JP2583756B2 - 高耐熱ロ−ル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高温熱処理の熱処理炉において、被処理材
の移動用に用いられているロールにおいてロールのディ
スク層間の隙間及びディスク層内のクラックの発生のな
いロールに関し、特に鉄鋼に用いられる高耐熱ロールに
関する。

〔従来の技術〕

連続焼鈍設備の加熱炉及び熱処理炉には被処理材の装
入、搬出あるいは炉内移動用として炉内外にロールが備
えられているものが多くある。

このロールには耐熱性が要求され、従来耐熱綱を主と
する金属性ロールあるいはセラミック性ロールや石綿ロ
ール等が多く用いられているが、ロール表面に被処理材
料のスケール等が付着、ビルドアップして被処理材料の
表面に傷つけるといった欠点を有する。

そこで良好な品質が要求される鋼板などを熱処理する
場合には、水冷ジャケットを設けた石綿ロールが多く用
いられてきた。しかしながら、アスベストロールの素材
である石綿板の耐熱性は、そのアスベスト繊維の熱的特
性より、400℃〜800℃以上に加熱すると結晶水を放出し
て収縮を起こす。他方、ロール使用中には中心部の鉄心
軸は膨張するため、アスベストロールには軸方向の亀裂
が発生する。これらの亀裂が一度発生すると、高温の炉
内ガスが亀裂内部に侵入し、亀裂は加速度的に生長し、
遂いには石綿板が剥離脱落するに至るのである。

これに対して、特公昭57−61806号公報によれば、石
綿に結晶質アルミナファイバー３〜50重量％または、シ
リカファイバー３〜50重量％を混合した混合材を金属製
の軸にあらかじめ圧縮して装着するか、又は、装着後圧
縮して圧縮状態をそのまま保存せしめて1200℃程度の高
温でも使用できる耐熱ロールが提案され開示されてい
る。

さらに、特公昭58−58307号公報によれば、直径1mm以
下で厚さが100μ以下のバーミキュライトに該バーミキ
ュライトに対して40〜230重量％のウオラストナイト繊
維および（または）10〜100重量％の結晶アルミナ繊維
を混合したものを抄造してなる配向したバーミキュライ
ト薄片を含有するシートがディスクの素材であるディス
ク層内、層間に亀裂の入らない耐熱ロールが提案され、
開示されている。

ところで、本出願人は、先に特願昭59−25309号をも
って、シリカ・アルミナファイバーと無機結合剤と有機
結合剤とからなる原料を嵩密度0.5g/cm³以上に成形加工
したドーナツ状のシートを金属パイプに嵌装してから固
設してなる高耐熱ロールに係る出願を提出している。

〔発明が解決しようとする問題点〕

従来、特公昭57−61806号記載の如き耐熱ロールでは
コスト的に高くなるばかりでなく、主要成分に従来のア
スベスト繊維を使用しているため、熱収縮が大きくその
ため円筒体の嵩密度を上げなければ解決できなかった。

さらに特公昭58−58307号記載の如き耐熱ロールで
は、バーミキュライトを用いて、目地開きを防ぐことに
よって、耐熱性、断熱性を持たせ、アスベスト繊維また
は（および）結晶質アルミナ繊維を使用している。バー
ミキュライトは、その熱的特性により、高温下において
ロールの空隙を分散させる役目も果たしており、ロール
硬度はバーミキュライトの量が増えると小さくなり、そ
のため耐摩耗性が悪くなるといった欠点を有しており33
〜93重量％の添加ではロール硬度、耐摩耗性を考えると
嵩密度を上げなければならなかった。他方、アスベスト
繊維は、ロール製造工程及び使用設備において、アスベ
スト繊維が飛散し、健康障害の恐れがあった。即ち、日
本において昭和49年国際ガン条約に調印し、国内におい
てもこれまでに種々の省令で石綿の取り扱いを規制して
きたが、昭和51年４月１日より、「特定化学物質等障害
予防規則」を一部改正し、ガン原性物質、若しくはガン
原性因子又は、ガン原性工程における業務による疾病中
に「石綿にさらされる業務による肺ガン又は中皮腫」を
指定している。また、結晶質アルミナ繊維は石綿と比較
して耐熱性の点で非常に効果的であるが、コスト的に非
常に高く、大量に使用するディスクロールと原量として
は適していない。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は、従来使えなかった安価でかつ耐熱性のある
シリカ・アルミナファイバーを加工処理し、さらに膨張
性充填剤としてバーミキュライトを添加することによ
り、無公害でかつ安価で、より耐熱性、耐摩耗性ならび
に平滑性のある目地開きの生じない高耐熱ロールを提供
することを目的とする。

この目的を達成するために、ショット30％以下のシリ
カ・アルミナファイバーと膨張性充填剤と無機結合剤と
有機結合剤を併用する。有機結合剤としては、特にアク
リロニトリルブタジエン、アクリル酸エステル、酢酸ビ
ニル、ポリウレタンなどが有効である。有機結合剤は、
ロールの使用中に焼失してしまうので出来るだけ少ない
方が良いが、取り扱い性ならびに加工性の点から５〜15
重量％必要である。特に好ましくは７〜８重量％であ
る。無機結合剤としては、セピオライト、モンモリロナ
イト、木節粘土等のうち１種又は２種以上とアルミナ微
粉、ムライト微分、アルミナゾル、シリカゾルのうち１
種又は２種以上が有効である。膨張性充填剤として、バ
ーミキュライトを使用する。バーミキュライトは、その
構造中、層間に多量の結晶水を持っており、急激な加熱
処理を受けた場合、層間水が急激に飛散するため、層間
が押し広げられてアコーデオン状に膨張する性質があ
る。ディスクロールの製造方法より、このバーミキュラ
イトの膨張方向は、シャフト軸方向と同一であり、目地
開きを防ぐことが出来る。また、バーミキュライトの均
一分散により、空隙の均一分散を生じせしめ、ロールの
クッション性並びに耐熱性、断熱性が向上する。しかし
ながら、バーミキュライトの添加は、ロールの焼結性を
損なう性格も持ち合わせているため、多量の添加は、耐
摩耗性を悪化させる効果を導き、好ましくは0.5〜20重
量％である。

〔作用〕

本発明において、従来使われていた石綿繊維に代わる
人造の比較的安価で高耐熱のシリカ・アルミナファイバ
ーを主原料とし、無機結合剤と膨張性充填剤と有機結合
剤を添加する。特に繊維としては、ショット含有率が30
％以下のシリカ・アルミナファイバーと膨張性充填剤と
しては、バーミキュライトを用いるものである。その
後、常法にて抄造、プレスを行ないシート状となした
後、ドーナツ状に加工し、金属パイプに嵌装して積装し
てから固設された熱収縮、クラックの発生、ディスクの
脱落、耐熱衝撃性、断熱性の点で優れた性能を持ち、か
つ耐摩耗性も兼ね備えた高耐熱ロールに関するものであ
る。

〔実施例〕

実施例１ 1m³の容器を持つ攪拌器つき容器に800の水と市販の
ショット含有率50％のシリカ・アルミナファイバー（商
品名イビウール）を8kg投入して15分間攪拌してシリカ
・アルミナファイバーのスラリー溶液を作製した。一
方、容量25の円筒形容器の側壁より流量170／分、
水圧1.5kg/cm²の加圧水を送り込み、円筒形上部より渦
流の中心部へ上記繊維スラリーを80／分の流量で導
き、フロックをほぐした後、このスラリーを渦流の中心
部より流出させ30メッシュの金網上へ導き捕集した。

得られたシリカ・アルミナファイバーは第１表に示す
ような特性を有していた。

次に上記処理されたシリカ・アルミナファイバー173g
とアルミナ微粉73g、木節粘土60g、マグネシア微粉39
g、バーミキュライト86gとニトリルブタジエン系ラテッ
クス60mlを25の水中に添加して充分攪拌、混合してス
ラリー状となし、このスラリー中にポリアクリルアミド
系凝集剤7.5％溶液118ml、硫酸バンド10％溶液400mlを
添加し、抄紙機により18mmのシートを抄造した。

次いで、ウェット状のまま6mm厚みにプレス成形を行
なった。乾燥後、ドナッツ状に打ち抜き同心円を持つ円
板とした。第１図に示すように金属パイプにこの円板を
所定の枚数嵌装して積層してその両端を金属性ワッシャ
ー（３）とナット（４）により固設し、ロール状とし
た。

第２表に円板の諸物性を示す。

また第３表にロール状物の物性を示す。

なお、摩耗試験は、1200℃でロールを焼成した後、ロ
ール状物を解体して円板を取り出し、JISK6902−63に規
定されているテーバー式ロータリーアブレッサーにて摩
耗論Ｈ−22を使用して試験した。

さらに硬度は日本ゴム協会標準規格6101−1968により
試験した値を示す。

実施例２ 実施例１と同様な方法で加工処理されたシリカ・アル
ミナファイバー286gとアルミナ微粉73g、木節粘土60gと
マグネシア微粉39gとバーミキュライト4gとニトリルブ
タジエン系ラテックス（固形分40％）60mlを25の水中
に添加してよく混合してから、さらに混合攪拌した後、
ポリアクリルアミド系凝集剤7.5％水溶液118mlと硫酸バ
ンド10％溶液400mlを添加し攪拌混合して抄造機により
厚さおよそ18mmのシートを抄造した。次いで、ウエット
状でプレス成形して乾燥後およそ6mmのシート状物を得
た。実施例１と同様な手順でロール状物とした。その結
果、シートの物性を第２表に、ロール状物の物性を第３
表に示す。

実施例３ 実施例１と同様な方法によって加工処理されたシリカ
・アルミナファイバー242gとアルミナ微粉73g、マグネ
シア微粉39g、バーミキュライト49gとニトリルブタジエ
ン系ラテックス52mlを25の水中に添加して充分攪拌、
混合してスラリー状となし、このスラリー中にポリアク
リルアミド系凝集剤7.5％溶液102ml、硫酸バンド10％溶
液400mlを添加し攪拌混合して抄造機にて厚さおよそ18m
mのシートを抄造した。次いでウェット状でプレス成形
して乾燥後およそ6mmのシート状物を得た。実施例１と
同様な手順でロール状物とした。その結果、シートの物
性を第２表に、ロール状物の物性を第３表に示す。

（比較例１） 実施例１と同様な方法によって加工処理されたシリカ
・アルミナファイバー290gとアルミナ微粉98g、本節粘
土98gとニトリルブタジエン系ラテックス60mlを25の
水中に添加してよく混合撹拌した後、ポリアクリルアミ
ド系凝集剤7.5％水溶液118mlと硫酸バンド10％溶液400m
lを添加し撹拌混合してスラリー状となし、抄造機によ
り厚さ18mmのシートを抄造した。次いでウェット状でプ
レス成形して乾燥後およそ6mmのシート状物を得た。実
施例１と同様な手順でロール状物とした。その結果、シ
ートの物性を第２表に、ロール状物の物性を第３表に示
す。

〔発明の効果〕 以上の実施例からも判るように本発明の高耐熱ロール
は、従来のアベスト繊維を使用した耐熱ロールに比して
下記のような優れた特性を有する。

（１）アスベスト繊維をまったく使用していないため、
ロールの製造上又は使用上『特定化学物質等障害予防規
則』に規定されている石綿公害を引き起こす恐れは全く
ない。

（２）膨張性充填剤としてバーミキュライトを添加して
いるため、軸方向の残存収縮質は全くなく、耐熱性が向
上し、ディスクの脱落等も見られない。

（３）常温曲げ強度は従来のアスベストロールに比べて
若干小さい値であるが、実際の組み立て作業においては
何ら問題はない。

さらに特公昭58−58307号記載の耐熱ロールと比して
下記のような優れた特性を有する。

（４）バーミキュライトの添加量が少なく、無機結合剤
の添加量が多いので、耐摩耗性は良くなっている。

（５）ショット量の少ない高価な結晶質シリカ・アルミ
ナ繊維を使用せず、比較的安価なシリカ・アルミナ繊維
を使用しているため、コスト的に安くなる。

さらに、特願昭59−253092号記載の耐熱ロールと比し
て下記のような優れた特性を有する。

（６）バーミキュライトの添加により、空隙の均一分散
をはかっているため、ロールのクッション性、耐熱衝撃
性、断熱性が向上している。

以上のことから明らかなように従来のアスベスト繊維
をまったく使用せず、かつ品質的に極めて優れた本発明
の高耐熱ロールは、高温下における搬送用ローラーとし
て産業上画期的なものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の高耐熱ロールの斜視図である。 符号の説明 １……パイプ、２……ドーナツ状成形板 ３……ワッシャー、４……ナット

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】少なくとも低ショットシリカ・アルミナフ
   ァイバーと膨張性充填剤と無機及び又は有機結合剤とか
   ら構成されるシート状物をドーナツ状に成形加工した環
   状成形体を金属芯材に嵌装して成ることを特徴とする高
   耐熱ロール。
2. 【請求項２】前記シート状物は低ショットシリカ・アル
   ミナファイバー29〜74重量％と無機結合剤13〜60重量％
   と膨張性充填剤0.5〜20重量％と有機結合剤５〜15重量
   ％とからなり、これらの合計が100重量％である特許請
   求の範囲第１項記載の高耐熱ロール。
3. 【請求項３】前記低ショットシリカ・アルミナファイバ
   ーとはショット含有率が30％以下であることを特徴とす
   る特許請求の範囲第１項又は第２項記載の高耐熱ロー
   ル。
4. 【請求項４】前記膨張性充填剤は、JIS Ｚ−8801に規
   定される日本工業規格標準篩の篩い下のバーミキュライ
   トであることを特徴とする特許請求の範囲第１項から第
   ３項記載の高耐熱ロール。