JP3079446U - 大電流用コイル。 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気特性に優れた小型なコアを用いて、巻線
作業が容易で小型な大電流用コイルを形成し、あわせて
ノイズ減数特性が高周波帯域まで良好な大電流用コイル
を形成することである。 【解決手段】超微細結晶合金を巻回したコアに、平編銅
線を絶縁被覆して巻回した大電流用コイルを形成する。
重ね巻きして巻数を多くする場合は、絶縁被覆平編銅線
コイルの層間に、静電シールド層を配設し接地端子を設
ける。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、電源回路に挿入されるフィルタに用いる大電流用のコイルに関する 。

【０００２】

【従来の技術】

従来、電源回路に挿入されるフィルタに用いる大電流用コイルの磁性体には積 層珪素鋼板または、Ｍn、Ｚn系フェライトコア等が用いられる。 その周囲に巻 回されるコイル導線に電流容量の小さいものには撚り線が、電流容量の大きいも のには、交流磁界による渦電流損失を低減するため,また巻き線の作業性を向上 させるため、絶縁された単線を並列にした複線や、太い丸線が用いられる。 さらに大電流用には平角銅線が用いられている。

【０００３】 形状は、積層珪素鋼板の場合はＣ−Ｃコアを一体化したコアや、またフェライ トコアの場合はリング状のコアなどが用いられるが、積層珪素鋼板コアは、減衰 量の周波数特性が高周波領域まで伸びず、フェライトコアの場合は、飽和磁束密 度があまり大きくないため、磁気飽和し易いので大電流用はコア断面積を大きく せざるを得ず、大型なコイルにならざるを得なかった。 その他のコアには、日 の字型、ロの字型などがあり、トランスの形成は閉磁路コアを２分割し、それぞ れに１次コイル、２次コイルを巻回してから、分割コアを一体に接合して閉磁路 コアを形成することもできる。 また磁気飽和を避けるため、コアの一部に間隙 を形成した開磁路コアを用いることもある．

【０００４】 平角線の巻線方法は，平角線は硬いためにリングコアに直接巻きつけることは 困難であり、特開２０００―１００６４３に開示されているように予め平角線を 巻線機にかけてソレノイド状に巻いておき、図３の説明図に示すように、リング 状コア１に前記ソレノイド状コイル６を回転させながら巻き移す方法で巻かれて いた。 巻き移した状態と、その部分拡大断面図を図４に示す。

【０００５】 断面が矩形のリングコアであっても前記ソレノイドコイルを回転させながら巻 移すので、リングコア断面の最大径よりも大きい直径の円筒状ソレノイドコイル に形成せざるを得ず、図４のＡ−Ａ‘の拡大断面図のように、断面矩形のリング コアの対角線８と、ソレノイドコイル６の内径７との間に、コアケースの肉厚の 数倍の余分な間隙を設けざるをえないため小型化は困難であり、またコイルは余 分な長さを必要とするため、その分の導体抵抗が増加し電力の損失となっていた 。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

大電流用のコイルにおいて、巻線作業を容易にしコアと巻線間の余分な間隙を 無くした小型な大電流用のコイルを形成し、かつ電力の損失を少なくすることで ある。 また、コイル巻線の層間の浮遊容量を小さくし、さらに小型でノイズ減 衰特性を高周波帯まで広げた大電流用コイルを提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案は、電源回路のフィルタを構成するコイルにおいて、コアに絶縁被覆平 編銅線が巻回されてなることを特徴とする大電流用コイルである。

【０００８】 フェライトまたは、磁性鋼板を巻回または積層してなるコアに、絶縁被覆した 平編銅線を巻回してコイルを形成する。 トランスまたはコイル製品の定格電流 に応じた電流容量の平編銅線を、熱収縮性の絶縁チューブに挿入してチューブを 加熱収縮させるか、あるいは平編銅線に絶縁テープを巻きつける等して絶縁被覆 平編銅線を形成し、コアに巻回して大電流用コイルを形成する。 絶縁被覆平編 銅線は、柔らかく可撓性に富むため、１ターン毎にリングコアの内部に絶縁被覆 平編銅線を挿通して巻回する作業が容易にできる。

【０００９】 また本考案は、前記のコイルにおいて、重ね巻きした絶縁被覆平編銅線の層間 に、静電シールド層を配置し接地端子を備えたことを特徴とする大電流用コイル である。

【００１０】 絶縁被覆平編銅線を重ね巻きした場合に、線幅が広いため層間の浮遊容量が大 きくなり、コイルでは自己共振周波数が低くなり、トランスでは１次側から２次 側への高周波ノイズの突き抜けが大きくなる。 この問題の対策として、１層め のコイルの上に静電シールド層を配置し、その上に２層めのコイルを巻回するこ とを、所定の層数まで繰り返して、各層間の静電シールド層を導通させ引き出し 端子を設けて接地する。 これにより、コイル層間の浮遊容量が小さくなり、コ イルでは自己共振周波数が高くなり、トランスでは高周波ノイズの突き抜けが小 さくなる。シールド層の形成は１層めを巻回した後、その外形に合わせた接地端 子付の導体ケースに入れてから、２層めを巻回してもよく、また、絶縁被覆平編 銅線をさらに導電編線で被覆したシールド線を巻回することもできる。このとき 、シールド層でループを形成することなく、接地端子を一個所に設ける、いわゆ る、一点接地をすることが望ましい。

【００１１】 また本考案は、前記のコイルにおいて、前記コアが超微細結晶合金を巻回され てなることを特徴とする大電流用コイルである。

【００１２】 図５に示すように、超微細結晶合金の磁性薄板を巻回してなるコアを用いた場 合、従来のマンガン亜鉛（Ｍｎ、Ｚｎ）系フェライトコアにくらべて、飽和磁束 密度が高く透磁率も大きいので磁路断面積の小さい小型なコアが形成できる。 参考までに、断面が矩形の同一形状（外形：２５ｍｍφ、内径：１３ｍｍφ、厚 み：１５ｍｍ）のＭｎＺｎフェライトコアと超微細結晶合金コアに、０．５ｍｍ φの被覆銅線をそれぞれ２０ターン巻線したコイルのノイズ減衰量の比較を周波 数特性で図６に示す。また超微細結晶合金の磁性薄板を巻回してなるコアは、同 一形状の珪素鋼板に比較しても、透磁率およびＱの周波数特性が高周波まで伸び ているので高周波トランスのコア材料にも適している。

【００１３】

【考案の実施の形態】

平編銅線に絶縁被膜を形成し、コアに巻回して大電流用コイルを形成する。重 ね巻きする場合は、巻回した絶縁被覆平編銅線の層間に、金属箔などのシールド 層を配置し接地用端子を設ける。さらに、超微細結晶合金を巻回した小型なコア を用いて大電流用コイルを形成する。

【００１４】

【実施例１】 先ず、厚さ：２０μｍ、幅：２５ｍｍの超微細結晶合金薄帯（アルプス電気株 式会社製；ナノパーム）を巻回し、肉厚；１ｍｍのポリブチルテレフタレートの 樹脂ケースに収納して、外径：９８ｍｍΦ、内径：７２ｍｍΦ、高さ２５ｍｍの リング状コアを形成した。 つぎに、幅：３０ｍｍ、厚さ：２７ｍｍの平編銅線 （ＪＣＳ２３６）を熱収縮性チューブ（住友電気工業株式会社製：スミチューブ ）に挿通させて、９５℃の恒温槽に３０分間放置して、前記チューブを収縮させ て絶縁被膜平編銅線を形成した。次いで、前記の絶縁被膜平編銅線を、各ターン 毎に前記樹脂ケース入りのリング状コアの内径に挿通させることを８ターン繰り 返して前記コアの周囲をほぼ全周に亘り巻線し、図１に示す大電流用コイルを形 成した。

【００１５】

【実施例２】 実施例１で形成した１層巻きのコイルに静電シールド層として、厚み：０．５ ｍｍのドーナッツ状の銅板２枚を、それぞれ上下両面に当接させてから中心軸に 対称なそれぞれの２ヵ所にリード線をはんだ接続して導通、固定してから、さら に２層目のコイルを前記と同様に巻線して図２に示す大電流用のコモンモードコ イルを形成した。

【００１６】

【実施例３】 実施例１と同様にコアの全周に１層の巻線をしたのち、実施例２と同様に静電 シールド層として、銅板２枚をそれぞれコイル上下面に当接させ、両者をリード 線で接続して導通させ固定してから、さらに１層めのコイルの１端を他端の上層 に巻き進んで、巻数が実施例１のコイルのほぼ２倍の巻数の１５ターンの大電流 コイルを形成した。（図示せず）

【００１７】

【考案の効果】

本考案の方法によれば、磁気特性に優れた小型なコアに柔らかい絶縁被覆平編 銅線を巻くので巻線作業が容易になり、断面矩形のコアに巻くときも角部の巻線 の曲率半径が小さく巻けるので、容積の小さい小型な大電流用のコイルが形成で きる。さらに、多層に巻く場合も層間を静電シールドすることで浮遊容量を小さ くし、高周波帯域まで減衰特性に優れた大電流用コイルを形成することができる 。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１の大電流用コイルを示す

【図２】実施例２の大電流用コイルを示す

【図３】平角線を巻回する説明図を示す

【図４】従来の平角線巻回コイルの平面図と拡大断面図
を示す

【図５】ＭｎＺｎフェライトコアと超微細結晶合金コア
とのＢ―Ｈ特性の比較図を示す

【図６】ＭｎＺｎフェライトコアと超微細結晶合金コア
を用いたコイルの比較をノイズ減衰量の周波数特性で示
す

【符号の説明】

１……リング状コア ２……１次コイルの平編銅線 ２’…２次コイルの平編銅線 ３……絶縁被覆 ４……シールド層（金属箔） ５……接地端子 ６……平角線 ７……平角線ソレノイドコイルの内径 ８……コア断面の対角線

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】電源回路のフィルタを構成するコイルにお
   いて、絶縁被覆平編銅線が巻回されてなることを特徴と
   する大電流用コイル。
2. 【請求項２】電源回路のフィルタを構成するコイルにお
   いて、絶縁被覆平編銅線が巻回され、重ね巻きした絶縁
   被覆平編銅線の層間に、静電シールド層を配置し接地端
   子を備えたことを特徴とする大電流用コイル。
3. 【請求項３】電源回路のフィルタを構成するコイルにお
   いて、超微細結晶合金を巻回されてなるコアに絶縁被覆
   平編銅線が巻回されてなることを特徴とする大電流用コ
   イル。