JP2904544B2 - 熱転写用画像受容シート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、昇華染料の熱転写画像を受容する画像受容
シートに関するものである。更に詳しく述べるならば本
発明は、昇華性分散染料によるフルカラー画像を転写・
染着する熱転写方式プリンター用画像受容シートに関す
るものである。

本発明の画像受容シートは、画像が高濃度、鮮明で、
転写が高感度に行なわれ、サーマルプリンターにおける
使用適性が良好で、かつ耐熱性などの保存性の優れたも
のである。

〔従来の技術・発明が解決しようとする課題〕

昨今、熱転写方式の高画質のカラーハードコピー、特
に染料転写型プリンターの開発が急速に進行している。
染料転写型プリンターにおいては、３原色（イエロー、
マゼンタ、シアン）の昇華性染料を含むインクを、サー
マルヘッドに付与する加熱エネルギーを連続的に制御し
ながら、これを加熱し、それぞれの色の染料を転写量を
変化させながら画像受容シートに転写させるものであっ
て、濃度階調のフルカラー画像の転写が可能になってい
る。

染料熱転写用の画像受容シートは、インクシートから
転写された染料に対し、染着されやすい重合体を主成分
として含む染着受像層を有している。

画像受容シート上に高品位の画像を高速で形成するた
め、染料の転写速度と染着量が大きく、熱による融着な
どが少なく、プリント後の再昇華が少なく、保存性のよ
い染料染着用画像受容層が研究されているが、未だ満足
なものは得られていない。

従来、このような染着用重合体として、各種のポリエ
ステル樹脂が利用されている。例えば、転写速度および
／あるいは染着量が大きい重合体を得るために、ガラス
転移点を低下させることが提案されている。すなわち、
エチレングリコールをジオール成分として用い、かつテ
レフタル酸をジカルボン酸成分として用いて得られる重
縮合生成物、すなわちポリエチレンテレフタレートの、
ガラス転移点を低下させるために、各種のジオールや、
ジカルボン酸を共重合する方法が知られている。この場
合ガラス転移点を低下させると、転写開始温度が低下
し、このため、転写速度が大きくなるものと考えられて
いる。しかし、画像受容層を高密度とするためには、伝
熱速度を大きくし、かつ加熱温度を上げることが必要で
ある。ガラス転移点の低い重合体では、高温における画
像受容層のフィルム強度が低下し、このためプリント工
程中に融着などをおこして走行性を低下させ、その結果
として熱転写システムの感度はむしろ低下していた。
又、本来の意味での染着濃度は、重合体のガラス転移点
を低くすることにより上昇するという根拠に乏しかっ
た。

融着を軽減し、かつ保存性の優れた染料染着用重合体
は、却ってそのガラス転移点を上昇させることにより得
られるが、しかし転写開始温度が上昇し、従って同一の
加熱条件ではやはり感度が低下することになるという欠
点がある。

本発明は、従来技術の上記欠点を解消し、画像のプリ
ント感度と濃度が高く、プリント工程における融着が少
なく、熱、光に対する保存性が優れた熱転写用画像受容
シートを提供しようとするものである。

〔課題を解決するための手段〕

本発明の熱転写用画像受容シートは、シート状支持体
と、その少なくとも１面上に形成され、かつ熱転写され
た染料画像を染着固定し得る重合体を主成分として含む
画像受容層とを有し、前記画像受容層中の主成分重合体
が、140℃において10⁶Pa・Ｓ以上の溶融粘度を示し、か
つ、160℃において、10⁵Pa・Ｓ以上の溶融粘度を示し、
その分子内にエステル結合単位を含む重合体、およびそ
の架橋体から選ばれた少なくとも１員からなることを特
徴とするものである。

本発明に用いられる染料染着用重合体は、10,000以上
の数平均分子量を有することが好ましく、またそのガラ
ス転移点が50℃以上であることが好ましい。

また染料染着用重合体が架橋体である場合、未架橋重
合体分子１モル当たり、１モル当量以上の、好ましく
は、３モル当量〜20モル当量の架橋性官能基が含まれて
いる。

染料染着性重合体の溶融粘度を低下させることによっ
て、その感度や染着量を上げようとする方法では、得ら
れる画像受容層に融着などによる走行性トラブルや、保
存性の低下などの好ましくない結果を生じる。本発明者
らの研究によれば、画像受容層の感度や染着は、染料染
着性重合体の溶融粘度が低いほど良好になるというわけ
ではなく、粘度とは独立に、染料染着性重合体の染料拡
散性や、染料溶解性が重要である。このような知見か
ら、本発明者らは、染料溶解性を大きくし、かつ溶融粘
度を高くした重合体が染着性重合体として適していると
判断し、このような重合体を開発した。すなわち分子中
にエステル基を含む重合体として、ポリエステル樹脂、
酢酸ビニル共重合体、又はアクリル共重合体などを用い
ることにより染着容量が大きく、また溶融粘度が大き
く、融着などのトラブルがなく、かつ保存性の良好な画
像受容シートを得ることが出来た。

本発明に有用な染料染着性重合体として、例えばテレ
フタル酸などの芳香族ジカルボン酸と、ビスフェノール
Ａのエチレンオキサイド付加物〔一般式（Ｉ）〕などの
芳香族ジオールとの重縮合によって得られるポリエステ
ル樹脂がある。この場合、ジオール成分としては、脂肪
族グリコール、例えばプロピレングリコール、1,3−プ
ロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタン
ジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコ
ール、ジプロピレングリコールなどや1,4−シクロヘキ
サンジメタノールのような脂環族グリコールを上記芳香
族ジオールと併用することが出来る。

染料染着性ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分とし
て、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、オルソ
フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が用いられ
る。また芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸とし
て、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン
酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボ
ン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環
族ジカルボン酸を前記芳香族ジカルボン酸と併用しても
よい。

一般に染料染着性重合体の溶融粘度は、同一の組成で
あればその分子量によって左右される。また分子量は、
ジオールとジカルボン酸の比率、純度、副反応、反応条
件による縮合反応の進度などによって、左右される。最
も容易な分子量制御の方法として、脱水縮合反応の温度
と時間を変えることが挙げられる。

本発明に有用な染料染着性重合体に、他の樹脂、例え
ば他のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アク
リル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の溶剤可溶の合成樹脂をブ
レンドして画像受容層を形成することもできる。本発明
の画像受容層には、その主成分として上記の特性の重合
体が70重量％以上含まれていることが好ましい。

本発明の染着層に添加する架橋剤はポリエステルなど
の樹脂に架橋反応して、樹脂を３次元化し、染着性被膜
の耐熱性を改善する。例えばトリレンジイソシアネート
などの２〜３官能のイソシアネート化合物が好ましく用
いられる。通常、架橋剤量は多過ぎると、樹脂が硬化し
過ぎ、架橋性が下がり、感度が低下するので、その添加
量は、未架橋重合体の高分子鎖１個当たり、即ち１モル
当たり、好ましくは、架橋性官能基が１個以上、即ち１
モル当量以上、より好ましくは、３モル当量以上、より
一層好ましくは、３モル当量〜20モル当量である。架橋
性官能基の含有量が１モル当量以下では一般に架橋効果
が充分でない。分子鎖１個あたり架橋性官能基１個と
は、数平均分子量から求められる重合体分子１モル当た
り、架橋性官能基を１モル当量添加することで、例えば
２官能性の架橋剤は、0.5モル当量添加することにな
り、これが100％反応した場合には、重合体の高分子鎖
１個当たりの架橋点は、１個となる。

本発明に用いられる染料染着用重合体は、140℃にい
て10⁶Pa・Ｓ以上の溶融粘度を有し、160℃において10⁵P
a・Ｓ以上の溶融粘度を有して、染料染着用重合体の溶
融粘度が上記の値未満であると、得られる画像受容層
に、印画操作の際にインクリボンと融着しやすくなると
か、或はプリントの保存中に画像中の染料が再転写しや
すくなるなどの不都合が生じる。

本発明の画像受容層には、印画時にインクリボンとの
融着を防止することを目的として、0.1〜10重量％の離
型剤例えばシリコーンを配合することが、好ましい。離
型剤含有量が10％を越えると画像受容層とシート状支持
体との接着性が損なわれる場合がある。また、その含有
量が0.1％未満では熱融着防止効果が充分に発揮されな
い。

本発明の画像受容層は、置換フェノール、テルペンな
どの低分子有機化合物を、酸化防止、紫外線吸収、増感
等の目的で含有していてもよい。又、白色度、不透明度
の向上の為に白色顔料を、色調を調節するために蛍光染
料を、またその他の着色用顔料、染料などを、画像受容
層中に添加してもよい。

上記白色顔料、および紫外線吸収剤などの添加剤は、
画像受容層の主成分である染着性重合体と混合して塗工
するのが便利であるが、紫外線吸収剤層を、独立の被覆
層として画像受容層の上、又は下に設けてもよい。

一般に画像受容層の厚さは、一般に１〜20μｍであ
り、好ましくは２〜８μｍである。これが薄過ぎると画
像の濃度が低下し、又、塗工精度の制約から画像が不均
一となる。また、それが厚過ぎると効果が飽和し不経済
で、又、画像受容層のフィルム強度が低下する恐れがあ
る。

本発明の画像受容シートのプリンター内での走行中
に、静電気が発生し、重送やジャムなどのトラブルを発
生することを防ぐために、シートの少なくともいずれか
１面に帯電防止処理を施すことが通常である。帯電防止
剤を、画像受容層内に含有させ、又は独立の被覆層とし
て、画像受容層上に被覆してもよい。帯電防止剤として
はカチオン系親水性重合体がよく用いられている。

本発明に用いられるシート状支持体としては、用途に
よって上質紙、コート紙、ポリオレフィンと無機顔料を
主成分として含む１ないし２軸延伸フィルム、又はそれ
からなる合成紙など各種プラスチックフィルム、または
それを複合させた積層シートなどを用いることが出来
る。複合シートの例として、ポリエチレン層を上質紙、
またはコート紙の両面にラミネートした積層シートがあ
る。本発明に用いられるシート状支持体の厚さは、一般
に20〜250μｍであり、その坪量は20〜250g/m²であるこ
とが好ましい。

〔実施例〕

本発明を実施例によって更に説明する。

合成例１ ポリエステル樹脂−（１）の合成 ジカルボン酸成分組成 テレフタル酸 60モル％ （99.7g） イソフタル酸 40モル％ （66.5g） ジオール成分組成 エチレングリコール 20モル％ （12.4g） ヘオペンチルグリコール 10モル％ （11.6g） 芳香族ジオール （ビスフェノールＡに対し、エチレンオキサイドが4.
0モル付加したもの、商標：ユニオール、DA400日本油脂
（株）製） 70モル％（280.0g） 上記カルボン酸成分とジオール成分とを、微量の酢酸
カルシウム及び３酸化アンチモンからなる触媒ととも
に、窒素雰囲気中で加熱し、150℃まで昇温した後に、
この温度を１時間保持して、反応させ、更に0.1mmHg以
下の真空に保ちながら、260℃で４時間重縮合反応させ
た。得られた重合生成物から未反応のエチレングリコー
ルを除去して、ポリエステル樹脂−（１）を得た。この
樹脂の数平均分子量（GPCによる）は23,000であった。

合成例２ ポリエステル樹脂−（２）の合成 ジカルボン酸成分組成 合成例１に同じ ジオール成分組成 エチレングリコール 40モル％ （24.8g） ネオペンチルグリコール 20モル％ （23.1g） ジオール；（合成例１に同じ） 40モル％（160.0g） 上記ジカルボン酸成分とジオール成分とを、微量の酢
酸カルシウム及び３酸化アンチモンの触媒とともに、窒
素雰囲気中で加熱し、150℃まで昇温した後に、この温
度を１時間保持して、反応させ、更に0.1mmHg以下の真
空に保ちながら、240℃で２時間重縮合反応させた。得
られた重合生成物から未反応のエチレングリコールを除
去して、ポリエステル樹脂−（２）を得た。この樹脂の
数平均分子量（GPCによる）は16,000であった。

ポリエステル樹脂−（３）…市販品 商標：バイロン290 数平均分子量:24,000 東洋紡（株）製 ポリエステル樹脂−（４）…市販品 商標:1051 数平均分子量:15,000 荒川化学（株）製 樹脂−（１），（２），（３）および（４）の溶融粘
度をメルトフローテスターを用いて測定した。その結果
を第１表に示す。

実施例−１ 坪量64g/m²の上質紙からなるシート状芯材の両面に各
厚さ30μｍのポリエチレンフィルムをラミネートしたも
のをシート状支持体として用いた。この支持体の片面上
に、下記組成の塗料−１を固形分塗布量が5g/m²になる
ように塗布し、乾燥して画像受容層を形成し、染料熱転
写用画像受容シートを製造した。

塗料−１ 成 分 重 量 ポリエステル樹脂−（１） 100g 架橋剤 （３官能イソシアネート、商標：コロネートＬ、 日本ポリウレタン工業（株）製） 2g シリコーン樹脂 （商標:SH3476、トーレシリコーン（株）製） 10g トルエン 200g メチルエチルケトン （架橋性基／ポリエステルモル比＝4.2） 200g このようにして得られた染料熱転写用画像受容シート
を、市販の昇華転写ビデオプリンター（ソニー（株）
製、UP−5000）に供して、カラーテストパターンをプリ
ントした。得られたプリントの最高濃度、プリント時の
インクリボンとの耐熱融着性、プリント画像を60℃、48
時間で保存後の退色性についてテストした。

プリント画像の最高濃度をマクベス濃度計で測定し
た。また、画像受容シートの耐熱融着性は、ビデオプリ
ンターで階調パターンをプリントしたとき、インクリボ
ンと画像受容シートの融着の有無を官能検査し、評価し
た。プリント画像の耐熱保存性は、60℃、48時間で保存
した後の画像の退色性を観察評価した。その結果を第２
表に示す。

実施例−２ 実施例１と同一の操作を行なった。但し塗料−１の代
わりに下記組成の塗料−２を用いた。

塗料−２ 成 分 重 量 ポリエステル樹脂−（３） 100g 架橋剤 （２官能イソシアネート、 トリレンジイソシアネート） 10g トルエン 200g メチルエチルケトン 200g テスト結果を第２表に示す。

実施例−３ 実施例１と同一の操作を行なった。但し塗料−１の代
わりに下記組成の塗料−３を用いた。

塗料−３ 成 分 重 量 ポリエステル樹脂−（１） 100g 架橋剤 （３官能イソシアネート、商標：コロネートＬ、 日本ポリウレタン工業（株）製） 2g シリコーン樹脂 （商標:SH3476、トーレシリコーン（株）製） 3g トルエン 200g メチルエチルケトン 200g テスト結果を第２表に示す。

比較例１ 実施例１と同一の支持体上に、下記組成の塗料−４
を、固形分塗布量が5g/m²になるように塗工、乾燥し、
画像受容層を形成し、受容シートを得た。

塗料−４ 成 分 重 量 ポリエステル樹脂−（２） 100g シリコーン樹脂 （商標:SH3476、トーレシリコーン（株）製） 3g トルエン 200g メチルエチルケトン 200g テスト結果を第２表に示す。

比較例２ 実施例１と同一の基材上に、下記組成の塗料−５を固
形分塗布量が5g/m²になるように塗工、乾燥し、画像受
容層を形成して、画像受容シートを得た。

塗料−５ 成 分 重 量 ポリエステル樹脂−（４） 100g 架橋剤 （３官能イソシアネート、商標：コロネートＬ、 日本ポリウレタン工業（株）製） 5g シリコーン樹脂 （商標:SH3476、トーレシリコーン（株）製） 3g トルエン 200g メチルエチルケトン 200g テスト結果を第２表に示す。

〔発明の効果〕 本発明の熱転写用画像受容シートは、特定の溶融粘度
を有する特定重合体を含む画像受容層を有し、それによ
って、転写した染料による画像の感度と発色濃度が高
く、鮮やかであり、かつ保存性が優れているという特長
を有し、実用性の高いものである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−105689（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−215398（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−34392（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B41M 5/38 - 5/40

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シート状支持体と、その少なくとも１面上
   に形成され、かつ熱転写された染料画像を染着固定し得
   る重合体を主成分として含む画像受容層とを有し、 前記画像受容層中の主成分重合体が、140℃において10⁶
   Pa・Ｓ以上の溶融粘度を示し、かつ160℃において、10⁵
   Pa・Ｓ以上の溶融粘度を示し、その分子内にエステル結
   合単位を含む重合体およびその架橋体から選ばれた少な
   くとも１員からなる、ことを特徴とする熱転写用画像受
   容シート。