JP2803314B2 - アルミナ‐ジルコニア複合粉末および焼結体の製造方法 - Google Patents

アルミナ‐ジルコニア複合粉末および焼結体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、高強度,高靭性かつ高硬度を有するアルミ
ナ−ジルコニア複合焼結体の製造方法およびその原料と
なる粉末の製造方法に関するものである。
(従来の技術) 従来からアルミナは、優れた耐熱・耐磨耗セラミック
スとして利用されている。このアルミナセラミックスの
硬度は、ビッカース硬度で2000kg/mm2前後と高い特性を
示しているものの、その強度は通常40kg/mm2前後、とく
に優れたものでも80kg/mm2程度であり、また破壊靭性値
は3MN/m3/2程度と非常に脆いため、構造材料としての応
用範囲を狭いものにしていた。
また、近年開発された正方晶からなるジルコニアセラ
ミックスは、破壊時に準安定である正方晶ジルコニア粒
子が単斜晶に転移することにより高強度および高靭性が
達成される。その特性の代表的なは、イットリアを3モ
ル%添加した正方晶ジルコニアセラミックスであり、強
度120kg/mm2、破壊靭性6MN/m3/2前後の値を示す。しか
し、このジルコニアセラミックスの硬度はビッカース硬
度で1250kg/mm2程度であり、耐摩耗用構造セラミックス
として使用するには不十分である。
そこで、このジルコニア焼結体の高強度および高靭性
とアルミナの高硬度とを組み合わせる試みがなされた。
これまでの技術は、ジルコニア粉末とアルミナ粉末とを
機械的に混合したり、水溶性のジルコニウム塩とアルミ
ニウム塩との水溶液から共沈法等により合成した粉末を
用いて焼結したものであった。その特性としては、イッ
トリアを3モル%添加した正方晶ジルコニアにアルミナ
を28体積%添加した複合体において、強度240kg/mm2
いう特性が知られている。この焼結体は、従来のセラミ
ックスでは考えられないほどの高強度を有しているもの
の、アルミナの含有量が少ないため、その硬度は低くビ
ッカース硬度で約1450kg/mm2程度と予想され、耐摩耗材
として十分な硬度を有しているとは言えない。また、他
の例では、イットリアを2モル%添加した正方晶ジルコ
ニアにアルミナを78体積%添加した複合体において、強
度120kg/mm2という値をホットプレス法を用いて得てい
るが知られている。これらは、アルミナを78体積%含有
しているため、硬度はビッカース硬度で1800kg/mm2ある
ことが予想されるが、強度及び靭性おいて充分とは言え
ない。
以上は、酸化イットリウムを安定化剤として使用する
ものであるが、安定化剤として酸化セリウムを使用した
場合は、この酸化セリウムによって生じる正方晶ジルコ
ニアが応力によって非常に転移を生じやすく、強度より
も高靭性を示すことが知られている。このような高強度
かつ高靭性の正方晶ジルコニアに、さらにその硬度をも
向上させるためにアルミナを添加した複合体では、アル
ミナの添加量を増加してゆくにつれその硬度は増大して
ゆくものの、強度および靭性は低下してゆく。
このように従来技術では、原料混合粉末を粉末混合法
や共沈法で合成するため、ジルコニア粒子とアルミナ粒
子の粒子径が比較的近似した大きさを有しており、アル
ミナ粒子径及びジルコニア粒子径を独立に変化させるこ
とは困難であり、あるいは、個々の粒子をごく均一な状
態にまで混合することが困難である。そして、このよう
な複合粉末を使用してえられた複合焼結体は、そのの微
細構造において、アルミナ粒子及びジルコニア粒子の分
散性が劣っていたり、また、アルミナ粒子とジルコニア
粒子の粒子径を別々に制御するのが困難であった。この
ような従来技術によるものは、アルミナの含有量の増加
とともに靭性、強度の低下する割合が大きい。そのた
め、アルミナを添加して行くと硬度は増加するものの、
靭性はジルコニアの減少に対応して急激に低下する。
このように正方晶ジルコニアとアルミナを主体とした
セラミックスにおいて、優れた耐摩耗性を有した材料を
得るためにアルミナの含有量を増加した場合、強度及び
靭性の低下を抑え、硬度を同時に向上させるコトが非常
に困難であった。
(発明が解決しようとする課題) 本発明の目的は、正方晶ジルコニアとアルミナとから
なる複合焼結体の強度及び靭性と硬度とを同時に向上さ
せることが難しいという相反する傾向を克服し、強度,
靭性および硬度の3つの特性がともに優れた焼結体を得
るための粉末の製造方法とその焼結体の製造方法を提供
することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明は、(1)ジルコニア分散質が平均粒子径0.1
μm以下であるジルコニアゾル中に平均粒子径0.1μm
〜2μmのα−アルミナ粒子が分散している混合液を脱
水処理して乾燥物を得、該乾燥物を仮焼して結晶性ジル
コニア粒子とα−アルミナ粒子との混合粉末を得ること
による、アルミナ−ジルコニア複合粉末の製造方法、お
よび、(2)このようにしてえられた混合粉末を成形
し、焼結することからなる、アルミナ−ジルコニア複合
焼結体の製造方法を提供するものである。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
ジルコニア分散質が平均粒子径0.1μm以下であるジ
ルコニアゾル中に平均粒子径0.1μm〜2μmの結晶性
アルミナ粒子が分散している混合液(以下、「混合液」
ともいう)の分散媒は、水,有機溶媒が溶解した水溶液
またはこれらに仮焼によってジルコニアの安定化剤に転
化するイットリウム,カルシウム,マグネシウム,セリ
ウムなどの塩を溶解している水溶液である。上記有機溶
媒としては、炭素数1〜9のアルコール,アセトンなど
をあげることができる。
分散質の一方のジルコニア分散質は、ZrO2・H2Oまた
はZr(OH)で表され、含水ジルコニア,水酸化ジルコ
ニウムなどと称されるいわゆるコロイド粒子である。こ
の粒子は、結晶質または非晶質であり、すなわち、ラマ
ン分光分析により単斜晶系の結晶構造を有することが確
認されるものもある。また、これらの粒子は単一または
凝集粒子からなる。その平均粒子径は、0.1μm以下で
なければならない。0.1μmをこえると、溶液中で沈殿
を生じやすくなり、アルミナとの分散性が低下するから
である。
本発明では原料アルミナとしてα−アルミナ粒子を使
用する。他のアルミナ粒子を使用すると、焼成あるいは
焼結時に結晶形の変化を生じて粒子径のコントロールが
困難であり、また焼結体の緻密化を妨げるからである。
その平均粒子径は、0.1μm〜2.0μmでなければならな
い。この範囲より小さいとえられる焼結体の破壊靭性が
低くなり、いっぽう、大きいとその強度が低くなり、さ
らには焼結性の低下をきたす。
この混合液は、たとえば、以下のようにしてうること
ができる。
ジルコニアゾルにアルミナ粒子を分散させることによ
って混合液がえられる。このジルコニアゾルは、ジルコ
ニア分散質が平均粒子径0.1μm以下のものであれば、
市販のものでも、またオキシ塩化ジルコニウム等ジルコ
ニウムの水溶性塩の水溶液を常法によって加水分解する
かまたは中和することによってえたものなどいずれでも
よい。後者による場合、残留塩素を取り除くためにはイ
オン交換樹脂で脱塩素することも可能である。ジルコニ
ア用安定化剤を含むアルミナ−ジルコニア複合粉末を製
造する場合は、イットリウム,マグネシウム,カルシウ
ム,セリウムなどの塩化物,硝酸塩など水溶性塩を、上
記の市販のまたはジルコニウム塩水溶液からえられたジ
ルコニアゾルに添加するか、あるいは該ジルコニウム塩
水溶液に含ませればよい。
次に、このようにして得た液にα−アルミナ粉末を添
加し、通常、ボールミル等の粉砕・混合機を用いて該ア
ルミナ粉末を分散させる。このときのアルミナ粉末の粒
子径は、複合焼結体中のアルミナ領域の大きさに大きく
影響する。そこで、複合焼結体中の目的のアルミナ領域
の大きさを得るためには、この領域サイズに等しいか、
またはそれより小さめの粉末粒子径を有するアルミナ粉
末を使用する。焼結の際の多少の粒成長および混合粉末
におけるアルミナ粒子の分散不十分のため、アルミナ粉
末の粒子径よりも、複合焼結体にアルミナ領域サイズの
方が多少大きくなる傾向があるからである。もっとも、
焼結前の粉砕の効果により小さくなる場合もある。
このようにして上記の混合液がえられるが、これに前
記のアルコール、アセトン等の有機溶媒を添加して、次
の乾燥の際に粒子が凝集するのを防止するのも有効であ
る。
このジルコニア質分散媒とα−アルミナ粒子とが十分
に分散した混合液は、蒸発乾固,減圧脱水などによって
乾燥する。
このようにして得られた乾燥物の仮焼は、通常大気中
で500℃〜1300℃で行なうのがよい。好ましくは700〜12
00℃で通常2時間程度大気中で仮焼する。この仮焼温度
が500℃未満ではジルコニアの結晶化が不十分となるだ
けでなく、上記の乾燥で除去しきれなかった水分や有機
物を完全に除去することができず、いっぽう、1300℃を
こえるとえられる粉末中の結晶性ジルコニア粒子が大き
くなりすぎ、焼結性が低下する。さらには、結晶性ジル
コニア粒子の成長により、α−アルミナ粒子の粒子径よ
りも大きくなった場合には、複合体の微細構造において
α−アルミナ領域を結晶性ジルコニア相が取り囲んだ構
造となりにくくなる。この場合、強度、破壊靭性および
硬度を同時に向上させる効果が低下する。結晶性ジルコ
ニア粒子がα−アルミナ粒子よりも小さいものとするに
は、結晶性ジルコニア粒子の比表面積をα−アルミナ粒
子のそれの約1.5倍以上に保つことが望ましい。例え
ば、平均粒子径150Åのジルコニア質分散媒と平均粒子
径0.2μm(比表面積14m2/g)のα−アルミナとを仮焼
後アルミナが70体積%含むように配合された混合液を乾
燥・脱水し、900℃で2時間仮焼してえられた複合粉末
の比表面積は22.2m2/gを示した。α−アルミナは仮焼に
よって粒子径および比表面積が変化するとは考えにくい
ので、混合粉末中の粒子径および比表面積は出発原料の
それと同じであるとし、これと上記仮焼した混合粉末の
比表面積とにより、該混合粉末中のジルコニアの比表面
積は35m2/gと求まり、これを平均粒子径に換算すると約
150Å程度になる。このような仮説によって本発明の効
果を十分に説明することができる。このように、本発明
の複合粉末の状態は、焼結体の微細構造を決定する重要
な因子であり、本発明の複合粉末は、微細なジルコニア
粉末とそれよりも大きな平均粒子径を有するアルミナ粉
末の混合物となっている。本発明(前記(1)の方法)
によれば、比表面積10m2/g以上のジルコニア粒子を含む
混合粉末がえられ、仮焼の温度を700℃〜1200℃とする
ことにより比表面積15〜50m2/gのジルコニア粒子とな
り、比表面積50m2/gをこえるものにくらべて、粉末の充
填性がさらによく、したがって、成形性に優れたものと
なる。また、該混合粉末中のアルミナ粒子の平均粒子径
は、0.1〜2.0μm、通常0.1〜1.6μmとなっている。
以上のようにして本発明の混合粉末がえられるが、通
常、これをボールミルなどの粉砕機,超音波等の分散機
を用いて凝集粒子の粉砕を行なって、本発明の焼結用粉
末とする。
このようにして得られた混合粉末から焼結体をつくる
には、まず常法により、すなわちプレス成形、ゴム型に
よる静水圧成形、鋳込み成形、射出成形などの方法によ
り成形して成形体をうる。
この成形体の焼結は、通常電気炉などにより大気中で
1200℃〜1600℃の範囲で行われる。この焼結温度は、焼
結体の特性に大きく影響する。この温度が1600℃をこえ
ると、ジルコニアの粒子径が大きくなり、正方晶ジルコ
ニアの転移がおこりやすくなって、破壊靭性値が高くな
るが、いっぽう、強度は低下する。そのため、強度、破
壊靭性、高度のバランスをとるために、1200〜1600、好
ましくは1350〜1550℃とするのがよい。1300℃以上で2
時間程度焼結することにより、焼結体の吸水率は実質的
に0%になり、次に説明する熱間静水圧処理を行なう場
合その処理により空隙が除去され、焼結体の強度を向上
させる効果がよりよく発揮される。
このようにして得られた焼結体の強度をさらに向上さ
せたい場合には、熱間静水圧(HIP)処理を行うことが
好ましい。この処理条件は、通常圧力500kg/cm2以上、
温度1200℃〜1600℃、好ましくは1350℃〜1550℃の範囲
で行われるが、結晶粒子径の成長を起こさせないために
焼結温度に比較して同じかまたはそれより低くするのが
好ましい。また、処理のガスの種類は、不活性ガスまた
は酸素を含んだ不活性ガスが用いられる。このようにし
て強度がさらに向上し、靭性および硬度にも優れたアル
ミナ−ジルコニア複合焼結体が得られる。
本発明を適用して、ジルコニアの安定化剤として酸化
イットリウムを含ませた、そして強度140kg/mm2以上、
破壊靭性4MN/m3/2以上およびビッカース硬度1500kg/mm2
以上のいずれをも満たす複合焼結体のものをうるには、
焼結体中の酸化イットリウム、ジルコニアおよびα−ア
ルミナの含有量が、図1に示す 点A(45,3.0)−B(45,1.5)−C(85,0.5)−D
(85,1.5)−E(54,3.0)−A(45,3.0) の順に各点(焼結体中のα−アルミナ含有量(体積
%),ジルコニア中の酸化イットリウム含有量(モル
%))を直線で結んだ線上またはそれに囲まれた範囲内
のものとなるように原料の組成割合を選択すればよい。
また、酸化イットリウム、ジルコニアおよびα−アルミ
ナの含有量が該図1中の点F(54,2.75)−G(54,1.7
0)−C−H(85,0.9)−Fの順に各点を直線で結んだ
線上またはそれに囲まれた範囲内のものなるように原料
の組成割合を選択すれば、強度160kg/mm2以上、破壊靭
性5MN/m3/2以上、ビッカース硬度1600kg/mm2以上の特性
を持つものとなる。
ジルコニアの安定化剤として酸化セリウムを含ませ
た、そして強度100kg/mm2以上、破壊靭性4MN/m3/2以上
およびビッカース硬度1400kg/mm2以上のいずれをも満た
す複合焼結体のものをうるには、焼結体中の酸化セリウ
ム、ジルコニアおよびα−アルミナの含有量が、図2に
示す 点I(50,14)−J(50,8)−K(90,4.5)−L(90,
7)−M(70,13)−I(50,14) の順に各点(焼結体中のα−アルミナ含有量(体積
%),ジルコニア中の酸化セリウム含有量(モル%))
を直線で結んだ線上またはそれに囲まれた範囲内のもの
となるように原料の組成割合を選択すればよい。
このように組成範囲を選んだ理由は、以下のとおりで
ある。
一般に、焼結体の硬度を増加させるためにアルミナの
添加量を増加させると、複合焼結体中のジルコニア含有
量の減少による転移に対する安定度が増加して強度が低
下する。これを防ぐには、ジルコニア中の酸化イットリ
ウムや酸化セリウムの含有量を減少させて、ジルコニア
の安定性を低下させ転移を起こさせやすくすることによ
り転移効果の減少を補う必要がある。
このような観点から、安定化剤の含有量とアルミナ相
の含有量の関係を決定した。
また、アルミナの含有量が一定である場合には、アル
ミナ相の粒子径を制御することにより、ジルコニアの安
定性を制御することができる。しかしながら、このアル
ミナ粒子径が小さくなりすぎると、この転移を抑制する
効果が大きくなり、破壊時の転移量が減少するために、
このアルミナの粒子径は、0.1μm以上とするのが好ま
しい。また、2.0μmよりも大きくなると、このアルミ
ナ粒子が破壊源としての作用しやすくなるため、強度の
低下を生じやすくなる。
(作用) 本発明の複合粉末の製造方法では、ジルコニアの原料
として微細なコロイド状のジルコニア粒子を使用する。
このジルコニアコロイド粒子は、微細な粒子でありなが
ら凝集せず溶液中に分散している。これに比べてアルミ
ナ粒子は遥かに大きく、そのため、えられた複合粉末は
微細なジルコニア粒子がこのアルミナ粒子を十分に取り
囲んだ状態のものになる。このような複合粉末を焼結す
ると、アルミナの含有量が50vol%を越える組成でも、
ジルコニアの中にアルミナを分散した構造を構成してお
り、アルミナ領域はジルコニアの結晶相によってほぼ単
一の粒子に分離された微細構造を形成しやすい。
この様な構造を有した複合焼結体が破壊する場合、分
散の不十分な複合体に比較して、クラックは主にジルコ
ニアの結晶層中を進展して行き、また、クラック近くの
ジルコニア粒子の転移強化機構が有効に作用し、よりア
ルミナ含有量の多い組成までジルコニアセラミックスの
有する高強度、高靭性という特性を維持しながら、更に
アルミナの有する高硬度を達成することができる。
この様な作用を最大限に発揮させる方法が本発明によ
る複合焼結体の製造方法であり、それに適用される複合
粉末の製造方法である。
(発明の効果) 本発明によって製造された焼結体、たとえば、酸化イ
ットリウムを安定化剤として含有させ、かつHIP処理し
て内部欠陥を無くしたものには、従来の酸化物セラミッ
クでは考えられない強度200kg/mm2、破壊靭性5.5MN/m
3/2およびビッカース硬度1860kg/mm2という高強度、高
靭性および高硬度の3つの特性を兼ね備えたものさえあ
る。また、HIP処理を行わない焼結体でも強度100kg/mm2
以上、破壊靭性4MN/m3/2以上、ビッカース硬度1500kg/m
m2以上と言う優れた特性を示す。
一方、酸化セリウムを安定化剤として含有した焼結体
では、たとえば、HIP処理を行い内部欠陥を無くしたも
のでは従来実現困難であった強度141kg/mm2、、破壊靭
性7.6MN/m3/2、ビッカース硬度1540kg/mm2という高強
度、高靭性および高硬度の3つの特性兼ね備えたものも
ある。また、HIP処理を行わない焼結体においても強度7
0kg/mm2以上、破壊靭性5MN/m3/2以上およびビッカース
硬度1400kg/mm2以上と言う優れた特性を示した。この酸
化セリウムを安定化剤として含む焼結体は、酸化イット
リウムを含むものにくらべて、200〜400℃の温度領域で
生じる低温劣化現象をまったく生じない。
また、一般に強度の高いセラミックスは、その強度試
験において、複数個の試験片を用いて行うと、個々の強
度の値のバラツキは大きなものとなる。しかし、本発明
による方法で製造した粉末を用いて製造した複合焼結体
の強度のバラツキは、非常に小さく本実施例ではその標
準偏差は、大部分が平均強度の約12%以内に収まってい
た。
また、酸化セリウムを安定化剤とした場合、一定の組
成領域では、高強度かつ高硬度にもかかわらずそのバラ
ツキは極めて少ないものが得られる。
さらに、比較例のNo.3の例からも分かるように従来の
固相混合法では単斜晶への相転移が押さえられずクラッ
クを生じていたような、低濃度の安定化剤添加量であっ
ても、優れた特性の複合焼結体が得られる。
(実施例) 以下に具体的な実施例を用いて本発明を説明する。
実施例1 酸化ジルコニウムに換算して30gを含むオキシ塩化ジ
ルコニウム水溶液150gに1.12gの酸化イットリウム溶解
した。この水溶液を沸点で、70時間還流をおこないオキ
シ塩化ジルコニウムを加水分解した。ジルコニアゾルの
粒子径は、平均で150Åであった。
この加水分解液に平均粒子径が0.6μmのアルミナ粉
末45.7gを加え、この混合液を直径3mmのジルコニアボー
ルをポリエチレン製容器の半分まで満たしたボールミル
に移し、20時間回転混合しアルミナ粉末を充分に分散さ
せた後、ロータリーエバポレーターを使用して減圧乾燥
を行った。得られた乾燥物は、電気炉を用いて大気中、
900℃、2時間仮焼したのち、前記と同様のボールミル
を使用して40時間粉砕し、ジルコニア−アルミナ複合粉
末をえた。
このようにして得た粉末を金型を用いて、成形したの
ち、静水圧加圧成形装置をもいて2t/cm2の圧力で成形し
た。この成形体を電気炉を用いて1500℃で2時間焼結を
行ってジルコニア−アルミナ複合焼結体を得た。この焼
結体の吸水率は、0%であった。
更に、アルゴンガスを使用した熱間静水圧成形(HI
P)装置を用いて、1500気圧、1400℃で1時間処理をお
こなった。このようにして得た焼結体は、平均粒子径0.
6μmのアルミナ結晶領域を50体積%含み、またジルコ
ニア相は2モル%の酸化イットリウムを含んだ複合焼結
体である。表1に、製造条件と粉末及び焼結体特性を示
した。
上記と同様な方法で複合粉末及び焼結体を得た。製造
条件が上記と異なるものは表1中に記載した。図3に、
これらの焼結体の強度、破壊靭性および硬度をグラフで
示した。
実施例2 市販のジルコニアゾル水溶液(ジルコニア換算濃度29
重量%)24.5g及び硝酸セリウム(酸化物換算)3.4gを
混合した液に、平均粒子径0.2μmのアルミナ粉末を41.
8gを加え、ボールミルを使用して15時間混合分散した。
この後、減圧下で脱水・乾燥を行った。得られた乾燥物
は900℃で2時間仮焼したのち、ボールミルを用いて40
時間粉砕し複合粉末を得た。
この粉末を金型を用いて、成形したのち、静水圧加圧
成形装置を用いて2t/cm2の圧力で成形した。この成形体
を電気炉を用いて1475℃で2時間焼結を行って焼結体を
得た。この焼結体の吸水率は、0%であった。
更に、酸素ガスを20体積%含有したアルゴンガスを使
用したHIP装置を用いて、1500気圧、1400℃で1時間処
理をおこなった。このようにして得た焼結体は、平均粒
子系0.4μmのアルミナ結晶領域を70体積%含み、また
ジルコニア層は、9モル%の酸化セリウムを含んだ複合
焼結体である。表2に、組成、アルミナ粉末粒子径、更
に、粉末特性、焼結条件及び焼結体物性を示した。
実施例3 市販のジルコニアゾル水溶液(ジルコニア換算濃度20
重量%)、酸化イットリウム粉末及びアルミナ粉末を原
料として、種々の組成、アルミナ相領域サイズの複合焼
結体を作成した。酸化イットリウムは必要量を2mlの濃
塩酸に溶解して使用した。また、使用したアルミナ粉末
の平均粒子径は、0.2、0.4、0.6および1.6μmのものを
使用した。これらの粉末は、単独で、または平均粒径を
変えるために、所定の割合に混合して使用した。複合体
粉末の合成は、混合液を調整した後、実施例1とまった
く同様にして行った。粉末製造及び焼結体製造条件は、
表3に示した。ただし、HIP圧力は1500気圧とし、雰囲
気はアルゴンを用いた。また、得られた複合粉末及び焼
結体の特性は、同じく表3に示した。
比較例1 酸化イットリウムをそれぞれ1、2および3モル%含
有した平均粒子径が0.6μmの市販のジルコニア粉末
(東ソ−株式会社製:TZ−1Y、TZ−2YおよびTZ−3Y)お
よび酸化セリウムをそれぞれ9および12モル%含有した
平均粒子径が0.6μmのジルコニア粉末と平均粒子径
が、0.2および0.4μmの粒子径を有したアルミナ粉末を
出発原料として使用した。得ようとするジルコニアとア
ルミナの組成比になるようにジルコニア粉末及びアルミ
ナ粉末を秤量し、ボールミルを用いて40時間混合粉砕を
行った。粉砕終了後、乾燥を行い、以後は実施例1及び
2と同様にして、焼結体を得、14000℃でHIP処理を行っ
た。
表4には、組成、粉末特性、焼結条件及び焼結体物性
を示した。
実施例で使用した物性値の測定方法は以下の通りであ
る。
強度:JIS R 1601に準拠した3点曲げによる強度。強度
のバラツキは、標準偏差(σn-1)で表わし、強度に続
いて示すた。
靭性:ビッカース硬度計を使用したマイクロインデンテ
ーション法を用いた。加重20kg,加重印加時間10秒、計
算は、以下の式を用いた。
K1C=0.203×(c/a)−1.5×a1/2×H 但し、Hは、ビッカース硬度、aは、圧痕対角線長
さ、cは、この対角線の先端から発生したクラックのメ
ディアン長さである。また、研磨による残留応力の影響
を少なくするため、試料の表面は、3.0μmのダイヤモ
ンド砥粒を用いてば布研磨を行い鏡面に研磨した。この
研磨工程で表面に残留応力が残っている場合、クラック
の進展が抑制され破壊靭性値を高めに評価する場合があ
る。
硬度:マイクロビッカース硬度計を使用し、加重500g,
加重印加時間10秒で行った。
焼結体粒子径:走査型電子顕微鏡を観察によって行っ
た。但し、精度は±0.1程度ある。
粉末粒子径:レーザー光散乱による粒度分布測定機を使
用した。
【図面の簡単な説明】
図1は、複合焼結体が強度150kg/mm2以上、破壊靭性4MN
/m3/2以上およびビッカース硬度1500kg/mm2以上の特性
を有する為に必要な酸化イットリウム及びアルミナの含
有量の範囲を示したものである。図2は、複合焼結体が
強度100kg/mm2以上、破壊靭性4MN/m3/2以上およびビッ
カース硬度1400kg/mm2以上の特性を有する為に必要な酸
化セリウム及びアルミナの含有量の範囲を示したもので
ある。図3は、実施例1に示した複合焼結体の強度、破
壊靭性および硬度のアルミナ含有量の依存性を示したも
のである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジルコニア分散質が平均粒子径0.1μm以
    下であるジルコニアゾル中に平均粒子径0.1μm〜2μ
    mのα−アルミナ粒子が分散している混合液を脱水処理
    して乾燥物を得、該乾燥物を仮焼して結晶性ジルコニア
    粒子とα−アルミナ粒子との混合粉末を得ることを特徴
    とする、アルミナ−ジルコニア複合粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項(1)記載の方法において、乾燥物
    を500〜1300℃で仮焼する、アルミナ−ジルコニア複合
    粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項(1)または(2)記載の方法によ
    ってえられた、結晶性ジルコニア粒子とα−アルミナ粒
    子との混合粉末を、成形し、焼結することを特徴とする
    アルミナ−ジルコニア複合焼結体の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項(3)記載の方法において1300℃〜
    1600℃で常圧で焼結してえられた焼結体を、不活性ガス
    または酸素と不活性ガスとの混合気体中で1200〜1600℃
    ただし上記常圧焼結における温度以下で熱間静水圧処理
    を行う、アルミナ−ジルコニア複合焼結体の製造方法。
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