JP3043124B2 - 進行波型モータ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、弾性体に進行波を発生
させこの波動エネルギーを推力またはトルクに変換する
振動波モータ−、特に進行波の基となる定在波の発生を
空間的に可変にすることにより、性能劣化を少なくした
寿命の長い進行波型モータ装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の進行波型超音波モータの代表的な
ものには、例えば「超音波モータ入門」（総合電子出
版、１９９１）に示されるように円環型のものがあり、
このモータの基本的な構成は電気−機械エネルギー変換
素子である圧電素子を円環型の弾性体の裏面側に接着
し、該弾性体の表面に進行波を形成する振動子と、該振
動子の進行波形成面に加圧接触し、該進行波により摩擦
駆動される移動体とにより構成され、場合によっては逆
に該移動体を固定し、該振動子を移動させるような使用
方法等も提案されている。図２はこの振動子における圧
電素子のレイアウトを示す図で、振動子には図の左右両
側に２相の駆動用電極群（以下Ａ相、Ｂ相と称す）が空
間的に９０度の位相差を有して設けられており、Ａ、Ｂ
両相とも同様に逆極性の圧電素子板が交互に配置されて
いる。各相の正負１対の圧電素子板が定在波の１波長分
で、Ａ、Ｂ両相には時間的に位相差が９０度となるよう
電圧を印加することによって、Ａ相により励起される定
在波と、Ｂ相により励起される定在波の合成として進行
波が発生される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上述の従来技術では、
振動子の一定の位置に各相毎の定在波が励起される構成
である。このため、２相の定在波がともに空間的、時間
的位相差が何れも９０度で、且っ振幅が等しければ理想
的な進行波が形成されることになるが、現実上、これら
の条件を理想的に満たすのは困難である。

【０００４】そして、これらの進行波発生条件が不完全
な場合、主成分である進行波の他に異なった周波数の進
行波及び定在波成分が重畳された波動となる。特にこの
定在波成分は圧電素子の配置に関係して固定のもので、
定在波の腹の位置となる摩擦面は頻繁に移動子または移
動体を叩くことになる。この様な構成の進行波型モータ
を長時間動作させると振動子の一定の箇所、即ち腹の位
置数点の摩耗の程度がひどくなり、摩擦面の表面精度を
劣化させ平面度のばらつきがでてくる。通常の産業上用
いられている圧電体・弾性体から得られる振動は高々数
ミクロンのオーダーの振幅である。従って摩擦面平面度
のばらつきはアクチュエータ性能低下の主要因であるト
ルクむらあるいは推力むらとなり、ひいては耐久性の低
下をもたらせていた。

【０００５】

【課題を解決するための手段及び作用】本発明は上記問
題点を解決するためになされたもので、従来永久的に固
定であった定在波の加振位置を変更できるようにするこ
とで摩擦面の局所的な摩耗を避けようとするものであ
る。

【０００６】そこで本発明の進行波型モータ装置では、
第１の周波信号と該第１の周波信号に対して位相が１８
０度異なる第２の周波信号と前記第１の周波信号に対し
て位相が９０度異なる第３の周波信号と該第３の周波信
号に対して位相が１８０度異なる第４の周波信号を形成
する信号形成手段と、弾性体に配された同一極性に分極
された複数の電気ー機械エネルギー変換素子と、該複数
の電気ー機械エネルギー変換素子の内隣り合つて位置す
る複数個の素子単位として複数のグループに分けると共
に、該複数のグループを第１のグループ群と第２のグル
ープ群に分け、該第１のグループ群における隣り合うグ
ループに対して前記第１の周波信号と第２の周波信号を
交互に印加し、第２のグループ群における隣り合うグル
ープに対して前記第３の周波信号と第４の周波信号を交
互に印加することにより、グループ内の全ての電気ー機
械エネルギー変換素子には同一位相の周波信号を印加
し、かつ第１のグループ群における隣り合うグループ毎
に位相が１８０度異なる周波信号を印加し、又第２のグ
ループ群における隣り合うグループ毎に位相が１８０度
異なる周波信号を印加する印加手段と、前記複数の電気
ー機械エネルギー変換素子のうち第１の周波信号が印加
される複数の隣り合う素子及び第２の周波信号が印加さ
れる複数の隣り合う素子及び第３の周波信号が印加され
る複数の隣り合う素子及び第４の周波信号が印加される
複数の隣り合う素子を前記複数の電気ー機械エネルギー
変換素子の中から変更可能に選択する選択手段を設けた
ものである。具体的には、従来の半波長（λ／２）で１
個の圧電素子の構成を半波長で複数個の圧電素子片に置
き換え、それらを電気的に独立させることで定在波を形
成する位置を変更する手段を設ける。このために、波長
に対して圧電素子片を小さくすること及びそれぞれの圧
電素子片に独立に電圧を印加可能とすることで、発生す
る定在波の腹の位置を移動させ、振動子上の全ての摩擦
面に均等な役割と負荷を与えることを可能とした。

【０００７】

【実施例】図１は本発明による進行波型モータ装置を適
用した振動波モータの一実施例である。

【０００８】本実施例の振動波モータは回転モータに応
用したもので、リング状のステータ（振動子）１０の振
動体には、分極方向が同一な微少等幅の圧電素子片１１
を全周に亘って配置している。分極方向が全て同一なこ
れら圧電素子片１１は電気的には全て独立した状態に取
り付けられ、これら圧電素子片１１の表面に例えば不図
示のフレキシブルプリント基板を設け、各々の圧電素子
片１１に任意の電圧を印加できるようにしている。

【０００９】本実施例においては、中心からの角度５度
の等間隔でステータ１０の円周上に７２片の圧電素子を
配置しており、図２に示す従来例に対応させてこれと等
価な進行波を発生させる駆動方法を図１の（ｂ）、
（ｃ）図に示す。

【００１０】本実施例では、４片の圧電素子片が半波長
（λ／２）分に対応するもので、図１の（ｂ）に示すよ
うに連続する４片の圧電素子片を交互にＡ０相、Ａｌ相
と４波長（４λ）分取り、図２のＡ相に対応させてい
る。一方のＢ相に対応するものは２片分の圧電素子片、
即ち４分の１波長（λ／４）の間隔をあけて同様にＢ０
相、Ｂｌ相と４片づつ割り当てる。

【００１１】またこれらＡ、Ｂ相の圧電素子片を駆動す
るための回路は、各電圧源にマルチプレックサを用いて
割り当てを管理する構成としている。電圧源の振動（駆
動波形）は、図１のｃに示すよう正弦波、余弦波及びこ
れらの逆符号の４相の振動波形を用いるもので、例えば
Ａ０相の圧電素子片が周方向に伸びると、Ａ１相の圧電
素子片は周方向に縮み、Ａ相による定在波が例えばＡ１
相を腹として形成される。

【００１２】ここで、リング状振動体における圧電素子
片１１は全て等間隔に形成されているのことから、隣接
する４片１組の圧電素子群のグループ分けを、例えば１
つの圧電素子片ずらすと、上記した定在波の腹の位置が
１つの圧電素子片分だけシフトすることになる。

【００１３】すなわち、自動あるいは定期的な手動で、
各相の割当を全体としてシフトすれば定在波の発生位置
を変更することができる。またＡ相群（Ａ０，Ａｌ相）
とＢ相群（Ｂ０，Ｂｌ相）との問隔を増減すれば空間的
位相差制御が可能となる。

【００１４】図３はマルチプレクサを用いて自動的に
Ａ、Ｂ相の割当をシフトする駆動回路の回路図を示す。

【００１５】この駆動回路は、図１の（ｃ）に示すＡ０
相、Ａ１相、Ｂ０相、Ｂ１相の各駆動信号を増幅する各
アンプ１２からの信号が、マルチプレクサ１３に出力さ
れる。マルチプレクサ１３は、その出力側に振動子１０
の全振動子片１１に対応した出力端子を有し、例えばフ
レキシブルプリント基板からなる導電線１４を介して該
各出力端子と各圧電素子片とを電気的に接続している。

【００１６】またマルチプレクサ１３は、制御信号によ
り、例えば４片を１組とする圧電素子片の組み合わせを
上述のようにずらすことができるようになっている。

【００１７】以上のように、圧電素子片を各々独立させ
たことで加振方法の自由度は上がり様々な駆動方法が可
能となるが、典型的な例をひとつ挙げておく。振動子弾
性体の振動モードは幾つも存在するが、２片の圧電素子
片を半波長分とした駆動方法において加振すると、上記
実施例に対して１／２周期のモードを励振できる。つま
りひとつのモータでトルク・速度特性を変更することが
できる。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、振
動子上摩擦面の特定箇所の極端な摩耗を防除することを
可能ならしめ面精度の劣化を防ぐことができる。その結
果アクチュエータとしての動作性能の経時的な低下を少
なくし寿命の長い進行波型モータ装置を実現できる。ま
た発生させる進行波の波長を変えアクチュエータ特性を
変更できることから使用分野あるいは範囲を拡大でき
る。

【００１９】さらに、原理的に円周上が均等であること
から、精度の高い振動子の製造を容易にでき、その結
果、正弦波に近い高品質な進行波を発生できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による進行波型モータ装置の一実施例を
示す図。

【図２】従来の進行波型モータ装置の圧電素子の配置パ
ターンを示す図。

【図３】図１の駆動回路示す図。

【符号の説明】

１０…振動子 １１…圧電素子 １２…アンプ １３…マルチプレクサ １４…導電線

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 第１の周波信号と該第１の周波信号に対
   して位相が１８０度異なる第２の周波信号と前記第１の
   周波信号に対して位相が９０度異なる第３の周波信号と
   該第３の周波信号に対して位相が１８０度異なる第４の
   周波信号を形成する信号形成手段と、 弾性体に配された同一極性に分極された複数の電気ー機
   械エネルギー変換素子と、該複数の電気ー機械エネルギ
   ー変換素子の内隣り合つて位置する複数個の素子単位と
   して複数のグループに分けると共に、該複数のグループ
   を第１のグループ群と第２のグループ群に分け、該第１
   のグループ群における隣り合うグループに対して前記第
   １の周波信号と第２の周波信号を交互に印加し、第２の
   グループ群における隣り合うグループに対して前記第３
   の周波信号と第４の周波信号を交互に印加することによ
   り、グループ内の全ての電気ー機械エネルギー変換素子
   には同一位相の周波信号を印加し、かつ第１のグループ
   群における隣り合うグループ毎に位相が１８０度異なる
   周波信号を印加し、又第２のグループ群における隣り合
   うグループ毎に位相が１８０度異なる周波信号を印加す
   る印加手段と、 前記複数の電気ー機械エネルギー変換素子のうち第１の
   周波信号が印加される複数の隣り合う素子及び第２の周
   波信号が印加される複数の隣り合う素子及び第３の周波
   信号が印加される複数の隣り合う素子及び第４の周波信
   号が印加される複数の隣り合う素子を前記複数の電気ー
   機械エネルギー変換素子の中から変更可能に選択する選
   択手段を設けたことを特徴とする進行波型モータ装置。