JP2597158Y2 - エネルギー吸収式ステアリングコラム - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は金属板のリッピング
（Ｒipping）又はカーリング（Ｃurling）とリッピング
(Ripping)を応用した自動車のエネルギー吸収式ステア
リングコラムに関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のステアリングコラムは、衝突事
故により乗員がステアリングホイールに衝突して負傷す
る２次衝突事故を防止すべく、ステアリングシャフトが
軸方向へ収縮できる構成を採用するとともに、ステアリ
ングシャフトを収納したコラムジャケットを車体に連結
するアッパークランプが車体から離脱し、かつ、二分し
て所定の圧入荷重で嵌合するコラムジャケットが収縮す
ることにより衝撃エネルギーを吸収し、乗員が受ける衝
撃を緩和するようにしている。

【０００３】ところで、近時、コラムジャケットのアッ
パーチューブを車体に固定するアッパークランプに、金
属板のカーリング（Ｃurling）とリッピング(Ripping)
を応用したエネルギー吸収部材を兼ねたチルトブラケッ
トを挟持させ、アッパーチューブに衝撃が加わると、チ
ルトブラケットの側壁部が変形するとともに、破断する
ようにしたステアリングコラムが提供されている（特開
昭１−２４９５７３号公報参照）。この場合のアッパー
クランプは車体に固定されていて、車体から離脱しない
構造である。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
開公報に記載されたステアリングコラムによれば、チル
トブラケットの側壁部が変形及び破断することによりエ
ネルギー吸収をするものであるから、エネルギー吸収荷
重を低く設定するためには、チルトブラケットの強度を
ある程度弱くしなければならず、そうすると、ステアリ
ングコラムの支持剛性が低下するという問題がある。

【０００５】また、衝突時にアッパークランプが車体に
取り付けられた状態で残るから、コラムジャケットに固
定して設けたキーロックユニットがアッパークランプに
衝突することにより、コラムジャケットの収縮を停止さ
せる可能性が高く、したがって、キーロックユニットと
アッパークランプとの間隔を所要のストローク長さ以上
としなければならないから、設計の自由度が制約される
という問題がある。

【０００６】そこで、この考案は、上記問題を解決した
エネルギー吸収式ステアリングコラムを提供するもので
ある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この考案にかかるエネル
ギー吸収式ステアリングコラムは、コラムジャケットを
挟持する側壁部と、車体にスライドブロックを介し離脱
可能に固定される車体取付部とで形成されたアッパーク
ランプを有するステアリングコラムにおいて、板状のエ
ネルギー吸収部材の一縁にスライドブロックと共に車体
に固定する連結部とアッパークランプに固定する連結部
とが隣接して形成され、これら両連結部の間に切込部が
形成されるとともに、該切込部に連続して所定長さの圧
痕溝が形成されているリッピング部を有し、該リッピン
グ部は前記側壁部の側方でステアリングコラムの軸方向
に対し直交していることを特徴とする。

【０００８】

【０００９】

【作用】この考案によれば、２次衝突によりコラムジャ
ケットに衝撃荷重が入力されると、スライドブロックを
車体に残してアッパークランプが車体から離脱し、それ
により、スライドブロックとアッパークランプを連結す
るエネルギー吸収部材の連結部が互いに逆方向へ引かれ
るために切込部から圧痕溝に沿って破断（リッピング）
が行われることにより、エネルギーを吸収する。

【００１０】

【実施例】以下にこの考案を図示の実施例にて説明す
る。図１はチルト式ステアリングコラムの半断面側面
図、図２は断面正面図であり、図において、１はコラム
ジャケット、２はステアリングシャフト、３はコラムジ
ャケット１を上下方向へ摺動可能に挟持しスライドブロ
ック４を介して車体から離脱可能に固定されるアッパー
クランプである。

【００１１】アッパークランプ３は、図３に示したよう
に、両端部を翼状に延伸させた略Ｕ字形の部材であっ
て、その翼状の車体取付部５，５の上面にはそれぞれス
テアリングホイール側に開口する略台形の開口溝６，６
を形成し、その開口溝６，６にはスライドブロック４，
４が係合する。スライドブロック４は開口溝６のテーパ
ー面７を嵌合する凹部８を両側部に設けた五角形の板状
部材であって、それを貫通する長円孔からなるボルト挿
通孔９を穿設してなる。

【００１２】このスライドブロック４とアッパークラン
プ３との間にエネルギー吸収部材１０が設けられる。こ
のエネルギー吸収部材１０は、図４に示したように、基
本的には所定の肉厚及び面積を有する金属板からなり、
その幅中央部には溝としての直線状の圧痕溝１１からな
るリッピング部３５が形成され、その圧痕溝１１の上端
部には切込部３６が形成され、この切込部３６に連続し
て略Ｕ字型の開口部１２が形成され、その開口部１２の
左右両側に直交方向へ曲げ形成されて前後方向へ延伸す
る連結部１３，１４はそれぞれ、前記アッパークランプ
３とスライドブロック４に連結される。すなわち、連結
部１３はアッパークランプ３の車体取付部５の前側に接
触するようにさらに曲げて溶接等で連結され、連結部１
４はスライドブロック４の下面に接触してボルト挿通孔
９と合致するボルト挿通孔１５が穿設されている。な
お、圧痕溝１１は、図４（ｄ），（ｅ）に示したよう
に、片面又は両面のいずれに形成してもよい。

【００１３】上記スライドブロック４とエネルギー吸収
部材１０の連結部１４のボルト挿通孔９，１５にボルト
を挿通してアッパークランプ３はインスツルメントパネ
ルの下面などの車体に固定される。また、このアッパー
クランプ３の両側壁部１６，１６には、それぞれ角長孔
１７，１７が上下方向へ穿設されている。

【００１４】そして、アッパージャケット１を、ディス
タンスブラケット３１に固定して、そのディスタンスブ
ラケット３１をアッパークランプ３に対し上下方向へ摺
動可能にするため、前記角長孔１７，１７とディスタン
スブラケット３１を貫通する締付けボルト１８が配設さ
れ、その締付けボルト１８の両端部にはそれぞれ角長孔
１７，１７に嵌合して回り止めをするストッパー１９，
１９が挿通され、かつ、締付けボルト１８の螺部２０に
はワッシャー２１を挟み、締付けナット２２が螺合して
いる。締付けナット２２にはチルトレバー２３が一体に
連結されている。ディスタンスブラケット３１には断面
凹形の補強材３２が連結されている。

【００１５】これらコラムジャケット１及びステアリン
グシャフト２は、共に軸方向収縮可能に構成されてい
る。すなわち、コラムジャケット１を構成するアッパー
チューブ２４とロアチューブ２５の嵌合部において、ア
ッパーチューブ２４の凹入部２６がロアチューブ２５の
外周面に所定の圧入荷重で圧接し、また、ステアリング
シャフト２を構成するアッパーシャフト２７とロアシャ
フト２８の嵌合部において、アッパーシャフト２７の外
周面に形成した溝２９に、ロアシャフト２８の内周面に
放射状に複数本植設した樹脂などの剪断ピン３０が係合
している。ロアシャフト２８の下端部は、図示しない
が、自在継手を介してステアリングギヤボックスに連結
され、また、アッパーシャフト２７の上端部にはステア
リングホイールが連結される。

【００１６】したがって、この例では、ステアリングホ
イールに乗員が衝突してアッパージャケットに荷重が入
力された場合、アッパーチューブ２４が軸方向（矢示Ｂ
方向）へ移動し、スライドブロック４，４に係合するア
ッパークランプ３がスライドブロック４から離脱して共
に軸方向へ移動することにより、エネルギー吸収部材１
０の連結部１３がブラケットと共に移動するのに反し、
連結部１４はスライドブロック４とともに車体に取り付
けられて残るから、エネルギー吸収部材１０の切込部３
６から圧痕溝１１が引き裂かれる。なお、この圧痕溝１
１はエネルギー吸収部材１０が斜めに引き裂かれ、所定
のエネルギー吸収機能を損なうこととなるのを防止する
為に形成されている。したがって、衝撃エネルギーはエ
ネルギー吸収部材１０を引き裂く（リッピング）エネル
ギーに変換して消耗させるのである。

【００１７】

【００１８】

【００１９】

【００２０】

【００２１】

【考案の効果】以上記載したこの考案によれば、アッパ
ークランプをスライドブロックを介して車体から離脱可
能にし、エネルギー吸収部材をアッパークランプとスラ
イドブロックとの間に介在させたから、アッパージャケ
ットにキーロックユニットを設けても、アッパージャケ
ットとアッパークランプ及びキーロックユニットは一体
として下方へ移動できるために、キーロックユニットが
アッパークランプに衝突することはなく、したがって、
アッパークランプとの間隔をエネルギー吸収時に必要な
所定長さ以上に設定する必要性がないから、ステアリン
グコラムの設計の自由度が大きくなる。

【００２２】また、エネルギー吸収部材の一縁に、スラ
イドブロックと共に車体に固定する連結部とアッパーク
ランプに固定する連結部とが隣接して形成され、これら
両連結部の間に切込部が形成されるとともに、該切込部
に連続して所定長さの圧痕溝が形成されているリッピン
グ部を有し、このリッピング部をアッパークランプの側
壁部の側方でステアリングコラムの軸方向に対し直交し
て配置しているから、アッパークランプの離脱によりエ
ネルギー吸収部材は連結部が互いに離間することで一縁
側から引き裂かれるとともに、この引き裂きが圧痕溝に
沿って行われるため、リッピングが斜めに引き裂かれて
行われることがなく、設定したストローク長さで安定し
て行われる。さらに、エネルギー吸収部材をアッパーク
ランプと衝突時以外はアッパークランプに固定されてい
るスライドブロックに設けるので、エネルギー吸収部材
の強度を低下させて、ステアリングコラムの支持剛性が
損なわれることなく、エネルギーの吸収荷重を自由に設
定できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の実施例を示す要部半断面側面図。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図。

【図３】図１の要部の平面図（ａ）、正面図（ｂ）、及
び側面図（ｃ）。

【図４】エネルギー吸収部材の平面図（ａ）、側面図
（ｂ）、正面図（ｃ）及び断面図（ｄ），（ｅ）。

【符号の説明】

１…コラムジャケット、２…ステアリングシャフト、３
…アッパークランプ、４…スライドブロック、１０…エ
ネルギー吸収部材、１１…圧痕溝、１３，１４…連結
部、３５…リッピング部、３６…切込部

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 コラムジャケットを挟持する側壁部と、
   車体にスライドブロックを介し離脱可能に固定される車
   体取付部とで形成されたアッパークランプを有するステ
   アリングコラムにおいて、板状のエネルギー吸収部材の
   一縁にスライドブロックと共に車体に固定する連結部と
   アッパークランプに固定する連結部とが隣接して形成さ
   れ、これら両連結部の間に切込部が形成されるととも
   に、該切込部に連続して所定長さの圧痕溝が形成されて
   いるリッピング部を有し、該リッピング部は前記側壁部
   の側方でステアリングコラムの軸方向に対し直交してい
   ることを特徴とするエネルギー吸収式ステアリングコラ
   ム。