JP2616980B2 - 精密プレス成形用光学ガラス - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は比較的低温でプレス成形可能な精密プレスレ
ンズ用の光学ガラスに関する。

［従来の技術］ 従来同じような光学恒数を持つものとして、中屈折率
低分散タイプ（nd＝1.53以上、νｄ＝59.0以上）の光学
ガラスが存在する。またプレス成形用のガラスとして燐
酸塩系ガラス（特開昭58−79839号公報、特開昭60−122
749号公報、欧州特許第19342号明細書、参照）、フツホ
ウ酸塩系ガラス（特開昭59−146952号公報参照）、フル
オロ燐酸塩系ガラス（特開昭56−59641号公報、特開昭5
6−149343号公報、特開昭58−217451号公報参照）が知
られている。

［発明が解決しようとする課題］ しかし従来よりある中屈折率低分散タイプ（nd＝1.53
以上、νｄ＝59.0以上）の光学ガラスは、屈伏温度（A
t）が600℃もしくはそれ以上のものしか存在せず、その
プレス温度は650℃を超える高い温度でなければ成形す
ることが出来なかった。精密プレス成形の公知の型材等
では、プレス成形温度が高温になると型材の酸化等の問
題が起こり、面精度の保持が難しくレンズの量産には適
さない。そのためプレスされるガラスは可能な限り低い
温度で成形されるのが望ましい。これらの問題を解決す
るためとして、上記プレス成形用ガラスの公開公報で
は、ガラス形成酸化物に燐酸、及びホウ酸を選んでい
る。しかし、前記の燐酸塩系ガラス（特開昭58−79839
号公報、特開昭60−122749号公報、欧州特許第19342号
明細書）等では、低軟化点ガラス組成が示されているも
のの、本特許における光学恒数を持つガラスが見当ら
ず、また鉛を含んでいるガラスも上記特許中に見られる
が、鉛を含むと鉛の揮発物が型材に付着し面精度の保持
等に問題が生じる。さらに化学的耐久性の点で不十分な
ものもある。

フツホウ酸塩系ガラス（特開昭59−146952号公報）、
フルオロリン酸塩系ガラス（特開昭56−59641号公報、
特開昭56−149343号公報、特開昭58−217451号公報）等
では、ガラス組成にフッ素を含んでいるが、フッ素の導
入は、低温化及び低分散化には有利であるが、ガラス溶
融時における安定性に欠け均質なガラスが得られにく
く、プレス温度におけるフッ素の揮発による型材は、環
境等に問題が生じやすい。さらに上記特許組成中には燐
酸塩系ガラスに見られたと同様鉛を含むものもあり、プ
レス用ガラスとしては適当ではない。

従って本発明の第１の目的は、比較的低い温度（550
℃以下）で精密プレスが実施される精密プレス用光学ガ
ラスを提供することにある。

また本発明の第２の目的は屈折率（nd）1.53〜1.62、
アッベ数（νｄ）59.0〜64.0という中屈折率低分散の光
学ガラスを提供することにある。

課題を解決するための手段 本発明者等は以上のような従来の光学ガラス及びプレ
ス成形用光学ガラスの諸欠点をかんがみて、種々考察研
究した結果、P₂O₅、ZnO及び／又はBaO及び／又はSrO及
び／又はCaO及び／又はMgOを必須とするガラス組成の光
学ガラスが、中屈折率低分散タイプの光学ガラスとほぼ
同等の光学恒数を有し、かつこれよりも低い温度におい
てプレス成形でき、型材への影響も殆どないことを見い
出し本発明に到達したものである。

すなわち本発明の光学ガラスは、所定の組成範囲内に
おいて上記特許のプレス成形用光学ガラスよりも、安定
性、化学的耐久性、耐候性、溶融性が優れており、従来
の光学ガラスと同様に扱え、かつ屈伏温度（At）が低い
のでプレス成形後研削または研磨を必要としない精密プ
レスレンズ用光学ガラスとして最適であるという結論に
達した。

すなわち本発明を重量％で示すと P₂O₅ 45〜62重量％（以下％で示す） B₂O₃ ０〜 7 ％ ZnO 15〜35 ％ BaO ０〜30 ％ SrO ０〜15 ％ CaO ０〜10 ％ MgO ０〜 3.5％ 但し、ZnO＋BaO＋SrO＋CaO＋MgOの合量 28〜49 ％ Li₂O ０〜 5 ％ Al₂O₃ ０〜 9 ％ Nb₂O₅ ０〜 1.5％ ZrO₂ ０〜 1.0％ からなる組成を有している。

本発明に係わる光学ガラスの各成分範囲を上記のよう
に限定した理由は次のとおりである。

P₂O₅はガラスの網目を構成する主成分であり、ガラス
の安定化、また屈伏温度（At）の低温度化、さらに分散
の低分散化に有効である。しかし45％より少ないとガラ
スが不安定になり、62％より多くなると化学的耐久性が
悪くなる。

B₂O₃はP₂O₅と同様ガラスの網目を構成し屈伏温度（A
t）の低温度化に有効である。しかし７％より多くなる
と化学的耐久性が非常に悪くなる。

ZnO及びBaO及びSrO及びCaO及びMgOは、屈折率の調
整、化学的耐久性の向上、さらに屈伏温度（At）の低温
度化に有効な成分であるが、その合量が28％より少ない
と所定の光学恒数が得られず、49％より多くなるとガラ
スの安定性が悪くなる。

ZnOは他の成分に比べガラスの屈伏温度（At）の低温
度化、また光学恒数の調整に非常に有効な成分である。
しかし15％より少ないと上記の効果が少なく、35より多
くなると失透傾向を増してしまうので所定の範囲内とす
る。

BaOはZnOと同様屈伏温度（At）の低温度化に有効であ
り、さらにガラスの安定性の向上、また屈折率を高め低
分散化するのに有効な成分である。しかしながらBaOの
多量の使用はガラスの化学的耐久性を悪くするので、そ
の使用量は30％以内とする。

SrOは光学恒数の調整に使用する成分であるが、15％
より多くなるとガラスの安定性を損なうので、所定内と
する。

CaOは化学的耐久性の向上、光学恒数の調整に有効な
成分であるが、10％より多くなると失透傾向が増大す
る。

MgOはCaOと同様ガラスの化学的耐久性を向上するのに
有効な成分であるが、その使用量を多くするとガラスの
安定性を損なうので3.5％以内とする。

Li₂Oは少量の配合成分として適量加えることにより、
ガラスの安定性を損なうことなく著しくプレス成形時の
温度を下げる効果を持つ。しかし５％より多くなるとガ
ラスの失透傾向を増し、さらに化学的耐久性が悪くなる
ので所定の範囲内とする。

Al₂O₅はガラスの化学的耐久性の向上に非常に有効で
あるが、９％より多くなると、ガラスの軟化温度が上昇
してしまうので、所定内とする。

Nb₂O₅及びZrO₂は少量添加することによって、光学恒
数の微調整を行なうための成分である。しかしながらNb
₂O₅については、1.5％より多くなると、またZrO₂につい
ては、1.0％より多くなると、所定の光学恒数の範囲を
超えてしまうと共に、ガラスの安定性が悪くなるので、
その範囲内に限定する。

本発明の光学ガラスには、上記成分の他に光学性能の
調整、溶融性の改善、ガラス化範囲の拡大等のために、
本発明の目的から外れない限りNa₂O、K₂O、Cs₂O、Si
O₂、Y₂O₃、Ta₂O₅、La₂O₃などを含有させることができ
る。

［実施例］ 次に本発明に係わる実施例の組成（数値は重量％）、
屈折率（nd）、アッベ数（νｄ）、屈伏温度（At）を第
１表に示す。

本発明の光学ガラスは、各成分の原料として各々相当
する酸化物、水酸化物、燐酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を使
用し、所定の割合で秤量し、充分混合してガラス調合原
料として、白金製坩堝に投入して電気炉で1000℃〜1300
℃で溶融し、白金製撹拌棒にて撹拌して、清澄、均質化
してから適当な温度に予熱した金型内に鋳込んだ後、徐
冷して作る。

なおガラスの着色を防ぎ、脱泡のため少量のAs₂O₃を
加えること、または工業上良く知られている脱泡成分の
少量添加は、本発明の効果に影響を与えない。

［発明の効果］ 本発明によれば、屈伏温度（At）が500℃以下で、屈
折率（nd）が1.53〜1.62、アッベ数（νｄ）が59.0〜6
4.0の光学恒数を有し、失透に対して安定であり、比較
的低い温度で精密プレスでき、プレス成形後、研削また
は研磨を必要としない精密プレスレンズ用光学ガラスが
得られる。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】P₂O₅ 45〜62重量％（以下％で示す） B₂O₃ ０〜 7 ％ ZnO 15〜35 ％ BaO ０〜30 ％ SrO ０〜15 ％ CaO ０〜10 ％ MgO ０〜 3.5％ 但し、ZnO＋BaO＋SrO＋CaO＋MgOの合量 28〜49 ％ Li₂O ０〜 5 ％ Al₂O₃ ０〜 9 ％ Nb₂O₅ ０〜 1.5％ ZrO₂ ０〜 1.0％ から成る屈伏温度（At）が500℃以下で、屈折率（nd）
   が1.53〜1.62であり、アッベ数（νｄ）が59.0〜64.0で
   軟化点がきわめて低い中屈折率低分散の精密プレスレン
   ズ用光学ガラス。