JP2778401B2 - シートベルト付きシート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は例えば自動車の前部座席
等に適用して好適なシートベルト付きシートに関し、更
に詳細に説明すると、シートベルトの巻取り用リトラク
タをシートの一部に付設すると共に、シートバック上端
側のベルトガイドを介してシート前方に引出されるシー
トベルトに、シートクッションの一側部に設けられるバ
ックルに選択的に係止されるタングを挿通し、且つ該シ
ートベルトの先端をシートクッションの他側部に設けら
れるベルト取付け部に連結してなるシートベルト付きシ
ートの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両等のシートでは、シートベルトを用
いることで、車両等の衝突等の際に乗員を拘束保護し得
るようになっている。この種のシートベルト装置として
従来一般には、車両のピラー及び車室床面等にアンカー
を固着し、該アンカーにシートベルト端部を連結した構
造が採用されていた。

【０００３】然し、このようなシートベルト装置では、
車両の前後スライド移動調節やリクライニング装置によ
る前後傾動調節を行なう場合に複雑な機構を付設しなけ
ればならず、コスト高を招いている。又、乗員の体格や
好みに応じて運転姿勢を単純に変更することも難しく、
シートベルトの乗員に対する角度や位置が変化し、乗員
を最適な状態で拘束保護することが困難であった。

【０００４】このような不具合を解決する為にシートベ
ルトをシート自体に組込んでなる、いわゆるビルトイン
型のシートベルト装置が、例えば特開昭６０−９２９４
５号公報や実公昭５５−３０７６５号公報、実開昭５３
−１０９２３３号公報、実開昭５３−１０９２３５号公
報、更には実開昭５３−３８７１８号公報等により従来
既に提案されている。

【０００５】このようなビルトイン型のシートベルト装
置は、図３及び図４に示す様に、車両用シート１を構成
するシートクッション２又はシートバック３の一部（こ
の例ではシートバック３内）に、シートベルト６の巻取
り装置である緊急時自動ロック型のリトラクタ５を配設
し、該リトラクタ５に一端６ａが固着されて巻取られる
シートベルト６を、シートバック３上端側でヘッドレス
ト４の一側部等に突出させて設けたベルトガイド８のベ
ルト引出し口８ａからシートバック３の前方に引出し、
且つシートベルト６の他端（先端）６ｂをシートクッシ
ョン２の一側部に固着し、シートベルト６に挿通された
タング９をシートクッション２の他側部に設けたバック
ル１０に選択的に差し込んで係止させることで、図３中
想像線で示す様に、肩ベルト６Ａと腰ベルト６Ｂとを形
成する構造であった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、上述した従
来のシートベルト装置では、荷重の集中に対して強度が
必要となりシートベルト６を引出し可能に保持する等の
理由からシートバック３等にある程度の剛性が必要で、
そのシートバックフレームやデバイス、更にはシートク
ッション２等が複雑且つ高価となり、大型化し易いと言
う問題があった。

【０００７】又、ベルトガイド８がシートバック３の上
端側でヘッドレスト４の一側部に突出して設けられる
為、このヘッドレスト４が上下動自在な構造である場合
に、その上下動に伴ってベルトガイド８の引出し口８ａ
の位置も上下動すると、シートバック３内でシートベル
ト６に捻れ等が生じ、これによりシートベルト６の巻取
り用リトラクタ５への巻取り動作が不完全となったり、
シートベルト６の動きに引っかかりが生じたり、シート
ベルト６に作用するテンションが変動したりする等の不
具合もあった。

【０００８】このような問題は、シートバック３内で巻
取り用リトラクタ５からシートベルト６が上向きに引出
され、シートバック３上端側に設けたベルトガイド８、
引出し口８ａを介してシート１前方に引出される為に、
ヘッドレスト４の上下動によってリトラクタ５とベルト
ガイド８との相対的な位置関係が変化し、シートベルト
６に捻れ等を生じ易いことから、明らかであろう。

【０００９】特に、このようなリトラクタ５とベルトガ
イド８との間でのシートベルト６の捻れを防ぐ為には、
リトラクタ５をシートバック３上部に設けると良いが、
このようにすると、シートベルト６、ベルトガイド８や
リトラクタ５を介して、シートバック３の上部に負荷が
集中的にかかり過ぎ、補強部材等をシートバックフレー
ムやシートクッション２側とのリクライニング機構等に
付設する必要がある等と言った強度上での問題を生じ
る。

【００１０】このような強度上での問題を解消するに
は、リトラクタ５を、シートバック３下方に設けた方が
良いが、前述した通り、シートベルト６の捻れ等の問題
があり、このような点を考慮し、シートベルト６の動き
の適正化を図り、又ベルト６を介して加わる負荷に対す
る強度を向上させ得るような何らかの対策を講じること
が必要とされている。

【００１１】本発明はこのような点に鑑みてなされたも
ので、シートバック内に設けられる巻取り用リトラクタ
から引出されるシートベルトの引き回し構造を改良し、
シートベルトの捻れ等を無くし、その動きを良くすると
共に、ヘッドレストの動きとの関連においても配慮し、
又シートベルトに加わる衝撃等と言った荷重の集中等の
負荷の影響を軽減でき、強度的にも充分であるシートベ
ルト付きシートを得ることを目的としている。

【００１２】

【課題を解決するための手段】このような要請に応える
為に本発明に係るシートベルト付きシートは、シートベ
ルトの巻取り用リトラクタをシートバック内に配設する
と共に、シートバック上端側のベルトガイドを介してシ
ート前方に引出されるシートベルトにシートクッション
の一側部に設けたバックルに選択的に係止されるタング
を挿通し、且つ該シートベルト先端をシートクッション
の他側部に設けたベルト取付け部に連結しているシート
ベルト付きシートにおいて、前記シートバックフレーム
の左右のサイドフレーム部間に左右連結フレーム部を上
下に設け、前記巻取り用リトラクタを前記上部の左右連
結フレーム部にブラケットを介して下向き姿勢で固着
し、前記巻取り用リトラクタから下方に引出されるシー
トベルトを、シートバックフレームの前記下部の左右連
結フレーム部を介して上方に折返し、且つ該シートバッ
クフレームの一方のサイドフレーム部の内側にヘッドレ
ストフレームを上下動自在に設け、該ヘッドレストフレ
ームの一部に設けたベルトガイド部を介して前記シート
ベルトをシートバック前方に引出すように構成したこと
を特徴とする。

【００１３】

【作用】本発明に依れば、シートバックフレームに下向
き姿勢で配設された巻取り用リトラクタから下方に引出
されるシートベルトは、シートバックフレームの左右の
サイドフレーム部間に設けられた上下一対の左右連結フ
レーム部を介して上方に折返され、一方のサイドフレー
ム部内側で上下動自在なヘッドレストフレームに設けら
れるベルトガイド部を介してシート前方に引出され、シ
ートベルトの捻れ等を防止すると共に、シートベルトに
作用する衝撃による荷重の集中等の負荷をシートバック
フレーム及びリクライニング機構、シートクッションフ
レーム等に分散させて設置床面側に逃がし、強度的に有
利とすることができる。

【００１４】

【実施例】図１及び図２は本発明に係るシートベルト付
きシートの一実施例を示し、これらの図において、前述
した図３及び図４と同一又は相当する部分には同一符号
を付してその説明は省略する。

【００１５】さて、本発明に依れば、上述したシートベ
ルト付きの車両用シート１において、図１及び図２から
明らかな様に、シートバックフレーム２０の一部である
シートバック３の中央部上側の上下に左右連結フレーム
部２１，２２を設け、前記巻取り用リトラクタ５を前記
上部の左右連結フレーム部２１にブラケット５ｃを介し
て下向き姿勢で固着し、巻取り用リトラクタ５のベルト
引出し口５ａが下向き姿勢となるように配設すると共
に、この巻取り用リトラクタ５から下方に引出されるシ
ートベルト６を、シートバックフレーム２０の下部の左
右連結フレーム部２２を介して上方に折返し、且つ該シ
ートバックフレーム２０の一方のサイドフレーム部２３
の上端側で上下動自在なヘッドレストフレーム２４の一
部に設けたベルトガイド部２５，２６を介してシートバ
ック３前方に引出すように構成した所に特徴を有してい
る。

【００１６】ここで、上述したサイドフレーム部２３
は、図１から明らかなように、略角筒状を呈し、その内
部に前記ヘッドレストフレーム２４の一部を構成する可
動レール部２７が、固定レール部２８と共に嵌挿され、
上下動自在な構成となっている。

【００１７】そして、この可動レール部２７の上端ブラ
ケット部２９に、前記ベルトガイド部であるアーム状の
ベルトガイド部２５とスリット状のベルトガイド部２６
が設けられている。尚、上述した可動レール部２７は、
図示を省略した電動モータ等の駆動源によって上下動自
在に構成され、ヘッドレスト４の高さ調整を行なえるよ
うになっている。更に、図１中、５ｃはブラケット５ｂ
の下端折曲部に形成されたベルト挿通用スリットであ
る。

【００１８】又、図２中３０はシートクッション２を構
成するシートクッションフレーム、３１，３１はこのシ
ートクッションフレーム３０を車室床面（図示せず）上
で前後動自在に支持する左、右一対をなすシートスライ
ド機構、３２，３２はシートバックフレーム２０の左、
右サイドフレーム部２３，２３の下端部をシートクッシ
ョンフレーム３０の後端部に傾動自在に支持する左、右
一対をなすリクライニング機構であるが、その詳細な図
示及び説明は省略する。

【００１９】以上の構成において、シートバックフレー
ム２０に下向き姿勢で配設された巻取り用リトラクタ５
から下方に引出されるシートベルト６は、シートバック
フレーム２０の下部の左右連結フレーム部２２を介して
上方に折返されて該シートバックフレーム２０のサイド
フレーム部２３上端側で上下動自在なヘッドレストフレ
ーム２４に設けられるベルトガイド部２５，２６を介し
てシート１前方に引出され、シートベルト６の捻れ等を
防止することができる。

【００２０】これは、リトラクタ５から下向きに引出し
たシートベルト６を、下部の左右連結フレーム部２２と
サイドフレーム部２３上端側でヘッドレストフレーム２
４のベルトガイド部２５との二個所で角度を付けて引出
していることから、シートベルト６の動きを滑らかで捻
れを生じない状態で引出せることから明らかであろう。

【００２１】又、シートベルト６を、ヘッドレスト４の
上下動に影響されずに、同じテンションで出入れするこ
とが可能で、シートベルト６としての機能を確保するこ
とができる。

【００２２】更に、シートベルト６をガイドするにあた
って、シートベルト６の動きの幅を規制せずに、動きを
良くすることができる為、シートベルト６の出入りの経
路が若干ずれても支障無いので、シートベルト６の動き
に余裕を持たせることが可能である。尚、ベルトガイド
２５，２６を、ヘッドレストフレーム２４の一部を利用
して構成している為、特別にベルトガイドを準備する必
要も無い。

【００２３】又、上述した構造では、シートベルト６に
作用する衝撃による荷重の集中等の負荷を、従来のよう
にリトラクタ５のみに集中させずに、シートバックフレ
ーム２０及びリクライニング機構３２、シートクッショ
ンフレーム３０等に分散させて設置床面側に逃がすこと
が可能で、衝撃力を分散して受けることができる為に強
度的に有利となる。

【００２４】尚、本発明は上述した実施例構造に限定さ
れず、シート１各部の形状、構造等を、必要に応じて適
宜変形、変更することは自由であり、シートベルト６を
始めとして、その特徴とする巻取り用リトラクタ５やベ
ルトガイド部２５，２６を有するヘッドレストフレーム
２４やシートバックフレーム２０のサイドフレーム部２
３等として、種々の変形例が考えられることは容易に理
解されよう。

【００２５】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係るシート
ベルト付きシートに依れば、シートベルトの巻取り用リ
トラクタをシートバック内に配設すると共に、シートバ
ック上端側のベルトガイドを介してシート前方に引出さ
れるシートベルトにシートクッションの一側部に設けた
バックルに選択的に係止されるタングを挿通し、且つ該
シートベルト先端をシートクッションの他側部に設けた
ベルト取付け部に連結しているシートベルト付きシート
において、前記シートバックフレームの左右のサイドフ
レーム部間に左右連結フレーム部を上下に設け、前記巻
取り用リトラクタを前記上部の左右連結フレーム部にブ
ラケットを介して下向き姿勢で固着し、前記巻取り用リ
トラクタから下方に引出されるシートベルトを、シート
バックフレームの前記下部の左右連結フレーム部を介し
て上方に折返し、且つ該シートバックフレームの一方の
サイドフレーム部の内側にヘッドレストフレームを上下
動自在に設け、該ヘッドレストフレームの一部に設けた
ベルトガイド部を介して前記シートベルトをシートバッ
ク前方に引出すように構成したので、簡単な構造である
にもかかわらず、リトラクタから下向きに引出したシー
トベルトを、下部の左右連結フレーム部とサイドフレー
ム部上端側でヘッドレストフレームのベルトガイド部と
の二個所で角度を付けて引出していることから、シート
ベルトの動きが滑らかで捻れを生じないようにすること
ができ、又シートベルトを、ヘッドレストの上下動に影
響されずに、同じテンションで出入れすることが可能
で、シートベルトとしての機能を確保することができ
る。

【００２６】特に、本発明に依れば、シートベルトをガ
イドするにあたって、シートベルトの動きの幅を規制せ
ずに、動きを良くすることが可能で、シートベルトの出
入りの経路が若干ずれても支障無いので、シートベルト
の動きに余裕を持たせることができる。更に、ベルトガ
イドを、ヘッドレストフレームの一部を利用して構成し
ている為、特別にベルトガイドを準備する必要が無いと
言う利点もある。

【００２７】又、本発明に依れば、シートベルトに作用
する衝撃による負荷を、従来のようにリトラクタのみに
集中させずに、シートバックフレーム及びリクライニン
グ機構、シートクッションフレーム等に分散させて設置
床面側に逃がすことが可能で、衝撃力を分散して受ける
ことができる為に強度的に有利であると言う利点を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るシートベルト付きシートの一実施
例を示すシートバックフレームの要部を背面側から見た
概略斜視図。

【図２】本発明に係るシートベルト付きシートの一実施
例を示すフレーム構造のみを示す概略斜視図。

【図３】従来のシートベルト付きシートを示す概略斜視
図。

【図４】従来のシートベルト付きシートの概略側面図。

【符号の説明】

１ シートベルト付きの車両用シート ２ シートクッション ３ シートバック ５ シートベルト巻取り用リトラクタ ５ａ ベルト引出し口 ６ シートベルト ６ｂ シートベルト先端（他端） ９ タング １０ バックル ２０ シートバックフレーム ２１ 左右連結フレーム部 ２２ 左右連結フレーム部 ２３ サイドフレーム部 ２４ ヘッドレストフレーム ２５ アーム状のベルトガイド部 ２６ スリット状のベルトガイド部 ２７ 可動レール部 ２８ 固定レール部 ２９ ブラケット部 ３０ シートクッションフレーム ３２ リクライニング機構

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートベルトの巻取り用リトラクタをシ
   ートバック内に配設すると共に、シートバック上端側の
   ベルトガイドを介してシート前方に引出されるシートベ
   ルトにシートクッションの一側部に設けたバックルに選
   択的に係止されるタングを挿通し、且つ該シートベルト
   先端をシートクッションの他側部に設けたベルト取付け
   部に連結しているシートベルト付きシートにおいて、 前記シートバックフレームの左右のサイドフレーム部間
   に左右連結フレーム部を上下に設け、前記巻取り用リト
   ラクタを前記上部の左右連結フレーム部にブラケットを
   介して下向き姿勢で固着し、前記巻取り用リトラクタか
   ら下方に引出されるシートベルトを、シートバックフレ
   ームの前記下部の左右連結フレーム部を介して上方に折
   返し、且つ該シートバックフレームの一方のサイドフレ
   ーム部の内側にヘッドレストフレームを上下動自在に設
   け、該ヘッドレストフレームの一部に設けたベルトガイ
   ド部を介して前記シートベルトをシートバック前方に引
   出すように構成したことを特徴とするシートベルト付き
   シート。