JP2549539B2 - 超深絞り用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

超深絞り用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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JP2549539B2
JP2549539B2 JP63001438A JP143888A JP2549539B2 JP 2549539 B2 JP2549539 B2 JP 2549539B2 JP 63001438 A JP63001438 A JP 63001438A JP 143888 A JP143888 A JP 143888A JP 2549539 B2 JP2549539 B2 JP 2549539B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はプレス加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき
鋼板を製造する方法に係り、より詳細には、熱間圧延鋼
板を原板とし、冷間圧延することなしに溶融亜鉛めっき
して成形加工性及び耐縦割れ性に優れた溶融亜鉛めっき
鋼板を製造する方法に関するものである。
(従来の技術) 近年、自動車等の車体或いはその構造部材には溶融亜
鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が多く使用さ
れるようになってきた。これらの用途では、形状が複雑
であるため、プレス加工時に鋼板が厳しい加工を受ける
ことから、成形性の優れた溶融亜鉛めっき鋼板或いは合
金化溶融亜鉛めっき鋼板が要求されることになる。
従来、このような用途に供される合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板の製造法としては、熱延鋼帯を冷間圧延に付した
後、そのまま或いは再結晶焼鈍を施した後、連続合金化
溶融亜鉛めっきライン(以下、「亜鉛めっきライン」と
称す)に通板して浸漬めっき及び合金化処理を行う、い
わゆる冷延鋼板を原板とした鋼板の製造法が通常の方法
である。
しかし、最近では、需要家側からコストダウンの要請
が強まり、加工性に優れ且つ安価な溶融亜鉛めっき鋼板
や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が求められている。このた
め、冷延鋼板を原板とすることに代えて、熱延後酸洗す
るが、冷間圧延やこれに続く再結晶焼鈍を施すことな
く、直接亜鉛めっきラインへ通板する方法、すなわち、
製造工程の一部を省略して製造コストを低減する方法が
検討され、一部で実用化されている。
しかし、従来、熱延鋼板を冷間圧延することなく直接
亜鉛めっきラインへ通板して得られる熱延原板溶融亜鉛
めっき鋼板は、板厚が3.2mm以上の比較的板厚の厚い鋼
とか、或いは加工性がそれ程厳しくない用途に限られて
使用されているにすぎず、板厚が薄く且つ加工性を優れ
た熱延原板溶融亜鉛めっき鋼板はこれまであまり製造さ
れていない。
そこで、このような板厚が薄く且つ加工性の優れた熱
延原板溶融亜鉛めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の製造法については種々改善が試みられているが、未
だ有効な方法が見い出されていない。
(発明が解決しようとする課題) 一般に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するには、
第1図に一般的な熱サイクルを示すように、亜鉛めっき
ラインにおいて、まず酸化雰囲気中で加熱均熱され、次
いでめっき層の密着性を高めるために溶融亜鉛温度(46
0℃)程度に還元雰囲気中で保持した後、溶融亜鉛めっ
き浴中に浸漬される。この場合、加熱均熱過程では、再
結晶焼鈍或いは軟質化を目的として、約700〜850℃に保
持されるのが通例である。更に製品の塗装密着性を目的
として合金化処理を行う場合には、溶融亜鉛めっき後、
更に鋼帯は約500〜700℃に加熱される。上記溶融めっき
ラインは冷延鋼板を対象に設備設計されたものであり、
対象鋼板の昇温ラインを含んでいるから、元々加工組織
が残っておらず、したがって焼鈍を行う必要のない熱延
鋼板であっても、設備稼働上必然的に昇温を受けること
となる。
なお、別の観点から見た場合においても溶融めっきの
密着性を確保するには亜鉛の溶融温度(約460℃)以上
に予熱しておく必要もあり、更に合金化処理を行う場合
にも良好な塗装密着性及びめっき層の加工性を得るため
に亜鉛めっき中の鉄濃度を適正な値に制御しなければな
らず、このためにも約550℃以上の鋼帯の加熱が必要で
あり、いずれにせよ、原板の再加熱処理は不可避のプロ
セスとなっている。
しかるに、例えばCが0.005〜0.05%程度でTi、Nb等
の炭化物形成元素を含まないAlキルド熱延鋼板に上記の
ような熱処理を施すと、熱延・巻取り後の徐冷過程で鋼
中に十分析出したセメンタイトが昇温によって再固溶す
るという現象が生じる。このような炭素の再固溶が行わ
れた鋼は、溶融めっきラインを通過する過程で、特にそ
の後半工程においてかなりの急速冷却を受けるため、再
固溶されている炭素を再び十分に析出させることは容易
でなく、再固溶された炭素は大部分が固溶した状態で鋼
中に残存するのである。このため、熱延・巻取り後の鋼
板と、溶融めっき後の鋼板についてそられの特性を比較
すると、後者の降伏強度は上昇し、伸びが大幅に低下す
る。同時に後者の時効指数が高くなり、時効によって機
械的性質が劣化する。これらの原因が総合的な影響を与
える結果、鋼の成形加工性が大きく低下するという問題
を生ずる。
このような問題を解消するために鋼中のC含有量を極
めて低く制御し且つTi、Nb等の炭化物形成元素を添加し
て残留Cを固定することが考えられる。このようにして
得られる鋼板中のCは、熱延鋼板の段階でTiC、NbCとし
て析出しており、これらの炭化物は溶融めっきラインの
加熱均熱工程においても殆ど再固溶しない。したがっ
て、溶融めっきライン通板後の材質及び加工性の劣化は
防止される。ところが、このように固溶Cが存在しない
鋼の場合は、結晶粒界の強度が弱くなる結果、成形加工
後に衝撃荷重が加わったり、或いは低温での変形を行っ
たりしたときに脆性破壊を生ずる、いわゆる「縦割れ現
象」を発生するおそれがあり、この種の鋼板を強度部材
として用いた場合、特に問題となる。更に、熱延鋼板の
耐縦割れ性が優れていても、溶融亜鉛めっきを施した場
合、亜鉛めっきラインでの鋼帯の加熱温度によっては耐
縦割れ性が大幅に劣化することがある。
従来、前記のように鋼中のCを極力抑制し、Ti、Nb等
により鋼中のCを固定し、熱延鋼板の加工性を向上させ
る方法は種々提案されている。例えば、特開昭49−1345
09号、同61−73836号、同50−141517号などがあるが、
これらはいずれも熱延鋼板の加工性に関するものであ
り、前記のような溶融亜鉛めっきライン通板による材質
の変動については何ら考慮されていない。
以上のように熱延鋼板を原板として溶融亜鉛めっき鋼
板を製造する場合には、亜鉛めっきラインで溶融亜鉛め
っきを行うことによる引張り特性の劣化(降伏点の上
昇、伸びの低下)、及びこれを抑えるために製品段階で
鋼中に固溶するCを低減すること、更にはこのような鋼
を亜鉛めっきラインで溶融亜鉛めっきを施すこと等によ
る耐縦割れ性の劣化と云った種々の問題点があり、これ
らを解決するたの手段については何ら提案されていなか
った。
これに対し、本発明者らは、まず、亜鉛めっきライン
での溶融亜鉛めっきによる引張り特性の劣化に対し、特
願昭62−11107号にて、鋼中のC含有量を30ppm以下とす
るか、或いは鋼中のC含有量を90ppm以下とし、Ti、Nb
等の炭化物形成元素の添加によりCを固定し、鋼中に固
溶するCを30ppm以下とすることを提案した。また、特
願昭62−62063号では、Cを低減し、Ti、Nbを添加し、
鋼中の固溶Cを低減することに加えて、特に亜鉛めっき
ラインでの溶融亜鉛めっき処理による耐縦割れ性の劣化
を抑制するためにBを添加することを提案した。
本発明は、上記両提案で得た知見に基づき、優れた引
張り特性を有しつつ、更に耐縦割れ性を向上し、より厳
しい加工を加えられる用途へも供給できる超深絞り用溶
融亜鉛めっき鋼板を安定して製造し得る方法を提供する
ことを目的とするものである。
(課題を解決するための手段) 前記目的を達成するため、本発明者らは、鋼の組成、
製造プロセス条件等について鋭意研究を重ねた結果、
C、N、S、Tiの含有量の調整、特に鋼中のCを固定す
るのに有効なTi量を規定して成分バランスを図ることに
より溶融亜鉛めっきによる引張り特性の劣化を効果的に
防止でき、更にこのような成分調整のもとで熱延後の巻
取温度並びに亜鉛めっきラインでのめっき前予熱温度を
コントロールすることにより耐縦割れ性を著しく向上で
きることを知見し、ここに本発明をなしたものである。
すなわち、本発明に係る超深絞り用溶融亜鉛めっき鋼
板の製造方法は、要するに、必須元素として、C:0.0010
〜0.009%、S:0.015%以下、N:0.0010〜0.0040%、P:0.
05%以下と、必要に応じてB:0.0005〜0.0045%を含み、
更にTiを次式(1)〜(3)で与えられる条件を同時に
満足するように必須元素として含を鋼を、熱間圧延後、
600℃未満の温度にて鋼帯をコイル状に巻取り、次いで
冷間圧延をせずに溶融亜鉛めっきを施すに際し、溶融亜
鉛めっきラインにおける鋼帯の最高加熱温度を460〜730
℃とすることを特徴とするものである。
Ti≦0.08% …(3) 但し、Ti:鋼中のCを固定するのに有効なTi量 以下に本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明の第1の目的である亜鉛めっきラインで
の“合金化溶融亜鉛めっき処理による”(以下、単に
“亜鉛めっきによる”と呼ぶ)引張り特性の劣化を抑制
するためには、上記のような亜鉛めっき前の予熱或いは
合金化処理による加熱によるセメンタイトの再固溶及び
冷却後の固溶状態での残存を抑制することが主眼となる
ため、C、N、S、Tiの含有量の調整が問題となる。
そこで、本発明者らは、鋼中における上記成分含有量
の最適バランスを調べるため、これらの成分バランスと
溶融亜鉛めっき前後の引張り特性との関係を調査した。
第1表に示す化学成分を有する鋼を溶製し、連続鋳造
によりスラブとし、更に熱間圧延を施して板厚2.0mmに
仕上げ、コイル状に巻取った。仕上げ温度は910〜920
℃、巻取り温度は570〜590℃であった。この熱延鋼板を
酸洗後、亜鉛めっきラインにより溶融亜鉛めっき処理を
行った。めっき前の予熱温度は700℃である。
亜鉛めっきラインでの通板前後で圧延方向よりJIS5号
試験片を採取し、機械的性質を調査した。
ここで、Tiは熱延前のスラブ加熱段階でもTiN、TiCと
して析出することが知られており、この場合、TiN、TiC
として析出したTiはその後の冷却過程ではCを固定する
ことはないと考えられる。したがって、鋼中のCを固定
するのに有効なTi量(以下、Tiと定義する)は、 で表わすことができる。したがって、実験により得られ
た結果について、横軸として、鋼中CからTiによりTi
Cとして固定され得るCを差し引いた値C(すなわ
ち、鋼中CとTiのバランスにN、S量を加味した値)を と定義し、このCと降伏点及び伸びとの関係を第2図
に示す。
第2図より、Cが低い鋼No.I及びNo.IIでは亜鉛め
っきによる引張り特性の変化は小さいが、Cが高い鋼
No.III及びNo.IVでは亜鉛めっきにより降伏点が上昇
し、伸びが低下しており、亜鉛めっきによる引張り特性
の劣化はCを0.0030%以下にすることにより抑制し得
ることがわかる。換言すれば、Tiで示される有効Ti量
が原子量論的にC量から0.003%を差し引いた量より多
ければ(次式(1))、亜鉛めっきによる引張り特性の
劣化を抑制し得ることが判明した。
但し、 次に、本発明の第2の目的である耐縦割れ性の向上の
ために、本発明者らは、前記(1)式を満足する鋼を用
いて熱延後の巻取り温度、亜鉛めっきラインでのめっき
前予熱温度及びBの添加と耐縦割れ性の関係を調査し
た。
実験では、第2表に示す化学成分を有する鋼を溶製
し、連続鋳造によりスラブとし、仕上げ温度910〜930℃
にて板厚2.0mmに熱間圧延した後、コイル状に巻取っ
た。この熱延鋼板を酸洗後、亜鉛めっきラインにより溶
融亜鉛めっきを行った。
第3表に熱延後の巻取り温度、めっき前予熱温度を示
す。
亜鉛めっきラインの通板前後で鋼板のサンプリングを
行い、耐縦割れ性を調査した。なお、縦割れ試験として
は、145mmφのブランクを打ち抜き、平底円筒絞り成形
(絞り比:2.3)を行い、その後旋盤にて耳落し加工を施
し、最終絞り比:2.0相当のカツプ状成形品を作製し、−
130℃〜0℃で10分間保持した後、円錐ポンチにて穴拡
げ加工を行った。各保持温度毎に3〜5個のカップ成形
品を供試し、縦割れ(脆性割れ)発生率50%の時の温度
を遷移温度とした。
第3図に熱延後の巻取り温度(以下、単に巻取り温度
という)と縦割れ遷移温度との関係を示す。同表からわ
かるように、鋼No.A、Bともに巻取り温度が600℃未満
では縦割れ遷移温度が殆ど変化しないが、巻取り温度が
680℃で両鋼とも大きく縦割れ遷移温度が上昇してい
る。また、鋼No.Cは従来鋼であるC量の多い通常のAlキ
ルド鋼であり、これと同等以上の耐縦割れ性を確保すれ
ば、Cを低下しTiを添加することによる耐縦割れ性の劣
化を抑制できたと考えることができ、このレベルを図中
斜線で示す。
したがって、この実験結果より、本発明で第2の目的
とする良好な耐縦割れ性を得るためには、巻取り温度は
600℃未満とする。
第4図にはめっき前予熱温度と縦割れ遷移温度との関
係を示す。鋼No.A、Bともにめっき前予熱温度が730℃
までは殆ど縦割れ遷移温度は変化しないが、めっき前予
熱温度が750℃では、両鋼とも大きく遷移温度が上昇し
ている。前述と同様に本発明の目的とする縦割れ遷移温
度を斜線部で示す。すなわち、本発明の目的を達成する
ためには、めっき前予熱温度は730℃以下とすることが
必要である。
以上のように、巻取り温度やめっき前予熱温度により
めっき後の耐縦割れ性が変化することについては、その
詳細な理由は不明であるが、以下のように考えられる。
前述したように、亜鉛めっきラインでの再加熱による
引張り特性の変化を抑制するためにCを低減し、しかも
Tiを添加した鋼の場合、鋼中に固溶したCが少なすぎる
と粒界が純化し粒界強度が低下し、耐縦割れ性が通常の
0.04%C程度の鋼に比べて劣るのである。この鋼中に固
溶したCの減少はTiがTiCとして析出することが原因で
あると考えられる。通常、熱延前のスラブ加熱段階(約
1050〜1200℃)ではTiCは殆ど固溶しており、これを熱
延後670℃以上の高い巻取り温度でコイル状に巻取れ
ば、その後の徐冷過程でTiCとして析出し、上記したよ
うに、このTiCは亜鉛めっきラインでの再加熱(800℃以
下)程度では再固溶することがなく、したがって、鋼中
に固溶するCが少ないままであり、耐縦割れ性に劣るも
のと考えられる。ところが、本発明者らは、亜鉛めっき
ラインでの引張り特性の劣化を抑制するためにCを低減
し、Tiを添加し、更にTiの添加量が原子当量論的にCの
数倍程度含む鋼であっても、巻取り温度が600℃未満に
て巻取れば良好な耐縦割れ性が得られる可能性を示した
訳であり、すなわち、この場合、TiCの析出がある程度
抑制でき、鋼中に固溶Cを残すことができたものと考え
られる。
同様に、めっきラインでの再加熱処理時の温度につい
ても、この温度が760℃以上の場合には、たとえその加
熱時間が短時間であつても熱延巻取り工程で残存させた
鋼中の固溶Cがこの再加熱時にTiCとして析出し鋼中固
溶C量が減少するために耐縦割れ性が大きく劣化するも
のと考えられる。したがって、たとえめっき前予熱温度
が730℃以下であっても、その後合金化処理を行う場
合、合金化のための再加熱温度が高い(例えば、760
℃)と耐縦割れ性が劣化することを本発明者らは確認し
ており、すなわち、合金化処理も含めて考慮した上で良
好な耐縦割れ性を得るためには、合金化処理時も含め、
溶融亜鉛めっきラインでの鋼帯最高加熱温度を730℃以
下とする必要がある。
また、本実験結果より耐縦割れ性に及ぼすBの効果が
わかる。すなわち、Bを添加することにより溶融亜鉛め
っき鋼板の耐縦割れ性が更に向上する。この効果は、め
っき前での耐縦割れ性を向上させることと、以下の効果
によるものとの複合効果であると考えられる。すなわ
ち、第3図及び第4図で示されているように、Bの有無
(鋼No.AとB)にかかわらず、本発明による熱延めっき
条件で製造しても亜鉛めっき処理により縦割れ遷移温度
が上昇するが、Bを添加した場合にはこの変化量が小さ
くなり、したがって溶融亜鉛めっき後でも優れた耐縦割
れ性を示す。これらのBの効果はその詳細な理由は不明
であるが、BはCと同様に粒界強度を強める効果がある
と考えられ、しかもめっき処理時の再加熱によりBが更
に粒界に拡散し、粒界強度を高めているのではないかと
考えられる。
以上が本発明に至った実験結果の説明であるが、本発
明は、これにより得た知見に基づいて更に化学成分の調
整の詳細を検討し、完成したものである。
以下に本発明を構成する各因子の限定条件について述
べる。
まず、本発明における化学成分の限定理由を説明す
る。
(イ)C 溶融亜鉛めっき処理後の成形加工性を劣化させないた
めには、めっき処理後の固溶C量が少ないことが肝要で
ある。固溶C量は鋼中のC及び炭化物形成元素であるTi
の量により定まる。したがって、Tiの添加量が増大すれ
ばCの許容含有量も大となるのであるが、C含有量及び
Tiの添加量が増大すると炭化物が増大し、鋼の延性が劣
化することとなるため、C含有量の上限値を0.009%と
し、Tiの添加量についても後に述べるように一定値以下
に制限する。
(ロ)Ti Tiは炭化物形成元素であり、この炭化物は溶融亜鉛め
っきラインの加熱均熱工程において再固溶しないため、
Tiの添加によりめっき後の固溶C量を少なくすることが
でき、その結果、亜鉛めっきによる引張り特性の劣化が
小さいものと考えられる。しかし乍ら、鋼中のC量が0.
0030%以下の場合には亜鉛めっきによる引張り特性の変
化が小さく、前記(1)式よりTiが0以下となる。し
かし、Tiは高温でTiN、次いでTiSとして析出し、特にTi
Sが析出した場合には鋼板の穴拡がり特性が向上する。
したがって、原子量論的に鋼中N及びSと同量のTi量は
必要である(次式(2))。
但し、Tiの添加量が増大すれば前述のように延性の低
下を招くことになる。本発明者らの研究によれば、Ti≦
0.08%の含有量であれば延性の低下による不都合は生じ
ないことがわかった(次式(3))。
Ti≦0.08% …(3) (ハ)S Sは前述したようにTi化合物を形成するため、TiCの
形成に必要なTiを下げる作用がある。したがって、製造
コストを下げる観点からTi添加量を下げるためには、S
を低くし、Tiを下げることが好ましい。したがって、
Sは0.015%以下に規制するのが好ましい。
(ニ)N NもSと同様にTi化合物を形成するため、可及的に低
くすることが製造コスト上有利であり、したがって、0.
0040%以下とすることが好ましい。
(ホ)B Bは、本発明では必ずしも必須元素とする必要はない
が、溶融めっき鋼板の耐縦割れ性を更に向上させる作用
があるので、必要に応じて添加することができる。この
ようなBの添加効果を得るためには少なくとも0.0005%
以上の添加量が望ましいが、0.0045%を超えると連鋳工
程のスラブ段階でスラブ表面割れを招くおそれがあり、
製品コストも増大するので、B添加量は0.0045%以下に
制限することが望ましい。
以上の必須構成元素の他に、鋼の強度或いは鋼精錬時
の脱酸を目的としてそれぞれMn及びAlを添加することが
でき、また、通常不可避的不純物して混在するSi、P等
の影響もあるので、以下にこれらの元素の好ましい添加
量或いは含有量について説明する。
(ヘ)Mn MnはSの存在によって生ずる熱間脆性破壊を抑制する
効果を有する。その添加効果を得るためには0.05%以上
の添加量が望ましいが、0.5%を超えると成形加工性が
低下するおそれがあるので、Mn添加量は0.5%以下とす
ることが望ましい。
(ト)Al Alは鋼精錬時の脱酸剤として添加される元素であり、
Tiの歩留りを向上させる点から添加量は0.01%以上であ
ることが望ましい。しかし、0.1%を超えると鋼板のい
わゆるスリバー疵の原因となり、製造コスト低減の点か
らも好ましくないので、Al添加量は0.1%以下に制限す
ることが望ましい。
(チ)Si Siの含有量は0.2%以下であることが望ましい。含有
量が0.2%を超えると熱延段階で赤スケールが生じるお
それがあり、赤スケール模様は酸洗後も残るため、めっ
き表面に縞状模様が浮き出て表面外観を劣化させ、商品
価値を著しく低下させる。更に赤スケールが発生した場
合、スケール発生部分のめっき密着性が劣化するため、
この観点からもSi含有量は可及的に抑制することが好ま
しい。
(リ)P Pは0.05%以上の含有量があるとめっき密着性が劣化
するため、含有量は0.05%以下とする。
次に上記化学成分を有する鋼の製造プロセス因子につ
いて説明する。
(ヌ)巻取り温度、亜鉛めっきラインでの再加熱温度 これらは、前述したように、良好な耐縦割れ性を得る
ためにTiCの析出を抑制できる条件とする必要があり、
巻取り温度及び亜鉛めっきラインでの再加熱温度はそれ
ぞれ600℃未満、730℃以下とする。なお、巻取り温度に
ついてはいくら低くても特に本発明に支障となるもので
はなく、室温程度で巻取ってもよい。但し、亜鉛めっき
ラインでの再加熱温度は、溶融亜鉛めっき前の予熱とし
てめっき密着性を確保するために亜鉛の溶融温度(約46
0℃)以上に加熱する必要があるので、460℃を下限値と
する。
(ル)その他 熱延仕上げ温度については、Ar3変態点以上であるこ
とが望ましいが、本発明が対象とするような極低C鋼で
は、多少Ar3変態点を下回っても再結晶し、この場合、
降伏点や伸びには大きな影響を及ぼさないため、約850
℃以上であればよい。
また、熱延後、溶融亜鉛めっき処理前の酸洗処理につ
いては、本発明により得られる溶融亜鉛めっき鋼板の機
械的性質に対して特に作用乃至影響を及ぼさないため、
特に条件は限定されない。
次に本発明の一実施例を示す。なお、本発明はこの実
施例のみに限定されるものではないことは云うまでもな
く、既述の各種基礎研究及び実験例のほか、他の態様も
可能である。
(実施例) 第4表に示す化学成分(wt%)を有する鋼を常法によ
り溶製し、転炉出鋼後、連続鋳造によりスラブとした。
次いで板厚2mmまで熱間圧延を施し、第5表に示す巻取
り温度にて巻取った。なお、仕上げ温度は880〜915℃と
した。
得られた熱延コイルを酸洗した後、亜鉛めっきライン
にて第5表に示す均熱温度で均熱処理し、溶融亜鉛めっ
き処理を施し、伸び率1.0%の調質圧延を施した。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板の諸特性を第5表に併記
する。表中、引張特性は該鋼板から圧延方向にJIS5号試
験片を採取し、引張試験を行った結果であり、また、第
5表には得られた溶融めっき鋼板の機械的性質と縦割れ
試験により求めた縦割れ遷移温度を示す。縦割れ試験と
しては、145mmφのブランクを打ち抜き、平底円筒絞り
成形(絞り比:2.3)を行い、その後旋盤にて耳落し加工
を施し、最終絞り比:2.0相当のカップ状成形品を作製
し、−160℃〜0℃で10分間保持した後、円錐ポンチに
て穴拡げ加工を行った。各保持温度毎に3〜5個のカツ
プ成形品を供試し、縦割れ(脆性割れ)発生率50%の時
の温度を遷移温度とした。
第5表より明らかなとおり、本発明例であるNo.C−1
は降伏点が低く、かつ高い伸びを示し、優れた引張り特
性を示すのに加え、耐縦割れ性にも優れている。また本
発明例のNo.E−1はBを添加した鋼を溶融亜鉛めっき後
合金化処理を行ったものであるが、No.C−1と同様に優
れた引張り特性を示し、より優れた耐縦割れ性を有して
おり、本発明法が合金化処理を施した場合にも適用でき
ることを示している。
これに対し、比較例のNo.C−2及びNo.E−2では、巻
取り温度が高く、TiCが析出するため、鋼中の固溶C量
が減少するので、耐縦割れ性に劣っている。また比較例
No.C−3及びNo.E−3では、めっき前予熱温度が高いた
め、同様に鋼中固溶C量が不足し、耐縦割れ性が悪い。
また比較例No.D及びFでは、第4表に示すCが0.00
30%を超えるものであり、換言すればTi添加量が少ない
ため、溶融亜鉛めっき前の予熱処理により引張り特性が
劣化し、得られる溶融亜鉛めっき鋼板の降状点は高く、
かつ伸びも低い。また比較例No.Iは通常のAlキルド鋼で
あるが、引張り特性が悪い。
また比較例No.G及びNo.Hは、それぞれC量、Ti量がい
ずれも多すぎるため、引張り特性に劣り、高度の加工性
が要求される用途には適していない。
(発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、化学成分をバ
ランスよく調整すると共に巻取り温度及びめっきでの再
加熱温度を適正な条件にコントロールするので、得られ
る溶融亜鉛めっき鋼板は鋼中に適正な固溶Cを有するた
めに優れた引張り特性及び優れた耐縦割れ性の両特性を
兼ね備え、しかも安定して製造することができるため、
より加工の厳しい用途(超深絞り用)への適用が可能と
なると共に、冷間圧延を要せずに製造できるため、経済
的で生産性向上の効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は亜鉛めっきラインにおける一般的な熱サイクル
を示す図、 第2図はC(鋼中CとTiのバランスにN、S量を加味
した値)と降状点及び伸びとの関係を示す図、 第3図は熱延後巻取り温度と熱延鋼板まま及び溶融亜鉛
めっき鋼板の縦割れ遷移温度との関係を示す図、 第4図はめっき前予熱温度と熱延鋼板まま及び溶融亜鉛
めっき鋼板の縦割れ遷移温度との関係を示す図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で(以下、同じ)、C:0.0010〜0.00
    90%、S:0.015%以下、N:0.0010〜0.0040%、P:0.05%
    以下と、更にTiを下記(1)〜(3)式で与えられる条
    件を同時に満足するようにそれぞれ必須元素として含む
    鋼を、熱間圧延後、600℃未満の温度にて鋼帯をコイル
    状に巻取り、次いで冷間圧延をせずに溶融亜鉛めっきを
    施すに際し、溶融亜鉛めっきラインにおける鋼帯の最高
    加熱温度を460〜730℃とすることを特徴とする超深絞り
    用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 Ti≦0.08% …(3) 但し、Ti:鋼中のC量を固定するのに有効なTi量
  2. 【請求項2】C:0.0010〜0.0090%、S:0.015%以下、N:
    0.0010〜0.0040%、P:0.05%以下、B:0.0005〜0.0045%
    と、更にTiを下記(1)〜(3)式で与えられる条件を
    同時に満足するようにそれぞれ必須元素として含む鋼
    を、熱間圧延後、600℃未満の温度にて鋼帯をコイル状
    に巻取り、次いで冷間圧延をせずに溶融亜鉛めっきを施
    すに際し、溶融亜鉛めっきラインにおける鋼帯の最高加
    熱温度を460〜730℃とすることを特徴とする超深絞り用
    溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 Ti≦0.08% …(3) 但し、Ti:鋼中のC量を固定するのに有効なTi量
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