JP2959881B2 - 光通信用外部変調器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は光通信用外部変調器に関
し、更に詳しくは、挿入損失が小さいので１つの伝送路
に多数接続することが可能であり、フラットな周波数特
性を有し、高周波変調でも使用可能な光通信用外部変調
器に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から光通信システムに組込まれてい
る変調器のほとんどは、直接、光源を変調させる方式の
ものである。しかしながら、この方式の場合には、光源
として一般に用いられているＬＤなどの強度が変調する
ことに基づいて光源が不安定であり、光信号の伝送距離
は大きく制約を受けるという問題がある。

【０００３】また、この方式は、１伝送路に対し１信号
源（発信源）を基本とするため、複数個の信号源からの
光信号を１つの伝送路に乗せるためには、信号源と伝送
路の間に光結合器を挿入することが必要になる。しかし
ながら、上記した直接変調方式では、光結合器の前記挿
入に伴って生ずる挿入損失は大きい。例えば、この挿入
損失が比較的小さいとされている導波路型光結合器の場
合でも約0.５ｄＢである。そのため、１つの伝送路に結
合できる信号の数は制限される。

【０００４】直接変調方式における上記制約を克服する
ために、最近では、外部変調方式を利用する変調器の開
発が進められている。この外部変調方式は、１つの伝送
路に、時間に対して強度が一定である直流光源を備えて
いて、伝送路の途中に配置されて変調器において通過光
に変調を与える方式であり、光源の不安定さに基づく障
害を排除することが可能である。また、変調器を伝送路
に接続したときの挿入損失は小さく、そのため、伝送路
への多数個の設置が可能であるという利点も備えてい
る。

【０００５】このような外部変調方式の光通信システム
に組込む変調器としては、次のようなものが代表的な例
として知られている。まず、第１の例は、ＬｉＮｂＯ₃
の基板の上に例えばイオン交換によって屈折率大の導波
路パターンを形成し、その導波路の近傍に電圧印加用の
電極を配置したものである。

【０００６】第２の例は、Ｆ．Ｓ．HickernellらがＵＬ
ＴＲＡＳＯＮＩＣ ＳＹＭＰＯＳＩＵＭ，１９８７年，
４９１〜４９３頁で発表したタイプのものである。この
外部変調器は、シングルモード光ファイバーの外周をＣ
ｒ−Ａｕ薄膜から成る下部電極、圧電体であるＺｎＯの
薄膜、更にＣｒ−Ａｕ薄膜から成る上部電極で順次被覆
した構造のものである。

【０００７】第３の例は、Ｄ．Ｂ．Patterson らがOpti
cs Letters, vol.14, NO.4, １９８９年，２４８〜２５
０頁で発表したタイプのものである。この外部変調器
は、石英ガラスから成る基板の一方の面に下部電極、Ｚ
ｎＯ薄膜，上部電極をこの順次で積層し、他方の面に断
面が半円状の溝を形成し、この溝の中にシングルモード
光ファイバーを密着して埋込んだ構造のものである。

【０００８】第４の例は、藤崎らが信学春全大Ｂ−８９
１，１９９０年で発表したタイプのものである。この外
部変調器は、シングルモード光ファイバーの被覆上にＰ
ＺＴ圧電セラミックスを機械的に押しつけた構造のもの
である。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した従
来の外部変調器には、それぞれ、次のような問題があ
る。まず、第１の例の外部変調器は、たしかに高周波特
性に優れているが、しかし、ＬｉＮｂＯ₃ の単結晶は極
めて高価であるため工業的な実用性の面で難点がある。
そして、この外部変調器の場合、挿入損失は２〜４ｄＢ
と大きいので、１つの伝送路に多数設置することが困難
である。

【００１０】第２の例のものは、シングルモード光ファ
イバーの外周曲面に、均一な厚みの電極薄膜やＺｎＯ薄
膜を密着して形成することが困難であるという製造上の
問題がある。更には、シングルモード光ファイバーの外
周において音波が大きく反射し、そのため光ファイバー
の内部で音波の共鳴が起こり、その結果、変調器として
の周波数特性がフラットにならないという特性上の不都
合な問題がある。

【００１１】また、第３の例の外部変調器の場合、石英
ガラスの基板に形成する溝を、ここに密着して埋込むべ
きシングルモード光ファイバーの断面の曲率と正確に一
致させるように加工することは非常に困難である。更に
は、第２の例の場合と同じ理由で、光ファイバーの内部
では共鳴現象が起こり、その変調器をしての周波数特性
がフラットにならない。

【００１２】第４の例のものは、圧電体とシングルモー
ド光ファイバーの間が固定されていないため、圧電体か
ら光ファイバーへの音波の伝達効率が劣り、その結果、
１ＭＨｚ以上の高周波変調に適切に対応できるものとは
いいがたい。本発明は、上記した従来の外部変調器にお
ける問題を解決し、挿入損失が小さいことはもち論のこ
と、特定の共鳴ピークをもたないフラットな周波数特性
を示し、５００ＭＨｚ程度の高周波変調も可能であり、
しかも製造も容易である新規な光通信用外部変調器の提
供を目的をする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、石英ガラスから成る支持基
板の一方の面に、下部電極，圧電体，上部電極がこの順
序で積層され、前記支持基板の他方の面または前記上部
電極の上にシングルモード光ファイバーが配置され、か
つ、前記シングルモード光ファイバーの配置個所の少な
くとも一部分では、前記シングルモード光ファイバー
が、そのクラッドと固有音響インピーダンスが近似する
物質で被覆されていることを特徴とする光通信用外部変
調器が提供される。

【００１４】

【作用】シングルモード光ファイバーは、そのクラッド
と固有音響インピーダンスが近似する物質で被覆されて
いるので、光ファイバーの外周における音波の反射は起
こらなくなる。そのため、光ファイバー内部における共
鳴現象は起こらず、周波数特性はフラットになる。

【００１５】

【実施例】以下に実施例を示す添付図面に基づいて、本
発明の変調器を説明する。図１〜図３は本発明の外部変
調器の第１実施例を示す。図１において、石英ガラスか
ら成る平板状の支持基板１の一方の面１ａには、薄膜状
の下部電極２，薄膜状の圧電体３，更に薄膜状の上部電
極４がこの順序で積層され、下部電極２と上部電極４に
は、圧電体を駆動するための電気信号を導入するリード
５ａ，５ｂがそれぞれ添着されている。

【００１６】下部電極２，上部電極４の材料としては、
格別限定されないが、例えば、Ａｌ，Ｃｒ，Ａｕ，Ｃｕ
をあげることができ、また、圧電体３の材料としては、
例えばＺｎＯ，ＡｌＮ，ＰＶＤＦ（ポリフッ化ビニリデ
ン）などをあげることができる。下部電極２，圧電体
３，上部電極４は、いずれも例えば、スパッタリング法
や真空蒸着法，ＣＶＤ法のような公知の成膜法で形成す
ることができる。

【００１７】支持基板１の他方の面１ｂには、図２、お
よび図１のIII-III 線に沿う断面図である図３で示した
ように、前記した圧電体３の直下の位置にシングルモー
ド光ファイバー６が配置されている。具体的には、支持
基板の他方の面１ｂと上記光ファイバーの外周を構成す
るクラッド６ａとを接触させて配置し、ついで、光ファ
イバ６の所望する長さの部分を、クラッド６ａの固有音
響インピーダンスと近接した固有音響インピーダンスを
有する物質７で被覆して光ファイバー６を支持基板に固
定する。なお、ここでいう固有音響インピーダンスと
は、音波の伝搬媒質の密度と音速との積をいう。

【００１８】その場合、光ファイバー６の外周のうち、
支持基板と接触している部分を除いた全ての外周が上記
物質７で被覆されるようにする。このような物質として
は、上記条件を充足するものであれば何であってもよい
が、例えば、石英ガラスの微粒子を光ファイバー６の外
周に堆積してそれを焼成することによってガラス化した
ものや、高分子化合物に金属粉などを分散させて固有音
響インピーダンスをクラッド６ａの値に近似させたもの
などをあげることができる。

【００１９】この外部変調器においては、直流光源から
シングルモード光ファイバー６に光信号を通過させて、
リード５ａ，５ｂ間に所定周波数の電圧を印加する。圧
電体３から光ファイバー６に周期的な圧力が印加され、
この外力によって、光ファイバー６の内部に屈折率分布
が生じて通過光が変調される。このとき、光ファイバー
６の外周はそのクラッドと固有音響インピーダンスが近
似した物質で被覆されているので、光ファイバー６の外
周では圧電体３から伝播した音波の反射は起こらず前記
物質中に逃散するので、光ファイバーの内部における共
鳴現象は解消する。そのため、フラットな周波数特性が
得られる。

【００２０】例えば、厚み１mmの石英ガラス板１の一方
の面１ａに、Ａｌをスパッタして下部電極２とし、その
上にＺｎＯをスパッタして厚み５μｍの圧電体薄膜３と
し、更にその上にＡｌをスパッタして上部電極を形成し
た。そして石英ガラス板１の他方の面１ｂに、コア径８
μｍのシングルモード光ファイバー６のクラッド６ａを
配置し、その長さ１０mm部分を石英ガラス微粒子の焼成
体の膜７で被覆した。

【００２１】この外部変調器の各光ファイバーの端部を
互いに熱融着することによりこの外部変調器１００個を
直列に接続し、その一端を光源に、他端を受信部に接続
した。光源としては波長1.３３ｎｍの光を発するＬＤを
使用し、このＬＤを一定強度で発光させてシングルモー
ド光ファイバーに入射させた。また、受信部は、シング
ルモード光ファイバーに接続した偏光素子を備え、この
偏光素子を通過したのちＰＤで受光強度の変化を計測で
きるように組み立てた。

【００２２】この光通信システムにおいては、１個の外
部変調器による光の損失は、シングルモード光ファイバ
ー相互の融着による接続損失のみであって、約0.０３ｄ
Ｂであった。したがって、１００個全体での損失は約3.
０ｄＢであった。４００ＭＨｚから５００ＭＨｚの正弦
波を１ＭＨｚの間隔で各外部変調器に変調信号として発
信し、そのときの全ての信号を受信部で計測したとこ
ろ、全てを同時に検出することができた。

【００２３】図４は他の実施例を示す斜視図である。こ
の実施例の変調器の場合は、上部電極４の上にシングル
モード光ファイバー６を配置し、この光ファイバー６の
外周を固有音響インピーダンスが近似した物質７で被覆
して光ファイバーを固定した構造になっている。

【００２４】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
光通信用外部変調器は、挿入損失が0.０１ｄＢ以下と小
さいので１つの伝送路に接続できる個数は従来に比べて
多くなる。また、光ファイバーの外周はそのクラッドと
固有音響インピーダンスが近似する物質で被覆されてい
るので、光ファイバーの外周における音波の反射は起こ
らず光ファイバー内での共鳴現象を解消できフラットな
周波数特性を得ることができる。

【００２５】更に、各電極や圧電体の形成は平板の上に
公知の方法で行うことができるので、製造は容易であ
り、したがって製造コストは安価になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の外部変調器例の一方の面の状態を示す
斜視図である。

【図２】本発明の外部変調器例の他方の面の状態を示す
斜視図である。

【図３】図１のIII-III 線に沿う断面図である。

【図４】本発明の他の例を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ 石英ガラスの支持基板 １ａ 支持基板１の一方の面 １ｂ 支持基板１の他方の面 ２ 下部電極 ３ 圧電体 ４ 上部電極 ５ａ，５ｂ リード ６ シングルモード光ファイバー ７ シングルモード光ファイバー６のクラッドとその固
有音響インピーダンスが近似した物質

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 石英ガラスから成る支持基板の一方の面
   に、下部電極，圧電体，上部電極がこの順序で積層さ
   れ、前記支持基板の他方の面または前記上部電極のうえ
   にシングルモード光ファイバーが配置され、かつ、前記
   シングルモード光ファイバーの配置個所の少なくとも一
   部分では、前記シングルモード光ファイバーが、そのク
   ラッドと固有音響インピーダンスが近似する物質で被覆
   されていることを特徴とする光通信用外部変調器。