JP2751418B2 - ターボ圧縮機のディフューザ - Google Patents

ターボ圧縮機のディフューザ

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> この発明は、ターボ冷凍機等に用いられるターボ圧縮
機のベーンレスディフューザの改良に関する。
<従来の技術> 通常、ターボ圧縮機においては、インペラの吐き出し
側で流体を減速して運動エネルギを静圧に変換するディ
フューザと、該ディフューザに連続したスクロール(渦
巻き室)とが設けられている。通常、ディフューザは、
平行な側壁によって形成されている。
従来、ターボ圧縮機において、ディフューザの効率を
向上させるために、ディフューザの入口部の幅を狭めた
ものがあった(特開昭55−156299号公報参照)。これ
は、ディフューザの入口部での逆流を回避して渦による
損失を減少せんとするものである。
<発明が解決しようとする課題> ところが、上記のように、入口部の幅を狭めても、流
れの剥離を抑制することに限界があり、流れを一部整流
化するのみである。特に、入口部の幅を狭め過ぎた場合
には、インペラとのマッチングがくずれて損失が増大す
るので、部分負荷効率の向上に限界があり、仕様点効率
及び最大風量の低下を招く傾向があった。さらに、入口
部の幅を狭めても、サージング限界を高めることができ
ないという難点もあった。
この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであ
り、流体の流れの状態を良くし、仕様点効率及び部分負
荷効率を広範囲に亘り向上させることができると共にサ
ージング限界を高めることができるターボ圧縮機のディ
フューザを提供することを目的としている。
<課題を解決するための手段> 上記目的を達成するためのこの発明に係るターボ圧縮
機のディフューザは、インペラの吐出し側に対向配置さ
れた一対の側壁間に形成され、インペラから流入した流
体をスクロールに導くと共に、スクロールが一方の側壁
側へ片寄った状態に形成されているターボ圧縮機のディ
フューザにおいて、入口部と、この入口部に連続し入口
部の通路幅と等しい一定の通路幅を有すると共にディフ
ューザの全長の70〜90%まで達して動圧を静圧に略回復
させるための途中部と、この途中部に連続すると共にス
クロール側に向かってテーパ状に通路幅を狭めて出口端
まで達する出口側絞り部からなる出口部とを備え、上記
出口側絞り部は、上記スクロールが片寄っている側の側
壁を他側の側壁に向かってテーパ状に突出させることに
より形成されていることを特徴とするものである。
<作用> 上記の構成のターボ圧縮機のディフューザによれば、
ディフューザの全長の70〜90%まで達する途中部によっ
て静圧回復が概ね完了させ、この状態で、出口端まで達
するテーパ状の出口側絞り部によって絞ることから、圧
力損失が少なくてすみ、さらに、流れの剥離を抑制する
ことができると共に、スクロールからの逆流を防止する
ことができる。
特に、スクロール片寄っている側の側壁を他側の側壁
に向かってテーパ状に突出させることにより出口側絞り
部が形成されているので、スクロールからの逆流を効果
的に防止でき、効率を向上させることができる。
以下実施例を示す添付図面によって詳細に説明する。
第1図はこの発明に係るディフューザの一実施例を含
むターボ圧縮機の部分断面図であり、このディフューザ
Aは、インペラ1の吐出し方向に延びた一対の対向した
側壁2及び側壁3により形成されており、ディフューザ
Aに連続してスクロール4が配設されている。このスク
ロール4は、一方の側壁2側に片寄った状態で形成され
ている。
ディフューザAは、上流側から下流側に向かって、そ
れぞれ形状の異なる入口部5、途中部6及び出口部7に
より構成されている。
第2図を参照して、入口部5には、下流側に向かって
側壁2及び側壁3の双方をテーパ状にして通路幅を狭め
ることにより、入口側絞り部5aが形成されている。ま
た、途中部6において、側壁2及び側壁3は平行となっ
ており、ここでの通路幅t2は一定にしてある。上記入口
側絞り部5aにおける絞り比、すなわち、入口側絞り部5a
の最小の通路幅「この通路幅は途中部6における通路幅
t2に等しい]は、インペラ1の出口幅t1の75%以上で且
つ59%以下に設定してある。なお、第2図を参照して、
入口側絞り部5aのテーパ端5cの径D2は、インペラ1の出
口径D1の1.05〜1.2程度に設定することが好ましい。ま
た、入口側絞り部5aでの各側壁2,3の傾斜角度は、15〜3
0度程度が好ましい。
出口部7には、起点10としてスクロール4側に向かっ
て通路幅をテーパ状に狭めた出口側絞り部7aが形成され
ている。この出口側絞り部7aは、スクロール4を片寄ら
せた側の側壁2を、通路側へ突出させることにより、通
路幅を狭めている。上流から下流に向かって静圧の回復
状態を示す第3図を参照して、上記の起点10は、ディフ
ューザAの出口部7付近で動圧が静圧に略回復している
部分(第3図において点rの前後)に設定してあり、イ
ンペラ1の径やディフューザの全長等を考慮すれば、入
口5bからディフューザの全長の略70〜90%の範囲にある
ことが好ましい。この起点10の位置は、仕様点ヘッドが
高くなると、スクロール4側に寄せる必要がある。ま
た、出口側絞り部7aのテーパの角度は、15度以上で25度
以下にしてある。出口側絞り部7aの最小の通路幅t3は、
途中部6の通路幅t2の3/8以上で3/4以下に設定してあ
る。また、出口側絞り部7aの側壁2は、スクロール4内
の径方向の中央付近まで進出した状態に配置されてい
る。出口7bはエッジではなく、面取りがなされている。
この面取り面は側壁3と平行でも良いし、アール状でも
良い。
この実施例によれば、静圧が概ね回復している出口部
7付近の部分(点rの前後)を起点10として通路幅を狭
めた出口側絞り部7aを設けていることから、この出口側
絞り部7aにより、流れの剥離を抑制し、静圧上昇させる
と共にスクロール4からの逆流を防止することができ、
これにより、シージング限界を高め且つ部分負荷効率を
向上させることができる。
特に、出口側絞り部7aの最小の通路幅t3が、途中部6
の通路幅t2の3/8以上で3/4以下にしてあるので、サージ
ング余裕を増し、仕様点1効率及び部分負荷効率を向上
させる上で一層好適である。さらに、出口側絞り部7aの
起点を、ディフューザの入口からディフューザの全長の
70〜90%の位置に設定してあるので、サージング限界を
高め、且つ部分負荷効率を向上させる上で一層好適であ
る。
また、入口部5において下流側に向かってテーパ状に
通路幅を狭めた入口側絞り部5aを設けており、且つ途中
部6の通路幅t2を、仕様点風量に応じインペラの出口幅
t1の75%以上で95%以下に設定しているので、ディフュ
ーザの入口部5の流れの歪み、偏りを減少できる。そし
て、入口側絞り部5aと出口側絞り部7aとの相乗効果によ
り、仕様点及び部分負荷を含め全体的な効率改善が図れ
ると共に、サージング余裕を増加させることができ、且
つ最大風量が低下することもない。
さらに、スクロール4が、一方の側壁2側に片寄った
状態で形成されており、上記出口側絞り部7aが、上記一
方の側壁2を通路側へ突出させて形成されているので、
スクロール4からの逆流を効果的に防止でき、部分負荷
効率をさらに向上させることができる。
第4図は前記の実施例と同じ通路幅形状に設定したデ
ィフューザにおいて、側壁を移動可能としたものを示し
ている。同図において、スクロール4を片寄らせた側に
ある側壁2が、ベース側壁20と、このベース側壁20に対
して移動自在に取り付けられた可動側壁8とを有してお
り、可動側壁8を移動させる可動側壁操作手段9が設け
られている。
可動側壁操作手段9は、圧縮機の吸込み口側に設けら
れ駆動軸92によって駆動されるベーン91と、駆動軸92に
一体的に設けられた偏心カム93と、この偏心カム93に一
端部94aが接触し、他端部94bがベース側壁20を貫通して
可動側壁8の裏面に固定された操作軸94とからなる。
この実施例によれば、前記の実施例と同様の作動効果
を奏することに加えて、以下の作用効果を奏する。すな
わち、駆動軸92によってベーン91が吸込み口を閉塞する
方向に回動させられると、インペラ1による吸込み量が
減少する。一方、駆動軸92の回動に伴って偏心カム93が
回動し[第5図(a)及び第5図(b)参照]、この偏
心カム93が、操作軸94を介して可動側壁8を第4図にお
いて右方向に移動させることにより、通路幅が狭められ
る。また、ベーン91が吸込み口を開放する方向に回動さ
せられた場合は、ディフューザ内の圧力により可動側壁
8が、通路幅を拡げる方向に移動する。このように、負
荷に応じて通路幅を増減させるので、負荷の大小にかか
わらず効率を向上させることができると共に、省エネが
図れる。特に、ベーン92の開度に応じて通路幅を調整す
るので、負荷の変化に対して上記調整を迅速に行える。
なお、この実施例において、第6図に示すように、デ
ィフューザの出口の絞り部のみに可動側壁を設けること
もできる。また、操作軸94を油圧により移動させること
もできる。さらに、形状記憶合金製のスプリングをヒー
タにて加熱することにより変形させて操作軸94を移動さ
せることもできる。
<比較例I〜IV> 下記の表1の絞り比(t1/t2)で、入口部のみを絞っ
た比較例I〜IIIを作製した。比較例IVは、まったく絞
っていないものである。
上記の比較例I〜IVについて、部分負荷効率を測定し
たところ、第7図に示すような結果を得た。
第7図に示すように、MAX風量の80〜90%前後の通常
の仕様点風量域においては、比率0.8である比較例IIが
最適であり、これより高風量では、比率0.95である比較
例Iが最適である。0.70とした比較例IIIは、絞り過ぎ
によってインペラ(1)とのマッチングがくずれて損失
が増大しており、使用するメリットはないと判明した。
以上から、入口部を絞ったものでは、その絞り比が0.
8程度が最も好ましいと判明した。また、絞り比が0.75
〜0.95であれば実用上、好ましいと推察される。
<試験例I、II及び比較例II> 入口部のみを絞ったもので最も好ましい結果が得られ
た上記の比較例IIに加えて、出口部のみを絞った試験例
Iと、入口部を比較例IIと同一の絞り比で絞り且つ出口
部を試験例Iと同一の絞り比で絞った試験例IIとを制作
した(表2参照)。
そして、これらの試験例I、II及び比較例IIを用い
て、サージング限界を測定したところ、第8図に示すよ
うな結果を得、また、部分負荷効率を測定したところ、
第9図に示すような結果を得た。
第8図に示すように、低風量から高風量に亘る範囲に
おいて、出口部のみを絞った試験例I、及び入口部と出
口部の双方を絞った試験例IIのサージング限界は、入口
部のみを絞った比較例IIのそれよりも高く、このことか
ら、出口側絞り部7aを設けることにより、サージング限
界を向上できることが実証された。また、試験例IIのサ
ージング限界は、試験例Iのサージング限界よりもやや
高くなっているが、これは、入口部と出口部の双方を絞
ることによる相乗効果と推察される。
第9図に示すように、低風量から高風量に亘る略全範
囲において、試験例I、IIの部分負荷効率は、比較例II
のそれよりも高く、試験例IIの部分負荷効率は、試験例
Iの部分負荷効果よりも高い。このことから、出口部を
所定の絞り比で絞ったものは、入口部を絞ったもののう
ち最も好ましい結果が得られたもの以上に、部分負荷効
率の向上が可能であることが実証された。また、入口部
と出口部の双方を絞ったものは、出口部のみを絞ったも
のに以上に、部分負荷効率を向上することができると判
明した。これは、入口側絞り部5aと出口側絞り部7aとの
相乗効果により、広い範囲の効率改善を達成できたもの
と推察される。
<試験例II、III及び比較例II、V> 上記の試験例II及び比較例IIに加えて、通路幅t2、通
路幅t3、出口幅t1の寸法関係を下記の表3のように設定
した試験例III及び比較例Vのディフューザを製作し
た。
出口絞り部7aの絞りの影響を明確にするために、入口
絞り部5aの絞り比は一定にしてある。
上記の試験例及び比較例について、サージング限界を
測定したところ、第10図に示すような結果を得、また、
部分負荷効率を測定したところ、第11図に示すような結
果を得た。第12図は最大効率を示している。
第10図に示すように、低風量から高風量に亘る範囲に
おいて、入口部と出口部の双方を絞った試験例II、III
及び比較例Vのサージング限界は、入口部のみを絞った
比較例IIのそれよりも高く、試験例III、試験例II、比
較例Vの順に、出口部での絞り比が大きくなる程、サー
ジング限界が高くなっている。
第11図に示すように、出口部での絞り比を0.25とした
比較例Vの部分負荷効率は、入口部のみを絞った比較例
IIに対して、低風量では高いが、高風量では低くなって
いる。出口部での絞り比を0.5とした試験例IIの部分負
荷効率は、入口部のみを絞った比較例IIに対し、全範囲
に亘って、高くなっている。また、出口部での絞り比を
0.75とした試験例IIIの部分負荷効率は、比較例IIに対
して、低風量から中風量に亘って高くなっており、高風
量では略同等となっている。一方、第12図に示すよう
に、最大効率は、出口部での絞りが0.5〜1.0の範囲で
は、略同等となっている。これらから、通常の仕様点風
量に対する適合性を考慮し、部分負荷も考慮すると、人
口部と出口部の双方を絞ったものにおいて、出口側絞り
部7aにおける最小の通路幅t3を、途中部6における通路
幅t2の3/8〜3/4に設定することにより、仕様点効率と部
分負荷効率を共にバランス良く高めることができると推
察される。
<試験例I、IV及び比較例II、VI> 上記の実施例I及び比較例IIに加えて、出口部のみを
次頁の表4のように絞った試験例IV及び比較例VIを製作
し、サージング限界を測定したところ、第13図に示すよ
うな結果を得、部分負荷効率を測定したところ、第14図
に示すような結果を得た。
第13図に示すように、出口部のみを絞った試験例I、
IV及び比較例VIのサージング限界は、入口部のみを絞っ
て最も良い結果を得た比較例IIのサージング限界もりも
高くなっている。また、サージング限界は、試験例IV、
試験例I及び比較例VIの順に高く、出口部を絞る程、サ
ージング限界が高くなっている。
一方、第14図に示すように、出口部での絞り比を0.25
とした比較例VIの部分負荷効率は、入口部のみを絞った
比較例IIに対して、低風量では高いが、中風量以上では
かなり低くなっている。出口部での絞り比を0.5とした
試験例Iの部分負荷効率は、入口部のみを絞った比較例
IIに対し、全範囲に亘って、高くなっている。また、出
口部での絞り比を0.75とした試験例IVの部分負荷効率
は、比較例IIに対して、低風量から中風量に亘って高く
なっており、高風量では略同等となっている。これらか
ら、通常の仕様点風量に対する適合性を考慮し、部分負
荷も考慮すると、出口部のみを絞ったものにおいて、出
口側絞り部7aにおける最小の通路幅t3を、途中部6にお
ける通路幅t2の3/8〜3/4に設定することにより、仕様点
効率と部分負荷効率を共にバランス良く高めることがで
きると推察される。
<発明の効果> 以上のように、この発明に係るターボ圧縮機によれ
ば、途中部によって静圧回復が概ね完了させ、次いでテ
ーパ状に出口端まで達する出口側絞り部により絞るの
で、圧力損失が少なく、流れの剥離を抑制することがで
きると共に、スクロールからの逆流を防止することがで
き、これにより、サージング限界を高め且つ部分負荷効
率を向上させることができる。
特に、スクロールが片寄っている側の側壁を他側の側
壁に向かってテーパ状に突出させることにより出口側絞
り部が形成されているので、スクロールからの逆流を効
果的に防止でき、より効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明のディフューザの一実施例を含むター
ボ圧縮機の部分断面図、 第2図はディフューザの断面図、 第3図はターボ圧縮機各部の圧力分布を示す図、 第4図は他の実施例を示す概略構成図、 第5図(a)及び(b)は偏心カムの作動を示す概略
図、 第6図はさらに他の実施例を示す要部断面図、 第7図は効率を示す図、 第8図はサージング限界を示す図、 第9図は部分負荷効率を示す図、 第10図はサージング限界を示す図、 第11図は部分負荷効率を示す図、 第12図は最大効率を示す図。 第13図はサージング限界を示す図、 第14図は部分負荷効率を示す図である。 A……ディフューザ、1……インペラ、 2,3……側壁、4……スクロール、 5……入口部、5a……入口側絞り部、 7……出口部、7a……出口側絞り部、 8……可動側壁、10……起点。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インペラ(1)の吐出し側に対向配置され
    た一対の側壁(2,3)間に形成され、インペラ(1)か
    ら流入した流体をスクロール(4)に導くと共に、スク
    ロール(4)が一方の側壁(2)側へ片寄った状態に形
    成されているターボ圧縮機のディフューザにおいて、 入口部(5)と、 この入口部(5)に連続し入口部(5)の通路幅と等し
    い一定の通路幅を有すると共にディフューザの全長70〜
    90%まで達して動圧を静圧に略回復させるための途中部
    (6)と、 この途中部(6)に連続すると共にスクロール(4)側
    に向かってテーパ状に通路幅を狭めて出口端まで達する
    出口側絞り部(7a)からなる出口部(7)とを備え、 上記出口側絞り部(7a)は、上記スクロール(4)が片
    寄っている側の側壁(2)を他側の側壁(3)に向かっ
    てテーパ状に突出させることにより形成されていること
    を特徴とするターボ圧縮機のディフューザ。
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