JP3043382U - 座金付きツーピースナット及び座金付きツーピースフランジ付きナット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ナット本体の弾性変形を促進して弛み防止機
能を高め、締結初期の摩擦を低減でき、かしめ加工を簡
単化できる座金付きツーピースナットや座金付きツーピ
ースフランジ付きナットを提供する。 【解決手段】 座面付きツーピースナット１は、ナット
本体１０と座金２０とからなり、ナット本体１０のボル
ト挿通孔１５をネジ孔１３の谷径よりも大径化し且つ六
角ナット部１１の基端部分１１ａまで延ばし、締結状態
における基端部分１１ａの弾性歪みを大きくして弛み防
止機能を高め、座金２０の上端内周部の面取り部２４の
大径側環状稜線２４ａと小径側環状稜線２４ｂとをナッ
ト本体１０に接触させて締結初期における摩擦を低減し
た。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】 本考案は、座金付きツーピースナット及び座金 付きツーピースフランジ付きナットに関し、特に締結状態が弛みにくくしまたナ ット締結初期の抵抗を少なくしたものに関する。

【０００２】

【従来の技術】 座金付きツーピースナットや座金付きツーピースフランジ 付きナットは、ナットに座金を保持させ、締結状態が弛みにくくしたものであり 、車両のホイールの締結等に広く活用されている。座金付きツーピースナットは 、ＪＩＳ規格Ｄ２７０１やＤＩＮ７４３６１に規定のように、ナット本体と座金 とからなり、ナット本体は、ネジ孔付きの六角ナット部と、この六角ナット部か ら基端側へ延びる筒状のスカート部とを備え、六角ナット部の基端面に部分コー ン面状の第１座面が形成されている。座金は、六角ナット部の第１座面に接近対 向する部分コーン面状の第２座面と、基端面をなす部分コーン面状の第３座面と を備えている。

【０００３】 座金付きツーピースフランジ付きナットは、実開昭６１−１５４３１６号公報 に記載のように、座金付きツーピースナットのナット本体の基端部分にフランジ 部を形成して第１座面を広くして締結状態における摩擦トルクを大きくしたもの であり、ナット本体と座金とからなる。ナット本体は、ネジ孔付きの六角ナット 部と、この六角ナット部の基端側に一体形成され部分コーン面状の第１座面を有 するフランジ部と、このフランジ部から基端側へ延びる筒状のスカート部とを備 え、座金は、フランジ部の第１座面に接近対向する部分コーン面状の第２座面と 、基端面をなす部分コーン面状の第３座面とを備えている。

【０００４】 以上のような、座金付きツーピースナットや座金付きツーピースフランジ付き ナットにおいては、締結状態において座金が皿バネ的に捩じり弾性変形するため 、締結状態が弛みにくくなり、座金の第３座面の全体もしくは外周側部分が締結 対象物に摩擦接触するため締結状態における摩擦トルクが大きくなる。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】 前記ＪＩＳ規格のツーピースナットでは 、非締結状態や弱締結状態のとき座金の第２座面と座金の内周面とがナット本体 に接触し摩擦接触面積が大きいため、締結初期の摩擦抵抗が大きくなる。しかも 、締結状態においてツーピースナット以外の通常のナットと同様にナット本体も 僅かに圧縮状態になるものの、ナット本体の圧縮弾性変形を促進して締結状態を 弛みにくくするという技術思想とその構成が無いので、締結状態を弛みにくくす るには限界がある。以上のことは、ＤＩＮ規格のツーピースナットにおいても同 様である。

【０００６】 前記公報のツーピースナットにおいては、非締結状態や弱締結状態のとき、座 金の内周上端部が第１座面に摩擦接触するとともに、スカート部の下端外周面が 座金の内周面に摩擦接触するので、摩擦接触面積が大きく、締結初期の摩擦抵抗 があまり小さくならない。また、締結時に座金が大きく捩じり変形し座金の弾性 変形量が大きくなるので、締結状態が弛みにくくなることは確かである。しかし 、このツーピースナットにおいても、ナット本体の圧縮弾性変形を促進して締結 状態を弛みにくくするという技術思想とその構成が無いので、締結状態を弛みに くくするには限界がある。

【０００７】 即ち、ナット本体のネジ孔に通ずるボルト挿通孔は、フランジ部の中段部まで 延びているだけであり、ネジ孔の外周側におけるナット本体の肉厚が最少肉厚で あり、ボルト挿通孔の外周側の肉厚が小さくなっていないので、締結状態におい てその部分の弾性変形歪みはあまり大きくならず、弛み防止機能を発揮するよう には構成されていない。 本考案の目的は、締結状態においてナット本体の圧縮弾性変形を有効活用して 弛みにくくすることのできる座金付きツーピースナットや座金付きツーピースフ ランジ付きナットを提供すること、締結初期の摩擦抵抗を小さくできる座金付き ツーピースナットや座金付きツーピースフランジ付きナットを提供することであ る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】 請求項１の座金付きツーピースナットは、 ナット本体とこのナット本体の基端部に保持された座金とを備えた座金付きツー ピースナットにおいて、前記ナット本体は、ネジ孔付きの六角ナット部であって 基端面に部分コーン面状の第１座面を有する六角ナット部と、この六角ナット部 から基端側へ延びる筒状のスカート部とを備え、前記六角ナット部の基端部分と スカート部には、前記ネジ孔と同心でネジ孔の谷径よりも大径のボルト挿通孔が 形成され、このボルト挿通孔によりその外側のナット本体部分の肉厚を薄肉化し て締結時の弾性変形を促進するように構成したことを特徴とするものである。

【０００９】 ボルト挿通孔が六角ナット部の基端部分まで延びるように長く形成されており 、このボルト挿通孔によりその外側のナット本体部分の肉厚を薄肉化して締結時 の弾性変形を促進するように構成してあるので、ツーピースナットをボルトに締 結した締結状態では、ボルト挿通孔の外側のナット本体部分の弾性変形が促進さ れ、その弾性変形による弾性力がナット本体に作用するため、従来のツーピース ナットよりも格段に弛みにくくなる。

【００１０】 請求項２の座金付きツーピースナットは、請求項１の考案において、前記座金 は、六角ナット部の第１座面に接近対向する部分コーン面状の第２座面と、基端 面をなす部分コーン面状の第３座面とを備え、第２座面は第１座面と異なる傾斜 状に形成され、前記座金の内周面は基端側程大径化する部分コーン面に形成され 、座金の内周上端部には環状面取り部が形成され、環状面取り部の大径側環状稜 線が第１座面に線接触し、環状面取り部の小径側環状稜線がスカート部の外周面 に線接触するように構成されたことを特徴とするものである。

【００１１】 環状面取り部の大径側環状稜線が第１座面に線接触し、座金の環状面取り部の 小径側環状稜線がスカート部の外周面に線接触するように構成し、ナット本体と 座金との摩擦接触面積が非常に小さくなっているので、前記ツーピースナットを ボルトに締結する締結初期には、前記同様にナット本体と座金との摩擦接触面積 が非常に小さく、摩擦抵抗が小さくなるから、締結作業が簡単化し能率的に行う ことができる。尚、第１座面が内周側程基端側へいくように傾斜している場合に は、第２座面は第１座面よりも緩傾斜状に形成されるし、また、第１座面が内周 側程基端と反対側へいくように傾斜している場合には、第２座面は第１座面より も急傾斜状に形成される。その他、請求項１と同様の作用を奏する。

【００１２】 請求項３の座金付きツーピースナットは、請求項２の考案において、前記スカ ート部は、前記部分コーン面に沿って緩やかに基端側程拡径するようにかしめ加 工されて座金を保持することを特徴とするものである。ボルト挿通孔は、ネジ孔 の谷径よりも大径にして大きく形成され、スカート部は、座金の内周の部分コー ン面に沿って緩やかに基端側程拡径するようにかしめ加工されるので、スカート 部をかしめ加工する際の作業性に優れ、かしめ量も少なくて済むので、かしめ加 工が簡単化する。その他、請求項２と同様の作用を奏する。

【００１３】 請求項４の座金付きツーピースフランジ付きナットは、ナット本体とこのナッ ト本体の基端部に保持された座金とを備えた座金付きツーピースフランジ付きナ ットにおいて、前記ナット本体は、ネジ孔付きの六角ナット部と、この六角ナッ ト部の基端側に一体形成され部分コーン面状の第１座面を有するフランジ部と、 このフランジ部から基端側へ延びる筒状のスカート部とを備え、前記六角ナット 部の基端部分とフランジ部とスカート部には、前記ネジ孔と同心でネジ孔の谷径 よりも大径のボルト挿通孔が形成され、このボルト挿通孔によりその外側のナッ ト本体部分の肉厚を薄肉化して締結時の弾性変形を促進するように構成したこと を特徴とするものである。

【００１４】 請求項１と同様に、ボルト挿通孔が六角ナット部の基端部分まで延びるように 長く形成されており、このボルト挿通孔によりその外側のナット本体部分の肉厚 を薄肉化して締結時の弾性変形を促進するように構成してあるので、ツーピース ナットをボルトに締結した締結状態では、ボルト挿通孔の外側のナット本体部分 の弾性変形が促進され、その弾性変形による弾性力がナット本体に作用するため 、従来のツーピースナットよりも格段に弛みにくくなる。

【００１５】 請求項５の座金付きツーピースフランジ付きナットは、請求項４の考案におい て、前記座金は、フランジ部の第１座面に接近対向する部分コーン面状の第２座 面と、基端面をなす部分コーン面状の第３座面とを備え、第２座面は第１座面よ りも緩傾斜状に形成され、前記座金の内周面は基端側程大径化する部分コーン面 に形成され、座金の内周上端部には環状面取り部が形成され、環状面取り部の大 径側環状稜線が第１座面に線接触し、環状面取り部の小径側環状稜線がスカート 部の外周面に線接触するように構成されたことを特徴とするものである。

【００１６】 請求項２と同様に、座金の環状面取り部の小径側環状稜線がスカート部の外周 面に線接触するように構成し、ナット本体と座金との摩擦接触面積が非常に小さ くなっているので、前記ツーピースナットをボルトに締結する締結初期には、前 記同様にナット本体と座金との摩擦接触面積が非常に小さく、摩擦抵抗が小さく なるから、締結作業が簡単化し能率的に行うことができる。尚、第１座面が内周 側程基端側へいくように傾斜している場合には、第２座面は第１座面よりも緩傾 斜状に形成されるし、また、第１座面が内周側程基端と反対側へいくように傾斜 している場合には、第２座面は第１座面よりも急傾斜状に形成される。その他、 請求項４と同様の作用を奏する。

【００１７】 請求項６の座金付きツーピースフランジ付きナットは、請求項５の考案におい て、前記スカート部は、前記部分コーン面に沿い基端側程拡径するように緩やか にかしめ加工されて座金を保持することを特徴とするものである。請求項３と同 様に、ボルト挿通孔は、ネジ孔の谷径よりも大径にして大きく形成され、スカー ト部は、座金の内周の部分コーン面に沿って緩やかに基端側程拡径するようにか しめ加工されるので、スカート部をかしめ加工する際の作業性に優れ、かしめ量 も少なくて済むので、かしめ加工が簡単化する。その他、請求項５と同様の作用 を奏する。

【００１８】

【考案の実施の形態】

以下、本考案の実施の形態について図面を参照して説明する。 図１、図２に示すように、座金付きツーピースナット１は、ナット本体１０と 、このナット本体１０の基端部に保持された座金２０とからなる。前記ナット本 体１０は、六角ナット部１１と、この六角ナット部１１の基端面から基端側へ延 びる筒状のスカート部１２とを備え、六角ナット部１１の中心部にはネジ孔１３ が形成され、六角ナット部１１の基端面には部分コーン面状の第１座面１４が形 成され、この第１座面１４は外周側程基端と反対側（つまり、先端側）へいくよ うに傾斜しており、この第１座面１４の傾斜角αは、例えば約１５度である。

【００１９】 前記六角ナット部１１の基端部分１１ａとスカート部１２には、ネジ孔１３と 同心でネジ孔１３の谷径よりも大径のボルト挿通孔１５が形成され、このボルト 挿通孔１５によりその外側の六角ナット部１１の基端部分１１ａの肉厚を薄肉化 して締結時の弾性変形を促進するように構成してある。前記座金２０の上面には 、六角ナット部１１の第１座面１４に接近対向する部分コーン面状の第２座面２ １が形成され、座金２０の基端面には部分コーン面状の第３座面２２が形成され 、第２座面２１は、外周側程基端と反対側（つまり、先端側）へいくように傾斜 しており、この第２座面２１の傾斜角βは例えば約１４度であり、第２座面２１ は第１座面１４よりも緩傾斜状に形成されている。第３座面２２は外周側程基端 側へいくように傾斜しており、第３座面２２の傾斜角γは例えば約１．５度であ る。

【００２０】 前記座金２０の内周面は基端側程大径化する部分コーン面２３に形成され、座 金２０の内周上端部の内周近傍部には環状面取り部２４が形成され、環状面取り 部２４の大径側環状稜線２４ａが第１座面１４に線接触し、環状面取り部２４の 小径側環状稜線２４ｂがスカート部１２の外周面に線接触するように構成されて いる。前記スカート部１２は、部分コーン面２３に沿って緩やかに基端側程拡径 するようにかしめ加工されて座金２０を保持するようになっている。前記座金２ ０の外周側上端部にも面取り部２５が形成されている。

【００２１】 この座金付きツーピースナット１をボルトに締結した締結状態と、この締結状 態からの弛み度合いを検査する為に、座金２０の上面の外周部には、円周８等分 位置に位置する８つのマーク線２６が印され、ナット本体１０の上面には、１つ の三角マーク１６が印され、このツーピースナット１をボルトに締結するとき三 角マーク１６が締結完了時にマーク線２６に対してどの位置にあるかを記録して おけば、その後の弛み度合いを目視にて確認することができる。

【００２２】 以上の座金付きツーピースナット１の作用、効果について説明する。 この座金付きツーピースナット１をボルト３に螺合して締結対象物を締結する ことになるが（図３参照）、締結の初期段階では、環状面取り部２４の大径側環 状稜線２４ａが第１座面１４に線接触し、小径側環状稜線２４ｂがスカート部１ ２の外周面に線接触するだけであるので、座金２０とナット本体１０の摩擦接触 面積が非常に小さいため、摩擦抵抗が小さく、軽いトルクで簡単にナット本体１ ０を回すことができ、締結の作業性と作業能率が向上する。

【００２３】 締結の進行に応じて、図３に示すように、座金２０が皿バネ的に捩じり弾性変 形していき、第１座面１４と第２座面２１とが面接触状態になり、座金２０の第 ３座面２２が締結対象物の上面に面接触状態ないしは第３座面２２の内周側に微 小隙間が生じるほぼ面接触状態になり、締結完了状態においてナット本体１０の 六角ナット部１１には基端側ほど大きくなる圧縮力が作用する。ボルト挿通孔１ ５がネジ孔１３の谷径よりも大径に形成されているため、軸心から第１座面１４ に作用する圧縮力の作用点までの半径が大きくなるから、締結弛みに抵抗する摩 擦トルクが大きくなり締結状態においてツーピースナット１が弛みにくくなる。

【００２４】 しかも、ボルト挿通孔１５がネジ孔１３の谷径よりも大径に形成され且つボル ト挿通孔１５が六角ナット部１１の基端部分１１ａまで延びており、この基端部 分１１ａの肉厚が小さくなっているので、基端部分１１ａが前記圧縮力で弾性変 形する弾性歪みが大きくなるから、基端部分１１ａも座金２０と同様に弛み防止 機能を発揮し、締結状態においてツーピースナット１が弛みにくくなる。

【００２５】 ボルト挿通孔１５は、ネジ孔１３の谷径よりも大径にして大きく形成され、ス カート部１２は、座金２０の内周の部分コーン面２３に沿って緩やかに基端側程 拡径するようにかしめ加工されるので、スカート部１２をかしめ加工する際の作 業性に優れ、かしめ量も少なくて済むので、かしめ加工が簡単化する。 尚、前記傾斜角α、β、γの値は例示に過ぎず、これらの傾斜角と異なる角度 に形成してもよいことは勿論である。また、第１座面１４も第２座面２１も内周 側程基端と反対側へいくように傾斜させてもよく、その場合、第２座面２１は第 １座面１４よりも急傾斜状に形成される。

【００２６】 次に、別実施形態に係る座金付きツーピースフランジ付きナットについて説明 する。図４、図５に示すように、座金付きツーピースフランジ付きナット２は、 ナット本体３０と、このナット本体３０の基端部に保持された座金４０とからな る。前記ナット本体３０は、六角ナット部３１と、この六角ナット部３１の基端 側に一体形成されたフランジ部３２と、このフランジ部３２から基端側へ延びる 筒状のスカート部３３とを備え、六角ナット部３１の中心部にはネジ孔３４が形 成され、フランジ部３２の基端面には部分コーン面状の第１座面３５が形成され 、この第１座面３５は外周側程基端と反対側（つまり、先端側）へいくように傾 斜しており、この第１座面３５の傾斜角αは、例えば約１５度である。

【００２７】 前記六角ナット部３１の基端部分３１ａとフランジ部３２とスカート部３３に は、ネジ孔３４と同心でネジ孔３４の谷径よりも大径のボルト挿通孔３６が形成 され、このボルト挿通孔３６によりその外側の六角ナット部３１の基端部分３１ ａとフランジ部３２の肉厚を薄肉化して締結時の弾性変形を促進するように構成 してある。前記座金４０の上面には、フランジ部３２の第１座面３５に接近対向 する部分コーン面状の第２座面４１が形成され、座金４０の基端面には部分コー ン面状の第３座面４２が形成され、第２座面４１は、外周側程基端と反対側（つ まり、先端側）へいくように傾斜しており、この第２座面４１の傾斜角βは例え ば例えば約１４度であり、第２座面４１は第１座面３５よりも緩傾斜状に形成さ れている。第３座面４２は外周側程基端側へいくように傾斜しており、第３座面 ４２の傾斜角γは例えば約１．５度である。

【００２８】 前記座金４０の内周面は基端側程大径化する部分コーン面４３に形成され、座 金４０の内周上端部の内周近傍部には環状面取り部４４が形成され、環状面取り 部４４の大径側環状稜線４４ａが第１座面３５に線接触し、環状面取り部４４の 小径側環状稜線４４ｂがスカート部３３の外周面に線接触するように構成されて いる。前記スカート部３３は、部分コーン面４３に沿って緩やかに基端側程拡径 するようにかしめ加工されて座金４０を保持するようになっている。前記座金４ ０の外周側上端部にも面取り部４５が形成されている。

【００２９】 この座金付きツーピースフランジ付きナット２をボルトに締結した締結状態と 、この締結状態からの弛み度合いを検査する為に、座金４０の上面の外周部には 、円周８等分位置に位置する８つのマーク線４６が印され、フランジ部３２の上 面外周部には、１つの三角マーク３７が印され、このツーピースナット２をボル トに締結するとき三角マーク３７が締結完了時にマーク線４６に対してどの位置 にあるか記録しておけばその後の弛み度合いを目視にて確認することができる。

【００３０】 以上の座金付きツーピースフランジ付きナット２の作用、効果について説明す る。前記座金付きツーピースナット１と同様に、この座金付きツーピースフラン ジ付きナット２をボルト３に螺合して締結対象物を締結することになるが（図６ 参照）、締結の初期段階では、環状面取り部４４の大径側環状稜線４４ａが第１ 座面３５に線接触し、小径側環状稜線４４ｂがスカート部３３の外周面に線接触 するだけであるので、座金４０とナット本体３０の摩擦接触面積が非常に小さい ため、摩擦抵抗が小さく、軽いトルクで簡単にナット本体３０を回すことができ 、締結の作業性と作業能率が向上する。

【００３１】 締結の進行に応じて、図６に示すように、座金４０が皿バネ的に捩じり弾性変 形していき、第１座面３５と第２座面４１とが面接触状態になり、座金４０の第 ３座面４２が締結対象物の上面に面接触状態ないしは第３座面４２の内周側に微 小隙間が生じるほぼ面接触状態になり、締結完了状態においてナット本体３０の 六角ナット部３１とフランジ部３２には、基端側ほど大きくなる圧縮力が作用す る。ボルト挿通孔３６がネジ孔３４の谷径よりも大径に形成されているため、軸 心から第１座面３５に作用する圧縮力の作用点までの半径が大きくなるから、締 結弛みに抵抗する摩擦トルクが大きくなり、締結状態においてツーピースフラン ジ付きナット２が弛みにくくなる。

【００３２】 しかも、ボルト挿通孔３６がネジ孔３４の谷径よりも大径に形成され且つボル ト挿通孔３６が六角ナット部３１の基端部分３１ａまで延びており、この基端部 分３１ａとフランジ部３２の肉厚が小さくなっているので、基端部分３１ａとフ ランジ部３２とが前記圧縮力で弾性変形する弾性歪みが大きくなるから、基端部 分３１ａとフランジ部３２（特に、基端部分３１ａ）も座金４０と同様に弛み防 止機能を発揮し、締結状態においてツーピースフランジ付きナット２が弛みにく くなる。

【００３３】 ボルト挿通孔３６は、ネジ孔３４の谷径よりも大径にして大きく形成され、ス カート部３３は、座金４０の内周の部分コーン面４３に沿って緩やかに基端側程 拡径するようにかしめ加工されるので、スカート部３３をかしめ加工する際の作 業性に優れ、かしめ量も少なくて済むので、かしめ加工が簡単化する。 尚、前 記傾斜角α、β、γの値は例示に過ぎず、これらの傾斜角と異なる角度に形成し てもよいことは勿論である。また、第１座面３５も第２座面４１も内周側程基端 と反対側へいくように傾斜させてもよく、その場合、第２座面４１は第１座面３ ５よりも急傾斜状に形成される。

【００３４】

【考案の効果】 請求項１の考案によれば、ツーピースナットをボルトに締 結した締結状態では、ボルト挿通孔の外側の薄肉化されたナット本体部分の弾性 変形が促進され、その弾性変形による弾性力がナット本体に作用するため、従来 のツーピースナットよりも格段に弛みにくくなる。 請求項２の考案によれば、前記ツーピースナットをボルトに締結する締結初期 には、前記同様にナット本体と座金との摩擦接触面積が非常に小さく、摩擦抵抗 が小さくなるから、締結作業が簡単化し能率的に行うことができる。 その他、請求項１と同様の効果を奏する。

【００３５】 請求項３の考案によれば、スカート部をかしめ加工する際の作業性に優れ、か しめ量も少なくて済むので、かしめ加工が簡単化する。その他、請求項２と同様 の効果を奏する。 請求項４の考案によれば、請求項１と同様に、ツーピースフランジ付きナット をボルトに締結した締結状態では、ボルト挿通孔の外側の薄肉化されたナット本 体部分の弾性変形が促進され、その弾性変形による弾性力がナット本体に作用す るため、従来のツーピースナットやツーピースフランジ付きナットよりも格段に 弛みにくくなる。

【００３６】 請求項５の考案によれば、請求項２と同様に、前記ツーピースフランジ付きナ ットをボルトに締結する締結初期には、前記同様にナット本体と座金との摩擦接 触面積が非常に小さく、摩擦抵抗が小さくなるから、締結作業が簡単化し能率的 に行うことができる。その他、請求項４と同様の効果を奏する。

【００３７】 請求項６の考案によれば、請求項３と同様に、スカート部をかしめ加工する際 の作業性に優れ、かしめ量も少なくて済むので、かしめ加工が簡単化する。その 他、請求項５と同様の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施形態に係る座金付きツーピースナ
ット（非締結状態）の一部切欠き断面図である。

【図２】図１の座金付きツーピースナットの平面図であ
る。

【図３】図１の座金付きツーピースナット（締結状態）
の図１相当図である。

【図４】本考案の別実施形態に係る座金付きツーピース
フランジ付きナット（非締結状態）の一部切欠き断面図
である。

【図５】図４の座金付きツーピースフランジ付きナット
の平面図である。

【図６】図４の座金付きツーピースフランジ付きナット
（締結状態）の図４相当図である。

【符号の説明】

１ 座金付きツーピースナット １０ ナット本体 １１ 六角ナット部 １２ スカート部 １３ ネジ孔 １４ 第１座面 １５ ボルト挿通孔 ２０ 座金 ２１ 第２座面 ２２ 第３座面 ２３ 部分コーン面 ２４ 面取り部 ２４ａ 大径側環状稜線 ２４ｂ 小径側環状稜線 ２ 座金付きツーピースフランジ付きナット ３０ ナット本体 ３１ 六角ナット部 ３２ フランジ部 ３３ スカート部 ３４ ネジ孔 ３５ 第１座面 ３６ ボルト挿通孔 ４０ 座金 ４１ 第２座面 ４２ 第３座面 ４３ 部分コーン面 ４４ 面取り部 ４４ａ 大径側環状稜線 ４４ｂ 小径側環状稜線

Claims (6)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ナット本体とこのナット本体の基端部に
   保持された座金とを備えた座金付きツーピースナットに
   おいて、 前記ナット本体は、ネジ孔付きの六角ナット部であって
   基端面に部分コーン面状の第１座面を有する六角ナット
   部と、この六角ナット部から基端側へ延びる筒状のスカ
   ート部とを備え、 前記六角ナット部の基端部分とスカート部には、前記ネ
   ジ孔と同心でネジ孔の谷径よりも大径のボルト挿通孔が
   形成され、このボルト挿通孔によりその外側のナット本
   体部分の肉厚を薄肉化して締結時の弾性変形を促進する
   ように構成したことを特徴とする座金付きツーピースナ
   ット。
2. 【請求項２】 前記座金は、六角ナット部の第１座面
   に接近対向する部分コーン面状の第２座面と、基端面を
   なす部分コーン面状の第３座面とを備え、第２座面は第
   １座面と異なる傾斜状に形成され、前記座金の内周面は
   基端側程大径化する部分コーン面に形成され、座金の内
   周上端部には環状面取り部が形成され、環状面取り部の
   大径側環状稜線が第１座面に線接触し、環状面取り部の
   小径側環状稜線がスカート部の外周面に線接触するよう
   に構成されたことを特徴とする請求項１に記載の座金付
   きツーピースナット。
3. 【請求項３】 前記スカート部は、前記部分コーン面に
   沿って緩やかに基端側程拡径するようにかしめ加工され
   て座金を保持することを特徴とする請求項２に記載の座
   金付きツーピースナット。
4. 【請求項４】 ナット本体とこのナット本体の基端部に
   保持された座金とを備えた座金付きツーピースフランジ
   付きナットにおいて、 前記ナット本体は、ネジ孔付きの六角ナット部と、この
   六角ナット部の基端側に一体形成され部分コーン面状の
   第１座面を有するフランジ部と、このフランジ部から基
   端側へ延びる筒状のスカート部とを備え、 前記六角ナット部の基端部分とフランジ部とスカート部
   には、前記ネジ孔と同心でネジ孔の谷径よりも大径のボ
   ルト挿通孔が形成され、このボルト挿通孔によりその外
   側のナット本体部分の肉厚を薄肉化して締結時の弾性変
   形を促進するように構成したことを特徴とする座金付き
   ツーピースフランジ付きナット。
5. 【請求項５】 前記座金は、フランジ部の第１座面に接
   近対向する部分コーン面状の第２座面と、基端面をなす
   部分コーン面状の第３座面とを備え、第２座面は第１座
   面と異なる傾斜状に形成され、前記座金の内周面は基端
   側程大径化する部分コーン面に形成され、座金の内周上
   端部には環状面取り部が形成され、環状面取り部の大径
   側環状稜線が第１座面に線接触し、環状面取り部の小径
   側環状稜線がスカート部の外周面に線接触するように構
   成されたことを特徴とする請求項４に記載の座金付きツ
   ーピースフランジ付きナット。
6. 【請求項６】 前記スカート部は、前記部分コーン面に
   沿い基端側程拡径するように緩やかにかしめ加工されて
   座金を保持することを特徴とする請求項５に記載の座金
   付きツーピースフランジ付きナット。