JP2551366B2 - 画像ドリフト制御回路 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、画像ドリフト制御回路
に関する。特に、物体の表面から放射される赤外線を捕
らえて２次元の熱画像を得る赤外線撮像装置に適用さ
れ、温度等に起因する特性変動を補償するための画像ド
リフト制御回路に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、赤外線撮像装置では一般に、赤外
線検知装置や撮像装置内部の電子回路等に、特に、自己
発熱温度・環境温度の変化に起因する特性のドリフトが
生じることがある。この特性の変化は、赤外線撮像素子
出力の固定パターンに歪を生じさせる。故に、赤外線撮
像装置で得られた像の精度を高めるために均一な温度パ
ターンを撮像し、歪成分を抽出し撮像された画像データ
を補正する手法が取られている。特性の経時変化への対
応は、平坦な基準画像を撮像し直すことにより取得撮像
データの補正に用いる固定パターンを更新している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
赤外線撮像装置では、赤外線撮像素子出力のドリフトや
撮像装置内の電子回路等のドリフトによって固定パター
ンがずれた時には、その都度均一な温度パターンを撮像
することによって固定パターンを取り直さなければなら
ない。この手順によれば、固定パターンを度々取り直す
手間がかかり、また、取り直しのたびに熱画像の取得を
中断することとなり、熱画像の連続性が無くなるという
問題を伴う。

【０００４】本発明は、赤外線撮像装置から熱画像を得
るための固定パターンのドリフトを、逐次自動補正でき
る画像ドリフト制御回路を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、本発明の画像ドリフト制御回路は、２次元の赤外線
撮像素子が取得する画像データから、予め記憶されてい
る固定パターンの画像データを減算除去して熱画像を得
る赤外線撮像装置に適用され、この赤外線撮像装置の画
像ドリフトを補正する画像ドリフト制御回路であり、固
定パターンの画像データを記憶する第１の記憶手段と、
被測定体の画像データを記憶する第２の記憶手段と、第
１および第２の記憶手段にそれぞれ接続され、各々の記
憶手段が記憶している画像データをフーリエ変換するフ
ーリエ変換手段と、このフーリエ変換手段の変換した画
像データのそれぞれの周波数分解成分を入力し、入力し
たそれぞれの周波数成分を比較し相互の差の周波数成分
を抽出して出力する比較手段とを有し、第２の記憶手段
へ被測定体の画像データを所定の時間間隔で記憶し、比
較手段で抽出した周波数成分に基づき、第１の記憶手段
が記憶する固定パターンの画像データを更新することに
より、赤外線撮像装置の画像ドリフトを補正することを
特徴としている。

【０００６】

【作用】本発明の画像ドリフト制御回路によれば、固定
パターンの画像データと被測定体の画像データをそれぞ
れ記憶し、各々の記憶画像データをフーリエ変換し、フ
ーリエ変換した画像データの各々の周波数成分を比較
し、相互の差の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成
分に基づき固定パターンの記憶画像データを追尾的に更
新することにより、赤外線撮像装置の画像ドリフト成分
の経時変化を逐次補正することが可能となる。

【０００７】

【実施例】次に添付図面を参照して本発明による画像ド
リフト制御回路の実施例を詳細に説明する。図１を参照
すると本発明の画像ドリフト制御回路が適用される赤外
線撮像装置の実施例の部分構成ブロック図が示されてい
る。以下、本発明の構成を図面に示す実施例に基づいて
詳細に説明する。

【０００８】図１は、上述の様に赤外線撮像装置の部分
構成ブロック図であり、２次元赤外線撮像素子１、Ａ／
Ｄ変換器２、減算器５、画像処理部６および画像ドリフ
ト制御回路１０とにより構成される。

【０００９】２次元赤外線撮像素子１は、赤外線を感知
する撮像装置であり、Ａ／Ｄ変換器２は、撮像素子１か
ら出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する
回路である。減算器５は、２つのディジタル入力信号の
相互の差分を算出し出力する回路である。また、画像処
理部６は、ディジタルの原画像信号をＤ／Ａ変換等の処
理を施し、映像信号とする回路部である。

【００１０】画像ドリフト制御回路１０は、固定パター
ン用メモリ３、画像メモリ４、２個のフーリエ変換器
７、７および比較器８とにより構成される。

【００１１】固定パターン用メモリ３は、画素データを
一時保存するための記憶回路である。このメモリ３は、
赤外線撮像装置のドリフト特性を補正するための補正画
像データを記憶する。記憶した修正画像データを原画像
データから減算器５によって減算することにより、原画
像データの固定パターンが除去され、熱画像が得られ
る。この固定パターンの画像データは、撮像回路、増幅
回路の温度ドリフト等に対応し、所定の時間間隔毎に更
新する必要がある。記憶画像の更新は、比較器８から出
力されるメモリ内容書換信号により行われる。

【００１２】画像メモリ４は、画素データを一時保存す
るための記憶回路であり、固定パターン用メモリと対比
して、記憶する対象が異なるだけで回路構成は実質的に
同一のメモリで良い。画像メモリ４には所定の時間間隔
毎に画像データが取り込まれ、取り込まれた画像データ
は、固定パターン用メモリ３が記憶する固定パターンの
画像データの経時変化分を補正するための、変化成分を
抽出するために用いられる。

【００１３】２個のフーリエ変換器７、７は、２次元フ
ーリエ変換器であり、ｍ×ｎ画素分（ｍ、ｎは正の整
数）の画像データを周波数分解する回路部である。２個
のフーリエ変換器７、７は、固定パターン用メモリ３と
画像メモリ４の同一の２次元画像領域において、画像デ
ータをフーリエ変換するための回路部である。２つのメ
モリ３および４に記憶されているそれぞれの画像データ
をフーリエ変換し、変換されたそれぞれの周波数成分が
一致するように、固定パターン用メモリ３の内容が書き
換えられる。これを、２次元赤外線撮像素子１の画素全
体にわたって行う。

【００１４】比較器８は、固定パターン用メモリ３と画
像メモリ４の記憶している画像データに基づいた画素の
２次元フーリエ変換された各々の周波数成分を比較する
回路部である。比較した結果はメモリ書換信号として出
力し、固定パターン用メモリ３へ書き込まれる。

【００１５】上記のそれぞれの回路部により構成される
画像ドリフト制御回路１０は、図２に示す以下の手順を
とることにより、ドリフト特性が補正された高精度な被
写体の熱画像を得ることができる。

【００１６】ステップＳ１２において、先ず均一な温度
パターンを撮像し、この基準画像データＧを固定パター
ン用メモリ３および画像メモリ４に書き込む。次に均一
な温度パターンを撮像対象から外す。ステップＳ１４
で、被測定体の画像データｇが取得され、ステップＳ１
６で書き込まれた基準画像データＧが減算器５によって
原画像データｇから減算（ｇ−Ｇ）される。減算後の画
像データを画像処理部６が所定の画像処理を施すことに
より、原画像から熱画像を得る。

【００１７】ステップＳ１８において、所定の時間Ｔの
時間経過の有無がチェックされ、所定時間経過毎に画像
メモリ４の記憶画像データｇmを更新する（ステップＳ
２０）。ステップＳ２２で、固定パターン用メモリ３の
データの任意のｍ×ｎ画素分と、同一画像領域の画像メ
モリ４の画像データとを、フーリエ変換器７、７によっ
てそれぞれ周波数分解し、ステップＳ２４で各々の周波
数成分を比較器８で比較する。

【００１８】比較結果の相互に異なる周波数成分が抽出
され、抽出された画像データは、メモリ書換信号として
出力される。出力されたデータは、固定パターン用メモ
リ３のデータの任意のｍ×ｎ画素分の周波数成分が一致
するように、ステップＳ２６で固定パターン用メモリ３
に書き込まれる。これを、２次元赤外線撮像素子１の画
素全体にわたって行う（ステップＳ２８）。

【００１９】上記のステップＳ１４〜ステップＳ２８
は、被測定体の熱画像の測定が終了するまで繰り返し実
行される（ステップＳ３０）。この一連の動作を繰り返
し行うことによって、ドリフトに対して固定パターンデ
ータを追従させることができる。

【００２０】以上説明した様に、本発明は、２次元赤外
線撮像素子のドリフトや撮像装置の回路等のドリフトに
よる、２次元赤外線撮像素子の固定パターンのずれを少
なくすることができる。また、均一な温度パターンの撮
像は、赤外線撮像装置立ち上げ時のみで良いので、固定
パターン取得による一時的な熱画像の途切れを無くすこ
とができる。

【００２１】尚、上述の実施例は本発明の好適な実施の
一例ではあるが、本発明はこれに限定されるものではな
く本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施
可能である。

【００２２】

【発明の効果】本発明の画像ドリフト回路によれば、固
定パターンの画像データと被測定体の画像データをそれ
ぞれ記憶し、各々の記憶画像データをフーリエ変換し、
２つのフーリエ変換した画像データの周波数分解成分を
比較し、相互の差の周波数成分を抽出し、抽出した周波
数成分に基づき固定パターンの記憶画像データを追尾的
に更新し、赤外線撮像装置の画像ドリフトの経時変化量
を逐次補正することができる。このため、固定パターン
の画像データを更新させる作業が不要となり、工程数の
減少、取得画像の連続化が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の画像ドリフト制御回路を赤外線撮像装
置に適用する場合の一実施例を示すブロック図である。

【図２】図１の装置の画像ドリフトの補正手順例を示す
フロー図である。

【符号の説明】

１ ２次元赤外線撮像素子 ２ Ａ／Ｄ変換器 ３ 固定パターン用メモリ ４ 画像メモリ ５ 減算器 ６ 画像処理部 ７ フーリエ変換器 ８ 比較器 １０ 画像ドリフト制御回路

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ２次元の赤外線撮像素子が取得する画像
   データから、予め記憶されている固定パターンの画像デ
   ータを減算除去して熱画像を得る赤外線撮像装置に適用
   され、該赤外線撮像装置の画像ドリフトを補正する画像
   ドリフト制御回路において、該制御回路は、 前記固定パターンの画像データを記憶する第１の記憶手
   段と、 被測定体の画像データを記憶する第２の記憶手段と、 前記第１および第２の記憶手段にそれぞれ接続され、各
   々の記憶手段が記憶している画像データをフーリエ変換
   するフーリエ変換手段と、 前記フーリエ変換手段の変換した前記画像データのそれ
   ぞれの周波数成分を入力し、入力した前記それぞれの周
   波数成分を比較し相互の差の周波数成分を抽出して出力
   する比較手段とを有し、 前記第２の記憶手段へ前記被測定体の画像データを所定
   の時間間隔で記憶し、前記比較手段で抽出した前記周波
   数成分に基づき、前記第１の記憶手段が記憶する前記固
   定パターンの画像データを更新することにより、前記赤
   外線撮像装置の画像ドリフトを補正することを特徴とす
   る画像ドリフト制御回路。
2. 【請求項２】 請求項１記載の画像ドリフト制御回路に
   おいて、前記第１の記憶手段が記憶する前記固定パター
   ンの画像データの更新は、前記第２の記憶手段の記憶し
   ている画像データの前記フーリエ変換手段が変換した周
   波数成分と一致するように、記憶内容を書き換えること
   を特徴とする画像ドリフト制御回路。
3. 【請求項３】 請求項２記載の画像ドリフト制御回路に
   おいて、前記記憶内容の書き換えは、所定の画素領域毎
   に行うことを特徴とする画像ドリフト制御回路。