JP3021844B2 - 凹版印刷用刷版および凹版印刷方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、複数色からなる精細パ
ターンの印刷、特にカラー液晶表示装置に用いるカラー
フィルタを製造する凹版印刷用刷版および凹版印刷方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】カラー液晶表示装置に用いるカラーフィ
ルタは、ガラス基板上に例えば赤、緑、青をそれぞれ用
途に応じストライプパターン状、あるいはモザイク状の
精細パターンからなる画素を配列したものである。

【０００３】この様なカラーフィルタを製造する方法と
しては、一種のフォトリソグラフ法である染色法や顔料
分散法が主流である。しかしながら前記方法は、感光液
の塗布工程や露光工程の煩雑であるということから、こ
の様な課題から解消される印刷法による製造が注目され
ている。

【０００４】カラーフィルタを印刷法により製造するた
めには、平版あるいは凹版を用いたオフセット印刷方式
が提案されているが、パターンを精細に、厚盛に印刷で
きるという利点から、凹版オフセット印刷が実用化に至
っている。

【０００５】凹版オフセット印刷に用いる凹版印刷用刷
版は、鉄板を素材としてなるベース層に、ニッケルメッ
キ層と銅メッキ層とフォトレジストを塗布した版素材
を、ストライプパターン状若しくはモザイクパターン状
の精細パターンからなる画素が形成されたガラスからな
るマスター板と密着させ、紫外光による露光を行い、マ
スター板の画素形状をフォトレジストに焼付け、所定の
現像後、ウエットエッチング法により所望のセルを形成
した凹版印刷用刷版を製造している。

【０００６】前記の様な凹版印刷用刷版を使用する凹版
オフセット印刷機は、正逆回転可能で、かつ、上下移動
可能に支持されたブランケット胴と、横移動可能に支持
された台車を有し、前記台車上に設けられた定盤に凹版
印刷用刷版と被印刷体（ガラス）を装着したものであ
る。また、それを用いての印刷方法は、凹版印刷用刷版
にインキを供給後、台車を移動しながら、ブランケット
胴に取付けたブランケットに凹版印刷用刷版を圧着さ
せ、さらに台車を移動することにより、ブランケットか
ら被印刷体に印刷するものである。

【０００７】ところで、フォトレジストの感度はリスフ
ィルム等の感光材料と比べて低いので、数十秒から数分
の露光時間が必要であり、その間に版素材の温度が上昇
することは避けられないものである。そしてその温度は
印刷現場に比べて数度程度高くなってしまう。よって、
マスター板の画素が設計通りの形状を有していても、そ
れを焼き付けた凹版印刷用刷版を使用しての印刷時には
収縮が発生し、必ずしも所望の形状の画素および画素ピ
ッチが得られていなかったが、形成する画素の幅が５０
μｍ程度と大きいため、許容内には収まっていた。

【０００８】しかし今後の市場拡大が見込まれるハイビ
ジョン液晶表示装置用の画素（パターン）は、それより
小さいので、前記収縮が大きな問題となってくる。特に
ストライプパターン等の精細パターンの長手方向と直交
する方向に対するピッチの要求は、精細パターンの長手
方向に比べて厳しいものである。

【０００９】また、通常の圧延金属板は、製造時に内部
応力を発生し、製版工程中のフォトレジストのベーク
（乾燥）等の加熱や経時変化において、その応力を徐々
に開放する。それが版の伸縮となり、特に主圧延方向の
画素ピッチが満足すべきものではなかった。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、液晶表示装
置用のカラーフィルタの精細パターンの精度が、長手方
向に関しては許容度が大きいと言う点に着目し、凹版印
刷用刷版が多少伸縮しても、液晶表示装置用に使用でき
る精細パターンのカラーフィルタの印刷に適した凹版印
刷用刷版および凹版印刷方法を提供することを目的とす
る。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は上記従来技術の
課題に鑑みてなされたものであって、請求項１，２記載
の発明は、ストライプパターン等の精細パターンを印刷
するための凹版印刷用刷版において、前記凹版印刷用刷
版のベース層は圧延金属板からなり、かつ主圧延方向と
精細パターンの長手方向が一致していることを特徴とす
る凹版印刷用刷版であり、請求項３記載の発明は、前記
凹版印刷用刷版を用いた凹版印刷方法であって、前記凹
版印刷用刷版を、そのベース層の主圧延方向が印刷方向
と一致する様に印刷機に装着し、印刷することを特徴と
するものである。

【００１２】

【作用】本発明の凹版印刷用刷版は、ベース層が圧延金
属板からなり、かつ主圧延方向と精細パターンの長手方
向が一致しているので、版の長手方向の熱膨張率は大き
いものの、それに直交する方向の熱膨張率は小さい。よ
って、許容内に収まる。

【００１３】また、ベース層の主圧延方向と印刷方向が
一致すると、印刷精度が良い。

【００１４】

【実施例】次に本発明を図１及び図２に示す一実施例を
基に説明する。凹版印刷用刷版の製造例を述べると、鉄
からなる圧延金属板を素材としてなるベース層に、ニッ
ケルメッキ層と銅メッキ層を順次設けた版素材を作製す
る。次に版素材表面にフォトレジストを塗布する。その
後、幅１５μｍのストライプパターン状の画素が形成さ
れたガラスからなるマスター板と密着させ、密着露光機
を用いて紫外光による露光を行う。なお、本実施例の精
細パターンはストライプパターンであるが、長方形の画
素からなるモザイクパターンにも有効である。

【００１５】本発明では、版素材とマスター板を密着露
光する際、版素材のベース層をなす圧延金属板３の主圧
延方向とマスター板のストライプパターンの長手方向を
一致させる。マスター板の画素形状をフォトレジストに
焼付け、所定の現像後、塩化第二鉄溶液を用いたウエッ
トエッチング法により画素部を腐食させ、耐刷性を向上
させるために凹版印刷用刷版の全面にクロムメッキ層を
設けた。以上の工程により圧延金属板の主圧延方向とス
トライプパターンの長手方向（図１中ａ方向）が一致し
たセル２を有する凹版印刷用刷版１を得た。

【００１６】前記製造例により得た凹版印刷用刷版のス
トライプパターンの長手方向（図１中ａ方向）とそれに
直交する方向（図１中ｂ方向）の熱膨張率を下記に示
す。

【００１７】熱膨張率 長手方向（ａ） １０^-5 直交方向（ｂ） １０^-6

【００１８】上記のように、長手方向の熱膨張率は直交
方向より１桁大きい。直交する方向（図１中ｂ方向）の
熱膨張率は、カラーフィルタに要求される許容内であ
る。

【００１９】本発明に係わる凹版印刷用刷版を、主圧延
方向と凹版オフセット印刷機のブランケット移動方向を
一致する様に版定盤に装着し、赤、緑、緑のインクを用
い、ガラス板上に印刷を行い、ストライプパターンを有
するカラーフィルタを製造した。カラーフィルタ上に透
明導電膜、配向膜を形成し、アクティブ素子として作用
するＴＦＴ（薄膜トランジスタ）が形成された対向透明
基板とを貼り合わせ、液晶を封入し、液晶表示装置を製
造した。

【００２０】前記液晶表示装置による表示は良好なもの
であった。

【００２１】

【発明の効果】本発明の凹版印刷用刷版は、ベース層は
圧延金属板からなり、かつ主圧延方向とストライプパタ
ーンの長手方向が一致しているので、ストライプパター
ンの長手方向の熱膨張率は大きいものの、それに直交す
る方向の熱膨張率は小さい。

【００２２】さらに、ベース層の主圧延方向と印刷方向
が一致すると、印刷精度が良い。

【００２３】よって、多少の伸縮が起こっても、液晶表
示装置用に使用できるストライプパターンのカラーフィ
ルタの印刷に適した凹版印刷用刷版および凹版印刷方法
を提供することができる。

【００２４】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の凹版印刷用刷版を示す平面図である。

【図２】本発明の凹版印刷用刷版に使用する圧延金属板
の説明図である。

【符号の説明】

１ 凹版印刷用刷版 ２ セル ３ 圧延金属板

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】精細パターンを印刷するための凹版印刷用
   刷版において、前記凹版印刷用刷版のベース層は圧延金
   属板からなり、かつ主圧延方向と精細パターンの長手方
   向が一致していることを特徴とする凹版印刷用刷版。
2. 【請求項２】前記精細パターンがストライプパターンで
   あることを特徴とする請求項１記載の凹版印刷用刷版。
3. 【請求項３】ベース層が圧延金属板からなり、かつ主圧
   延方向と精細パターンの長手方向が一致している凹版印
   刷用刷版を用いた凹版印刷方法であって、前記凹版印刷
   用刷版を、そのベース層の主圧延方向が印刷方向と一致
   する様に印刷機に装着し、印刷することを特徴とする凹
   版印刷方法。