤層6および剥離紙7を有することが好ましい。これにより、所望の対象物に容易に接着することができる。
接着剤層6に使用される接着剤としては、アクリル系樹脂などがあげられる。その厚さは、20〜30μmが好ましい。
剥離紙7としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンなどの合成樹脂または紙に、シリコン塗布などによる剥離加工を行なったものがあげられる。
本考案のシートは、接着剤により、プラスチック、木材、金属または紙などからなる対象物に接着することができ、特に限定されない。具体的には、携帯電話、携帯音楽プレーヤー、切手、車両内装、コンピューターの装飾などがあげられる。とくに、耐候性を有しているため、携帯電話など屋外で使用されることの多い対象物に対して有用である。また、シートの大きさの調整が容易で、非常に簡便な方法で対象物に接着できるため、面積の大きいものに対して用いることもできる。
実施例1
厚さ70μmのフィルム(商品名:エコカル、帝人化成(株)製)片面全面に、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなり、白色顔料を含む塗料をスプレー塗装にて塗布した。なお、他面には、アクリル系樹脂の接着剤層および離型フィルムを有している。50℃、80分の加熱処理および室温で24時間の自然乾燥処理を施し、厚さ10μmの塗膜を形成した。ついで、接着剤(NAZDAR社製、59000)をスクリーン印刷にて、秋草文様を印刷した。接着層の厚さは18μmであった。その上から、金粉および銀粉を蒔き、厚さ2.3μmの金属層を形成した。
厚さ70μmのフィルム(商品名:エコカル、帝人化成(株)製)片面全面に、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなり、白色顔料を含む塗料をスプレー塗装にて塗布した。なお、他面には、アクリル系樹脂の接着剤層および離型フィルムを有している。50℃、80分の加熱処理および室温で24時間の自然乾燥処理を施し、厚さ10μmの塗膜を形成した。ついで、接着剤(NAZDAR社製、59000)をスクリーン印刷にて、秋草文様を印刷した。接着層の厚さは18μmであった。その上から、金粉および銀粉を蒔き、厚さ2.3μmの金属層を形成した。
最後に、アクリルウレタン樹脂(カシュー株式会社製、ストロンエースソフトSHクリヤーB液#147、固形分約30重量%)およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(カシュー株式会社製、T−50)4重量%からなる塗料を、前記金属層の上に塗布して、厚さ8〜10μmの紫外線吸収層を形成し、本考案のシートを得た。
実施例2〜10
塗膜に含まれる顔料を変えたこと、および、紫外線吸収層として表1に示す塗料を使用したこと以外は、実施例1同様にして本考案のシートを得た。
塗膜に含まれる顔料を変えたこと、および、紫外線吸収層として表1に示す塗料を使用したこと以外は、実施例1同様にして本考案のシートを得た。
比較例1〜10
紫外線吸収剤を使用しなかったこと以外は、それぞれ実施例1〜10同様にして蒔絵シートを得た。
紫外線吸収剤を使用しなかったこと以外は、それぞれ実施例1〜10同様にして蒔絵シートを得た。
得られたシートについて、JIS K 5400 9.7.2(水銀ランプ式)にしたがい退色試験をおこなった。結果を表1に示す。
1 フィルム
2 塗膜
3 接着層
4 金属層
5 紫外線吸収層
6 接着剤層
7 剥離紙
2 塗膜
3 接着層
4 金属層
5 紫外線吸収層
6 接着剤層
7 剥離紙
Claims (5)
- フィルム、該フィルム上に形成された塗膜、該塗膜上に形成された接着層、該接着層上に形成された金属層、および該金属層上に形成された紫外線吸収層とからなるシート。
- 前記塗膜が、天然漆、ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなる請求項1記載のシート。
- 前記塗膜が、カルダノールから誘導されるポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートからなる請求項1記載のシート。
- 前記金属層が、金または銀からなる請求項1、2または3記載のシート。
- 前記フィルムの下に、接着剤層および剥離紙を有する請求項1、2、3または4記載のシート。
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