JP2990221B2 - プレキャスト版によるフローティングスラブ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、鉄道軌道や自動車道路
等の走行路面を構成する複数枚の長尺状のプレキャスト
版によるフローティングスラブに関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、鉄道軌道や自動車道路は、電車
や自動車の走行による振動、すなわち交通振動が発生す
る。この交通振動は、これらの鉄道軌道や自動車道路等
は直結して構築されている建物に伝わり、建物内のオフ
ィスや住居等の居住環境に耐え難い影響を与える。特
に、複合化ビル内での駅舎の建設や現存する駅の再開発
に対応して、線路上空間の有効利用の需要が増大してい
る現状において、建物内に伝わる振動・騒音を低減する
構法が要請されている。

【０００３】従来、この種のスラブ軌道としては、図５
に示すように、例えば、インバートコンクリート等の基
礎構造物Ｍ上にセメントアスファルトモルタルＮを介し
てプレキャスト版Ｐを全面支承せしめると共に、５ｍ程
度の長さを有するプレキャスト版Ｐの水平荷重を、上記
基礎構造物Ｍに一体的に打設した突起Ｓにより対処せし
めるものがあった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の軌道スラブは、次のような解決すべき課題を有して
いる。 １）軌道の下部に該軌道を受けるためのスラブを設置す
るため、施工基面からレールレベルまでの高さを多く必
要とする。 ２）各プレキャスト版が不連続となっているため、車両
の走行や軌条（レール、締結装置等）が不安定であり安
全性が低い。 ３）セメントアスファルトモルタルに代えて、プレキャ
スト版をバネ等の防振材により支承せしめようとする
と、少なくともプレキャスト版の前後端部の２カ所に必
ず設置しなければならない。

【０００５】 上記課題を解決するため、本発明のプレ
キャスト版によるフローティングスラブは、複数枚の長
尺状のプレキャスト版を緊張材により長手方向に一体的
に連結すると共に、上記プレキャスト版を弾性体を介し
て構造物上に設置したプレキャスト版によるフローティ
ングスラブにおいて、上記弾性体を上記プレキャスト版
の連結部に配置したことを特徴とする。また、上記構成
において、少なくともレール及びその取付部以外のプレ
キャスト版の上面部に重量増加用コンクリートを一体的
に形成して重量を増加せしめたことも特徴とする。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照
しながら説明する。図１および図２において、１は長尺
状のプレキャスト版であって、例えば、長さ４００ｃ
ｍ、幅２００ｃｍ、厚さ（高さ）２４ｃｍ程度のプレキ
ャスト鉄筋コンクリート製平版である。該プレキャスト
版１内には、その長手方向（あるいは線路方向）に複数
本（本実施例では左右各４本）のシース１ａが埋設され
ている。

【０００７】上記プレキャスト版１は、その敷設現場に
おいて長手方向に複数枚（本実施例では７枚）連続して
配列されると共に、上記シース１ａ内にＰＣ鋼材２等の
緊張材が貫挿され、該ＰＣ鋼材２を緊張することにより
複数枚のプレキャスト版１を一体的に連結して長尺状の
フローティングスラブＡを構成し、該フローティングス
ラブＡにはプレストレスが与えられる。上記緊張材とし
ては、ガラス繊維・炭素繊維・炭化ケイ素繊維等から成
る線材など、プレキャスト版１にプレルトレスを与えう
る線材であればいずれでもよい。該フローティングスラ
ブＡが軌道スラブである場合には、その上にレール（図
示せず）が敷設される。

【０００８】上記フローティングスラブＡと基礎構造物
３との間には、バネユニット４が介挿されている。これ
らのバネユニット４は、上記プレキャスト版１の接続部
に配置されている。

【０００９】図３は上記バネユニット４の一実施例を示
すもので、金属製の上板４ａと、金属製の下板４ｂと、
多数の圧縮コイルばね４ｃと、から構成されている。な
お、４ｄは複数の上下方向耐震装置であり、４ｅはＸ方
向およびＹ方向の揺れに対する水平方向耐震装置であ
る。

【００１０】上記金属製の上板４ａは、上記プレキャス
ト版１の下面側に植設したボルト（図示せず）に取付穴
４ｆを嵌挿させて、ナット等の締付具により固定され
る。また、上記金属製の下板４ｂも同様に、上記基礎構
造物３の上側面に植設したボルト（図示せず）に取付穴
４ｇを嵌挿させて、ナット等の締付具により固定され
る。

【００１１】上記圧縮コイルばね４ｃは、上記上板４ａ
と下板４ｂとの間にマトリックス状に配列されている
が、配列方法はこれに限定するものではない。各圧縮コ
イルばね４ｃは、上記上板４ａの下側面に突設されてい
る突起４ｈおよび上記下板４ｂの上面に設けられた取付
板４ｉに突設されている突起４ｊに各々嵌合して、横ズ
レしないように位置決めされている。

【００１２】上記圧縮コイルばね４ｃとしては、例え
ば、ばね定数４１.４６Ｋｇｆ／ｍｍ、直径８ｍｍ、コ
イル平均径２８ｍｍ、内径２０ｍｍ、外径３６ｍｍ、有
効巻数４.５、総巻数６.５、自由時の高さ５７ｍｍ、取
付時の高さ５１.５ｍｍ等のものが、７列×７行の合計
４９個用いられているが、これに限定するものではな
く、要するに、１０Ｈｚ以下の低い固有振動数を効果的
に防振することが可能であればよい。

【００１３】図４は別の実施例を示すもので、フローテ
ィングスラブがスラブ軌道の場合に、レール５及びその
取付部以外のプレキャスト版１の上面部に、重量増加用
コンクリート１′を一体的に形成して、プレキャスト版
すなわちフローティングスラブの総重量を増加せしめ、
上記バネユニット４による防振効果を向上せしめるよう
になっている。

【００１４】上記バネユニット４は、主として複数の圧
縮コイルばね４ｃにより構成されているが、本発明の弾
性体はこれに限定するものではなく、板ばね等の他の形
状のバネ、或いはゴム等のバネ以外の弾性材から構成さ
れるものであってもよい。

【００１５】

【発明の効果】

１）複数枚の長尺状のプレキャスト版を緊張材により長
手方向に一体的に連結して構成したので、在来軌道のレ
ールレベルと施工基面のスペース内での建設が可能とな
った。また、スラブ不連続部が少なくなり、車両走行お
よび軌道（レール、締結装置）の安全性が高くなる。 ２）プレキャスト版をバネを介して基礎構造物上に設置
したので、防振装置自体が水平剛性を有し、従来の桁式
スラブ軌道のようなストッパー突起が不要となり、その
結果、緊張材による複数のプレキャスト版の一体化が可
能となった。 ３）弾性体をプレキャスト版の連結部に配置したので、
弾性体の個数が少なくなるだけでなく、該弾性体による
防振効果も向上する。 ４）レール及びその取付部以外のプレキャスト版の上面
部に重量増加用コンクリートを一体的に形成して重量を
増加せしめたので、弾性体による防振効果が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】ＰＣ鋼線によりプレキャスト版を一体化して構
成されたフローティングスラブの平面図（Ａ）、その側
面図（Ｂ）である。

【図２】プレキャスト版の斜視図（Ａ）、その横断面図
（Ｂ）である。

【図３】バネユニットの平面図（Ａ）、そのイーイ断面
図（Ｂ）である。

【図４】プレキャスト版の別の実施例を示す斜視図であ
る。

【図５】従来のスラブ軌道を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ プレキャスト版 １′重量増加用コンクリート １ａ シース ２ ＰＣ鋼材 ３ 基礎構造物 ４ バネユニット ４ａ 上板 ４ｂ 下板 ４ｃ 圧縮コイルばね ４ｄ 上下方向耐震装置 ４ｅ 水平方向耐震装置 ４ｆ 取付穴 ４ｇ 取付穴 ４ｈ 突起 ４ｉ 取付板 ４ｊ 突起 Ａ フローティングスラブ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千田 吉彦 東京都渋谷区渋谷一丁目16番14号 東急 建設株式会社内 (56)参考文献 特開 平２−272101（ＪＰ，Ａ) 特開 昭48−104207（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−148804（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−1301（ＪＰ，Ａ) 実開 昭52−143110（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) E01B 1/00 E01B 3/40 E01B 37/00 E01C 3/00

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数枚の長尺状のプレキャスト版を緊張
   材により長手方向に一体的に連結すると共に、上記プレ
   キャスト版を弾性体を介して構造物上に設置したプレキ
   ャスト版によるフローティングスラブにおいて、上記弾
   性体を上記プレキャスト版の連結部に配置したことを特
   徴とするプレキャスト版によるフローティングスラブ。
2. 【請求項２】 少なくともレール及びその取付部以外の
   プレキャスト版の上面部に重量増加用コンクリートを一
   体的に形成して重量を増加せしめたことを特徴とする請
   求項１に記載のプレキャスト版によるフローティングス
   ラブ。