JP2721595B2 - 多結晶薄膜の製造方法 - Google Patents

多結晶薄膜の製造方法

Info

Publication number
JP2721595B2
JP2721595B2 JP3126837A JP12683791A JP2721595B2 JP 2721595 B2 JP2721595 B2 JP 2721595B2 JP 3126837 A JP3126837 A JP 3126837A JP 12683791 A JP12683791 A JP 12683791A JP 2721595 B2 JP2721595 B2 JP 2721595B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
substrate
polycrystalline thin
axis
target
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP3126837A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04331795A (ja
Inventor
康裕 飯島
信夫 田辺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujikura Ltd
Original Assignee
Fujikura Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujikura Ltd filed Critical Fujikura Ltd
Priority to JP3126837A priority Critical patent/JP2721595B2/ja
Publication of JPH04331795A publication Critical patent/JPH04331795A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2721595B2 publication Critical patent/JP2721595B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は結晶方位の整った多結晶
薄膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年になって発見された酸化物超電導体
は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す優れた超電導
体であるが、現在、この種の酸化物超電導体を実用的な
超電導体として使用するためには、種々の解決するべき
問題点が存在している。その問題点の1つが、酸化物超
電導体の臨界電流密度が低いという問題である。
【0003】前記酸化物超電導体の臨界電流密度が低い
という問題は、酸化物超電導体の結晶自体に電気的な異
方性が存在することが大きな原因となっており、特に酸
化物超電導体はその結晶軸のa軸方向とb軸方向には電
気を流し易いが、c軸方向には電気を流しにくいことが
知られている。このような観点から酸化物超電導体を基
材上に形成してこれを超電導体として使用するために
は、基材上に結晶配向性の良好な状態の酸化物超電導体
を形成し、しかも、電気を流そうとする方向に酸化物超
電導体の結晶のa軸あるいはb軸を配向させ、その他の
方向に酸化物超電導体のc軸を配向させる必要がある。
【0004】そこで従来、基板や金属テープなどの基材
上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成するため
に種々の手段が試みられてきた。その1つの方法とし
て、酸化物超電導体と結晶構造の類似したMgOあるい
はSrTiO3などの単結晶基材を用い、これらの単結
晶基材上にスパッタリングなどの成膜法により酸化物超
電導層を形成する方法が実施されている。
【0005】前記MgOやSrTiO3の単結晶基材を
用いてスパッタリングなどの成膜法を行なえば、酸化物
超電導層の結晶が単結晶基材の結晶を基に結晶成長する
ために、その結晶配向性を良好にすることが可能であ
り、これらの単結晶基材上に形成された酸化物超電導層
は、数十万〜数百万A/cm2程度の十分に高い臨界電
流密度を発揮することが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、酸化物超電
導体を導体として使用するためには、テープ状などの長
尺の基材上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成
する必要がある。ところが、金属テープなどの基材上に
酸化物超電導層を直接形成すると、金属テープ自体が多
結晶体でその結晶構造も酸化物超電導体と大きく異なる
ために、結晶配向性の良好な酸化物超電導層は到底形成
できないものである。しかも、酸化物超電導層を形成す
る際に行なう熱処理によって金属テープと酸化物超電導
層との間で拡散反応が生じて酸化物超電導層の結晶構造
が崩れ、超電導特性が劣化する問題がある。
【0007】そこで従来、金属テープなどの基材上に、
MgOやSrTiO3などの中間層を被覆し、この中間
層上に酸化物超電導層を形成することが行なわれてい
る。ところがこの種の中間層上に形成した酸化物超電導
層は、単結晶基材上に形成された酸化物超電導層よりも
かなり低い臨界電流密度(例えば数千〜一万A/c
2)程度しか示さないという問題があった。これは、
以下に説明する理由によるものと考えられる。
【0008】図16は、金属テープなどの基材1上に中
間層2を形成し、この中間層2上に酸化物超電導層3を
形成した酸化物超電導導体の断面構造を示すものであ
る。ここで図16に示す構造において、酸化物超電導層
3は多結晶状態であり、多数の結晶粒4が無秩序に結合
した状態となっている。これらの結晶粒4の1つ1つを
個々に見ると各結晶粒4の結晶のc軸は基材表面に対し
て垂直に配向しているものの、a軸とb軸は無秩序な方
向を向いていると考えられる。このように酸化物超電導
層の結晶粒毎にa軸とb軸の向きが無秩序になると、結
晶配向性の乱れた結晶粒界において超電導状態の量子的
結合性が失われる結果、超電導特性、特に臨界電流密度
の低下を引き起こすものと思われる。また、前記酸化物
超電導体がa軸およびb軸配向していない多結晶状態と
なるのは、その下に形成された中間層2がa軸およびb
軸配向していない多結晶状態であるために、酸化物超電
導層3を成膜する場合に、中間層2の結晶に整合するよ
うに酸化物超電導層3が成長するためであると思われ
る。
【0009】ところで、前記酸化物超電導体の応用分野
以外において、多結晶体の基材上に各種の配向膜を形成
する技術が利用されている。例えば光学薄膜の分野、光
磁気ディスクの分野、配線基板の分野、高周波導波路や
高周波フィルタ、空洞共振器などの分野であるが、いず
れの技術においても基材上に膜質の安定した配向性の良
好な多結晶薄膜を形成することが課題となっている。即
ち、多結晶薄膜の結晶配向性が良好であるならば、その
上に形成される光学薄膜、磁性薄膜、配線用薄膜などの
質が向上するわけであり、更に基材上に結晶配向性の良
好な光学薄膜、磁性薄膜、配線用薄膜などを直接形成で
きるならば、なお好ましいものである。
【0010】また、高周波数帯域で使用される磁気ヘッ
ドのコア材として、高透磁率を有し、熱的にも安定なパ
ーマロイ、あるいは、センダストなどの磁性薄膜が実用
化されている。これらの磁性薄膜は、従来、蒸着やスパ
ッタにより所定の基板上に形成されるが、これらの磁性
薄膜の結晶方位の配向性が低いものであると、磁性薄膜
の磁気異方性の制御が困難になり、膜面内では結晶粒の
方位が無秩序になり、透磁率の高周波特性が損なわれる
問題があった。また、膜面内での結晶軸の軸方向が無秩
序であると、面内磁化にスキューやリップルと呼ばれる
局所的なゆらぎが発生し、前述のように透磁率の高周波
特性が損なわれることになる。
【0011】本発明は前記課題を解決するためになされ
たもので、基材の成膜面に対して直角向きに結晶軸のc
軸を配向させることができると同時に、成膜面と平行な
面に沿って多結晶薄膜の結晶軸のa軸およびb軸をも揃
えることができ、結晶配向性に優れた多結晶薄膜を形成
することができる方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は前
記課題を解決するために、スパッタリングによりターゲ
ットの構成粒子を叩き出して基材上に堆積させ、基材上
に多結晶薄膜を形成する方法において、前記構成粒子を
基材上に堆積させる際に、ターゲットから叩き出して基
材上の成膜面に堆積させる構成粒子の他に、イオン源が
発生させたイオンを基材の成膜面に対して斜め方向から
照射しつつ前記構成粒子を堆積させるとともに、前記タ
ーゲットとして、イットリウム安定化ジルコニア、Mg
O、SrTiO 3 のいずれかからなるものを用いるもの
である。
【0013】請求項2記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1記載の基材に対してイオンを照射する
際の照射角度を基材の成膜面に対して40〜60度の範
囲とするものである。
【0014】請求項3記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1記載のイオンとして、不活性ガスイオ
ン、あるいは、不活性ガスと多結晶薄膜構成元素の少な
くとも1種を含む反応ガスの混合イオンを用いることを
特徴とする多結晶薄膜の製造方法。
【0015】
【作用】スパッタリングによりターゲットから叩き出し
た構成粒子を基材の成膜面に堆積する際に、斜め方向か
らイオンも同時に照射するので、構成粒子が効率的に活
性化される結果、基材の成膜面に対してc軸配向性に加
えてa軸配向性とb軸配向性も向上する。その結果、結
晶粒界が多数形成された多結晶薄膜であっても、結晶粒
ごとのa軸配向性とb軸配向性とc軸配向性のいずれも
が良好になり、膜質の向上した多結晶薄膜が得られる。
【0016】また、このような配向性の良好な多結晶薄
膜を形成するには、イオンの照射角度を45度にするこ
とが最も好ましい。更に、構成粒子を活性化するには、
アルゴンイオンと酸素イオンが好ましい。
【0017】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。図1は、本発明方法を実施する際に用いる
装置の一例を示すものであり、この例の装置は、スパッ
タ装置にイオンビームアシスト用のイオン源を設けた構
成となっている。
【0018】本実施例の装置は、基材Aを保持する基材
ホルダ11と、この基材ホルダ11の斜め上方に所定間
隔をもって対向配置された板状のターゲット12と、前
記基材ホルダ11の斜め上方に所定間隔をもって対向さ
れ、かつ、ターゲット12と離間して配置されたイオン
源13と、前記ターゲット12の下方においてターゲッ
ト12の下面に向けて配置されたスパッタビーム照射装
置14を主体として構成されている。また、図中符号1
5は、ターゲット12を保持したターゲットホルダを示
している。
【0019】また、本実施例の装置は図示略の真空容器
に収納されていて、基材Aの周囲を真空雰囲気に保持で
きるようになっている。更に前記真空容器には、ガスボ
ンベなどの雰囲気ガス供給源が接続されていて、真空容
器の内部を真空などの低圧状態で、かつ、アルゴンガス
あるいはその他の不活性ガス雰囲気または酸素を含む不
活性ガス雰囲気にすることができるようになっている。
【0020】前記基材Aは、例えば板材、線材、テープ
材などの種々の形状のもので、基材Aは、銀、白金、ス
テンレス鋼、銅などの金属材料や合金、あるいは、各種
ガラスあるいは各種セラミックスなどからなるものであ
る。なお、基材Aとして長尺の金属テープ(ハステロイ
製あるいはステンレス製などのテープ)を用いる場合
は、真空容器の内部に金属テープの送出装置と巻取装置
を設け、送出装置から連続的に基材ホルダ11に基材A
を送り出し、続いて巻取装置で巻き取ることでテープ状
の基材上に多結晶薄膜を連続成膜することができるよう
に構成することが好ましい。
【0021】前記基材ホルダ11は内部に加熱ヒータを
備え、基材ホルダ11の上に位置された基材Aを所用の
温度に加熱できるようになっている。前記ターゲット1
2は、目的とする多結晶薄膜を形成するためのものであ
り、目的の組成の多結晶薄膜と同一組成あるいは近似組
成のものなどを用いる。ターゲット12として具体的に
は、MgOあるいはY23で安定化したジルコニア(Y
SZ)、MgO、SrTiO3などを用いるがこれに限
るものではなく、形成しようとする多結晶薄膜に見合う
ターゲッを用いれば良い。
【0022】前記イオン源13は、容器の内部に、蒸発
源を収納し、蒸発源の近傍に引き出し電極を備えて構成
されている。そして、前記蒸発源から発生した原子また
は分子の一部をイオン化し、そのイオン化した粒子を引
き出し電極で発生させた電界で制御してイオンビームと
して照射する装置である。粒子をイオン化するには直流
放電方式、高周波励起方式、フィラメント式、クラスタ
イオンビーム方式などの種々のものがある。フィラメン
ト式はタングステン製のフィラメントに通電加熱して熱
電子を発生させ、高真空中で蒸発粒子と衝突させてイオ
ン化する方法である。また、クラスタイオンビーム方式
は、原料を入れたるつぼの開口部に設けられたノズルか
ら真空中に出てくる集合分子のクラスタを熱電子で衝撃
してイオン化して放射するものである。本実施例におい
ては、図2に示す構成の内部構造のイオン源13を用い
る。このイオン源13は、筒状の容器16の内部に、引
出電極17とフィラメント18とArガスなどの導入管
19とを備えて構成され、容器16の先端からイオンを
ビーム状に平行に照射できるものである。
【0023】前記イオン源13は、図1に示すようにそ
の中心軸Sを基材Aの上面(成膜面)に対して傾斜角度
θでもって傾斜させて対向されている。この傾斜角度θ
は40〜60度の範囲が好ましいが、特に45度前後が
最も好ましい。従ってイオン源13は基材Aの上面に対
して傾斜角θでもってイオンを照射できるように配置さ
れている。なお、イオン源13によって基材Aに照射す
るイオンは、He+、Ne+、Ar+、Xe+、Kr+など
の希ガスのイオン、または、それらと酸素の混合イオン
でも良い。
【0024】前記スパッタビーム照射装置14は、イオ
ン源13と同等の構成をなし、ターゲット12に対して
イオンを照射してターゲット12の構成粒子を叩き出す
ことができるものである。なお、本発明方法ではターゲ
ット13の構成粒子を叩き出すことができることが重要
であるので、ターゲット12に高周波コイルなどで電圧
を印可してターゲット12の構成粒子を叩き出し可能な
ように構成し、スパッタビーム照射装置14を省略して
も良い。
【0025】次に前記構成の装置を用いて基材A上にY
SZの多結晶薄膜を形成する方法について説明する。基
材A上に多結晶薄膜を形成するには、YSZのターゲッ
トを用いるとともに、基材Aを収納している容器の内部
を真空引きして減圧雰囲気とする。そして、イオン源1
3とスパッタビーム照射装置14を作動させる。スパッ
タビーム照射装置14からターゲット12にイオンを照
射すると、ターゲット12の構成粒子が叩き出されて基
材A上に飛来する。そして、基材A上に、ターゲット1
2から叩き出した構成粒子を堆積させると同時に、イオ
ン源13からArイオンと酸素イオンの混合イオンを照
射する。このイオン照射する際の照射角度θは、45度
が最も好ましく、40〜60度の範囲ならば好適であ
る。ここでθを90度とすると、多結晶薄膜のc軸は基
材Aの成膜面に対して直角に配向するものの、基材Aの
成膜面上に(111)面が立つので好ましくない。ま
た、θを30度とすると、多結晶薄膜はc軸配向すらし
なくなる。前記の角度でイオン照射するならば、多結晶
薄膜の結晶の(100)面が立つようになる。
【0026】このような照射角度でイオン照射を行ない
ながらスパッタリングを行なうことで、基材A上に形成
されるYSZの多結晶薄膜の結晶軸のa軸とb軸とを配
向させることができるが、これは、堆積されている途中
のスパッタ粒子が適切な角度でイオン照射されたことに
より、効率的に活性化された結果によるものと思われ
る。
【0027】図3に、前記の方法でYSZの多結晶薄膜
Bが堆積された基材Aを示す。図3に示す多結晶薄膜B
は、立方晶系の結晶構造を有する微細な結晶粒20が、
多数、結晶粒界を介して接合一体化されてなり、各結晶
粒20の結晶軸のc軸は基材Aの上面(成膜面)に対し
て直角に向けられ、各結晶粒20の結晶軸のa軸どうし
およびb軸どうしは、互いに同一方向に向けられて面内
配向されている。また、各結晶粒20のc軸が基材Aの
(上面)成膜面に対して直角に配向されている。そし
て、各結晶粒20のa軸(あるいはb軸)どうしは、そ
れらのなす角度(図2に示す粒界傾角K)を30度以内
にして接合一体化されている。
【0028】前記のように基材A上にYSZの多結晶薄
膜Bを形成したならば、この多結晶薄膜B上に酸化物超
電導層を形成する。酸化物超電導層を多結晶薄膜B上に
形成するには、目的の酸化物超電導体と近似組成あるい
は同一組成のターゲットを用い、酸素ガス雰囲気中など
においてスパッタリングを行なって多結晶薄膜B上に酸
化物超電導層を形成しても良いし、前記ターゲットにレ
ーザビームを照射して構成粒子をえぐり出して蒸着する
レーザ蒸着法などを実施しても良い。
【0029】前記の多結晶薄膜Bにおいては、c軸が基
材Aの成膜面に対して垂直な方向に配向し、成膜面と平
行な面に沿ってa軸どうしおよびb軸どうしが良好な配
向性を有するので、スパッタリングやレーザ蒸着で多結
晶薄膜Bの上に積層される酸化物超電導層も多結晶薄膜
Bの配向性に整合するように堆積して結晶成長する。
【0030】よって前記多結晶薄膜B上に形成された酸
化物超電導層は、多結晶状態の酸化物超電導層となる
が、この酸化物超電導層の結晶粒の1つ1つにおいて
は、基材Aの厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向
し、基材Aの長手方向にa軸どうしあるいはb軸どうし
が配向している。従って得られた酸化物超電導層は結晶
粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超
電導特性の劣化が少ないので、基材Aの長手方向に電気
を流し易く、臨界電流密度の優れたものが得られる。
【0031】(製造例)図1に示す構成の装置を使用
し、この装置を収納した容器内部を真空ポンプで真空引
きして3.0×10-4トールに減圧した。基材は、幅1
0mm、厚さ0.5mm、長さ10cmのハステロイC
276テープを使用した。ターゲットはYSZ(安定化
ジルコニア)製のものを用い、スパッタ電圧1000
V、スパッタ電流100mA、イオン源のビームの照射
角度を45度あるいは90度に設定し、イオン源のアシ
スト電圧を300V、500V、700Vにそれぞれ設
定するとともに、イオン源の電流を15〜50mAにそ
れぞれ設定して基材上にスパッタリングと同時にイオン
照射を行なって厚さ0.3μmの膜状のYSZ層を形成
した。
【0032】得られた各YSZの多結晶薄膜についてC
uKα線を用いたθ-2θ法によるX線回折試験を行な
った。図5〜図7は、イオン源の入射角45度でイオン
ビーム電圧とイオンビーム電流を適宜変更して測定した
試料の回折強さを示す図である。図5〜図7に示す結果
から、YSZの(200)面あるいは(400)面のピ
ークが認められ、YSZの多結晶薄膜の(100)面が
基材表面と平行な面に沿って配向しているものと推定す
ることができ、YSZの多結晶薄膜がそのC軸を基材上
面に垂直に配向させて形成されていることが判明した。
なお、図5〜図7に示された各ピークの大きさの比較か
ら、ビーム電流が多く、ビーム電圧が小さい方が、即
ち、イオンを低い速度で大量に照射した方が多結晶薄膜
のc軸配向性を向上できることが判明した。
【0033】図8〜図10は、イオン源の入射角度90
度でイオンビーム電圧とイオンビーム電流を適宜変更し
て測定した試料の回折強さを示す図である。図8〜図1
0に示す結果から、イオン源の入射角度を90度にして
もc軸配向性に関しては十分な配向性が認められた。
【0034】次に、前記のようにc軸配向された試料に
おいて、YSZ多結晶薄膜のa軸あるいはb軸が配向し
ているか否かを測定した。その測定のためには、図11
に示すように、基材A上に形成されたYSZの多結晶薄
膜にX線を角度θで照射するとともに、入射X線を含む
鉛直面において、入射X線に対して2θの角度の位置に
X線カウンター25を設置し、入射X線を含む鉛直面に
対する水平角度φの値を適宜変更して、即ち、基材Aを
図11において矢印に示すように回転角φだけ回転させ
ることにより得られる回折強さを測定することにより多
結晶薄膜Bのa軸どうしまたはb軸どうしの配向性を計
測した。その結果を図12と図13に示す。
【0035】図12に示すようにイオンビームの入射角
度を45度に設定して製造した試料の場合、φを90度
と0度とした場合、即ち、回転角φに対して90度おき
にYSZの(311)面のピークが現われている。これ
は、基板面内におけるYSZの(011)ピークに相当
しており、YSZ多結晶薄膜のa軸どうしまたはb軸ど
うしが配向していることが明らかになった。これに対
し、図13に示すように、イオンビーム入射角度を90
度に設定して製造した試料の場合、特別なピークが見ら
れず、a軸とb軸の方向は無秩序になってることが判明
した。
【0036】以上の結果から本発明方法によって製造さ
れた試料の多結晶薄膜は、c軸配向は勿論、a軸どう
し、および、b軸どうしも配向していることが明らかに
なった。よって本発明方法を実施することにより、配向
性に優れたYSZなどの多結晶薄膜を製造できることが
明らかになった。
【0037】一方、図14は、図12で用いたYSZ多
結晶薄膜の試料を用い、この試料の多結晶層の各結晶粒
における結晶配向性を試験した結果を示す。この試験で
は、図11を基に先に説明した方法でX線回折を行なう
場合、φの角度を−10度〜45度まで5度刻みの値に
設定した際の回折ピークを測定したものである。図14
に示す結果から、得られたYSZの多結晶薄膜の回折ピ
ークは、粒界傾角30度以内では表われるが、45度で
は消失していることが明らかである。従って、得られた
多結晶薄膜の結晶粒の粒界傾角は、30度以内に収まっ
ていることが判明し、良好な配向性を有することが明ら
かになった。
【0038】図15は、本発明方法を実施する際に用い
て好適な装置の他の例を示すものである。この例の装置
において図1に記載した装置と同等の構成部分には同一
符号を付してそれらの説明を省略する。この例の装置に
おいて図1に示す装置と異っているのは、ターゲット1
2を3個設け、スパッタビーム照射装置14を3個設
け、基材Aとターゲット12に高周波電源30を接続し
た点である。
【0039】この例の装置では、3個のターゲット1
2、12、12から、それぞれ別種の粒子を叩き出して
基材A上に複合膜を形成することができるので、より複
雑な組成の多結晶膜でも製造できる特徴がある。また、
高周波電源30を作動させてターゲット12からスパッ
タすることもできる。この例の装置を用いて本発明方法
を実施する場合も図1に示す装置の場合と同様に配向性
に優れた多結晶薄膜を得ることができる。
【0040】ところで、図1または図15に示す構成の
装置を用いて本発明方法を実施すれば、配向性の良好な
光学薄膜、配向性の良好な光磁気ディスクの磁性薄膜、
配向性の良好な集積回路用微細配線用薄膜、高周波導波
路や高周波フィルタおよび空洞共振器などに用いられる
誘電体薄膜のいずれでも形成することができる。即ち、
結晶配向性の良好な多結晶薄膜B上に、これらの薄膜を
スパッタリング、レーザ蒸着、真空蒸着、CVD(化学
蒸着)などの成膜法で形成するならば、多結晶薄膜Bと
良好な整合性でこれらの薄膜が堆積または成長するの
で、配向性が良好になる。
【0041】これらの薄膜を本発明方法で製造すること
で、配向性の良好な高品質の薄膜が得られるので、光学
薄膜においては光学特性に優れ、磁性薄膜においては磁
気特性に優れ、配線用薄膜においてはマイグレーション
の生じない、誘電体薄膜においては誘電特性の良好な薄
膜が得られる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ス
パッタリングによりイットリウム安定化ジルコニア、M
gO、SrTiO 3 のいずれかのターゲットから叩き出
した構成粒子を基材の成膜面に堆積する際に、ターゲッ
トから叩き出して基材上の成膜面に堆積させる構成粒子
の他に、斜め方向からイオンビームを照射するので、構
成粒子を効率的に活性化できる結果、基材の成膜面に対
してc軸配向性に加えてa軸配向性とb軸配向性も向上
させることができる。よって本発明方法を実施すること
で、結晶粒界が多数形成された多結晶薄膜であっても、
結晶粒ごとのa軸配向性とb軸配向性とc軸配向性のい
ずれもが良好になっている多結晶薄膜を形成することが
できる。
【0043】また、イオンを照射する際の角度を45度
に設定し、照射するイオンをアルゴンと酸素の混合イオ
ンとするならば、最も好適に配向性の整った多結晶薄膜
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明方法を実施する際に用いる装置の
一例を示す構成図である。
【図2】図2は本発明の実施に用いるイオン源の一例を
示す断面図である。
【図3】図3は本発明方法を実施して得られた多結晶薄
膜を示す説明図である。
【図4】図4は図3に示す多結晶薄膜の拡大平面図であ
る。
【図5】図5はビーム電圧300Vで製造した本発明試
料のX線回折結果を示すグラフである。
【図6】図6はビーム電圧500Vで製造した本発明試
料のX線回折結果を示すグラフである。
【図7】図7はビーム電圧700Vで製造した本発明試
料のX線回折結果を示すグラフである。
【図8】図8はビーム電圧300Vで製造した比較例試
料のX線回折結果を示すグラフである。
【図9】図9はビーム電圧500Vで製造した比較例試
料のX線回折結果を示すグラフである。
【図10】図10はビーム電圧700Vで製造した比較
例試料のX線回折結果を示すグラフである。
【図11】図11はa軸配向性を調べるために行なった
試験方法を説明するための構成図である。
【図12】図12は本発明例の多結晶薄膜の(311)
面の回折ピークを示すグラフである。
【図13】図13は比較例の多結晶薄膜における(31
1)面の回折ピークを示すグラフである。
【図14】図14は本発明例の多結晶薄膜の(311)
面の回折ピークを回転角5度おきに測定した結果を示す
グラフである。
【図15】図15は本発明方法を実施する場合に用いて
好適な装置の他の例を示す構成図である。
【図16】図16は従来の方法で製造された多結晶薄膜
を示す構成図である。
【符号の説明】
A・・・基材、 B・・・多結晶薄膜、θ・・・傾斜角
度、w・・・回転角、11・・・基材ホルダ、12・・
・ターゲット、13・・・イオン源、14・・・スパッ
タビーム照射装置、15・・・ターゲットホルダ、

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スパッタリングによりターゲットの構成
    粒子を叩き出して基材上に堆積させ、基材上に多結晶薄
    膜を形成する方法において、前記構成粒子を基材上に堆
    積させる際に、ターゲットから叩き出して基材上の成膜
    面に堆積させる構成粒子の他に、イオン源が発生させた
    イオンを基材の成膜面に対して斜め方向から照射しつつ
    前記構成粒子を堆積させるとともに、前記ターゲットと
    して、イットリウム安定化ジルコニア、MgO、SrT
    iO 3 のいずれかからなるものを用いることを特徴とす
    る多結晶薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の基材に対してイオンを照
    射する際の照射角度を基材の成膜面に対して40〜60
    度の範囲とすることを特徴とする多結晶薄膜の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のイオンとして、不活性ガ
    スイオン、あるいは、不活性ガスと多結晶薄膜構成元素
    の少なくとも1種を含む反応ガスの混合イオンを用いる
    ことを特徴とする多結晶薄膜の製造方法。
JP3126837A 1991-04-30 1991-04-30 多結晶薄膜の製造方法 Expired - Lifetime JP2721595B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3126837A JP2721595B2 (ja) 1991-04-30 1991-04-30 多結晶薄膜の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3126837A JP2721595B2 (ja) 1991-04-30 1991-04-30 多結晶薄膜の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04331795A JPH04331795A (ja) 1992-11-19
JP2721595B2 true JP2721595B2 (ja) 1998-03-04

Family

ID=14945125

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3126837A Expired - Lifetime JP2721595B2 (ja) 1991-04-30 1991-04-30 多結晶薄膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2721595B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7268472B2 (en) 2002-11-11 2007-09-11 Seiko Epson Corporation Piezoelectric device, liquid jetting head, ferroelectric device, electronic device and methods for manufacturing these devices

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7531205B2 (en) * 2003-06-23 2009-05-12 Superpower, Inc. High throughput ion beam assisted deposition (IBAD)
JP4602911B2 (ja) 2006-01-13 2010-12-22 財団法人国際超電導産業技術研究センター 希土類系テープ状酸化物超電導体
JP5244337B2 (ja) 2007-06-12 2013-07-24 公益財団法人国際超電導産業技術研究センター テープ状酸化物超電導体
JP5270176B2 (ja) 2008-01-08 2013-08-21 公益財団法人国際超電導産業技術研究センター Re系酸化物超電導線材及びその製造方法
WO2011027886A1 (ja) 2009-09-07 2011-03-10 古河電気工業株式会社 超電導線材用テープ基材及び超電導線材
JP5830238B2 (ja) * 2010-11-17 2015-12-09 古河電気工業株式会社 酸化物薄膜の製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0472062A (ja) * 1990-07-09 1992-03-06 Furukawa Electric Co Ltd:The 結晶膜の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7268472B2 (en) 2002-11-11 2007-09-11 Seiko Epson Corporation Piezoelectric device, liquid jetting head, ferroelectric device, electronic device and methods for manufacturing these devices

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04331795A (ja) 1992-11-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6632539B1 (en) Polycrystalline thin film and method for preparing thereof, and superconducting oxide and method for preparation thereof
US5650378A (en) Method of making polycrystalline thin film and superconducting oxide body
WO1998017846A1 (fr) Procede pour preparer une couche mince polycristalline, procede pour preparer un supraconducteur de type oxyde, et dispositif associe
JP2996568B2 (ja) 多結晶薄膜の製造方法および酸化物超電導導体の製造方法
JP2721595B2 (ja) 多結晶薄膜の製造方法
JP3447077B2 (ja) 薄膜積層体と酸化物超電導導体およびそれらの製造方法
JP2670391B2 (ja) 多結晶薄膜の製造装置
JP2614948B2 (ja) 多結晶薄膜
JP4131771B2 (ja) 多結晶薄膜とその製造方法および酸化物超電導導体
JP3415888B2 (ja) 多結晶薄膜の製造装置と製造方法および酸化物超電導導体の製造方法
JP3634078B2 (ja) 酸化物超電導導体
JP3856878B2 (ja) 多結晶薄膜の製造方法
JP4033945B2 (ja) 酸化物超電導導体およびその製造方法
JP3251034B2 (ja) 酸化物超電導導体およびその製造方法
JP3269841B2 (ja) 酸化物超電導導体およびその製造方法
EP0591588B1 (en) Method of making polycrystalline thin film and superconducting oxide body
JPH1149599A (ja) 多結晶薄膜とその製造方法および酸化物超電導導体とその製造方法
JP5066468B2 (ja) 酸化物超電導線材用の2軸配向薄膜及びその製造方法
JP3459092B2 (ja) 多結晶薄膜の製造方法および酸化物超電導導体の製造方法
JP3444917B2 (ja) 多結晶薄膜の製造方法と製造装置および多結晶薄膜を備えた酸化物超電導導体の製造方法
JP3771027B2 (ja) 配向制御多結晶薄膜の蒸着方法及び蒸着装置
JP3532253B2 (ja) 酸化物超電導導体およびその製造方法
JP3415874B2 (ja) 酸化物超電導導体の製造方法
JP3269840B2 (ja) 酸化物超電導導体およびその製造方法
JP4128557B2 (ja) 酸化物超電導導体

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19971104

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071121

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081121

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091121

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091121

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101121

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111121

Year of fee payment: 14

EXPY Cancellation because of completion of term
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111121

Year of fee payment: 14