JP2896204B2 - 制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法 - Google Patents

制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法

Info

Publication number
JP2896204B2
JP2896204B2 JP18103590A JP18103590A JP2896204B2 JP 2896204 B2 JP2896204 B2 JP 2896204B2 JP 18103590 A JP18103590 A JP 18103590A JP 18103590 A JP18103590 A JP 18103590A JP 2896204 B2 JP2896204 B2 JP 2896204B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
polyester
fiber
yarn
carbon atoms
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP18103590A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH03206120A (ja
Inventor
隆 秋田
真一 庄田
武志 中矢
正敏 指山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP18103590A priority Critical patent/JP2896204B2/ja
Publication of JPH03206120A publication Critical patent/JPH03206120A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2896204B2 publication Critical patent/JP2896204B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、制電性能に優れたポリエステル繊維及びそ
の製造方法に係わり、更に詳しくは、制電性能及びその
永続性に優れ、かつ製糸安定性及び糸物性も良好である
ポリエステル繊維及びその製造方法に関する。
[従来の技術] ポリエステル繊維は、その優れた特性から衣料用のみ
ならず産業資材用分野に至るまで広く用いられている
が、電気抵抗が高く静電気を帯び易いという問題を有し
ている。これは衣料分野においては、特に冬期にみられ
る脱着時の放電現象、身体へのまとわりつき等の不快感
を与える原因となっている。
この静電気を帯び易い欠点を改善すべく、これまでに
種々の帯電防止剤をポリエステルに添加配合あるいは共
重合する試みがなされている。しかしながら、実用的な
制電性能を得るためには比較的多量の帯電防止剤を用い
る必要があり、その結果、製糸安定性あるいは熱安定性
が低下してしまう等の問題があった。たとえば、特公昭
45−17547号公報、特公昭46−7461号公報には、ポリエ
ステルに制電剤としてブロックポリエーテルアミドを配
合する方法が提案されているが、この方法では得られる
ポリエステル繊維が黄変したり、あるいは制電剤の耐熱
性不良に起因し、製糸性が劣る等の問題点があった。ま
た、これまでの技術では、得られた原糸を減量、加工、
染色等の後加工工程を通過させた後に制電性能が低下し
たり、あるいは繰り返し洗濯を行うと制電性能が低下す
る等の問題も有する。
また、従来の制電性ポリエステル繊維は、通常、紡糸
速度1000ないし2000m/分で巻取った未延伸糸を、延伸工
程を経て、必要に応じて熱処理を施して延伸糸を得てい
る。しかし、かかる方法で得られる延伸糸は、ポリエス
テル繊維中における制電剤が繊維軸方向に筋状に連続的
に存在する構造を取り難く、その結果、充分な制電性能
を得るための制電剤の配合量が多くなり、ひいては製糸
安定性の低下、熱安定性の低下等の問題をひき起こす。
更に、ポリアルキレングリコールなどの様に比較的ガ
ラス転移点の低い化合物を含む制電剤を用いる場合に
は、制電剤を配合することにより未延伸糸の構造変化速
度が促進されるので、得られた延伸糸に染色斑等が発生
しやすい等の欠点を有する。
[発明が解決しようとする課題] 本発明の目的は、かかる従来技術の問題点を克服し、
優れた制電性能とその永続性を有するポリエステル繊維
を提供することにある。
また本発明の目的は、紡糸工程のみで安定して延伸糸
を製造することのできる、制電性能に優れたポリエステ
ル繊維の製造方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明は、 (1)80モル%以上がエチレンテレフタレート単位で構
成されるポリエステル繊維中に、下記の一般式(I) R−SO3M ……(I) (式中、Rは炭素数3ないし30のアルキル基、または炭
素数7ないし40のアリール基、もしくはアルキルアリー
ル基、Mはアルカリ金属を示す。) で示される有機スルホン酸金属塩を10重量%より多く40
重量%以下含有する平均分子量1,000以上のポリアルキ
レングリコールが繊維軸方向に筋状に独立相を形成し、
かつ繊維全体に占める割合が0.1ないし10重量%である
ことを特徴とする制電性能に優れたポリエステル繊維、
及び (2)一般式(I) R−SO3M ……(I) (式中、Rは炭素数3ないし30のアルキル基、または炭
素数7ないし40のアリール基、もしくはアルキルアリー
ル基、Mはアルカリ金属を示す。) で示される有機スルホン酸金属塩を10重量%より多く40
重量%以下含有する平均分子量1,000以上のポリアルキ
レングリコール(A)及び80モル%以上がエチレンテレ
フタレート単位で構成されるポリエステル(B)を各々
溶融させた後、(B)中に含有される(A)の量が0.1
ないし10重量%となるように(A),(B)各溶融流を
合流させて複合流をなし、その後直ちに静止型混合撹拌
素子を通過させて紡糸口金より紡出し、紡糸された糸条
を、ポリエステルのガラス転移点以下の温度に一旦冷却
させ、引き続き該糸状をガラス転移温度以上融解温度未
満の加熱帯域中を走行させて延伸し、3,000m/分以上の
速度で巻取ることを特徴とする制電性能に優れたポリエ
ステル繊維の製造方法にある。
本発明における80モル%以上がエチレンテレフタレー
ト単位で構成されるポリエステルとは、テレフタル酸ま
たはそのエステル形成性誘導体を酸成分とし、エチレン
グリコールをアルコール成分とするエチレンテレフタレ
ート単位が80モル%以上を占めるポリエステルであっ
て、これに20モル%を超えない範囲で従来公知の酸成分
あるいはアルコール成分が共重合されていてもよい。
共重合されうる酸成分の具体例としては、イソフタル
酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン
酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セ
バシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカ
ルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体、及び、p
−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸等
のオキシカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導
体、及び、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナ
トリウムスルホイソフタル酸、1,8−ジカルボキシナフ
タレン−3−スルホン酸ナトリウム及びこれらのジメチ
ルエステル、ビス−β−ヒドロキシエチルエステル等の
エステル形成性誘導体、あるいはこれら化合物のカリウ
ム塩またはリチウム塩等があげられる。
また、共重合されうるアルコール成分の具体例として
は、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の低
級アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタ
ノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(β−オ
キシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールAのビスグリ
コールエーテル等があげられる。
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲で、ト
リメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸、及
びペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グ
リセリン等のポリオール、あるいはモノハイドリックポ
リアルキレンオキシド、フェニル酢酸等の重合停止剤を
用いてもよい。
かかるポリエステルは、従来公知の任意の方法により
合成できる。
更に、本発明を実施するポリエステルの合成にあたっ
ては、公知の触媒、抗酸化剤、着色防止剤、エーテル結
合副生防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、易滑剤、離型
剤、その他の配合剤を必要に応じて適宜使用することが
できる。
本発明においては、有機スルホン酸金属塩を10重量%
より多く40重量%以下含有するポリアルキレングリコー
ルを制電剤として用いるものであるが、用いるポリアル
キレングリコールとしては、平均分子量が1,000以上で
あることが必要である。平均分子量が1,000未満である
と、十分な制電効果を発揮し難いばかりでなく、制電効
果の永続性に劣ってしまう。ポリアルキレングリコール
の平均分子量は1,000以上であれば、いかに高分子量の
ものであってもよく、例えば平均分子量1,000,000ない
し2,000,000程度のもの、あるいはこれ以上のものであ
っても好ましく使用できる。
ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエ
チレングリコール(ポリエチレンオキサイド)があげら
れるが、これ以外に、たとえばエチレンオキサイドとプ
ロピレンオキサイドの共重合体等であってもよい。
本発明におけるポリアルキレングリコールは、単独で
用いてもよいが、熱安定性を向上させる目的で、公知の
安定剤、抗酸化剤等を少量添加配合して用いることは好
ましいことである。
ポリアルキレングリコールに添加配合する安定剤とし
ては、ヒンダードフェノール系化合物及びチオエーテル
系化合物等があげられる。これらは各々個別に添加して
もよいが、より耐熱性を向上させるために同時添加する
ことが好ましい。
これら化合物の添加量は、ポリアルキレングリコール
に対し、2ないし10重量%とすることが好ましい。
また、本発明において用いるポリアルキレングリコー
ルには、前記一般式(1)で示される有機スルホン酸金
属塩を10重量%より多く40重量%以下含有させる。配合
量が60重量%を超えると、もはや顕著な制電性能の向上
効果は認められない。
かかる有機スルホン酸金属塩の具体例としては、炭素
数3ないし30のアルキルスルホン酸のナトリウム塩もし
くはカリウム塩、リチウム塩、またはトルエンスルホン
酸、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩もしく
はカリウム塩、リチウム塩、あるいはこれらの混合物等
があげられる。ポリエステルに配合する有機スルホン酸
金属塩含有ポリアルキレングリコールの量は0.1ないし1
0重量%、好ましくは0.5ないし8%であって、この配合
量が0.1重量%未満であると、得られるポリエステル繊
維の制電性能が十分でなく、また、10重量%を超えると
溶融紡糸時の安定性が低下するばかりでなく、得られた
繊維の強伸度等の物性が低下するので好ましくない。
本発明のポリエステル繊維は、前記一般式(1)で示
される有機スルホン酸金属塩を10重量%より多く40重量
%以下含有する平均分子量1,000以上のポリアルキレン
グリコール(A)及び80モル%以上がエチレンテレフタ
レート単位で構成されるポリエステル(B)を各々個別
に溶融させた後、(B)中に含有される(A)の量が0.
1ないし10重量%となるように(A)の溶融流と(B)
の溶融流とを合流させて複合流をなし、その後直ちに静
止型混合撹拌素子を通過させて紡糸口金より紡出し、紡
糸された糸条を、ポリエステルのガラス転移点以下の温
度に一旦冷却させ、引続き糸条をガラス転移温度以上融
解温度未満の加熱帯域中に走行させて延伸し、3,000m/
分以上の速度で巻取ることにより製造されるが、(A)
の溶融流と(B)の溶融流とを合流させて複合流となす
場所は、紡糸機のエクストルーダーを出た直後から、紡
糸口金の直前までであれば、どの部位であっても差支え
ない。具体的には、エクストルーダーから紡糸ヘッドま
でのポリマーライン中あるいは計量ポンプ通過直後及び
紡糸口金パック内等があげられる。
本発明においては、(A)の溶融流と(B)の溶融流
を合流させて複合流となした直後に静止型混合撹拌素子
を通過させる。
本発明において用いられる静止型混合撹拌素子は、駆
動部分を全く持たない混合装置であり、流路内に静置さ
れる流路変換素子により、流体の流れを分割、反転、変
換させる作用を繰り返して、流体同士の混合を行うもの
である。
流れの分割、反転、転換を何段も繰り返すことによっ
て、流れの分割数は指数関数的に増加してゆき、混練度
を高めてゆく。静止型混合撹拌素子の1段あたりの分割
数をD、総段数をnとすると、この時の流れの総分割数
SはS=Dnで表わすことができる。例えば、1段あたり
2分割の素子を7段使用した場合、S=27=128分割と
なる。本発明を実施する静止型混合撹拌素子による総分
割数は、製糸安定性の点から、128以上にすることが好
ましい。
この様な作用をする静止型混合撹拌素子であれば、公
知のものがいずれも本発明に適用可能である。
本発明において、紡糸口金より溶融吐出されたポリエ
ステル紡出糸条を一旦冷却域でガラス転移点以下に冷却
することは、得られた繊維の染色性を優れたものとし、
糸物性を実用上充分なものとするために不可欠である。
また、冷却後引続いて行なう加熱帯域での延伸はガラス
転移点以上融点以下の温度で行なうことが好ましく、ガ
ラス転移点未満の温度では糸物性が実用に耐え難い著し
く劣った繊維となり、逆に融点を超える温度では、加熱
帯域中での単繊維間の融着や糸切れを招き、操業上の問
題となるばかりでなく、得られた繊維を製織または製編
して得られた布帛の風合が著しく劣ったものとなる。加
熱帯域の温度範囲はさらに望ましくは、120ないし230℃
であり、この範囲の温度での加熱帯域の走行による熱処
理を施せば、得られた繊維の糸物性は実用充分なもので
あり、布帛とした場合の風合も良好である。
加熱帯域の形成に用いる装置としては、糸条と接触し
ない間接加熱型が好ましく、また糸条の出入口部の開口
面積をできる限り小さくした装置が好ましい。即ち、糸
条が高速で走行するため、加熱面との接触に起因する毛
羽、糸斑の発生しない間接加熱がよく、また、糸条に随
伴する高速気流に起因する温度斑、熱効率低下を防ぐた
めに装置の開口部は最小とする必要がある。
また、加熱方法としては、空気等気体を予め加熱して
装置へ供給する方法、あるいは、走行する糸条の周囲に
設置された加熱ヒーターにて直接雰囲気を加熱する方法
等、その手段は選ばず、何であってもよい。
この加熱帯域は、二分割以上に分割されていて、各々
異なる温度雰囲気下にあるものであってもよい。
加熱帯域を通過した糸条は、適当な油剤を付与した
後、引取りローラーにより一定速度で引取られ、捲取機
によって捲取られる。この場合の捲取速度は3000m/分以
上であることが好ましく、3000m/分未満の捲取速度では
得られた繊維の染色性が劣り、また糸物性は実用に耐え
難い著しく劣ったものとなる。さらに望ましくは捲取速
度が3500m/分以上であれば、得られた繊維の染色性は非
常に優れ、糸物性は実用上充分なものとなる。
引取ローラーを介して糸条を捲取るにあたっては、二
つの引取ローラー間に熱処理装置を設け、オーバーフィ
ード下で加熱処理を行うことにより、糸条の応力を緩和
させることが好ましい。また、この熱処理装置前または
後に、流体交絡処理装置、いわゆるインターレース装置
を隣接して設け糸条の緩和率を増大させることもでき
る。
本発明によれば、80モル%以上がエチレンテレフタレ
ート単位で構成されるポリエステル繊維中に、前記一般
式(I)で示される有機カルボン酸金属塩を10重量%よ
り多く40重量%以下含有する平均分子量1,000以上のポ
リアルキレングリコール、すなわち制電剤が、繊維軸方
向に筋状に独立相を形成し、かつ繊維全体に占める割合
が0.1ないし10重量%で存在する。
制電剤が繊維方向に長く筋状に独立相を成形して存在
することは次の点において重要である。
(1)少量の制電剤の使用で優れた制電効果が達成され
る。
(2)減量・染色等の後加工工程、あるいは製品の繰り
返し洗濯処理等を行った後でも制電効果の持続性に優れ
る。
(3)制電剤含有量が少なく、しかも制電剤は繊維軸方
向に長く筋状に独立相を形成して存在しているので、任
意の繊維横断面における構造の均一性に優れ、その結
果、ポリエステル本来の特性を損うことなく、強伸度そ
の他の繊維物性に優れる。
ポリアルキレングリコールが独立相として観察し難い
程度にまで均一に分散しているものや、繊維軸方向に配
向しておらずに粒子状に分散しているのは制電効果が十
分でない。繊維軸方向の筋状の独立相形成に関しては、
筋の長さが長ければ長いほど好ましく、さらには実質的
に繊維軸方向に連続的に存在していることが最も好まし
い。
以上のように、制電剤を繊維軸方向に長く筋状に独立
相を形成して存在させることが、本発明における重要な
技術的ポイントであるが、これは、前述のごとく、ポリ
エステルと制電剤の2つの溶融流を各々独立させて静止
型混合撹拌素子直前まで導き、さらに、紡出後は一旦冷
却させた後、加熱帯域中を走行させることからなる直接
紡糸延伸法を用いることにより達成される。
また、かかる方法を用いることは前記(1)ないし
(3)の効果ばかりでなく、次の点においても極めて有
利な製造方法である。
(4)融点及び耐熱温度が比較的低いポリアルキレング
リコールのごとき制電剤を、混合紡出直前まで、ポリエ
ステル溶融体とは独立に温度制御できるので、熱劣化、
酸化劣化等を極力抑制することが出来、得られるポリエ
ステル繊維糸条の黄ばみ等の着色問題を避けることが出
来る。
(5)ポリエステルと制電剤が溶融状態で接している時
間が短いので、ポリエステル自身の変性や、溶融粘性の
低下、あるいは物性の低下が極めて少ない。
(6)直接紡糸延伸法により製造するので、ポリアルキ
レングリコールの様なガラス転移点の低い物質を添加配
合した場合にありがちな、未延伸糸の経時変化がなく、
染色斑等の極めて少ない均一な延伸糸が得られる。
かくして得られる繊維は、必要に応じて、熱処理また
は賦形を行って加工糸等にしたり、アルカリ減量加工や
染色加工を施す等、従来公知の加工をすべて適用するこ
とができる。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例中の各特性値は下記の方法により測定し
たものである。
極限粘度: ポリマーをフェノール/テトラクロルエタン(50/50
重量比)混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計により25
℃にて測定した値である。
制電性能: 得られた原糸を次の条件 経糸:ポリエチレンテレフタレート糸条 (50デニール/18フィラメント) 緯糸:本実施例により得られた糸条 (75デニール/36フィラメント) 経糸密度:40本/cm 緯糸密度:31本/cm の下に製織した後、JIS L 1094(1988年)参考法であ
る摩擦帯電放電曲線測定法に従って制電性能の評価を実
施した。
用いた装置はカネボウエンジニアリング株式会社製の
摩擦帯電圧測定装置EST−3であり、測定は、温度20±
1℃、相対湿度30±2%の状態の試験室中で実施した。
試料の洗濯処理、摩擦布の湯洗い、試料及び摩擦布の調
整等はJIS L 1094(1988年)に従った。摩擦布には毛を
用いた。
各々の試料につき、各5回ずつ測定して得られた摩擦
帯電放電曲線から、30秒後の帯電圧V30、60秒後の減衰
率D60、半減期T1/2を各々5回の平均値として求め、こ
の操作をさらに各試料につき5回ずつ実施し、最終的
な、30秒後の帯電圧の平均値▲▼、60秒後の減衰
率の平均値▲▼、半減期の平均値▲▼を
求めた。尚、帯電圧の単位はボルト(V)であり、符号
はマイナス(−)である。
透過型電子顕微鏡観察: 繊維をオスミウム酸水溶液にて染色した後、メチルメ
タクリレート/ブチルメタクリレート(70/30)混合物
中に包理し、繊維軸方向の超薄切片を作成し、日本電子
株式会社製JEM 100CX−2透過型電子顕微鏡により、繊
維中のポリエチレングリコールの分散状態を観察した。
実施例1 計量ポンプ付溶融注入装置を有する紡糸機を用い、溶
融注入装置には、アルキルスルホン酸ナトリウム(アル
キル基の平均鎖長C14〜C15)14重量%、及びヒンダード
フェノール系酸化防止剤としてテトラキス[メチレン
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシン
ナメート)]メタン8重量%、チオエーテル系酸化防止
剤としてテトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)
プロピオネート]メタン8重量%を配合した平均分子量
20,000のポリエチレングリコールを供給し、150℃で溶
融すると共に、これらの混合溶融物を紡糸機本体ポリマ
ーラインに計量ポンプを経て定量注入した。
他方、紡糸機本体押出機へは、極限粘度0.72のポリエ
チレンテレフタレートチップ(艶消し剤としてポリエチ
レンテレフタレートに対し酸化チタン0.5重量%含有)
を供給し、290℃で押出した。
ポリエチレングリコール単独成分とポリエチレンテレ
フタレートの混合比が重量比で3:97となるよう、溶融注
入装置の計量ポンプを調節し、両者をポリマーライン中
で合流させた後、この複合流を直ちに、1段当り2分割
の素子を18段有する静止型混合撹拌素子を通過させ、孔
径0.25mmの円形紡糸孔を36個有する紡糸口金を通して、
285℃にて紡出した。吐出糸条を冷却空気にて冷却固化
した後、160℃に設定された円筒型間接加熱熱処理装置
中を走行させ、引続いて、油剤を付与、さらに、引取ロ
ーラー間に設けた流体交絡処理装置、170℃に設定され
た熱処理装置を0.5%オーバーフィード条件下で通過さ
せ、4,000m/分の捲取り速度で捲取り、75デニール/36フ
ィラメントの延伸糸を得た。
得られた糸条の強伸度及び布帛に製織後の制電性能評
価結果を第1表に表示した。尚、該繊維を透過型電子顕
微鏡により観察した結果、ポリアルキレングリコールが
繊維軸方向に沿って、筋状に良好な独立相を形成して存
在することが確認された。
実施例2ないし3 ポリエチレングリコール単独成分とポリエチレンテレ
フタレートの混合比が重量比1.5:98.5,6:94及び15:85
(比較例1)となるよう、両者の混合比を変更した以外
は実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示した。
実施例4 混合溶融物中のアルキルスルホン酸ナトリウムの配合
量を40重量%に変更した以外は実施例1と同様に実施し
た。結果を第1表に示した。
実施例5 混合溶融物中のポリエチレングリコールの平均分子量
を2,000及び600(比較例2)に変更した以外は実施例1
と同様に実施した。結果を第1表に示した。
実施例6 溶融注入装置の代わりに押出機を用い、この押出機
に、ポリエチレングリコールの分子量を1,700,000ない
し2,200,000のものに変更した以外は実施例1と同じ組
成の混合物を供給し、240℃にて溶融後、計量ポンプを
経て紡糸機本体のポリマーラインに定量注入した。
その他は実施例1と同様に実施した。結果を第1表に
示した。
実施例7 極限粘度0.72のポリエチレンテレフタレートチップ
を、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2モル%共重
合した極限粘度0.58のポリエチレンテレフタレート共重
合体チップに変更した以外は実施例1と同様に実施し
た。結果を第1表に示した。
実施例8 混合溶融物中にアルキルスルホン酸ナトリウムを配合
せずに、また、極限粘度0.72のポリエチレンテレフタレ
ートチップを、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2
モル%共重合した極限粘度0.58のポリエチレンテレフタ
レート共重合体チップに変更した以外は、実施例1と同
様に実施した。結果を第1表に示した。
実施例9 極限粘度0.72のポリエチレンテレフタレートチップ
を、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2モル%、及
びアジピン酸を5モル%共重合した極限粘度0.61のポリ
エチレンテレフタレート共重合体チップに変更し、ま
た、紡糸温度を280℃に変更した以外は、実施例1と同
様に実施した。結果を第1表に示した。
実施例10 混合溶融物中にアルキルスルホン酸ナトリウムを配合
せずに、また、極限粘度0.72のポリエチレンテレフタレ
ートチップを、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2
モル%、及びアジピン酸を5モル%共重合した極限粘度
0.61のポリエチレンテレフタレート共重合体チップに変
更し、紡糸温度を280℃に変更した以外は、実施例1と
同様に実施した。結果を第1表に示した。
比較例3ないし5 ポリエチレングリコールを添加せずに、ポリエチレン
テレフタレート、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を
2モル%共重合したポリエチレンテレフタレート共重合
体、及び、5−ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%
とアジピン酸5モル%を共重合したポリエチレンテレフ
タレート共重合体を各々単独で紡糸した以外は、実施例
1と同様に実施した。ただし、実施例5における紡糸温
度は280℃とした。結果を第1表に示した。
[発明の効果] 本発明は、前述したように、少量の制電剤の使用で優
れた制電効果を有するポリエステル繊維を提供すること
ができ、本発明によれば、減量加工・染色等の後加工工
程、あるいは製品の繰り返し洗濯処理等を施した後でも
制電効果の永続性に優れていると同時に、繊維物性及び
染色特性にも優れたポリエステル繊維を紡糸工程のみで
製造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 指山 正敏 愛知県豊橋市牛川通4丁目1番地の2 三菱レイヨン株式会社豊橋事業所内 (56)参考文献 特開 昭49−41632(JP,A) 特開 昭50−107215(JP,A) 特開 昭61−115931(JP,A) 特開 昭62−162014(JP,A) 特開 昭62−162015(JP,A) 特公 昭45−1932(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 6/92 307 - 308 D01F 6/62 301 - 303

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】80モル%以上がエチレンテレフタレート単
    位で構成されるポリエステル繊維中に、一般式(1) R−SO3M ・・・・・(1) (式中、Rは、炭素数3ないし30のアルキル基または炭
    素数7ないし40のアリール基、Mは、アルカリ金属を示
    す。) で示される有機スルホン酸金属塩を10重量%より多く40
    重量%以下含有する平均分子量1000以上のポリアルキレ
    ングリコールが筋状の独立相を形成し、かつ繊維全体に
    占める割合が1.0ないし10重量%であることを特徴とす
    る制電性に優れたポリエステル繊維。
  2. 【請求項2】下記一般式(1) R−SO3M ・・・・・(1) (式中、Rは、炭素数3ないし30のアルキル基または炭
    素数7ないし40のアリール基、Mは、アルカリ金属を示
    す。) で示される有機スルホン酸金属塩を10重量%より多く40
    重量%以下含有する平均分子量1000以上のポリアルキレ
    ングリコール(A)、及び80モル%以上がエチレンテレ
    フタレート単位で構成されるポリエステル(B)を各々
    溶融させた後、(B)中に含有される(A)の量が0.1
    ないし10重量%となるように(A),(B)の各溶融流
    を合流させて複合流をなし、その後直ちに静止型混合撹
    拌素子を通過させて紡糸口金より紡出し、紡出された糸
    条を、ポリエステルのガラス転移点以下の温度に一旦冷
    却させ、引き続き該糸条をガラス転移温度以上融解温度
    未満の加熱帯域を走行させ延伸し、3000m/分以上の速度
    で巻取ることを特徴とする制電性能に優れたポリエステ
    ル繊維の製造方法。
JP18103590A 1989-10-20 1990-07-09 制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法 Expired - Fee Related JP2896204B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18103590A JP2896204B2 (ja) 1989-10-20 1990-07-09 制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1-271526 1989-10-20
JP27152689 1989-10-20
JP18103590A JP2896204B2 (ja) 1989-10-20 1990-07-09 制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH03206120A JPH03206120A (ja) 1991-09-09
JP2896204B2 true JP2896204B2 (ja) 1999-05-31

Family

ID=26500364

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP18103590A Expired - Fee Related JP2896204B2 (ja) 1989-10-20 1990-07-09 制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2896204B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5026041B2 (ja) * 2006-09-29 2012-09-12 Kbセーレン株式会社 ポリエステル複合繊維

Also Published As

Publication number Publication date
JPH03206120A (ja) 1991-09-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4600743A (en) Antistatic fiber containing polyoxyalkylene glycol
US4617235A (en) Antistatic synthetic fibers
EP2679709B1 (en) Cationic-dyeable polyester fiber and conjugated fiber
JP5254708B2 (ja) 異形異繊度混繊糸
US4357390A (en) Antistatic polyester fibers
JP2896204B2 (ja) 制電性能に優れたポリエステル繊維及びその製造方法
JP2809748B2 (ja) ポリエステル繊維の製造法
JP2852920B2 (ja) 制電性ポリエステル繊維
JPH05311514A (ja) ポリエステル繊維及びその製造方法
JP3293704B2 (ja) ポリエステル繊維及びその製造方法
JPH08260343A (ja) 中空ポリエステル繊維及びその製造方法
JP2772926B2 (ja) 制電性ポリエステル繊維の製造方法
JP3008355B2 (ja) 制電性ポリエステル繊維
JP2844334B2 (ja) 制電性ポリエステル繊維
JP2865846B2 (ja) 制電性ポリエステル繊維
JP3279529B2 (ja) 優れた制電性能を有する割繊型複合糸
JPS6155215A (ja) 制電性ポリエステル繊維
JPH0214014A (ja) 細繊度ポリエステル繊維の製造方法
JP2772925B2 (ja) 制電性ポリエステル繊維の製造方法
JP2691855B2 (ja) ポリエステル繊維及びその製造方法
JPH08260344A (ja) フィブリル化ポリエステル繊維及びその製造方法
JPH048540B2 (ja)
JPH01272862A (ja) 風合良好なカチオン可染ポリエステル繊維及びその製造方法
JPH1037021A (ja) 改質ポリエステル繊維及びその製造方法
JPH11279883A (ja) ポリエステル複合糸

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees