JP3107488B2 - 架橋ヒアルロン酸を用いた徐放性製剤及び塞栓剤 - Google Patents

架橋ヒアルロン酸を用いた徐放性製剤及び塞栓剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は架橋ヒアルロン酸、それ
を用いた徐放性製剤及び塞栓剤、特にその架橋機構の改
良に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒアルロン酸は高分子量の生体内成分で
あり、生体適合性が高いことは無論、保水性等の機能性
にも優れ、それ自体で化粧品等の分野に利用されるとと
もに、各種成分との複合体によりドラッグデリバリーシ
ステムの担体等としても期待されている。一方、最近の
制癌療法では制癌剤を癌患部周辺のみに分布させ、正常
細胞への副作用を防止し、同時に樹脂等の高分子担体を
用いて薬効の持続を図った投与方法や剤型の研究が盛ん
に行なわれている。患部周辺のみに長時間にわたって継
続的に有効濃度の薬物を供給する、いわゆる徐放性局所
投与方法として、例えば制癌剤をカプセル内に入れた
り、錠剤に成型した製剤を癌患部の局所周辺に埋め込ん
だり、薬物内包マイクロスフィアを筋肉または血管内に
注入し、局部血管を塞栓することで、閉塞された局部血
管のみに薬物を浸出させる方法等が挙げられる。
【0003】従来、高分子被膜やマトリックスを微小球
化し、薬物を徐放性にしたものとしては、エチルセルロ
ースやワックスで製剤化したもの(特開昭54−163
808)や、ポリ乳酸のマイクロカプセル化製剤(特開
昭54−55717,特開昭59−33214)等、多
数報告されている。ヒアルロン酸を薬剤の担体として用
いたものにあっても、例えば特開昭62−129226
や特開平1−156912等が知られている。また、ヒ
アルロン酸と制癌剤との組合せでは、ヒアルロン酸とア
ドリアマイシン(塩酸ドキソルビシン)との共有結合体
等がPOLYMER PREPRINTS, JAPAN VOL142,No.3,898(1993)
等に報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例えば
微小球化した製剤を患部に投与した場合、投与初期の薬
物放出速度が非常に高い傾向にあり、副作用を引起こし
たり、長時間にわたっての徐放性が得られない等、一定
濃度で薬物を供給するという徐放効果を得ることは難し
かった。また、薬剤の放出速度は、粒子の形状や粒径分
布に敏感で、均一な形状と均一な粒子径が要求されてい
た。しかしながら、このような微小で均一な粒子を形成
すること自体が困難で、薬物放出速度の良好な制御を難
しくしていた。また、ヒアルロン酸を担体として用いた
徐放性製剤であっても、そのヒアルロン酸に薬剤を化学
吸着ないし物理吸着させているのみでは、ヒアルロン酸
が水溶性であることから、生体内でのヒアルロン酸の溶
解に伴い薬剤が急激に放出されてしまい、やはり薬剤の
徐放効果を適切に得ることは困難であった。
【0005】さらに、ヒアルロン酸とアドリアマイシン
との共有結合体の場合には、ヒアルロン酸が酵素分解さ
れるまで薬剤が保持されるという利点は有るものの、合
成に数ステップを要し、製造が繁雑であり、収率も低い
等の難点があった。このように、微小球の徐放性製剤あ
るいはヒアルロン酸を利用した徐放性製剤には種々の難
点が残されており、より好ましい薬理効果を引出す適切
な製剤上の工夫が以前より望まれていた。このような課
題を解決するものとして、例えば特開昭60−1306
01、特開昭61−138601等に記載される架橋ヒ
アルロン酸の利用が考えられる。しかしながら、架橋に
用いられる物質は一般に生体内成分ではないため、その
架橋物質の生体内での安全性にも注意を払わねばなら
ず、この点でエポキシ化合物を用いたものが好ましい
((Polymer Preprints,Japan Vol.142,No3,938,199
3)。
【0006】エポキシ化合物を架橋剤として用いた架橋
ヒアルロン酸としては、特開昭60−233101或い
は特開昭61−164558に記載されたものなどがし
られているが、これらは水溶性或いは水膨潤率が極めて
大きいという課題があった。すなわち、生体内に架橋ヒ
アルロン酸が埋め込まれた場合、特に例えば特開昭63
−281660に記載されるように血管内に塞栓剤とし
て適用された場合等には、ある程度の膨潤性は必要なも
のの、あまりに膨潤率が大きければ、適用部分周囲の組
織を圧迫してしまうおそれがあり、この点で従来のエポ
キシ化合物による架橋ヒアルロン酸は生体内適用にはあ
まり適さないものであった。本発明は前記従来技術の課
題に鑑みなされたものであり、その目的はヒアルロン酸
の架橋状態に検討を加え、水溶性及び膨潤度を調整する
とともに、さらにその架橋ヒアルロン酸を用いて長期間
にわたり一定濃度で薬物を供給することのできる徐放性
製剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明者らが鋭意検討を行った結果、ヒアルロン酸の
カルボキシル基同士を架橋すると、ヒアルロン酸の基本
的な構造に影響を与えることなく、その水溶性、及び薬
剤と複合化した場合の徐放性を調整しえることを見出
し、本発明を完成するに至った。すなわち、本出願の請
求項1記載の徐放性製剤は、ヒアルロン酸残基のカルボ
キシル基ヒアルロン酸残基のカルボキシル基が両末端エ
ポキシ化合物系架橋剤により架橋され、下記一般式化
で示される架橋ヒアルロン酸と薬剤の複合体からなる
徐放性製剤において、薬剤がヒアルロン酸のカルボキシ
ル基とイオン的に相互作用し、複合体を形成し得る制癌
剤であることを特徴とする。
【0008】
【化3】 なお、上記化中、Rはエポキシ化合物系架橋剤の架橋
残部である。また、請求項2記載の徐放性製剤は、前記
架橋ヒアルロン酸がヒアルロン酸の全カルボキシル基に
対し、架橋されたカルボキシル基が0.3%以上である
水不溶性で且つ低膨潤性であることを特徴とする。請求
記載の塞栓剤は、ヒアルロン酸残基のカルボキシル
基が両末端エポキシ化合物系架橋剤により架橋された、
下記一般式化4で示される架橋ヒアルロン酸からなる塞
栓剤において、架橋ヒアルロン酸がヒアルロン酸の全カ
ルボキシル基に対し、架橋されたカルボキシル基が0.
3%以上である水不溶性で且つ低膨潤性であることを特
徴とする。
【化4】 なお、上記化4中、Rはエポキシ化合物系架橋剤の架橋
残部である。請求項記載の塞栓剤は、ヒアルロン酸の
カルボキシル基とイオン的に相互作用する薬剤が複合化
されたことを特徴とする。
【0009】本発明者らは、ヒアルロン酸のカルボキシ
ル基同士をエポキシ化合物により架橋すれば、ヒアルロ
ン酸の水に対する溶解性を調整し、更にその膨潤率をも
適切に制御しえること、そして、該架橋ヒアルロン酸と
イオン的に相互作用し複合体を形成し得る薬剤であれ
ば、水不溶化した架橋ヒアルロン酸と複合化させること
で、上述の課題を解決し得ることを見出した。すなわ
ち、本発明は水不溶性架橋ヒアルロン酸と薬剤の複合体
から成り、ヒアルロン酸骨格が酵素分解されるのに伴
い、薬剤が放出されることを特徴とする顆粒状または微
粒子状の徐放性製剤ないし塞栓剤を提供するものであ
る。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
出発原料に使用されるヒアルロン酸は通常ナトリウム塩
となっているが、塩の種類は特に制約されない。また、
分子量も同様に制限されない。ただし、あまり低分子量
だと、以下の架橋反応がうまく進行しないため、分子量
20万以上が好ましい。架橋反応は、ヒアルロン酸と、
架橋剤である両末端エポキシ化合物と、中性〜弱酸性触
媒とを純水中に溶解したのち、加熱により水分を蒸発乾
固させることで反応を終了させる。架橋機構を図1に示
す。同図より明らかなように、弱酸性下ではヒアルロン
酸のカルボキシル基同士が両末端エポキシ化合物により
架橋される。このときのヒアルロン酸濃度は、粘度が高
過ぎると均一な溶液ができにくいため、通常l〜3%で
行なわれる。架橋剤量は、所望の架橋率となるように加
えればよく、この架橋率の制御により生体内での分解速
度が決定される。すなわち、高架橋率であるほど、生体
内での酵素分解が遅くなる。
【0011】本反応はヒアルロン酸のカルボキシル基と
架橋剤のエポキシ基が架橋反応するが、反応は水分の蒸
発乾固に伴い進むため、分子間距離が極めて短い状態で
効率よく架橋反応が進行する。更に静電的反発能を有す
るカルボキシル基が架橋点に参加することで、反発能を
封鎖され、水膨潤性をほとんど失い、水不溶性となる。
例えば、すべてのカルボキシル基が架橋点となったとき
を架橋率100%とすると、架橋率0.3%以上で水不
溶性となる。これに対し、従来のヒアルロン酸架橋法
(特開昭60−233101、特開昭61−13860
1)の場合、この程度の架橋率では水溶性を示す。従来
法では、塩基性の水溶液下でヒドロキシル基問を架橋反
応させるため、架橋に参加する高分子鎖間の距離が長い
状態で架橋され、更に、静電的反発を引き起こすカルボ
キシル基も無傷で残る。従って、水溶性または水膨潤性
となってしまう。
【0012】本架橋法に用いられる両末端エポキシ化合
物としては、ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエス
テル、ジグリシジルアミン、ジグリシジルアンモニウム
塩等のジグリシジル化合物が望ましい。勿認、グリシジ
ル基が3個以上でもよい。これらの中で、グリシジルエ
ーテル化合物は最も入手しやすく、安価であるが、具体
例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテ
ル、ブロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ
プロピレンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシ
ジルエーテルなどが挙げられる。また、前述したよう
に、これらのエポキシ系架橋剤は、他の架橋剤と比べて
生体内での安全性も高いことが報告されている。ヒアル
ロン酸のカルボキシル基と両末端エポキシ化合物との反
応における適当な触媒として、第4級アンモニウム塩
類、第3アミン類、リン酸塩類、イミダゾール化合物類
等を挙げることができる。しかし、触媒そのものの毒
性、および弱塩基性下でもヒアルロン酸鎖は分解されや
すい事から考えて、中性〜弱酸性の安全な無機触媒を用
いることが好ましい。
【0013】例えば、リン酸第一アンモニウム、リン酸
第一ナトリウム、リン酸第一カリウムなど、水溶液のp
Hが4〜7のリン酸塩が好適である。触媒としての濃度
は、溶媒である純水l00mlに対し、2mg以上あればよ
く.通常、20mg程度で充分である。加熱により水分を
蒸発乾固させながら架橋反応を進行させるが、こうして
得らるフィルム状架橋ヒアルロン酸は、次に粉砕し、平
均粒径をlミリ以下とし、次工程の薬物との複合化に移
される。このとき、平均粒径を特に制約する必要はない
が、粒径の小さい方が次工程での薬剤との複合化が短時
間で済むため、好適である。複合化の対象となる薬物
は、架橋ヒアルロン酸のカルボキシル基とイオン的に相
互作用して、複合体を形成するものであれば何でもよい
が、特に、制癌剤は患部に長時間存在し続けることで、
薬理効果の大幅な改善を望めるため、酵素分解に応じて
薬剤を徐放する本発明の徐放性製剤は効果的である。
【0014】イオン的に相互作用して複合体を形成する
制癌剤としては、その化学構造内に塩基性イオンを持つ
ことが必要であるが、具体的には、塩酸ニムスチン、塩
酸アンシタビン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビ
シン、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸
ペプロマイシン、塩酸アクラルビシン、塩酸エピルビシ
ン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビ
ンデシンなどが挙げられる。制癌剤と架橋ヒアルロン酸
粉末との複合化は、本質的にはイオン的相互作用による
化学吸着に起因している。従って、複合化できる量比は
その化学吸着量に直接関係し、制癌剤の種類により異な
る。
【0015】複合体を調製するには、まず制癌剤の水溶
液に架橋ヒアルロン酸を分散し、化学吸着が平衡に達し
たところで静置し、沈殿してきた複合体を濾別、乾燥
し、それを粉砕して顆粒状または微粒子状複合体を得
る。使用に際しては、通常の注射剤に要求される条件を
満足する必要がある。複合化する制癌剤の安定性にもよ
るが、生理食塩液等の等張液に分散して用いる用時分散
タイプの製剤が好ましい。制癌剤の放出はその複合化率
(=制癌剤量/架橋ヒアルロン酸量)による。複合化は
純粋中で行なわれるが、放出は生理的条件下で起こる。
したがって、純水条件下における吸着平衡から生理的条
件下における吸着平衡に移行し、制癌剤の純水中におけ
る化学吸着量が、生理的条件下における平衡吸着量より
も少なければ、制癌剤の放出は複合体中のヒアルロン酸
の酵素分解速度と等しく、逆に多ければ、それに対応し
た制癌剤が一時的に放出された後、酵素分解速度に対応
した速度で制癌剤が放出される。このような一時的な放
出は、血中濃度を早く薬物有効濃度に引上げる際、有効
な手段として使われる。
【0016】本製剤の投与場所は、ヒアルロン酸分解酵
素の存在するところであれば、どこであってもよく、徐
放性を有する安全な生体吸収性製剤として投与可能であ
る。事実、ヒアルロン酸分解酵素は、肝臓、睾丸を始
め、肺、腎、関節液等生体に広く分布しているため、こ
れらの臓器で有効に使用できる。このように本製剤は、
酵素によるヒアルロン酸の分解反応を利用して薬剤を放
出する製剤のため、従来のカプセル型製剤のように粒子
径や粒径の影響を受けることはない。
【0017】また、本発明の徐放性製剤は粒径によって
は制癌剤の徐放も兼ね備えた塞栓剤として有効である。
塞栓療法は、切除不能な腫瘍に対し、その支配動脈に血
管内塞栓剤を投与することで栄養を遮断する療法として
広く知られている。制癌剤と組合せて、腫瘍内の制癌剤
濃度を高く維持することで、良好な結果が得られている
ことも報告されている(日外会誌,’92,187,1
991)。同目的で本発明の徐放性製剤を用いれば、徐
放と塞栓を一つの製剤で同時に可能ならしめることがで
きる。しかも本発明の徐放性製剤は生体吸収性であるた
め、塞栓療法として一部で行なわれているバルーンを用
いる療法のように術後取り出す必要もない。塞栓療法
は、支配動脈にカテーテルを挿入できる腫瘍であれば特
に限定されるものではないが、現在この塞栓療法がもっ
とも多く行なわれている腫瘍は、切除不能な肝癌であ
る。しかし、現在の進歩した医療技術ではほとんどの臓
器の動脈にカテーテル挿入することが可能となってお
り、今後一層、本療法の適用が拡大されると予想され
る。
【0018】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例を詳細に説明
する。なお、本発明はこれらの実施例により限定される
ものではない。実施例1 純水200mlに10%第一リン酸アンモニウム液0.4
mlづつ加えた液を4個用意し、それぞれに2%グリセリ
ンジグリシジルエーテル水溶液を20,5,1.67,
0.62g加えた後、各水溶液に分子量約200万のヒ
アルロン酸を2gづつ溶解させた。次に、それらの溶解
液をシャーレに移し、80℃の空気循環式恒温槽に10
時間放置し、架橋反応を行なわせた。こうして得られた
ヒアルロン酸架橋フィルムを50%エタノール溶液で洗
浄、乾燥、粉砕後、篩分することで100μ以下とし
た。これらはいずれも水不溶性で、水中での膨潤もほと
んど観察されたなかった。なお、これら架橋ヒアルロン
酸微粉末の架橋率は、添加した架橋剤の全量がヒアルロ
ン酸のカルボキシル基と反応すると仮定して算出した。
架橋度100%とはすべてのカルボキシル基が架橋点に
なっていることを意味する。上の添加量の場合、架橋率
はそれぞれ59.3,14.8,4.9,1.8%に相
当する。
【0019】実施例1の架橋率の異なる4種の架橋ヒア
ルロン酸微粉末を、各10mgづつ試験管に採り、これに
100ユニットのヒアルロニダーゼ(天野製薬)を含む
pH6.0の酢酸緩衝液4mlを加え、攪拌しながら50
℃に保持した。遊離ヒアルロン酸量(分解率)の経時変
化を調べるため、経時で0.45μメンブランフィルタ
ー濾過しながらサンプリングし、その中に溶解している
ヒアルロン酸量をカルバゾール・硫酸法で比色定量し
た。結果を表1に示す。表1より、架橋率が高ければ高
いほど、酵素分解しにくいことが理解される。また、架
橋率を制御することで分解速度も制御できることが示唆
される。
【表1】 ─────────────────────────────────── 架橋率 59.3 14.8 4.9 1.8 ─────────────────────────────────── 0.5時間後 1.0 1.5 2.2 2.3 1 1.6 2.8 4.5 4.8 2 2.5 6.0 12.2 13.0 4 3.6 12.1 25.6 27.0 7 4.5 19.7 45.1 40.3 10 5.9 31.3 64.6 60.9 24 12.5 56.0 81.3 91.5 36 17.9 63.5 86.7 90.3 48 26.2 72.5 96.3 98.7 ───────────────────────────────────
【0020】本実施例にかかる架橋ヒアルロン酸微粉末
のうち、架橋率59.3%と1.8%の2試料につい
て、兎を用いた移植試験を行なった。各試料を10倍量
の生理食塩液に分散させ、その各分散液0.5mlを体重
2.5kgの健康な雄兎の脊柱を挟む両側に3点づつ皮下
注射した。1週間後、兎を麻酔死させ、脱血させた後、
試料を囲む組織を拡大鏡を用いて検査した。その結果、
架橋率59.3%の試料の場合には、注入した架橋ヒア
ルロン酸微粉末がほぼ残存していたが、架橋率1.8%
の場合にはその痕跡は認められず、生体内に吸収されて
いた。また、両試料とも出血、被包形成等の以上は認め
られなかった。このことから、本架橋ヒアルロン酸微粉
末は安全性が高く、生体吸収性にも優れていることが理
解される。
【0021】実施例2 塩酸ドキソルビシン濃度が200〜5000ppmの水溶
液2mlに、実施例1の架橋ヒアルロン酸微粉末5mgを加
え、25℃で3時間インキュベーションした。これを遠
心分離後、上澄液中の塩酸ドキソルビシン量を479nm
における吸光度測定で定量し、初期濃度との差から架橋
ヒアルロン酸微粉末への吸着量を調べた。 その吸着等
温曲線を図2に示した。同図から、塩酸ドキソルビシン
は架橋率に関係なく、架橋ヒアルロン酸と化学吸着して
いることが示唆される。さらにこうして化学吸着した塩
酸ドキソルビシンは、周囲の環境をpH3以下にする
と、ふたたび脱離することも確認した。
【0022】実施例3 塩酸ドキソルビシン10mgを10ccの純水に溶解し、こ
れに実施例1で調製した架橋率4.9%のヒアルロン酸
微粉末50mgを分散し、化学吸着させた後、上澄み液を
捨て、真空乾燥した。乾燥品を再び粉砕後、篩い分け
し、平均粒径を100μ以下とした。こうして調製した
塩酸ドキソルビシン・架橋ヒアルロン酸複合体微粉末5
0mgを、生理食塩液20mlに分散し、37℃、100スト
ローク/分で振盪した。この時放出されてくる塩酸ドキソ
ルビシン量を吸光度測定により定量した。図3は放出さ
れる塩酸ドキソルビシンの濃度の経時変化を示す。約1
30分経過したところで平衡に達したが、ここでヒアル
ロニダーゼ(天野製薬)1000ユニットを加えたとこ
ろ、再び放出が始り、220分後には全量放出した。
【0023】実施例4 架橋率が2,5,10%となるようにエチレングリコー
ルジグリシジルエーテルを加えて調製した架橋ヒアルロ
ン酸を実施例1と同様の操作で微粉末とした。その10
00mgをそれぞれ、塩酸ドキソルビシン10mgを含む水
溶液中に分散後、遠心分離し、真空乾燥した。100μ
以下に粉砕後、その50mgを、500ユニットのヒアル
ロニダーゼを含む10mlの生理食塩液に分散し、37
℃、100ストローク/分で振盪した。この時、上澄み
液中に放出される塩酸ドキソルビシン量を経時で吸光度
測定により定量した。図4にその結果を示す。放出され
る塩酸ドキソルビシンは、初期に有効濃度まで一時に放
出され、その後一定の放出速度を保っている。しかも、
その放出速度は高架橋率であるほど遅くなっている。な
お、ヒアルロニダーゼを含まない対照試験では、初期に
一時の薬剤放出が観測されるのみで、その後は放出され
なかった。
【0024】実施例5 実施例7の塩酸ドキソルビシンの代りに塩酸ブレオマイ
シンを用いる以外は、実施例7と同様に試験を行なっ
た。結果はほとんど同じ挙動を示した。
【0025】実施例6 純水50mlに10%第一リン酸アンモニウム液0.2ml
ずつ加えた液を8個用意し、それぞれに2%エチレング
リコールジグリシジルエーテル水溶液を1.76,0.
88,0.35,0.15,0.060,0.030,
0.015,0.008g加えた後、各水溶液に分子量
約160万のヒアルロン酸を0.5gずつ溶解させた。
次に、それらの溶解液をシャーレに移し、100℃の空
気循環式恒温槽に5時間放置し架橋反応させた後、70
%エタノール水溶液で洗浄後、乾燥し、ヒアルロン酸架
橋フィルムを得た。こうして得たヒアルロン酸フィルム
の架橋率は、上から順に59,30,12,4.9,
2.0,1.0,0.5,0.25%であったが、架橋
率0.25%のフィルムを除いて、いずれも水不溶性で
あったため、純水及び生理食塩水で膨潤率測定に供し
た。測定の方法は、まず各フィルムから1.5×1.5
cmを切出し、読取り顕微鏡(オリンパス製)及び膜厚計
(東京精密)を用いて、縦×横×膜厚を測定後、25℃
の純水または生理食塩水に膨潤平衡に達するまで浸漬し
た。次に、その膨潤平衡に達したフィルムを液から取り
出し、表面の水滴を切った後、再び縦×横×膜厚を測定
した。この結果を元に浸漬前後での体積膨潤比を算出
し、プロットしたのが図5である。純水中と生理食塩水
中での膨潤比に大差はなく、架橋率の低下とともに膨潤
比が上昇している。しかし、水不溶性を示した架橋率
0.5%のフィルムでも膨潤比は4を越えず、膨潤能は
際立って低いことが理解される。このように本発明にか
かる架橋ヒアルロン酸は、水不溶性であるばかりでな
く、水膨潤度も低いため、生体内に埋め込み或いは塞栓
剤として用いられた場合にも、周囲の組織を必要以上に
圧迫してしまうようなことはない。
【0026】実施例7 実施例1に準じて調製した架橋率1.8%と100%の
架橋ヒアルロン酸微粉末について、実施例2と同様に塩
酸ドキソルビシンの吸着等温泉を調べた。結果を図6に
示す。塩酸ドキソルビシンは、架橋率1.8%の架橋ヒ
アルロン酸粉末に対しては化学吸着するが、架橋率10
0%の粉末には化学吸着せず、物理吸着のみ観察され
る。この差異は、本発明による架橋反応がヒアルロン酸
のカルボキシル基間の架橋であることに起因している。
すなわち、架橋率100%の粉末の場合、すべてのカル
ボキシル基が架橋点になっているため、フリーのカルボ
キシル基は残っておらず、その結果として塩酸ドキソル
ビシンは化学吸着できず、単に物理吸着のみ観測された
と考えられる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかる架橋
ヒアルロン酸は、カルボキシル基同士を架橋することと
したので、水不溶性及び低膨潤性とすることができる。
そして、該架橋ヒアルロン酸に薬剤を複合化させ徐放性
製剤とした場合、生体内に投与されると、ヒアルロン酸
の酵素分解に伴い、薬剤を徐々に放出することができ
る。さらに、本発明にかかる架橋ヒアルロン酸を塞栓剤
として用いた場合、他組織に必要以上の圧迫を加えるよ
うなことはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる架橋ヒアルロン酸の架橋状態の
説明図である。
【図2】実施例2において、アドリアマイシン(塩酸ド
キソルビシン)の架橋ヒアルロン酸粉末に対する純水、
25℃での吸着等温線である。
【図3】実施例3にかかる徐放性製剤から放出されたア
ドリアマイシン量の経時変化の説明図である。
【図4】実施例4にかかる徐放性製剤から放出されたア
ドリアマイシン量の経時変化を示す説明図である。
【図5】実施例6で調製した架橋ヒアルロン酸フィルム
の純水及び生理食塩水中、25℃での体積膨潤比の架橋
率依存性の説明図である。
【図6】実施例7で測定した塩酸ドキソルビシンの架橋
ヒアルロン酸粉末(架橋率1.8%:▲、100%:
●)に対する純水、25℃での吸着等温線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大野 公男 神奈川県横浜市栄区上郷町262−32−5 −306 (72)発明者 内田 賢 東京都練馬区氷川台4−39−21−104 (56)参考文献 特表 昭63−503551(JP,A) 特表 昭61−502729(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 37/08 A61K 9/00 A61K 47/36 C08B 37/00 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸残基のカルボキシル基が両
    末端エポキシ化合物系架橋剤により架橋された、下記一
    般式化1で示される架橋ヒアルロン酸と薬剤の複合体か
    らなる徐放性製剤において、薬剤がヒアルロン酸のカル
    ボキシル基とイオン的に相互作用し、複合体を形成し得
    る制癌剤であることを特徴とする徐放性製剤。。【化1】 なお、上記化1中、Rはエポキシ化合物系架橋剤の架橋
    残部である。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の徐放性製剤において、架
    橋ヒアルロン酸がヒアルロン酸の全カルボキシル基に対
    し、架橋されたカルボキシル基が0.3%以上である水
    不溶性で且つ低膨潤性であることを特徴とする徐放性製
    剤。
  3. 【請求項3】 ヒアルロン酸残基のカルボキシル基が両
    末端エポキシ化合物 系架橋剤により架橋された、下記一
    般式化2で示される架橋ヒアルロン酸からなる塞栓剤
    おいて、架橋ヒアルロン酸がヒアルロン酸の全カルボキ
    シル基に対し、架橋されたカルボキシル基が0.3%以
    上である水不溶性で且つ低膨潤性である塞栓剤【化2】 なお、上記化2中、Rはエポキシ化合物系架橋剤の架橋
    残部である。
  4. 【請求項4】 請求項記載の塞栓剤において、ヒアル
    ロン酸のカルボキシル基とイオン的に相互作用する薬剤
    が複合化されたことを特徴とする塞栓剤。
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