JP2576277C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は密閉形鉛蓄電池用セパレータ及び密閉形鉛蓄電池に係り、特に電解液
の成層化が生じ難い密閉形鉛蓄電池用セパレータと、この密閉形鉛蓄電池用セパ
レータを用いた、長寿命でかつ廉価な密閉形鉛蓄電池に関する。 [従来の技術] 密閉形鉛蓄電池は、密閉容器内にセパレータと極板とが積層配置された構成の
ものであり、電池内の電解液はこのセパレータ及び正・負両極の孔内に流動する
ことがないように保持されている。この密閉形鉛蓄電池は、耐漏液性に優れ、補
水を必要とせず、また自己放電が少ないといった特徴を有している。 ところで、特公昭63−27826号公報に記載されている如く、極板高さが
高い大容量の密閉形鉛蓄電池にあっては、注液時は均一であるにも拘らず充放電
をくり返すとセパレータ及び極板の多孔内に保持された電解液の濃度は上下方向
で差が出てくる。即ち、セパレータの下部ほど電解液濃度が高くなる成層化現象
が生ずるのである。この成層化現象は主としてセパレータ部分で生じ易いためこ
れを防止するためには、セパレータの保液力を高めること及び、セパレータの上
下においても保液性に差がないようにすることあるいは電解液にケイ酸微粉末を
添加することによってその粘度を高くすることが要請される。 従来より、前記セパレータとしてはガラス繊維を主体としたものが主として用
いられている。そして、この成層化現象が発生するのを防止するために、用いる
セパレータの保液性(液保持特性)を向上させることに関して種々の改良が試み
られている。 例えば、特開昭62−133669号、同62−136751号には、SiO
2、TiO2又は希土類元素酸化物などの粉末を塗布ないし混合したセパレータが
記載されている。特開昭63−152853号、同62−221954号、同6
1−269852号には粉末としてシリカ又は発泡パーライトを用いることが記
載されている。 また、特開昭63−143742号、同63−146348号には中空細管状
のガラス繊維よりなるセパレータが記載されている。 [発明が解決しようとする課題] 元来極板の厚さのバラツキを吸収し、一定の緊圧を確保できるセパレータはな
かった。更に、成層化対策として液保持性を向上させる改良を進めるほどセパレ
ータは硬くなり、過少な緊圧では放電特性(特に高率放電)が劣ったり、過大な
緊圧では電槽への挿入が困難で、電槽が膨れたり挿入不可能な場合さえおきるよ
うになった。 例えば、液保持性を向上させるための平均ガラス繊維径を小さくするほど、1
00%ガラス繊維のセパレータでも硬くなることが判った。シリカ粉末を混抄す
ることによりセパレータは更に硬いものになった。 電解液中にシリカ粉末を添加することは容易ではあるが、工程上複雑になり、
結果的には得られる電池は高価になり、一方、セパレータ中にシリカを混抄する
ことは、次のような理由から実用化に到っていないのが現状である。 即ち、シリカ粉末のみではセパレータとして抄紙することはできず、従って、
ガラス繊維を主体とするものにシリカ粉末を加えて混抄することになるが、シリ
カ粉末の割合が少ないと成層化現象の防止効果が低く、逆にシリカ粉末の割合が
多いと抄紙が困難になり、硬いセパレータとなってしまう。 このように、従来においては、成層化現象の防止効果に優れ、しかも製造が容
易で一定の緊圧が確保できる密閉形鉛蓄電池用セパレータは提供されていなかっ
た。 本発明は上記の問題点を解決し、電解液の成層化が生じ難い、一定の緊圧が確
保できる密閉形鉛蓄電池用セパレータと、それを用いた長寿命でかつ廉価な密閉
形鉛蓄電池を提供することを目的とする。 なお、本出願人は、成層化防止を達成した密閉形蓄電池として、特願平1-4558
4 号(以下、先願という。)において、電解液の流下速度が100mm/時間以
下であるセパレータを使用することを特徴とする密閉形蓄電池を提案している。 この先願の密閉形鉛蓄電池のセパレータは、その一つの態様として、平均繊維
径0.65μm以下のガラス繊維のみから実質的に構成されるもの及びシリカ粉
末を5〜70%併用したものから実質的に構成される。 ところが、その後さらに研究を重ねたところ、この先願に係るセパレータでは
見掛密度差/緊圧差の値が小さく、かたいためセパレータを蓄電池のケースに組 み込みにくく、組み込んだ後の緊圧がばらつくことが知見された。 又、電解液流下速度が100mm〜81mm/時間であるセパレータでは成層
化防止効果が不充分である事が判った。 本発明は、成層化防止を達成すると共に、さらに見掛密度差/緊圧差の値が大
きく蓄電池のケースに組み込み易く、緊圧のばらつかない密閉形鉛蓄電池用セパ
レータとそれを用いた密閉形鉛蓄電池の提供を別の目的とする。 [課題を解決するための手段] 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、 ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させ
て製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実質的に
構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電解液の
流下速度が80mm/時間以下であり、ガラス繊維表面に水ガラスを形成させる
ことによってガラス繊維間を結合させてセパレータを製造する際に発生するNa
2SO4に由来するガラス繊維表面の硫黄Sが0.02%以下である、 或いは、 ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させ
て製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実質的に
構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電解液の
流下速度が80mm/時間以下であり、見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4c
m-1以上であり、好ましくは、20kg/dm2の加圧時の密度が0.155g
/cm3以下であると共に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220g/cm
3以下である、 或いは、 ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させ
て製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実質的に
構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電解液の
流下速度が80mm/時間以下であり、保液性が1.35g/cc以上であり、
好ましくは、見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上である ことを特徴とする。 本発明の密閉形鉛蓄電池は、ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによ
ってガラス繊維間を結合させて製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリ
ガラス繊維のみから実質的に構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、
比重1.3の希硫酸電解液の流下速度が80mm/時間以下であり、見掛密度差
/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上、20kg/dm2の加圧時の密度が0.
155g/cm3以下であると共に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220
g/cm3以下である密閉形鉛蓄電池用セパレータを用いたものである。 [作用] 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、比重1.3の希硫酸電解液(以下、
単に「電解液」と称する場合がある。)の流下速度が80mm/時間以下のセパ
レータであり、成層化現象が防止される。電解液の流下速度が80mm/時間を
超えるものでは、電解液の保持能力が小さいため、充放電をくり返した時に電解
液濃度がセパレータ上下方向で変わるいわゆる成層化現象が顕著になる。 この電解液の流下速度はその成層化現象を防止する点からは小さい程好ましい
が、過度に小さいと注液に多大の時間が必要になる。従って、本発明の密閉形鉛
蓄電池用セパレータにおいて、その電解液の流下速度は5〜80mm/時間より
好ましくは20〜70mm/時間であるのが良い。 なお、本発明において、密閉形鉛蓄電池用セパレータの電解液の流下速度は、
後述の[実施例]に記載する方法により求めることができる。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、平均繊維径2μm以下好ましくは0
.9μm以下のガラス繊維100%で構成されるものである。先願において平均
繊維径0.65μ以下のガラス繊維100%で液流下速度100mm/時間以下
の効果が得られる事を述べたが、平均繊維径が0.65〜0.9μのガラス繊維
を用いても電解液の流下速度80mm/時間以下の密閉形鉛蓄電池用セパレータ
を実現することができた。この原理については後述する。なお、ガラス繊維径が
小さすぎると、セパレータがコスト高となるので、本発明の密閉形鉛蓄電池に用
いるセパレータにおいて、ガラス繊維の平均繊維径は0.4μmとりわけ0.6
μm以上であることが好ましい。 この密閉形鉛蓄電池用セパレータのガラス繊維は、含アルカリ珪酸塩ガラスで
あることが好ましい。 本発明においては、含アルカリ珪酸塩ガラス繊維のうち蓄電池に使用されるこ
とから、耐酸性の良好なものが好適に使用される。この耐酸性の程度は、平均繊
維径1μm以下のガラス繊維の状態で、JISC−2202に従って測定した場
合の重量減が2%以下であるのが望ましい。また、このようなガラス繊維の組成
としては重量比で60〜75%のSiO2及び8〜20%のR2O(Na2O、K2
Oなどのアルカリ金属酸化物)を主として含有し(ただしSiO2+R2Oは75
〜90%)、その他に例えばCaO、MgO、B2O3、Al2O3、ZnO、Fe
2O3などの1種又は2種以上を含んだものが挙げられる。尚好ましい含アルカリ
珪酸塩ガラスの一例を次の第1表に示す。 先願の密閉形蓄電池に用いられるセパレータではシリカ粉末を含有しても良い
ものとされているが、シリカ粉末を混抄すると製造されたセパレータはどうして
も硬くなるので、セパレータのソフト化には不適当である。また、シリカ粉末を 混抄すると、セパレータの密度が大きくなり、空間率が減少し、保液量が少なく
なる。 又、有機繊維、液体バインダーを併用する場合もセパレータは硬くなるので、
本発明によるセパレータの物性を確保できる範囲内で使用できるが、必要最小限
に止めるべきである。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータを製造するには、例えば次のような方法
によるのが有利である。 即ち、FA法(火炎法)、遠心法その他のガラス短繊維製造法により製造され
た、比鮫的長さの短いガラス繊維を用意し、これをパルパーで離解、切断、分散
させる。 あるいは、これを抄紙機ネットに供給する途中において、適宜の切断手段によ
り、ガラス繊維を短く切断しても良い。 特開昭59−71255号公報においてガラス繊維を水中に投入し硫酸を加え
て抄造し加熱してセパレータとする事を説明した。 この場合ガラス中のSiO2,Na2OがH2SO4と反応しガラス繊維の表面に
SiO2・H2O即ち水ガラスを形成させる事により繊維間を結合させる。又同時
に発生するNa2SO4は電解液との親和性をよくする効果がある。 本発明の目的は密閉形鉛蓄電池用セパレータをソフトにして電池組立を容易に
し緊圧のバラツキを小さくする事であり接着を弱くする事が必要である。又液流
下速度を遅くして成層化を防止する事にあるのでNa2SO4の量を少なくして電
解液との親和性を弱くする事が必要である。 この手段はいろいろある。 含アルカリガラス繊維は、放置しておくと表面からアルカリ分が溶出していく
。(長時間経過したもの又は長時間加熱したものも同様である。) このように表面からアルカリ分が溶出したガラス繊維を使用して通常の抄造を
行うと、抄造されたシートはソフトに仕上る。 又ガラス組成の中のNa2O分の少ないガラス繊維を使用する事も効果がある
。 第1表の種類の中ではBが適当である。又Na2Oが5〜10%のものであれ ば更によい。 又抄造する時Naの溶出が少なくなるように硫酸の量を減らす方法がある。 又抄造、乾燥後に水洗乾燥してもよい。 このようにすると、ガラス繊維同志の接着が軽度のものとなり、セパレータが
ソフトになり弾力性が大きい。このため、セパレータを密閉形蓄電池のケースに
組み込み易くなる。即ち見掛密度差/緊圧差の値が大きくなると共に、バインダ
ーのないガラス繊維厚はふくらみやすい性質があり、少量の使用量でも緊圧を出
すことができ極板の厚さがばらついてもセパレータがソフトであるため吸収でき
て緊圧が一定となる。 又、ガラス繊維の表面は液降下しにくい性状となる。 ソフトに仕上ったセパレータにおいては、密閉形蓄電池の電解液を吸収すると
膨張しやすいので、保液性が良くなる。 ソフトの程度は見掛密度差/緊圧差の値で定量化できる。又保液性の値で定量
化できる。 保液性の測り方は後述するがソフトなセパレータでは吸水した時厚さがふくら
み吸液量が大きくなるので保液性の値は大きくなる。硬いセパレータでは吸水し
た時厚さがふくらみにくいので保液性の値は小さくなる。 本発明の弾力性の大きいソフトなガラス繊維100%のセパレータは、ガラス
繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させてセパレ
ータを製造する際に発生するNa2SO4に由来する硫黄元素Sを測定すると小さ
い値を示し、0.02%以下である。 又弾力性の小さいガラス繊維100%の硬いセパレータの場合はもっと大きな
値を示す。 測定方法については後述する。 Sが低いセパレータは弾力性があり、保液性が大きく、組み込みが容易で極板
厚さがばらついても一定の適正な緊圧を確保でき、しかも、保液量が多いので寿
命中の減液量も少ない(第2、第3表参照)。 第3図にS(%)と見掛密度差/緊圧差及び保液性との関係を示した。 Sが0.02%以下であれば見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上 となり、保液性1.35g/cc以上が確保できる。 なお、抄造にあたり、繊維を水中に分散させるときに分散剤を使用しても良い
。又、湿式抄造された繊維抄造体、例えば抄造ネット上にある繊維抄造体にジア
ルキルスルフォサクシネートをスプレーして、ガラス繊維に対して0.005〜
10重量%付着させることによって、ジアルキルスルフォサクシネートの有する
親水性によりセパレータの保液性を向上させることができる。ジアルキルスルフ
ォサクシネートを上記の如くスプレーする代わりに抄造槽中の分散水に混入して
も良い。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータの厚さは特に限定されるものではないが
、ガラス繊維の平均繊維長さ以上の厚さとするのが好ましい。 本発明では、セパレータの20kg/dm2加圧時の密度が0.155g/c
m3以下であると共に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220g/cm3以
下である。このような低密度のものとすることにより、セパレータの空間率が十
分に大きなものとなり、保液量が増大する。又密度が小さい事は保液性と見掛密
度差/緊圧差の値を大きくするためにも必要である。 本発明では、セパレータの伸び(破断時伸び)が、15mm幅のサンプルに徐
々に荷重を加えてゆき、破断した際の値で3〜8%となるようにするのが好適で
ある。この伸びが小さすぎると、セパレータが切れ易くなる。伸びが大きすぎる
と、密閉形蓄電池のケースへの組み込み作業が行ないにくいものとなる。 本発明では、セパレータの引張強度は15mm幅のサンプルに引張荷重を加え
たときの値で400g以上であることが好ましい。 [実施例] 以下、実施例及び比較例について説明する。 なお、実施例及び比較例における電解液の流下速度、厚さ及び目付等の測定方
法は次の通りである。 〈電解液の流下速度〉 試料を50mm×250mmの大きさに切断する。 試料の重量が約6.75gになるように(充填密度0.16〜0.21g/
cm3)、両端にスペーサを介して対向して設置された2枚のアクリル板(幅 70〜80mm×長さ500mm)の間にセットする。 試料を水に漬ける。 湿潤状態の試料を測定治具にセットする。この際、余分の水は流出する。 アクリル板の上方から比重1.3の硫酸液をピペットで静かに注液する。 硫酸液の注液は、サンプルの上から100mmにしておき、随時液を追加し
て高さを一定にしておく。 硫酸液は、予め赤インクまたはメチルオレンジで着色しておく。 電解液を入れ終えた後から5分、10分、30分、60分後の落下距離を鋼
尺で測定する。即ち、本発明における流下速度は、電解液の注液開始直後から6
0分経過後の落下距離で表わした。時間はストップウォッチで正確に測定する。 測定は、サンプル毎3回づつ行なう。 〈目付(g/m2)〉 試料重量を試料面積で除して得られる値である。 〈厚さ(mm)〉 試料をその厚み方向に20kg/dm2の荷重で押圧した状態で測定する。 (JISC−2202) 〈密度(g/cm3)〉 試料(重量W)10cm×10cmの面積(S)に10、20、30、40、
50又は60kgの荷重を加えた時の試料の厚さをTとした時に、式:W/(S
×T)(g/cm3)で与えられる値で表わす。 〈引張強度(g/15mm幅)及び伸び(%)〉 幅15mmの試料の両端を引張りそれが切断するときの外力の値(g)を求め
る。また、切れた時の伸びを%で表わす。 〈保液性(g/cc)〉 あらかじめ試料の重量及び厚さを測定する。これを水を満したバンドに30秒
間浸漬後傾斜台に引上げ、45°で5分間保持した後、試料の重量を測定し次式
により保液性を求める。 W1:浸漬前の試料重量(g) W2:浸漬後の試料重量(g) l :長さ 25cm W :巾(cm)5cm t :試料の実厚さ(cm) 〈Sの分析(%)〉 試料表面の付着物の溶解液を塩酸酸性とし、塩化バリウムを加え、硫酸バリウ
ムの沈澱を生成し、熟成後、濾過、焼成して沈澱物を秤量し、S分に換算、定量
する。 実施例1〜5 第2表に示す材料配合にて蓄電池用セパレータを製造し、その諸特性の測定結
果を第2表に示した。このセパレータは、第1表のBの組成のガラス繊維を湿度
90%、40℃、数時間加熱処理したものを用いて抄造されたものである。各セ
パレータのその他の特性の測定結果を第2表に示す。尚1、2、3は同条件のく
りかえしテスト結果、4、5も同条件のくりかえしテスト結果である。 また、各々のセパレータを用いて、密閉形鉛蓄電池を組み立て、電解液の成層
化防止効果を調べ、その結果を第2表に併記した。 組み立てた密閉形鉛蓄電池は、巾40mm×高さ70mm×厚さ3.3mmの
正極板2校と同じ大きさで厚さが2.0mmである負極板とを所定のセパレータ
を介して積層し、所定の厚さになるまで圧力を加えて電池電槽に収容したもので
ある。このセパレータに加える圧力を「緊圧」と定義し、電槽に収容されたとき
にセパレータが電槽の壁から加える緊圧を第2表に示している。次に、比重1.
30のH2SO4をセル当り43cc注液し、そのセル当りの容量は5Ah/20
HRである。 このようにして組み立てた電池を「1.4Aで3時間放電、1.02Aで5時 間充電」を1サイクルとして交互充放電寿命試験した。電池の容量が4.2Ah
(=1.4A×3h)以下になった時点を寿命とした。 寿命試験の途中100サイクルで試験している電池のうち夫々1セルを分解し
てセパレータの上下及び負極板上下での電解液比重、及び負極活物質内の硫酸鉛
の量を測定した。 比較例1〜6 第3表に示す材料を用い、第1表のAの組成のガラス繊維を用いて通常の方法
で抄造したセパレータを用いたこと以外は実施例1〜5と同様にしてセパレータ
を製造した。また、各セパレータを用いて密閉形蓄電池を組み立てた。セパレー
タ特性と電解液の成層化防止効果の測定結果を第3表に示す。 第2、3表より本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、成層化防止効果が優
れているため、得られる密閉形鉛蓄電池の寿命性能、特に交互充放電寿命性能に
すぐれていることは明らかである。 また、第2、3表より本発明例のセパレータは保液性が著しく高いことが認め
られる。さらに、見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上であり、密閉
形蓄電池のケースに組み込み易い。 なお、第1図に緊圧と見掛密度の関係を示す。 また、セパレータに加える圧力によってセパレータは非加圧時よりも嵩が小さ
くなり、これにより密度が大きくなるが、この加圧時の密度を見掛密度と称し、
60kg/dm2加圧時の見掛密度D60と10kg/dm2加圧時の見掛密度D10
との差を50(=60−10)kg/dm2で除した値(D60−D10)/50、
即ち(見掛密度差/緊圧差)は、それが大きいほど弾力性に富み、電槽に入れる
時圧縮しやすく又入れた後の圧迫力に優れ、セパレータとして好適であることを
示す。 又、実施例1、3及び比較例1のセパレータにおける緊圧と極群重量との関係
を第2図に示す。第2図より、本発明のセパレータは、弾力性に富むソフトなも
のであるため、極板の校数が多くても緊圧が吸収され、密閉形蓄電池のケースに
セパレータを入れやすく、緊圧がバラつかないことが認められる。 [発明の効果] 以上詳述した通り、本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータ及び密閉形鉛蓄電池
はセパレータの電解液の保液性が著しく高く、セパレータ上下方向での保液性が
均等化されるようになり、成層化現象が防止されるため、極めて長寿命の性能を
有する。 従って、小容量の密閉形鉛蓄電池はもちろん、極板高さが高い大容量の密閉形
鉛蓄電池においても安定したかつ優れた電池性能を有する長寿命のものとなる。
この長寿命化が、試験したような交互充放電のみでなく、浮動充電される用途で
あっても長い寿命性能を発揮することは明らかである。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータはソフトで弾力性に富むための、電池の
ケースに組み込み易い。また、緊圧が一定である。
の成層化が生じ難い密閉形鉛蓄電池用セパレータと、この密閉形鉛蓄電池用セパ
レータを用いた、長寿命でかつ廉価な密閉形鉛蓄電池に関する。 [従来の技術] 密閉形鉛蓄電池は、密閉容器内にセパレータと極板とが積層配置された構成の
ものであり、電池内の電解液はこのセパレータ及び正・負両極の孔内に流動する
ことがないように保持されている。この密閉形鉛蓄電池は、耐漏液性に優れ、補
水を必要とせず、また自己放電が少ないといった特徴を有している。 ところで、特公昭63−27826号公報に記載されている如く、極板高さが
高い大容量の密閉形鉛蓄電池にあっては、注液時は均一であるにも拘らず充放電
をくり返すとセパレータ及び極板の多孔内に保持された電解液の濃度は上下方向
で差が出てくる。即ち、セパレータの下部ほど電解液濃度が高くなる成層化現象
が生ずるのである。この成層化現象は主としてセパレータ部分で生じ易いためこ
れを防止するためには、セパレータの保液力を高めること及び、セパレータの上
下においても保液性に差がないようにすることあるいは電解液にケイ酸微粉末を
添加することによってその粘度を高くすることが要請される。 従来より、前記セパレータとしてはガラス繊維を主体としたものが主として用
いられている。そして、この成層化現象が発生するのを防止するために、用いる
セパレータの保液性(液保持特性)を向上させることに関して種々の改良が試み
られている。 例えば、特開昭62−133669号、同62−136751号には、SiO
2、TiO2又は希土類元素酸化物などの粉末を塗布ないし混合したセパレータが
記載されている。特開昭63−152853号、同62−221954号、同6
1−269852号には粉末としてシリカ又は発泡パーライトを用いることが記
載されている。 また、特開昭63−143742号、同63−146348号には中空細管状
のガラス繊維よりなるセパレータが記載されている。 [発明が解決しようとする課題] 元来極板の厚さのバラツキを吸収し、一定の緊圧を確保できるセパレータはな
かった。更に、成層化対策として液保持性を向上させる改良を進めるほどセパレ
ータは硬くなり、過少な緊圧では放電特性(特に高率放電)が劣ったり、過大な
緊圧では電槽への挿入が困難で、電槽が膨れたり挿入不可能な場合さえおきるよ
うになった。 例えば、液保持性を向上させるための平均ガラス繊維径を小さくするほど、1
00%ガラス繊維のセパレータでも硬くなることが判った。シリカ粉末を混抄す
ることによりセパレータは更に硬いものになった。 電解液中にシリカ粉末を添加することは容易ではあるが、工程上複雑になり、
結果的には得られる電池は高価になり、一方、セパレータ中にシリカを混抄する
ことは、次のような理由から実用化に到っていないのが現状である。 即ち、シリカ粉末のみではセパレータとして抄紙することはできず、従って、
ガラス繊維を主体とするものにシリカ粉末を加えて混抄することになるが、シリ
カ粉末の割合が少ないと成層化現象の防止効果が低く、逆にシリカ粉末の割合が
多いと抄紙が困難になり、硬いセパレータとなってしまう。 このように、従来においては、成層化現象の防止効果に優れ、しかも製造が容
易で一定の緊圧が確保できる密閉形鉛蓄電池用セパレータは提供されていなかっ
た。 本発明は上記の問題点を解決し、電解液の成層化が生じ難い、一定の緊圧が確
保できる密閉形鉛蓄電池用セパレータと、それを用いた長寿命でかつ廉価な密閉
形鉛蓄電池を提供することを目的とする。 なお、本出願人は、成層化防止を達成した密閉形蓄電池として、特願平1-4558
4 号(以下、先願という。)において、電解液の流下速度が100mm/時間以
下であるセパレータを使用することを特徴とする密閉形蓄電池を提案している。 この先願の密閉形鉛蓄電池のセパレータは、その一つの態様として、平均繊維
径0.65μm以下のガラス繊維のみから実質的に構成されるもの及びシリカ粉
末を5〜70%併用したものから実質的に構成される。 ところが、その後さらに研究を重ねたところ、この先願に係るセパレータでは
見掛密度差/緊圧差の値が小さく、かたいためセパレータを蓄電池のケースに組 み込みにくく、組み込んだ後の緊圧がばらつくことが知見された。 又、電解液流下速度が100mm〜81mm/時間であるセパレータでは成層
化防止効果が不充分である事が判った。 本発明は、成層化防止を達成すると共に、さらに見掛密度差/緊圧差の値が大
きく蓄電池のケースに組み込み易く、緊圧のばらつかない密閉形鉛蓄電池用セパ
レータとそれを用いた密閉形鉛蓄電池の提供を別の目的とする。 [課題を解決するための手段] 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、 ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させ
て製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実質的に
構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電解液の
流下速度が80mm/時間以下であり、ガラス繊維表面に水ガラスを形成させる
ことによってガラス繊維間を結合させてセパレータを製造する際に発生するNa
2SO4に由来するガラス繊維表面の硫黄Sが0.02%以下である、 或いは、 ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させ
て製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実質的に
構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電解液の
流下速度が80mm/時間以下であり、見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4c
m-1以上であり、好ましくは、20kg/dm2の加圧時の密度が0.155g
/cm3以下であると共に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220g/cm
3以下である、 或いは、 ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させ
て製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実質的に
構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電解液の
流下速度が80mm/時間以下であり、保液性が1.35g/cc以上であり、
好ましくは、見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上である ことを特徴とする。 本発明の密閉形鉛蓄電池は、ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによ
ってガラス繊維間を結合させて製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリ
ガラス繊維のみから実質的に構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、
比重1.3の希硫酸電解液の流下速度が80mm/時間以下であり、見掛密度差
/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上、20kg/dm2の加圧時の密度が0.
155g/cm3以下であると共に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220
g/cm3以下である密閉形鉛蓄電池用セパレータを用いたものである。 [作用] 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、比重1.3の希硫酸電解液(以下、
単に「電解液」と称する場合がある。)の流下速度が80mm/時間以下のセパ
レータであり、成層化現象が防止される。電解液の流下速度が80mm/時間を
超えるものでは、電解液の保持能力が小さいため、充放電をくり返した時に電解
液濃度がセパレータ上下方向で変わるいわゆる成層化現象が顕著になる。 この電解液の流下速度はその成層化現象を防止する点からは小さい程好ましい
が、過度に小さいと注液に多大の時間が必要になる。従って、本発明の密閉形鉛
蓄電池用セパレータにおいて、その電解液の流下速度は5〜80mm/時間より
好ましくは20〜70mm/時間であるのが良い。 なお、本発明において、密閉形鉛蓄電池用セパレータの電解液の流下速度は、
後述の[実施例]に記載する方法により求めることができる。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、平均繊維径2μm以下好ましくは0
.9μm以下のガラス繊維100%で構成されるものである。先願において平均
繊維径0.65μ以下のガラス繊維100%で液流下速度100mm/時間以下
の効果が得られる事を述べたが、平均繊維径が0.65〜0.9μのガラス繊維
を用いても電解液の流下速度80mm/時間以下の密閉形鉛蓄電池用セパレータ
を実現することができた。この原理については後述する。なお、ガラス繊維径が
小さすぎると、セパレータがコスト高となるので、本発明の密閉形鉛蓄電池に用
いるセパレータにおいて、ガラス繊維の平均繊維径は0.4μmとりわけ0.6
μm以上であることが好ましい。 この密閉形鉛蓄電池用セパレータのガラス繊維は、含アルカリ珪酸塩ガラスで
あることが好ましい。 本発明においては、含アルカリ珪酸塩ガラス繊維のうち蓄電池に使用されるこ
とから、耐酸性の良好なものが好適に使用される。この耐酸性の程度は、平均繊
維径1μm以下のガラス繊維の状態で、JISC−2202に従って測定した場
合の重量減が2%以下であるのが望ましい。また、このようなガラス繊維の組成
としては重量比で60〜75%のSiO2及び8〜20%のR2O(Na2O、K2
Oなどのアルカリ金属酸化物)を主として含有し(ただしSiO2+R2Oは75
〜90%)、その他に例えばCaO、MgO、B2O3、Al2O3、ZnO、Fe
2O3などの1種又は2種以上を含んだものが挙げられる。尚好ましい含アルカリ
珪酸塩ガラスの一例を次の第1表に示す。 先願の密閉形蓄電池に用いられるセパレータではシリカ粉末を含有しても良い
ものとされているが、シリカ粉末を混抄すると製造されたセパレータはどうして
も硬くなるので、セパレータのソフト化には不適当である。また、シリカ粉末を 混抄すると、セパレータの密度が大きくなり、空間率が減少し、保液量が少なく
なる。 又、有機繊維、液体バインダーを併用する場合もセパレータは硬くなるので、
本発明によるセパレータの物性を確保できる範囲内で使用できるが、必要最小限
に止めるべきである。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータを製造するには、例えば次のような方法
によるのが有利である。 即ち、FA法(火炎法)、遠心法その他のガラス短繊維製造法により製造され
た、比鮫的長さの短いガラス繊維を用意し、これをパルパーで離解、切断、分散
させる。 あるいは、これを抄紙機ネットに供給する途中において、適宜の切断手段によ
り、ガラス繊維を短く切断しても良い。 特開昭59−71255号公報においてガラス繊維を水中に投入し硫酸を加え
て抄造し加熱してセパレータとする事を説明した。 この場合ガラス中のSiO2,Na2OがH2SO4と反応しガラス繊維の表面に
SiO2・H2O即ち水ガラスを形成させる事により繊維間を結合させる。又同時
に発生するNa2SO4は電解液との親和性をよくする効果がある。 本発明の目的は密閉形鉛蓄電池用セパレータをソフトにして電池組立を容易に
し緊圧のバラツキを小さくする事であり接着を弱くする事が必要である。又液流
下速度を遅くして成層化を防止する事にあるのでNa2SO4の量を少なくして電
解液との親和性を弱くする事が必要である。 この手段はいろいろある。 含アルカリガラス繊維は、放置しておくと表面からアルカリ分が溶出していく
。(長時間経過したもの又は長時間加熱したものも同様である。) このように表面からアルカリ分が溶出したガラス繊維を使用して通常の抄造を
行うと、抄造されたシートはソフトに仕上る。 又ガラス組成の中のNa2O分の少ないガラス繊維を使用する事も効果がある
。 第1表の種類の中ではBが適当である。又Na2Oが5〜10%のものであれ ば更によい。 又抄造する時Naの溶出が少なくなるように硫酸の量を減らす方法がある。 又抄造、乾燥後に水洗乾燥してもよい。 このようにすると、ガラス繊維同志の接着が軽度のものとなり、セパレータが
ソフトになり弾力性が大きい。このため、セパレータを密閉形蓄電池のケースに
組み込み易くなる。即ち見掛密度差/緊圧差の値が大きくなると共に、バインダ
ーのないガラス繊維厚はふくらみやすい性質があり、少量の使用量でも緊圧を出
すことができ極板の厚さがばらついてもセパレータがソフトであるため吸収でき
て緊圧が一定となる。 又、ガラス繊維の表面は液降下しにくい性状となる。 ソフトに仕上ったセパレータにおいては、密閉形蓄電池の電解液を吸収すると
膨張しやすいので、保液性が良くなる。 ソフトの程度は見掛密度差/緊圧差の値で定量化できる。又保液性の値で定量
化できる。 保液性の測り方は後述するがソフトなセパレータでは吸水した時厚さがふくら
み吸液量が大きくなるので保液性の値は大きくなる。硬いセパレータでは吸水し
た時厚さがふくらみにくいので保液性の値は小さくなる。 本発明の弾力性の大きいソフトなガラス繊維100%のセパレータは、ガラス
繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結合させてセパレ
ータを製造する際に発生するNa2SO4に由来する硫黄元素Sを測定すると小さ
い値を示し、0.02%以下である。 又弾力性の小さいガラス繊維100%の硬いセパレータの場合はもっと大きな
値を示す。 測定方法については後述する。 Sが低いセパレータは弾力性があり、保液性が大きく、組み込みが容易で極板
厚さがばらついても一定の適正な緊圧を確保でき、しかも、保液量が多いので寿
命中の減液量も少ない(第2、第3表参照)。 第3図にS(%)と見掛密度差/緊圧差及び保液性との関係を示した。 Sが0.02%以下であれば見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上 となり、保液性1.35g/cc以上が確保できる。 なお、抄造にあたり、繊維を水中に分散させるときに分散剤を使用しても良い
。又、湿式抄造された繊維抄造体、例えば抄造ネット上にある繊維抄造体にジア
ルキルスルフォサクシネートをスプレーして、ガラス繊維に対して0.005〜
10重量%付着させることによって、ジアルキルスルフォサクシネートの有する
親水性によりセパレータの保液性を向上させることができる。ジアルキルスルフ
ォサクシネートを上記の如くスプレーする代わりに抄造槽中の分散水に混入して
も良い。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータの厚さは特に限定されるものではないが
、ガラス繊維の平均繊維長さ以上の厚さとするのが好ましい。 本発明では、セパレータの20kg/dm2加圧時の密度が0.155g/c
m3以下であると共に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220g/cm3以
下である。このような低密度のものとすることにより、セパレータの空間率が十
分に大きなものとなり、保液量が増大する。又密度が小さい事は保液性と見掛密
度差/緊圧差の値を大きくするためにも必要である。 本発明では、セパレータの伸び(破断時伸び)が、15mm幅のサンプルに徐
々に荷重を加えてゆき、破断した際の値で3〜8%となるようにするのが好適で
ある。この伸びが小さすぎると、セパレータが切れ易くなる。伸びが大きすぎる
と、密閉形蓄電池のケースへの組み込み作業が行ないにくいものとなる。 本発明では、セパレータの引張強度は15mm幅のサンプルに引張荷重を加え
たときの値で400g以上であることが好ましい。 [実施例] 以下、実施例及び比較例について説明する。 なお、実施例及び比較例における電解液の流下速度、厚さ及び目付等の測定方
法は次の通りである。 〈電解液の流下速度〉 試料を50mm×250mmの大きさに切断する。 試料の重量が約6.75gになるように(充填密度0.16〜0.21g/
cm3)、両端にスペーサを介して対向して設置された2枚のアクリル板(幅 70〜80mm×長さ500mm)の間にセットする。 試料を水に漬ける。 湿潤状態の試料を測定治具にセットする。この際、余分の水は流出する。 アクリル板の上方から比重1.3の硫酸液をピペットで静かに注液する。 硫酸液の注液は、サンプルの上から100mmにしておき、随時液を追加し
て高さを一定にしておく。 硫酸液は、予め赤インクまたはメチルオレンジで着色しておく。 電解液を入れ終えた後から5分、10分、30分、60分後の落下距離を鋼
尺で測定する。即ち、本発明における流下速度は、電解液の注液開始直後から6
0分経過後の落下距離で表わした。時間はストップウォッチで正確に測定する。 測定は、サンプル毎3回づつ行なう。 〈目付(g/m2)〉 試料重量を試料面積で除して得られる値である。 〈厚さ(mm)〉 試料をその厚み方向に20kg/dm2の荷重で押圧した状態で測定する。 (JISC−2202) 〈密度(g/cm3)〉 試料(重量W)10cm×10cmの面積(S)に10、20、30、40、
50又は60kgの荷重を加えた時の試料の厚さをTとした時に、式:W/(S
×T)(g/cm3)で与えられる値で表わす。 〈引張強度(g/15mm幅)及び伸び(%)〉 幅15mmの試料の両端を引張りそれが切断するときの外力の値(g)を求め
る。また、切れた時の伸びを%で表わす。 〈保液性(g/cc)〉 あらかじめ試料の重量及び厚さを測定する。これを水を満したバンドに30秒
間浸漬後傾斜台に引上げ、45°で5分間保持した後、試料の重量を測定し次式
により保液性を求める。 W1:浸漬前の試料重量(g) W2:浸漬後の試料重量(g) l :長さ 25cm W :巾(cm)5cm t :試料の実厚さ(cm) 〈Sの分析(%)〉 試料表面の付着物の溶解液を塩酸酸性とし、塩化バリウムを加え、硫酸バリウ
ムの沈澱を生成し、熟成後、濾過、焼成して沈澱物を秤量し、S分に換算、定量
する。 実施例1〜5 第2表に示す材料配合にて蓄電池用セパレータを製造し、その諸特性の測定結
果を第2表に示した。このセパレータは、第1表のBの組成のガラス繊維を湿度
90%、40℃、数時間加熱処理したものを用いて抄造されたものである。各セ
パレータのその他の特性の測定結果を第2表に示す。尚1、2、3は同条件のく
りかえしテスト結果、4、5も同条件のくりかえしテスト結果である。 また、各々のセパレータを用いて、密閉形鉛蓄電池を組み立て、電解液の成層
化防止効果を調べ、その結果を第2表に併記した。 組み立てた密閉形鉛蓄電池は、巾40mm×高さ70mm×厚さ3.3mmの
正極板2校と同じ大きさで厚さが2.0mmである負極板とを所定のセパレータ
を介して積層し、所定の厚さになるまで圧力を加えて電池電槽に収容したもので
ある。このセパレータに加える圧力を「緊圧」と定義し、電槽に収容されたとき
にセパレータが電槽の壁から加える緊圧を第2表に示している。次に、比重1.
30のH2SO4をセル当り43cc注液し、そのセル当りの容量は5Ah/20
HRである。 このようにして組み立てた電池を「1.4Aで3時間放電、1.02Aで5時 間充電」を1サイクルとして交互充放電寿命試験した。電池の容量が4.2Ah
(=1.4A×3h)以下になった時点を寿命とした。 寿命試験の途中100サイクルで試験している電池のうち夫々1セルを分解し
てセパレータの上下及び負極板上下での電解液比重、及び負極活物質内の硫酸鉛
の量を測定した。 比較例1〜6 第3表に示す材料を用い、第1表のAの組成のガラス繊維を用いて通常の方法
で抄造したセパレータを用いたこと以外は実施例1〜5と同様にしてセパレータ
を製造した。また、各セパレータを用いて密閉形蓄電池を組み立てた。セパレー
タ特性と電解液の成層化防止効果の測定結果を第3表に示す。 第2、3表より本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータは、成層化防止効果が優
れているため、得られる密閉形鉛蓄電池の寿命性能、特に交互充放電寿命性能に
すぐれていることは明らかである。 また、第2、3表より本発明例のセパレータは保液性が著しく高いことが認め
られる。さらに、見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上であり、密閉
形蓄電池のケースに組み込み易い。 なお、第1図に緊圧と見掛密度の関係を示す。 また、セパレータに加える圧力によってセパレータは非加圧時よりも嵩が小さ
くなり、これにより密度が大きくなるが、この加圧時の密度を見掛密度と称し、
60kg/dm2加圧時の見掛密度D60と10kg/dm2加圧時の見掛密度D10
との差を50(=60−10)kg/dm2で除した値(D60−D10)/50、
即ち(見掛密度差/緊圧差)は、それが大きいほど弾力性に富み、電槽に入れる
時圧縮しやすく又入れた後の圧迫力に優れ、セパレータとして好適であることを
示す。 又、実施例1、3及び比較例1のセパレータにおける緊圧と極群重量との関係
を第2図に示す。第2図より、本発明のセパレータは、弾力性に富むソフトなも
のであるため、極板の校数が多くても緊圧が吸収され、密閉形蓄電池のケースに
セパレータを入れやすく、緊圧がバラつかないことが認められる。 [発明の効果] 以上詳述した通り、本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータ及び密閉形鉛蓄電池
はセパレータの電解液の保液性が著しく高く、セパレータ上下方向での保液性が
均等化されるようになり、成層化現象が防止されるため、極めて長寿命の性能を
有する。 従って、小容量の密閉形鉛蓄電池はもちろん、極板高さが高い大容量の密閉形
鉛蓄電池においても安定したかつ優れた電池性能を有する長寿命のものとなる。
この長寿命化が、試験したような交互充放電のみでなく、浮動充電される用途で
あっても長い寿命性能を発揮することは明らかである。 本発明の密閉形鉛蓄電池用セパレータはソフトで弾力性に富むための、電池の
ケースに組み込み易い。また、緊圧が一定である。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は実施例及び比較例の測定結果を示すグラフ、第3図はS(
%)と見掛密度差/緊圧差及び保液性との関係を示すグラフである。
%)と見掛密度差/緊圧差及び保液性との関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 (1) ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結
合させて製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実
質的に構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電
解液の流下速度が80mm/時間以下であり、ガラス繊維表面に水ガラスを形成
させることによってガラス繊維間を結合させてセパレータを製造する際に発生す
るNa2SO4に由来するガラス繊維表面の硫黄Sが0.02%以下であることを
特徴とする密閉形鉛蓄電池用セパレータ。 (2) ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結
合させて製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実
質的に構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電
解液の流下速度が80mm/時間以下であり、見掛密度差/緊圧差が1.3×1
0-4cm-1以上であることを特徴とする密閉形鉛蓄電池用セパレータ。 (3) 20kg/dm2の加圧時の密度が0.155g/cm3以下であると共
に、60kg/dm2加圧時の密度が0.220g/cm3以下である請求項(2
)に記載の密閉形鉛蓄電池用セパレータ。 (4) ガラス繊維表面に水ガラスを形成させることによってガラス繊維間を結
合させて製造された、平均繊維径2μm以下の含アルカリガラス繊維のみから実
質的に構成された密閉形鉛蓄電池用セパレータであって、比重1.3の希硫酸電
解液の流下速度が80mm/時間以下であり、保液性が1.35g/cc以上で
あることを特徴とする密閉形鉛蓄電池用セパレータ。 (5) 見掛密度差/緊圧差が1.3×10-4cm-1以上である請求項(4)に
記載の密閉形鉛蓄電池用セパレータ。 (6) 請求項(3)に記載の密閉形鉛蓄電池用セパレータを用いた密閉形鉛蓄
電池。
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