JP2550825Y2 - 水冷エンジンの冷却水通路 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、冷却水を循環させて
エンジンの冷却を図った水冷エンジンに関し、特にこの
水冷エンジン内を循環する冷却水の冷却水通路に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】一般に水冷エンジンにおいて、ラジエー
タにより冷却された冷却水はウォータポンプによりシリ
ンダブロックのウォータジャケット内に圧送され、次に
冷却水はシリンダブロックとシリンダヘッドとの合せ面
に配設されたガスケットの冷却水案内孔を介して前記シ
リンダブロックのウォータジャケット内からシリンダヘ
ッドのウォータジャケット内に圧送される。なお、エン
ジンは上述したシリンダブロックとシリンダヘッドとに
形成された各ウォータジャケット内を冷却水が循環する
間に、その吸熱作用によって冷却される。なお、シリン
ダヘッドのウォータジャケット内を通過した冷却水は、
次にラジエータへ圧送され、以降は上述した冷却水の循
環サイクルを繰り返す。

【０００３】ところで、上述した水冷エンジン、特に多
気筒水冷エンジンにおける従来の冷却水通路では、シリ
ンダブロックのウォータジャケット内に圧送された冷却
水は、シリンダブロック内に配設された相隣接する複数
のシリンダ周囲をほぼ均等に流れた後、一気筒あたり複
数箇所に形成れたガスケットの冷却水案内孔を介して、
シリンダ全周からほぼ均等にシリンダヘッドのウォータ
ジャケット内に流入する構成となっている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところで上述した従来
の水冷エンジンの冷却水通路によると、シリンダヘッド
のウォータジャケット内に流入する冷却水は、シリンダ
ブロック内に配設された複数のシリンダ周囲をほぼ均等
に流れた後の冷却水なので、その温度は極めて高く、ま
たこの温度が高くなった冷却水によりシリンダヘッドを
冷却するためシリンダヘッドの冷却効率が低い難点があ
った。

【０００５】また、特に多気筒エンジンでは、シリンダ
が隣接する部分、即ちシリンダボア間は特に高温になり
やすいが、従来の冷却水通路によると冷却水は複数のシ
リンダの周囲をほぼ均等に流れる構成なので、この部分
の冷却効率も低く、このためシリンダボア間に変形が発
生する虞もあった。

【０００６】この考案は、上述した事情に鑑み、シリン
ダヘッドとシリンダボア間の冷却効率を一層向上させる
ようにした水冷エンジンの冷却水通路を提供することを
目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ため、この考案の水冷エンジンの冷却水通路では、シリ
ンダブロック平面視、隣接するシリンダボア周囲を略８
の字形状に囲繞するウォータジャケットと、該ウォータ
ジャケットに連通し、冷却水を前記ウォータジャケット
内に流入する冷却水用インレットポートを前記シリンダ
ブロックの長手方向でかつシリンダボア間のシリンダブ
ロック外壁に設け、さらに前記ウォータジャケット内に
冷却水用インレットポート側であって、該冷却水用イン
レッポートを挟む一対の隔壁を形成することで前記略８
の字形状のウォータジャケットを略Ｖ字形状の小容量の
ウォータジャケットと略Ｗ形状の大容量のウォータジャ
ケットの２室に分割するとともに、前記隔壁上部にわず
かな断面積にて前記２室を連通する連通路を形成する一
方、前記シリンダブロックと燃焼室周囲を囲繞するウォ
ータジャケットを持つシリンダヘッド間のシリンダヘッ
ドガスケットに前記シリンダブロックの略Ｖ字形状のウ
ォータジャケットに対応する箇所に第１の冷却水案内孔
を設け、前記シリンダヘッドのウォータジャケットと連
通させるとともに、前記シリンダブロックの略Ｗ形状の
ウォータジャケットに対応する箇所には、前記第１の冷
却水案内孔と比較し、開口面積を小さくした第２の冷却
水案内孔を設け、前記シリンダヘッドのウォータジャケ
ットに連通させるようにしている。

【０００８】

【実施例】以下、この考案に係わる水冷エンジンの冷却
水通路の一実施例を詳述する。

【０００９】第２図は、本願考案に係わる冷却水通路を
適用したシリンダブロック１の要部破断上面図で、特
に、自動二輪車に搭載されるセンターカムチェーン式４
サイクル４気筒エンジンに使用されるシリンダブロック
の左半分を示したものである。このシリンダブロック１
では、当該シリンダブロック１内に相隣接して第１のシ
リンダ２と第２のシリンダ３とが配設されている。また
この第１と第２のシリンダ２、３とが隣接する部分、即
ちシリンダボア間Ａは互いに連結されている。また、上
述した第１と第２のシリンダ２、３の周面２ａ、３ａと
シリンダブロック１の内周面１ａとの間には、シリンダ
ブロック１の平面視で、第１と第２のシリンダ２、３の
周囲２ａ、３ａを囲繞するように略８の字形状のウォー
タジャケット４が形成されている。

【００１０】一方、上述したシリンダブロック１の排気
ポート側１ｂには、図示せぬウォータポンプによって圧
送された冷却水（矢印Ｂ）をシリンダブロックのウォー
タジャケット４内に流入させるための冷却水用インレッ
トポート５が形成されている。 また、シリンダブロッ
クのウォータジャケット４内には排気ポート側のシリン
ダボア間Ａと冷却水用インレットポート５とを挾むよう
に一対の隔壁６、６を形成し、これにより前記略８の字
形状のウォータジャケット４を略Ｖ字形状の小容量のウ
ォータジャケット２０と略Ｗ形状の大容量のウォータジ
ャケット３０の２室に分割する。

【００１１】この隔壁６は、第２図のＣＣ断面で示す第
３図のようにウォータジャケット４の底面４ａから、シ
リンダブロック１の上面１ｃと一致するように形成さ
れ、その上部には僅かな開口面積を有する連通路６ａが
形成されている。

【００１２】一方、ガスケットの要部破断平面図で示す
第４図のように、図示せぬシリンダヘッドと前記シリン
ダブロック１とが密着する上面１ｃ（第２図）に配設さ
れるガスケット１０には、図示せぬスタッドボルトが挿
入される挿入孔１０ａの他に、シリンダブロックのウォ
ータジャケット４（第２図）内に送給された冷却水をシ
リンダヘッドの燃焼室周囲を囲繞するように形成された
図示せぬウォータジャケット内へ案内する冷却水案内孔
が形成されている。

【００１３】このガスケット１０に形成された冷却水案
内孔は、開口面積が大きい第１の冷却水案内孔１０ｂ、
１０ｃ、１０ｄと、開口面積が極めて小さい第２の冷却
水案内孔１０ｅ、１０ｆとから構成されている。

【００１４】このうち、開口面積の大きい第１の冷却水
案内孔１０ｂ、１０ｃ、１０ｄは、第２図に示す隔壁
６、６間（言い換えれば排気ポート側のシリンダボア間
Ａ）に位置する前記略Ｖ字形状の小容量のウォータジャ
ケット２０に対応する箇所に形成されており、また開口
面積が極めて小さい第２の冷却水案内孔１０ｅ、１０ｆ
は、前述した略Ｗ形状の大容量のウォータジャケット３
０に対応する箇所に形成されている。

【００１５】従って、上述したガスケット１０をシリン
ダブロック１の上面１ｃに配設すると、第１図の一点鎖
線で示すように、開口面積の大きい第１の冷却水案内孔
１０ｂ、１０ｃ、１０ｄが隔壁６、６間に位置する略Ｖ
字形状の小容量のウォータジャケット２０の上部に位置
し、また開口面積が極めて小さい第２の冷却水案内孔１
０ｅ、１０ｆは上述した隔壁６、６に挾まれた略Ｗ形状
の大容量のウォータジャケット３０の上部に位置するこ
ととなる。

【００１６】次に上述した冷却水通路の作用を説明す
る。

【００１７】第１図に示すように、図示せぬウォータポ
ンプにより圧送された冷却水は矢印Ｂで示すように、シ
リンダブロック１の排気ポート側１ｂに形成された冷却
水用インレットポート５を介しシリンダブロック１のウ
ォータジャケット４内に送給される、一方、シリンダブ
ロックのウォータジャケット４内のうち一対の隔壁６、
６間によって囲まれた略Ｖ字形状の小容量のウォータジ
ャケット２０は略Ｗ形状の大容量のウォータジャケット
３０の領域から隔壁６、６により隔離されているので、
冷却水（矢印Ｂ）は、その大部分が排気ポート側のシリ
ンダボア間Ａに案内され、当該高温になりやすい排気ポ
ート側のシリンダボア間Ａを冷却することとなる。

【００１８】なお、一対の隔壁６、６間によって囲まれ
た略Ｖ字形状の小容量のウォータジャケット２０内に案
内された冷却水のごく一部は、一対の隔壁６の上部に形
成された開口面積の小さい連通路６ａを介して略Ｗ形状
の大容量のウォータジャケット３０内へ若干送給され、
排気ポート側のシリンダボア間Ａ以外のシリンダ２、３
周囲を冷却することとなる。

【００１９】一方、一対の隔壁６、６間によって囲まれ
た略Ｖ字形状の小容量のウォータジャケット２０に送給
された冷却水の大部分は高温になりやすいシリンダボア
間Ａを冷却した後、ガスケットに形成された一点鎖線で
示す第１の冷却水案内孔１０ｂ、１０ｃ、１０ｄを介し
て直ちに、図示せぬシリンダヘッドのウォータジャケッ
ト内に圧送され、当該シリンダヘッドを冷却することと
なる。

【００２０】なお、一対の隔壁６の上部に形成された連
通路６ａを介し略Ｗ形状の大容量のウォータジャケット
３０内に送給された冷却水は、ガスケット１０に形成さ
れた一点鎖線で示す開口面積の小さい第２の冷却水案内
孔１０ｅ、１０ｆを介して図示せぬシリンダヘッドのウ
ォータジャケット内に圧送され、当該シリンダヘッドを
冷却することとなる。

【００２１】従って、上述した冷却水通路によると、シ
リンダブロック１内に送給された冷却水の大部分は、先
ず排気ポート側のシリンダボア間Ａに送給され、次にガ
スケット１０の開口面積の大きい第１の冷却水案内孔１
０ｂ、１０ｃ、１０ｄを介してシリンダヘッドのウォー
タジャケット内へ送給されるので、シリンダボア間Ａと
シリンダヘッド内に送給される冷却水の温度が従来に比
較して低く、このため冷却水によるシリンダボア間とシ
リンダヘッドの冷却効率が著しく向上することとなる。

【００２２】

【考案の効果】以上説明したように、この考案の冷却水
通路によると、シリンダブロック内に送給された冷却水
の大部分は、先ずシリンダボア間に送給され、次にシリ
ンダヘッドのウォータジャケット内へ送給されるので、
シリンダボア間とシリンダヘッド内に送給される冷却水
の温度が従来に比較して低く、このため冷却水によるシ
リンダボア間とシリンダヘッド（特に燃焼室）の冷却効
率が向上し、このため吸気の充填効率を向上させてエン
ジンの出力を向上させることが出来るとともに、シリン
ダの変形を可及的に阻止して耐久性の勝れた水冷エンジ
ンを提供することが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１図は、この考案に係わる冷却水通路を適用
したシリンダブロックの一部破断上面図、

【図２】第２図は、この考案に係わる冷却水通路を適用
したシリンダブロックの一部破断上面図。

【図３】第３図は、第２図のＣＣ断面図。

【図４】第４図は、ガスケットの一部破断上面図。

【符号の説明】

１…シリンダブロック ４…ウォータジャケット ５…冷却水用インレットポート ６…隔壁 ６ａ…連通路 １０…シリンダヘッドガスケット １０ｂ、１０ｃ、１０ｄ…第１の冷却水案内孔 １０ｅ、１０ｆ…第２の冷却水案内孔 ２０…Ｖ字形状の小容量のウォータジャケット ３０…Ｗ形状の大容量のウォータジャケット Ａ…シリンダボア間

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダブロック平面視、隣接するシリン
   ダボア周囲を略８の字形状に囲繞するウォータジャケッ
   トと、該ウォータジャケットに連通し、冷却水を前記ウ
   ォータジャケット内に流入する冷却水用インレットポー
   トを前記シリンダブロックの長手方向でかつシリンダボ
   ア間のシリンダブロック外壁に設け、 さらに前記ウォータジャケット内に冷却水用インレット
   ポート側であって、該冷却水用インレッポートを挟む一
   対の隔壁を形成することで前記略８の字形状のウォータ
   ジャケットを略Ｖ字形状の小容量のウォータジャケット
   と略Ｗ形状の大容量のウォータジャケットの２室に分割
   するとともに、前記隔壁上部にわずかな断面積にて前記
   ２室を連通する連通路を形成する一方、 前記シリンダブロックと燃焼室周囲を囲繞するウォータ
   ジャケットを持つシリンダヘッド間のシリンダヘッドガ
   スケットに前記シリンダブロックの略Ｖ字形状のウォー
   タジャケットに対応する箇所に第１の冷却水案内孔を設
   け、前記シリンダヘッドのウォータジャケットと連通さ
   せるとともに、前記シリンダブロックの略Ｗ形状のウォ
   ータジャケットに対応する箇所には、前記第１の冷却水
   案内孔と比較し、開口面積を小さくした第２の冷却水案
   内孔を設け、前記シリンダヘッドのウォータジャケット
   に連通させたことを特徴とする水冷エンジンの冷却水通
   路。