JP2942218B2 - 高速先頭車両の連結器カバー - Google Patents

高速先頭車両の連結器カバー

Info

Publication number
JP2942218B2
JP2942218B2 JP9173926A JP17392697A JP2942218B2 JP 2942218 B2 JP2942218 B2 JP 2942218B2 JP 9173926 A JP9173926 A JP 9173926A JP 17392697 A JP17392697 A JP 17392697A JP 2942218 B2 JP2942218 B2 JP 2942218B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cover
plate
frp
coupler
leading vehicle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP9173926A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1120694A (ja
Inventor
舜一 坂東
誠 古川
昌昭 小西
孝一 小椋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kawasaki Motors Ltd
Original Assignee
Kawasaki Jukogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Jukogyo KK filed Critical Kawasaki Jukogyo KK
Priority to JP9173926A priority Critical patent/JP2942218B2/ja
Publication of JPH1120694A publication Critical patent/JPH1120694A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2942218B2 publication Critical patent/JP2942218B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T30/00Transportation of goods or passengers via railways, e.g. energy recovery or reducing air resistance

Landscapes

  • Body Structure For Vehicles (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】請求項の発明は、新幹線など
の高速車両のうち先頭(または後尾。以下同様)の車両
に取り付けられる連結器カバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】新幹線の先頭車両の構体は、図6に例示
されるように金属製のいわゆるセミモノコック構造にな
っている。つまり、アルミ合金等からなる金属製フレー
ム42の外側に、やはりアルミ合金等の金属製外板41
を張り付けることによって構体が構成されている。
【0003】先頭車両の最前部(図6の構体のさらに前
方の部分。後尾車両の最後部についても同様)には、図
3(b)のように連結器9が設けられており、それを覆う
べく連結器カバー(図3では符号10)が取り付けられ
ている。連結器カバーについても、従来は他の構体部分
と同様に金属製セミモノコック構造とされている。すな
わち図4(a)のように、従来の連結器カバー20は、金
属板21の内側に補強のための金属製フレーム22を一
体化することにより形成されている。
【0004】先頭車両の構体や連結器カバーを上記のよ
うに構成するには、金属製フレーム(42など)を先に
組み立ててその外側に金属製外板(41など)を当て、
その外板をハンマーでたたくなどしてフレームに沿わせ
たうえ、溶接によって両者を一体化する。その過程で外
板の表面には凹凸ができているため、パテを塗って凹凸
を平らにし、さらにパテの表面等を滑らかに磨いて仕上
げとする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、車両技術者の間
には、高速先頭車両の構体をFRP(すなわち繊維強化
プラスチック)化しようという提案がある。三次元曲面
を有する先頭車両の構体を従来のように金属製のセミモ
ノコック構造にすると、上記のようなフレームと外板と
の一体化や表面の仕上げにかなりの工数がかかる等の不
都合があるため、その構体をFRPで製作してそれらの
工数を減らそうというのである。なお、複合材を用いた
高速車両についての参考的な従来技術として、特開平5
−345567号公報および特開平7−96833号公
報がある。
【0006】先頭車両構体のFRP化は図3(a)に示さ
れるすべての部分について実現されるのが好ましいが、
とくに連結器カバーの部分については、強度的にFRP
化が容易であるうえにコストメリットも多いため、FR
P化を進める意義が大きい。強度的に実現容易であるの
は、連結器カバーは、図3(b)に示す圧力隔壁5以降の
部分(乗務員等が乗車する部分)の外壁とは違って内部
を密閉するものではないからである。内部を密閉するこ
とがないため、トンネルに入ったとき等にも外側と内側
との間に風圧による圧力差が生じず、したがって面外方
向への剛性が連結器カバーには要求されないのである。
またコストメリットが大きい理由は、先頭車両では、後
方部分と違って連結器カバーが三次元曲面を主体とする
ため、従来どおり金属製のセミモノコック構造とする場
合には上記のように一体化や仕上げが容易でないからで
ある。つまり、連結器カバーのFRP化は製作工数の削
減効果が大きいのである。
【0007】ただし、連結器カバーをFRP化するにあ
たってはつぎのような課題もある。すなわち、 内外間に風圧による圧力差が生じないため強度的に
有利であるとはいえ、十分な強度をもたせていなけれ
ば、カラスやトビなどの鳥が衝突(いわゆる鳥衝突)し
た場合にその連結器カバーが破壊する恐れがある。鳥衝
突は、在来線ではほとんど起きないが新幹線のような高
速車両においてしばしば発生し、しかも、鳥衝突にとも
なう衝撃エネルギーは衝突速度(したがって車両の走行
速度)の上昇とともに著しく増大するため、高速車両に
おいてはそれが強度設定上の重要な要素になる。図3
(b)のような連結器カバー10では、傾斜角度が大きい
前方の部分でとくに衝撃が大きくなる。航空機の場合と
は異なり、車両においては鳥衝突を受けた部分をすぐに
は交換しないため、繰り返し使用に耐える強度が必要で
あるという事情も考慮しなければならない。
【0008】 軽量かつ安価に製造するためには、図
4(b)・(c)のように板31の内側にリブ等の補強部材
32を付けることによりFRP製の連結器カバー30を
構成することも可能であるが、発明者らの実験による
と、そのようなカバー30では板31と補強部材32と
の間(たとえば接合部32a)が剥離する不都合が生じ
る。これは、鳥衝突の際の衝撃がその補強部材32と板
31との境界部分に集中するためと考えられる。連結器
カバーと結合している他の構体において部分補強を不要
にしまたは簡単にするという観点からも、連結器カバー
における衝撃が広く分散するのが好ましい。
【0009】 風圧による内外間の圧力差を受けない
という強度的条件をふまえ、連結器カバーは低コストの
ものにする必要がある。鳥衝突があるだけでなく内外間
の圧力差をも受ける乗務員室等の部分の外壁と同程度の
強度を連結器カバーにもたせると、それのコストが上が
って車両のコストにも響いてしまう。
【0010】各請求項に記載した発明の目的は、先頭車
両の連結器カバーをFRP化するとともに、その連結器
カバーについて耐鳥衝突強度を高めるなど上記〜の
課題を解決することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載した高速
先頭車両の連結器カバーは、主要部分を10mm程度以
上の均一な厚さとした繊維強化プラスチック板(すなわ
ちFRP板)であり、補強のための構造部材を一体化し
ていないものによって構成した(つまり、かかるFRP
板のモノコック構造とした)−ことを第一の特徴とす
る。ここでいう「主要部分」とは、他の構体部分との結
合部とその付近とを除く部分をさす。
【0012】この請求項1の連結器カバーではFRP板
のモノコック構造を採用しており、補強のための構造部
材(図4(b)に示すリブなど)を一体化していないた
め、鳥衝突の際の衝撃力が特定の部材やその付近に集中
することがなく、したがってその部材が剥離したり破損
したりする不都合が生じない。また主要部分の厚さを均
一にしている点でも、この連結器カバーは衝撃力を広く
分散させて受け止めることができる。衝撃力が分散する
と、連結器カバーそのものが破壊しにくいほか、それと
結合されている他の構体に対しても特定の箇所に集中的
に衝撃力が伝達される恐れがないため、当該他の構体を
部分的に補強する等の必要もない。
【0013】またこの連結器カバーは、FRP板の主要
部分の厚さを10mm程度以上に設定しているため、実
用上要求される耐鳥衝突強度を満たす。FRP板は、塑
性変形によって衝撃エネルギーを吸収することができな
いためそのエネルギーを弾性変形の範囲内で吸収する必
要があるが、上記のとおり10mm以上の厚さを有する
この連結器カバーはその条件を満たし、通常は弾性変形
のみで完全に鳥を跳ね返せるのである。なお、衝撃エネ
ルギーを弾性変形範囲内で吸収できない場合、FRP板
は、マトリックスである樹脂と内部の繊維とが剥離を起
こすことによる表面エネルギーの増大によってそのエネ
ルギーを吸収することがある。しかしそれは内部のミク
ロ構造の破壊にほかならないため、一回の鳥衝突によっ
ては見かけ上の損傷がなくても、繰り返して衝撃を受け
ることによりカバーが大きく破壊することになる。主要
部分の厚さを10mm程度以上としたこの連結器カバー
では、そのような破壊も、また一回の鳥衝突による目に
見える破壊も通常は生じない。この連結器カバーにその
ような耐鳥衝突強度があることは、発明者らによる統計
的調査と独自の実験とに基づいてつぎのとおり説明され
る。
【0014】まず、調査によると、地上を走る車両に衝
突する動物の95%は1.25kg以下の鳥である。そ
して実験によると、FRP板のモノコック構造として製
作した連結器カバー(図3(b)のように傾斜したもの)
において、そのような鳥が衝突したことにより破壊(上
記したミクロ構造の破壊を含む)が起こることのない最
小限の厚さは10mm程度であると判明した。つまり、
FRP板からなる請求項1の連結器カバーは、そのFR
Pの種類(マトリックスや繊維の種類等)によらず、厚
さが10mm以上あれば鳥衝突によってはほとんど破壊
することがない。1.25kgを超える大型の鳥などが
衝突したときには破壊する場合も考えられるが、そのよ
うなケースは稀であり、しかもそのようなケースにおい
ても破壊の多くは上記したミクロ構造の破壊であるた
め、カバーを適当な頻度で交換する限りは実用上の支障
がないわけである。この連結器カバーには、金属製のも
のと違って凹むことがないため修理が不要であるという
利点もある。
【0015】そのほか、請求項1のこの連結器カバー
は、低コストで構成することが可能である。10mm程
度かまたはそれを少し上回る程度の厚さしかなく、他の
補強部材を一体化されてもいないFRP板であれば、材
料費が低いため、型を用いて成形するとしてもその製造
コストは高くない。この点は、乗務員室等の外壁などと
は違って連結器カバーには内外間の圧力差がかかること
がなく、したがって面外方向の剛性を確保する目的で厚
さを増やしたり他の材料を積層したりする必要がないこ
とに基づくもので、連結器カバー、さらには車両全体の
コストを抑制する利点をもたらす。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】請求項1の連結器カバーは、上記のFRP
板について、他の構体部分との結合部付近(結合部とそ
の周辺)の厚さを上記主要部分よりも薄くするととも
に、当該構体部分との結合を、厚さ方向に軸体(ボルト
等)が貫くファスナー(いわゆる剪断型ファスナー)に
よって行った−ことを第二の特徴とする。
【0020】他の構体と結合される部分では、連結器カ
バーとその構体との双方によって強度が発揮され、鳥衝
突にともなう衝撃エネルギーもそれらの双方によって吸
収される。したがってその結合部の付近については、こ
請求項1のカバーのように主要部分に比べて厚さが薄
くても強度上の不都合がない。むしろ、結合部付近を薄
くした方が材料費や重量の点で有利になるうえ、その付
近において連結器カバーが弾性変形しやすくなり他の構
体との結合も容易になるという利点がある。
【0021】連結器カバーは、前述したように面外の曲
げに対する剛性を要求されないが、車両の変形にともな
う力(引っ張りやねじり等)が上記の結合部から作用す
る。請求項1のこの連結器カバーは、上記のように結合
部付近を薄くしたうえ剪断型ファスナーを用いることに
よって他の構体部分と結合しているため、その結合部に
おいても引っ張り力等に対し円滑に抗することができ
る。上記のように薄くした部分に剪断型ファスナーを使
用するのが好ましい理由はつぎのとおりである。
【0022】FRP板には金属板ほどの変形能がないた
め、ファスナーにおける軸体(ボルト等)を通すための
穴は現物合わせにて加工する(つまり事前に穴を設けて
おくのでなく、結合する相手方の構体と実際に合わせた
うえ組立て現場で加工する)のが一般である。しかし、
FRP板が難加工性であるために現物合わせで大径の穴
を設けることは難しく、その直径はせいぜい10mmで
ある。穴の径が制限されると、使用する軸体としても径
の小さなものを使用せざるを得ないが、軸体が細いにも
かかわらず連結器カバーなど結合される板が厚ければ、
その軸体が曲がったり傾いたりしてファスナーの機能が
不十分になりやすい。それに対し、請求項1の連結器カ
バーのように結合部を薄くしたうえで剪断型ファスナー
を使用すると、その軸体が曲がる等の不都合は生じにく
いため、軸体の数を適当に定める限りファスナーは十分
な強度を発揮する。
【0023】なお、ファスナーの軸体から伝わる剪断力
によって連結器カバー(のとくに結合部付近)が破損し
にくいようにするためには、たとえば、連結器カバーを
構成するFRP板のうちに、車両の前後方向と概ね45
°をなして交差するような向きに繊維を配するとよい。
軸体から連結器カバーに伝わる剪断力の方向はほとんど
が車両の前後方向またはそれと直角であるため、上記の
ように繊維が配されておれば、その繊維に沿って剪断力
が連結器カバーのうちに広く分散しやすく、特定の箇所
には集中し難いからである。請求項2に記載の連結器カ
バーは、上記FRP板の強化材をガラス繊維としたこと
を特徴とする。 ガラス繊維を強化材とするFRP(つま
りGFRP)はフレキシブルであって弾性変形し得る範
囲が大きいため、他の強化材を有するFRPに比べて、
吸収できる衝撃エネルギーが大きい。たとえば炭素繊維
を強化材とするFRP(つまりCFRP)と比べた場
合、弾性率や引張強さの点では劣るものの最大衝撃吸収
エネルギーははるかに大きい。したがって、鳥衝突によ
り衝撃力を受ける部材の材料としてGFRPは好まし
く、請求項2の連結器カバーは、かなり厚さを薄くして
も、前述のような破壊を起こすことなく弾性変形の範囲
内で当該衝撃力を吸収することができる。また、GFR
Pがフレキシブルであるため、製作誤差等に基づいて他
の構体部分との間に多少の段差等があった場合にも、こ
の連結器カバーは無理なく弾性変形をしてその構体部分
との結合を可能にする。 そのほか、GFRPが比較的安
価であることにより、請求項2の連結器は低コストで製
造され車両のコストを抑制する利点がある。なお、最近
におけるGFRPの市場価格はCFRPの3分の1前後
である。
【0024】請求項3の連結器カバーは、上記のFRP
板のマトリックスとして、100〜130℃の硬化温度
を有するエポキシ樹脂を使用していることを特徴とす
る。
【0025】そのような高い硬化温度を有するエポキシ
樹脂は、ビニルやポリエチレン等と重合していわゆる高
分子ブレンドをされたものであり、固化したのちは、比
較的軟らかいが靭性の高い樹脂となるものである(逆に
硬化温度の低い樹脂は、固化後は固くて脆い性質を示
す)。つまり上記の樹脂は弾性変形し得る範囲が大きい
ため、それをマトリックスとするFRP板は、他の樹脂
をマトリックスとするものに比べて吸収できる衝撃エネ
ルギーが大きく、鳥衝突によって衝撃力を受けるものと
して好ましい。そのため請求項3の連結器カバーは、厚
さが薄くとも、破壊を起こすことなく弾性変形の範囲内
で大きな衝撃力を吸収することが可能である。またフレ
キシブルであるため、他の構体部分との結合に関して
も、この連結器カバーは無理なく弾性変形をしてその結
合を容易にする。
【0026】請求項4の連結器カバーは、上記FRP板
を、オートクレーブ成型法によって硬化させることを特
徴とする。
【0027】プラスチック部品をオートクレーブ内で硬
化させるオートクレーブ成型法は、加熱の際に圧力をも
加えるため、当該部品の内部に気泡を発生させ難い。加
えた圧力によって、繊維間などに付着内在するガスが気
泡になることを抑制するからである。FRP板の内部に
もし気泡があると、それを起点にして損傷が進展するこ
とがあるが、上記のとおりオートクレーブ成型法によっ
てFRP板を硬化させるこの請求項4の連結器カバーで
は、FRP板の内部に気泡が存在し難いため、鳥衝突等
を受けても簡単には破壊しないという利点を有する。な
お、オートクレーブ成型法は、FRP板の両面から型
(加圧型)を当てて加熱する方法よりは、型の必要数が
少ない分だけ低コストでもある。
【0028】なお、請求項1の連結器カバーについてF
RP板の主要部分の厚さを10mm程度以上としたが、
最小限必要な厚さはFRP板の種類(配合)等に応じて
定めることができる。たとえば、以上の記載にしたがっ
てガラス繊維を強化材とし、硬化温度が100〜130
℃のエポキシ樹脂をマトリックスとして、オートクレー
ブ成型法により硬化させたFRP板を使用する場合に
は、主要部分は最小で8mmあれば足りる。
【0029】
【発明の実施の形態】図1〜図3に、発明の実施につい
ての一形態を紹介する。図1は連結器カバー10の斜視
図、図2は、図1(および図3)におけるII−II断面図
であって構体3等との結合部付近を示す図である。そし
て図3は、その連結器カバー10を取り付けた鉄道車両
であって、300km/hに近い最高速度設定をした新
幹線の先頭車両1を全体的に示す斜視図(図3(a))お
よび側面図(同(b))である。
【0030】図3に示す先頭車両1においては、乗務員
室を覆う位置にある構体3をプラスチックの複合材によ
って構成している。図2に示すように、その構体3の主
要部は、カーボンファイバーを強化材とする内外2層の
高弾性FRP(CFRP)スキン3a・3cの内側に、
耐熱構造用発泡材であるポリメタクリルイミド発泡材の
コア3bを積層した、サンドイッチ構造の複合材(全厚
さは約50mm)である。ただし他の部材との結合部に
ついては図2のようにコア3bを含めず、スキン3a・
3cと同一材料である高弾性CFRPのプレート3dの
みとしている。このような複合材からなる構体3は、主
としてスキン3a・3cの作用で面内の曲げや引っ張り
・剪断等に対する強度を有し、またコア3b等の作用を
合わせることにより面外の曲げ等に対する剛性を備えて
いる。したがってこの構体3は、他のフレーム類を一体
化することなく先頭車両1の構体として必要な強度を発
揮するものであり、トンネルに入ったときの内外間の圧
力差を繰り返し受けても、また外面に鳥衝突を受けても
破壊することがない。
【0031】複合材製のこの構体3は、先頭車両1に取
り付けられたのちはその内側から加えられるべき作業が
ほとんどないため、車両1の組立て工程のうちほとんど
最後の段階で車両1に付けることができる。つまり、内
側のフレームに対して金属板を溶接したり内側から金属
板を叩いたりする必要があるために組立て工程の初期に
組み付けられねばならない図6の構体などとは違って、
この構体3は、車両1に各種の機器・電装部品等を搭載
したのちに取り付ければよい。そのため、複合材製の構
体3を使用する車両1においては、それら機器・部品等
の搭載作業がきわめて行いやすくなる。
【0032】構体3に対し図3のように後部および下部
につながる構体4については、ほとんどの部分が平板ま
たは単純な二次曲面を主体として構成されるため、この
先頭車両1においても図6のものと同様なアルミ合金製
のセミモノコック構造を採用している。平板や二次曲面
の部分は、フレームを組み立てたのちに金属板を沿わせ
て一体化することが比較的簡単であり、その後の仕上げ
にも多くは工数を要しないからである。
【0033】先頭車両1のうち図3に示す連結器カバー
10は、先端のキャップ2とともにFRP板によるモノ
コック構造としている。すなわち、図1のように、ほぼ
均一な厚さを有していて補強部材を含まない単層のFR
P板によってそのカバー10を構成している。FRP板
によって構成したのは、そのほとんどの部分が三次元曲
面であるため、構体3におけるのと同様、フレームと金
属板とを一体化して仕上げを行うよりは成形用の型を準
備するとしてもFRP板による方が製造コストが低いか
らである。補強部材を一切含まないモノコック構造とし
たのは、補強部材を取り付けた場合、鳥衝突を受けた際
の衝撃によって当該部材が剥離等を起こし、かえって耐
久性が低いという発明者らの実験結果に基づく。また、
構体3よりも簡単な単層のFRP板としたのは、鳥衝突
を受けるとはいえ、圧力隔壁5よりも前方にあって内外
間に圧力差が生じないために面外方向の剛性が要求され
ないからである。なお、取付け状態でのこの連結器カバ
ー10の傾斜面の角度は、図3(b)のように車両1の前
後方向に対して平均約15°であるが、前端の部分で最
大になり約40°をなす。
【0034】連結器カバー10を構成するそのFRP板
は、硬化温度が100〜130℃のエポキシ樹脂のうち
にガラス繊維を強化材として含むもの(GFRP)であ
り、周縁の部分を除くほとんどの部分(図2に示す主要
部10a)は厚さを10mmとしている。そのようなエ
ポキシ樹脂をマトリックスとするGFRPは靭性が高く
フレキシブルであって衝撃吸収特性に優れるため、その
程度の厚さであっても鳥衝突による衝撃を弾性変形の範
囲内で吸収することが可能なのである。そのカバー10
の成形は、図1に示す外側表面に沿う形状をもつ成形型
(図示せず)の上に、FRP板の素材であるプリプレグ
(プリポリマーをガラス繊維に含浸させたもの)を積層
し、それをオートクレーブ(図示せず)に入れて加熱・
加圧することにより行う。
【0035】連結器カバー10の周縁部付近は、他の部
材と結合することを考慮して厚みを薄くしている。すな
わち図2のように、構体3と(構体4やキャップ2とに
対する部分も同様)重ねて結合される結合部10cの厚
さは6mmとし、上記の主要部10aの厚さ(10m
m)を、幅100mm程度の中間部10bにおいてその
結合部10cの厚さ(6mm)にまで徐々に減少させて
いる。
【0036】そのように薄くした結合部10cと構体3
(構体4やキャップ2についても同様)とは、図2に示
すファスナー11により結合している。ファスナー11
は、カバー10(の結合部10c)と構体3(のプレー
ト3d)とを、厚さ方向に貫くボルトによって結合する
もので、ボルトにかかる剪断力を介してカバー10・構
体3間の力の伝達をなす剪断型のファスナーである。図
1のごとくカバー10の周縁付近に設ける穴10dは、
組立ての直前に相手方部材の穴との間で位置を合わせた
うえ現場加工する関係上、加工困難でないようφ10m
m以下とされるが、そのことによってボルトの太さが制
限されるため、上記のように結合部10cを薄くしたの
は合理的である。もし結合部10cが厚いにもかかわら
ず剪断型ファスナー11のボルトが細いならば、ボルト
が曲がったりして十分な力が伝達されないからである。
ファスナー11を設けた間隔(ピッチ)は、ボルトが細
いことを考慮して100mm前後と狭くしている。
【0037】なお、連結器カバー10が結合される構体
3のプレート3dは、下方へ屈曲させた先端の部分をボ
ルト6により圧力隔壁5の上端と結合している。構体3
と圧力隔壁5とは、このように結合したうえで車両1に
組み付けるのである。そのようにして車両1に取り付け
た構体3(および圧力隔壁5)の内側には前述のように
すでに各種の機器・部品類が搭載されていて、カバー1
0を結合する際にも、また連結器9(図3(b))を使用
する等の目的でそのカバー10を取り外す際にも構体3
等の内側からの操作は一切できないため、ファスナー1
1としてはいわゆるブラインドファスナーを使用してい
る。ブラインドファスナーであるから、ファスナー11
におけるネジ(雌ネジ)の固定やボルトの付け外しは、
すべてカバー10の外側から行うことができる。
【0038】図5は、連結器カバー10を単層のFRP
板により構成するうえで拠り所とした実験結果の一部で
ある。すなわち当該実験では、図3等に示す連結器カバ
ー10と同等の面積をもつ矩形状の板であってカバー1
0と同じ厚さ10mmの同一材質である単層の(つまり
補強部材を含まない)FRP板(図中の符号○)と、図
4(b)のように補強部材を付けた厚さ9mmおよび6m
mのFRP板(符号◇)、および図4(a)のように補強
用のアルミフレームを付けた厚さ2mmのアルミ板(符
号□)のそれぞれ(いずれも面積や形状は同じ)に対し
て、模擬的な鳥衝突を実施した。実験用の各板の傾斜角
度は、車両1のカバー10における実際の傾斜角度の平
均値に合わせて10〜25°とし、鳥に模した1.25
kgのゼラチンを300km/hの速さで各板の中央に
ぶつけた。
【0039】図5に示されるように、補強部材のない厚
さ10mmのFRP板の場合には、その傾斜角度をやや
大きめ(25°)にしていても上記ゼラチンの衝突によ
って損傷の生じることがなかった(図中、白塗りの符号
は無損傷のものを示す)。それに対し、他の板の場合に
はそれぞれ何らかの損傷が発生した(黒塗りの符号は損
傷のあったものを示す)。つまり、補強部材つきのFR
P板では、補強部材の一部が板の本体から剥離を起こ
し、フレームつきのアルミ板では、その板がフレームと
ともに大きく凹む結果となった。
【0040】
【発明の効果】請求項1に記載した高速先頭車両の連結
器カバーには、つぎのような効果がある。すなわち、 1) 鳥衝突の際の衝撃力が広く分散して特定の部材等に
集中することがないので、連結器カバーそのものが破壊
しにくいほか、それと結合される他の構体を部分的に補
強する必要性が低い。
【0041】2) 10mm程度以上の厚さのFRP板が
鳥衝突による衝撃エネルギーを弾性変形の範囲内で吸収
するため、実用上必要な耐鳥衝突強度が満たされる。
【0042】3) 他の補強部材を一体化されてはいない
FRP板が材料であるため、低コストで構成される。
【0043】
【0044】
【0045】また 4) 結合部付近を薄くしたうえで剪断型ファスナーを用
いることにより他の構体部分と結合されるため、そのフ
ァスナーが十分な強度を発揮し、結合された連結器カバ
ーと他の構体との間に十分な力が伝達される。請求項2
に記載の連結器カバーは、さらにつぎの効果も有する。
つまり、 5) ガラス繊維を強化材とするFRP板を使用するた
め、弾性変形し得る範囲が大きく、したがって、厚さが
薄くても鳥衝突の衝撃エネルギーを円滑に吸収でき、破
壊を起こしにくい。フレキシブルであるために、他の構
体部分との結合を無理なく行えるという効果もある。 6) 他の強化材を有するFRP板を使用する場合と比べ
て低コストで構成される。
【0046】請求項3の連結器カバーはさらに、 7) 硬化温度の高いエポキシ樹脂をマトリックスとする
FRP板を使用するため、吸収できる衝撃エネルギーが
大きい。したがって、厚さが薄くとも、破壊を起こすこ
となく弾性変形の範囲内で、鳥衝突による衝撃エネルギ
ーを円滑に吸収することができる。フレキシブルである
ために、他の構体部分との結合を無理なく行えるという
効果もある。
【0047】請求項4の連結器カバーは、上記のほか、 8) その成型法に基づいてFRP板の内部に気泡が存在
し難いため、耐鳥衝突強度など機械的性質にすぐれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施について一形態を示すもので、連結
器カバー10の斜視図である。
【図2】図1および図3におけるII−II断面図であっ
て、連結器カバー10と構体3等との結合部付近を示
す。
【図3】連結器カバー10を取り付けた先頭車両1を全
体的に示す斜視図(図3(a))および側面図(同(b))
である。
【図4】従来の金属製の連結器カバー20を示す斜視図
(図4(a))、FRP化するにあたって一般に計画され
る連結器カバー30を示す斜視図(同(b))およびその
c−c断面図(同(c))である。
【図5】模擬的に行った鳥衝突実験についての結果を示
すグラフである。
【図6】高速先頭車両の一般的な構体を示す斜視図であ
る。
【符号の説明】
1 先頭車両 3・4 構体 10 連結器カバー 10a 主要部分 11 ファスナー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小椋 孝一 岐阜県各務原市川崎町1番地 川崎重工 業株式会社 岐阜工場内 (56)参考文献 特開 平2−220965(JP,A) 特開 平9−76904(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B61G 7/00 B61D 17/02 - 17/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高速先頭車両の連結器を覆うカバーであ
    って、 主要部分に10mm程度以上の均一な厚さを有してい
    て、補強のための構造部材を一体化されていない繊維強
    化プラスチック板によってなり、 上記の繊維強化プラスチック板が、他の構体部分との結
    合部付近では上記の主要部分よりも薄くなったうえ、厚
    さ方向に軸体が貫くファスナーによって当該構体部分と
    の結合がなされている ことを特徴とする高速先頭車両の
    連結器カバー。
  2. 【請求項2】 上記の繊維強化プラスチック板が、ガラ
    ス繊維を強化材としていることを特徴とする請求項1に
    記載の高速先頭車両の連結器カバー。
  3. 【請求項3】 上記の繊維強化プラスチック板が、10
    0〜130℃の硬化温度を有するエポキシ樹脂をマトリ
    ックスとしていることを特徴とする請求項1または2に
    記載の高速先頭車両の連結器カバー。
  4. 【請求項4】 上記の繊維強化プラスチック板が、オー
    トクレーブ成型法により硬化したものであることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の高速先頭車両の
    連結器カバー。
JP9173926A 1997-06-30 1997-06-30 高速先頭車両の連結器カバー Expired - Fee Related JP2942218B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9173926A JP2942218B2 (ja) 1997-06-30 1997-06-30 高速先頭車両の連結器カバー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9173926A JP2942218B2 (ja) 1997-06-30 1997-06-30 高速先頭車両の連結器カバー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1120694A JPH1120694A (ja) 1999-01-26
JP2942218B2 true JP2942218B2 (ja) 1999-08-30

Family

ID=15969644

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9173926A Expired - Fee Related JP2942218B2 (ja) 1997-06-30 1997-06-30 高速先頭車両の連結器カバー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2942218B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023284224A1 (zh) * 2021-07-13 2023-01-19 中车唐山机车车辆有限公司 一种吸能外罩、车厢及轨道车辆

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2334533B1 (de) * 2008-09-15 2014-06-18 Voith Patent GmbH Fahrzeugkopf zur befestigung an der stirnseite eines spurgebundenen fahrzeuges, insbesondere eines schienenfahrzeuges
EP2394879B1 (de) * 2010-06-08 2016-12-14 Voith Patent GmbH Vorrichtung zum Verschwenken einer Bugklappe sowie Bugklappenmodul
DE102012005451A1 (de) * 2012-03-20 2013-09-26 Airbus Operations Gmbh Druckrumpf eines Luftfahrzeuges, mit einer Rumpfschale und einem hierin angeordneten Druckschott
CN112977497B (zh) * 2019-12-17 2022-11-22 中车唐山机车车辆有限公司 轨道车辆车头罩、车头及轨道车辆
WO2022257050A1 (zh) * 2021-06-09 2022-12-15 深圳市大疆创新科技有限公司 多旋翼无人飞行器的结构部件、桨保护支架及多旋翼无人飞行器

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023284224A1 (zh) * 2021-07-13 2023-01-19 中车唐山机车车辆有限公司 一种吸能外罩、车厢及轨道车辆

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1120694A (ja) 1999-01-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN106696875B (zh) 用于车辆的复合材料保险杠梁和复合材料溃缩盒的连接与加固
US6207244B1 (en) Structural element and process for its production
KR100779414B1 (ko) 골프 클럽 헤드 및 골프 클럽
US6406088B1 (en) Crash rail for a vehicle
EP1968850B2 (en) Single piece fuselage barrel
JP6729762B1 (ja) 自動車用衝突エネルギー吸収部品およびその製造方法
WO2006025316A1 (ja) 自動車用ボンネット
JP2001526601A (ja) ラミネートの製造方法およびその方法によって得られるラミネート
JP2942218B2 (ja) 高速先頭車両の連結器カバー
WO2010144007A1 (en) Nano-reinforced radius filler for an aircraft structure and a method of producing an aircraft structure comprising such filler
US20100282904A1 (en) Aircraft having a forward-facing section that deflects elastically under impact loads
JP2944967B2 (ja) 高速車両の外壁構造および高速車両の外壁の製造方法
JP5228518B2 (ja) 風車翼ならびにその成形金型および製造方法
CN111619504A (zh) 一种汽车复合材料行人保护梁
JP4462978B2 (ja) 自動車のエネルギー吸収構造
JP2920370B2 (ja) 高速車両の先頭部の耐鳥衝突構造
JPH08197668A (ja) 繊維強化樹脂の積層構造
JP3241640B2 (ja) 車両用構体における内装品支持構造の取付け方法
US20230114819A1 (en) Frp reinforcing member, method method for producing the same, frp molded body, and frp connection structure
JP2001018654A (ja) 自動車ドアモジュール用基盤
US10603869B2 (en) Laminated structure and method for manufacturing the same
US20220169097A1 (en) Composite vehicle components formed of sheet molding compound reinforced with continuous fibers
CN215245490U (zh) 多旋翼无人飞行器的桨保护支架及多旋翼无人飞行器
CN212447812U (zh) 玻璃钢车头外罩
JP2841064B1 (ja) 車両用複合材構体

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees